JP7003016B2 - 水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒、陽極、膜電極複合体、水電解用セル、スタック及び水電解装置 - Google Patents

水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒、陽極、膜電極複合体、水電解用セル、スタック及び水電解装置 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、触媒、陽極、膜電極複合体、水電解用セル、スタック及び水電解装置に関する。
近年、電気化学セルは盛んに研究されている。電気化学セルのうち、例えば、固体高分子型水電解用セル(PEMEC:Polymer Electrolyte MembraneElectrolysis Cell)は、太陽光発電など再生可能エネルギーへの応答性が優れるため、大規模エネルギー貯蔵システムの水素生成としての利用が期待されている。十分な耐久性と電解特性を確保するため、PEMECの陰極には白金(Pt)ナノ粒子触媒が、陽極にはイリジウム(Ir)ナノ粒子触媒のような貴金属触媒が、一般に使用されている。
PEMECの普及化への課題は、貴金属触媒使用量の低減によるコスト減である。特に陽極の酸素発生触媒として使用されている貴金属触媒使用量の大幅低減が求められる。
また、酸素発生触媒において、ルテニウム(Ru)の高い活性が報告されている。しかし、水電解の電極反応に伴うRuの溶解が発生することで、酸素発生活性と耐久性の維持は困難である。したがって、高い酸素発生活性と耐久性を備えた触媒が求められる。
特開2012-204221号公報 特表2016―503723号公報 特表2003―508877号公報 特公昭63―6636号公報 特開2007―265929号公報 特開2005―334690号公報 特開2016―108635号公報
本発明が解決しようとする課題は、少ない量の貴金属でも酸素発生活性と耐久性が高い触媒を提供することにある。
上記の課題を達成するために、実施形態の水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒は、Ru及びRuとは異なる金属原子Mを含んだ粒子の凝集体からなる多孔質構造体を含む触媒であり、粒子は金属酸化物であり、多孔質構造体の表面領域における金属原子Mの金属原子比率は、多孔質構造体の全体における金属原子Mの金属原子比率より高い。表面領域の厚さは、多孔質構造体の表面から3nm以下であり、多孔質構造体の全体における金属原子の平均組成は、Ru で表され、x、yは、x+y=100及び20≦y≦60を満たす。
一実施形態に係る触媒の概念図。 一実施形態に係る触媒の概念図。 一実施形態に係る触媒を示すTEM写真。 一実施形態にかかる触媒の分析スポットを説明する図。 一実施形態に係る電極の概念図。 一実施形態に係る膜電極複合体(MEA)の断面図。 一実施形態の水電解用セルの断面図。 一実施形態のスタックを示す図。 一実施形態の水電解装置を示す図。 一実施形態の水素利用システムを示す図。 一実施形態の水素利用システムを示す図。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、同一部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る触媒100の概念図を示している。触媒100は、Ru及びRuとは異なる金属原子Mを含んだ粒子1の凝集体からなる多孔質構造体10を含む。粒子1は、Ru及び金属原子Mを含んだ金属酸化物である。触媒100は、水電解反応用に適した触媒である。触媒層として実施形態の触媒100単体又は触媒100と例えばガス拡散性のシートなどと組み合わせた複合層を用いて膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)作製することが出来る。多孔質構造体10は、例えば、平面状に広がる層状物である。粒子1が2次元的又は3次元的に積み重なって凝集して、立体的な多孔質構造体10を構成している。
