JP7139273B2 - 固体酸化物形燃料電池用アノード - Google Patents
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Description
しかし、SOFC普及に向けて、作動温度(現状の作動温度:750℃)の低温化が鍵となっている。低温化(例えば、600℃)によって、(1)セルの耐久性向上(化学安定性)、(2)安価な筐体(安価なステンレス鋼)の使用、(3)起動停止時間の短縮、が可能となる。
さらに、非特許文献3には、SOFCのアノードではないが、メタンを二酸化炭素と共に改質するための触媒として、Ni(15wt%)-MgO(10wt%)-Ce0~1Zr1~0O2-δが開示されている。同文献には、Ni-MgO-Ce0.8Zr0.2O2-δが最も好ましい点が記載されている。
(1)前記固体酸化物形燃料電池用アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の電解質層側表面に形成された活性層と
を備えている。
(2)前記拡散層は、
Ni粒子(A)と、
固体酸化物からなる電解質粒子(A)と
を含むサーメット(A)からなる。
(3)前記活性層は、
Ni粒子(B)と、
Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)と
を含むサーメット(B)からなる。
[1. 固体酸化物形燃料電池用アノード]
本発明に係る固体酸化物形燃料電池用アノード(以下、単に「アノード」ともいう)は、以下の構成を備えている。
(1)前記アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の電解質層側表面に形成された活性層と
を備えている。
(2)前記拡散層は、
Ni粒子(A)と、
固体酸化物からなる電解質粒子(A)と
を含むサーメット(A)からなる。
(3)前記活性層は、
Ni粒子(B)と、
Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)と
を含むサーメット(B)からなる。
本発明において、拡散層は、Ni粒子(A)と、固体酸化物からなる電解質粒子(A)とを含むサーメット(A)からなる。拡散層は、活性層を支持するためのものである。拡散層と活性層との積層体からなるアノードにおいて、電極反応は、主として活性層内で生じる。そのため、拡散層は、必ずしも高いイオン伝導度を有している必要はない。
(a)その電解質層側表面に形成される活性層を支持するための機能、
(b)燃料ガスを活性層まで拡散させる機能、
(c)電極反応により活性層で放出された電子を集電体まで輸送する機能、及び、
(d)電極反応により活性層で生成した水蒸気をアノード外に排出する機能
を備えている必要がある。
拡散層の組成は、このような機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。
Ni粒子(A)の含有量は、拡散層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。また、拡散層に含まれるNi粒子(A)の含有量は、活性層に含まれるNi粒子(B)の含有量と同一であっても良く、あるいは、異なっていても良い。Ni粒子(A)の含有量は、通常、30~70wt%である。
電解質粒子(A)の組成は、拡散層としての機能を奏する限りにおいて、特に限定されない。電解質粒子(A)は、活性層に含まれる電解質粒子(B)と同一の組成を有するものでも良く、あるいは、異なる組成を有するものでも良い。
電解質粒子(A)としては、例えば、
(a)3~15mol%のY2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、
(b)電解質粒子(B)と同一又は類似の組成を持つ材料、
などがある。
これらの中でも、電解質粒子(A)は、YSZが好適である。これは、機械的強度が安定しているためである。
拡散層の気孔率は、アノードのガス拡散性、強度、電子伝導性などに影響を与える。一般に、拡散層の気孔率が小さすぎると、ガス拡散性が低下する。従って、拡散層の気孔率は、40%以上が好ましい。気孔率は、好ましくは、45%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
一方、拡散層の気孔率が大きくなりすぎると、強度及び電子伝導性が低下する。従って、拡散層の気孔率は、60%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、58%以下、さらに好ましくは、55%以下である。
活性層は、電極反応の反応場となる部分である。本発明において、活性層は、Ni粒子(B)と、Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)とを含むサーメット(B)からなる。
