JP2023148146A - 金属支持型電気化学素子の製造方法、金属支持型電気化学素子、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステム - Google Patents

金属支持型電気化学素子の製造方法、金属支持型電気化学素子、固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステム Download PDF

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Ryoma Kubota
満秋 越後
Mitsuaki Echigo
享平 真鍋
Kyohei Manabe
裕司 津田
Yuji Tsuda
久男 大西
Hisao Onishi
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【課題】強度(信頼性)や耐久性、性能に優れた金属支持型電気化学素子の製造方法を提供する。【解決手段】少なくとも金属支持体1、電極層2、電解質層4及び対極電極層6を備えた金属支持型電気化学素子Eの製造方法であって、金属支持体1の上に電極層2を形成する電極層形成ステップと、電極層2の上に電解質層4を形成する電解質層形成ステップと、電解質層4の上に対極電極層6を形成する対極電極層形成ステップとを有し、電解質層形成ステップと対極電極層形成ステップとの間に、電解質層形成ステップで形成された電解質層4をアニール処理するアニール処理ステップを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、金属支持型電気化学素子の製造方法、この製造方法によって製造される金属支持型電気化学素子、並びに金属支持型電気化学素子を備えた固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステムに関する。
従来の金属支持型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)の製造方法としては、例えば、非特許文献1に開示された方法が知られている。
非特許文献1に開示された方法は、まず、Fe-Cr系合金粉末を焼結して得た多孔質金属支持体の上にアノード電極層を焼成して形成する。ついで、エアロゾルデポジション法(AD法)を用いて加熱することなく、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなる電解質層をアノード電極層の上に形成する。その後、当該電解質層の上にカソード電極層を焼成して形成する方法である。
Jong-Jin Choi and Dong-Soo Park, "Preparation of Metal-supported SOFC using Low Temperature Ceramic Coating Process", Proceedings of 11th European SOFC & SOE Forum, A1502, Chapter 09 - Session B15 - 14/117- 20/117 (1-4 July 2014)
しかしながら、上記非特許文献1記載の方法では、電解質層の上に形成される層の電解質層に対する密着強度が不足し、電気化学素子の強度(信頼性)や耐久性を確保することが難しかった。
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、強度(信頼性)や耐久性、性能に優れた金属支持型電気化学素子の製造方法、当該方法により製造された金属支持型電気化学素子、この金属支持型電気化学素子を備えた固体酸化物形燃料電池、固体酸化物形電解セル、電気化学モジュール、電気化学装置及びエネルギーシステムの提供を、その目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る金属支持型電気化学素子の製造方法の特徴構成は、
少なくとも金属支持体、電極層、電解質層及び対極電極層を備えた金属支持型電気化学素子の製造方法であって、
前記金属支持体の上に前記電極層を形成する電極層形成ステップと、
前記電極層の上に前記電解質層を形成する電解質層形成ステップと、
前記電解質層の上に前記対極電極層を形成する対極電極層形成ステップとを有し、
前記電解質層形成ステップと前記対極電極層形成ステップとの間に、前記電解質層形成ステップで形成された前記電解質層をアニール処理するアニール処理ステップを備える点にある。
上記特徴構成によれば、電解質層を形成した後、この形成した電解質層に対してアニール処理を施し、このアニール処理済みの電解質層の上に対極電極層を形成できる。形成した電解質層にアニール処理を施すことにより、電解質層の表面状態(例えば、撥水性など)が改良され、電解質層の表面と対極電極層の成分とが馴染みやすくなる。したがって、電解質層とこの上に形成する対極電極層との密着強度が向上し、強度(信頼性)や耐久性、性能に優れた金属支持型電気化学素子を製造できる。
また、上記目的を達成するための本発明の別の金属支持型電気化学素子の製造方法の特徴構成は、
少なくとも金属支持体、電極層、電解質層、中間層及び対極電極層を備えた金属支持型電気化学素子の製造方法であって、
前記金属支持体の上に前記電極層を形成する電極層形成ステップと、
前記電極層の上に前記電解質層を形成する電解質層形成ステップと、
前記電解質層の上に前記中間層を形成する中間層形成ステップと、
前記中間層の上に前記対極電極層を形成する対極電極層形成ステップとを有し、
前記電解質層形成ステップと前記中間層形成ステップとの間に、前記電解質層形成ステップで形成された前記電解質層をアニール処理するアニール処理ステップを備える点にある。
上記特徴構成によれば、電解質層を形成した後、この形成した電解質層に対してアニール処理を施し、このアニール処理済みの電解質層の上に中間層を形成できる。形成した電解質層にアニール処理を施すことにより、電解質層の表面状態(例えば、撥水性など)が改良され、電解質層の表面と中間層の成分とが馴染みやすくなる。したがって、電解質層とこの上に形成する中間層との密着強度が向上し、強度(信頼性)や耐久性、性能に優れた金属支持型電気化学素子を製造できる。
本発明に係る金属支持型電気化学素子の製造方法の更なる特徴構成は、
前記中間層は、混合伝導体を含有する点にある。
上記特徴構成によれば、中間層が混合伝導体を含むため、高い電気化学性能を発揮可能な金属支持型電気化学素子を実現できる。
本発明に係る金属支持型電気化学素子の製造方法の更なる特徴構成は、
前記アニール処理の処理温度が1100℃以下である点にある。
アニール処理の処理温度が高すぎると金属支持体が損傷する可能性がある。しかしながら、上記特徴構成によれば、アニール処理による金属支持体の損傷を抑制できる。
本発明に係る金属支持型電気化学素子の製造方法の更なる特徴構成は、
前記アニール処理の処理温度が200℃以上である点にある。
アニール処理の処理温度が低すぎると、電解質層の表面状態の改良が十分に進まず、電解質層の表面とこの上に形成する層の成分との馴染み易さが十分に得られない虞がある。しかしながら、上記特徴構成によれば、形成した電解質層の表面状態を十分に改良できるため、電解質層とこの上に形成する層との密着強度を十分に向上でき、強度(信頼性)や耐久性、性能に優れた金属支持型電気化学素子を製造できる。
本発明に係る金属支持型電気化学素子の製造方法の更なる特徴構成は、
前記電解質層形成ステップは、スプレーコーティング法によって前記電解質層を形成するステップである点にある。
上記特徴構成によれば、金属支持体が損傷し得るような高温域(例えば、1100℃より高い温度域)での処理を要しないスプレーコーティング法によって電解質層を形成でき、電解質層形成時における金属支持体の損傷を抑制できる。また、スプレーコーティング法によって形成された電解質層では、前記アニール処理による表面状態の改良の効果が大きく得られる。
本発明に係る金属支持型電気化学素子の製造方法の更なる特徴構成は、
前記電解質層形成ステップは、エアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法のいずれかによって前記電解質層を形成するステップである点にある。
上記特徴構成によれば、金属支持体が損傷し得るような高温域(例えば、1100℃より高い温度域)での処理を要しないエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法のいずれかによって電解質層を形成でき、電解質層形成時における金属支持体の損傷を抑制できる。また、上記のいずれかの方法によって形成された電解質層では、前記アニール処理による表面状態の改良の効果が大きく得られる。とりわけ、上記のいずれかの方法によって室温で形成された電解質層では、前記アニール処理による表面状態の改良の効果が大きく得られる。
