JP4764232B2 - 非水電解液二次電池用負極及び非水電解液二次電池 - Google Patents

非水電解液二次電池用負極及び非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は二次電池用電極に関し、更に詳しくは集電性や出力が高く、エネルギー密度の高い電池を得ることができる電極に関する。また活物質の脱落が防止されサイクル寿命が向上した二次電池を得ることができる電極に関する。更に本発明は、該電極の製造方法及び該電極を用いた二次電池に関する。
二次電池用の電極としては、従来金属箔等からなる集電体の片面又は両面に、水素吸蔵合金等からなる活物質の粒子を含むペーストを塗布したもの(以下、集電体使用型電極という)が用いられている。また金属発泡体の細孔内に活物質の粒子を充填・加圧し、真空中でホットプレスしたり焼結したもの(特許文献1参照)や、金属発泡体の細孔内に活物質の粒子を充填し、全体をニッケルとクロムの合金やニッケルと亜鉛の合金でめっきしたもの(以下、発泡体使用型電極という)も知られている(特許文献2及び3参照)。
集電体使用型電極は高出力が期待できるものの、集電体が10〜100μmといった比較的厚いものなので、電極全体に占める活物質の割合が低くそれに起因してエネルギー密度を高めることが容易でない。出力を高めるために活物質を小粒径化してその比表面積を高めた場合には、その酸化ないし腐食が起こりやすくなるという問題がある。また、活物質が電極反応によって膨張及び/又は収縮することに起因して脱落しやすく、サイクル寿命を長くすることが容易でない。一方、発泡体使用型電極は高エネルギー密度が期待できるものの、出力を高めることが容易でない。また発泡体使用型電極はその厚さが1mm程度と厚いので、電極のフレキシビリティや電池の小型化の点で問題がある。その上、活物質粒子と集電体との接触を十分に高めることが容易でなく、電気的に孤立した活物質が存在しやすくなり、電子伝導性を高めることが容易でない。
前述の電極とは別に、リチウムと合金を作る金属元素とリチウムと合金を作らない金属元素を構成要素として有し、負極の電解液と接し正極と対向する表面及び出力端子につながる部分で、リチウムと合金を作らない金属元素の含有率が高いリチウム二次電池用の負極が提案されている(特許文献4参照)。この負極によれば、充放電に起因してリチウムと合金を作る金属元素が微粉化しても、リチウムと合金を作らない金属を介して導電性が保たれるとされている。
前記の特許文献4には、負極の具体的な構造として、リチウムと合金を作る金属元素を含有する粉体状の部材を、結着剤で、リチウムと合金を作らない金属の集電部材に結着させた構造や、それを焼成した構造が提案されている。また、リチウムと合金を作る金属元素を含有する層の上に、リチウムと合金を作らない金属元素を配置することも提案されている。リチウムと合金を作らない金属元素は例えばめっきによって形成される。
しかし、前記の特許文献4に記載の負極は、充放電によって活物質が膨張収縮することに起因する体積変化を十分に緩和できず、負極の著しい変形が生じてしまう。また活物質が膨張収縮することに起因して微粉化した場合に、その脱落を効果的に防止することができない。従って負極のサイクル特性を向上させることは容易でない。
特開昭62−20244号公報 特開平6−140034号公報 特開平6−231760号公報 特開平8−50922号公報
従って本発明は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る二次電池用電極及びその製造方法並びに二次電池を提供することを目的とする。
本発明は、電解液と接し且つ導電性を有する表裏一対の面を含む集電用表面層と、前記集電用表面層間に位置し、かつ活物質の粒子を含む活物質層とを備え、前記活物質層中に含まれる粒子間に導電性材料が浸透しており、
前記導電性材料は、リチウム化合物の形成能の低い材料からなり、前記活物質層の厚み方向全域に亘って浸透していることを特徴とする非水電解液二次電池用極を提供することにより前記目的を達成したものである。
更に本発明は、前記負極を備えることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
本発明の電極では、活物質が電極の表面に露出しておらず電極の内部に包埋されているので、電気的に孤立した活物質が存在することが効果的に防止され、十分な集電性を得ることができ、出力が向上する。また充放電を繰り返しても、活物質の脱落が防止され、しかも活物質の集電性も確保される。更に、充放電を繰り返しても劣化率が低くサイクル寿命が大幅に長くなり、充放電効率も高くなる。活物質が電極の内部に包埋されていることで、活物質の酸化ないし腐食が抑制されるので、小粒径の活物質を使用できるという利点もある。小粒径の活物質は、その比表面積を増大させ、出力の向上に寄与する。更に、電極の表面に集電用表面層を備えている場合には電極の強度が高まる。その上、集電体使用型電極と異なり集電体を用いないので、電極全体に占める活物質の割合を高くすることができる。その結果、集電体使用型電極を用いた二次電池に比較して、単位体積当たり及び単位重量当たりのエネルギー密度を高くすることができる。集電体を用いないことは、発泡体使用型電極と比較して、電極のフレキシビリティが向上するという利点にもなる。
以下、本発明の電極をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の電極の一実施形態の要部を拡大した模式図が示されている。なお図1においては、電極の一方の面側のみが示されており他方の面側は示されていないが、他方の面側の構造もほぼ同様となっている。
本実施形態の電極10は、電解液と接する表裏一対の面である第1の面1及び第2の面(図示せず)を有している。電極10は、両面間に活物質の粒子2を含む活物質層3を備えている。活物質層3は、該層3の各面にそれぞれ形成された一対の集電用表面層(一方の集電用表面層は図示せず)4によって連続的に被覆されている。各表面層4は、第1の面1及び第2の面をそれぞれ含んでいる。また図1から明らかなように電極10は、従来の電極に用いられてきた集電体と呼ばれる集電用の厚膜導電体(例えば金属箔やエキスパンドメタル)を有していない。
集電用表面層4は、本実施形態の電極10における集電機能を担っている。また表面層4は、活物質層3に含まれる活物質が充放電によって膨張及び/又は収縮することに起因して脱落することを防止するためにも用いられている。表面層4は、二次電池の集電体となり得る金属から構成されている。かかる金属としては、充放電に不活性ないし低活性なものが用いられ、電池の種類や活物質の種類に応じて適宜適切なものが選択される。そのような選択は当業者の技術常識の範囲であり、ここで特に説明するまでもない。例を挙げればCu、Ni、Fe、Co又はこれらの合金等が挙げられる。耐食性を向上させるために、Crを添加してもよい。2つの表面層は、その構成材料が同じであってもよく、或いは異なっていてもよい。
電極10が、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池用の負極の場合には、表面層の構成材料はリチウム化合物の形成能の低い元素であることが好ましい。そのような元素としては、上述した元素が例示される。特にCu若しくはNi又はそれらの合金を用いることが好適である。特に、Ni−W合金を用いると、表面層4を高強度となすことができるので好ましい。「リチウム化合物の形成能が低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
各表面層4は、従来の電極に用いられている集電用の厚膜導電体よりもその厚みが薄いことが好ましい。具体的には0.3〜20μm程度、特に0.3〜10μm程度、とりわけ0.5〜5μm程度の薄層であることが好ましい。これによって、必要最小限の厚みで活物質層3をほぼ満遍なく連続的に被覆することができる。その結果、活物質の粒子2の脱落を防止することができる。またこの程度の薄層とすること、及び集電用の厚膜導電体を有していないことで、電極全体に占める活物質の割合が相対的に高くなり、単位体積当たり及び単位重量当たりのエネルギー密度を高めることができる。従来の電極では、電極全体に占める集電用の厚膜導電体の割合が高かったので、エネルギー密度を高めることに限界があった。前記範囲の表面層4は、後述するように電解めっきによって形成されることが好ましい。なお2つの表面層4はその厚みが同じでもよく、或いは異なっていてもよい。