Ni粒子(B)は、活性層中において、電極触媒及び電子伝導体として機能する。そのため、Ni粒子(B)の含有量が少なくなりすぎると、セル全抵抗が高くなり、発電出力も低下する。従って、Ni粒子(B)の含有量は、30.0wt%以上が好ましい。Ni粒子(B)の含有量は、好ましくは、35wt%超、さらに好ましくは、40wt%以上である。
[A. 酸素吸蔵・放出能]
電解質粒子(B)は、Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる。CeO2は、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用がある。一方、Y2O3は、ZrO2内、又は、CeO2-ZrO2固溶体(以下、「CZ」ともいう)内に酸素イオン空孔を導入し、ZrO2又はCZのイオン伝導度を向上させる作用がある。そのため、適量のY2O3及びCeO2を含むYCZを電解質粒子(B)として用いると、高い発電性能と高い耐久性とを兼ね備えた活性層が得られる。
CeO2-x-ZrO2+(x/2)O2 ⇔ CeO2-ZrO2 …(1)
ZrO2中に固溶しているCeイオンは、周囲の雰囲気中の酸素分圧に応じて、可逆的に3価の状態(還元状態)と、4価の状態(酸化状態)とを取ることができる。そのため、CZが酸化雰囲気に曝される時には、CZは雰囲気中にある酸素イオンを結晶格子内に取り込む(図1の下図参照)。一方、CZが還元雰囲気に曝される時には、CZは結晶格子内にある酸素イオンを雰囲気中に放出する。この点は、YCZも同様である。
電解質粒子(B)は、特に、次の式(2)で表される組成を有するものが好ましい。
YxCeyZr1-x-yO2-δ …(2)
但し、
0<x≦0.30、
0<y≦0.20、
δは、電気的中性が保たれる値。
式(2)中、xは、電解質粒子(B)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するYのモル数の比を表す。Yは、上述したように、ZrO2のイオン伝導度を向上させる作用がある。そのため、xが小さくなりすぎると、活性層のイオン伝導度が低下する。従って、xは、0超が好ましい。xは、好ましくは、0.03以上、好ましくは、0.05以上、さらに好ましくは、0.07以上である。
式(2)中、yは、電解質粒子(B)に含まれるY、Ce及びZrの総モル数に対するCeのモル数の比を表す。Ceは、上述したように、ZrO2に酸素吸蔵・放出能を付与する作用がある。そのため、yが小さくなりすぎると、活性層の耐酸化性が低下する。従って、yは、0超が好ましい。yは、好ましくは、0.001以上、さらに好ましくは、0.02以上である。
[参考文献1]J. Phys. Chem. B 1997, 101, 1750-1753
δは、電気的中性が保たれる値を表す。Zrは4価であるのに対し、Yは3価である。また、Ceは、ZrO2中において、4価又は3価を取る。そのため、ZrO2にY及びCeを固溶させると、電気的中性が保たれるように、所定量の酸素空孔が導入される。
「Ce/Zr比」とは、電解質粒子(B)に含まれるZrの平均モル濃度に対するCeの平均モル濃度の比をいう。
Ce/Zr比が大きくなるほど、活性層の耐久性が向上する。このような効果を得るためには、Ce/Zr比は、0.001以上が好ましい。Ce/Zr比は、好ましくは、0.002以上である。
活性層の気孔率は、発電特性に影響を与える。活性層の気孔率が小さすぎると、反応生成物である水蒸気の排出特性が低下する。従って、活性層の気孔率は、20%以上が好ましい。気孔率は、好ましくは、22%以上、さらに好ましくは、25%以上である。
一方、活性層の気孔率が大きくなりすぎると、三相界面が相対的に少なくなり、かえって発電特性が低下する。従って、活性層の気孔率は、40%以下が好ましい。気孔率は、好ましくは、35%以下、さらに好ましくは、30%以下である。
[1.3.1. Ni酸化率]
「Ni酸化率(%)」とは、
(a)セル温度:700℃の条件下において、アノードには加湿した4%H2/N2ガスを、カソードには空気をそれぞれ供給して、所定時間発電を行い、
(b)その後、アノードガスを2%O2/N2ガス希釈に切り換えて45分経過した時に、Ni K-edgeにおける蛍光XAFS測定を行い、
(c)3つの測定点(Ni K-edge吸収端前(8312.2eV)、ピークトップ(8347.9eV)、並びに、Ni、NiOの等吸収点(8384.0eV))について、、ピーク強度の規格化を行い、NiO、Niのリファレンスとの比較からアノードNiの平均価数を算出することにより得られる値
をいう。