粒子1が凝集して多孔質構造体10を構成している。粒子1同士の間の間隙が多孔質構造体10の孔である。粒子1の結晶構造については特に限定は無いが、多孔質構造体10の耐久性を考慮すると、結晶体であることが好ましい。粒子1に一部アモルファスの金属酸化物が含まれていてもよい。多孔質構造体10は、平均で直径1nm以上の多数の孔を含む。多数の孔を含む多孔質構造であると、物質輸送が多孔質構造体10の内部においても好適に行うことができる。
金属原子Mは、水電解の電極反応に対して安定性が高い原子であることが好ましい。金属原子Mは、例えばIr、Rh、Au、Ta、W、Si、Ti、Zr、Sn、Pt、Pd、Hf、V、Mo、Cr、Co、Ni、Nb、Fe、Mn、AlおよびZnなどの金属原子から選択される少なくとも1種であることが好ましい。金属原子Mとしては、Ir,Ta,Sn及びAlから選択される少なくとも1種は、酸化状態における耐久性が特に高い。多孔質構造体10の耐久性を高める観点から多孔質構造体10の表面領域aにおける金属原子Mの金属原子比率は、多孔質構造体10の全体における金属原子Mの金属原子比率より高いことが好ましい。
多孔質構造体10に含まれる金属原子の平均組成(多孔質構造体10の全体における金属原子の平均組成)は、Ruで表され、式中のx、yは、それぞれ原子比であって、xとyは、x+y=100、35≦x≦80、20≦y≦65を満たすことが好ましい。多孔質構造体10の全体におけるRuの金属原子比率であるxが40未満では十分な酸素発生活性が得られず、80を超えると金属原子Mを含んでも耐久性が低くなるため、多孔質構造体10の全体におけるRuの金属原子比率であるxは、40%以上80%以下であることが好ましい。粒子1は、Ru酸化物と金属原子Mの複合酸化物の粒子、Ru酸化物の粒子と金属原子Mの酸化物の粒子の混合物、Ru酸化物の粒子とRu酸化物と金属原子Mの複合酸化物の粒子の混合物、金属原子Mの酸化物の粒子とRu酸化物と金属原子Mの複合酸化物の粒子などの形態が含まれ、特に限定されるものではない。
多孔質構造体10の表面領域aにおける金属原子Mの金属原子比率は、多孔質構造体10の全体における金属原子Mの金属原子比率より高いことが好ましい。すなわち、多孔質構造体10の表面領域aにおける金属原子の平均組成を、Ruと表すとき、式中のm、nは、それぞれ原子比であって、mとnは、m+n=100、60<n<100を満たすことが好ましい。多孔質構造体10の全体における金属原子Mの中の金属原子比率であるyと多孔質構造体10の表面領域aにおける金属原子Mの金属原子比率であるnは、y>nを満たすことが好ましい。このとき、高い酸素発生活性を示すRuの利得を活かし、かつ水電解の電極反応に対し安定性の高い原子MによってRuが保護され、多孔質構造体26の劣化が抑制される。多孔質構造体10の表面領域aのRuの金属原子比率であるmが30以下であるとさらに多孔質構造体10の劣化を抑制できるためより好ましい。なお、本実施形態の多孔質構造体10は、白金などほかの貴金属触媒と混合した触媒を使用することも可能である。
全体的に、金属元素Mの含有比率を高めると、耐久性は向上するが、触媒活性が低下してしまう。実施形態の多孔質構造体10は、内部に多数の孔を有するため多孔質構造体10の内部へも物質輸送が円滑に行える。多孔質構造体10の内部におけるRuの金属原子比率を高くして、一方、多孔質構造体10の表面側の金属元素Mの金属原子比率を高めることで、高い触媒活性と高い耐久性の両立が可能である。表面領域aの厚さは、多孔質構造体10の表面から3nm以下である。より詳細には、多孔質構造体10の表面領域aは、多孔質構造体10の表面から多孔質構造100体の厚さ方向に3nmの深さまでの領域である。また、多孔質構造体10の表面とは、多孔質構造体10の対向する2つ面の面積が最大となるように選択された面であり、触媒100を膜電極接合体に用いた場合、多孔質構造体10の1つの表面は、電解質膜と対向し、他方の表面は、電極の基材と対向する。多孔質構造体10の他の面は、側面とする。なお、多孔質構造体10の両側の表面領域aを除く領域を内部領域bとする。
触媒100の活性を考慮し、多孔質構造体10の耐久性を高める観点から多孔質構造体10の表面領域aの金属原子Mの金属原子比率であるnと多孔質構造体10の全体における金属原子Mの金属原子比率であるyは、1.2≦n/y≦8.0を満たすことが好ましい。また、同観点から、多孔質構造体10の表面領域aの金属原子Mの金属原子比率であるnは、70<n<100を満たすことがより好ましい。
