JP2010129396A - 導電部材、その製造方法、並びにこれを用いた燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】中間層を有する導電部材において、金属基材層の腐食を抑制し、耐食性が向上した導電部材を提供しうる手段を提供する。
【解決手段】本発明の導電部材は、まず、金属基材層と、導電性炭素を含む導電性炭素層と、中間層とを有する。当該導電性炭素層は、金属基材層の少なくとも一方の主表面に位置する。また、当該中間層は、金属基材層と導電性炭素層との間に介在し、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する。そして、本発明の導電部材は、中間層の少なくとも一部に、水透過防止層をさらに有することを特徴とする。
【選択図】図8
【解決手段】本発明の導電部材は、まず、金属基材層と、導電性炭素を含む導電性炭素層と、中間層とを有する。当該導電性炭素層は、金属基材層の少なくとも一方の主表面に位置する。また、当該中間層は、金属基材層と導電性炭素層との間に介在し、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する。そして、本発明の導電部材は、中間層の少なくとも一部に、水透過防止層をさらに有することを特徴とする。
【選択図】図8
Description
本発明は、導電部材、その製造方法、並びにこれを用いた燃料電池用セパレータおよび固体高分子形燃料電池に関する。
固体高分子形燃料電池(PEFC)は、発電機能を発揮する複数の単セルが積層された構造を有する。当該単セルはそれぞれ、(1)高分子電解質膜(例えば、Nafion(登録商標)膜)、(2)これを挟持する一対(アノード、カソード)の触媒層(「電極触媒層」とも称される)、(3)さらにこれらを挟持する、供給ガスを分散させるための一対(アノード、カソード)のガス拡散層(GDL)、を含む膜電極接合体(MEA)を有する。そして、個々の単セルが有するMEAは、セパレータを介して隣接する単セルのMEAと電気的に接続される。このようにして単セルが積層・接続されることにより、燃料電池スタックが構成される。そして、この燃料電池スタックは、種々の用途に使用可能な発電手段として機能しうる。かような燃料電池スタックにおいて、セパレータは、上述したように、隣接する単セルどうしを電気的に接続する機能を発揮する。これに加えて、セパレータのMEAと対向する表面にはガス流路が設けられるのが通常である。当該ガス流路は、アノードおよびカソードに燃料ガスおよび酸化剤ガスをそれぞれ供給するためのガス供給手段として機能する。
PEFCの発電メカニズムを簡単に説明すると、PEFCの運転時には、単セルのアノード側に燃料ガス(例えば水素ガス)が供給され、カソード側に酸化剤ガス(例えば大気、酸素)が供給される。その結果、アノードおよびカソードのそれぞれにおいて、下記反応式で表される電気化学反応が進行し、電気が生み出される。
導電性が要求される燃料電池用セパレータの構成材料としては、従来、金属、カーボン、または導電性樹脂などが知られている。これらのうち、カーボンセパレータや導電性樹脂セパレータでは、ガス流路形成後の強度をある程度確保すべく、厚さを比較的大きく設定する必要がある。その結果、これらのセパレータを用いた燃料電池スタックの全体の厚さも大きくなってしまう。かようなスタックの大型化は、特に小型化が求められている車載用PEFCなどにおいては、好ましくない。
一方、金属セパレータは強度が比較的大きいため、厚さを比較的小さくすることが可能である。また、導電性にも優れることから、金属セパレータを用いるとMEAとの接触抵抗を低減させうるという利点もある。その反面、金属材料では腐食(例えば、生成水や運転時に生じる電位差などに起因するもの)による導電性の低下や、これに伴うスタックの出力の低下という問題が生じる場合がある。よって、金属セパレータでは、その優れた導電性を確保しつつ、耐食性をも向上させることが求められている。
ここで、金属セパレータの金属基材の一方の面に、グラファイト化された炭素からなる炭素層を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。当該文献では、不活性ガス雰囲気下において、セパレータ基板に負高電圧を印加しつつ、当該基板表面に乾式成膜法により炭素系材料を用いて炭素層を形成している。これにより、不活性ガスのプラスイオンがセパレータ基板に衝突しつつ炭素層が形成されることから、炭素層の内部まで確実にグラファイト化することができる、としている。そしてその結果、耐食性および導電性に優れる燃料電池用セパレータが提供されうる、としている。
また、特許文献2には、金属基材と炭素層との密着性を向上させることを目的として、金属クロムからなる中間層をさらに設けるという技術が開示されている。これにより、低電気抵抗(高導電性)と高耐食性とを長期間安定して維持することができる、としている。
特開2006−286457号公報
特開2004−14208号公報
しかしながら、本発明者らによる検討によれば、特許文献2が提案しているような中間層を備えた導電部材を燃料電池用セパレータなどとして使用した場合に、金属基材層が腐食してしまうという問題が発生しうることが判明した。金属基材層のかような腐食は、最終的に、導電部材の接触抵抗の増大をもたらす可能性がある。
そこで本発明は、上述したような中間層を有する導電部材において、金属基材層の腐食を抑制し、耐食性が向上した導電部材を提供しうる手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、中間層において、水の透過を防止する層を設けることで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
かような本発明の導電部材は、まず、金属基材層と、導電性炭素を含む導電性炭素層と、中間層とを有する。当該導電性炭素層は、金属基材層の少なくとも一方の主表面に位置する。また、当該中間層は、金属基材層と導電性炭素層との間に介在し、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する。そして、本発明の導電部材は、中間層の少なくとも一部に、水透過防止層をさらに有することを特徴とする。
本発明によれば、中間層を有する導電部材において、中間層における水の透過が防止されることにより、金属基材層の腐食が抑制され、耐食性が向上した導電部材が提供されうる。
(導電部材)
本発明の導電部材は、金属基材層と、前記金属基材層の少なくとも一方の主表面に位置する、導電性炭素を含む導電性炭素層と、前記金属基材層と前記導電性炭素層との間に介在する、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する中間層とを有する導電部材であって、前記中間層の少なくとも一部に、水透過防止層をさらに有することを特徴とする、導電部材である。
本発明の導電部材は、金属基材層と、前記金属基材層の少なくとも一方の主表面に位置する、導電性炭素を含む導電性炭素層と、前記金属基材層と前記導電性炭素層との間に介在する、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する中間層とを有する導電部材であって、前記中間層の少なくとも一部に、水透過防止層をさらに有することを特徴とする、導電部材である。
上述したように、本発明者らは、特許文献2に記載の中間層を備えた導電部材を燃料電池用セパレータなどとして使用すると、金属基材層が腐食してしまうという問題が発生しうることを見出した。また、さらなる検討の結果、中間層を構成する金属クロムの有する結晶構造が金属基材層の腐食に関与していることも判明した。
具体的には、特許文献2が提案している中間層を構成する金属クロムは、当該中間層の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する。そこで本発明者らは、以下のような仮説を立て、検討を行なった。すなわち、かような結晶構造を有する中間層を備えた燃料電池用セパレータの使用時には、中間層を構成する柱状結晶どうしの間隙から水(例えば、カソード触媒層における生成水)が侵入しうる。そして、この水が中間層を透過して下地層である金属基材層にまで到達し、当該金属基材層の腐食を引き起こすのではないかと考えたのである。
かような仮説に基づき、本発明者らは、導電部材を上述したような構成とすることで、上記仮説が正しいことを実証しつつ、耐食性が向上した導電部材を提供するに至ったのである。
