JP2021158026A - 電気化学素子の金属支持体、電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、固体酸化物形燃料電池、および固体酸化物形電解セル - Google Patents

電気化学素子の金属支持体、電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネルギーシステム、固体酸化物形燃料電池、および固体酸化物形電解セル Download PDF

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亮眞 窪田
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満秋 越後
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Abstract

【課題】十分な性能を確保しつつ、量産時の加工性とコストを改善した電気化学素子等を提供する。【解決手段】電気化学素子Eの金属基板1(金属支持体)は、全体として板状であり、電極層2が設けられる面を表側面1aとして、表側面1aから裏側面1bへ貫通する複数の貫通空間1cを有し、貫通空間1cの表側面1aの開口部である表側開口部1dの面積が1.3×10-1mm2未満であり、貫通空間1cの少なくとも表側開口部1dが多孔質セラミック材9により塞がれている。【選択図】図1

Description

本発明は、金属支持型の電気化学素子と、その金属支持体等に関する。
従来の金属支持型SOFCにおいて、金属支持体は金属板に多数の孔を開けて構成されている。しかしながら、SOFCとしての十分な性能と、量産時の加工性やコストの両立には未だ至っていない。
特開2006−222006号公報
特許文献1では、フェライト系SUS板上に、下部電極界面層として、NiO−8YSZ層をスパッタリング法を用いて厚さ1μmで作製し、その下部電極界面層上にYSZ電解質層を成膜し、その後、エッチングでSUS板裏面から孔を開け、スパッタリングで孔側からNiO−8YSZアノード電極層を形成している。しかし特許文献1に記載の手法では、セラミックスのセル構成材料を積層させた後の金属支持体をエッチングで孔加工する必要があるため、セル構成材料を傷めないよう加工する必要がある。しかも、スパッタリングのような高価な方法で電極層を形成しなければならず、性能と量産時の加工性やコストとを両立することが困難であった。
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分な性能を確保しつつ、量産時の加工性とコストを改善した電気化学素子等を提供することにある。
〔構成1〕
上記目的を達成するための電気化学素子の金属支持体の特徴構成は、
前記金属支持体は全体として板状であり、
前記金属支持体は、電極層が設けられる面を表側面として、前記表側面から裏側面へ貫通する複数の貫通空間を有し、
前記貫通空間の前記表側面の開口部である表側開口部の面積が1.3×10-1mm2未満であり、
前記貫通空間の少なくとも前記表側開口部が多孔質セラミック材により塞がれている点にある。
上記の特徴構成によれば、表側開口部が多孔質セラミック材により塞がれているから、表側開口部を大きくした場合でも、金属支持体の表側面への電極層の形成が容易になる。そして表側開口部の面積が1.3×10-1mm2未満とされているから、電極層に十分な量の燃料ガス(または空気)を供給でき、電気化学素子として十分な性能を確保することができる。したがって、性能を確保しつつ、量産時の加工性とコストを改善した電気化学素子の金属支持体を提供することができる。
〔構成2〕
上記目的を達成するための電気化学素子の金属支持体の特徴構成は、
前記金属支持体は全体として板状であり、
前記金属支持体は、電極層が設けられる面を表側面として、前記表側面から裏側面へ貫通する複数の貫通空間を有し、
前記貫通空間の前記表側面の開口部である表側開口部の直径が0.4mm以下であり、
前記貫通空間の少なくとも前記表側開口部が多孔質セラミック材により塞がれている点にある。
上記の特徴構成によれば、表側開口部が多孔質セラミック材により塞がれているから、表側開口部を大きくした場合でも、金属支持体の表側面への電極層の形成が容易になる。そして表側開口部の直径が0.4mm以下とされているから、電極層に十分な量の燃料ガス(または空気)を供給でき、電気化学素子として十分な性能を確保することができる。したがって、性能を確保しつつ、量産時の加工性とコストを改善した電気化学素子の金属支持体を提供することができる。
〔構成3〕
前記貫通空間の全体に前記多孔質セラミック材が充填されていてもよい。
上記の特徴構成によれば、前記貫通空間の全体に前記多孔質セラミック材が充填されているから、表側開口部を大きくした場合でも、支持体としての強度を高めつつ、電極層に十分な量の燃料ガス(または空気)を供給でき、電気化学素子として十分な性能を確保することができる。したがって、強度と性能を確保しつつ、量産時の加工性とコストを改善した電気化学素子の金属支持体を提供することができる。
〔構成4〕
前記表側開口部の直径を前記金属支持体の厚さで除した値であるアスペクト比が1.4以下であってもよい。
上記の特徴構成によれば、前記表側開口部の直径を前記金属支持体の厚さで除した値であるアスペクト比が1.4以下であるから、金属支持体の表側面への電極層の形成が容易になり、また、金属支持体の強度を向上できるので好ましい。
〔構成5〕
前記表側開口部の間隔は0.9mm以下であってもよい。
上記の特徴構成によれば、前記表側開口部の間隔が0.9mm以下であるから、金属支持体の表側面への電極層の形成が容易になり、また、金属支持体の強度を向上できるので好ましい。
〔構成6〕
本発明に係る金属支持体の別の特徴構成は、前記表側面において前記貫通空間が形成されている領域を孔領域とし、前記孔領域における前記表側開口部の占める割合である開口率が22%以下である点にある。
上記の特徴構成によれば、開口率が22%以下であるから、金属支持体の表側面への電極層の形成が容易になり、また、金属支持体の強度を向上できるので好ましい。
〔構成7〕
本発明に係る金属支持体の別の特徴構成は、材料がFe−Cr系合金である点にある。
上記の特徴構成によれば、金属支持体の耐酸化性と高温強度を向上できる。
〔構成8〕
本発明に係る金属支持体の別の特徴構成は、前記表側面の少なくとも一部が金属酸化物膜で覆われている点にある。
上記の特徴構成によれば、金属酸化物被膜により金属支持体からCr等の成分が電極層等へ拡散することを抑制できるので、電極層等の性能低下を抑制し、電気化学素子の性能を高めることができる。
〔構成9〕
上述の金属支持体の前記表側面に、少なくとも電極層と電解質層と対極電極層とが設けられた電気化学素子は、十分な性能を確保しつつ、量産時の加工性とコストを改善したものとなり好適である。
〔構成10〕
本発明に係る電気化学モジュールの特徴構成は、上述の電気化学素子が複数集合した状態で配置される点にある。
上記の特徴構成によれば、上述の電気化学素子が複数集合した状態で配置されるので、材料コストと加工コストを抑制しつつ、コンパクトで高性能な、強度と信頼性に優れた電気化学モジュールを得ることができる。
〔構成11〕
本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、上述の電気化学素子若しくは上述の電気化学モジュールと、前記電気化学素子若しくは前記電気化学モジュールに還元性成分を含有するガスを流通する燃料変換器、或いは前記電気化学素子若しくは前記電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器と、を少なくとも有する点にある。
