JP2013206790A - 電極材料及び全固体リチウム二次電池、並びに製造方法 - Google Patents

電極材料及び全固体リチウム二次電池、並びに製造方法 Download PDF

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健吾 後藤
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英彰 境田
Kentaro Yoshida
健太郎 吉田
Kazuhiro Goto
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Abstract

【課題】充放電を繰り返しても内部抵抗の上昇がない全固体リチウム二次電池の提供
【解決手段】正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に位置する固体電解質層とを備えてなる全固体リチウム二次電池における電極材料であって、前記電極材料は、少なくとも活物質と固体電解質とを含む多孔質粉末成形体を基材としてめっき処理を施すことによって得られたものであり、前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜が形成されていることを特徴とする電極材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン導電性固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池に用いる電極材料及びこの電極材料を用いた全固体リチウム二次電池並びにその製造方法に関する。
近年、携帯電話、スマートフォン等の携帯電子機器やモーターを動力源とする電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源としての電池に対して、高エネルギー密度化が望まれている。特に、リチウムイオン二次電池は、リチウムが小さな原子量を有しかつイオン化エネルギーが大きな物質であることから、高エネルギー密度を得ることができる電池として各方面で盛んに研究が行われている。
現行のリチウムイオン二次電池には、電解液として有機系電解液が使用されている。しかしながら、この有機系電解液は、高いイオン伝導度を示すものの、電解質が可燃性の液体であることから、電池として用いた場合、液漏れや発火等の危険性がある。また電解液との反応によって金属負極が不動態化し、インピーダンスが増大してインピーダンスの低い部分に電流集中が起こり、デンドライトが発生し、このデンドライトが正負極間に存在するセパレータを貫通し、これによって電池が内部短絡するといった問題が生じやすい。
このため、リチウムイオン二次電池の更なる安全性の向上及び高性能化が技術的課題となっている。
そこで、上記の課題を解決するために有機系電解液に替えて、より安全性の高い無機固体電解質を用いたリチウム二次電池が研究されている。無機固体電解質は、一般に不燃性であって高い耐熱性を有しているため、無機固体電解質を用いた全固体リチウム二次電池の開発が望まれている。
たとえば、特許文献1には、LiSとPを主成分とし、モル%表示でLiS 82.5〜92.5、P7.5〜17.5の組成を有するリチウムイオン伝導性硫化物セラミックスを全固体電池の電解質として用いることが記載されている。
特許文献2には、化学式MaX−MbY(M:アルカリ金属、X、Y:SO4、BO3、PO4、GeO4、WO4、MoO4、SiO4、NO3、BS3、PS4、SiS4、GeS4、a:Xアニオンの価数、b:Yアニオンの価数)で表されるイオンガラスにイオン液体が導入された高イオン導電性イオンガラスを固体電解質として使用することが記載されている。
特許文献3には、正極活物質として遷移金属酸化物および遷移金属硫化物よりなる群から選択される化合物を含む正極と、Li2Sを含むリチウムイオン導電性のガラス固体電解質、およびリチウムと合金化する金属を活物質として含む負極とを備え、正極の活物質および負極金属活物質の少なくとも一方がリチウムを含む全固体リチウム二次電池が記載されている。
更に、特許文献4には全固体電池における電極材料層の柔軟性や機械的強度を向上させて、電極材料の欠落や割れ、及び、集電体からの剥離を抑制し、さらに、集電体と電極材料の接触性、及び、電極材料同士の接触性を向上させるために、全固体リチウム二次電池において用いる電極材料として三次元網目構造を有する多孔質金属シートの気孔部に無機固体電解質を挿入してなる電極材料シートを用いることが記載されている。