以下、添付した図面を参照して本発明を適用した最良の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る固体高分子形燃料電池(PEFC)1の基本構成を示す概略図である。PEFC1は、まず、固体高分子電解質膜2と、これを挟持する一対の触媒層(アノード触媒層3aおよびカソード触媒層3c)とを有する。そして、固体高分子電解質膜2と触媒層(3a、3c)との積層体はさらに、一対のガス拡散層(GDL)(アノードガス拡散層4aおよびカソードガス拡散層4c)により挟持されている。このように、固体高分子電解質膜2、一対の触媒層(3a、3c)および一対のガス拡散層(4a、4c)は、積層された状態で膜電極接合体(MEA)10を構成する。
PEFC1において、MEA10はさらに、一対のセパレータ(アノードセパレータ5aおよびカソードセパレータ5c)により挟持されている。図1において、セパレータ(5a、5c)は、図示したMEA10の両端に位置するように図示されている。ただし、複数のMEAが積層されてなる燃料電池スタックでは、セパレータは、隣接するPEFC(図示せず)のためのセパレータとしても用いられるのが一般的である。換言すれば、燃料電池スタックにおいてMEAは、セパレータを介して順次積層されることにより、スタックを構成することとなる。なお、実際の燃料電池スタックにおいては、セパレータ(5a、5c)と固体高分子電解質膜2との間や、PEFC1とこれと隣接する他のPEFCとの間にガスシール部が配置されるが、図1ではこれらの記載を省略する。
セパレータ(5a、5c)は、例えば、厚さ0.5mm以下の薄板にプレス処理を施すことで図1に示すような凹凸状の形状に成形することにより得られる。セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凸部はMEA10と接触している。これにより、MEA10との電気的な接続が確保される。また、セパレータ(5a、5c)のMEA側から見た凹部(セパレータの有する凹凸状の形状に起因して生じるセパレータとMEAとの間の空間)は、PEFC1の運転時にガスを流通させるためのガス流路として機能する。具体的には、アノードセパレータ5aのガス流路6aには燃料ガス(例えば、水素など)を流通させ、カソードセパレータ5cのガス流路6cには酸化剤ガス(例えば、空気など)を流通させる。
一方、セパレータ(5a、5c)のMEA側とは反対の側から見た凹部は、PEFC1の運転時にPEFCを冷却するための冷媒(例えば、水)を流通させるための冷媒流路7とされる。さらに、セパレータには通常、マニホールド(図示せず)が設けられる。このマニホールドは、スタックを構成した際に各セルを連結するための連結手段として機能する。かような構成とすることで、燃料電池スタックの機械的強度が確保されうる。
図2は、図1のうち、セパレータ5の部分の概略構成を示す断面図である。本実施形態において、セパレータ5を構成する導電部材は、金属基材層52と、導電性炭素層54とを有する。そして、これらの間には、中間層56が介在している。そして、中間層56は、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する。また、中間層56は、セパレータ5の積層方向両側に配置されて当該中間層56を構成する2つの主層56aと、当該2つの主層56aに挟まれるように配置される水透過防止層56bとを有する。なお、PEFC1において、セパレータ5は、導電性炭素層54がMEA10側に位置するように、配置される。
以下、本実施形態のセパレータ5の各構成要素について詳説する。
[金属基材層]
金属基材層52は、セパレータ5を構成する導電部材の主層であり、導電性および機械的強度の確保に寄与する。
金属基材層52は、セパレータ5を構成する導電部材の主層であり、導電性および機械的強度の確保に寄与する。
金属基材層52を構成する金属について特に制限はなく、従来、金属セパレータの構成材料として用いられているものが適宜用いられうる。金属基材層の構成材料としては、機械的強度、汎用性、コストパフォーマンスまたは加工容易性などの観点から、例えば、鉄、チタン、およびアルミニウム並びにこれらの合金が挙げられる。ここで、鉄合金にはステンレスが含まれる。なかでも、金属基材層はステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されることが好ましい。さらに、特にステンレスを金属基材層として用いると、ガス拡散層の構成材料であるガス拡散基材との接触面の導電性が十分に確保されうる。その結果、たとえリブ肩部の膜の隙間などに水分が浸入したとしても、ステンレスから構成される金属基材層自体に生じる酸化皮膜の有する耐食性により、耐久性が維持されうる。
ステンレスとしては、オーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、析出硬化系などが挙げられる。オーステナイト系としては、SUS201、SUS202、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316(L)、SUS317が挙げられる。オーステナイト・フェライト系としては、SUS329J1が挙げられる。マルテンサイト系としては、SUS403、SUS420が挙げられる。フェライト系としては、SUS405、SUS430、SUS430LXが挙げられる。析出硬化系としては、SUS630が挙げられる。なかでも、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレスを用いることがより好ましい。また、ステンレス中の鉄(Fe)の含有率は、好ましくは60〜84質量%であり、より好ましくは65〜72質量%である。さらに、ステンレス中のクロム(Cr)の含有率は、好ましくは16〜20質量%であり、より好ましくは16〜18質量%である。
一方、アルミニウム合金としては、純アルミニウム系、およびアルミニウム・マンガン系、アルミニウム・マグネシウム系などが挙げられる。アルミニウム合金中におけるアルミニウム以外の元素については、アルミニウム合金として一般に使用可能なものであれば特に制限されることはない。例えば、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛およびニッケルなどがアルミニウム合金に含まれうる。アルミニウム合金の具体例として、純アルミニウム系としてはA1050、A1050Pが挙げられ、アルミニウム・マンガン系としてはA3003P、A3004Pが挙げられ、アルミニウム・マグネシウム系としてはA5052P、A5083Pが挙げられる。一方で、セパレータには機械的な強度や成形性も求められるため、上記の合金種に加えて、合金の調質も適宜選択されうる。なお、金属基材層52がチタンやアルミニウムの単体から構成される場合、当該チタンやアルミニウムの純度は、好ましくは95質量%以上であり、より好ましくは97質量%以上であり、さらに好ましくは99質量%以上である。
金属基材層52の厚さは、特に限定されない。加工容易性および機械的強度、並びにセパレータ自体を薄膜化することによる電池のエネルギー密度の向上等の観点より、好ましくは50〜500μmであり、より好ましくは80〜300μmであり、さらに好ましくは80〜200μmである。特に、構成材料としてステンレスを用いた場合の金属基材層52の厚さは、好ましくは80〜150μmである。一方、構成材料としてアルミニウムを用いた場合の金属基材層52の厚さは、好ましくは100〜300μmである。上記した範囲内の場合、セパレータとして十分な強度を有しながらも、加工容易性に優れ、好適な薄さを達成可能である。
なお、例えば燃料電池用セパレータ等の構成材料として十分な強度を提供するという観点からは、金属基材層52は、ガス遮断性が高い材料から構成されることが好ましい。燃料電池のセパレータはセル同士を仕切る役割を担っているため、セパレータを挟んで両側で異なるガスが流れる構成となる。したがって、それぞれのセルの隣り合うガスの混合やガス流量の変動をなくすという観点から、金属基材層52はガス遮断性が高いほど好ましいのである。
[導電性炭素層]
導電性炭素層54は、導電性炭素を含む層である。この層の存在によって、セパレータ5を構成する導電部材の導電性を確保しつつ、金属基材層52のみの場合と比較して耐食性が改善されうる。
導電性炭素層54は、導電性炭素を含む層である。この層の存在によって、セパレータ5を構成する導電部材の導電性を確保しつつ、金属基材層52のみの場合と比較して耐食性が改善されうる。