上記の特徴構成によれば、上記の特徴構成によれば、電気化学素子又は電気化学モジュールと、電気化学素子又は電気化学モジュールに還元性成分を含有するガスを流通する燃料変換器を有する。よって、電気化学モジュールを燃料電池として動作させる場合、改質器などの燃料変換器によって、都市ガス等の既存の原燃料供給インフラを用いて供給される天然ガス等から水素を生成し、燃料電池に流通させる構成とすると、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学モジュールを備えた電気化学装置を実現することができる。また、電気化学モジュールから排出される未利用の燃料ガスをリサイクルするシステムを構築し易くなるため、高効率な電気化学装置を実現することができる。
更に、上記の特徴構成によれば、電気化学素子又は電気化学モジュールと、電気化学素子又は電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器を有する。よって、電気化学モジュールを電解セルとして動作させる場合は、例えば、水の電解反応によって生成する水素を燃料変換器で一酸化炭素や二酸化炭素と反応させてメタンなどに変換する電気化学装置とすることが出来るが、このような構成にすると、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学モジュールを備えた電気化学装置を実現することができる。
〔構成12〕
本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、上述の電気化学素子若しくは上述の電気化学モジュールと、前記電気化学素子若しくは前記電気化学モジュールから電力を取り出す、或いは前記電気化学素子若しくは前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器とを少なくとも有する点にある。
上記の特徴構成によれば、電力変換器は、電気化学素子若しくは電気化学モジュールが発電した電力を取り出し、或いは、電気化学素子若しくは電気化学モジュールに電力を流通する。これにより、上記のように電気化学素子若しくは電気化学モジュールは、燃料電池として作用し、或いは、電解セルとして作用する。よって、上記構成によれば、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する、あるいは電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できる電気化学モジュール等を提供することができる。
なお、例えば、電力変換器としてインバータを用いる場合、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学素子もしくは電気化学モジュールから得られる電気出力を、インバータによって昇圧したり、直流を交流に変換したりすることができるため、電気化学素子もしくは電気化学モジュールで得られる電気出力を利用しやすくなるので好ましい。
〔構成13〕
本発明に係るエネルギーシステムの特徴構成は、上述の電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有する点にある。
上記の特徴構成によれば、電気化学装置と、電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するので、耐久性・信頼性および性能に優れ、かつエネルギー効率にも優れたエネルギーシステムを実現することができる。なお、電気化学装置から排出される未利用の燃料ガスの燃焼熱を利用して発電する発電システムと組み合わせてエネルギー効率に優れたハイブリットシステムを実現することもできる。
〔構成14〕
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の特徴構成は、上述の電気化学素子を備え、前記電気化学素子で発電反応を生じさせる点にある。
上記の特徴構成によれば、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学素子を固体酸化物形燃料電池として使用し、発電反応を行うことができるので、高耐久・高性能な固体酸化物形燃料電池を得る事ができる。なお、定格運転時に650℃以上の温度域で運転可能な固体酸化物形燃料電池であると、都市ガス等の炭化水素系ガスを原燃料とする燃料電池システムにおいて、原燃料を水素に変換する際に必要となる熱を燃料電池の排熱で賄うことが可能なシステムを構築できるため、燃料電池システムの発電効率を高めることができるので、より好ましい。また、定格運転時に900℃以下の温度域で運転される固体酸化物形燃料電池であると、金属支持型電気化学素子からのCr揮発の抑制効果が高められるのでより好ましく、定格運転時に850℃以下の温度域で運転される固体酸化物形燃料電池であると、Cr揮発の抑制効果を更に高められるので更に好ましい。
〔構成15〕
本発明に係る固体酸化物形電解セルの特徴構成は、上述の電気化学素子を備え、前記電気化学素子で電解反応を生じさせる点にある。
上記の特徴構成によれば、耐久性・信頼性および性能に優れた電気化学素子を固体酸化物形電解セルとして使用し、電解反応によるガスの生成を行うことができるので、高耐久・高性能な固体酸化物形電解セルを得る事ができる。
電気化学素子の構成を示す概略図である。 電気化学素子および電気化学モジュールの構成を示す概略図である。 電気化学装置およびエネルギーシステムの構成を示す概略図である。 電気化学モジュールの構成を示す概略図である。 金属支持体の構造を示す平面図および断面図である。 実施例における金属基板の貫通空間を覆う電極層の表面の電子顕微鏡写真である。 比較例における金属基板の貫通空間を覆う電極層の表面の電子顕微鏡写真である。 別のエネルギーシステムの構成を示す概略図である。
<第1実施形態>
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る電気化学素子Eおよび固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)について説明する。電気化学素子Eは、例えば、水素を含む燃料ガスと空気の供給を受けて発電する固体酸化物形燃料電池の構成要素として用いられる。なお以下、層の位置関係などを表す際、例えば電解質層4から見て対極電極層6の側を「上」または「上側」、電極層2の側を「下」または「下側」という場合がある。また、金属基板1における電極層2が形成されている側の面を「表側」、反対側の面を「裏側」という場合がある。
(電気化学素子)
電気化学素子Eは、図1に示される通り、金属基板1(金属支持体)と、金属基板1の上に形成された電極層2と、電極層2の上に形成された中間層3と、中間層3の上に形成された電解質層4とを有する。そして電気化学素子Eは、更に、電解質層4の上に形成された反応防止層5と、反応防止層5の上に形成された対極電極層6とを有する。つまり対極電極層6は電解質層4の上に形成され、反応防止層5は電解質層4と対極電極層6との間に形成されている。電極層2は多孔質であり、電解質層4は緻密である。
(金属支持体)
金属基板1は、電極層2、中間層3および電解質層4等を支持して電気化学素子Eの強度を保つ。つまり金属基板1は、電気化学素子Eを支持する支持体としての役割を担う。
金属基板1の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性および耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。本実施形態では、金属支持体1は、Crを18質量%以上25質量%以下含有するFe−Cr系合金を用いているが、Mnを0.05質量%以上含有するFe−Cr系合金、Tiを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe−Cr系合金、Zrを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe−Cr系合金、TiおよびZrを含有しTiとZrとの合計の含有量が0.15質量%以上1.0質量%以下であるFe−Cr系合金、Cuを0.10質量%以上1.0質量%以下含有するFe−Cr系合金であると特に好適である。本実施形態では、金属基板1の材料はFe−Cr系合金である。
