JP6628122B2 - 導電部材、その製造方法、ならびにこれを用いた燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池 - Google Patents

導電部材、その製造方法、ならびにこれを用いた燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、導電部材、その製造方法、ならびにこれを用いた燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池に関する。より詳細には、本発明は、燃料電池用セパレータ等に使用される導電部材の耐食性を向上させるための技術に関する。
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、発電機能を発揮する複数の単セルが積層された構造を有する。当該単セルはそれぞれ、高分子電解質膜、これを挟持する一対(アノード、カソード)の触媒層、およびこれらを挟持する、供給ガスを分散させるための一対(アノード、カソード)のガス拡散層、を含む膜電極接合体(MEA)を有する。そして、個々の単セルが有するMEAは、セパレータを介して隣接する単セルのMEAと電気的に接続される。このようにして単セルが積層・接続されることにより、燃料電池スタックが構成される。そして、この燃料電池スタックは、種々の用途に使用可能な発電手段として機能しうる。かような燃料電池スタックにおいて、セパレータは、上述したように、隣接する単セルどうしを電気的に接続する機能を発揮する。これに加えて、セパレータのMEAと対向する表面にはガス流路が設けられるのが通常である。当該ガス流路は、アノードおよびカソードに燃料ガスおよび酸化剤ガスをそれぞれ供給するためのガス供給手段として機能する。
PEFCの発電メカニズムを簡単に説明すると、PEFCの運転時には、単セルのアノード側に燃料ガス(例えば水素ガス)が供給され、カソード側に酸化剤ガス(例えば大気、酸素)が供給される。その結果、アノードおよびカソードのそれぞれにおいて、下記反応式で表される電気化学反応が進行し、電気が生み出される。
導電性が要求される燃料電池用セパレータとしては、従来のカーボンセパレータや導電性樹脂セパレータから金属セパレータへの代替が進みつつある。これは、金属セパレータが優れた強度、導電性を有することによりスタックの小型化が図れるためである。
近年、金属セパレータの課題である腐食による導電性の低下や、これに伴うスタックの出力の低下を防止するため、金属基材上に耐腐食性を有する層を積層したセパレータが開発されている。
例えば、特許文献1ではチタン基材上に、チタン窒化物またはチタン炭化物からなる硬化層、貴金属からなる導電性膜を順次積層させてなる燃料電池セパレータ用材料が提案されている。当該文献によると、このような材料を用いて燃料電池用セパレータを構成することにより、耐食性と導電性とを両立させつつ、セパレータの強度を向上させることができる、としている。
特開2008−251296号公報
しかしながら、本発明者らが上記特許文献1に記載の材料から構成されるセパレータを用いて燃料電池を製造し、運転を行ったところ、チタン窒化物またはチタン炭化物からなる硬化層が腐食する場合があることが判明した。
そこで本発明は、十分な耐食性を有する導電部材を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意研究を行ったところ、金属基材と貴金属層との間に、特定の元素をドープさせたTiOを含む中間層を設けることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の導電性部材は、金属基材と、金属基材上に形成された少なくとも1層の中間層と、中間層上に形成された貴金属層とを有する。貴金属層は、Au、Ru、Rh、Pd、Ir、OsおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属を含む。そして、中間層は、MドープTiO(Mは、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Ge、Sn、Bi、Al、Si、Zr、Co、Cr、Ni、V、Mn、PおよびBからなる群から選択される少なくとも1種のドーピング元素を表す)を含むことを特徴とする。
本発明によれば、金属基材上に、特定のドーピング元素がドープされたTiOを含む中間層と、貴金属層とを順次積層させることにより、電位が印加された条件下での腐食が抑制される。よって、燃料電池のセパレータ等の用途に適用可能な、十分な耐食性を有する導電部材を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る導電部材の基本構成を示す断面概略図である。 本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池の基本構成を示す断面概略図である。 腐食試験前後の試験片の外観写真である。 腐食試験(定電位印加)における相対電流密度値を表すグラフである。 接触抵抗を測定するのに用いた測定装置の概要を示す模式図である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本明細書では、「金属基材」を単に「基材」、「燃料電池用セパレータ」を単に「セパレータ」とも称する。