本実施形態において、導電性炭素層54は、ラマン散乱分光分析により測定される、Dバンドピーク強度(ID)とGバンドピーク強度(IG)との強度比R(ID/IG)により規定される。具体的には、強度比R(ID/IG)が1.3以上である。ただし、本発明の技術的範囲はかような形態のみには制限されず、導電部材の導電性炭素層54を構成する材料として公知の材料が同様に用いられうる。
炭素材料をラマン分光法により分析すると、通常1350cm−1付近および1584cm−1付近にピークが生じる。結晶性の高いグラファイトは、1584cm−1付近にシングルピークを有し、このピークは通常、「Gバンド」と称される。一方、結晶性が低くなる(結晶構造欠陥が増す)につれて、1350cm−1付近のピークが現れてくる。このピークは通常、「Dバンド」と称される(なお、ダイヤモンドのピークは厳密には1333cm−1であり、上記Dバンドとは区別される)。Dバンドピーク強度(ID)とGバンドピーク強度(IG)との強度比R(ID/IG)は、炭素材料のグラファイトクラスターサイズやグラファイト構造の乱れ具合(結晶構造欠陥性)、sp2結合比率などの指標として用いられる。すなわち、本発明においては、導電性炭素層54の接触抵抗の指標とすることができ、導電性炭素層54の導電性を制御する膜質パラメータとして用いることができる。
R(ID/IG)値は、顕微ラマン分光器を用いて、炭素材料のラマンスペクトルを計測することにより算出される。具体的には、Dバンドと呼ばれる1300〜1400cm−1のピーク強度(ID)と、Gバンドと呼ばれる1500〜1600cm−1のピーク強度(IG)との相対的強度比(ピーク面積比(ID/IG))を算出することにより求められる。
上述したように、本実施形態において、R値は1.3以上である。また、好ましい実施形態において、当該Rは、好ましくは1.4〜2.0であり、より好ましくは1.4〜1.9であり、さらに好ましくは1.5〜1.8である。このR値が1.3以上であれば、積層方向の導電性が十分に確保された導電性炭素層が得られる。また、R値が2.0以下であれば、グラファイト成分の減少を抑制することができる。さらに、導電性炭素層自体の内部応力の増大をも抑制でき、下地である金属基材層(後述する中間層が存在する場合には中間層)との密着性を一層向上させることができる。
なお、本実施形態のようにR値を1.3以上とすることにより上述の作用効果が得られるメカニズムは、以下のように推定されている。ただし、以下の推定メカニズムは本発明の技術的範囲をいかようにも限定することはない。
上述したように、Dバンドピーク強度が大きくなる(すなわち、R値が大きくなる)ことは、グラファイト構造における結晶構造欠陥の増加を意味する。換言すれば、ほぼsp2炭素のみからなる高結晶性グラファイトにおいてsp3炭素が増加することを意味する。ここで、R=1.0〜1.2の導電性炭素層を有する導電部材(導電部材A)の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した写真(倍率:40万倍)を図3Aに示す。同様に、R=1.6の導電性炭素層を有する導電部材(導電部材B)の断面をTEMにより観察した写真(倍率:40万倍)を図3Bに示す。なお、これらの導電部材Aおよび導電部材Bは、金属基材層としてはSUS316Lを用い、この表面にCrからなる中間層(厚さ:0.2μm)および導電性炭素層(厚さ:0.2μm)をスパッタリング法によって順次形成することにより作製した。また、導電部材Aにおける導電性炭素層の作製時において金属基材層に対して印加したバイアス電圧は0Vであり、導電部材Bにおける導電性炭素層の作製時において金属基材層に対して印加したバイアス電圧は−140Vであった。
図3Bに示すように、導電部材Bの導電性炭素層は、多結晶グラファイトの構造を有することがわかる。一方で、図3Aに示す導電部材Aの導電性炭素層においては、かような多結晶グラファイトの構造は確認できない。
ここで、「多結晶グラファイト」とは、微視的にはグラフェン面(六角網面)が積層した異方性のグラファイト結晶構造(グラファイトクラスター)を有するが、巨視的には多数の当該グラファイト構造が集合した等方性結晶体である。したがって、多結晶グラファイトは、ダイヤモンド様カーボン(DLC;Diamond−Like Carbon)の1種であるということもできる。通常、単結晶グラファイトは、HOPG(高配向熱分解黒鉛)に代表されるような、巨視的にみてもグラフェン面が積層された乱れのない構造を示す。一方、多結晶グラファイトにおいては、個々のクラスターとしてグラファイト構造が存在しており、乱層構造を有している。R値を上述の値に制御することで、この乱れ具合(グラファイトクラスター量、サイズ)が適度に確保され、導電性炭素層54の一方の面から他方の面への導電パスが確保されうる。その結果、金属基材層52に加えて導電性炭素層54を別途設けたことによる導電性の低下が防止されうると考えられる。
多結晶グラファイトにおいては、グラファイトクラスターを構成するsp2炭素原子の結合によりグラフェン面が形成されていることから、当該グラフェン面の面方向に導電性が確保される。また、多結晶グラファイトは実質的に炭素原子のみから構成され、比表面積が小さく、結合した官能基の量も少ない。このため、多結晶グラファイトは酸性水等による腐食に対して優れた耐性を有する。なお、カーボンブラック等の粉末においても、1次粒子を形成しているのはグラファイトクラスターの集合体である場合が多く、これにより導電性が発揮される。しかしながら、個々の粒子が分離しているため、表面に形成されている官能基が多く、酸性水等による腐食が生じやすい。また、カーボンブラックにより導電性炭素層を成膜しても、保護膜としての緻密性に欠けるという問題もある。
ここで、本実施形態の導電性炭素層54が多結晶グラファイトから構成される場合、多結晶グラファイトを構成するグラファイトクラスターのサイズは特に制限されない。一例を挙げると、グラファイトクラスターの平均直径は、好ましくは1〜50nm程度であり、より好ましくは2〜10nmである。グラファイトクラスターの平均直径がかような範囲内の値であると、多結晶グラファイトの結晶構造を維持しつつ、導電性炭素層54の厚膜化を防止することが可能である。ここで、グラファイトクラスターの「直径」とは、当該クラスターの輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。また、グラファイトクラスターの平均直径の値は、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察されるクラスターの直径の平均値として算出されうる。
なお、本実施形態では導電性炭素層54は多結晶グラファイトのみから構成されてもよいが、導電性炭素層54は多結晶グラファイト以外の材料をも含みうる。導電性炭素層54に含まれうる多結晶グラファイト以外の炭素材料としては、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどが挙げられる。また、カーボンブラックの具体例として、以下に制限されることはないが、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラックもしくはサーマルブラックなどが挙げられる。なお、カーボンブラックは、グラファイト化処理が施されていてもよい。また、導電性炭素層54に含まれうる炭素材料以外の材料としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、インジウム(In)等の貴金属;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性物質;導電性酸化物などが挙げられる。多結晶グラファイト以外の材料は、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、場合によっては、多結晶グラファイト以外の材料のみから導電性炭素層54が形成されてもよい。
導電性炭素層54の厚さは、特に制限されない。ただし、好ましくは1〜1000nmであり、より好ましくは2〜500nmであり、さらに好ましくは5〜200nmである。導電性炭素層の厚さがかような範囲内の値であれば、ガス拡散基材とセパレータとの間に十分な導電性を確保することができる。また、金属基材層に対して高い耐食機能を持たせることができるという有利な効果を奏しうる。なお、本実施形態では、導電性炭素層54は導電部材(セパレータ5)の一方の主表面にのみ存在する。ただし、場合によっては、導電部材(セパレータ5)の他の主表面にも導電性炭素層54が存在してもよい。