本発明に係る金属支持型電気化学素子の製造方法の更なる特徴構成は、
前記電解質層は、安定化ジルコニアを含有する点にある。
上記特徴構成によれば、電解質層が安定化ジルコニアを含むため、例えば、600℃以上、好ましくは650℃以上の比較的高い温度域でも高い電気化学性能を発揮可能な金属支持型電気化学素子を実現できる。
本発明に係る金属支持型電気化学素子の製造方法の更なる特徴構成は、
前記金属支持体は、孔加工を施した金属板である点にある。
上記特徴構成によれば、金属支持体が孔加工を施した金属板であるため、金属粉末を焼結して得た多孔質金属支持体などと比較して強度面で有利である。
上記目的を達成するための本発明に係る金属支持型電気化学素子の特徴構成は、
上記の金属支持型電気化学素子の製造方法を用いて製造される点にある。
上記特徴構成によれば、金属支持型電気化学素子が、電解質層とこの上に形成する層(対極電極層や中間層)との密着強度が向上し、強度(信頼性)や耐久性、性能に優れたものとなる。
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池の特徴構成は、
上記金属支持型電気化学素子を備え、前記金属支持型電気化学素子で発電反応を生じさせる点にある。
上記特徴構成によれば、強度(信頼性)や耐久性、性能に優れた金属支持型電気化学素子を備えた固体酸化物形燃料電池として発電反応を行うことができるので、高信頼性・高耐久性・高性能な固体酸化物形燃料電池を得ることができる。
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形電解セルの特徴構成は、
上記金属支持型電気化学素子を備え、前記金属支持型電気化学素子で電解反応を生じさせる点にある。
上記特徴構成によれば、強度(信頼性)や耐久性、性能に優れた金属支持型電気化学素子を備えた固体酸化物形電解セルとして電解反応によるガスの生成を行うことができるので、高信頼性・高耐久性・高性能な固体酸化物形電解セルを得ることができる。
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学モジュールの特徴構成は、
上記金属支持型電気化学素子が複数集合した状態で配置される点にある。
上記特徴構成によれば、金属支持型電気化学素子が複数集合した状態で配置されることで、材料コストと加工コストを抑制しつつ、コンパクトで高性能な、強度と信頼性に優れた電気化学モジュールが実現できる。そして、例えば、電気化学モジュールを燃料電池として動作させる場合には、大きな発電出力を得ることも可能となる。
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、
上記金属支持型電気化学素子又は上記電気化学モジュールと、前記金属支持型電気化学素子又は前記電気化学モジュールに供給する還元性成分を生成する、或いは、前記金属支持型電気化学素子又は前記電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器と、を少なくとも有する点にある。
上記特徴構成によれば、金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールを燃料電池として動作させる場合、都市ガス等の既存の原燃料供給インフラを用いて供給される天然ガス等を基に、改質器などの燃料変換器により水素を生成するように構成でき、耐久性・信頼性及び性能に優れた金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールを備えた電気化学装置を実現できる。また、電気化学モジュールから流通される未利用の燃料ガスをリサイクルするシステムを構築し易くなるため、高効率な電気化学装置を実現できる。
一方、金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールを電解セルとして動作させる場合は、電極層に水蒸気や二酸化炭素を含有するガスが流通され、電極層と対極電極層との間に電圧が印加される。そうすると、電極層において電子eと水HOや二酸化炭素分子COが反応して、水素Hや一酸化炭素COと酸素イオンO2-となる。発生した酸素イオンO2-は、電解質層を通って対極電極層へ移動する。そして、対極電極層において、酸素イオンO2-が電子を放出して酸素Oとなる。以上の反応により、水蒸気を含有するガスが流通する場合には、水HOが水素Hと酸素Oとに分解され、二酸化炭素分子COを含有するガスが流通する場合には、一酸化炭素COと酸素Oとに電気分解される。
したがって、水蒸気と二酸化炭素分子COとを含有するガスが流通される場合は、上記電気分解により金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールで生成した水素及び一酸化炭素等から炭化水素などの種々の化合物を合成する燃料変換器を設けることができる。これにより、燃料変換器が生成した炭化水素等を金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールに流通する、或いは本システム・装置外に取り出して別途燃料や化学原料として利用することが可能となる。
上記目的を達成するための本発明に係る電気化学装置の特徴構成は、
上記金属支持型電気化学素子又は上記電気化学モジュールと、前記金属支持型電気化学素子又は前記電気化学モジュールから電力を取り出す、或いは、前記金属支持型電気化学素子又は前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器と、を少なくとも有する点にある。
上記特徴構成によれば、電力変換器は、金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールが発電した電力を取り出し、或いは、金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールに電力を流通することができる。これにより、上記のように金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールは、燃料電池として作用し、或いは、電解セルとして作用する。したがって、上記特徴構成によれば、燃料等の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換する、或いは、電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率が向上した電気化学装置を実現できる。尚、例えば、電力変換器としてインバータを用いる場合、燃料電池として動作させる際は、インバータによって昇圧したり、直流を交流に変換したりすることができるため、金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールで得られる電気出力を利用しやすくなるので好ましい。また、電解セルとして動作させる際は、交流電源から直流を得て、金属支持型電気化学素子又は電気化学モジュールへ直流の電力供給できる電気化学装置を構築できるので好ましい。
上記目的を達成するための本発明に係るエネルギーシステムの特徴構成は、
上記電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部と、を少なくとも有する点にある。
上記特徴構成によれば、耐久性・信頼性及び性能に優れ、かつエネルギー効率にも優れたエネルギーシステムを実現できる。また、電気化学装置から排出される未利用の燃料ガスの燃焼熱を利用して発電する発電システムと組み合わせてエネルギー効率に優れたハイブリッドシステムを実現することも可能である。
一実施形態に係る金属支持型電気化学素子の概略構成を示す図である。 一実施形態に係る電気化学モジュールの概略構成を示す図である。 一実施形態に係る電気化学装置及びエネルギーシステムの概略構成を示す図である。 引張強度試験の結果を示すグラフである。 別実施形態に係る金属支持型電気化学素子の概略構成を示す図である。 別実施形態に係る電気化学装置及びエネルギーシステムの概略構成を示す図である。 別実施形態に係る電気化学モジュールの概略構成を示す図である。