先に述べた通り、2つの表面層4は第1の面1及び第2の面をそれぞれ含んでいる。本実施形態の電極10が電池に組み込まれた場合、第1の面1及び第2の面は電解液と接する面となる。これとは対照的に、従来の電極における集電用の厚膜導電体は、その両面に活物質層が形成されている場合には電解液と接することはなく、また片面に活物質層が形成されている場合であっても一方の面しか電解液と接しない。つまり本実施形態の電極10には、従来の電極で用いられていた集電用の厚膜導電体が存在せず、電極の最外面に位置する層、即ち表面層4が電解液の通過に関与すると共に集電機能と活物質の脱落を防止する機能とを兼ねている。
第1の面1及び第2の面をそれぞれ含む各表面層4は何れも集電機能を有しているので、本実施形態の電極10を電池に組み込んだ場合には、何れの表面層4にも電流取り出し用のリード線を接続することができるという利点がある。
図1に示すように電極10は、第1の面1及び第2の面の少なくとも一方において開孔し且つ活物質層3と通ずる多数の微細空隙5を有している。微細空隙5は少なくとも一方の集電用表面層4の厚さ方向へ延びるように該表面層4中に存在している。微細空隙5が形成されていることで、電解液が活物質層3へ十分に浸透することができ、活物質の粒子2との反応が十分に起こる。微細空隙5は、表面層4を断面観察した場合にその幅が0.1〜100μm程度であるが、活物質の脱落を一層効果的に抑制するためには、0.1〜10μm程度の微細なものとすることが好ましい。微細であるものの、微細空隙5は電解液の浸透が可能な程度の幅を有している。特に、電解液として非水電解液を用いる場合、非水電解液は水系の電解液に比べて表面張力が小さいことから、微細空隙5の幅が小さくても十分に浸透が可能である。微細空隙5は、好ましくは表面層4を電解めっきで形成する際に同時に形成される。
第1の面1及び第2の面を電子顕微鏡観察により平面視したとき、少なくとも一方の面に形成されている微細空隙5の平均開孔面積は、好ましくは0.1〜100μm2程度であり、更に好ましくは1〜10μm2程度である。この範囲の開孔面積とすることで、電解液の十分な浸透を確保しつつ、活物質の粒子2の脱落を効果的に防止することができる。また充放電の初期段階から充放電容量を高めることができる。活物質の粒子2の脱落を一層効果的に防止する観点から、前記の平均開孔面積は、活物質の粒子2の最大断面積の5〜70%、特に10〜40%であることが好ましい。
第1の面1及び第2の面のうち、平均開孔面積が前記の範囲を満たす面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、観察視野の面積に対する微細空隙5の開孔面積の総和の割合(この割合を開孔率という)は、好ましくは2〜20%であり、更に好ましくは5〜10%である。この理由は微細空隙5の開孔面積を前記の範囲内とすることと同様の理由である。更に同様の理由により、第1の面1及び第2の面のうち、平均開孔面積が前記の範囲を満たす面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、どのような観察視野をとっても、1cm×1cmの正方形の視野範囲内に1〜20000個、特に100〜2000個の微細空隙5が存在していることが好ましい(この値を分布率という)。
電極10における反応は、対極と対向した面を中心に起こるので、微細空隙5は、一対の表面層4,4のうちの少なくとも一方に形成されていれば足りる。しかし、実用的な電池においては、電極の両側にセパレータ及び対極が配置されていることが多い。そのような電池に本実施形態の電極10を適用する場合には、一対の表面層4,4の両方に微細空隙5を形成することが好ましい。一対の表面層4,4のうち一方の表面層にのみ微細空隙が形成されている電極10を用いる場合には、そのような電極10を一組用意し、各電極10,10における微細空隙が形成されていない側の表面層を対向させ重ね合わせて使用することで、一対の表面層4,4の両方に微細空隙5が形成された電極10と同様の効果を得ることができる。
第1の面1及び第2の面間に位置する活物質層3は、活物質の粒子2を含んでいる。本実施形態で用い得る活物質は、二次電池の正極又は負極として用いられるものを広く包含する。その具体例は後述する。活物質層3は2つの表面層4によって被覆されているので、充放電によって活物質が膨張及び/又は収縮することに起因して脱落することが効果的に防止される。活物質の粒子2は微細空隙5を通じて電解液と接することができるので、電極反応が妨げられることもない。
活物質の粒子2はその最大粒径が好ましくは100μm以下であり、更に好ましくは70μm以下である。また粒子2の粒径をD50値で表すと1〜50μm、特に1〜20μmであることが好ましい。最大粒径が100μm超であると、粒子2の脱落が起こりやすくなり、電極の寿命が短くなる場合がある。粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好ましい。粒子2の下限値は0.01μm程度である。本発明においては活物質の粒子2を小粒径化してもその酸化ないし腐食が起こりにくいので、酸化等の起こりやすい物質である水素吸蔵合金を活物質として用いた場合でもこれを小粒径化でき、その結果出力を高めることが容易となる。水素吸蔵合金を活物質として用いた従来の電極では、その粒径が20μm程度であったが、本発明においては例えば5μm程度までに小粒径化したものを用いることが可能である。粒子2の粒径は、レーザー回折散乱法、電子顕微鏡観察によって測定される。
電極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると活物質の脱落が起こりやすくなる傾向にある。これらを勘案すると、活物質の量は電極全体に対して好ましくは10〜90重量%であり、更に好ましくは20〜80重量%、一層好ましくは40〜80重量%である。
活物質層3の厚みは、電極全体に対する活物質の量の割合や活物質の粒径に応じて適宜調節することができ、本実施形態においては特に臨界的なものではない。概ね1〜200μm、特に10〜100μmである。活物質層3は、後述するように、活物質の粒子2を含む導電性スラリーを塗布することによって形成されることが好ましい。
表面層4及び活物質層3を含む電極全体の厚みは、電極の強度やエネルギー密度を高めること考慮すると、1〜500μm、特に1〜250μm、とりわけ10〜150μm程度であることが好ましい。
活物質層3においては、該層中に含まれる粒子間に、導電性材料が浸透していることが好ましい。導電性材料は、活物質層3の厚み方向全域に亘って浸透していることが好ましい。そして浸透した導電性材料中に活物質の粒子が存在していることが好ましい。つまり活物質の粒子は電極10の表面に実質的に露出しておらず表面層4の内部に包埋されていることが好ましい。これによって、活物質層3と表面層4との密着性が強固なものとなり、活物質の脱落が一層防止される。また活物質層3中に浸透した導電性材料を通じて表面層4と活物質との間に電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質が生成すること、特に活物質層3の深部に電気的に孤立した活物質が生成することが効果的に防止され、集電機能が保たれる。その結果、電極としての機能低下が抑えられる。更に電極の長寿命化も図られる。このことは、活物質として半導体であり電子伝導性の乏しい材料、例えばシリコン系材料を用いる場合に特に有利である。このことから明らかなように、本実施形態の電極は、金属発泡体中に活物質粒子を坦持させて、該発泡体の両面に電解めっきを施してなる従来の電極(例えば、先に述べた特許文献2及び3記載の電極)とはその構造が全く相違するものである。
活物質層3中に浸透している導電性材料は、表面層4の構成材料と同様の材料を用いることができ、特に金属材料であることが好ましい。この場合、導電性材料は、表面層4を構成する材料と同種の材料であってもよく、或いは異種の材料であってもよい。例えば、(イ)各表面層4,4との構成材料と、活物質層3中に浸透している導電性材料とが同じでもよい。この場合には、各材料が同一であることから、後述する製造方法が複雑にならないという利点がある。或いは(ロ)少なくとも一方の表面層の構成材料と、活物質層3中に浸透している導電性材料とが異なっていてもよい。更に、(ハ)各表面層4,4との構成材料と、活物質層3中に浸透している導電性材料とが異なっていてもよい。