以下、本実施形態の導電性炭素層54におけるより好ましい実施形態について説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには限定されない。
まず、導電性炭素層54のラマン散乱分光分析について、他の観点からは、ラマン散乱分光分析の回転異方性測定により測定された平均ピークが、2回対称パターンを示すことが好ましい。以下、回転異方性測定の測定原理について、簡単に説明する。
ラマン散乱分光分析の回転異方性測定は、測定サンプルを水平方向に360度回転させながら、ラマン散乱分光測定を実施することにより行なわれる。具体的には、測定サンプルの表面に対してレーザー光を照射し、通常のラマンスペクトルを測定する。次いで、測定サンプルを10°回転させて、同様にラマンスペクトルを測定する。この操作を、測定サンプルが360°回転するまで行なう。そして、それぞれの角度での測定において得られたピーク強度の平均値を算出し、中心がピーク強度ゼロとなる、1周360°の極座標表示とすることにより、平均ピークが得られる。そして、例えば、グラフェン面がサンプルの面方向と平行となるように、グラファイト層がサンプル表面に存在する場合には、図4Aに示すような3回対称パターンが見られる。一方、グラフェン面がサンプルの面方向と垂直となるように、グラファイト層がサンプル表面に存在する場合には、図4Bに示すような2回対称パターンが見られる。なお、明確な結晶構造が存在しない非晶質(アモルファス)状の炭素層がサンプル表面に存在する場合には、図4Cに示すような対称性を示さないパターンが見られる。したがって、回転異方性測定により測定された平均ピークガ2回対称パターンを示すということは、導電性炭素層54を構成するグラフェン面の面方向が、導電性炭素層54の積層方向とほぼ一致していることを意味する。かような形態によれば、導電性炭素層54における導電性が最短のパスによって確保されることとなるため、好ましいのである。
ここで、当該回転異方性測定を行なった結果を図5Aおよび図5Bに示す。図5Aは、導電部材Bを測定サンプルとして用い、当該サンプルの回転角をそれぞれ0°、60°、および180°としたときのラマンスペクトルを示す。また、図5Bは、上述した手法により得られた、導電部材Bについての回転異方性測定の平均ピークを示す。図5Bに示すように、導電部材Bの回転異方性測定においては、0°および180°の位置にピークが見られた。これは、図4Bに示す2回対称パターンに相当する。なお、本明細書において、ラマン散乱分光分析の回転異方性測定により測定された平均ピークが「2回対称パターンを示す」とは、図4Bおよび図5Bに示すように、平均ピークにおいて、ピーク強度が0である点を基準として180°対向する2つのピークが存在することを意味する。3回対称パターンで見られるピーク強度と2回対称パターンで見られるピーク強度とは原理的には同程度の値を示すとされているため、かような定義が可能となる。
好ましい実施形態では、導電性炭素層54のビッカース硬度が規定される。「ビッカース硬度(Hv)」とは、物質の硬さを規定する値であり、物質に固有の値である。本明細書において、ビッカース硬度は、ナノインデンテーション法により測定された値を意味する。ナノインデンテーション法とは、サンプル表面に対して超微小な荷重でダイヤモンド圧子を連続的に負荷および除荷し、得られた荷重−変位曲線から硬さを測定するという手法であり、Hvが大きいほどその物質は硬いことを意味する。好ましい実施形態において、具体的には、導電性炭素層54のビッカース硬度は、好ましくは1500Hv以下であり、より好ましくは1200Hv以下であり、さらに好ましくは1000Hv以下であり、特に好ましくは800Hv以下である。ビッカース硬度がかような範囲内の値であれば、導電性を有しないsp3炭素の過剰な混入が抑制され、導電性炭素層54の導電性の低下が防止されうる。一方、ビッカース硬度の下限値について特に制限はないが、ビッカース硬度が50Hv以上であれば、導電性炭素層54の硬度が十分に確保される。その結果、外部からの接触や摩擦等の衝撃にも耐えることができ、下地である金属基材層52との密着性にも優れた導電部材(セパレータ)が提供されうる。かような観点から、導電性炭素層54のビッカース硬度は、より好ましくは80Hv以上であり、さらに好ましくは100Hv以上であり、特に好ましくは200Hv以上である。
ここで、導電部材の金属基材層としてSUS316Lを準備し、この表面にCrからなる中間層(厚さ:0.2μm)および導電性炭素層(厚さ:0.2μm)をスパッタリング法によって順次形成することにより作製した。この際、バイアス電圧および成膜方式を制御することにより、導電性炭素層のビッカース硬度を変化させた。これにより得られた導電部材における導電性炭素層のビッカース硬度と導電性炭素層におけるsp3比の値との関係を図6に示す。なお、図6では、ダイヤモンドはsp3比=100%であり、Hv10000となる。図6に示す結果から、導電性炭素層のビッカース硬度が1500Hv以下であると、sp3比の値が大きく低下することがわかる。また、sp3比の値が低下することで、導電部材の接触抵抗の値もこれに伴って低下することが推測される。
さらに他の観点からは、導電性炭素層54に含まれる水素原子の量もまた、考慮することが好ましい。すなわち、導電性炭素層54に水素原子が含まれる場合、当該水素原子は炭素原子と結合する。そうすると、水素原子が結合した炭素原子の混成軌道はsp2からsp3へと変化して導電性を喪失し、導電性炭素層54の導電性が低下することとなる。また、多結晶グラファイトにおけるC−H結合が増加すると、結合の連続性が失われ、導電性炭素層54の硬度が低下し、最終的には導電部材の機械的強度や耐食性が低下してしまう。かような観点から、導電性炭素層54における水素原子の含有量は、導電性炭素層54を構成する全原子に対して、好ましくは30原子%以下であり、より好ましくは20原子%以下であり、さらに好ましくは10原子%以下である。ここで、導電性炭素層54における水素原子の含有量の値としては、弾性反跳散乱分析法(ERDA)により得られる値を採用するものとする。この方法では、測定サンプルを傾け、ヘリウムイオンビームを浅く入射することによって、前方に弾き出された元素を検出する。水素原子の原子核は、入射されるヘリウムイオンよりも軽いため、水素原子が存在するとその原子核は前方に弾き出される。かような散乱は弾性散乱であることから、弾き出された原子のエネルギースペクトルはその原子核の質量を反映することになります。したがって、弾き出された水素原子の原子核の数を固体検出器によって測定することにより、測定サンプルにおける水素原子の含有量が測定されうる。
ここで、図7は、上述したR値が1.3以上であるものの、水素原子の含有量が異なる導電性炭素層を有するいくつかの導電部材について、接触抵抗を測定した結果を示すグラフである。図7に示すように、導電性炭素層における水素原子の含有量が30原子%以下であると、導電部材の接触抵抗の値は顕著に低下する。なお、図7に示す実験において、導電部材の金属基材層としてはSUS316Lを用い、この表面にCrからなる中間層(厚さ:0.2μm)および導電性炭素層(厚さ:0.2μm)をスパッタリング法によって順次形成することにより作製した。この際、成膜方式や炭化水素ガス量を制御することにより、導電性炭素層における水素原子の含有量を変化させた。
本実施形態においては、金属基材層52のすべてが(中間層56を介してではあるものの)、導電性炭素層54により被覆されている。換言すれば、本実施形態では、導電性炭素層54により金属基材層52が被覆された面積の割合(被覆率)は100%である。ただし、かような形態のみには限定されず、被覆率は100%未満であってもよい。導電性炭素層54による金属基材層52の被覆率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。かような構成とすることにより、導電性炭素層52により被覆されていない、金属基材層52の露出部への酸化皮膜の形成に伴う導電性・耐食性の低下が効果的に抑制されうる。なお、本実施形態のように、後述する中間層56が金属基材層52と導電性炭素層54との間に介在する場合、上記被覆率は、導電部材(セパレータ5)を積層方向から見た場合に導電性炭素層54と重複する金属基材層52の面積の割合を意味するものとする。
[中間層]