特許文献5には、三次元網目構造を有する合成樹脂の骨格表面を無電解めっき、CVD、PVDまたは金属もしくはグラファイトコーティングなどにより一次導電処理を施した後、電気めっきを行うことにより金属化処理を行って得られる金属多孔体を集電体とすることが記載されている。
汎用リチウム系二次電池用正極の集電体の材料としてはアルミニウムが好ましいとされている。アルミニウムは、水素よりも標準電極電位が卑であるため、水溶液中では、めっきされる前に水が電気分解されるので、水溶液中でのアルミニウムめっきは困難である。
特許文献6では、溶融塩めっきによってポリウレタンフォームの表面にアルミニウム被膜を形成し、次いでポリウレタンを除去することによって得たアルミニウム多孔体を電池用の集電体として用いることが記載されている。
しかしながら、上記の三次元網状構造体を集電体として用いる全固体リチウム二次電池は充放電を繰り返すに従って内部抵抗が上昇するという課題があった。
特開2001−250580号公報 特開2006−156083号公報 特開平8−148180号公報 特開2010−40218号公報 特開平7−22021号公報 国際公開第2011/118460号
本発明は、全固体リチウム二次電池において、充放電を繰り返しても内部抵抗の上昇がない全固体リチウム二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明者らが鋭意検討を進めた結果、電極材料として、少なくとも活物質、固体電解質からなる固体粉末成形体の気孔部分にめっきによって金属を充填することによって前記課題が解決できるとの知見を得て本件発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に記載する通りの全固体リチウム二次電池用の電極材料に係るものである。
(1)正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に位置する固体電解質層とを備えてなる全固体リチウム二次電池における電極材料であって、前記電極材料は、少なくとも活物質と固体電解質とを含む多孔質粉末成形体を基材としてめっき処理を施すことによって得られたものであり、前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜が形成されていることを特徴とする電極材料。
(2)前記活物質及び固体電解質の表面に、厚さ1μm〜100μmの金属被膜が形成されていることを特徴とする(1)に記載の電極材料。
(3)正極及び負極の固体電解質側と反対側の面に厚さ1μm〜100μmの金属被膜が形成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電極材料。
(4)前記金属被膜がアルミニウムからなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の電極材料。
(5)前記アルミニウムが溶融塩電解めっきによって形成されたことを特徴とする(4)に記載の電極材料。
(6)前記固体電解質は、リチウムと燐と硫黄を主成分とするリチウムイオン伝導性固体電解質であり、前記固体電解質層を構成していることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載の電極材料。
(7)少なくとも活物質と固体電解質とを含む原料粉末を成形して多孔質粉末成形体を製造する工程と、前記多孔質粉末成形体を基材としてめっき処理を施して、前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜を形成する工程とを含むことを特徴とする電極材料の製造方法。
(7’)前記金属被膜を前記多孔質粉末成形体の外側の面にも形成することを特徴とする(7)に記載の電極材料の製造方法。
(8)正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に位置する固体電解質層とを備えてなる全固体リチウム二次電池であって、前記正極及び負極が(1)〜(6)のいずれか一項に記載の電極材料からなることを特徴とする全固体リチウム二次電池。