多孔質構造体10の表面領域aのRuの金属原子比率であるnと多孔質構造体10の全体におけるRuの金属原子比率であるxは、0.0<n/x≦0.6を満たすことが好ましい。
多孔質構造体10の厚さは、7nm以上100nm以下であることが好ましい。7nm未満では多孔質構造体10の耐久性が不十分な場合が多い。100nmを超えると、多孔質構造体10内部領域b(表面領域aと表面領域aの間)の触媒の利用効率が低い。10nm以上、50nm以下であることが構造安定性の観点からより好ましい。多孔質構造体10の厚さがこの範囲内であれば、触媒の利用効率を低下させることなく、十分な触媒耐久性を維持できるからである。また、少なくとも多孔質構造体10には、多孔質構造体10の内部領域bが存在する。なお、多孔質構造体10の厚さは、多孔質構造体10の2つの表面間距離である。
粒子1の直径は、1nm以上20nm以下であると触媒の利用効率が高まるため好ましい。粒子1の直径は、3nm以上20nm以下であることがより好ましい。実施形態における直径とは、外接円直径を表す。粒子1は、コアシェル構造になっているものが含まれる。すなわち、1層に広がって凝集した粒子1が多孔質構造体10を構成している場合がある。粒子1の表面からの厚さが0.2nm以上1nm以下までの厚さにおいてRuの原子比が30%以下であることがよく観察される。
触媒100は、少なくとも一部が、多孔質構造体10と空隙11とが交互に積層した積層型の構造も含む。図2に一実施形態に係る積層型の触媒100の構造を示す。空隙11は、多孔質構造体10の孔とは異なり、平面状に広がる層状の空隙である。空隙11の厚さは、典型的には10nm以上100nm以下である。図2では、空隙11を挟む多孔質構造体10が分離しているが、実際の触媒100では、空隙11を挟む多孔質構造体10は連結している。
図3は、一実施形態に係る触媒100を示す透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)写真を示す。図3(a)に示すように、多孔質構造体26は、粒子状触媒同士の間に多孔を形成した多孔質層である。また、図3(b)に示すように、少なくとも一部が、多孔質構造体10と空隙11が積層方向において交互に積層されている。積層型の触媒100を用いることで多孔質構造体10の構造がより安定になるほか、触媒反応に不可欠な物質輸送がよりスムーズになる。また、実施形態の触媒100は、高い触媒活性を維持するため、長期にわたって触媒活性が高いことから貴金属触媒量を少なくすることができる。
図3(c)は、1000万倍の高倍率のSEM写真で、エネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-Ray spectrometry:EDX)により多孔質構造体10の金属原子または粒子1の組成分布をナノスケールレベルで把握できる。
多孔質構造体10の金属原子の平均組成や表面領域の金属原子の平均組成については、透過電子顕微鏡による組成分析によって確認でき、以下のように評価した。まず、図4の一実施形態にかかる触媒100の分析スポットを説明する図に示すように触媒100(多孔質構造体10)の表面の9スポットA1~A9を定める。各スポットは、正方形状で少なくとも5mmの領域を有する。そして、図4に示すように、触媒長さD1と触媒幅D2(D1≧D2)とした場合、触媒100の幅方向に対向する2辺からそれぞれ内側にD3(=D1/10)の距離のところに仮想線を引き、触媒100の長さ方向に対向する2辺からそれぞれ内側にD4(=D2/10)の距離のところに仮想線を引き、さらに、触媒100の中心を通る幅方向に平行な仮想線を引き、触媒100の中心を通る長さ方向に平行な仮想線を引き、仮想線の交点9点を中心とする領域を観察スポットA1~A9とする。SEMやTEMによる観察断面は、図4の面に対して垂直方向である。
各スポットの断面を切り出し、TEM観察用断面サンプルを作製した。各スポットの9サンプルについて、それぞれ3箇所でTEMにより観察した。1000万倍のTEM像を得て、コントラストから、多孔質構造体10と空隙11を区別した。各箇所において得た1000万倍のTEM像を用い、各視野において3個所の多孔質構造体10の厚さ、各サンプルの計測値の平均値をこの多孔質構造体10の平均厚みとして算出した。また、多孔質構造体10の全体における金属原子の平均組成や表面領域における金属原子の平均組成や内部領域における金属原子の平均組成をエネルギー分散型X線分析により厚さ方向に向かって計測し、多孔質構造体10の全体、表面領域a及び内部領域bの原子M、Ruの組成比(原子濃度比率)を求めた。測定値から平均組成及び金属原子比率の平均値を得た。