本発明に係るアノードは、電解質粒子(B)としてYCZを用いた活性層を備えているので、従来のアノードに比べて耐酸化性が高い。本発明に係るアノードの組成を最適化すると、アノードのNi酸化率は、従来のアノード(Ni/8YSZからなる活性層を備えたアノード)のNi酸化率の1/3以下となる。具体的には、アノードの組成を最適化すると、Ni酸化率は、30%以下となる。アノードの組成をさらに最適化すると、Ni酸化率は、15%以下となる。
「発電出力(W/cm2)」とは、本発明に係るアノードを用いてSOFCを作製し、燃料として100%の水素を200cc/minで供給し、酸化剤として空気を500cc/minで供給し、セル電圧:0.8Vで発電を行った時の、単位面積当たりの出力をいう。
本発明に係るアノードは、電解質粒子(B)としてYCZを用いた活性層を備えているので、これを用いたSOFCは、従来のアノードを用いたSOFCと同等以上の発電出力を示す。具体的には、アノードの組成を最適化すると、発電出力は、1W/cm2以上となる。アノードの組成をさらに最適化すると、発電出力は、1.05W/cm2以上、あるいは、1.10W/cm2以上となる。
「セル全抵抗(Ω)」とは、インピーダンス振幅:100mV、周波数範囲:0.3MHz~0.1Hzの条件下でインピーダンス測定することにより得られる抵抗値をいう。
電池の内部抵抗は、一般に、構成素材の抵抗成分(オーミック抵抗)と、化学反応(電極反応)の速度限界による抵抗成分(反応抵抗)とが存在する。本発明において、「セル全抵抗」とは、オーミック抵抗と反応抵抗の和をいう。
YCZを活性層に用いることによって、酸素吸蔵作用を示し、かつ、酸素拡散性も向上する。酸素吸蔵作用により、Ni酸化に対する抵抗が向上し、電子伝導性の低下が抑制される。その結果、オーミック抵抗が低下する。
また、酸素拡散性が向上することによって、電極反応の反応効率が向上する。その結果、反応抵抗が低下する。
同様に、アノードの組成を最適化すると、オーミック抵抗は、0.1Ω以下となる。
さらに、アノードの組成を最適化すると、反応抵抗は、0.11Ω以下となる。アノードの組成をさらに最適化すると、反応抵抗は、0.1Ω以下となる。
「耐久時間」とは、セル温度:700℃、電流密度:1.5A/cm2、燃料:4%H2/N2ガス、酸化剤:空気の発電条件下で連続運転を行った時に、セル電圧が0.5Vを下回るまでの時間をいう。
本発明に係るアノードは、電解質粒子(B)としてYCZを用いた活性層を備えているので、これを用いたSOFCは、従来のアノードを用いたSOFCに比べて、耐久時間が長い。具体的には、アノードの組成を最適化すると、耐久時間は、50hr以上となる。アノードの組成をさらに最適化すると、耐久時間は、80hr以上、あるいは、100hr以上となる。
本発明に係る固体酸化物形燃料電池用アノードは、
(a)NiO粉末、及び、電解質粒子(A)の原料を含む原料混合物(A)を用いて拡散層成形体を作製し、
(b)拡散層成形体の表面に、NiO粉末、及び、電解質粒子(B)の原料を含む原料混合物(B)を用いて活性層成形体を形成し、
(c)得られた積層体を焼結し、
(d)得られた焼結体を還元処理する
ことにより製造することができる。
まず、NiO粉末、及び、電解質粒子(A)の原料を含む原料混合物(A)を用いて拡散層成形体を作製する(拡散層成形体作製工程)。
例えば、電解質粒子(A)がYSZである場合、その原料としては、
(a)目的とする組成を有するYSZ粉末、
(b)目的とする組成となるように配合されたZrO2粉末と、Y2O3粉末との混合物
などがある。
(a)原料混合物(A)を含むスラリーをテープ成形し、得られたグリーンシートを複数枚積層し、積層体を静水圧プレスして圧着させる方法、
(b)原料混合物(A)を金型でプレス成形する方法、
などがある。
次に、拡散層成形体の表面に、NiO粉末、及び、電解質粒子(B)の原料を含む原料混合物(B)を用いて活性層成形体を形成する(活性層成形体作製工程)。
(a)目的とする組成を有するYCZ粉末、
(b)目的とする組成となるように配合されたYSZ粉末と、CeO2粉末及び/又はCZ粉末との混合物
(c)目的とする組成となるように配合されたZrO2粉末と、Y2O3粉末と、CeO2粉末との混合物
などがある。
(a)原料混合物(B)を含むスラリーをテープ成形し、得られたグリーンシートを拡散層成形体の上に積層し、積層体を静水圧プレスして圧着させる方法、
(b)原料混合物(B)を含むスラリーを作製し、拡散層成形体の表面にスラリーをスクリーン印刷する方法、
などがある。
次に、得られた積層体を焼結させる(焼結工程)。焼結条件は、原料組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。焼結は、通常、大気雰囲気下において、1000℃~1500℃で1時間~5時間行うのが好ましい。
原料混合物中に2種以上の酸化物が含まれている場合、焼結中に固相反応が進行し、所定の組成を有する固溶体が生成する。また、原料混合物中に造孔材が含まれている場合、焼結時に造孔材が消失し、焼結体内に気孔が形成される。