<導電部材>
本発明の一形態によると、金属基材と、金属基材上に形成された少なくとも1層の中間層と、中間層上に形成された貴金属層とを有する導電部材が提供される。貴金属層は、Au、Ru、Rh、Pd、Ir、OsおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属を含む。そして、中間層は、MドープTiO(Mは、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Ge、Sn、Bi、Al、Si、Zr、Co、Cr、Ni、V、Mn、PおよびBからなる群から選択される少なくとも1種のドーピング元素を表す)を含むことを特徴とする。
図1は本発明の一実施形態に係る導電部材の基本構成を示す断面図である。図1によると導電部材20は、ステンレス鋼からなる金属基材21の両面に、NbドープTiOからなる中間層23と、Auからなる貴金属層25とが、順次積層された構成を有する。
なお、図1の形態では、金属基材21の両面に、それぞれ同じ材料からなる中間層23および貴金属層25が形成されているが、一方の面と他方の面とでそれぞれ異なる材料からなる中間層23および貴金属層25を形成してもよいし、一方の面のみに中間層23および貴金属層25を形成し、他方の面は別の構成としてもよい。
また、図1では金属基材21と中間層23、中間層23と貴金属層25が、互いに接するように積層されているが、金属基材21と中間層23との間、中間層23と貴金属層25との間に、他の層が設けられていてもよい。ただし、接触抵抗を低減させる観点から、中間層23と貴金属層25とが接するように積層されていることが好ましい。さらに、金属基材21と貴金属層25との間には、同じまたは異なる材料からなる2層以上の中間層23が設けられていてもよい。
以下、本形態の導電部材の各構成について説明する。以下では、導電部材を燃料電池のセパレータ材料として適用することを想定して説明するが、本形態の導電部材の用途はこれに限定されるものではなく、高いレベルの耐食性が要求される様々な用途に適用可能である。
[金属基材]
金属基材21は導電部材の主層であり、導電性および機械的強度の確保に寄与する。
金属基材21を構成する金属は、特に制限されず、従来、金属セパレータの構成材料として用いられている金属などが適宜用いられうる。金属基材21の構成材料としては、例えば、鉄、チタン、およびアルミニウム、ならびにこれらの合金が挙げられる。これらの材料は、機械的強度、汎用性、コストパフォーマンスまたは加工容易性などの観点から好ましく用いられうる。ここで、鉄合金にはステンレス鋼が含まれる。なかでも、金属基材21はステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されることが好ましい。特に、ステンレス鋼を金属基材21として用いると、導電部材をセパレータに適用した場合に、ガス拡散層(GDL)の構成材料であるガス拡散基材との接触面の導電性が十分に確保されうる。
ステンレス鋼としては、オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、析出硬化系などが挙げられる。オーステナイト系としては、SUS201、SUS202、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316(L)、SUS317が挙げられる。オーステナイト・フェライト系としては、SUS329J1が挙げられる。マルテンサイト系としては、SUS403、SUS420が挙げられる。フェライト系としては、SUS405、SUS430、SUS430LXが挙げられる。析出硬化系としては、SUS630が挙げられる。なかでも、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼を用いることがより好ましい。また、ステンレス鋼中の鉄(Fe)の含有率は、好ましくは60〜84質量%であり、より好ましくは65〜72質量%である。さらに、ステンレス鋼中のクロム(Cr)の含有率は、好ましくは16〜20質量%であり、より好ましくは16〜18質量%である。
一方、アルミニウム合金としては、純アルミニウム系、およびアルミニウム・マンガン系、アルミニウム・マグネシウム系などが挙げられる。アルミニウム合金中におけるアルミニウム以外の元素については、アルミニウム合金として一般に使用可能なものであれば特に制限されることはない。例えば、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛およびニッケルなどがアルミニウム合金に含まれうる。アルミニウム合金の具体例として、純アルミニウム系としてはA1050、A1050Pが挙げられ、アルミニウム・マンガン系としてはA3003P、A3004Pが挙げられ、アルミニウム・マグネシウム系としてはA5052P、A5083Pが挙げられる。導電部材をセパレータに適用する場合には機械的な強度や成形性も求められるため、上記の合金種に加えて、合金の調質も適宜選択されうる。なお、金属基材21がチタンやアルミニウムの単体から構成される場合、当該チタンやアルミニウムの純度は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは97質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上である。