本実施形態にかかる触媒層100の製造方法を説明する。
図示しない基材などの上に、M原子リッチ構造を形成するため、Ru/M原子比の低い混合物またはM原子を使ってスパッタし、第一レイヤーを形成する(ステップ1)。次にRu/M原子比の高いまたはRuを使ってスパッタし、第二サブレイヤーを形成する(ステップ2)。Ru/M原子比の低いまたは原子Mを使って、第三サブレイヤーを形成する(ステップ3)。積層型の触媒100を作製する場合は、さらに洗浄などで除去しやすい空隙11の前駆体である造孔剤材料をスパッタする(ステップ4)。ステップ1~ステップ4を複数回繰り返し、造孔材料が複数層積層された積層体(触媒100前駆体)を得る。次いで、アルカリもしくは酸によって洗浄することで造孔処理を行う(ステップ5)。これで、造孔材料部分は空隙11となり、触媒層24が形成される。空隙11を含まない触媒100を作製する場合は、ステップ1~ステップ3の工程によって触媒100を作製することができる。
なお、上述したスパッタの際にチャンバーに酸素ガスを添加する反応スパッタ法を採用できる。酸素ガスの分圧、スパッタまたは蒸着時の電源パワー、基板温度などパラメータの最適化によって触媒の耐久性を向上させることができる。また、スパッタまたは洗浄した触媒に対して大気中で300~600℃の温度において5分~4時間の熱処理を行うことで、表面領域の構造を強化することができ、耐久性を大きく向上させることができる。
なお、触媒100を用いた電極101とすることが出来る。電極101は、水電解用の膜電極接合体、水電解用セル、スタック及び水電解装置の陽極として好適である。図5の電極101の概念図に示すように、電極101は、例えば基材12上に触媒を設けた構成が挙げられる。
(第2の実施形態)
図6は、本発明の一実施形態に係る膜電極複合体(MEA200)の断面図を示している。
MEA200は、陽極である第1の電極21と、陰極である第2の電極22と、第1の電極21と第2の電極22の間に設けられた電解質膜23とを含む。MEA200を水電解に用いると、高い酸素発生活性及び耐久性を示す。
第1の電極21は、電解質膜23の一方の面と隣接し、電解質膜23と隣接する触媒層24と、触媒層24と隣接する第1のガス拡散層(基材)25とを含む。
第2の電極22は、電解質膜23の他方の面と隣接し、電解質膜23と隣接する触媒層26と、触媒層26と隣接する第2のガス拡散層(基材)27とを含む。
電解質膜23は、プロトン伝導性がよく電気的に絶縁された膜である。プロトン伝導性を有する電解質膜としては、例えばスルホン酸基を有するフッ素樹脂(例えば、ナフィオン(商標 デュポン社製)、フレミオン(商標 旭化成社製)、およびアシプレックス(商標 旭硝子社製)などや、タングステン酸やリンタングステン酸などの無機物を使用することができる。
電解質膜23の厚さは、MEA200の特性を考慮して適宜決定することができる。強度、耐溶解性およびMEAの出力特性の観点から、電解質膜23の厚さは、好ましくは10μm以上200μm以下である。実施形態の厚さは、積層方向における平均厚さを表す。実施形態における積層方向とは、第2の電極22から第1の電極21に向かう方向を表す。
触媒層26には、陰極で用いられる触媒であればよく、例えば、Ptナノ粒子触媒が用いられる。Ptナノ粒子触媒と空隙が積層方向において交互に積層された触媒層26に用いると、粒子状触媒の構造がより安定になるほか、物質輸送がよりスムーズになる。また、貴金属触媒量を少なくすることができる。
触媒層24には、第1の実施形態の触媒100を用いることが好ましい。