金属基板1は全体として板状である。そして金属基板1は、電極層2が設けられる面を表側面1aとして、表側面1aから裏側面1bへ貫通する複数の貫通空間1c(孔)を有する。貫通空間1cは、金属基板1の裏側面1bから表側面1aへ気体を透過させる機能を有する。貫通空間1cの表側面1aの開口部を、表側開口部1dと呼ぶ。貫通空間1cの裏側面1bの開口部を、裏側開口部1eと呼ぶ。なお、板状の金属支持体1を曲げたりして、例えば箱状、円筒状などの形状に変形させて使用することも可能である。
金属基板1の表面に、拡散抑制層としての金属酸化物層1fが設けられる。すなわち、金属基板1と後述する電極層2との間に、拡散抑制層が形成されている。金属酸化物層1fは、金属基板1の外部に露出した面だけでなく、電極層2との接触面(界面)および貫通空間1cの内側の面にも設けられる。この金属酸化物層1fにより、金属基板1と電極層2との間の元素相互拡散を抑制することができる。例えば、金属基板1としてクロムを含有するフェライト系ステンレスを用いた場合は、金属酸化物層1fが主にクロム酸化物となる。そして、金属基板1のクロム原子等が電極層2や電解質層4へ拡散することを、クロム酸化物を主成分とする金属酸化物層1fが抑制する。金属酸化物層1fの厚さは、拡散防止性能の高さと電気抵抗の低さを両立させることのできる厚みであれば良い。
金属酸化物層1fは種々の手法により形成されうるが、金属基板1の表面を酸化させて金属酸化物とする手法が好適に利用される。また、金属基板1の表面に、金属酸化物層1fをスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、スパッタリング法やPLD法等のPVD法、CVD法などにより形成しても良いし、メッキと酸化処理によって形成しても良い。更に、金属酸化物層1fは導電性の高いスピネル相などを含んでも良い。
金属基板1としてフェライト系ステンレス材を用いた場合、電極層2や電解質層4の材料として用いられるYSZ(イットリア安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア、CGOとも呼ぶ)等と熱膨張係数が近い。従って、低温と高温の温度サイクルが繰り返された場合も電気化学素子Eがダメージを受けにくい。よって、長期耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。
(多孔質セラミック材)
本実施形態では、図1に示すように、金属基板1の貫通空間1cの少なくとも表側開口部1dが多孔質セラミック材9により塞がれている。これにより、金属基板1の表側面1aが平滑な面になり、電極層2の形成が容易になる。本実施形態では、金属基板1の貫通空間1cの全体に多孔質セラミック材9が充填されている。
多孔質セラミック材9は、セラミックを材料として、多孔質に形成されている。すなわち多孔質セラミック材9は、気体の透過、もしくは気体の通流が可能な材料である。多孔質セラミック材9としては具体的には、マグネシア(酸化マグネシウム)やジルコニア(酸化ジルコニウム)、安定化ジルコニア(イットリア安定化ジルコニア)、セリア(酸化セリウム)、ガドリニウム・ドープ・セリア、LSCF等の複合酸化物、及びそれらの混合物などを用いることができる。多孔質セラミック材9としては、電極層2とは異なる材料が好適に用いられる。多孔質セラミック材9としては、電子導電性を有する物質が好適に用いられる。なお多孔質セラミック材9として、電子導電性を有さない物質を用いてもよい。
(金属支持体および貫通空間の構造)
以下、金属基板1および貫通空間1cの構造の例について図5を参照しながら説明する。なお金属酸化物層1fについては図示を省略する。金属基板1は、厚さTの板状の部材であり、すなわち全体として板状である。金属基板1は、表側面1aから裏側面1bへ貫通する複数の貫通空間1cを有する。貫通空間1cは、断面が円形の孔である。なお貫通空間1cの断面形状は、円形や略円形の他、矩形や三角形、多角形なども可能であり、金属板貫通空間1cが形成できれば、金属基板1としての機能を保てる範囲で種々の形状とすることができる。この孔(貫通空間1c)は、レーザー加工、パンチング加工またはエッチング加工によって、金属基板1に形成されている。この孔の中心軸は、金属基板1に対して直交している。なお孔(貫通空間1c)の中心軸は、金属基板1に対して傾斜していてもよい。
貫通空間1cの断面が円形の孔であるから、表側開口部1dおよび裏側開口部1eは、いずれも円形である。表側開口部1dと裏側開口部1eとは、同じ大きさであってもよい。裏側開口部1eが、表側開口部1dより大きくてもよい。表側開口部1dの直径を、直径Dとする。
図5に示されるように、金属基板1において、複数の孔(貫通空間1c)が、ピッチP(間隔)にて、直交格子の格子点の位置に形成されている。複数の孔(貫通空間1c)の配置の態様としては、直交格子の他、斜方格子、正三角形状の格子も可能であるし、格子点に加えて対角線交点への配置も可能である。
金属基板1の表側面1aにおいて、貫通空間1cが形成されている領域を孔領域1gと呼ぶ。孔領域1gは、金属基板1の外周域周辺を除いた範囲内に設けられる。1つの孔領域1gが金属基板1に設けられてもよいし、複数の孔領域1gが金属基板1に設けられてもよい。
金属基板1は、支持体として電気化学素子Eを形成するのに充分な強度を有することが求められる。金属基板1の厚さTは、0.1mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましく、0.2mm以上が更に好ましい。また、金属基板1の厚さTは、1.0mm以下が好ましく、0.75mm以下がより好ましく、0.5mm以下が更に好ましい。
表側開口部1dの直径Dは、0.03mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましく、0.1mm以上が更に好ましい。また、表側開口部1dの直径Dは、0.4mm以下が好ましく、0.35mm以下がより好ましく、0.3mm以下が更に好ましい。
貫通空間1cの配置のピッチPは、表側開口部1dの直径Dの1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。また、貫通空間1c(孔)の配置のピッチPは、0.9mm以下が好ましく、0.8mm以下がより好ましく、0.7mm以下が更に好ましい。
貫通空間1cの表側開口部1dの面積Sは、0.7×10−3mm2以上であると好ましく、1.9×10−3mm2以上がより好ましく、7.8×10−3mm2以上が更に好ましい。また、貫通空間1cの表側開口部1dの面積Sは、1.3×10−1mm2未満であると好ましく、1.0×10−1mm2以下であるとより好ましく、0.8×10−1mm2以下であると更に好ましい。
貫通空間1cの表側開口部1dの直径(内径)を金属基板1の厚みで除した値であるアスペクト比は、0.1以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.3以上が更に好ましい。また、当該アスペクト比は、1.4以下が好ましく、1.2以下がより好ましい。
孔領域1gにおける表側開口部1dの占める割合を開口率Aと定義する。開口率Aは、3%以上であると好ましく、22%以下であると好ましい。開口率Aは、孔領域1gにおける表側開口部1dの面積Sの合計を、孔領域1gの面積で除して算出される。
なお開口率Aは、孔領域1gにおいて周期的に現われる領域に着目して算出することも可能である。例えば、図5に示す単位領域1hに着目して、面積Sを単位領域1hの面積(ピッチPの自乗)で除した値は、孔領域1g全体の開口率Aにほぼ等しくなる。すなわち図5に示す直交格子の場合、開口率Aは以下の式1で算出できる。表側開口部1dが直径Dの円形の場合、さらに以下の式2の関係が成立する。
Figure 2021158026
Figure 2021158026
(電極層)
電極層2は、図1に示すように、金属基板1の表側の面であって貫通空間1cが設けられた領域より大きな領域に、薄層の状態で設けることができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm〜100μm程度、好ましくは、5μm〜50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。貫通空間1cが設けられた領域の全体が、電極層2に覆われている。つまり、貫通空間1cは金属基板1における電極層2が形成された領域の内側に形成されている。換言すれば、全ての貫通空間1cが電極層2に面して設けられている。