(ハ)の場合には、各表面層4,4の構成材料は同じでもよく、或いは異なっていてもよい。つまり、(i)各表面層4,4の構成材料は同じで、且つ該構成材料が活物質層3中に浸透している導電性材料と異なる場合、及び(ii)各表面層4,4の構成材料が異なり、且つ各構成材料が何れも活物質層3中に浸透している導電性材料と異なる場合がある。本実施形態の電極が、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池用の負極の場合には、活物質層3中に浸透している導電性材料は、リチウム化合物の形成能の低い材料であることが好ましく、具体的にはCu、Ni、Fe、Co又はこれらの金属の合金などの金属材料が好ましい。
活物質層2中に浸透している導電性材料は、活物質層3をその厚み方向に貫いており、両表面層4とつながっていることが好ましい。それによって2つの表面層4は前記材料を通じて電気的に導通することになり、電極全体としての電子伝導性が一層高くなる。つまり本実施形態の電極10は、電極全体が一体として集電機能を有する。集電用表面層4を構成する材料が活物質層の厚み方向全域に亘って浸透して両表面層どうしがつながっていることは、該材料を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって確認できる。導電性材料を、活物質層中に浸透させるための好ましい方法は後述する。
活物質層3における活物質の粒子2の間は、前述の導電性材料で完全に満たされているのではなく、該粒子間に空隙6が存在していることが好ましい(この空隙は、集電用表面層4に形成された微細空隙5とは異なるものであることに留意すべきである)。この空隙6の存在によって、活物質が充放電によって膨張及び/又は収縮することに起因する応力が緩和される。この観点から、活物質層3における空隙6の割合は1〜30体積%程度、特に3〜9体積%程度であることが好ましい。空隙6の割合は、電子顕微鏡マッピングによって求めることができる。後述するように活物質層3は活物質の粒子2を含む導電性スラリーを塗布し乾燥させることによって形成されることから、活物質層3には自ずと空隙6が形成される。従って空隙6の割合を前記範囲にするためには、例えば活物質の粒子2の粒径、導電性スラリーの組成、スラリーの塗布条件を適切に選択すればよい。またスラリーを塗布乾燥して活物質層3を形成した後、適切な条件下でプレス加工して空隙6の割合を調整してもよい。
活物質としては、電極10を正極として用いるか或いは負極として用いるかでその種類が異なる。正極として用いる場合には、活物質として水酸化ニッケルや水酸化コバルト等を用いることができる。負極として用いる場合には、各種水素吸蔵合金、カドミウム、酸化カドミウム等を用いることができる。電極10をリチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池用の負極として用いる場合には、活物質として、リチウム化合物の形成能の高い元素を用いることができる。そのような元素としては、例えばシリコン系材料、スズ系材料、アルミニウム系材料、ゲルマニウム系材料等が挙げられる。
繰り返し述べた通り、本実施形態の電極10によれば、活物質が充放電によって膨張及び/又は収縮することに起因して脱落することが効果的に防止される。この観点から本実施形態の電極10は、充放電が繰り返し行われる二次電池用の電極として好適である。とりわけ、活物質の膨張収縮が顕著であるニッケル水素(Ni−MH)二次電池用の電極として好適である。特に、ニッケル水素二次電池用の負極として好適である。ニッケル水素二次電池用の負極には、水素の吸脱蔵に起因する膨張収縮が大きい水素吸蔵合金が活物質として用いられているからである。水素吸蔵合金を活物質として用いたニッケル水素二次電池用の負極は高出力、高耐久性、高信頼性であるため、特にハイブリッド電気自動車(HEV)やパワーツール用の電池用に好適に用いられる。
水素吸蔵合金としては、ニッケル水素二次電池用の負極活物質として従来用いられているものと同様のものを用いることができる。例えばCaCu5型の結晶構造を有するAB5型合金、ZrV0.4Ni1.5に代表されるラーベス相構造を有するAB2型合金が挙げられる。またAB型合金やMg2Ni等のA2B型合金等も用いることができる。具体的には例えばLaNi5、MmNi5(Mmはミッシュメタルを表す)、及びMmNi5のNiの一部を、Al、Mn、Co、Ti、Cu、Zn、Zr、Cr、Bから選ばれ、少なくともAl、CoおよびMnを含む元素で置換した多元素系合金などが挙げられる。なかでも、一般式MmNiaMnbAlcCod(式中、Mmはミッシュメタルを表し、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、5.2≦a+b+c+d≦5.5である)で表される低Co水素吸蔵合金が好ましく用いられる。この合金においては、CaCu5型結晶構造の結晶格子のa軸長が499pm以上であり、且つc軸長が405pm以上であることが好ましい。
ニッケル水素二次電池用の負極に加えて、本実施形態の電極10は、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池用の電極としても好適である。特に、非水電解液二次電池用の負極として好適である。ニッケル水素二次電池用の負極と同様に、非水電解液二次電池用の負極にも、充放電に伴う膨張収縮が大きい活物質が用いられているからである。
次に本実施形態の電極の好ましい製造方法を、図2を参照しながら説明する。先ず図2(a)に示すようにキャリア箔11を用意する。キャリア箔11の材質に特に制限はない。キャリア箔11は導電性であることが好ましい。この場合、導電性を有していれば、キャリア箔11は金属製でなくてもよい。しかし金属製のキャリア箔11を用いることで、電極10の製造後にキャリア箔11を溶解・製箔してリサイクルできるという利点がある。リサイクルの容易性を考慮すると、キャリア箔11の材質は、後述する電解めっきによって形成される表面層4の材質と同じであることが好ましい。キャリア箔11は、本実施形態の電極10を製造するための支持体として用いられるものであることから、製造工程においてヨレ等が生じないような強度を有していることが好ましい。従ってキャリア箔11は、その厚みが10〜50μm程度であることが好ましい。先に述べた通り、キャリア箔11の重要な役割は電極10を製造するための支持体である。従って表面層4の強度が十分である場合は必ずしもキャリア箔を用いて電極10を製造することを要しない。
キャリア箔11は例えば電解や圧延で製造することができる。圧延で製造することで、表面粗さの低いキャリア箔11を得ることができる。表面粗さの低いキャリア箔11を用いることによって、後述する剥離層11aを形成しなくてもよくなるというメリットがある。一方キャリア箔11を電解によって製造することで、キャリア箔11の製造から電極10の製造までをインラインで行うことができる。インラインで行うことは、電極10の安定製造及び製造コストの低減の点から有利である。電解によってキャリア箔11を製造する場合には、回転ドラムを陰極として用い、銅やニッケルなどの金属イオンを含む電解浴中で電解を行いドラム周面に金属を析出させる。析出した金属をドラム周面から剥離することでキャリア箔11が得られる。
キャリア箔11の表面粗さが低い場合には、キャリア箔11の表面上に直接活物質層3を形成することができる。また図2(a)に示すように、キャリア箔11の一面に剥離層11aを形成し、その上に活物質層3を形成してもよい。剥離層11aを形成することで、剥離を一層首尾良く行うことができる。また、キャリア箔11に防錆効果を付与できるという利点もある。剥離層11aを形成するか否かにかかわらずキャリア箔11の表面粗さRaは0.01〜3μm、特に0.01〜1μm、とりわけ0.01〜0.2μmであることが好ましい。この程度の低表面粗さであれば、剥離を首尾良く行うことができ、また剥離層11aを形成する場合には、厚みのムラのない剥離層11aを形成することができる。尤も、剥離層11aを形成する場合には、該剥離層11aによってキャリア箔11の表面粗さが減殺されるので、キャリア箔11aの表面粗さRaは前記の範囲よりも大きくても差し支えないこともある。