基材25、27は、多孔性と導電性が高い材料を用いる。基材25は、水電解セルの陽極として使用されるため、耐久性を高いチタン(Ti)材料が用いられ、例えば、Tiメッシュ、Ti繊維からなるクロース、Ti焼結体などが用いられる。基材27は、水電解セルの陰極として使用されるため、例えば、カーボンペーパーなどが用いられる。基材25、27の開口率、触媒層24、26に接する部分の空孔構造などの調整、または基材25、27の表面をブラスト処理によって水電解の活性が向上する。触媒層24、26への水供給、電極反応生成物の排出などがスムーズになり、触媒層24、26における電極反応が促進されたためと考えられる。基材25、27の上にコーティング層を付けても良い。導電性のある緻密なコーティング層によって電極21、22の耐久性を向上させる。コーティング層は特に限定されないが、金属材料、酸化物、窒化物などセラミックス材料、カーボンなどを使用できる。コーティング層において、異なる材料から構成された多層構造または傾斜構造を形成させて、耐久性を更に高めることができる。基材にTiを用いた場合は、コーティング層として厚さが10nm以上のIrを含む酸化物が特に有効である。コーティング層にはIrとTiとの緻密な複合酸化物層が形成されたと考えられる。
本実施形態にかかるMEA200の製造方法を説明する。
触媒層24、26と電解質膜23を加熱・加圧して接合させ、MEA200を製造する。触媒層24、26の形成基材が転写用基板の場合は、加熱・加圧して転写用基板から触媒層24、26を電解質膜に転写してから、触媒層24、26の上にガス拡散層(基材25、27に相当)を配置して、対極と接合させてMEA200を作製することができる。
上述のような各部材の接合は、ホットプレス機を使用して行われる。プレス温度は、電極21、22および電解質膜23において接合剤として使用される高分子電解質のガラス転移温度より高い温度であり、100℃以上、300℃以下である。プレス圧とプレス時間は、電極21、22の硬さに依存するが、例えば、圧力が5kg/cm以上200kg/cm以下であり、時間が5秒から20分である。
なお、触媒層24、26と電解質膜23との接合は以下のようなプロセスを採用しても良い。触媒層26付き基材27の上に電解質膜23を形成し、その上に対極の触媒層24付き基材25を形成する。基材27はガス拡散層であればそのままMEA200として使用できる。基板は転写用基板である場合はガス拡散層を入れ替えてからMEA200として使用する。
上述したように、一実施形態にかかるMEA200は、少ない量の貴金属でも酸素発生活性と耐久性が高い。
(第3の実施形態)
図7に実施形態2の水電解用セル300の断面図を示す。
図7に示すように実施形態3の水電解用セル300は、MEA200と、カソード給電体31と、セパレーター32と、アノード給電体33と、セパレーター34と、ガスケット(シール)35と、ガスケット(シール)36と、を有する。カソード給電体31及びアノード給電体33は、導電性を有し、ガスや水を通すものであれば良い。また、給電体31、33は、セパレーター32、34と一体化してもよい。具体的には、セパレーターに水やガスが流れる流路を持つものや、多孔質体を持つものなどであり、これに限定されるわけではない。
図7の水電解用セル300は、図示しない電極がカソード給電体31とアノード給電体33と接続し、カソードとアノードで反応が生じる。アノードには、水が供給され、アノード電極で、水が、プロトン、酸素と電子に分解される。電極の支持体と給電体が多孔質体であり、この多孔質体が流路板として機能する。生成した水と未反応の水は、排出され、プロトンと電子はカソード反応に利用される。カソード反応は、プロトンと電子が反応し、水素を生成する。生成した、水素及び酸素のいずれか一方又は両方は、例えば、燃料電池用燃料として利用される。セパレーター32、34でMEA200は保持され、ガスケット(シール)35、36で気密性を保たれている。
(第4の実施形態)
図8は、実施形態3のスタックを示す図である。
図8に示す第4の実施形態のスタック400は、MEA200又は水電解用セル300を複数個、直列に接続したものである。水電解用セルの両端に締め付け板41、42が取り付けられている。
一枚のMEA200又は水電解用セル300による電圧は低いため、MEA200又は水電解用セル300を複数個、直列に接続したスタック400を構成すると、高い電圧を得ることができる。一枚のMEA200からなる水電解用セル300での水素生成量は少ないため、水電解用セル300を複数、直列に接続したスタック400を構成すると、大量の水素を得ることができる。
(第5の実施形態)
図9は、第5の実施形態の水電解装置を示す図である。