電極層2の材料としては、例えばNiO−GDC、Ni−GDC、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などの複合材を用いることができる。これらの例では、GDC、YSZ、CeO2を複合材の骨材と呼ぶことができる。なお、電極層2は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法やパルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに、良好な電極層2が得られる。そのため、金属基板1を傷めることなく、また、金属基板1と電極層2との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子を実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
電極層2は、気体透過性を持たせるため、その内部および表面に複数の細孔を有する。
すなわち電極層2は、多孔質な層として形成される。電極層2は、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。なお緻密度とは、層を構成する材料の空間に占める割合であって、(1−空孔率)と表すことができ、また、相対密度と同等である。
(中間層)
中間層3(挿入層)は、図1に示すように、電極層2を覆った状態で、電極層2の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm〜100μm程度、好ましくは2μm〜50μm程度、より好ましくは4μm〜25μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な中間層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。中間層3の材料としては、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特にセリア系のセラミックスが好適に用いられる。
中間層3は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃より高い高温域での焼成を用いずに中間層3が得られる。そのため、金属基板1を傷めることなく、金属基板1と電極層2との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できる。また、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
中間層3としては、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を有することが好ましい。また、酸素イオン(酸化物イオン)と電子との混合伝導性を有すると更に好ましい。これらの性質を有する中間層3は、電気化学素子Eへの適用に適している。
(電解質層)
電解質層4は、図1に示すように、電極層2および中間層3を覆った状態で、中間層3の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成することもできる。なお、厚さが1μm以上であると強度が高くなり好ましい。詳しくは電解質層4は、図1に示すように、中間層3の上と金属基板1の上とにわたって(跨って)設けられる。このように構成し、電解質層4を金属基板1に接合することで、電気化学素子全体として堅牢性に優れたものとすることができる。
また電解質層4は、図1に示すように、金属基板1の表側の面であって貫通空間1cが設けられた領域より大きな領域に設けられる。つまり、貫通空間1cは金属基板1における電解質層4が形成された領域の内側に形成されている。
また電解質層4の周囲においては、電極層2および中間層3からのガスのリークを抑制することができる。説明すると、電気化学素子EをSOFCの構成要素として用いる場合、SOFCの作動時には、金属基板1の裏側から貫通空間1cを通じて電極層2へガスが供給される。電解質層4が金属基板1に接している部位においては、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。なお、本実施形態では電解質層4によって電極層2の周囲をすべて覆っているが、電極層2および中間層3の上部に電解質層4を設け、周囲にガスケット等を設ける構成としてもよい。
電解質層4の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)等を用いることができる。特にジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。電解質層4をジルコニア系セラミックスとすると、電気化学素子Eを用いたSOFCの稼働温度をセリア系セラミックスに比べて高くすることができる。例えば電気化学素子EをSOFCに用いる場合、電解質層4の材料としてYSZのような650℃程度以上の高温域でも高い電解質性能を発揮できる材料を用い、システムの原燃料に都市ガスやLPG等の炭化水素系の原燃料を用い、原燃料を水蒸気改質等によってSOFCのアノードガスとするシステム構成とすると、SOFCのセルスタックで生じる熱を原燃料ガスの改質に用いる高効率なSOFCシステムを構築することができる。
電解質層4は、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば1100℃を越える高温域での焼成を用いずに、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層4が得られる。そのため、金属基板1の損傷を抑制し、また、金属基板1と電極層2との元素相互拡散を抑制することができ、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、スプレーコーティング法を用いると、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層が低温域で容易に得られやすいので更に好ましい。
電解質層4は、アノードガスやカソードガスのガスリークを遮蔽し、かつ、高いイオン伝導性を発現するために、緻密に構成される。電解質層4の緻密度は90%以上が好ましく、95%以上であるとより好ましく、98%以上であると更に好ましい。電解質層4は、均一な層である場合は、その緻密度が95%以上であると好ましく、98%以上であるとより好ましい。また、電解質層4が、複数の層状に構成されているような場合は、そのうちの少なくとも一部が、緻密度が98%以上である層(緻密電解質層)を含んでいると好ましく、99%以上である層(緻密電解質層)を含んでいるとより好ましい。このような緻密電解質層が電解質層の一部に含まれていると、電解質層が複数の層状に構成されている場合であっても、緻密で気密性およびガスバリア性の高い電解質層を形成しやすくできるからである。
(反応防止層)
反応防止層5は、電解質層4の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm〜100μm程度、好ましくは2μm〜50μm程度、より好ましくは3μm〜15μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な反応防止層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。反応防止層5の材料としては、電解質層4の成分と対極電極層6の成分との間の反応を防止できる材料であれば良い。例えばセリア系材料等が用いられる。また反応防止層5の材料として、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有する材料が好適に用いられる。なお、Sm、GdおよびYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有し、これら元素の含有率の合計が1.0質量%以上10質量%以下であるとよい。反応防止層5を電解質層4と対極電極層6との間に導入することにより、対極電極層6の構成材料と電解質層4の構成材料との反応が効果的に抑制され、電気化学素子Eの性能の長期安定性を向上できる。反応防止層5の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属基板1の損傷を抑制し、また、金属基板1と電極層2との元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