(9)正極、固体電解質、負極をこの順に積層させて全固体リチウム電池を製造する方法であって、前記正極及び負極が(1)〜(6)のいずれか一項に記載の電極材料であることを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。
(10)少なくとも活物質と固体電解質とを含む第一の電極用の多孔質粉末成形体の片側の面に固体電解質スラリーを塗布して固体電解質層を形成する工程と、前記固体電解質層を形成した第一の電極用の多孔質粉末成形体にめっき処理を施す工程と、前記固体電解質層に、少なくとも活物質と固体電解質とを含む第二の電極用の多孔質粉末成形体を積層する工程とを含むことを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。
(11)少なくとも活物質と固体電解質とを含む第一の電極用の多孔質粉末成形体の片側の面に固体電解質スラリーを塗布して固体電解質層を形成する工程と、前記固体電解質層に少なくとも活物質と固体電解質とを含む第二の電極用の多孔質粉末成形体を積層して積層体を得る工程と、前記第一の電極用の多孔質粉末成形体及び前記第二の電極用の多孔質粉末成形体にめっき処理を施すことによって前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜を形成することを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。
(12)少なくとも活物質と固体電解質とを含む第一の電極用多孔質粉末成形体の片側の面に固体電解質スラリーを塗布して第一の固体電解質層を形成する工程と、少なくとも活物質と固体電解質とを含む第二の電極用多孔質粉末成形体の片側の面に固体電解質スラリーを塗布して第二の固体電解質層を形成する工程と、第一の固体電解質層と第二の固体電解質層とが対向するように第一の電極用多孔質粉末成形体と第二の電極用多孔質粉末成形体とを積層して積層体を得る工程と、前記第一の電極用の多孔質粉末成形体及び前記第二の電極用の多孔質粉末成形体にめっき処理を施すことによって、前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜を形成することを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。
本発明の全固体リチウム二次電池は高い出力を有し、また充放電の繰り返しによっても内部抵抗が上昇することがないためサイクル特性が向上するという効果を奏する。
全固体二次電池の基本的構成を説明する模式図である。
図1は、全固体リチウム二次電池10の縦断面図である。
この全固体リチウム二次電池10は、正極1、負極2、および、両電極間に配置される固体電解質層(SE層)3を備える。正極1は、正極層(正極体)4と正極集電体65とからなり、負極2は、負極層6と負極集電体7とからなる。
三次元網状金属多孔体を集電体として用いる場合には、正極はこの金属多孔体の気孔に正極活物質及びリチウムイオン伝導性の固体電解質を充填し、負極は、三次元網状金属多孔体の気孔に負極活物質粉末及びリチウムイオン伝導性の固体電解質を充填して用いる。
集電体が三次元網状構造であることにより、活物質との接触面積が増大するため、電池内部抵抗が低下でき、電池効率が向上する。更に、電解液の流通が向上し、電流の集中が防止でき、電池信頼性が向上し、また発熱も抑えられ、電池出力を増大することができる。更に、骨格表面の凹凸により、活物質の保持力が向上し、活物質の脱落を抑制することが可能になる。さらには骨格表面の凹凸により、比表面積が増加し、活物質の利用効率が向上し、電池のさらなる高容量化が可能となる。
しかしながら、三次元網状金属多孔体は例えばウレタンフォームを基材とし、この表面に金属被膜を形成したのち、基材を除去することによって得られるが、ウレタンフォームとしては通常はセル径が400〜500μmのものが用いられており、従ってウレタンフォームの表面に金属被膜を形成して得られる多孔質金属の骨格によって形成されるセル径も400〜500μm程度のものとなる。
一方、金属多孔質のセル内に充填される活物質は粒子径が5〜10μmであり、また、活物質ともにセル内に充填される固体電荷質の粒子径は一次粒子が0.1〜0.5μmで、二次粒子は5〜20μmである。このため、一つのセル内に多数の活物質及び固体電解質が充填されており、セルの中央部付近にある活物質及び固体電解質とセルの骨格との距離が長いため、内部抵抗が高くなり、電池出力が向上しない。