第5の実施形態は、水電解装置500には、スタック400が用いられる。図9に示すように水電解用セルを直列に積層したものを水電解用スタック400として用いる。水電解用スタック400には、電源51が取り付けられ、アノードカソード間に電圧が印可される。水電解用スタック400のアノード側には、発生したガスと未反応の水を分離する気液分離装置52、混合タンク53がつながっており、混合タンク53には、水を供給するイオン交換水製造装置54からポンプ55で送液し、気液分離装置52から逆止弁56を通して、混合タンク53で混合してアノードへ循環させる。アノードで生成した酸素は、気液分離装置52を経て、酸素ガスが得られる。一方、カソード側には、気液分離装置57に連続して水素精製装置58を接続して、高純度水素を得る。水素精製装置58と接続した弁59を有する経路を経て不純物が排出される。運転温度を安定に制御するためスタックおよび混合タンクの加熱や、熱分解時の電流密度等の制御することができる。水電解装置500は、スタック400の他にMEA200や水電解用セル300を用いることが出来る。
(第6の実施形態)
図10は、第6の実施形態の水素利用システム600を示す図である。
第6の実施形態では、水電解装置500が用いられる。図10に示すように太陽光発電や風力発電などの電力源61からの電力を水電解装置500で水素ガスに変換する。さらに水素ガスは直接的に水素発電装置62もしくは水素ガスタンク63を経由して水素発電装置62に供給される。水素発電装置62では空気と反応することで電気に変換され、駆動装置64の電力として使用することができる。尚、水素発電装置は62、水素ガスタービンや燃料電池などを挙げることができ、駆動装置64としては車や家電器具、産業用装置などが挙げられる。本発明の電極を用いることで、消費電力が少なくかつ耐久性の高い第6の実施形態の水素利用システムの構築が可能になる。
(第7の実施形態)
図11は、第7の実施形態の水素利用システム700を示す図である。
第7の実施形態では、水電解による水素製造および発電が切り替わる可逆燃料電池(Unitized Regenerative Fuel Cell:URFC)を搭載している。可逆燃料電池用に水電解スタック400が用いられる。図8に示すように水電解用セル300を直列に積層したものを水電解用スタック400として用いる。水電解用スタック400には、太陽光発電や風力発電などの電力源71が取り付けられ、水素製造モードではアノードカソード間に電圧が印可される。水電解用スタック400のアノード側には、発生したガスと未反応の水を分離する気液分離装置72、混合タンク73aがつながっており、混合タンク73aには、水を供給するイオン交換水製造装置74からポンプ75aで送液し、気液分離装置72から逆止弁75bを通して、混合タンク73aで混合してアノードへ循環させる。アノードで生成した酸素は、気液分離装置72を経て、酸素ガスが得られる。一方、カソード側には、気液分離装置76に連続して水素精製装置77を接続して、高純度水素を得る。高純度水素ガスは水素ガスタンク73bに蓄えられる。気液分離装置76と接続した弁78を有する経路を経て不純物が排出される。
他方、発電モードでは水素タンク73bに蓄えられた高純度水素が水電解スタック400に供給され、外部の空気と反応することで、燃料電池反応によって電気に変換され、駆動装置79の電力として使用することができる。駆動装置79としては車や家電器具、産業用装置などが挙げられる。本発明の電極を用いることで、小型コンパクトであり、消費電力が少なくかつ耐久性の高い第7の実施形態の水素利用システムの構築が可能になる。
(実施例)
以下、実施例および比較例を説明する。
<電極の作製>
(PEMEC標準陰極作製)
基材27として、厚みが1μm以上、50μm以下の炭素層を有するカーボンペーパーToray060(東レ社製)を用意した。この基材上に、Ptのローディング密度0.1mg/cmになるように、スパッタして、上述の方法でPtと空隙とが交互に積層された触媒層26を形成し、電極22を得た。この電極は実施例1~7、比較例1~3の標準陰極として使用した。
(PEMEC陽極作製 実施例1~7、比較例1~3)