以下、実施形態に係る金属支持型電気化学素子E、金属支持型電気化学素子Eの製造方法、固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell:SOFC)、電気化学モジュールM、電気化学装置Y及びエネルギーシステムZについて説明する。本実施形態において、金属支持型電気化学素子Eは、水素を含む燃料ガスと空気(酸化剤ガス)の供給を受けて発電する固体酸化物形燃料電池の構成要素として用いる。尚、以下、層の位置関係などを表す際、例えば電解質層4から見て対極電極層6の側を「上」又は「上側」、電極層2の側を「下」又は「下側」という場合がある。また、金属支持体1における電極層2が形成されている側の面を「表側の面」、反対側の面を「裏側の面」という場合がある。
(金属支持型電気化学素子)
図1に示すように、金属支持型電気化学素子Eは、金属支持体1と、電極層2と、電極層2の上に形成された緩衝層3と、緩衝層3の上に形成された電解質層4と、電解質層4の上に形成された中間層5と、中間層5の上に形成された対極電極層6とを有する。つまり、対極電極層6は電解質層4の上に形成され、中間層5は電解質層4と対極電極層6との間に形成されている。電極層2は多孔質であり、電解質層4は緻密である。
(金属支持体)
金属支持体1は、電極層2、緩衝層3、電解質層4、中間層5及び対極電極層6を支持して金属支持型電気化学素子Eの強度を保つ。つまり、金属支持体1は、電気化学素子の構成要素を支持する支持体としての役割を担う。
金属支持体1の材料としては、電子伝導性、耐熱性、耐酸化性及び耐腐食性に優れた材料が用いられる。例えば、フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス、ニッケル基合金などが用いられる。特に、クロムを含む合金が好適に用いられる。本実施形態では、金属支持体1は、Crを18質量%以上25質量%以下含有するFe-Cr系合金を用いているが、Mnを0.05質量%以上含有するFe-Cr系合金、Tiを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金、Zrを0.15質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金、Ti及びZrを含有しTiとZrとの合計の含有量が0.15質量%以上1.0質量%以下であるFe-Cr系合金、Cuを0.10質量%以上1.0質量%以下含有するFe-Cr系合金であると特に好適である。
尚、金属支持体1がフェライト系ステンレス材から構成されると、安価で強度が高い金属支持型電気化学素子を実現できるので好ましい。
金属支持体1は全体として板状である。金属支持体1は、支持体として金属支持型電気化学素子Eを形成するのに充分な強度を有すれば良く、その厚さは、強度を確保するという観点で、例えば、0.1mm以上であると好ましく、0.15mm以上であるとより好ましく、0.2mm以上であると更に好ましい。また、その厚さは、コストを抑制するという観点で、例えば、2mm以下であると好ましく、1mm以下であるとより好ましく、0.5mm以下であると更に好ましい。そして、金属支持体1は、電極層2が設けられる面(表側の面)から裏側の面へ貫通する複数の貫通孔1aを有する。本実施形態において、金属支持体1は、金属板の表側の面と裏側の面とを貫通するように、パンチング加工やエッチング加工、レーザー加工などの、機械的、化学的あるいは光学的穿孔加工(孔加工)などにより、複数の貫通孔1aを設けた金属板である。これにより、金属支持体1の裏側の面から電極層2側への燃料ガス及び空気の供給をスムーズにできるので高性能な金属支持型電気化学素子を実現できる。
尚、板状の金属支持体1を曲げたりして、例えば箱状、円筒状などの形状に変形させて使用することも可能である。
金属支持体1の表面には、拡散抑制層としての金属酸化物層1bが設けられる。即ち、金属支持体1と後述する電極層2との間に、拡散抑制層が形成されている。金属酸化物層1bは、金属支持体1の外部に露出した面だけでなく、電極層2との接触面(界面)及び貫通孔1aの内側の面にも設けられる。この金属酸化物層1bにより、金属支持体1と電極層2との間の元素相互拡散を抑制できる。例えば、金属支持体1としてクロムを含有するフェライト系ステンレスを用いた場合は、金属酸化物層1bが主にクロム酸化物となる。そして、金属支持体1のクロム原子等が電極層2や電解質層4へ拡散することを、クロム酸化物を主成分とする金属酸化物層1bが抑制する。金属酸化物層1bの厚さは、拡散防止性能の高さと電気抵抗の低さを両立させることのできる厚みであれば良い。例えば、サブミクロンオーダーであることが好ましく、具体的には、平均的な厚さが0.3μm以上0.7μm以下程度であることがより好ましい。また、最小厚さは約0.1μm以上であることがより好ましい。また、最大厚さが約1.1μm以下であることが好ましい。
尚、金属酸化物層1bは、種々の手法により形成され得るが、金属支持体1の表面を酸化させて金属酸化物とする手法が好適に利用される。また、金属支持体1の表面に、金属酸化物層1bをスパッタリング法やPLD法等のPVD法、CVD法、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)などにより形成しても良いし、メッキと酸化処理によって形成しても良い。更に、金属酸化物層1bは導電性の高いスピネル相などを含んでも良い。
(電極層)
電極層2は、図1に示すように、金属支持体1の貫通孔1aが形成された領域を覆うように金属支持体1の表面に薄層の状態で設けることができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。また、金属支持体1における貫通孔1aが設けられた領域は、その全体が電極層2に覆われている。つまり、貫通孔1aは、金属支持体1における電極層2が形成された領域の内側に形成されている。換言すれば、全ての貫通孔1aは、電極層2に面して設けられている。
電極層2の材料としては、例えば、NiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO、Cu-CeOなどの複合材を用いることができる。これらの例では、GDC、YSZ、CeOを複合材の骨材と呼ぶことができる。
尚、電極層2は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法やパルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能なプロセスにより、例えば、1100℃より高い高温域での焼成を用いずに、良好な電極層2が得られる。そのため、金属支持体1を傷めることなく、また、金属支持体1と電極層2との元素拡散を抑制することができ、耐久性に優れた金属支持型電気化学素子を実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
電極層2は、気体透過性を持たせるため、その内部及び表面に複数の細孔を有する。即ち、電極層2は、多孔質な層として形成される。電極層2は、例えば、その緻密度が30%以上80%未満となるように形成される。細孔のサイズは、電気化学反応を行う際に円滑な反応が進行するのに適したサイズを適宜選ぶことができる。尚、緻密度とは、層を構成する材料の空間に占める割合であって、(1-気孔率)と表すことができ、また、相対密度と同等である。
(緩衝層)
緩衝層3は、図1に示すように、電極層2を覆った状態で、電極層2の上に薄層の状態で形成することができる。緩衝層3は、多孔質である電極層2の上に緻密な電解質層4を形成するために、両者を連続的に接続させ、金属支持型電気化学素子Eの製造時や運転時にかかる各種の応力を緩和する緩衝効果を有する層として、両者の間に配置される。そのため、緩衝層3は、あえて緻密度が電解質層4に比べて小さくなるように形成される。また、緩衝層3は、あえて緻密度が電極層2に比べて大きくなるように形成される。これによって緩衝層3は、金属支持体1上に多孔質な電極層2と緻密な電解質層4が形成された場合であっても、各層間で、各種の応力を吸収・緩和して、金属支持型電気化学素子Eの性能・信頼性・安定性を高める効果をも有する。尚、薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは4μm~25μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な緩衝層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。
緩衝層3の材料としては、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)等を用いることができる。特にセリア系のセラミックスが好適に用いられる。