金属基材21の厚さは、特に限定されない。加工容易性、機械的強度や、導電部材をセパレータに適用する場合の電池のエネルギー密度の向上等の観点より、好ましくは50〜500μmであり、より好ましくは80〜300μmであり、さらに好ましくは80〜200μmである。特に、構成材料としてステンレス鋼を用いた場合の金属基材21の厚さは、好ましくは80〜150μmである。一方、構成材料としてアルミニウムを用いた場合の金属基材21の厚さは、好ましくは100〜300μmである。上記した範囲内の場合、十分な強度を有しながらも、加工容易性に優れ、好適な薄さを達成可能である。
[中間層]
中間層23は、導電部材において主に耐食性および導電性の確保に寄与する。
本形態において中間層23はMドープTiOを必須に含む。本明細書において、「MドープTiO」とは、ドーピング元素MがドープされたTiOを意味する。ここで、ドーピング元素Mは、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Ge、Sn、Bi、Al、Si、Zr、Co、Cr、Ni、V、Mn、PおよびBからなる群から選択される少なくとも1種である。なかでも、Nb、Ta、MoおよびWからなる少なくとも1種であることが好ましい。これらの元素はTiよりも価電子が多いため、これらの元素をTiOにドープすることにより、優れた導電性を発揮させることができる。
MドープTiO中に含まれるドーピング元素Mの含有量の上限は、特に制限されないが、コストを抑える観点から、MドープTiOの総質量に対し、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。なお、下限は、十分な導電性を確保する観点から、2質量%以上とすることが好ましい。
中間層23は、MドープTiO以外の他の成分を含んでも構わないが、十分な耐食性および導電性を発揮させる観点から、MドープTiOの含有量は、中間層23の総質量に対し、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%以上であり、特に好ましくは99質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
なお、中間層23の組成(特にMドープTiOの元素組成)は、当該中間層23を切り出し、硫酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ質量分析(IPC−MS)を行うことにより確認することができる。
中間層23の電気抵抗率は、5×10Ω・cm以下であることを必須とし、好ましくは1×10−1Ω・cm以下である。一方、下限値は特に制限されないが、一般に1×10−5Ω・cm以上程度である。このような電気抵抗率とするためには、後述の製造方法におけるアニール処理によって、MドープTiOの結晶構造をアナターゼ型へと変換させることによって容易に達成することができる。
中間層23の厚さは、特に制限されないが、好ましくは100〜1000nmであり、より好ましくは150〜400nmであり、さらに好ましくは150〜300nmである。厚さが100nm以上であると、十分な耐食性を確保することができる。一方、厚さを1000nm以下とすることにより、コストを抑えることができる。
[貴金属層]
貴金属層25は貴金属を含み、導電部材において主に導電性の確保に寄与する。特に貴金属層25が最表層に存在する場合は、他の部材の接触抵抗を低減させる機能を有する。
貴金属層25を構成する貴金属は、Au、Ru、Rh、Pd、Ir、OsおよびPtの少なくとも1種を含む。なかでも、耐食性に優れるという観点から、Au、IrおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属を含むことが好ましい。
貴金属層25の厚さは、特に制限されないが、好ましくは10〜100nmであり、より好ましくは20〜50nmである。厚さが10nm以上であると、十分な導電性を確保することができる。一方、厚さを100nm以下とすることにより、コストを抑えることができる。
本形態の導電部材は、導電性・耐食性の両立が求められている各種の用途に用いられうる。導電部材の用途としては、後述の燃料電池用セパレータや、他の燃料電池部品(集電板、バスバー、ガス拡散基材、MEA)、電子部品の接点などが挙げられる。他の好ましい形態において、本形態の導電部材は、湿潤環境および通電環境の下で使用される。かような環境下で用いると、高いレベルの耐食性を発揮するという本発明の作用効果が顕著に発現しうる。
<導電部材の製造方法>