基材25として、表面処理を行ったTiメッシュ基材を用意した。この基材25上に、スパッタにより触媒層24含む電極23を得た。スパッタにあたっては、触媒の構造、組成が上述の表1に示す値となるように、プロセスを調整した。その後、大気中で300~600℃の温度において5分~4時間の熱処理を行った。
作製した各種触媒の構造、組成を以下のように評価した。まず、実施例1~7および比較例1~3で得られた電極2から9スポットのサンプルを切り出した。次に9スポットのサンプルの中心からサンプルを切断し、TEM観察用サンプルを作製した。各電極の9サンプルについて、それぞれ3箇所でTEMにより観察した。1000万倍のTEM像を得て、コントラストから、触媒と孔と空隙とを区別した。各箇所において得た1000万倍のTEM像を用い、各視野にお
Figure 0007003016000001
Figure 0007003016000002
いて3個所の多孔質構造体10の厚さ、各サンプルの計測値の平均値をこの多孔質構造体10の平均厚みとして算出した。また、多孔質構造体10の金属原子の平均組成や表面領域の金属原子の平均組成を計測し、原子M、Ruの組成比を求めた。
実施例1~7、および比較例1、3の触媒層24に対してTEM観察を行い、いずれも多孔質構造体10及び空隙11を含むことと、多孔質構造体10の厚みが何れも7nm以上100nm以下範囲内であると確認された。実施例1~7、および比較例1~3の触媒粒子のサイズは何れも3~20nmであり、連結していることが確認された。
<PEMEC用MEAの作製>
PEMEC標準陰極と各種PEMEC陽極から4cm×4cmの正方形の切片を切り取った。標準陰極、電解質膜(ナフィオン117(デュポン社製))と各種陽極をそれぞれ合わせて、熱圧着して接合することにより各種PEMEC用MEAを得た(電極面積は約16cmである、熱圧着条件:120℃~200℃、圧力10~200kg/cmで、10秒~5分間)。
<PEMEC単セルの作製>
得られたMEAを流路が設けられている二枚のセパレーターの間にセッティングし、PEMEC単セル(水電解用セル)を作製した。
作製した単セルを用いて、PEMECの水電解の電極反応に対しての安定性を評価した。
得られた単セルに対して、セル温度を80℃に維持し、陽極に水を供給した。単セルに1.3~2.5Vの電圧をかけ、MEAのコンディショニングとして約5時間において水電解を行った。その後、電流密度が2.0A/cmになるように単セルに電圧をかけ、1時間連続水電解した後の電圧(V)を水電解の電圧特性指標とし、各電極の電圧を表1にまとめる。
水電解の安定性については、PEMECに対し2万電位サイクル(矩形波:陽極1.2v、 3s;陽極2.5v、3s)を行い、その後電流密度が2.0A/cmになるように単セルに電圧をかけ、1時間連続水電解した後の電圧(Vf)を水電解の電圧特性指標とし、電位サイクルによる電圧変動率((V0―Vf)/V0)を求めた。以下の基準によって安定性を評価し、各電極の評価結果を表1にまとめた。
電圧劣化率<10% A;電圧劣化率10~25% B; 電圧劣化率>25% C;
また、表1に、実施例1~7、比較例1~3の電極の観測結果、およびPEMECの評価結果等をまとめる。
Figure 0007003016000003
表1に示されるように、実施例1~7のMEAは、比較例1~3と比較すると、PEMECに必要な電解電圧(V)が低く、水電解の効率が良いとわかる。安定性についても電圧劣化率の何れも比較例より低い。比較例2、3の触媒は水電解の電極反応に対しての安定性が劣っており、安定性の高い低Ru/M原子比の表面領域が存在しない、または多孔質構造体10内部のRuの原子比が高すぎるためと考えられる。なお、作製時の金属原子の組成比は、作製された多孔質構造体における金属原子の組成比と同様であることがEDXにより確認される。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、多孔質構造体10を有する触媒層24を陽極に備えることで、少ない量の貴金属でも高い酸素発生活性と耐久性とを発揮する。
明細書中、原子の一部は原子記号のみで表している。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。水電解用セルとして、PEMECを挙げたが、これ以外の電解セルでも、同様に本発明を適用できる。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