緩衝層3は、低温焼成法(例えば1100℃より高い高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば、1100℃より高い高温域での焼成を用いずに緩衝層3が得られる。そのため、金属支持体1を傷めることなく、金属支持体1と電極層2との元素相互拡散を抑制することができ、耐久性に優れた金属支持型電気化学素子Eを実現できる。また、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になるので更に好ましい。
尚、本実施形態において、緩衝層3は、酸素イオン(酸化物イオン)伝導体であると好ましく、酸素イオン(酸化物イオン)及び電子の双方の伝導性を有する混合伝導体であると更に好ましい。このような性質を有する緩衝層3は、金属支持型電気化学素子Eへの適用に適している。
(電解質層)
電解質層4は、図1に示すように、緩衝層3の上に薄層の状態で形成される。また、厚さが10μm以下の薄膜の状態で形成することもできる。本実施形態において、電解質層4は、緩衝層3の上と金属支持体1の上とにわたって(跨って)設けられる。このように構成し、電解質層4を金属支持体1に接合することで、金属支持型電気化学素子Eを全体として堅牢性に優れたものとすることができる。
また、電解質層4は、金属支持体1の表側の面であって貫通孔1aが設けられた領域よりも大きな領域に設けられる。つまり、貫通孔1aは、金属支持体1における電解質層4が形成された領域の内側に形成されている。これにより、電解質層4の周囲において、電極層2及び緩衝層3からのガスのリークを抑制することができる。説明すると、金属支持型電気化学素子EをSOFCの構成要素として用いる場合、SOFCの作動時には、金属支持体1の裏側から貫通孔1aを通じて電極層2へガスが供給される。電解質層4が金属支持体1に接している部位においては、ガスケット等の別部材を設けることなく、ガスのリークを抑制することができる。尚、本実施形態では、電解質層4によって電極層2の周囲を全て覆っているが、電極層2及び緩衝層3の上部に電解質層4を設け、周囲にガスケット等を設ける構成としてもよい。
電解質層4の材料としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、SSZ(スカンジウム安定化ジルコニア)やGDC(ガドリニウム・ドープ・セリア)、YDC(イットリウム・ドープ・セリア)、SDC(サマリウム・ドープ・セリア)、LSGM(ストロンチウム・マグネシウム添加ランタンガレート)等の酸素イオンを伝導する電解質材料や、ペロブスカイト型酸化物等の水素イオンを伝導する電解質材料を用いることができる。特に、ジルコニア系のセラミックスが好適に用いられる。電解質層4をジルコニア系セラミックスとすると、金属支持型電気化学素子Eを用いたSOFCの稼働温度をセリア系セラミックスや種々の水素イオン伝導性材料に比べて高くすることができる。例えば、本実施形態のように、金属支持型電気化学素子EをSOFCに用いる場合、電解質層4の材料としてYSZのような650℃程度以上の高温域でも高い電解質性能を発揮できる材料を用い、システムの原燃料に都市ガスやLPG等の炭化水素系の原燃料を用い、原燃料を水蒸気改質等によってSOFCのアノードガスとするシステム構成とすると、SOFCのセルスタックで生じる熱を原燃料ガスの改質に用いる高効率なSOFCシステムを構築することができる。尚、本実施形態において、電解質層4は安定化ジルコニアを含有している。
電解質層4は、低温焼成法(例えば1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)やスプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などにより形成することが好ましい。これらの、低温域で使用可能な成膜プロセスにより、例えば、1100℃を越える高温域での焼成を用いずに、緻密で気密性及びガスバリア性の高い電解質層4が得られる。そのため、金属支持体1の損傷を抑制し、また、金属支持体1と電極層2との元素拡散を抑制することができ、性能・耐久性に優れた金属支持型電気化学素子Eを実現できる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、スプレーコーティング法を用いると、緻密で気密性及びガスバリア性の高い電解質層が低温域で容易に得られやすいので更に好ましい。
本実施形態において、電解質層4は、エアロゾルデポジション法によって形成された後、アニール処理が施され、表面状態が改良された状態で、後述する中間層5が形成されている。したがって、電解質層4と中間層5との密着強度がアニール処理を施していないものと比較して格段に向上している。
電解質層4は、アノードガスやカソードガスのガスリークを遮蔽し、且つ、高いイオン伝導性を発現するために、緻密に構成される。電解質層4の緻密度は90%以上が好ましく、95%以上であるとより好ましく、98%以上であると更に好ましい。電解質層4は、均一な層である場合は、その緻密度が95%以上であると好ましく、98%以上であるとより好ましい。また、電解質層4が、複数の層状に構成されているような場合は、そのうちの少なくとも一部が、緻密度が98%以上である層(緻密電解質層)を含んでいると好ましく、99%以上である層(緻密電解質層)を含んでいるとより好ましい。このような緻密電解質層が電解質層の一部に含まれていると、電解質層が複数の層状に構成されている場合であっても、緻密で気密性及びガスバリア性の高い電解質層を形成しやすくできるからである。
(中間層)
中間層5は、アニール処理が施された電解質層4の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを例えば、1μm~100μm程度、好ましくは2μm~50μm程度、より好ましくは3μm~15μm程度とすることができる。このような厚さにすると、高価な中間層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な性能を確保することが可能となる。
本実施形態において、中間層5は反応防止層として機能する。このため、中間層5の材料としては、電解質層4の成分と対極電極層6の成分との間の反応を防止できる材料であれば良いが、例えばセリア系材料等が用いられる。また、中間層5の材料として、Sm、Gd及びYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有する材料が好適に用いられる。尚、Sm、Gd及びYからなる群から選ばれる元素のうち少なくとも1つを含有し、これら元素の含有率の合計が1.0質量%以上10質量%以下であるとよい。中間層5を反応防止層として電解質層4と対極電極層6との間に導入することにより、対極電極層6の構成材料と電解質層4の構成材料との反応が効果的に抑制され、金属支持型電気化学素子Eの性能の長期安定性を向上できる。
中間層5は、酸素イオン(酸化物イオン)伝導性を有することが好ましい。また、酸素イオン(酸化物イオン)及び電子の双方の伝導性を有する混合伝導体であると更に好ましい。このような性質を有する中間層5は、金属支持型電気化学素子Eへの適用に適している。
中間層5の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属支持体1の損傷を抑制し、また、金属支持体1と電極層2との元素拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた金属支持型電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば、1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PVD法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になる上に、アニール処理によって表面状態が改良された電解質層4の上に高い密着強度で中間層5を形成できるので更に好ましい。
(対極電極層)
対極電極層6は、中間層5の上に薄層の状態で形成することができる。薄層とする場合は、その厚さを、例えば、1μm~100μm程度、好ましくは、5μm~50μmとすることができる。このような厚さにすると、高価な対極電極層材料の使用量を低減してコストダウンを図りつつ、十分な電極性能を確保することが可能となる。