本形態の導電部材の製造方法は、特に制限されず、公知の知見を適宜参照して製造することができるが、好ましい製造方法の一例として、以下の方法が挙げられる。すなわち、本発明の一形態にかかる導電部材の製造方法は、金属基材と、金属基材上に形成されたMドープTiOを含む中間層前駆体と、中間層前駆体表面に形成された貴金属層とを有する積層体を、真空条件下、250〜500℃でアニール処理する工程を含む。ここで、中間層を構成するMドープTiOおよび貴金属層を構成する貴金属は、上述の導電部材で説明したのと同様である。以下では、まず金属基材、中間層前駆体、貴金属層とを順次有する積層体の製造方法について簡単に説明した後、当該積層体をアニール処理する工程について説明する。
積層体は、金属基材と、金属基材上に形成されたMドープTiOを含む中間層前駆体と、中間層前駆体表面に形成された貴金属層とを有する。本明細書において、「中間層前駆体」とは、MドープTiOを含む層であって、電気抵抗率が高い(1×10Ω・cm以上である)ものを意味する。MドープTiO膜はスパッタリング法などの公知の手法を用いて形成されるが、形成直後はアモルファス状であり、導電性に乏しい。このようなアモルファス状のMドープTiO膜を所定の条件下でアニール処理すると、MドープTiOがアナターゼ型結晶構造へと相転移することにより十分な導電性が得られるのである。すなわち、中間層前駆体中のMドープTiOはアモルファス状であり、中間層中のMドープTiOはアナターゼ型結晶構造を有する。なお、中間層前駆体または中間層中に含まれる中間体層MドープTiOの結晶構造はXRDによって確認することが可能である。
金属基材上に中間層前駆体を形成する方法は、特に制限されず、公知のMドープTiO成膜法を適宜採用することができる。MドープTiO成膜法としては、例えば、スパッタリング法、アークイオンプレーティング、化学気相成長(CVD)等が挙げられる。このうち、膜の緻密性、他元素の混入の観点から、スパッタリング法を用いて中間層前駆体を形成することが好ましい。MドープTiO成膜法として、スパッタリング法を用いることにより、膜が緻密になるとともに、真空中での処理のため、ほかの元素が混入しにくくなる。
次に、中間層前駆体表面に貴金属層を形成する。貴金属層を形成する方法も、特に制限されず、公知の手法を適宜採用することができる。貴金属層の形成方法としては、例えば、スパッタリング、真空蒸着法、アークイオンプレーティング、メッキ等が挙げられる。このうち、膜の緻密性、経済性の観点から、真空蒸着法、スパッタリングを用いて貴金属層を形成することが好ましい。貴金属層の形成方法として、スパッタリングを用いる場合、欠陥が少なく、緻密な貴金属膜が作成でき、膜厚をnmレベルで制御できる。
次に、上記方法により得られた積層体を真空条件下、250〜500℃でアニール処理する。アニール処理に用いられる装置は、特に制限されず、シースヒータ、ランプヒータ等が使用されうる。
アニール処理は、真空条件下で行われる。本明細書において「真空条件下」とは、真空度が1×10-1Pa以上であることを意味し、好ましくは1×10-3Pa以上である。アニール処理を上記よりも低い真空度で行った場合、MドープTiO中に酸素(O)が入り込み、導電性が低下するおそれがある。一方、真空度の上限値は特に制限されないが、一般に10−8Pa以下である。
アニール処理の温度は、250〜500℃であり、好ましくは300〜450℃の範囲である。温度が250℃未満であると、MドープTiOの結晶性が悪くなるおそれがある。一方、温度が500℃を超えるとMドープTiOの結晶がルチル型になるおそれがあり、また金属基材の機械特性にも悪影響を及ぼすおそれがある。
アニール処理の時間は、特に制限されないが、好ましくは0.5〜60分間であり、より好ましくは1〜30分間である。時間が60分間以上の場合、処理時間が長く、生産性が悪くなる。一方、時間が0.5分間以下であると、MドープTiOの結晶性が悪くなる。なお、アニール処理の時間は、アニール処理の温度によって適宜調整されうる。アニール処理装置としてランプヒータを使用する場合は、比較的短い時間でアナターゼ結晶のMドープTiOを得ることができるが、シースヒータを使用する場合はアナターゼ結晶とするまでに比較的長い時間を要する。
本形態の製造方法では、上記のように中間層前駆体の状態のまま(すなわちMドープTiOがアモルファス状のまま)、その表面に貴金属層を積層させた後に、アニール処理を行うことを特徴としている。このような順序を経ることによって、中間層前駆体を形成した後に直ちにアニール処理をして中間層を形成し、その表面に貴金属層を積層させるよりも、中間層と貴金属層との密着性が向上し、接触抵抗を低減させることができる。
<燃料電池用セパレータ、固体高分子形燃料電池>
上述の導電性部材は、特に電位が印加された条件下においても腐食されにくいという特性を有しているため、燃料電池用(特に固体高分子形燃料電池用)のセパレータとして好適に使用される。すなわち、本発明の他の一実施形態によると、上記導電部材から構成される、燃料電池用セパレータが提供される。また、本発明のさらに他の一実施形態によると、膜電極接合体と、膜電極接合体を挟持する一対のアノードセパレータおよびカソードセパレータと、を有する固体高分子形燃料電池が提供される。ここで、アノードセパレータまたはカソードセパレータの少なくとも一方に、上記燃料電池用セパレータが適用される。膜電極接合体は、高分子電解質膜、これを挟持する一対のアノード触媒層およびカソード触媒層、ならびにこれらを挟持する一対のアノードガス拡散層およびカソードガス拡散層を含む。さらに、燃料電池用セパレータが凹凸状に形成されてなり、当該凸部が前記膜電極接合体と接触し、当該凹部が燃料ガスまたは酸化剤ガスを流通するためのガス流路とされてなる。本形態の燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池は、セパレータ材料として上述の導電部材を用いることにより、運転時の電位によっても腐食が起こりにくく、接触抵抗を低く抑えることがでる。そのため、長期間にわたって、優れた電池性能を発揮させることが可能となる。