アセチレンブラックなどの導電助剤を活物質ともにセル内に存在させることに内部抵抗を低減することはできるが、その効果は十分なものではない。
本発明の電極材料は、三次元網状金属多孔体を用いないようにして上記課題を解決したものである。本発明の電極材料は、少なくとも活物質粉末及び固体電解質粉末を含む粉末成形体を基材としてめっき処理を施して粉末成形体の気孔部に金属を充填することによって製造することができる。粉末成形体の気孔部に充填された金属は導電経路として機能し、粉末成形体の導電経路を増大させるため、電池の内部抵抗を低減することができる。
また、粉末成形体の気孔部にめっきによって金属を充填すると共に、めっき処理の時間を長くして、粉末成形体の表面に所定の厚みの金属被膜を形成することにより、この金属被膜を集電体として機能させることができる。
本発明の電極材料は三次元網状金属多孔体を用いないので、材料コストを低減することができ、また、集電体を電極と一体化することができるので、電池組み立てのコストを低減することができる。
(活物質)
−正極活物質−
正極活物質としては、リチウムを脱挿入できる材料を使用することができる。
このような正極活物質の材料としては、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、ニッケルコバルト酸リチウム(LiCoNi1−x;0<x<1)、マンガン酸リチウム(LiMn)、リチウムマンガン酸化合物(LiMyMn2−y;M=Cr、Co、Ni、0<y<0.3)等を使用する。活物質は導電助剤及びバインダーと組み合わせて使用する。従来のリチウムリン酸鉄及びその化合物(LiFePO、LiFe0.5Mn0.5PO)であるオリビン化合物などの遷移金属酸化物が挙げられる。また、これらの材料の中に含まれる遷移金属元素を、別の遷移金属元素に一部置換してもよい。
更に他の正極活物質の材料としては例えば、TiS、V、FeS、FeS、LiMSx(MはMo、Ti、Cu、Ni、Feなどの遷移金属元素、又はSb、Sn、Pb)などの硫化物等のカルコゲン化物、TiO、Cr、V、MnOなどの金属酸化物が挙げられる。
なお、活物質の種類によってはめっきの溶媒を適切に選定する必要がある。
−負極活物質−
負極活物質としては、リチウムイオンの挿入脱離が可能な物質を用いることができる。
このような負極活物質としては、黒鉛、チタン酸リチウム(LiTi12)を挙げることができる。負極活物質としてチタン酸リチウム(LiTi12)を用いる場合には負極のめっき金属としてアルミニウムを用いることができる。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ、金属マグネシウム、金属カルシウム等の金属自体や他の元素、化合物と組合せた合金を、負極活物質として用いることができる。これらの負極活物質は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、活物質の種類によってはめっきの溶媒を適切に選定する必要がある。
(固体電解質)
−粉末成形体の構成成分としての固体電解質−
本発明の電極材料は製造工程においてめっき処理を行なうため、めっき処理の条件下で安定な固体電解質、例えば酸化物系の固体電解質を選択する。
なお、固体電解質としては一般にリチウムイオン伝導度の高い硫化物系固体電解質が使用されているが、この材料は水系めっきでは反応するため、用いることができない。
固体電解質としては公知のものを使用することができ、例えば、ケイリン酸リチウム(Li3.5Si0.50.5)、リン酸チタンリチウム(LiTi(PO)、リン酸ゲルマニウムリチウム(LiGe(PO)、LiO-SiO、LiO-V-SiO、LiO- P-B、LiO-GeOよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
−固体電解質層−
正極と負極との間に挟持されて用いられる固体電解質層としてはリチウムイオン伝導度の高い硫化物系固体電解質を使用することが好ましく、このような硫化物系固体電解質としては、リチウム、リン、及び硫黄を含む硫化物系固体電解質が挙げられる。硫化物系固体電解質は、さらに、O、Al、B、Si、Geなどの元素を含有してもよい。
このような硫化物系固体電解質は、公知の方法により得ることができる。例えば、出発原料として硫化リチウム(LiS)及び五硫化二リン(P)を用意し、LiSとPとをモル比で50:50〜80:20程度の割合で混合し、これを熔融して急冷する方法(溶融急冷法)や、これをメカニカルミリングする方法(ノカニカルミリング法)が挙げられる。