対極電極層6の材料としては、例えば、LSCF、LSM等の複合酸化物、セリア系酸化物及びこれらの混合物を用いることができる。特に、対極電極層6が、La、Sr、Sm、Mn、Co及びFeからなる群から選ばれる2種類以上の元素を含有するペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。以上の材料を用いて構成される対極電極層6は、カソードとして機能する。
尚、対極電極層6の形成は、1100℃以下の処理温度で形成できる方法を適宜用いて行うと、金属支持体1の損傷を抑制し、また、金属支持体1と電極層2との元素拡散を抑制でき、性能・耐久性に優れた金属支持型電気化学素子Eを実現できるので好ましい。例えば、低温焼成法(例えば、1100℃を越える高温域での焼成処理をしない低温域での焼成処理を用いる湿式法)、スプレーコーティング法(溶射法やエアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法、コールドスプレー法などの方法)、PDV法(スパッタリング法、パルスレーザーデポジション法など)、CVD法などを適宜用いて行うことができる。特に、低温焼成法やスプレーコーティング法などを用いると低コストな素子が実現できるので好ましい。更に、低温焼成法を用いると、原材料のハンドリングが容易になる上に、高い密着強度で対極電極層6を形成できるので更に好ましい。
(金属支持型電気化学素子の製造方法)
次に、金属支持型電気化学素子Eの製造方法について説明する。本実施形態に係る金属支持型電気化学素子Eの製造方法は、電極層形成ステップ、電解質層形成ステップ、アニール処理ステップ、中間層形成ステップ及び対極電極層形成ステップを含み、更に、電極層形成ステップと電解質層形成ステップとの間に緩衝層形成ステップを含む。
(電極層形成ステップ)
電極層形成ステップでは、金属支持体1上に電極層2が薄膜の状態で形成される。電極層2の形成は、上述した成膜方法を用いることができるが、金属支持体1の劣化を抑制すべく、1100℃以下の低温域で使用可能な成膜方法を用いることが好ましい。
電極層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。まず、電極層2の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作成し、金属支持体1の表側の面に塗布する。そして電極層2を圧縮成形し(電極層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(電極層焼成工程)。電極層2の圧縮成形は、例えば、CIP(Cold Isostatic Pressing ;冷間静水圧加圧)成形、ロール加圧成形、RIP(Rubber Isostatic Pressing;ゴム型等方圧加圧)成形などにより行うことができる。また、電極層2の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。また、電極層平滑化工程と電極層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。
尚、本実施形態では、電極層2を形成した後、緩衝層3を形成するため、電極層平滑化工程や電極層焼成工程を省いたり、電極層平滑化工程や電極層焼成工程を後述する緩衝層平滑化工程や緩衝層焼成工程に含めてもよい。また、電極層平滑化工程は、ラップ成形やレベリング処理、表面の切削・研磨処理などを施すことによって行うことでもできる。
また、本実施形態において、電極層形成ステップにおける焼成工程時に、金属支持体1の表面に金属酸化物層1b(拡散抑制層)が形成される。つまり、本実施形態では、上記焼成工程に、焼成雰囲気を酸素分圧が低い雰囲気条件とする焼成工程を含んでいる。これにより、元素の相互拡散抑制効果が高く、抵抗値の低い良質な金属酸化物層1bが形成される。尚、電解質層形成ステップを焼成を行わない方法で行う場合を含め、別途、拡散抑制層を形成する工程を行うようにしてもよい。
(緩衝層形成ステップ)
緩衝層形成ステップでは、電極層2を覆う形態で、電極層2の上に緩衝層3が薄層の状態で形成される。緩衝層3の形成は、上述した成膜方法を用いることができるが、金属支持体1の劣化を抑制すべく、1100℃以下の低温域で使用可能な成膜方法を用いることが好ましい。
緩衝層形成ステップを低温焼成法で行う場合には、具体的には以下の例のように行う。まず、緩衝層3の材料粉末と溶媒(分散媒)とを混合して材料ペーストを作製し、電極層2の表側の面に塗布する。そして緩衝層3を圧縮成形し(緩衝層平滑化工程)、1100℃以下で焼成する(緩衝層焼成工程)。緩衝層3の圧縮成形は、例えば、CIP成形、ロール加圧成形、RIP成形などにより行うことができる。また、緩衝層3の焼成は、800℃以上1100℃以下の温度で行うと好適である。このような温度であると、金属支持体1の損傷・劣化を抑制しつつ、強度の高い緩衝層3を形成できるためである。また、緩衝層3の焼成を1050℃以下で行うとより好ましく、1000℃以下で行うと更に好ましい。これは、緩衝層3の焼成温度を低下させる程に、金属支持体1の損傷・劣化をより抑制しつつ、金属支持型電気化学素子Eを形成できるからである。尚、緩衝層平滑化工程と緩衝層焼成工程の順序を入れ替えることもできる。また、緩衝層平滑化工程は、ラップ成形やレベリング処理、表面の切削・研磨処理などを施すことによって行うことでもできる。
(電解質層形成ステップ)
電解質層形成ステップでは、電極層2及び緩衝層3を覆った状態で、電解質層4が緩衝層3の上に薄層の状態で形成される。電解質層4の形成は、上述した低温域で使用可能な成膜方法を用いることができるが、スプレーコーティング法を用いることが好ましい。特に、緻密で気密性及びガスバリア性能の高い、良質な電解質層4を1100℃以下の温度域で形成する上では、エアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法のいずれかを用いることがより好ましい。本実施形態では、エアロゾルデポジション法を用いて電解質層4を形成する。具体的には、エアロゾル化した電解質層4の材料粉末(本実施形態ではYSZやSSZなどの安定化ジルコニアの微粉末)を金属支持体1上の緩衝層3に向けて噴射し、室温で電解質層4を形成する。
(アニール処理ステップ)
アニール処理ステップでは、電解質層形成ステップで形成され、焼成等の処理が施される前の電解質層4に対して、所定の処理温度でアニール処理が施される。これにより、エアロゾルデポジション法などのスプレーコーティング法によって形成された電解質層4の表面状態が改良されるため、後述する中間層形成ステップにおいて、アニール処理を施した電解質層4上に中間層5を形成することで、電解質層4と中間層5との密着強度が向上する。
また、電解質層4と中間層5との密着強度は、アニール処理の処理温度が高いほど向上するが、200℃未満では電解質層4の表面状態の改良効果が不十分となって、電解質層4と中間層5との密着強度が不十分になり易く、ある程度大きな密着強度を得るためには、アニール処理の処理温度が少なくとも200℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましい。一方、アニール処理の処理温度が高すぎると、金属支持体1が損傷する可能性があるため、処理温度は1100℃以下であることが好ましい。尚、本実施形態では、アニール処理の処理温度を200℃、600℃、1000℃とした。
(中間層形成ステップ)
中間層形成ステップでは、アニール処理が施された電解質層4の上に中間層5が薄層の状態で形成される。中間層5の形成は、上述した成膜方法を用いることができるが、金属支持体1の劣化を抑制すべく、1100℃以下の低温域で使用可能な成膜方法を用いることが好ましい。
(対極電極層形成ステップ)
対極電極層形成ステップでは、対極電極層6が中間層5の上に薄層の状態で形成される。対極電極層6の形成は、上述した成膜方法を用いることができるが、金属支持体1の劣化を抑制すべく、1100℃以下の低温域で使用可能な成膜方法を用いることが好ましい。
以上のようにして、電解質層4とこの上に形成する中間層5との密着強度が向上し、強度(信頼性)や耐久性、性能に優れた金属支持型電気化学素子を製造できる。
(固体酸化物形燃料電池)
金属支持型電気化学素子Eを上記のような構成とすることで、当該金属支持型電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池の発電セルとして用いることができる。つまり、金属支持型電気化学素子Eで発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池を実現できる。