図2は、本発明の一実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を模式的に表す断面図である。PEFC1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で電解質膜−電極接合体(MEA)10を構成する。
PEFC1において、MEA10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5c)により挟持されている。図2において、セパレータ(5a、5c)は、図示したMEA10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(5a、5c)と固体高分子電解質膜2との間や、PEFC1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部が配置されるが、図2ではこれらの記載を省略する。
セパレータ(5a、5c)は、上述の導電部材にプレス処理を施すことで図2に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凸部はMEA10と接触している。これにより、MEA10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC1の運転時にガスを流通させるためのガス流路6として機能する。具体的には、アノードセパレータ5aのガス流路6aには燃料ガス(例えば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ5cのガス流路6cには酸化剤ガス(例えば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(5a、5c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC1の運転時にPEFC1を冷却するための冷媒(例えば、水)を流通させるための冷媒流路7とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
なお、図2に示す実施形態においては、セパレータ(5a、5c)は凹凸状の形状に成形されている。ただし、セパレータは、かような凹凸状の形態のみに限定されるわけではなく、ガス流路6および冷媒流路7の機能を発揮できる限り、平板状、一部凹凸状などの任意の形態であってもよい。以下、固体高分子形燃料電池を構成する各部材について説明する。
[電解質層]
電解質膜は、固体高分子電解質膜2から構成される。この固体高分子電解質膜2は、PEFC1の運転時にアノード触媒層3aで生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3cへと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜2は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
固体高分子電解質膜2は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とに大別される。フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能を向上させるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質膜が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質膜が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
電解質層の厚さは、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。電解質層の厚さは、通常は5〜300μm程度である。電解質層の厚さがかような範囲内の値であると、成膜時の強度や使用時の耐久性及び使用時の出力特性のバランスが適切に制御されうる。
[触媒層]
触媒層3(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層3aでは水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層3cでは酸素の還元反応が進行する。
触媒層3は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性の触媒担体、および電解質を含む。以下、触媒担体に触媒成分が担持されてなる複合体を「電極触媒」とも称する。