100…触媒;10多孔質構造体;11…空隙;
101…電極(陽極);12…基材;
200…膜電極複合体;21…第1の電極;22…第2の電極;23…電解質膜;24、26…触媒層;25、27…ガス拡散層;
300…水電解用セル;31…カソード給電体;32、34…セパレーター;33…アノード給電体;35、36…ガスケット(シール);
400…スタック;41、42…締め付け板;
500…水電解装置;51…電源;52…混合タンク;53、57…気液分離装置;54…イオン交換水製造装置;55…ポンプ;56…逆止弁;58…水素精製装置;59…弁;
600…水素利用システム、61…電力源、62…水素発電装置、63…水素ガスタンク、64…駆動装置、
700…水素利用システム、71…電力源、72…気液分離装置、73a…混合タンク、73b…水素ガスタンク、74…イオン交換水製造装置、75a…ポンプ、75b…逆止弁、76…気液分離装置、77…水素精製装置、78…弁、79…駆動装置

Claims (14)

  1. Ru及びRuとは異なる金属原子Mを含んだ粒子の凝集体からなる多孔質構造体を含む触媒であり、
    前記粒子は金属酸化物であり、
    前記多孔質構造体の表面領域における前記金属原子Mの金属原子比率は、前記多孔質構造体の全体における前記金属原子Mの金属原子比率より高く、
    前記表面領域の厚さは、前記多孔質構造体の表面から3nm以下であり、
    前記多孔質構造体の全体における金属原子の平均組成は、Ru で表され、
    前記x、yは、x+y=100及び20≦y≦60を満たす水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒。
  2. 前記金属原子Mは、Ir、Rh、Au、Ta、W、Si、Ti、Zr、Sn、Pt、Pd、Hf、V、Mo、Cr、Co、Ni、Nb、Fe、Mn、AlおよびZnの金属原子から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒。
  3. 前記多孔質構造体の表面領域における金属原子の組成は、Ruで表され、
    前記m、nは、m+n=100及び60<n<100を満たす請求項1又は2に記載の触媒。
  4. 前記nは、70より大きい請求項に記載の水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒。
  5. 前記多孔質構造体の厚さが7nm以上100nm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒。
  6. 前記多孔質構造体の全体における金属原子の平均組成は、Ruで表され、
    前記多孔質構造体の表面領域における金属原子の組成は、Ruで表され、
    前記nとyは、1.2≦n/y≦8.0を満たす請求項1ないしのいずれか1項に記載の水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒。
  7. 前記nとxは、0.0<m/x≦0.6を満たす請求項に記載の水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒。
  8. 少なくとも一部が、前記多孔質構造体と空隙とが交互に積層された請求項1ないしのいずれか1項に記載の水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒。
  9. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の水電解の陽極に用いる酸素発生用触媒を具備する陽極。
  10. 請求項に記載の陽極を具備する膜電極複合体。
  11. 請求項10に記載の膜電極複合体を具備する水電解用セル。
  12. 請求項10に記載の膜電極複合体又は請求項11に記載の水電解用セルを用いたスタック。
  13. 請求項10に記載の膜電極接合体、請求項11に記載の水電解用セル、又は、請求項12に記載のスタックを用いた水電解装置。
  14. 請求項13に記載の水電解装置を用いた水素利用システム。
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