例えば、金属支持体1の裏側の面から貫通孔1aを通じて第一ガスとしての水素を含む燃料ガスを電極層2へ流通し、対極電極層6へ第二ガスとしての空気を流通し、所定の作動温度(例えば、500℃以上900℃以下)に維持する。そうすると、電解質層4に酸素イオンを伝導する電解質材料を用いた場合には、対極電極層6において空気に含まれる酸素Oが電子eと反応して酸素イオンO2-が生成される。その酸素イオンO2-が電解質層4を通って電極層2へ移動する。電極層2においては、流通された燃料ガスに含まれる水素Hが酸素イオンO2-と反応し、水HOと電子eが生成される。
電解質層4に水素イオンを伝導する電解質材料を用いた場合には、電極層2において流通された燃料ガスに含まれる水素Hが電子eを放出して水素イオンHが生成される。その水素イオンHが電解質層4を通って対極電極層6へ移動する。対極電極層6において空気に含まれる酸素Oと水素イオンH、電子eが反応し水HOが生成される。
以上の反応により、電極層2と対極電極層6との間に電気化学出力として起電力が発生する。この場合、電極層2は燃料電池の燃料極(アノード)として機能し、対極電極層6は空気極(カソード)として機能する。
尚、定格運転時に650℃以上の温度域で運転可能な固体酸化物形燃料電池であると、都市ガス等の炭化水素系ガスを原燃料とする燃料システムにおいて、原燃料を水素に変換する際に必要となる熱を燃料電池の排熱で賄うことが可能なシステムを構築できるため、燃料電池システムの発電効率を高めることができるので、より好ましい。また、定格運転時に900℃以下の温度域で運転される固体酸化物形燃料電池であると、金属支持型の電気化学素子EからのCr揮発の抑制効果が高められるのでより好ましく、定格運転時に850℃以下の温度域で運転される固体酸化物形燃料電池であると、Cr揮発の抑制効果を更に高められるので更に好ましい。
(電気化学モジュール)
次に、図2を参照して電気化学モジュールMについて説明する。電気化学モジュールMは、金属支持体1と金属支持体1の裏面に取り付けられたU字部材9とで筒状支持体が形成された状態の金属支持型電気化学素子Eを備えている。そして、この金属支持型電気化学素子Eが集電部材26を挟んで複数積層(複数集合)されて電気化学モジュールMが構成されている。尚、本実施形態では、集電部材26が、金属支持型電気化学素子Eの対極電極層6とU字部材9とに接合され、両者を電気的に接続しているが、金属支持型電気化学素子Eの対極電極層6とU字部材9とを直接電気的に接続する構成としてもよい。
また、電気化学モジュールMは、ガスマニホールド17、終端部材及び電流引出し部を有する。複数積層された金属支持型電気化学素子Eは、筒状支持体の一方の開口端部がガスマニホールド17に接続されて、ガスマニホールド17から気体の供給を受ける。供給された気体は、筒状支持体の内部を通流し、金属支持体1の貫通孔1aを通って電極層2に供給される。
(電気化学装置及びエネルギーシステム)
次に、図3を参照して、上記電気化学モジュールMを用いて構築した電気化学装置Y及びエネルギーシステムZについて説明する。
図3に示すように、エネルギーシステムZは、電気化学装置Yと、電気化学装置Yから流通される熱を再利用する排熱利用部としての熱交換器53とを有する。
本実施形態において、電気化学装置Yは、電気化学モジュールMと、脱硫器31及び改質器34からなる燃料変換器と、電気化学モジュールMに対して燃料変換器で生成された還元成分を含有する燃料ガスを供給する燃料供給部46と、電気化学モジュールMから電力を取り出す出力部としての電力変換器の一種であるインバータ38とを有する。
より具体的に言えば、電気化学装置Yは、脱硫器31や改質水タンク32、気化器33、改質器34、ブロア35、燃焼部36、インバータ38、制御部39、電気化学モジュールM、収納容器40等を有する。
脱硫器31は、都市ガス等の炭化水素系の原燃料に含まれる硫黄化合物成分を除去(脱硫)する。原燃料中に硫黄化合物が含有される場合、脱硫器31を備えることにより、硫黄化合物による改質器34あるいは金属支持型電気化学素子Eに対する影響を抑制することができる。気化器33は、改質水タンク32から供給される改質水から水蒸気を生成する。改質器34は、気化器33にて生成された水蒸気を用いて脱硫器31にて脱硫された原燃料を水蒸気改質して、水素を含む改質ガスを生成する。
電気化学モジュールMは、改質器34から供給された改質ガスと、ブロア35から供給された空気とを用いて、電気化学反応させて発電する。燃焼部36は、電気化学モジュールMから排出される反応排ガスと空気とを混合させて、反応排ガス中の可燃成分を燃焼させる。
電気化学モジュールMは、複数の金属支持型電気化学素子Eとガスマニホールド17とを有する。複数の金属支持型電気化学素子Eは互いに電気的に接続された状態で並列して配置され、金属支持型電気化学素子Eの一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されている。金属支持型電気化学素子Eは、ガスマニホールド17を通じて供給される改質ガスと、ブロア35から供給された空気とを電気化学反応させて発電する。
インバータ38は、電気化学モジュールMの出力電力を調整して、商用系統(図示省略)から受電する電力と同じ電圧及び同じ周波数にする。制御部39は電気化学装置Y及びエネルギーシステムZの運転を制御する。
気化器33、改質器34、電気化学モジュールM及び燃焼部36は、収納容器40内に収納される。そして、改質器34は、燃焼部36での反応排ガスの燃焼により発生する燃焼熱を用いて原燃料の改質処理を行う。
原燃料は、昇圧ポンプ41の作動により原燃料供給路42を通して脱硫器31に供給される。改質水タンク32の改質水は、改質水ポンプ43の作動により改質水供給路44を通して気化器33に供給される。そして、原燃料供給路42は脱硫器31よりも下流側の部位で、改質水供給路44に合流されており、収納容器40外にて合流された改質水と原燃料とが収納容器40内に備えられた気化器33に供給される。
改質水は気化器33にて気化され水蒸気となる。気化器33にて生成された水蒸気を含む原燃料は、水蒸気含有原燃料供給路45を通して改質器34に供給される。改質器34にて原燃料が水蒸気改質され、水素ガスを主成分とする改質ガス(還元性成分を有する第一ガス)が生成される。改質器34にて生成された改質ガスは、燃料供給部46を通して電気化学モジュールMのガスマニホールド17に供給される。
ガスマニホールド17に供給された改質ガスは、複数の金属支持型電気化学素子Eに対して分配され、金属支持型電気化学素子Eとガスマニホールド17との接続部である下端から金属支持型電気化学素子Eに供給される。改質ガス中の主に水素(還元性成分)が、金属支持型電気化学素子Eにて電気化学反応に使用される。反応に用いられなかった残余の水素ガスを含む反応排ガスが、金属支持型電気化学素子Eの上端から燃焼部36に排出される。
反応排ガスは、燃焼部36で燃焼され、燃焼排ガスとなって燃焼排ガス排出口50から収納容器40の外部に排出される。燃焼排ガス排出口50には、燃焼触媒部51(例えば、白金系触媒)が配置され、燃焼排ガスに含有される一酸化炭素や水素等の還元性成分を燃焼除去される。燃焼排ガス排出口50から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス排出路52により熱交換器53に送られる。
熱交換器53は、燃焼部36における燃焼で生じた燃焼排ガスと、供給される冷水とを熱交換させ、温水を生成する。即ち、熱交換器53は、電気化学装置Yから排出される熱を再利用する排熱利用部として動作する。
尚、排熱利用部の代わりに、電気化学モジュールMから(燃焼されずに)排出される反応排ガスを利用する反応排ガス利用部を設けてもよい。反応排ガスには、金属支持型電気化学素子Eにて反応に用いられなかった残余の水素ガスが含まれる。反応排ガス利用部では、残余の水素ガスを利用して、燃焼による熱利用や、燃料電池等による発電が行われ、エネルギーの有効利用がなされる。
〔実験例〕
以下、実験例について説明する。まず、厚さ0.3mm、直径25mmの円形のcrofer22APUの金属板に対して、中心から半径2.5mmの領域にレーザー加工により貫通孔1aを複数設けて、金属支持体1を作製した。
次に、60質量%のNiO粉末と40質量%のGDC粉末とを混合し、有機バインダーと有機溶媒(分散媒)とを加えてペーストを作製した。そのペーストを用いて、金属支持体1の中心から半径3mmの領域に電極層2を積層した。尚、電極層2の形成にはスクリーン印刷を用いた。そして、電極層2を積層した金属支持体1に対して、950℃で焼成処理を行った(電極層形成ステップ)。