剥離層11aは、例えばクロムめっき、ニッケルめっき、鉛めっき、クロメート処理等によって形成されることが好ましい。この理由は、これらの処理等によって剥離層11aの表面に酸化物あるいは酸塩の層が形成され、この層は、キャリア箔11と後述する電解めっき層との密着性を低下させ剥離性を向上させる機能を有するからである。また剥離剤として有機化合物を用いることもできる。特に窒素含有化合物又は硫黄含有化合物を用いることが好ましい。窒素含有化合物としては、例えばベンゾトリアゾール(BTA)、カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)、トリルトリアゾール(TTA)、N',N'−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(BTD−U)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(ATA)などのトリアゾール系化合物が好ましく用いられる。硫黄含有化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、チオシアヌル酸(TCA)及び2−ベンズイミダゾールチオール(BIT)などが挙げられる。これらの有機化合物はアルコール、水、酸性溶媒、アルカリ性溶媒などに溶解して用いられる。例えばCBTAを用いた場合、その濃度は2〜5g/1とするのが好ましい。有機化合物からなる剥離層11aの形成には、塗工法の他、浸漬法も採用できる。剥離層11aの厚みは0.05〜3μmであることが、首尾良く剥離を行い得る点から好ましい。剥離層11aが形成された後の該剥離層11aの表面粗さRaは、キャリア箔11上に活物質層3を直接形成する場合と同様に、0.01〜3μm、特に0.01〜1μm、とりわけ0.01〜0.2μmであることが好ましい。
電解によって製造されるキャリア箔11は、その製造方法に起因してその一方の面が平滑な光沢面となっており、他方の面が凹凸のあるマット面となっている。つまり各面の表面粗さが互いに異なっている。光沢面は、電解におけるドラム周面に対向していた面であり、マット面は析出面である。本製造方法においてキャリア箔11に剥離層11aを形成する場合、光沢面及びマット面のどちらに剥離層11aを形成していてもよい。剥離性が良好であることを考慮すると、表面粗さの低い光沢面上に剥離層11aを形成することが好ましい。マット面上に剥離層11aを形成する場合には、例えば特開平9−143785号公報に記載の電解液添加剤を用い電解を行い製造された箔を用いたり、剥離層11aの形成に先立ちマット面をエッチングすればよい。或いは圧延によってマット面の表面粗さを低下させればよい。
次に図2(b)に示すように剥離層11a上に、活物質の粒子を含むスラリーを塗布して活物質層3を形成する。なお剥離層11aを形成しない場合にはキャリア箔11の表面に直接活物質層3を形成する。スラリーは、活物質の粒子、結着剤及び希釈溶媒などを含んでいる。これらの成分のうち、結着剤としてはスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリエチレン(PE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などが用いられる。希釈溶媒としては水、エタノールなどが用いられる。スラリー中における活物質の粒子の量は40〜90重量%程度とすることが好ましい。結着剤の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。また希釈溶媒の量は5〜85重量%程度とすることが好ましい。
剥離層11a上に活物質層3を形成する前に、剥離層11a上に電解めっきを施してもよい。これによって、後述する電解めっきに先立ち、下側の集電用表面層4の極薄前駆体層を予め形成することができる。後述する電解めっきによっても下側の表面層4を首尾良く形成することができるが、それに先立ち剥離層11a上に電解めっきを施して前記前駆体層を形成することで、最終的に得られる一対の集電用表面層4,4の厚みをバランスよくすることができる。剥離層11a上に電解めっきを施して前記前駆体層を形成する条件は、後述する電解めっきの条件と同様にすることができる。この条件を採用することで、形成される前記前駆体層中に、先に述べた微細空隙を容易に形成することができる。
剥離層11a上に前記スラリーを塗布した後、或いは剥離層11a上に予め形成された前記前駆体層上に前記スラリーを塗布した後、スラリーの塗膜を乾燥させて活物質層3を形成する。形成された活物質層3は、粒子間に多数の微小空間を有する。活物質層3が形成されたキャリア箔11を、導電性材料の一種である金属材料を含むめっき浴中に浸漬して電解めっきを行う(以下、この電解めっきを浸透めっきともいう)。めっき浴への浸漬によって、めっき液が活物質層3内の前記微小空間に浸入して、活物質層3と剥離層11aとの界面(或いは活物質層3と前記前駆体層との界面)にまで達する。その状態下に電解めっきが行われる。その結果、(a)活物質層3の内部、(b)活物質層3の外面側(即ちめっき液と接している面側)及び(c)活物質層3の内面側(即ち剥離層11aと対向している面側)において、金属材料が析出して、各表面層4が形成されると共に表面層4を構成する材料が活物質層3の厚み方向全域に亘って浸透して図1に示す構造の電極10が得られる(図2(c)参照)。
浸透めっきの条件の条件は、金属材料を活物質層3中に析出させるために重要である。また、表面層4中に多数の微細空隙5を形成するために重要である。例えば金属材料として例えば銅を用いる場合、硫酸銅系溶液を用いるときには、銅の濃度を30〜100g/l、硫酸の濃度を50〜200g/l、塩素の濃度を30ppm以下とし、液温を30〜80℃、電流密度を1〜100A/dm2とすればよい。ピロ燐酸銅系溶液を用いる場合には、銅の濃度2〜50g/l、ピロ燐酸カリウムの濃度100〜700g/lとし、液温を30〜60℃、pHを8〜12、電流密度を1〜10A/dm2とすればよい。また、ニッケルを電解めっきする場合にはワット浴を用いることができる。ワット浴の組成は例えば硫酸ニッケルが150〜350g/l、塩化ニッケルが20〜70g/l、ホウ酸が10〜50g/lである。ワット浴の浴温は30〜80℃、電解時の電流密度は0.5〜100A/dm2とすることができる。これらの電解条件を適宜調節することで、表面層4を構成する材料が活物質層3の厚み方向全域に亘って浸透して両表面層4が電気的に導通するようになる。更に、表面層4中に、先に述べた多数の微細空隙5が容易に形成される。電流密度が高すぎると、活物質層3の内部での析出が起こらず、活物質層3の表面のみで析出が起こってしまう。
上述の方法においては金属材料を活物質層3中に析出させる操作と、活物質層3の少なくとも一方の表面に、微細空隙5を有する表面層4を形成する操作の2つの操作を同時に行った。この場合には、活物質層3中に析出した金属材料と、少なくとも一方の表面層の構成材料とは同じになる。これらの操作に代えて、2つの操作を別個に行っても良い。即ち、金属材料を活物質層3中に析出させる浸透めっきの操作を行った後に、活物質層3が形成されたキャリア箔11を別のめっき浴に浸漬させて、電解めっきによって活物質層3上に表面層4を形成してもよい。この操作を行うことで、各表面層の構成材料と、活物質層3中に析出した金属材料とを異種のものにすることができる。浸透めっきとは別個に表面層4の形成操作を行う場合、表面層4の形成時における電解めっきの条件は、浸透めっきの条件と同様とすることができる。これによって表面層4に微細空隙を首尾良く形成することができる。
電解めっきによって表面層4に微細空隙5を形成する方法は、後述するプレス加工による微細空隙の形成に比べて外力が加わらない方法なので、表面層4、ひいては電極10が損傷を受けることがないという利点がある。表面層4の形成の際に微細空隙5が形成されるメカニズムは以下の通りであると本発明者らは推測している。即ち、活物質層3は活物質の粒子2を含む層であることから、活物質層3の表面はミクロの凹凸形状となっている。つまりめっきが成長しやすい活性サイトとそうでないサイトとが混在した状態となっている。このような状態の活物質層に電解めっきを行うと、めっきの成長にムラが生じ、表面層4の構成材料の粒子が多結晶状に成長していく。結晶の成長が進み、隣り合う結晶がぶつかるとその部分に空隙が形成される。このようにして形成された空隙が多数連なることによって微細空隙5が形成されると推測される。この方法によれば微細空隙5はその構造が極めて微細になる。