上記方法により得られる硫化物系固体電解質は、非晶質である。この非晶質の状態のまま利用することもできるが、これを加熱処理して結晶性の硫化物系固体電解質としてもよい。結晶化することで、リチウムイオン伝導度の向上が期待できる。
上記の固体電解質の粉末から固体電解質層を形成するが、その形成の方法としては次のものがある。
(1)固体電解質を粉砕したのち加圧成形して固体電解質フィルムを得る方法
(2)電極用粉末成形体にめっきを施して得られた電極材料の表面に固体電解質のスラリーを塗布して乾燥する方法。
この場合、スラリーにバインダを添加してもよいが添加しなくてもよい。
また、固体電解質層は正極材料及び負極材料のいずれか一方に形成してもよく、両方に形成してもよい。
(3)めっきを施す前の正極用粉末成形体及び負極用粉末成形体のそれぞれの片側表面に固体電解質のスラリーを塗布して乾燥して固体電解質層を形成する方法。
このあと、固体電解質層側の面を介して二つの粉末成形体同士を積層して、正極用粉末成形体/固体電解質層/負極用粉末成形体の積層体を形成し、次いでこの積層体にめっき処理を施す。
また、正極用粉末成形体及び負極用粉末成形体のいずれか一方の片側表面に固体電解質のスラリーを塗布し、次いで乾燥して固体電解質層を形成し、この固体電解質層に他の電極の粉末成形体を積層して正極材料−固体電解質層−負極材料の積層体を形成し、次いでこの積層体にめっき処理を施してもよい。
固体電解質膜の膜厚は20〜500μmであることが好ましい。
(導電助剤)
本発明の電極材料はめっきによって形成された金属が活物質と固体電解質間に存在しているため特に導電助剤を用いる必要はないが、導電助剤を添加してもよい。
導電助剤は特に限定されず、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;活性炭;黒鉛等を挙げることができる。黒鉛を使用する場合、その形状は、球状、フレーク状、フィラメント状、カーボンナノチューブ(CNT)などの繊維状等のいずれの形状であってもよい。
(活物質及び固体電解質を含む粉末成形体)
−成形用混合物−
活物質及び固体電解質を含む粉末成形体を作製するにはまず活物質及び固体電解質(以下「活物質等」という)に必要に応じて導電助剤やバインダを加え、これに有機溶剤や水を混合して成形用混合物を作製する。
バインダとしては、リチウム系二次電池用正極で一般的に使用されるものを用いればよい。バインダの材料として、例えば、前述のPVDF、PTFE等のフッ素樹脂のほかに、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂等も挙げられる。さらに、増粘剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ペクチンアガロース等の水溶性増粘剤もバインダとして使用することができる。
スラリーを作製する際に用いる有機溶剤としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、テトラヒドロフラン、1、4 − ジオキサン、1, 3 − ジオキソラン、エチレングリコール、N−メチル− 2 − ピロリドンなどが挙げられる。また、溶媒に水を使う場合、充填性を高めるために界面活性剤を使用しても良い。
バインダは成形用混合物を形成する際に溶媒と共に混合してもよいが、前もってバインダを溶媒に分散又は溶解させておいてもよい。例えば、フッ素樹脂を水に分散させたフッ素樹脂の水性ディスパージョン、カルボキシメチルセルロース水溶液等の水系バインダ;集電体として金属箔を用いたときに通常使用されるPVDFのNMP溶液等を使用することができる。成形用混合物中の各成分の含有量は特に限定されるものではなく、使用するバインダ、溶媒等に応じて適宜決定すればよい。
−成形−
前記成形用混合物を圧縮成形又は押出成形等によってシート状に成形した後、溶媒を除去して粉末成形体を得る。必要に応じて加熱処理を行ってもよい。加熱処理を施すことにより、バインダが溶融して粉末成形体の強度があがる。また、基材シート上に成形用混合物スラリーを塗布し、加熱処理した後に基材シートを剥離する方法によっても粉末成形体を得ることができる。
加熱処理の温度は、80℃以上であり、好ましくは100℃〜200℃である。