アノード触媒層3aに用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード触媒層3cに用いられる触媒成分もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属およびこれらの合金などから選択されうる。
これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、アノード触媒層3aに用いられる触媒成分およびカソード触媒層3cに用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択されうる。本明細書では、特記しない限り、アノード触媒層用およびカソード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義である。よって、一括して「触媒成分」と称する。しかしながら、アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3cの触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択されうる。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが採用されうる。ただし、触媒成分の形状は、粒状であることが好ましい。この際、触媒粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30nmである。触媒粒子の平均粒子径がかような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切に制御されうる。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過形電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定されうる。
触媒担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、および触媒成分と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。
触媒担体としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、充分な電子伝導性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであることが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、「実質的に炭素原子からなる」とは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されうることを意味する。
触媒担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに充分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gである。触媒担体の比表面積がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散性と触媒成分の有効利用率とのバランスが適切に制御されうる。
触媒担体のサイズについても特に限定されないが、担持の簡便さ、触媒利用率、触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径を5〜200nm程度、好ましくは10〜100nm程度とするとよい。
触媒担体に触媒成分が担持されてなる電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。触媒成分の担持量がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、電極触媒における触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって測定されうる。
触媒層3には、電極触媒に加えて、イオン伝導性の高分子電解質が含まれる。当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、上述した電解質層2を構成するイオン交換樹脂が、高分子電解質として触媒層3にも添加されうる。
[ガス拡散層(GDL)]
ガス拡散層4(ガス拡散層4a、カソードガス拡散層4c)は、セパレータ5(アノードセパレータ5a、カソードセパレータ5c)のガス流路6(燃料ガス流路6a、酸化剤ガス流路6c)を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層3(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