電極10が形成された後に、これをプレス加工して表面層4に微細空隙5を生じさせてもよい。十分な電子伝導性を得る観点から、プレス加工による圧密化は、プレス加工後の活物質層3と表面層4との厚みの総和が、プレス加工前の90%以下、好ましくは80%以下となるように行うことが好ましい。プレス加工には、例えばロールプレス機を用いることができる。プレス加工後の活物質層3には、先に述べた通り1〜30体積%の空隙6が存在していることが好ましい。この空隙6の存在によって、充電時に体積が膨張する場合に、その体積膨張に起因する応力が緩和される。このような空隙6はプレス加工の条件を前述のようにコントロールすればよい。この空隙6の値は、先に述べた通り電子顕微鏡マッピングによって求めることができる。
本製造方法においては、浸透めっきを行うに先立ち、活物質層3をプレス加工してもよい(このプレス加工を、先に述べたプレス加工と区別する意味で前プレス加工と呼ぶ)。前プレス加工を行うことで、活物質層3と、予め形成された表面層4(即ち、先に述べた下側の表面層の極薄前駆体層)との剥離が防止され、また電極10の表面に活物質の粒子2が露出することが防止される。その結果、活物質の粒子2の脱落に起因する電池のサイクル寿命の劣化を防ぐことができる。更に、前プレス加工を行うことで、金属材料の活物質3内への浸透の程度をコントロールできる。具体的には、プレスの程度が大きいと活物質の粒子2間の距離が短くなり、金属材料が活物質3内へ浸透しづらくなる。逆にプレスの程度が小さいと活物質の粒子2間の距離が長くなり、金属材料が活物質3内へ浸透しやすくなる。前プレス加工の条件としては、前プレス加工後の活物質層3の厚みが、前プレス加工前の活物質層3の厚みの95%以下、特に90%以下となるような条件であることが好ましい。
最後に、図2(d)に示すように、剥離層11aの部分において電極10をキャリア箔11から剥離分離する。なお、図2(d)では剥離層11aがキャリア箔11側に残るように描かれているが、実際は剥離層11aはその厚さや剥離処理剤の種類によってキャリア箔11側に残る場合もあれば、電極10側に残る場合もある。或いはこれら双方に残る場合もある。何れの場合であっても、剥離層11aはその厚みが極めて薄いので、得られる電極の性能に何ら影響はない。
本製造方法によれば、活物質層3の形成操作を1回行うだけで、電極の両面を電極反応に用い得る電極10が得られる。従来の電極においては、電極の両面を電極反応に用いるためには、集電用の厚膜導電体の両面にそれぞれ活物質層を形成する必要があった。つまり活物質層の形成操作を2回行う必要があった。従って、本製造方法によれば電極の製造効率が極めて向上する。
また本製造方法によれば、電極10を電池に組み込むまではこれをキャリア箔11から剥離せず、組み込む直前においてキャリア箔11から剥離することで、薄くて皺になりやすい本実施形態の電極10を、ハンドリング性良く搬送することができるという利点もある。
次に本実施形態の電極10の別の好ましい製造方法を、図3を参照しながら説明する。この製造方法に関し特に説明しない点については、先に述べた製造方法の説明が適宜適用される。本製造方法では、先に述べた製造方法と同様に、先ず下側の表面層4を形成し、次いでその上に活物質層3を形成し、更にその上に上側の表面層4を形成するという工程が行われる。先ず図3(a)に示すようにキャリア箔11を用意する。
本製造方法においては、キャリア箔11の表面は、或る程度凹凸形状になっていることが好ましい。圧延箔は、その製造方法に起因して各面が平滑になっている。これに対して電解箔は一面が粗面であり、他面が平滑面になっている。粗面は、電解箔を製造する際の析出面である。そこで、電解箔からなるキャリア箔11における粗面を電析面として利用すれば、別途キャリア箔に粗化処理をする手間が省けるので簡便である。粗面を用いる利点については後述する。かかる粗面を電析面として利用する場合、その表面粗さRa(JIS B 0601)は0.05〜5μm、特に0.2〜0.8μmであることが、所望の径及び存在密度を有する微細空隙を容易に形成し得る点から好ましい。
次にキャリア箔11の一面に剥離剤を施して剥離処理を行う。剥離剤はキャリア箔11における粗面に施すことが好ましい。剥離剤を施す工程は、あくまでも、後述する剥離工程(図3(f))において、キャリア箔11から電極10を首尾良く剥離するために行われるものである。従って、この工程を省いても下側の表面層4に微細空隙を形成することができる。
次に図3(b)に示すように、剥離剤(図示せず)を施した上に、導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜12を形成する。塗工液はキャリア箔11の粗面に塗工されるので、該粗面における凹部に溜まりやすくなる。この状態で溶媒が揮発すると、塗膜12の厚みは不均一になる。つまり粗面の凹部に対応する塗膜の厚みは大きく、凸部に対応する塗膜の厚みは小さくなる。本製造方法においては、塗膜12の厚みの不均一性を利用して、下側の表面層4に多数の微細空隙を形成する。
導電性ポリマーとしては、その種類に特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。電極10がリチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池用の負極である場合には、リチウムイオン伝導性ポリマーを用いることが好ましい。また、導電性ポリマーはフッ素含有の導電性ポリマーであることが好ましい。フッ素含有ポリマーは、熱的及び化学的安定性が高く、機械的強度に優れているからである。これらのことを考慮すると、リチウムイオン伝導性を有するフッ素含有ポリマーであるポリフッ化ビニリデンを用いることが特に好ましい。
導電性ポリマーを含む塗工液は、導電性ポリマーが揮発性の有機溶媒に溶解してなるものである。有機溶媒としては、導電性ポリマーとして例えばポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、N−メチルピロリドンなどを用いることができる。
本製造方法において、下側の表面層4に多数の微細空隙が形成されるメカニズムは次のように考えられる。塗膜12が形成されたキャリア箔11は電解めっき処理に付されて、図3(c)に示すように塗膜12上に下側の表面層4が形成される。この状態を図3(c)の要部拡大図である図4に示す。塗膜12を構成する導電性ポリマーは、金属ほどではないが電子伝導性を有する。従って塗膜12はその厚みに応じて電子伝導性が異なる。その結果、導電性ポリマーを含む塗膜12の上に電解めっきによって金属を析出させると、電子伝導性に応じて電析速度に差が生じ、その電析速度の差によって下側の表面層4に微細空隙5が形成される。つまり、電析速度の小さい部分、換言すれば塗膜12の厚い部分が微細空隙5になりやすい。
キャリア箔11の粗面の表面粗さRaによって微細空隙5の孔径や存在密度をコントロールできることは先に述べた通りであるが、これに加えて塗工液に含まれる導電性ポリマーの濃度によっても微細空隙5の孔径や存在密度をコントロールできる。例えば導電性ポリマーの濃度が薄い場合には孔径は小さくなる傾向にあり、存在密度も小さくなる傾向にある。逆に、導電性ポリマーの濃度が濃い場合には孔径は大きくなる傾向にある。この観点から、塗工液における導電性ポリマーの濃度は0.05〜5重量%、特に1〜3重量%であることが好ましい。なお、導電性ポリマーは、塗工法の他、浸漬法によってもキャリア箔11上に施すことができる。
下側の表面層4を形成するためのめっき浴やめっき条件は、表面層4の構成材料に応じて適切に選択される。表面層4を例えばCuから構成する場合には、めっき浴として以下の組成を有する硫酸銅浴やピロリン酸銅浴を用いることができる。これらのめっき浴を用いる場合の浴温は40〜70℃程度であり、電流密度は0.5〜50A/dm2程度であることが好ましい。