(対極電極層)
対極電極層6は、電解質層4もしくは反応防止層5の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm〜100μm程度、好ましくは、5μm〜50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な対極電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。対極電極層6の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物、セリア系酸化物およびこれらの混合物を用いることができる。特に対極電極層6が、La、Sr、Sm、Mn、CoおよびFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。以上の材料を用いて構成される対極電極層6は、カソードとして機能する。
なお、対極電極層6の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属基板1の損傷を抑制し、また、金属基板1と電極層2との元素相互拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PDV法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
(固体酸化物形燃料電池)
以上のように電気化学素子Eを構成することで、電気化学素子を燃料電池(電気化学発電セル)として機能させる場合には、電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池の発電セルとして用いることができる。例えば、金属基板1の裏側の面から貫通空間1cを通じて水素を含む燃料ガスを電極層2へ流通し、電極層2の対極となる対極電極層6へ空気を流通し、例えば、500℃以上900℃以下の温度で作動させる。そうすると、対極電極層6において空気に含まれる酸素Oが電子eと反応して酸素イオンO2−が生成される。その酸素イオンO2−が電解質層4を通って電極層2へ移動する。電極層2においては、供給された燃料ガスに含まれる水素Hが酸素イオンO2−と反応し、水HOと電子eが生成される。
電解質層4に水素イオンを伝導する電解質材料を用いた場合には、電極層2において流通された燃料ガスに含まれる水素Hが電子eを放出して水素イオンHが生成される。その水素イオンHが電解質層4を通って対極電極層6へ移動する。対極電極層6において空気に含まれる酸素Oと水素イオンH、電子eが反応し水HOが生成される。
以上の反応により、電極層2と対極電極層6との間に起電力が発生する。この場合、電極層2はSOFCの燃料極(アノード)として機能し、対極電極層6は空気極(カソード)として機能する。
(電気化学素子の製造方法)
次に、電気化学素子Eの製造方法について説明する。
(貫通空間閉塞ステップ)
貫通空間閉塞ステップでは、金属基板1の貫通空間1cに多孔質セラミック材9が充填され、表側開口部10dが多孔質セラミック材9により閉塞される。貫通空間閉塞ステップは例えば次のようにして行われる。まず材料となるセラミックを含有するペースト等を、金属基板1の表側面1aへ滴下あるいは塗布する。続いてブレードやスキージ等により金属基板1の表側面1aのペースト等を拭き取る。以上の滴下・塗布、拭き取りにより、貫通空間1cの内部にペースト等が入り込む。最後に金属基板1を熱処理して、ペースト等に含まれるバインダーを焼き飛ばす。
(電極層形成ステップ)
電極層形成ステップでは、金属基板1の表側の面の貫通空間1cが設けられた領域より広い領域に電極層2が薄膜の状態で形成される。金属基板1の貫通孔はレーザー加工等によって設けることができる。電極層2の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
電極層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。
まず電極層2の材料粉末と溶媒とを混合して材料ペーストを作成し、表側開口部10dが多孔質セラミック材9により閉塞された金属基板1の表側の面に塗布する。そして電極層2を圧縮成形し(電極層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(電極層焼成工程)。電極層2の圧縮成形は、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing 、冷間静水圧加圧)成形、ロール加圧成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing)成形などにより行うことができる。また、電極層の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。また、電極層平滑化工程と電極層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。
なお、中間層3を有する電気化学素子を形成する場合では、電極層平滑化工程や電極層焼成工程を省いたり、電極層平滑化工程や電極層焼成工程を後述する中間層平滑化工程や中間層焼成工程に含めることもできる。
(拡散抑制層形成ステップ)
上述した電極層形成ステップにおける焼成工程時に、金属基板1の表面に金属酸化物層1f(拡散抑制層)が形成される。なお、上記焼成工程に、焼成雰囲気を酸素分圧が低い雰囲気条件とする焼成工程が含まれていると元素の相互拡散抑制効果が高く、抵抗値の低い良質な金属酸化物層1f(拡散抑制層)が形成されるので好ましい。電極層形成ステップを、焼成を行わないコーティング方法とする場合を含め、別途の拡散抑制層形成ステップを含めても良い。いずれにおいても、金属基板1の損傷を抑制可能な1100℃以下の処理温度で実施することが望ましい。また、後述する中間層形成ステップにおける焼成工程時に、金属支持体1の表面に金属酸化物層1f(拡散抑制層)が形成されても良い。
(中間層形成ステップ)
中間層形成ステップでは、電極層2を覆う形態で、電極層2の上に中間層3が薄層の状態で形成される。中間層3の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
中間層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。
まず中間層3の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作成し、電極層2及び金属基板1の上に塗布する。そして中間層3を圧縮成形し(中間層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(中間層焼成工程)。中間層3の圧延は、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing 、冷間静水圧加圧)成形、ロール加圧成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing)成形などにより行うことができる。また、中間層3の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。このような温度であると、金属支持体1の損傷・劣化を抑制しつつ、強度の高い中間層3を形成できるためである。また、中間層3の焼成を1050℃以下で行うとより好ましく、1000℃以下で行うと更に好ましい。これは、中間層3の焼成温度を低下させる程に、金属支持体1の損傷・劣化をより抑制しつつ、電気化学素子Eを形成できるからである。また、中間層平滑化工程と中間層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。