ついで、GDCの微粉末に有機バインダーと有機溶媒(分散媒)を加えてペーストを作製した。そのペーストを用いて、スクリーン印刷により、電極層2を積層した金属支持体1の中心から半径5mmの領域に緩衝層3を積層した。その後、緩衝層3を積層した金属支持体1に対して、300MPaの圧力でCIP成形した後、1000℃で焼成処理を行うことで、表面が平坦な緩衝層3を形成した(緩衝層形成ステップ)。
以上のステップで得られた電極層2の厚さは約20μmであり、緩衝層3の厚さは約10μmであった。また、このように電極層2と緩衝層3とを積層した状態での金属支持体のHeリーク量は、0.2MPaの圧力下で約3mL/min・cmであった。
次に、エアロゾルデポジション法によって電解質層4を形成した。具体的には、モード形が約0.7μmの8YSZ(イットリア安定化ジルコニア)粉末を13L/minの流量でドライエアでエアロゾル化した。エアロゾルを圧力250Paとしたチャンバー内に導入して、電極層2と緩衝層3とを積層させた金属支持体1に対して、緩衝層3を覆うように15mm×15mmの範囲で噴射し、電解質層4を室温で形成した(電解質層形成ステップ)。尚、その際、金属支持体1は加熱しなかった。
以上のステップで得られた電解質層4の厚さは3~4μm程度であった。電極層2と緩衝層3と電解質層4を積層した状態での金属支持体1のHeリーク量を0.2MPaの圧力下で測定したところ、Heリーク量は検出下限(1.0mL/min・cm)未満であった。つまり、緩衝層3までを積層した状態でのHeリーク量に比べ、電解質層4を積層した状態でのHeリーク量は大幅に小さくなり、検出限界を下回るものとなった。したがって、形成された電解質層4は、緻密でガスバリア性能の高い、良質なものであることが確認された。
続いて、上記のようにして形成した電解質層4に対してアニール処理を施した。具体的には、電解質層4を形成した金属支持体1を、大気雰囲気下において、昇温速度5℃/minとし、600℃又は1000℃で60分間加熱した(アニール処理ステップ)。
次に、GDCの微粉末に有機バインダーと有機溶媒(分散媒)を加えてペーストを作製した。そのペーストを用いて、スクリーン印刷により、上記のようにアニール処理を施した電解質層4上に中間層5を形成した。その後、形成した金属支持型電気化学素子Eに対して、1000℃で焼成処理を行うことで、中間層5を形成した(中間層形成ステップ)。
以上のステップで得られた電極層2、緩衝層3、電解質層4及び中間層5を積層した状態の金属支持型電気化学素子Eについて、電解質層4と中間層5との密着強度を測定するために、引張強度試験機を用いて引張強度を測定した。具体的な引張強度試験方法として、Instron社製の万能材料試験機を用い、可動先端部に物体を挟み込むことができるアタッチメントを取り付けた。上述の金属支持型電気化学素子Eの中間層5の上側に接着剤を用いてねじを取り付けたのち、その金属支持型電気化学素子Eを万能材料試験機の土台に固定した。その後、金属支持型電気化学素子Eの中間層5の上側に取り付けたねじ部分を、上述の可動先端部のアタッチメントで挟み込んだ。可動先端部を一定速度で垂直方向上側に移動させ、電解質層4と中間層5の間で剥離するまでにかかった荷重を測定した。光学顕微鏡を用いて接着剤が中間層5と接していた面積を計測し、それを測定面積とした。剥離するまでにかかった荷重を測定面積で除して、引張強度N/cmを算出した。その結果、図4に示すように、電解質層4と中間層5との密着強度は、アニール処理を600℃で行った場合でおよそ40N/cmであったのに対し、1000℃で行った場合で約2倍の80N/cm程度であった。このことから、アニール処理の処理温度が増加することによって、電解質層4と中間層5との密着強度が増加することが確認された。尚、図示はしていないが、アニール処理を200℃で行った場合、アニール処理を施していないと場合と比較して密着強度の向上は確認されたが、600℃で行った場合と比較すると向上の程度は小さかった。
〔別実施形態〕
〔1〕上記実施形態では、金属支持型電気化学素子Eが中間層5を備える態様としたが、これに限られるものではなく、図5に示すように、中間層5を備えていない金属支持型電気化学素子E1であってもよい。この場合、例えば、金属支持型電気化学素子Eは、電解質層4の上に対極電極層6が形成された状態となる。
この場合、金属支持型電気化学素子E1は、少なくとも電極層形成ステップ、電解質層形成ステップ、アニール処理ステップ及び対極電極層形成ステップを含み、電解質層形成ステップと対極電極層形成ステップとの間に、電解質層形成ステップで形成された電解質層4をアニール処理するアニール処理ステップを行う方法によって製造できる。
このように製造される金属支持型電気化学素子E1についても、電解質層4にアニール処理が施され、表面状態が改良された状態で対極電極層6が形成されており、電解質層4と対極電極層6との密着強度がアニール処理を施していないものと比較して格段に向上している。
〔2〕上記実施形態では、金属支持型電気化学素子Eが緩衝層3を備える態様としたが、これに限られるものではなく、緩衝層3を備えていない態様であってもよい。この場合、金属支持型電気化学素子Eは、電極層2の上に電解質層4が形成された状態となる。
〔3〕上記実施形態では、金属支持体1が孔加工を施した金属板である態様としたが、これに限られるものではなく、金属粉末を焼結して得た多孔質体であってもよい。
〔4〕上記実施形態では、金属支持型電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池に用いたが、この金属支持型電気化学素子Eは、固体酸化物形電解セルや、固体酸化物を利用した酸素センサ等に利用することもできる。
金属支持型電気化学素子Eを電解セルとして動作させる場合、電極層2に水蒸気や二酸化炭素を含有するガスを流通し、電極層2と対極電極層6との間に電圧を印加する。そうすると、電極層2において電子eと水HOや二酸化炭素分子COとが反応し、水素Hや一酸化炭素COと酸素イオンO2-となる。酸素イオンO2-は、電解質層4を通って対極電極層6へ移動する。そして、対極電極層6において酸素イオンO2-が電子を放出して酸素Oとなる。以上の反応により、水HOが水素Hと酸素Oとに電気分解される。二酸化炭素分子COを含有するガスが流通される場合は一酸化炭素COと酸素Oとに電気分解される。
図6には、金属支持型電気化学素子Eを上述した電解反応によるガスの生成を行う電解セルとして動作させる場合の電気化学装置Y1及びエネルギーシステムZ1の一例を示した。同図に示すように、エネルギーシステムZ1は、電気化学装置Y1と、電気化学装置Y1から流通される熱を再利用する排熱利用部としての2つの熱交換器90,92とを有する。
この実施形態において、電気化学装置Y1は、電気化学モジュールMと、電気化学モジュールMで生成された水素などを基に炭化水素を合成する燃料変換器91と、電気化学モジュールMに電力を流通する電力変換器93とを有する。
この電気化学装置Y1において、電気化学モジュールMは、複数の金属支持型電気化学素子Eと2つのガスマニホールド17,171とを有する。複数の金属支持型電気化学素子Eは、互いに電気的に接続された状態で並列して配置される。金属支持型電気化学素子Eは、一方の端部(下端部)がガスマニホールド17に固定されており、他方の端部(上端部)がガスマニホールド171に固定されている。金属支持型電気化学素子Eの一方の端部におけるガスマニホールド17は、水蒸気及び二酸化炭素の供給を受ける。そして、金属支持型電気化学素子Eで上述の反応により生成した水素及び一酸化炭素等が、他方の端部と連通するガスマニホールド171によって収集される。
また、この実施形態においては、熱交換器90を、燃料変換器91で起きる反応によって生ずる反応熱と水とを熱交換させ気化する排熱利用部として動作させるとともに、熱交換器92を、金属支持型電気化学素子Eによって生ずる排熱と水蒸気及び二酸化炭素とを熱交換させ予熱する排熱利用部として動作させる構成とすることで、エネルギー効率を高められるようになっている。
また、電力変換器93は、電気化学モジュールMの金属支持型電気化学素子Eに電力を流通する。これにより、金属支持型電気化学素子Eは、電解セルとして作用する。
よって、上記構成によれば、電気エネルギーを燃料等の化学的エネルギーに変換する効率を向上できる電気化学装置Y1及びエネルギーシステムZ1を実現できる。
〔5〕上記実施形態では、金属支持型電気化学素子Eを電気化学モジュールMとして複数組み合わせて用いる態様としたが、これに限られるものではなく、単独で用いることも可能である。