図2に示すように、本実施形態において、セパレータ5を構成する導電部材は、中間層56を有する。この中間層56は、金属基材層52と導電性炭素層54との密着性を向上させるという機能や、金属基材層52からのイオンの溶出を防止するという機能を有する。特に、R値が上述した好ましい範囲の上限値を超える場合に、中間層56を設けることによる効果は顕著に発現する。ただし、R値が上述した好ましい範囲に含まれる場合であっても中間層が設けられうることは当然である。他の観点からは、中間層56の設置による上述した作用効果は、金属基材層52がアルミニウムまたはその合金から構成される場合にも顕著に発現する。以下、導電部材を構成する中間層の好ましい形態について説明する。
図2に示すように、本実施形態において、セパレータ5を構成する導電部材は、中間層56を有する。この中間層56は、金属基材層52と導電性炭素層54との密着性を向上させるという機能や、金属基材層52からのイオンの溶出を防止するという機能を有する。特に、R値が上述した好ましい範囲の上限値を超える場合に、中間層56を設けることによる効果は顕著に発現する。ただし、R値が上述した好ましい範囲に含まれる場合であっても中間層が設けられうることは当然である。他の観点からは、中間層56の設置による上述した作用効果は、金属基材層52がアルミニウムまたはその合金から構成される場合にも顕著に発現する。以下、導電部材を構成する中間層の好ましい形態について説明する。
図8は、中間層56の好ましい一実施形態を示す断面図である。図8に示す形態において、中間層56は、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する。この中間層56は、セパレータ5の積層方向両側に配置されて当該中間層56を構成する2つの主層56aと、当該2つの主層56aに挟まれるように配置される水透過防止層56bとを有する。そして、図8では、水透過防止層56bを構成する柱状結晶(第1の柱状結晶)の平均径が、中間層の他の部位(すなわち、2つの主層56a)を構成する柱状結晶(第2の柱状結晶)の平均径よりも大きい。かような構成とすることで、金属基材層52の腐食が抑制され、耐食性が向上した導電部材が提供されうる。なお、図8に示す形態においては、水透過防止層56bの積層方向両側に主層56aが配置されている。ただし、本発明の技術的範囲はかような形態のみには制限されず、例えば、水透過防止層56bの片側にのみ中間層56の主層56aが設けられていてもよい。このことは、後述する他の実施形態においても、同様である。
図8に示す形態において、第1および第2の柱状結晶の平均径の相対比について特に制限はない。ただし、好ましくは、水透過防止層56bを構成する第1の柱状結晶の平均径が、2つの主層56aを構成する第2の柱状結晶の平均径の1.2〜10倍であり、より好ましくは1.5〜8倍であり、さらに好ましくは2〜5倍である。この値が1.2倍以上であれば、水透過防止層56bを設けることによる水透過防止効果が十分に発揮されうる。なお、「柱状結晶の径」とは、中間層56の主層56aや水透過防止層56bを構成する柱状結晶1個に着目し、その柱を筒状とみなした場合に取りうる最大径の大きさを意味する。また、「柱状結晶の平均径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて中間層56を積層方向から観察し、数〜数十視野中に観察される柱状結晶の径の平均値として算出される。さらに、中間層56を構成する柱状結晶の径の具体的な値について特に制限はなく、従来公知の知見および所望の作用効果を考慮して適宜決定されうる。一例として、第1の柱状結晶の平均径は20〜1000nm程度であり、好ましくは50〜500nmである。また、第2の柱状結晶の平均径は100〜500nm程度であり、好ましくは200nm〜500nmである。
図9は、中間層56の好ましい他の実施形態を示す断面図である。図9に示す形態において、中間層56は、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する。また、この中間層56は、セパレータ5の積層方向両側に配置されて当該中間層56を構成する2つの主層56aと、当該2つの主層56aに挟まれるように配置される水透過防止層56bとを有する。これらの点で、図8に示す形態と同様である。
そして、図9では、水透過防止層56bを構成する第1の柱状結晶間の平均距離が、中間層56の他の部位(すなわち、2つの主層56a)を構成する第2の柱状結晶間の平均距離よりも小さい。かような構成によっても、金属基材層52の腐食が抑制され、耐食性が向上した導電部材が提供されうる。
図9に示す形態において、第1の柱状結晶間の平均距離と、第2の柱状結晶間の平均距離との相対比について特に制限はない。ただし、好ましくは、第1の柱状結晶間の平均距離が、第2の柱状結晶間の平均距離の0.1〜0.8倍であり、より好ましくは0.2〜0.6倍であり、さらに好ましくは0.3〜0.5倍である。この値が0.8倍以下であれば、水透過防止層56bを設けることによる水透過防止効果が十分に発揮されうる。なお、「柱状結晶間の距離」とは、1本の柱状結晶と隣接する他の柱状結晶との最大間隔を意味する。また、「柱状結晶間の平均距離」は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて中間層56を積層方向から観察し、数〜数十視野中に観察される柱状結晶間の距離の平均値として算出される。さらに、中間層56を構成する柱状結晶間の距離の具体的な値について特に制限はなく、従来公知の知見および所望の作用効果を考慮して適宜決定されうる。一例として、第1の柱状結晶間の距離は0.2〜10nm程度であり、好ましくは0.5〜5nmである。また、第2の柱状結晶間の距離は0.5〜5nm程度であり、好ましくは0.5〜2nmである。
図10は、中間層56の好ましいさらに他の実施形態を示す断面図である。図9に示す形態において、中間層56は、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する。また、この中間層56は、セパレータ5の積層方向両側に配置されて当該中間層56を構成する2つの主層56aと、当該2つの主層56aに挟まれるように配置される水透過防止層56bとを有する。これらの点で、図8および図9に示す形態と同様である。
そして、図10では、中間層56の主層56aがクロム(Cr)から構成されているのに対し、水透過防止層56bはチタン(Ti)から構成されている。かような構成によれば、結晶構造の異なる金属が中間層56の内部に配置されることで、水の侵入が抑制され、金属基材層52の腐食が防止され、耐食性が向上した導電部材が提供されうる。ただし、クロムとチタンとの組み合わせのみに制限されることはなく、他の任意の組み合わせが採用されうる。これは、異なる金属は一般的に、異なる結晶構造または格子定数を有することから、異なる金属からなる層が中間層56の内部に構成されていれば、中間層56が単独の金属のみからなる場合と比較して水の侵入が抑制されうるためである。なかでも、水透過防止層56bは、主層56aよりも緻密な層であることが好ましい。
中間層56を構成する材料としては、上記の密着性を付与するものであれば特に制限はない。例えば、周期律表の第4族の金属(Ti、Zr、Nf)、第5族の金属(V、Nb、Ta)、第6族の金属(Cr、Mo、W)、並びにこれらの炭化物、窒化物および炭窒化物などが挙げられる。なかでも好ましくは、クロム(Cr)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)もしくはハフニウム(Hf)といったイオン溶出の少ない金属、またはこれらの窒化物、炭化物もしくは炭窒化物が用いられる。より好ましくは、CrもしくはTi、またはこれらの炭化物もしくは窒化物が用いられる。特に、上述したイオン溶出の少ない金属またはその炭化物もしくは窒化物を用いた場合、セパレータの耐食性を有意に向上させることができる。
図8または図9に示す形態の中間層56においては、主層56aを構成する材料と水透過防止層56bを構成する材料とが同一であってもよいし、異なっていてもよい。この際に用いられうる材料およびその好ましい形態は上述の通りである。また、図10に示す形態の中間層56においては、主層56aを構成する材料は、安価で成膜が容易であるという観点からは、好ましくはクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)であり、特に好ましくはクロム(Cr)である。一方、図10において、水透過防止層56bを構成する材料は、好ましくはチタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)であり、また、Crの窒化物、炭化物でもよい。特に好ましくはチタン(Ti)である。チタンを用いて水透過防止層56bを形成することで、水透過防止層をより薄くした場合であっても優れた水透過防止効果が達成されうる。