・CuSO4・5H2O 150〜350g/l
・H2SO4 50〜250g/l
多数の微細空隙5が形成された表面層4が形成されたら、その上に活物質の粒子を含む導電性スラリーを塗布して活物質層3を形成する。形成された活物質層3は、粒子間に多数の微小空間を有する。活物質層3が形成されたキャリア箔11を、導電性材料の一種である金属材料を含むめっき浴中に浸漬して電解めっき(浸透めっき)を行う。めっき浴への浸漬によって、めっき液が活物質層3内の前記微小空間に浸入して、活物質層3と下側の表面層4との界面にまで達する。その状態下に電解めっきが行われる。その結果、(a)活物質層3の内部、及び(b)活物質層3の内面側(即ち下側の表面層4と対向している面側)において、金属材料が析出して、該材料が活物質層3の厚み方向全域に亘って浸透する。
次に、活物質層3の上に上側の表面層4を形成する。ところで、活物質層3は、活物質の粒子を含むものであるから、その表面は粗面となっている。従って、上側の表面層4を形成するために、電解箔からなるキャリア箔11の粗面上に下側の表面層4を形成した手段と同様の手段を採用すれば、上側の表面層4にも多数の微細空隙5を形成することができる。即ち、活物質層3の表面に導電性ポリマーを含む塗布液を塗工し乾燥させて塗膜(図示せず)を形成する。次いで、下側の表面層4を形成したときの条件と同様の条件を用い、図3(e)に示すように、該塗膜(図示せず)の上に電解めっきによって上側の表面層4を形成する。
最後に、図3(f)に示すようにキャリア箔11を下側の表面層4から剥離分離する。これによって電極10が得られる。なお、図3(f)においては導電性ポリマーの塗膜12が下側の表面層4側に残るように描かれているが、該塗膜12はその厚さや導電性ポリマーの種類によってキャリア箔11側に残る場合もあれば、下側の表面層4側に残る場合もある。或いはこれら双方に残る場合もある。
次に、本発明の別の実施形態について図5を参照しながら説明する。本実施形態については、図1に示す実施形態と異なる点についてのみ説明し、特に説明しない点については、図1に示す実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図5において、図1と同じ部材に同じ符号を付してある。
図5に示すように本実施形態の電極10'は、厚さ方向の中央部に、導電性箔7を備えている。導電性箔7の各面には活物質層3,3がそれぞれ形成されている。更に各活物質層3,3を被覆する集電用表面層4a,4bがそれぞれ形成されている。導電性箔7は、例えば集電用表面層を構成する材料と同様の材料から構成されている。また、強度を高める観点から、高強度圧延合金箔やステンレス箔などを用いてもよい。
活物質層3,3の少なくとも一方においては、導電性材料が各活物質層3,3の厚み方向全域に亘ってそれぞれ浸透している。活物質の粒子2は電極の表面に露出しておらず各表面層4a,4bの内部に包埋されている。導電性材料は、各活物質層3,3をその厚み方向に貫いており導電性箔7とつながっている。それによって各表面層4a,4bは導電性箔7と電気的に導通することになり、電極全体としての電子伝導性が一層高くなる。つまり本実施形態の電極も図1に示す実施形態の電極と同様に、電極全体が一体として集電機能を有する。
本実施形態における表面層4a,4b及び活物質層3,3の厚みは第1の実施形態と同様とすることができる。導電性箔7の厚みに関しては、電極全体の厚みを抑えてエネルギー密度を高める観点から、5〜40μm、特に10〜20μmであることが好ましい。同様の観点から、電極全体の厚みは5〜600μm、特に10〜450μm、とりわけ10〜250μmであることが好ましい。
本実施形態の電極の製造方法の概略を説明すると次の通りである。先ず導電性箔7の各面に活物質の粒子を含むスラリーを塗布して活物質層をそれぞれ形成する。導電性箔7は予め製造しておいてもよく、或いは本実施形態の電極の製造工程における一工程としてインラインで製造されてもよい。導電性箔7がインラインで製造される場合、電解析出によって製造されることが好ましい。スラリーの塗膜が乾燥して活物質層が形成された後、該活物質層が形成された導電性箔7を、金属材料を含むめっき浴中に浸漬し、その状態下に活物質層上に該金属材料による電解めっきを行い表面層4a,4bを形成する。この方法を用いることで、表面層4a,4bに多数の微細空隙を容易に形成することができる。また、表面層4a,4bを構成する金属材料が活物質層の厚み方向全域に亘って浸透して、両表面層が導電性箔7と電気的に導通する。
別法として、活物質層が形成された導電性箔7を、導電性材料の一種である金属材料を含むめっき浴中に浸漬し、その状態下に電解めっきを行い、金属材料を活物質層中に析出させる。次いで、該金属材料と異なる材料を含むめっき浴中に、活物質層が形成された導電性箔7を浸漬し電解めっきを行う。これによって活物質層上に、多数の微細空隙が形成された表面層を形成する。
図5に示す実施形態の負極10'の変形例として、図6に示す実施形態の負極10"がある。なお図6に示す実施形態に関し、特に説明しない点については図5に示す実施形態に関する説明が適宜適用される。本実施形態の負極10"は、リチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池用の電極として特に有用なものである。負極10"は、厚さ方向の中央部に導電性箔7を備えている。導電性箔7の各面には金属リチウム層8,8が形成されている。各金属リチウム層の各面には活物質層3,3がそれぞれ形成されている。活物質層3は、リチウム化合物の形成能の高い元素を含んでいる。活物質層3,3の上には、該活物質層3,3を被覆する集電用表面層4a,4bがそれぞれ形成されている。つまり、図6に示す負極10"は、導電性箔7の各面に金属リチウム層8を有している点で図5に示す負極10'と異なる。
本実施形態の負極10"によれば、充放電時にリチウムが消費されても、金属リチウム層8からリチウムが溶解して供給される。従って、負極活物質の量(容量)に比較して正極活物質の量(容量)を少なくするような電池設計時に懸念される、いわゆる「リチウム枯渇」の問題が解消される。これによって、初期不可逆容量を少なくすることができ、また各充放電サイクルでの充放電効率(サイクル特性)が向上する。また、充放電開始前に活物質がリチウムを吸蔵しているので、充電時にリチウムを吸蔵することに起因する体積増加を軽減することができる。このことは、サイクル寿命の向上に大きく貢献する。
更に、リチウムが溶解した後の金属リチウム層8には空間が生じ、該空間は、充放電時の活物質の膨張・収縮による応力を緩和するので、それによって活物質の微粉化が抑えられる。その上、活物質の微粉化が進行したとしても、活物質が電極の表面に露出しておらず電極の内部に包埋されているので、活物質の脱落が防止され、また充放電を繰り返しても活物質の集電性が確保される。しかも金属リチウム層は負極の表面に露出しておらず、内部に位置しているので、リチウムのデンドライトが生成することが防止される。
各金属リチウム層8の量は、それに隣接する活物質層3に含まれる活物質の飽和可逆容量に対して0.1〜100%、特に0.1〜70%、とりわけ5〜50%であることが、容量回復特性が良好になることから好ましい。
なお図6に示す電極10"においては、各活物質層3と導電性箔7との間に、金属リチウム層8が介在配置されていたが、金属リチウム層8は、少なくとも一方の活物質層3と導電性箔7との間に介在配置されていればよい。
本実施形態の負極10"の好ましい製造方法は次の通りである。先ず、先に述べた図3(a)〜図3(d)の手順に従い、キャリア箔11の上に導電性ポリマーを含む塗膜12を形成し、その上に表面層4を形成する。表面層4の上に活物質の粒子を含む導電性スラリーを塗布して活物質層3を形成する。次に、活物質層3に対して浸透めっきを行う。このようにして活物質層3までが形成されたキャリア箔11(以下、これを負極前駆体20という)を一対用意する。
負極前駆体20とは別に、図7(a)に示すように、各面に金属リチウム層8が形成された導電性箔7を用意しておく。金属リチウム層8は、導電性箔7の各面に、例えば金属リチウム箔を重ね合わせプレスすることで形成できる。或いは、導電性箔7の各面に化学気相蒸着法やスパッタリング法などの各種薄膜形成手段を施すことによって形成することができる。