〔6〕上記実施形態では、エネルギーシステムZ,Z1が、電気化学装置Y,Y1から排出される熱を再利用する排熱利用部を備える態様としたが、これに限られるものではなく、排熱利用部を備えていない態様であってもよい。
〔7〕上記実施形態では、電極層2の材料として例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO、Cu-CeOなどの複合材を用い、対極電極層6の材料として例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用い、電極層2に水素ガスを流通して燃料極(アノード)とし、対極電極層6に空気を流通して空気極(カソード)とし、固体酸化物形燃料電池の発電セルとして用いる態様としたが、これに限られるものではない。このような構成を変更して、電極層2を空気極とし、対極電極層6を燃料極とすることが可能なように、金属支持型電気化学素子Eを構成する態様であってもよい。即ち、電極層2の材料として、例えばLSCF、LSM等の複合酸化物を用い、対極電極層6の材料として、例えばNiO-GDC、Ni-GDC、NiO-YSZ、Ni-YSZ、CuO-CeO、Cu-CeOなどの複合材を用いる。このように構成した金属支持型電気化学素子Eであれば、電極層2に空気を流通して空気極とし、対極電極層6に水素ガスを流通して燃料極とし、金属支持型電気化学素子Eを固体酸化物形燃料電池の発電セルとして用いることができる。
〔8〕上記実施形態では、電気化学モジュールMが、金属支持体1と金属支持体1の裏面に取り付けられたU字部材9とで筒状支持体が形成された状態の金属支持型電気化学素子Eを備える態様としたが、これに限られるものではない。例えば、図7に示すように、金属支持型電気化学素子Eを、セル間接続部材71を間に挟んで積層することで、電気化学モジュールMを構成する態様であってもよい。
この場合、セル間接続部材71は、導電性を有し、且つ気体透過性を有さない板状の部材であり、表面と裏面とに互いに直交する溝72が形成されている。尚、セル間接続部材71は、ステンレス等の金属や、金属酸化物を用いることができる。
そして、このセル間接続部材71を間に挟んで金属支持型電気化学素子Eを積層すると、溝72を通じて気体を金属支持型電気化学素子Eに供給できる。詳しくは、一方の面に形成された溝72が第一気体流路72aとなり、金属支持型電気化学素子Eの表側、即ち、対極電極層6に気体を供給する。また、他方の面に形成された溝72が第二気体流路72bとなり、金属支持型電気化学素子Eの裏側、即ち、金属支持体1の裏側の面から貫通孔1aを通じて電極層2へ気体を供給する。
このように構成した電気化学モジュールMを固体酸化物形燃料電池の発電セルとして動作させる場合は、第一気体流路72aに空気を供給し、第二気体流路72bに水素を供給する。そうすると金属支持型電気化学素子Eにて発電反応が進行し、起電力・電流が発生する。発生した電力は、積層された金属支持型電気化学素子Eの両端のセル間接続部材71から、電気化学モジュールMの外部に取り出される。
尚、溝72は、セル間接続部材71の表面に形成されるものと裏面に形成されるものとが互いに並行であってもよい。
〔9〕上記実施形態では、金属支持型電気化学素子Eを主に平板型や円筒平板型の固体酸化物形燃料電池に用いる態様としたが、これに限られるものではなく、円筒型の固体酸化物形燃料電池などの素子に利用することもできる。
〔10〕上記実施形態では、電気化学装置Yが、複数の金属支持型電気化学素子Eを有する電気化学モジュールMを備える態様としたが、これに限られるものではない。例えば、電気化学装置が一つの金属支持型電気化学素子Eを備える態様であってもよい。
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
1 :金属支持体
2 :電極層
3 :緩衝層
4 :電解質層
5 :中間層
6 :対極電極層
E,E1:金属支持型電気化学素子
M :電気化学モジュール
Y,Y1:電気化学装置
Z,Z1:エネルギーシステム

Claims (16)

  1. 少なくとも金属支持体、電極層、電解質層及び対極電極層を備えた金属支持型電気化学素子の製造方法であって、
    前記金属支持体の上に前記電極層を形成する電極層形成ステップと、
    前記電極層の上に前記電解質層を形成する電解質層形成ステップと、
    前記電解質層の上に前記対極電極層を形成する対極電極層形成ステップとを有し、
    前記電解質層形成ステップと前記対極電極層形成ステップとの間に、前記電解質層形成ステップで形成された前記電解質層をアニール処理するアニール処理ステップを備える、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  2. 少なくとも金属支持体、電極層、電解質層、中間層及び対極電極層を備えた金属支持型電気化学素子の製造方法であって、
    前記金属支持体の上に前記電極層を形成する電極層形成ステップと、
    前記電極層の上に前記電解質層を形成する電解質層形成ステップと、
    前記電解質層の上に前記中間層を形成する中間層形成ステップと、
    前記中間層の上に前記対極電極層を形成する対極電極層形成ステップとを有し、
    前記電解質層形成ステップと前記中間層形成ステップとの間に、前記電解質層形成ステップで形成された前記電解質層をアニール処理するアニール処理ステップを備える、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  3. 前記中間層は、混合伝導体を含有する請求項2に記載の、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  4. 前記アニール処理の処理温度が1100℃以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  5. 前記アニール処理の処理温度が200℃以上である請求項1~4のいずれか一項に記載の、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  6. 前記電解質層形成ステップは、スプレーコーティング法によって前記電解質層を形成するステップである請求項1~5のいずれか一項に記載の、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  7. 前記電解質層形成ステップは、エアロゾルデポジション法、エアロゾルガスデポジション法、パウダージェットデポジション法、パーティクルジェットデポジション法のいずれかによって前記電解質層を形成するステップである請求項1~5のいずれか一項に記載の、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  8. 前記電解質層は、安定化ジルコニアを含有する請求項1~7のいずれか一項に記載の、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  9. 前記金属支持体は、孔加工を施した金属板である請求項1~8のいずれか一項に記載の、金属支持型電気化学素子の製造方法。
  10. 請求項1~9のいずれか一項に記載の、金属支持型電気化学素子の製造方法を用いて製造される金属支持型電気化学素子。
  11. 請求項10に記載の金属支持型電気化学素子を備え、前記金属支持型電気化学素子で発電反応を生じさせる固体酸化物形燃料電池。
  12. 請求項10に記載の金属支持型電気化学素子を備え、前記金属支持型電気化学素子で電解反応を生じさせる固体酸化物形電解セル。
  13. 請求項10に記載の金属支持型電気化学素子が複数集合した状態で配置される電気化学モジュール。
  14. 請求項10に記載の金属支持型電気化学素子又は請求項13に記載の電気化学モジュールと、前記金属支持型電気化学素子又は前記電気化学モジュールに供給する還元性成分を生成する、或いは、前記金属支持型電気化学素子又は前記電気化学モジュールで生成する還元性成分を含有するガスを変換する燃料変換器と、を少なくとも有する電気化学装置。
  15. 請求項10に記載の金属支持型電気化学素子又は請求項13に記載の電気化学モジュールと、前記金属支持型電気化学素子又は前記電気化学モジュールから電力を取り出す、或いは、前記金属支持型電気化学素子又は前記電気化学モジュールに電力を流通する電力変換器と、を少なくとも有する電気化学装置。
  16. 請求項14又は15に記載の電気化学装置と、前記電気化学装置から排出される熱を再利用する排熱利用部と、を少なくとも有するエネルギーシステム。

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