図8〜図10に示す形態において、主層56aや水透過防止層56bの厚さ、中間層56全体の厚さは、特に制限されない。ただし、セパレータ5をより薄膜化することにより、燃料電池のスタックのサイズをできるだけ小さくするという観点を考慮すべきである。その上で、導電部材の耐食性を安価に向上させるという観点からは、主層56aの1層分の厚さは、好ましくは0.002〜5μmであり、より好ましくは0.01〜1μmであり、さらに好ましくは0.1〜0.5μmである。また、図8〜図10に示すように主層56aが複数存在する場合には、複数の主層56aの合計厚さは、好ましくは0.005〜10μmであり、より好ましくは0.01〜5μmであり、さらに好ましくは0.1〜2μmである。さらに、中間層56全体の厚さは、好ましくは0.01〜10μmであり、より好ましくは0.05〜5μmであり、さらに好ましくは0.1〜1μmである。中間層56の厚さが0.01μm以上であれば、金属基材層の耐食性を効果的に向上させることが可能となる。一方、中間層56の厚さが10μm以下であれば、中間層の膜応力の上昇が抑えられ、金属基材層に対する皮膜追従性の低下やこれに伴う剥離・クラックの発生が防止されうる。
図8〜図10に示す形態において、上述した水透過防止層56bは、中間層56の投影面積の全体にわたって存在している。ただし、かような形態のみには制限されない。具体的には、本発明の作用効果を十分に発揮させるという観点からは、例えば、水透過防止層56bは中間層56の投影面積の50%以上に存在することが好ましく、80%以上に存在することがより好ましく、95%以上に存在することがさらに好ましく、100%に存在することが最も好ましい。
また、中間層56の、導電性炭素層54側の表面は、ナノレベルで粗れていることが好ましい。かような形態によれば、中間層56上に成膜される導電性炭素層54の、中間層56に対する密着性をより一層向上させうる。
なお、上述した中間層は、金属基材層の少なくとも一方の表面上に存在すればよい。ただし、導電性炭素層が金属基材層の一方の主表面にのみ存在する場合には、中間層は、金属基材層と導電性炭素層との間に存在する。また、導電性炭素層は、上述したように金属基材層の両面に存在する場合もある。かような場合には、中間層は、金属基材層と双方の導電性炭素層との間にそれぞれ介在することが好ましい。金属基材層といずれか一方の導電性炭素層との間にのみ中間層が存在する場合には、当該中間層は、PEFCにおいてMEA側に配置されることとなる導電性炭素層と金属基材層との間に存在することが好ましい。
(導電部材の製造方法)
上述した実施形態の導電部材を製造する方法について特に制限はなく、従来公知の手法を適宜参照することにより製造することが可能である。以下、導電部材を製造するための好ましい実施形態を記載するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには限定されない。また、セパレータ5を構成する導電部材の各構成要素の材質などの諸条件については、上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
上述した実施形態の導電部材を製造する方法について特に制限はなく、従来公知の手法を適宜参照することにより製造することが可能である。以下、導電部材を製造するための好ましい実施形態を記載するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには限定されない。また、セパレータ5を構成する導電部材の各構成要素の材質などの諸条件については、上述した通りであるため、ここでは説明を省略する。
まず、金属基材層の構成材料として、所望の厚さのアルミニウム板やステンレス板などを準備する。次いで、適当な溶媒(例えば、エタノール、エーテル、アセトン、イソプロピルアルコール、トリクロロエチレンおよび苛性アルカリ剤など)を用いて、準備した金属基材層の構成材料の表面の脱脂および洗浄処理を行う。該処理としては、超音波洗浄などが挙げられる。超音波洗浄の条件としては、処理時間が1〜10分間程度、周波数が30〜50kHz程度、および電力が30〜50W程度である。
続いて、金属基材層の構成材料の表面(両面)に形成されている酸化皮膜の除去を行なう。酸化皮膜を除去するための手法としては、酸による洗浄処理、電位印加による溶解処理、またはイオンボンバード処理などが挙げられる。
次に、上記の処理を施した金属基材層の構成材料の表面に、中間層を成膜する。例えば、まず、上述した中間層の主層の構成材料(例えば、クロム)をターゲットとして、金属基材層上にクロムからなる層を原子レベルで積層(成膜)することにより、中間層の主層を1層形成することができる。これにより、直接付着した中間層の主層と金属基材層との界面およびその近傍は、分子間力や僅かな炭素原子の進入によって、長期間にわたって密着性が保持されうる。
中間層の主層を積層(成膜)するのに好適に用いられる手法としては、例えば、スパッタリング法が挙げられる。スパッタリング法としては、マグネトロンスパッタリング法、アンバランスドマグネトロンスパッタリング(UBMS)法、デュアルマグネトロンスパッタ法などが挙げられる。
ここで、図8や図9に示す形態の中間層56を形成するには、例えば、中間層の成膜を、金属基材層に負のバイアス電圧を印加しながらスパッタリング法により行ない、スパッタリングのいずれかの時点において、当該バイアス電圧の大きさを変化させればよい。より具体的には、まず、クロムなどの金属をターゲットとして、ある一定の負のバイアス電圧を金属基材層に印加しながらスパッタリングを行なう。これにより、金属基材層の表面に中間層の第1の主層が形成される。そして、これに続いて、当該バイアス電圧の大きさ(絶対値)を大きくすると、図8に示す形態の水透過防止層のように、柱状結晶の平均径が比較的大きい層が形成されうる(後述する実施例2を参照)。一方、当該バイアス電圧の大きさ(絶対値)を途中から小さくするか、ゼロにしてもよい(後述する実施例1を参照)。当該形態において、印加される負のバイアス電圧の大きさ(絶対値)は特に制限されず、主層や水透過防止層を成膜可能な電圧が採用されうる。一例として、主層を形成する際に印加される電圧の大きさは、好ましくは50〜500Vであり、より好ましくは100〜300Vである。また、図8に示す形態の水透過防止層を形成する際の電圧の大きさは、好ましくは100〜500Vであり、より好ましくは200〜300Vである。さらに、図9に示す形態の水透過防止層を形成する際の電圧の大きさは、好ましくは0〜50Vであり、より好ましくは0〜20Vである。
あるいは、第1の主層の形成に続いて、スパッタリングの際の金属基材層の温度を変化させてもよい。例えば、金属基材層の温度を一定時間高くし、その後温度を元に(低い温度に)戻すと、図8に示す形態の水透過防止層が形成されうる(後述する実施例3を参照)。なお、スパッタリング時の金属基材層の温度の具体的な値について特に制限はないが、通常は200〜500℃程度で行なえばよい。そして、水透過防止層を形成する際には、金属基材層の温度を例えば250〜350℃程度とすればよい。一方、金属基材層の温度を一定時間低くし、その後温度を元に(高い温度に)戻すと、図9に示す形態の水透過防止層が形成されうる。この際には、金属基材層の温度を100〜200℃程度まで下げることで水透過防止層を形成すればよい。
さらに、図10に示す形態の中間層56を形成するには、スパッタリングの際に用いるターゲット金属を、水透過防止層を構成する金属(例えば、チタン)へと変更すればよい。これにより、第1の主層の表面に水透過防止層が形成されうる。その他の具体的な形態については、上述した通りであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
上述した形態の水透過防止層の形成方法は、1種のみが単独で採用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。そして、水透過防止層を形成した後には、第1の主層を形成したのと同様の手法により、第2の主層を形成すればよい。これにより、中間層が完成する。なお、スパッタリングの際に負のバイアス電圧の大きさ(絶対値)を変化させたり、金属基材層の温度を変化させる場合、その変化は連続的であってもよいし、離散的であってもよい。