加熱時の圧力は、常圧であってもよく、減圧していてもよいが、減圧下で行うことが好ましい。減圧して行う際の圧力は、例えば1000Pa以下、好ましくは1〜500Paで行えばよい。
加熱時間は、加熱雰囲気、圧力等に応じて適宜決定されるが、通常1〜20時間、好ましくは5〜15時間とすればよい。
(めっき処理)
上記で得た粉末成形体を基材とし、これにめっき処理を施すことによって粉末成形体の気孔中に金属を充填する。めっきにより、活物質の表面に金属膜が形成されることによって導電経路が増加する。また、粉末成形体の表面付近の気孔が金属によって充填されると、粉末成形体の表面に形成される金属被膜の膜厚が増加して金属被膜が集電体としての機能を奏するようになる。
前述したように、めっき処理は粉末成形体に固体電解質層を形成する前に行なってもよいし、固体電解質層を形成した後に行なってもよい。また、正極用粉末成形体/固体電解質層/負極用粉末成形体の積層体を形成し、この積層体にめっき処理を施してもよい。
アルミニウム以外の金属の被膜は通常の水系めっき法で製造することができるが、アルミニウムは水系のめっき法では製造することが困難であり、国際公開2011/118460号に記載されているような、溶融塩浴中を用いるめっきする方法を採用することによってアルミニウムの膜を形成することができる。但し、活物質によっては水系のめっき液が使用できない場合がある。
また、粉末成形体の固体電解質側にはめっき被膜が形成されないようにする必要がある。
このために、めっきのアノードを固体電解質側におかないようにし、めっき浴の攪拌を得きるだけ抑えるようにする。また、必要に応じて粉末成形体の固体電解質側をシールしてもよい。
以下、溶融塩めっきについて述べる。
(溶融塩めっき)
粉末成形体を陰極とし、純度99.0%のアルミニウムを陽極として溶融塩中で直流電流を印加する。溶融塩としては、有機系ハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である有機溶融塩、アルカリ金属のハロゲン化物とアルミニウムハロゲン化物の共晶塩である無機溶融塩を使用することができる。比較的低温で溶融する有機溶融塩浴を使用すると、粉末成形体中に含まれる結合剤樹脂を分解することがないので好ましい。有機系ハロゲン化物としてはイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩等が使用でき、具体的には1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(EMIC)、ブチルピリジニウムクロライド(BPC)が好ましい。
溶融塩中に水分や酸素が混入すると溶融塩が劣化するため、めっきは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で、かつ密閉した環境下で行うことが好ましい。
溶融塩浴としては窒素を含有した溶融塩浴が好ましく、中でもイミダゾリウム塩浴が好ましく用いられる。イミダゾリウム塩浴は、比較的低温でめっきが可能であるため好ましい。イミダゾリウム塩として、1,3位にアルキル基を持つイミダゾリウムカチオンを含む塩が好ましく用いられ、特に塩化アルミニウム+1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド(AlCl+EMIC)系溶融塩が、安定性が高く分解し難いことから最も好ましく用いられる。溶融塩浴の温度は10℃から60℃、好ましくは25℃から45℃である。低温になる程めっき可能な電流密度範囲が狭くなり、めっきが難しくなる。60℃を超えると粉末成形体中の結合剤樹脂が分解する可能性があるので60℃以下とすることが好ましい。
以下、本発明の全固体リチウム二次電池用の電極材料の実施例を示す。しかし、これらの実施例は例示であって、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲の範囲によって示され、特許請求の範囲の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
[実施例1]
(正極1の製造)
−正極用粉末成形体の製造−