次に、得られた焼結体を還元処理する(還元工程)。これにより、本発明に係るアノードが得られる。還元処理は、焼結体中に含まれるNiO粒子をNi粒子に還元するために行われる。還元条件は、特に限定されるものではなく、アノード、電解質層、及びカソードの組成に応じて最適な条件を選択するのが好ましい。
なお、固体酸化物形燃料電池は、後述するように、アノード/電解質層/反応防止層/カソードの接合体からなる。アノードの還元は、通常、各層を接合した後に行われる。
図1に、YCZをアノードの活性層に用いた固体酸化物形燃料電池の模式図を示す。
図1において、固体酸化物形燃料電池(SOFC)10は、
電解質12と、
電解質12の一方の面に接合されたアノード14と、
電解質12の他方の面に接合されたカソード16と、
電解質12とカソード16との間に挿入された反応防止層18と
を備えている。
例えば、電解質12には、YSZなどを用いることができる。また、カソード16には、(La,Sr)CoO3(LSC)、(La,Sr)(Co,Fe)O3(LSCF)などを用いることができる。
反応防止層18は、電解質12とカソード16とが直接、接触することにより生じる反応を防止するための層であり、必要に応じて挿入される。例えば、電解質12がYSZであり、カソード16がLSCである場合、反応防止層18には、Gd添加CeO2(GDC)を用いるのが好ましい。
図2に、Ni-YSZサーメットを用いた従来のアノードの模式図を示す。アノードがNi-YSZサーメットからなるSOFCにおいて、アノードにH2ガスを供給し、カソードに空気を供給すると、カソード側からアノード側に向かってO2-が拡散する。その結果、アノード表面において次の式(3)の反応が進行する。
H2+O2- → H2O+2e- …(3)
[1. コインセルの作製]
[1.1. 拡散層成形体の作製]
電解質粒子(A)の原料には、8mol%のY2O3を含むYSZ粉末(以下、「8YSZ粉末」ともいう)を用いた。Ni源には、NiO粉末を用いた。8YSZ:Ni=50:50(重量比)となるように、8YSZ粉末及びNiO粉末を配合し、混合粉末に溶媒及びバインダーを加えてスラリーを作製した。このスラリーを用いてテープ成形を行い、グリーンシート(拡散層成形体)を得た。
Y源及びZr源には、8YSZ粉末を用いた。Ce源には、CZ粉末又はCeO2粉末を用いた。CZ粉末には、5~50mol%のCeO2を含むものを用いた。さらに、Ni源には、NiO粉末を用いた。
8YSZ粉末、Ce源(CZ粉末又はCeO2粉末)、及びNiO粉末を所定の比率で配合し、混合粉末に溶媒及びバインダーを加えてスラリーを得た。このスラリーを用いてテープ成形を行い、グリーンシート(活性層成形体)を得た。
8YSZ粉末に溶媒及びバインダーを加えてスラリーを得た。このスラリーを用いてテープ成形を行い、グリーンシート(電解質層成形体)を得た。
GDC粉末に溶媒及びバインダーを加えてスラリーを得た。このスラリーを用いてテープ成形を行い、グリーンシート(反応防止層成形体)を得た。
所定枚数の拡散層成形体を重ね合わせた。次いで、その上に、さらに、活性層成形体、電解質層成形体、及び反応防止層成形体をこの順で重ね合わせた。得られた積層体を静水圧プレス成形した。さらに、得られた成形体を1400℃で焼成した。
LSC粉末に溶媒及びバインダーを加えてスラリーを得た。このスラリーを反応防止層の表面に塗布した。さらに、塗膜を1000℃で焼成し、カソードを形成した。カソード面積は、0.5cm2とした。
[2.1. セル全抵抗]
インピーダンス振幅:100mV、周波数範囲:0.3MHz~0.1Hzの条件下で、コインセルのインピーダンスを測定した。得られたインピーダンスから、セル全抵抗(Ω)を算出した。さらに、セル全抵抗(Ω)から、オーミック抵抗(Ω)と反応抵抗(Ω)とを算出した。
コインセルのアノード及びカソードに、それぞれ、燃料及び酸化剤を供給し、発電を行った。燃料には、100%水素を用い、水素流量は200cc/minとした。酸化剤には、空気を用い、空気流量は500cc/minとした。セル電圧:0.8Vの時の電流値から、発電出力を算出した。
セル温度:700℃の条件下において、アノードには加湿した4%H2/N2ガスを100cc/minで、カソードには空気をそれぞれ供給して、所定時間発電を行った。所定時間経過後、アノードに2%O2/N2を100cc/minで供給した。アノードガスを切り換えた後、45分経過したところで、Ni K-edgeにおける蛍光XAFS測定を行った。検出器には4素子SDDを用い、3点法により時分割測定とした(~8s/spectrum)。測定点は、
(a)Ni K-edgeの吸収端前(8312.2eV)、
(b)ピークトップ(8347.9eV)、及び、
(c)ピークトップ以降のNi、NiOの等吸収点(8384.0)
とした。さらに、ピーク強度の規格化を行い、NiO、Niのレファレンスとの比較から、Niの平均価数を算出した。