なお、中間層平滑化工程は、ラップ成形やレベリング処理、表面の切削・研磨処理などを施すことによって行うことでもできる。
(電解質層形成ステップ)
電解質層形成ステップでは、電極層2および中間層3を覆った状態で、電解質層4が中間層3の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成されても良い。電解質層4の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
緻密で気密性およびガスバリア性能の高い、良質な電解質層4を1100℃以下の温度域で形成するためには、電解質層形成ステップをスプレーコーティング法で行うことが望ましい。その場合、電解質層4の材料を金属基板1上の中間層3に向けて噴射し、電解質層4を形成する。
(反応防止層形成ステップ)
反応防止層形成ステップでは、反応防止層5が電解質層4の上に薄層の状態で形成される。反応防止層5の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。なお反応防止層5の上側の面を平坦にするために、例えば反応防止層5の形成後にレベリング処理や表面を切削・研磨処理を施したり、湿式形成後焼成前に、プレス加工を施してもよい。
(対極電極層形成ステップ)
対極電極層形成ステップでは、対極電極層6が反応防止層5の上に薄層の状態で形成される。対極電極層6の形成は、上述したように、低温焼成法(1100℃以下の低温域での焼成処理を行う湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジッション法、パウダージェットデポジッション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などの方法を用いることができる。いずれの方法を用いる場合であっても、金属基板1の劣化を抑制するため、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
以上の様にして、電気化学素子Eを製造することができる。
なお電気化学素子Eにおいて、中間層3(挿入層)と反応防止層5とは、何れか一方、あるいは両方を備えない形態とすることも可能である。すなわち、電極層2と電解質層4とが接触して形成される形態、あるいは電解質層4と対極電極層6とが接触して形成される形態も可能である。この場合に上述の製造方法では、中間層形成ステップ、反応防止層形成ステップが省略される。なお、他の層を形成するステップを追加したり、同種の層を複数積層したりすることも可能であるが、いずれの場合であっても、1100℃以下の温度で行うことが望ましい。
<実施例>
厚さ0.3mm、直径25mmの円形の金属板(金属基板1)の全領域に対して、パンチング加工により貫通空間1cを複数設けて、金属基板1を作製した。貫通空間1cは、直交格子の格子点に設けた。表側開口部1dの直径は0.3mm、ピッチPは0.6mmである。表側開口部1dの面積は、7.07×10−2mmである。金属板の厚さに対する表側開口部1dの直径の比であるアスペクト比は1であり、開口率は19.6%である。
次に、8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)の微粉末に有機バインダーと純水を加えてペーストを作製した。そのペーストを金属基板1の表側面1aに塗布し、スキージで拭き取りを行い、真空ポンプを用いて減圧を行った。上記操作を3〜4回繰り返して行い、80℃で乾燥させた。その後、1000℃で焼成処理を行うことで、貫通空間1cを8YSZの多孔質セラミック材で塞いだ(貫通空間閉塞ステップ)。
次にGDC粉末とLSCF粉末とを混合し、有機バインダーと有機溶媒(分散媒)を加えて作製したペーストを用いて、上記の金属基板1上に電極層2を積層し、CIP成形した後、950℃で焼成処理を行い、電極層2を作製した(電極層形成ステップ、拡散抑制層形成ステップ)。焼成後の電極層2の顕微鏡写真を図6Aに示す。図6Aからわかるように、表側開口部1dの直径を0.3mm、ピッチを0.6mmとし、貫通空間1cを8YSZの多孔質セラミック材で塞ぐことによって、均質かつ平坦な電極の形成が可能であった。
<比較例>
厚さ0.3mm、直径25mmの円形の金属板(金属基板1)の全領域に対して、パンチング加工により貫通空間1cを複数設けて、金属基板1を作製した。貫通空間1cは、60°千鳥型(正三角形の頂点に各貫通空間1cの中心を配置)となるように設けた。表側開口部1dの直径は0.5mm、ピッチPは1mmである。表側開口部1dの面積は、1.96×10−1mmである。金属板の厚さに対する表側開口部1dの直径の比であるアスペクト比は1.7であり、開口率は22.7%である。
次に、8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)の微粉末に有機バインダーと純水を加えてペーストを作製した。そのペーストを金属基板1の表側面1aに塗布し、スキージで拭き取りを行い、真空ポンプを用いて減圧を行った。上記操作を3〜4回繰り返して行い、80℃で乾燥させた。その後、1000℃で焼成処理を行うことで、貫通空間1cを8YSZの多孔質セラミック材で塞いだ(貫通空間閉塞ステップ)。
次にGDC粉末とLSCF粉末とを混合し、有機バインダーと有機溶媒(分散媒)を加えて作製したペーストを用いて、上記の金属基板1上に電極層2を積層し、CIP成形した後、950℃で焼成処理を行い、電極層2を作製した(電極層形成ステップ、拡散抑制層形成ステップ)。焼成後の電極層2の顕微鏡写真を図6Bに示す。図6Bからわかるように、表側開口部1dの縁に沿って亀裂が見られ、均質な電極層2を形成することが困難であった。
<第2実施形態>
図2・図3を用いて、第2実施形態に係る電気化学素子E、電気化学モジュールM、電気化学装置YおよびエネルギーシステムZについて説明する。
第2実施形態に係る電気化学素子Eは、図2に示すように、金属基板1の裏面にU字部材7が取り付けられており、金属基板1とU字部材7とで筒状支持体を形成している。
そして集電部材26を間に挟んで電気化学素子Eが複数積層(複数集合)されて、電気化学モジュールMが構成されている。集電部材26は、電気化学素子Eの対極電極層6と、U字部材7とに接合され、両者を電気的に接続している。なお、集電部材26を省略して、電気化学素子Eの対極電極層6とU字部材7とを直接電気的に接続する構成としても良い。
電気化学モジュールMは、ガスマニホールド17、集電部材26、終端部材および電流引出し部を有する。複数積層された電気化学素子Eは、筒状支持体の一方の開口端部がガスマニホールド17に接続されて、ガスマニホールド17から気体の供給を受ける。供給された気体は、筒状支持体の内部を通流し、金属基板1の貫通空間1cを通って電極層2に供給される。
図3には、エネルギーシステムZおよび電気化学装置Yの概要が示されている。
エネルギーシステムZは、電気化学装置Yと、電気化学装置Yから排出される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器53とを有する。
電気化学装置Yは、電気化学モジュールMと、燃料供給モジュールと、電気化学モジュールMから電力を取り出す出力部としてのインバータ(電力変換器の一例)38とを有する。燃料供給モジュールは、脱硫器31、気化器33、改質器34からなり、電気化学モジュールMに対して還元性成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部とを有する。なお、この場合、改質器34が燃料変換器となる。