活物質としては平均粒径が5μmのコバルト酸リチウム粉末(正極括物質)を用意し、このコバルト酸リチウム粉末と、LiS+P(固体電解質)と、PVDF(バインダー)と、アセチレンブラック(導電助剤)を質量%で55:35:5:5の割合で混合した。この混合物にN−メチル−2−ピロリドン(有機溶剤)を滴下して混合し、正極粉末成形体用の粉末混合物を作製した。次に、この粉末混合物をガラス状に厚さ700μmで塗布し、その後、100℃で40分間乾燥させて有機溶剤を除去した。ガラス上から剥離してローラープレスで圧縮することにより5cm×5cm×0.05cmtの[正極用粉末成形体1]を得た。
−溶融塩めっき−
[正極用粉末成形体1]をワークとして、給電機能を有する治具にセットした後、アルゴン雰囲気かつ低水分(露点−30℃以下)としたグローブボックス内に入れ、温度40℃の溶融塩アルミめっき浴(33mol%EMIC−67mol%AlCl)に浸漬した。ワークをセットした治具を整流器の陰極側に接続し、対極のアルミニウム板(純度99.99%)を陽極側に接続した。電流密度3.6A/dmの直流電流を90分間印加して片面のみめっき処理して[正極1]を得た。めっき浴の攪拌はテフロン(登録商標)製の回転子を用いてスターラーにて行った。ここで、電流密度は正極用粉末成形体1の見かけの面積で計算した値である。
得られた[正極1]は対極のアルミニウム板側はアルミニウム金属が活物質及び固体電解質表面に被覆されており、粉末成形体の最表面には膜厚5μmのアルミニウム被膜が形成されていた。
(負極1の製造)
−負極用粉末成形体の製造−
活物質としては平均粒径が5μmのチタン酸リチウム粉末(負極活物質)を用意し、このチタン酸リチウム粉末と、LiS+P(固体電解質)と、PVDF(バインダー)とアセチレンブラック(導電助剤)を質量%50:40:5:5の割合で混合した。この混合物にN−メチル−2−ピロリドン(有機溶剤)を滴下して混合し、負極粉末成形体用の粉末混合物を作製した。次に、この粉末混合物をガラス状に厚さ700μmで塗布し、その後、100℃で40分間乾燥させて有機溶剤を除去した。ガラス上から剥離してローラープレスで圧縮することにより5cm×5cm×0.05cmtの[負極用粉末成形体1]を得た。
−溶融塩めっき−
[正極1」の製造におけると同様にして溶融塩めっきを行なって[負極1]を得た。得られた[負極1]は対極のアルミニウム板側はアルミニウム金属が活物質及び固体電解質表面に被覆されており、粉末成形体の最表面には膜厚5μmのアルミニウム被膜が形成されていた。
(固体電解質膜の調製)
LiS+Pで表されるリチウムイオン導電性ガラス状固体電解質を乳鉢で100メッシュ以下に粉砕し、次いで加圧成形して厚さ20μmの[固体電解質膜1]を得た。
(電池の製造)
[正極1」と[負極1]との間に[固体電解質膜1]を挟んでローラープレスにて圧着し、[全固体リチウム二次電池1]を作製した。
(評価)
[全固体リチウム二次電池1]について電流密度100μA/cm2で充放電サイクル試験を行い、放電容量の変化を調べた。
また、充電状態にあるこの電池を80℃の恒温槽に入れ、インピーダンスの経時変化を測定した。
評価結果を表1に示した。
[実施例2]
実施例1における溶融塩めっきの電流密度を7.2A/dmとし、直流電流の印加時間を45分間とした以外は実施例1と同様にして[全固体リチウム二次電池2]を得た。
[全固体リチウム二次電池2]について実施例1と同様にして評価試験を行い、評価結果を表1に示した。
[比較例1]
実施例1において溶融塩めっきを行なわなかったことを除いて実施例1と同様にして[全固体リチウム二次電池3]を作製し、実施例1と同様にして評価試験を行い、評価結果を表1に示した。
Figure 2013206790
上記のように、本発明の全固体リチウム電池は、500サイクル経過しても充放電容量は初期から低下することなく、また充放電効率も100%で推移し安定に動作することがわかった。
また、本発明の全固体リチウム電池は100時間経過してもインピーダンスの変化は認められなかった。
これに対し、比較例の全固体リチウム電池は本発明の全固体電池に比べると特性の低いものであった。
本発明の全固体二次電池は、携帯電話、スマートフォン等の携帯電子機器やモーターを動力源とする電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の電源として好適に使用することができる。
1 正極
2 負極
3 固体電解質層(SE層)
4 正極層(正極体)
5 正極集電体
6 負極層
7 負極集電体
10 リチウム電池

Claims (12)