次に、図7(b)に示すように、金属リチウム層8が形成された導電性箔7を、一対の負極前駆体20によって挟み込む。挟み込みに際しては、各負極前駆体20における活物質層3どうしが対向し、キャリア箔11が外方を向くようにする。次いで図7(c)に示すように、各キャリア箔11を表面層4から剥離させる。これによって目的とする負極10"が得られる。なお、図7(b)及び図7(c)においては、簡便のため導電性ポリマーを含む塗膜12の図示は省略してある。
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図1に示す実施形態においては、活物質層中に析出した導電性材料が活物質層をその厚み方向に貫いて、両表面層を電気的に導通させていたが、各表面層の集電性を十分に確保できる限度において、両表面層は電気的に導通していなくてもよい。更に、活物質粒子と電解液との反応活性点を増やすために、レーザやポンチ、針等を用いて電極の少なくとも一方の表面において開孔し且つ活物質層の少なくとも一部にまで達する孔、或いは電極の厚さ方向に延びる貫通孔を形成してもよい。
また前記実施形態においては表面層4は単層構造であったが、これに代えて、少なくとも一方の表面層を、材料の異なる2層以上の多層構造にしても良い。例えば表面層4をニッケルからなる下層と銅からなる上層の2層構造とすることで、活物質の体積変化に起因する電極の著しい変形を一層効果的に防止することができる。表面層4が多層構造である場合、各層の構成材料の少なくとも1種を、活物質層3中に浸透している導電性材料と異種の材料とすることができる。或いは各層の構成材料のすべてが、該導電性材料と異種の材料でもよい。
また表面層4の材料と、活物質層3中に浸透している導電性材料とが異なる場合には、活物質層3中に浸透している導電性材料は、活物質層3と表面層4との境界部まで存在していてもよい。或いは、導電性材料は、当該境界部を越えて表面層4の一部を構成していてもよい。逆に、表面層4の構成材料が、当該境界部を越えて活物質層3内に存在していてもよい。
また、活物質層4中に導電性材料を析出させる操作を、異なる2種以上のめっき浴を用いて行うことで、活物質層4中に析出される導電性材料を、異なる2種以上の多層構造とすることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。以下の例中、特に断らない限り「%」は「重量%」を意味する。
〔実施例1〕
(1)活物質粒子の調製
所定の合金組成(MmNi4.45Mn0.45Al0.30Co0.10)となるように、各水素吸蔵合金原料を秤量、混合した。その混合物を坩堝に入れて高周波溶解炉に固定し、1.33×10-2Torr以下まで真空状態にした。次いでアルゴンガス雰囲気中で加熱溶解した後に水冷式銅鋳型に流し込み、1430℃で鋳造を行い合金を得た。この合金を、アルゴンガス雰囲気中で1060℃、3時間の熱処理を行いインゴット上の水素吸蔵合金を得た。得られた水素吸蔵合金(インゴット)を粉砕し篩い分けして、−20μm(20μm以下)、20−53μm、53μm以上に分級した。
(2)活物質スラリーの調製
分級した水素吸蔵合金からなる活物質粒子のうち、20−53μmの粒子を用いて以下の組成のスラリーを調製した。
・活物質粒子 50%
・アセチレンブラック(粒径0.1μm) 8%
・結着剤(スチレンブタジエンラバー) 2%
・希釈溶媒(エタノール) 40%
(3)剥離層の形成
厚さ35μm、表面粗さRa=0.1μmの電解銅箔をキャリア箔として用い、このキャリア箔をクロメート処理して、図2(a)に示すようにクロメート処理層からなる剥離層を形成した。剥離層の厚さは0.5μmであった。
(4)活物質層の形成
図2(b)に示すように剥離層上に活物質スラリーを塗工し乾燥させた後に、0.5t/cmの線圧でロールプレス加工し圧密化させて活物質層を形成した。活物質層の厚さは30μmであった。
(5)集電用表面層の形成
活物質層が形成されたキャリア箔を、以下の組成を有するめっき浴中に浸漬して電解めっきを行った。
・硫酸ニッケル 250g/l
・塩化ニッケル 45g/l
・ホウ酸 30g/l
・浴温 50℃
電流密度を5A/dm2として1180秒の電解めっきを行った後、キャリア箔をめっき浴から引き上げ、図2(c)に示すような一対の集電用表面層を有する負極を得た。キャリア箔と接する側の集電用表面層の厚さは1μmであり、キャリア箔と接しない側の集電用表面層の厚さは14μmであった。
(6)キャリア箔の剥離
作製した負極を、図2(d)に示すように、剥離層の部分においてキャリア箔から剥離した。これによって図1に示す構造の負極を得た。
〔実施例2〕
実施例1における、「(1)活物質粒子の調製」において分級した水素吸蔵合金からなる活物質粒子のうち、−20μmの粒子を用いる以外は実施例1と同様にして図1に示す構造の負極を得た。得られた負極の断面構造の電子顕微鏡写真を図8に示す。また、キャリア箔と接する側の集電用表面層の表面状態の電子顕微鏡写真を図9に示す。なお、図8に示す写真では、キャリア箔と接する側の集電用表面層が明瞭ではないが、図9に示す写真から明らかなように、キャリア箔と接する側にも集電用表面層が形成されており、該集電用表面層に微細空隙が形成されていることが確認された。また該集電用表面層によって活物質層が被覆されており、活物質の粒子は表面に露出していないことも確認された。
〔実施例3〕
めっき時間を1180秒から413秒に短縮した以外は実施例2と同様にして図1に示す構造の負極を得た。得られた負極の断面構造の電子顕微鏡写真を図10に示す。なお図には示していないが、負極におけるキャリア箔と接する側の表面状態を電子顕微鏡で観察したところ、集電用表面層が形成されており、該集電用表面層に微細空隙が形成されていることが確認された。また該集電用表面層によって活物質層が被覆されており、活物質の粒子は表面に露出していないことも確認された。
〔比較例1〕
厚さ100μmのステンレス製のパンチングメタルの表側に、実施例1で用いたスラリーと同様のスラリーを塗工し乾燥させた後に、0.5t/cmの線圧でロールプレス加工し圧密化させて厚さ150μmの活物質層をそれぞれ形成した。このようにして負極を得た。
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた負極を用いて以下の通り水溶液系電解液二次電池を作製した。この電池について、以下の方法で、最大容量が得られたサイクルにおける体積あたり容量密度(以下、体積当たり最大容量密度という)、200サイクル時の容量維持率、出力特性を測定した。これらの結果を以下の表1に示す。
〔水溶液系電解液二次電池の作製〕
対極として焼結式水酸化ニッケルを用い、また作用極として前記で得られた負極を用い、両極をセパレーターを介して対向させた。更に電解液として比重1.30のKOH水溶液を用いて水溶液系電解液二次電池を得た。
〔体積あたり最大容量密度〕
最大容積が得られたサイクル数における、負極体積あたりの放電容量を求めた。単位はmAh/cm3である。なお体積あたり最大容量密度という場合、一般には活物質の体積又は活物質層の体積あたりの放電容量を表示する場合が多い。しかし本実施例では、本発明の集電体が厚膜集電体を用いなくてもよいことの優位性を明らかにするために、負極の体積あたりの放電容量を示した。
〔200サイクル容量維持率〕
200サイクル容量維持率(%)は200サイクル目の放電容量を最大放電容量で除し、更に100を乗じて算出した。
〔出力特性〕
21サイクル目の容量を測定後、0.2C×6時間充電し、引き続き0.2C×2.5時間放電し、30分間静置した。その後、2C放電させたときの10秒後の電圧値を出力特性とした。比較例1の電極を負極として用いた電池の電圧値を100とし、他の電池の電圧値を相対表示した。この値が高い方が、出力特性が良好であることを意味する。なお2C放電とは、30分間で全容量を放電できる電流値による放電を意味する。
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の負極を備える二次電池は、比較例1の負極を備える電池に比較して、体積あたり最大容量密度、200サイクル容量維持率及び出力の何れもが高いことが判る。
〔実施例4〕