さらに、上述したのと同様の手法により、炭素材料(例えば、固体グラファイト)をターゲットとしてスパッタリングを行なう。これにより、中間層の表面に導電性炭素層が形成される。なお、導電性炭素層の形成には、スパッタリング法のほかにも、イオンプレーティング法などの物理気相成長(PVD)法、またはフィルタードカソーディックバキュームアーク(FCVA)法などのイオンビーム蒸着法などが用いられうる。イオンプレーティング法としては、アークイオンプレーティング法などが挙げられる。なかでも、スパッタリング法およびイオンプレーティング法を用いることが好ましく、スパッタリング法を用いることが特に好ましい。かような手法によれば、水素含有量の少ない炭素層を形成することができる。その結果、炭素原子同士の結合(sp2混成炭素)の割合を増加させることができ、優れた導電性が達成されうる。これに加えて、比較的低温で成膜が可能であり、金属基材層へのダメージを最小限に抑えることができるという利点もある。さらに、スパッタリング法によれば、バイアス電圧等を制御することで、成膜される層の膜質をコントロールできるという利点もある。
ここで、導電性炭素層の成膜をスパッタリング法により行なう場合には、スパッタリング時に金属基材層に対して負のバイアス電圧を印加するとよい。かような形態によれば、イオン照射効果によって、グラファイトクラスターが緻密に集合した構造の導電性炭素層が成膜されうる。このような導電性炭素層は優れた導電性を発揮しうることから、他の部材(例えば、MEA)との接触抵抗の小さい導電部材(セパレータ)が提供されうる。当該形態において、印加される負のバイアス電圧の大きさ(絶対値)は特に制限されず、導電性炭素層を成膜可能な電圧が採用されうる。一例として、印加される電圧の大きさは、好ましくは50〜500Vであり、より好ましくは100〜300Vである。なお、成膜時のその他の条件等の具体的な形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
上述した手法によれば、金属基材層52の一方の主表面に中間層56が形成され、さらに導電性炭素層54が形成された導電部材が製造されうる。金属基材層52の両面に中間層56さらには導電性炭素層54が形成されてなる導電部材を製造するには、金属基材層52の他方の主表面に対しても、上述したのと同様の手法によって、中間層および導電性炭素層を形成すればよい。
本実施形態の導電部材は、種々の用途に用いられうる。その代表例が図1に示すPEFCのセパレータ5である。ただし、本実施形態の導電部材の用途はこれに限られることはない。例えば、PEFC以外にも、リン酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、固体電解質形燃料電池(SOFC)またはアルカリ形燃料電池(AFC)などの各種の燃料電池用セパレータとしても使用可能である。また、燃料電池用セパレータ以外にも、導電性・耐食性の両立が求められている各種の用途に用いられうる。本実施形態の導電部材が用いられうる燃料電池用セパレータ以外の用途としては、例えば、他の燃料電池部品(集電板、バスバー、ガス拡散基材、MEA)、電子部品の接点などが挙げられる。他の好ましい形態において、本実施形態の導電部材は、湿潤環境および通電環境の下で使用される。かような環境下で用いると、導電性および耐食性の両立を図るという本発明の作用効果が顕著に発現しうる。
以下、図1を参照しつつ、本実施形態の導電部材から構成されるセパレータを用いたPEFCの構成要素について説明する。ただし、本発明はセパレータを構成する導電部材に特徴を有するものである。よって、PEFCにおけるセパレータの形状等の具体的な形態や、燃料電池を構成するセパレータ以外の部材の具体的な形態については、従来公知の知見を参照しつつ、適宜、改変が施されうる。
[電解質層]
電解質層は、例えば、図1に示す形態のように固体高分子電解質膜2から構成される。この固体高分子電解質膜2は、PEFC1の運転時にアノード触媒層3aで生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3cへと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜2は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
電解質層は、例えば、図1に示す形態のように固体高分子電解質膜2から構成される。この固体高分子電解質膜2は、PEFC1の運転時にアノード触媒層3aで生成したプロトンを膜厚方向に沿ってカソード触媒層3cへと選択的に透過させる機能を有する。また、固体高分子電解質膜2は、アノード側に供給される燃料ガスとカソード側に供給される酸化剤ガスとを混合させないための隔壁としての機能をも有する。
固体高分子電解質膜2は、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって、フッ素系高分子電解質膜と炭化水素系高分子電解質膜とに大別される。フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能を向上させるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質膜が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
炭化水素系電解質として、具体的には、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の観点からは、これらの炭化水素系高分子電解質膜が好ましく用いられる。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
電解質層の厚さは、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。電解質層の厚さは、通常は5〜300μm程度である。電解質層の厚さがかような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性及び使用時の出力特性のバランスが適切に制御されうる。
[触媒層]
触媒層(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層3aでは水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層3cでは酸素の還元反応が進行する。
触媒層(アノード触媒層3a、カソード触媒層3c)は、実際に電池反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層3aでは水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層3cでは酸素の還元反応が進行する。
触媒層は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性の触媒担体、および電解質を含む。以下、触媒担体に触媒成分が担持されてなる複合体を「電極触媒」とも称する。
アノード触媒層に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード触媒層に用いられる触媒成分もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属およびこれらの合金などから選択されうる。
これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、少なくとも白金を含むものが好ましく用いられる。前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本願ではいずれであってもよい。この際、アノード触媒層に用いられる触媒成分およびカソード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択されうる。本明細書では、特記しない限り、アノード触媒層用およびカソード触媒層用の触媒成分についての説明は、両者について同様の定義である。よって、一括して「触媒成分」と称する。しかしながら、アノード触媒層およびカソード触媒層の触媒成分は同一である必要はなく、上記したような所望の作用を奏するように、適宜選択されうる。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが採用されうる。ただし、触媒成分の形状は、粒状であることが好ましい。この際、触媒粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30nmである。触媒粒子の平均粒子径がかような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切に制御されうる。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過形電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定されうる。