コインセルのアノード及びカソードに、それぞれ、燃料及び酸化剤を供給し、発電を行った。燃料には、4%H2/N2ガスを用いた。酸化剤には、空気を用いた。発電条件は、温度:700℃、電流密度:1.5A/cm2とした。この条件下で発電を行い、セル電圧が0.5Vを下回った時間を耐久時間として評価した。
コインセルの断面のTEM観察を行った。また、EDXを用いて線分析及び面分析を行った。
[3.1. セル全抵抗及び発電出力]
表1に、セル全抵抗(Ω)及び発電出力(W/cm2)を示す。なお、表1には、各試料の活性層の原料配合量も併せて示した。さらに、図3に、各種アノードを備えたSOFCのセル全抵抗(Ω)を示す。表1及び図3より、以下のことが分かる。
YCZを含むアノードにおいて、比較例1と同等以上の性能を得るためには、YCZ中のCeのモル比は、0.001以上0.2以下が好ましい。
YCZを含むアノードにおいて、比較例1と同等以上の性能を得るためには、YCZ中のCe/Zr比は、0.001以上0.2以下が好ましい。
また、実施例1、2、5、10の反応抵抗は、いずれも、比較例1の反応抵抗より小さい。これは、YCZにより酸素イオンの拡散性が向上し、電極特性が向上したためと考えられる。
(4)Ce源として、CZ粉末又はCeO2粉末のいずれを用いた場合であっても、アノード組成を最適化することにより、比較例1と同等以上の性能が得られた。
図4に、比較例1及び実施例5で得られたコインセルのNi酸化率を示す。高出力を想定した高電流領域において、YCZを含むアノードのNi酸化率は、YSZを含むアノードのNi酸化率の約1/3に抑えることができた。その結果、発電出力を上げることができた。これは、YCZがH2O中の酸素イオンをトラップするためと考えられる。
図5に、比較例1で得られたアノードと実施例5で得られたアノードの耐久時間を示す。図5より、実施例5のアノードの耐久時間は、比較例1のそれの約6倍となることが分かる。
[3.4.1. 線分析]
図6(A)に、Ni-YCZからなる活性層(実施例5)の低倍率TEM像を示す。図6(B)に、その高倍率TEM像を示す。さらに、図7に、図6(B)に示す線に沿って行われた線分析結果を示す。図6及び図7より、YCZ粒子内において、Y、Ce、及びZrの分布が均一であることが分かる。
図8に、Ni-YCZからなる活性層(実施例5)のTEM像(左上図)、並びに、O(中上図)、Ni(右上図)、Y(左下図)、Zr(中下図)、及びCe(右下図)の元素マップを示す。図8より、Y、Ce、及びZrが均一に分布していることが分かる。
Claims (8)
- 以下の構成を備えた固体酸化物形燃料電池用アノード。
(1)前記固体酸化物形燃料電池用アノードは、
拡散層と、
前記拡散層の電解質層側表面に形成された活性層と
を備えている。
(2)前記拡散層は、
Ni粒子(A)と、
固体酸化物からなる電解質粒子(A)と
を含むサーメット(A)からなる。
(3)前記活性層は、
Ni粒子(B)と、
Y2O3、CeO2及びZrO2の複合酸化物(YCZ)からなる電解質粒子(B)と
を含むサーメット(B)からなる。
(4)前記活性層は、前記Ni粒子(B)の含有量が30.0wt%以上70.0wt%以下である。 - 前記電解質粒子(B)は、次の式(2)で表される組成を有する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
YxCeyZr1-x-yO2-δ …(2)
但し、
0<x≦0.30、
0<y≦0.20、
δは、電気的中性が保たれる値。 - 前記電解質粒子(B)は、Zrに対するCeの平均モル濃度比(Ce/Zr比)が0.001以上0.2以下である請求項1又は2に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- 前記アノードのNi酸化率は、30%以下である請求項1から3までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- 発電出力が1.0W/cm2以上である請求項1から4までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- セル全抵抗が0.5Ω以下である請求項1から5までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- オーミック抵抗が0.1Ω以下である請求項1から6までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
- 前記電解質粒子(A)は、イットリア安定化ジルコニアからなる請求項1から7までのいずれか1項に記載の固体酸化物形燃料電池用アノード。
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