図3に示す方法に従い電極を製造した。先ず、電解によって得られた銅製のキャリア箔(厚さ35μm)を室温で30秒間酸洗浄した。引き続き室温で30秒間純水洗浄した。次いで、40℃に保った状態の3.5g/lのCBTA溶液中に、キャリア箔を30秒間浸漬した。これにより剥離処理を行った。剥離処理後、溶液から引き上げて15秒間純水洗浄した。
キャリア箔の粗面(表面粗さRa=0.5μm)に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解した濃度2.5重量%の塗工液を塗布した。溶媒が揮発して塗膜が形成された後、H2SO4/CuSO4系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。これによって銅からなる表面層を塗膜上に形成した。めっき浴の組成は、CuSO4が250g/l、H2SO4が70g/lであった。電流密度は5A/dm2とした。表面層は5μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
次に、表面層上に活物質の粒子を含むスラリーを膜厚18μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質粒子はSiからなり、平均粒径はD50=2μmであった。スラリーの組成は、活物質:アセチレンブラック:スチレンブタジエンラバー=93:2:5であった。
活物質層が形成されたにキャリア箔を、以下の浴組成を有するワット浴に浸漬させ、電解により、活物質層に対してニッケルの浸透めっきを行った。電流密度は5A/dm2、浴温は50℃、pHは5であった。陽極にはニッケル電極を用いた。電源は直流電源を用いた。この浸透めっきは、めっき面から一部の活物質粒子が露出する程度に行った。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
・NiSO4・6H2O 250g/l
・NiCl2・6H2O 45g/l
・H3BO3 30g/l
次に、活物質層の表面に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解した濃度2.5重量%の塗工液を塗布した。溶媒が揮発して塗膜が形成された後、Cu系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。めっき浴の組成は、H3PO4が200g/l、Cu3(PO42・3H2Oが200g/lであった。また、めっきの条件は、電流密度5A/dm2、浴温度40℃であった。これによって銅からなる表面層を塗膜上に形成した。表面層は2〜3μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
最後に、下側の表面層とキャリア箔とを剥離して、一対の表面層間に活物質層が挟持されてなる非水電解液二次電池用負極を得た。得られた負極の断面構造の電子顕微鏡写真を図11に示す。電子顕微鏡による表面層の観察の結果、上側の表面層には、1cm×1cmの正方形の範囲内に平均して50個の微細孔が存在していることを確認した。下側の表面層については平均して30個の微細孔が存在していることを確認した。
〔実施例5〕
実施例4における下側の表面層の形成において、微細孔を有し且つ銅からなる厚さ8μmの第1の表面層を電解めっきにより形成した。めっき浴の組成及びめっき条件は実施例4と同様とした。次いでその上に、以下の組成を有するワット浴を用いて、微細孔を有し且つニッケルからなる厚さ2μmの第2の表面層を形成した。電流密度は5A/dm2、浴温は50℃、pHは5であった。このようにして形成された下側の表面層は、銅からなる厚さ8μmの第1の表面層とニッケルからなる厚さ2μmの第2の表面層との2層構造であった。
また、実施例4における上側の表面層の形成において、微細孔を有し且つニッケルからなる厚さ2μmの第2の表面層を電解めっきにより形成し、次いでその上に、微細孔を有し且つ銅からなる厚さ8μmの第1の表面層を電解めっきにより形成した。第1及び第2の表面層の形成に用いためっき浴の組成及びめっき条件は、下側の表面層の形成と同様とした。このようにして形成された上側の表面層は、活物質層に隣接する厚さ2μmのニッケルからなる第2の表面層と、第2の表面層に隣接する厚さ8μmの銅からなる第1の表面層との2層構造であった。
〔比較例2〕
電解によって得られた銅箔(厚さ35μm)の各面に、実施例4で用いたスラリーと同様のスラリーを用い、これを膜厚15μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質層が形成された銅箔を、Cu系のめっき浴に浸漬させて電解めっきを行った。めっき浴の組成及びめっき条件は、実施例4と同様とした。これによって活物質層の表面に厚さ0.05μmの銅の薄層を形成した。このようにして非水電解液二次電池用負極を得た。走査型電子顕微鏡観察の結果、銅の薄層は、活物質の表面を連続して被覆するものではなく、島状に分布していた。また微細孔と言える孔は存在していなかった。
〔性能評価〕
実施例4及び5並びに比較例2にて得られた負極を用い、以下の方法で非水電解液二次電池を作製した。この電池の最大負極放電容量及び50サイクル時の容量維持率を以下の方法で測定、算出した。これらの結果を以下の表2に示す。
〔非水電解液二次電池の作製〕
実施例4及び5並びに比較例2で得られた負極を作用極とし、対極としてLiCoO2を用い、両極をセパレーターを介して対向させた。非水電解液としてLiPF6/エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合液(1:1容量比)を用いて通常の方法によって非水電解液二次電池を作製した。
〔最大負極放電容量〕
最大容量が得られたサイクルにおける、活物質重量当たりの放電容量を測定した。単位はmAh/gである。また、最大容量が得られたサイクルにおける、負極体積当たりの放電容量も測定した。単位はmAh/cm3である。
〔50サイクル時の容量維持率〕
50サイクル目の放電容量を測定し、その値を最大負極放電容量で除し、100を乗じて算出した。
表2に示す結果から明らかなように、実施例4及び5の負極を用いた電池は、比較例2の負極を用いた電池に比較して、最大負極放電容量及び50サイクル時の容量維持率の何れもが優れていることが判る。
図1は、本発明の電極の一実施形態の要部を拡大して示す模式図である。 図2(a)〜図2(d)は、図1に示す電極の製造方法の一例を示す工程図である。 図3(a)〜図3(f)は、図1に示す電極の製造方法の別の例を示す工程図である。 表面層及び微細空隙が形成される状態を示す模式図である。 図5は、本発明の電極の別の実施形態の要部を拡大して示す模式図である。 図6は、図5に示す実施形態の電極の変形例を示す模式図である。 図7(a)〜図7(c)は、図6に示す電極の製造方法の一例を示す工程図である。 図8は、実施例2で得られた負極の断面の構造を示す電子顕微鏡写真である。 図9は、実施例2で得られた負極における、キャリア箔と接する側の集電用表面層の表面状態を示す電子顕微鏡写真である。 図10は、実施例3で得られた負極の断面の構造を示す電子顕微鏡写真である。 図11は、実施例4で得られた負極の断面の構造を示す電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1 第1の面
2 活物質の粒子
3 活物質層
4 集電用表面層
5 微細空隙
6 空隙
7 導電性箔
10 電極
11 キャリア箔
11a 剥離層

Claims (4)

  1. 電解液と接し且つ導電性を有する表裏一対の面を含む集電用表面層と、前記集電用表面層間に位置し、かつ活物質の粒子を含む活物質層とを備え、前記活物質層中に含まれる粒子間に導電性材料が浸透しており、
    前記導電性材料は、リチウム化合物の形成能の低い材料からなり、前記活物質層の厚み方向全域に亘って浸透していることを特徴とする非水電解液二次電池用極。
  2. 前記活物質が、リチウム化合物の形成能の高い元素を含むものである請求項1記載の非水電解液二次電池用負極。
  3. 導電性箔を更に備え、該導電性箔の各面に前記活物質層がそれぞれ形成されている請求項1又は2に記載の非水電解液二次電池用負極。
  4. 請求項1に記載の負極を備えることを特徴とする非水電解液二次電池。
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