詳しくは電気化学装置Yは、脱硫器31、改質水タンク32、気化器33、改質器34、ブロア35、燃焼部36、インバータ38、制御部39、収納容器40および電気化学モジュールMを有する。
脱硫器31は、都市ガス等の炭化水素系の原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器31を備えることにより、硫黄化合物による改質器34あるいは電気化学素子Eに対する影響を抑制することができる。気化器33は、改質水タンク32から供給される改質水から水蒸気を生成する。改質器34は、気化器33にて生成された水蒸気を用いて脱硫器31にて脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素を含む改質ガスを生成する。
電気化学モジュールMは、改質器34から供給された改質ガスと、ブロア35から供給された空気とを用いて、電気化学反応させて発電する。燃焼部36は、電気化学モジュールMから排出される反応排ガスと空気とを混合させて、反応排ガス中の可燃成分を燃焼させる。
電気化学モジュールMは、複数の電気化学素子Eとガスマニホールド17とを有する。
複数の電気化学素子Eは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、電気化学素子Eの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されている。電気化学素子Eは、ガスマニホールド17を通じて供給される改質ガスと、ブロア35から供給された空気とを電気化学反応させて発電する。
インバータ38は、電気化学モジュールMの出力電力を調整して、商用系統(図示省略)から受電する電力と同じ電圧および同じ周波数にする。制御部39は電気化学装置YおよびエネルギーシステムZの運転を制御する。
気化器33、改質器34、電気化学モジュールMおよび燃焼部36は、収納容器40内に収納される。そして改質器34は、燃焼部36での反応排ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の改質処理を行う。
原燃料は、昇圧ポンプ41の作動により原燃料供給路42を通して脱硫器31に供給される。改質水タンク32の改質水は、改質水ポンプ43の作動により改質水供給路44を通して気化器33に供給される。そして、原燃料供給路42は脱硫器31よりも下流側の部位で、改質水供給路44に合流されており、収納容器40外にて合流された改質水と原燃料とが収納容器40内に備えられた気化器33に供給される。
改質水は気化器33にて気化され水蒸気となる。気化器33にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路45を通して改質器34に供給される。改質器34にて原燃料が水蒸気改質され、水素ガスを主成分とする改質ガス(還元性成分を有する第1気体)が生成される。改質器34にて生成された改質ガスは、改質ガス供給路46を通して電気化学モジュールMのガスマニホールド17に供給される。
ガスマニホールド17に供給された改質ガスは、複数の電気化学素子Eに対して分配され、電気化学素子Eとガスマニホールド17との接続部である下端から電気化学素子Eに供給される。改質ガス中の主に水素(還元性成分)が、電気化学素子Eにて電気化学反応に使用される。反応に用いられなかった残余の水素ガスを含む反応排ガスが、電気化学素子Eの上端から燃焼部36に排出される。
反応排ガスは燃焼部36で燃焼され、燃焼排ガスとなって燃焼排ガス排出口50から収納容器40の外部に排出される。燃焼排ガス排出口50には燃焼触媒部51(例えば、白金系触媒)が配置され、燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分を燃焼除去する。燃焼排ガス排出口50から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出路52により熱交換器53に送られる。
熱交換器53は、燃焼部36における燃焼で生じた燃焼排ガスと、供給される冷水とを熱交換させ、温水を生成する。すなわち熱交換器53は、電気化学装置Yから排出される熱を再利用する排熱利用部として動作する。
なお、排熱利用部の代わりに、電気化学モジュールMから(燃焼されずに)排出される反応排ガスを利用する反応排ガス利用部を設けてもよい。反応排ガスには、電気化学素子Eにて反応に用いられなかった残余の水素ガスが含まれる。反応排ガス利用部では、残余の水素ガスを利用して、燃焼による熱利用や、燃料電池等による発電が行われ、エネルギーの有効利用がなされる。
<第3実施形態>
図4に、電気化学モジュールMの他の実施形態を示す。第3実施形態に係る電気化学モジュールMは、上述の電気化学素子Eを、セル間接続部材71を間に挟んで積層することで、電気化学モジュールMを構成する。
セル間接続部材71は、導電性を有し、かつ気体透過性を有さない板状の部材であり、表面と裏面に、互いに直交する溝72が形成されている。セル間接続部材71はステンレス等の金属や、金属酸化物を用いることができる。
図4に示すように、このセル間接続部材71を間に挟んで電気化学素子Eを積層すると、溝72を通じて気体を電気化学素子Eに供給することができる。詳しくは一方の溝72が第1気体流路72aとなり、電気化学素子Eの表側、すなわち対極電極層6に気体を供給する。他方の溝72が第2気体流路72bとなり、電気化学素子Eの裏側、すなわち金属基板1の裏側の面から貫通空間1cを通じて電極層2へ気体を供給する。
この電気化学モジュールMを燃料電池として動作させる場合は、第1気体流路72aに酸素を供給し、第2気体流路72bに水素を供給する。そうすると電気化学素子Eにて燃料電池としての反応が進行し、起電力・電流が発生する。発生した電力は、積層された電気化学素子Eの両端のセル間接続部材71から、電気化学モジュールMの外部に取り出される。
なお、本第3実施形態では、セル間接続部材71の表面と裏面に、互いに直交する溝72を形成したが、セル間接続部材71の表面と裏面に、互いに並行する溝72を形成することもできる。
(他の実施形態)
(1)上記の実施形態では、電気化学素子E又は電気化学モジュールMを固体酸化物形燃料電池に用いたが、電気化学素子E又は電気化学モジュールMは、固体酸化物形電解セルや、固体酸化物を利用した酸素センサ等に利用することもできる。
すなわち、上記の実施形態では、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する効率を向上できる構成について説明した。つまり、上記の実施形態では、電気化学素子E及び電気化学モジュールMを燃料電池として動作させ、電極層2に水素ガスが流通され、対極電極層6に酸素ガスが流通される。そうすると、対極電極層6において酸素分子Oが電子eと反応して酸素イオンO2−が生成される。その酸素イオンO2−が電解質層4を通って電極層2へ移動する。電極層2においては、水素分子Hが酸素イオンO2−と反応し、水HOと電子eが生成される。以上の反応により、電極層2と対極電極層6との間に起電力が発生し、発電が行われる。
一方、電気化学素子E及び電気化学モジュールMを電解セルとして動作させる場合は、電極層2に水蒸気や二酸化炭素を含有するガスが流通され、電極層2と対極電極層6との間に電圧が印加される。そうすると、電極層2において電子eと水分子HO、二酸化炭素分子COが反応し水素分子Hや一酸化炭素COと酸素イオンO2−となる。酸素イオンO2−は電解質層4を通って対極電極層6へ移動する。対極電極層6において酸素イオンO2−が電子を放出して酸素分子Oとなる。以上の反応により、水分子HOが水素Hと酸素Oとに、二酸化炭素分子COを含有するガスが流通される場合は一酸化炭素COと酸素Oとに電気分解される。
水蒸気と二酸化炭素分子COを含有するガスが流通される場合は上記電気分解により電気化学素子E及び電気化学モジュールMで生成した水素及び一酸化炭素等から炭化水素などの種々の化合物などを合成する燃料変換器91(図7)を設けることができる。燃料供給部(図示せず)により、この燃料変換器91で生成した炭化水素等を本システム・装置外に取り出して別途燃料として利用することができる。また、燃料変換器91で水素や一酸化炭素を化学原料に変換して利用することもできる。