ガス拡散層4(4a、4c)の基材を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。ガス拡散層4の基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。ガス拡散層4の基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層4は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層4は、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層(マイクロポーラス層;MLP、図示せず)を基材の触媒層側に有するものであってもよい。
カーボン粒子層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒子径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層3との接触性も向上させることが可能となる。
カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、質量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは50〜500μmとするのがよい。
[セパレータ]
セパレータ5(アノードセパレータ5a、カソードセパレータ5c)は、固体高分子形燃料電池の単セルを複数個直列に接続して燃料電池スタックを構成する際に、各セルを電気的に直列に接続する機能を有する。また、セパレータ5は、燃料ガス、酸化剤ガス、および冷却剤を互に分離する隔壁としての機能も有する。これらの流路を確保するため、上述したように、セパレータ5のそれぞれにはガス流路6および冷却流路7が設けられていることが好ましい。
本形態のセパレータ5は、上述の導電部材から構成される。なお、セパレータ5の厚さやサイズ、設けられる各流路の形状やサイズなどは特に限定されず、得られる燃料電池の所望の出力特性などを考慮して適宜決定できる。
本形態の固体高分子形燃料電池の製造方法は、特に制限されず、本技術分野において従来公知の知見を適宜参照することにより製造可能である。
固体高分子形燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。例えば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
なお、本形態の燃料電池用セパレータは、優れた耐食性および導電性を有するため、上述の固体高分子形燃料電池以外の燃料電池にも適用可能である。他の燃料電池の種類としては、リン酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、固体電解質形燃料電池(SOFC)またはアルカリ形燃料電池(AFC)などが挙げられる。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、固体高分子形燃料電池(PEFC)が好ましい。上記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用である。なかでも、比較的長時間の運転停止後に高い出力電圧が要求される自動車などの移動体用電源として用いられることが特に好ましい。
本発明を、以下の実施例および比較例によってさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに限定されるわけではない。
<導電部材の製造>
[実施例1]
金属基材として、ステンレス鋼からなる薄板(SUS316、厚さ100μm)を準備した。当該基材を真空チャンバーに設置し、真空条件下(10−3Pa)でArガスを導入し、Arイオンを発生させ、基材表面を叩くことによって、表面の酸化被膜を除去した(イオンボンバード処理)。このような処理を基材の両表面について行った。
次に、真空度を0.3〜1.0Paに調整し、スパッタリング法により、基材の両表面にNbドープTiOからなる中間層前駆体(厚さ400nm)を成膜した。
さらに、スパッタリングにより、中間層前駆体の両表面にAuからなる貴金属層(厚さ50nm)を成膜した。
そして、チャンバー内の真空度を10−3Pa、温度を300℃に調整し、10分間アニール処理を行った。アニール処理完了後、チャンバー内を大気圧に戻し、導電部材を取り出した。
得られた導電部材の中間層をICP−MSにより分析したところ、Nbの含有量はNbドープTiOの総質量に対し、4質量%であった。また、中間層の電気抵抗率を抵抗率計により測定したところ、1×10−1Ω・cmであった。
なお、中間層の電気抵抗率の測定方法は、以下の方法により行った。すなわち、本実施例と同じ成膜条件で中間層を絶縁のガラス基板に形成し、三菱化学アナリテックロレスタGP MCP−T610型抵抗率計を用いて4端子法で電気抵抗率を測定した。
[比較例1]
金属基材として、ステンレス鋼からなる薄板(SUS316、厚さ100μm)を準備した。当該基材を真空チャンバーに設置し、真空条件下(10−3Pa)でArガスを導入し、Arイオンを発生させ、基材表面を叩くことによって、表面の酸化被膜を除去した(イオンボンバード処理)。
次に、チャンバー内にArガスおよびNガスを導入することによって、真空度を0.3〜1.0Paに調整し、スパッタリング法により、基材表面にTiNからなる層(厚さ500nm)を成膜した。