  1. 正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に位置する固体電解質層とを備えてなる全固体リチウム二次電池における電極材料であって、前記電極材料は、少なくとも活物質と固体電解質とを含む多孔質粉末成形体を基材としてめっき処理を施すことによって得られたものであり、前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜が形成されていることを特徴とする電極材料。
  2. 前記活物質及び固体電解質の表面に、厚さ1μm〜100μmの金属被膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電極材料。
  3. 正極及び負極の固体電解質側と反対側の面に厚さ1μm〜100μmの金属被膜が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電極材料。
  4. 前記金属被膜がアルミニウムからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電極材料。
  5. 前記アルミニウムが溶融塩電解めっきによって形成されたことを特徴とする請求項4に記載の電極材料。
  6. 前記固体電解質は、リチウムと燐と硫黄を主成分とするリチウムイオン伝導性固体電解質であり、前記固体電解質層を構成していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極材料。
  7. 少なくとも活物質と固体電解質とを含む原料粉末を成形して多孔質粉末成形体を製造する工程と、前記多孔質粉末成形体を基材としてめっき処理を施して、前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜を形成する工程とを含むことを特徴とする電極材料の製造方法。
  8. 正極、負極、及び前記正極と前記負極との間に位置する固体電解質層とを備えてなる全固体リチウム二次電池であって、前記正極及び負極が請求項1〜6のいずれか一項に記載の電極材料からなることを特徴とする全固体リチウム二次電池。
  9. 正極、固体電解質、負極をこの順に積層させて全固体リチウム電池を製造する方法であって、前記正極及び負極が請求項1〜6のいずれか一項に記載の電極材料であることを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。
  10. 少なくとも活物質と固体電解質とを含む第一の電極用の多孔質粉末成形体の片側の面に固体電解質スラリーを塗布して固体電解質層を形成する工程と、前記固体電解質層を形成した第一の電極用の多孔質粉末成形体にめっき処理を施す工程と、前記固体電解質層に、少なくとも活物質と固体電解質とを含む第二の電極用の多孔質粉末成形体を積層する工程とを含むことを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。
  11. 少なくとも活物質と固体電解質とを含む第一の電極用の多孔質粉末成形体の片側の面に固体電解質スラリーを塗布して固体電解質層を形成する工程と、前記固体電解質層に少なくとも活物質と固体電解質とを含む第二の電極用の多孔質粉末成形体を積層して積層体を得る工程と、前記第一の電極用の多孔質粉末成形体及び前記第二の電極用の多孔質粉末成形体にめっき処理を施すことによって前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜を形成することを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。
  12. 少なくとも活物質と固体電解質とを含む第一の電極用多孔質粉末成形体の片側の面に固体電解質スラリーを塗布して第一の固体電解質層を形成する工程と、少なくとも活物質と固体電解質とを含む第二の電極用多孔質粉末成形体の片側の面に固体電解質スラリーを塗布して第二の固体電解質層を形成する工程と、第一の固体電解質層と第二の固体電解質層とが対向するように第一の電極用多孔質粉末成形体と第二の電極用多孔質粉末成形体とを積層して積層体を得る工程と、前記第一の電極用の多孔質粉末成形体及び前記第二の電極用の多孔質粉末成形体にめっき処理を施すことによって、前記活物質及び固体電解質の表面に金属被膜を形成することを特徴とする全固体リチウム電池の製造方法。
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