図7に示すエネルギーシステムでは、電気化学モジュールMは、複数の電気化学素子Eとガスマニホールド17及びガスマニホールド171とを有する。複数の電気化学素子Eは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、電気化学素子Eの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されており、他方の端部(上端部)がガスマニホールド171に固定されている。電気化学素子Eの一方の端部(下端部)におけるガスマニホールド17は、水蒸気及び二酸化炭素の供給を受ける。そして、電気化学素子Eの電気化学素子Eで上述の反応により生成した水素及び一酸化炭素等が、電気化学素子Eの他方の端部(上端部)と連通するマニホールド171によって収集される。
図7中の熱交換器90を、燃料変換器91で起きる反応によって生ずる反応熱と水とを熱交換させ気化する排熱利用部として動作させるとともに、図7中の熱交換器92を、電気化学素子Eによって生ずる排熱と水蒸気および二酸化炭素とを熱交換させ予熱する排熱利用部として動作させる構成とすることにより、エネルギー効率を高めることができる。
また、電力変換器93は、電気化学素子Eに電力を流通する。これにより、上記のように電気化学素子Eは、電解セルとして作用する。よって、上記構成によれば、電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できる電気化学素子E等を提供することができる。
(2)上記の実施形態では、金属基板1を支持体とする金属支持型の固体酸化物形燃料電池に用いたが、本願は、電極層2もしくは対極電極層6を支持体とする電極支持型の固体酸化物形燃料電池や電解質層4を支持体とする電解質支持型の固体酸化物形燃料電池に利用することもできる。それらの場合は、電極層2もしくは対極電極層6、または、電解質層4を必要な厚さとして、支持体としての機能が得られるようにすることができる。
(3)上記の実施形態では、電極層2の材料として例えばNiO−GDC、Ni−GDC、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などの複合材を用い、対極電極層6の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用いた。このように構成された電気化学素子Eは、電極層2に水素ガスを供給して燃料極(アノード)とし、対極電極層6に空気を供給して空気極(カソード)とし、固体酸化物形燃料電池セルとして用いることが可能である。この構成を変更して、電極層2を空気極とし、対極電極層6を燃料極とすることが可能なように、電気化学素子Eを構成することも可能である。すなわち、電極層2の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用い、対極電極層6の材料として例えばNiO−GDC、Ni−GDC、NiO−YSZ、Ni−YSZ、CuO−CeO2、Cu−CeO2などの複合材を用いる。このように構成した電気化学素子Eであれば、電極層2に空気を供給して空気極とし、対極電極層6に水素ガスを供給して燃料極とし、電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池セルとして用いることができる。
なお、上記の実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
電気化学素子および固体酸化物形燃料電池セルとして利用可能である。
1 :金属基板(金属支持体)
1a :表側面
1b :裏側面
1c :貫通空間
1d :表側開口部
1e :裏側開口部
1f :金属酸化物層
1g :孔領域
1h :単位領域
2 :電極層
3 :緩衝層
4 :電解質層
5 :反応防止層
6 :対極電極層
7 :U字部材
9 :多孔質セラミック材
E :電気化学素子
M :電気化学モジュール
Y :電気化学装置
Z :エネルギーシステム

Claims (15)

  1. 電気化学素子の金属支持体であって、
    前記金属支持体は全体として板状であり、
    前記金属支持体は、電極層が設けられる面を表側面として、前記表側面から裏側面へ貫通する複数の貫通空間を有し、
    前記貫通空間の前記表側面の開口部である表側開口部の面積が1.3×10-1mm2未満であり、
    前記貫通空間の少なくとも前記表側開口部が多孔質セラミック材により塞がれている金属支持体。
  2. 電気化学素子の金属支持体であって、
    前記金属支持体は全体として板状であり、
    前記金属支持体は、電極層が設けられる面を表側面として、前記表側面から裏側面へ貫通する複数の貫通空間を有し、
    前記貫通空間の前記表側面の開口部である表側開口部の直径が0.4mm以下であり、
    前記貫通空間の少なくとも前記表側開口部が多孔質セラミック材により塞がれている金属支持体。
  3. 前記貫通空間の全体に前記多孔質セラミック材が充填されている請求項1または2に記載の金属支持体。
  4. 前記表側開口部の直径を前記金属支持体の厚さで除した値であるアスペクト比が1.4以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の金属支持体。
  5. 前記表側開口部の間隔が0.9mm以下である請求項1から4のいずれか1項に記載の金属支持体。
  6. 前記表側面において前記貫通空間が形成されている領域を孔領域とし、前記孔領域における前記表側開口部の占める割合である開口率が22%以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の金属支持体。
  7. 材料がFe−Cr系合金である請求項1から6のいずれか1項に記載の金属支持体。
  8. 前記表側面の少なくとも一部が金属酸化物膜で覆われている請求項1から7のいずれか1項に記載の金属支持体。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の金属支持体の前記表側面に、少なくとも電極層と電解質層と対極電極層とが設けられた電気化学素子。
  10. 請求項9に記載の電気化学素子が複数集合した状態で配置される電気化学モジュール。
  11. 請求項9に記載の電気化学素子若しくは請求項10に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学素子若しくは前記電気化学モジュールに還元性成分を含有するガスを流通する燃料変換器、或いは前記電気化学素子若しくは前記電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器と、を少なくとも有する電気化学装置。
  12. 請求項9に記載の電気化学素子若しくは請求項10に記載の電気化学モジュールと、前記電気化学素子若しくは前記電気化学モジュールから電力を取り出す、或いは前記電気化学素子若しくは前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器を少なくとも有する電気化学装置。
  13. 請求項11又は12に記載の電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部を有するエネルギーシステム。
  14. 請求項9に記載の電気化学素子を備え、前記電気化学素子で発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池。
  15. 請求項9に記載の電気化学素子を備え、前記電気化学素子で電解反応を生じさせる固体酸化物形電解セル。
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WO2023176242A1 (ja) * 2022-03-14 2023-09-21 日本碍子株式会社 電気化学セル

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