さらに、蒸着法により、TiN層の表面にAuからなる貴金属層(厚さ50nm)を成膜した。
そして、チャンバー内を大気圧に戻し、導電部材を取り出した。
<腐食試験>
上記実施例および比較例で作製した導電部材を、3cm×3cmの正方形に切り出し、切断面にシリコンゴムを用いてマスキング処理を施し、試験片とした。そして、試験片を試験溶液(pH3の希硫酸水溶液、80℃)に浸漬し、試験片に1.2V超の定電位を印加し、18時間にわたって試験片の外観を観察するとともに、定電位における電流特性を測定した。なお、測定には、電気化学測定システムとして、ポテンショスタットを用いた。
さらに、上記比較例で作製した導電部材については、試験片に印加する定電位を1.2Vとした場合についても同様の観察および測定を行った。
なお、燃料電池の化学反応の起電力は一般に1.2V程度であり、寒冷地など0℃以下の温度下で起動する場合は1.2V超となることがある。したがって、導電部材を燃料電池のセパレータ材料として適用するためには、このような電位がかかった状況でも、十分な耐食性を有することが必要であると考えられる。
結果を図3および4に示す。図3の試験片の外観写真によると、比較例1の導電部材は、表面が変色しており、腐食が進行していたのに対し、実施例1の導電部材は、表面の変色が極僅かであり、腐食がほとんど起こっていないことが確認された。
図4に定電位における電流特性を表すグラフを示す。グラフの縦軸は、観測された電流密度値のうち最も大きな値を1とした場合の相対電流密度値を示し、横軸は腐食試験開始からの経過時間を示す。腐食により導電部材からイオンが溶出すると電流が流れるため、当該値が大きいほどより腐食が進行したことを意味する。グラフより、比較例1の導電部材では、試験期間の全体にわたって電流が観測され、継続的に腐食が進行したことが確認された。一方、実施例1の導電部材は、試験期間の相対電流密度値がほぼ0であり、比較例1に比べて腐食がほとんど起こっていないことが確認された。なお、下記表1に、腐植試験開始から0.5時間後、9時間後、18時間後のそれぞれの時点での相対電流密度値(比較例1の1.2V超印加の場合の値を1とする)を示す。
<接触抵抗測定>
上記腐食試験前後の導電部材について、積層方向の接触抵抗を以下の方法で測定した。具体的には、図5に示すように、各導電部材(セパレータ5)の両側を1対のガス拡散基材(ガス拡散層4a、4c)で挟持し、得られた積層体の両側をさらに1対の電極(触媒層3a、3c)で挟持し、その両端に電源を接続し、電極を含む積層体全体を1MPaの荷重で保持して、測定装置を構成した。この測定装置に1Aの定電流を流し、1MPaの荷重をかけた時の通電量および電圧値から当該積層体の接触抵抗値を算出した。結果を下記表2に示す。表2の各数値は、比較例1の1.2V超印加の場合における腐食試験後の値を1とした相対値である。
表2に示すように、腐食試験前においては比較例1の方が実施例1よりも接触抵抗値が小さいが、試験後においては腐食が少ない実施例1の方が腐食の多い比較例1よりも接触抵抗値が小さくなることが示された。特に腐食試験での印加電位が1.2V超の場合において比較すると、比較例1では著しく腐食が進行したため、試験後の接触抵抗値は極めて高い値となることが確認された。
1 固体高分子形燃料電池(PEFC)、
2 固体高分子電解質膜、
3 触媒層、
3a アノード触媒層、
3c カソード触媒層、
4a アノードガス拡散層、
4c カソードガス拡散層、
5 セパレータ、
5a アノードセパレータ、
5c カソードセパレータ、
6a アノードガス流路、
6c カソードガス流路、
7 冷媒流路、
10 膜電極接合体(MEA)、
20 導電部材、
21 金属基材、
23 中間層、
25 貴金属層。

Claims (4)

  1. 金属基材と、
    前記金属基材上に形成された、MドープTiO(Mは、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Ge、Sn、Bi、Al、Si、Zr、Co、Cr、Ni、V、Mn、PおよびBからなる群から選択される少なくとも1種のドーピング元素を表す)を含む中間層前駆体と、
    前記中間層前駆体表面に形成された、Au、Ru、Rh、Pd、Ir、OsおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属を含む貴金属層と、
    を有する積層体を、真空条件下、250〜500℃でアニール処理する工程を含む、導電部材の製造方法。
  2. 前記Mは、Nb、Ta、MoおよびWからなる群から選択される少なくとも1種のドーピング元素を表す、請求項1に記載の導電部材の製造方法。
  3. 前記貴金属は、Au、IrおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の導電部材の製造方法。
  4. 前記Mの含有量は、MドープTiO の総質量に対し、30質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電部材の製造方法。
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