触媒担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、および触媒成分と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。
触媒担体としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、充分な電子伝導性を有しているものであればよく、主成分がカーボンであることが好ましい。具体的には、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、「実質的に炭素原子からなる」とは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されうることを意味する。
触媒担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに充分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m2/g、より好ましくは80〜1200m2/gである。触媒担体の比表面積がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散性と触媒成分の有効利用率とのバランスが適切に制御されうる。
触媒担体のサイズについても特に限定されないが、担持の簡便さ、触媒利用率、触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径を5〜200nm程度、好ましくは10〜100nm程度とするとよい。
触媒担体に触媒成分が担持されてなる電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。触媒成分の担持量がかような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、電極触媒における触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって測定されうる。
触媒層には、電極触媒に加えて、イオン伝導性の高分子電解質が含まれる。当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、上述した電解質層を構成するイオン交換樹脂が、高分子電解質として触媒層に添加されうる。
[ガス拡散層]
ガス拡散層(アノードガス拡散層4a、カソードガス拡散層4c)は、セパレータのガス流路(6a、6c)を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層(3a、3c)への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
ガス拡散層(アノードガス拡散層4a、カソードガス拡散層4c)は、セパレータのガス流路(6a、6c)を介して供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層(3a、3c)への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
ガス拡散層(4a、4c)の基材を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層(マイクロポーラス層;MPL、図示せず)を基材の触媒層側に有するものであってもよい。
カーボン粒子層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、グラファイト、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒子径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、質量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
燃料電池の製造方法は、特に制限されることなく、燃料電池の分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
燃料電池を運転する際に用いられる燃料は特に限定されない。例えば、水素、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、第2級ブタノール、第3級ブタノール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが用いられうる。なかでも、高出力化が可能である点で、水素やメタノールが好ましく用いられる。
さらに、燃料電池が所望する電圧を発揮できるように、セパレータを介して膜電極接合体を複数積層して直列に繋いだ構造の燃料電池スタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
上述したPEFC1や燃料電池スタックは、導電性・耐食性に優れる導電部材から構成されるセパレータ5を用いている。したがって、当該PEFC1や燃料電池スタックは出力特性・耐久性に優れ、長期間にわたって良好な発電性能を維持することができる。なお、図1に示す形態のPEFC1において、セパレータ5は、平板状の導電部材に対してプレス処理を施すことで凹凸状に成形されている。ただし、かような形態のみには制限されない。例えば、平板状の金属板(金属基材層)に対して切削処理を施すことによりガス流路や冷媒流路を構成する凹凸形状を予め形成し、その表面に、上述した手法によって導電性炭素層(および必要に応じて中間層)を形成することで、セパレータとしてもよい。
本実施形態のPEFC1やこれを用いた燃料電池スタックは、例えば、車両に駆動用電源として搭載されうる。
図11は、上述した実施形態の燃料電池スタックを搭載した車両の概念図である。図11に示すように、燃料電池スタック61を燃料電池車60のような車両に搭載するには、例えば、燃料電池車60の車体中央部の座席下に搭載すればよい。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができる。場合によっては、燃料電池スタック61を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームであってもよい。このように、上述した形態のPEFC1や燃料電池スタック61を搭載した車両もまた、本発明の技術的範囲に包含される。上述したPEFC1や燃料電池スタック61は出力特性・耐久性に優れる。したがって、長期間にわたって信頼性の高い燃料電池搭載車両が提供されうる。
以下、本発明による効果を、実施例および比較例を用いて説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されない。
[実施例1]
導電部材を構成する金属基材層の構成材料として、アルミニウム板(厚さ:200μm)を準備した。このアルミニウム板を、前処理としてエタノール水溶液中で3分間超音波洗浄した。次いで、洗浄したアルミニウム板を真空チャンバ内に設置し、Arガスによるイオンボンバード処理を行なって、表面の酸化皮膜を除去した。なお、上述した前処理(洗浄)およびイオンボンバード処理は、いずれもアルミニウム板の両面に対して行った。
導電部材を構成する金属基材層の構成材料として、アルミニウム板(厚さ:200μm)を準備した。このアルミニウム板を、前処理としてエタノール水溶液中で3分間超音波洗浄した。次いで、洗浄したアルミニウム板を真空チャンバ内に設置し、Arガスによるイオンボンバード処理を行なって、表面の酸化皮膜を除去した。なお、上述した前処理(洗浄)およびイオンボンバード処理は、いずれもアルミニウム板の両面に対して行った。
続いて、アンバランスドマグネトロンスパッタリング(UBMS)法により、Crをターゲットとして、アルミニウム板に対して50Vの大きさの負のバイアス電圧を印加しながら、アルミニウム板の両面にそれぞれ0.2μmの厚さのCrからなる中間層Aを形成した。なお、中間層Aの形成時にはアルミニウム板を150℃に加熱した。
その後、上記と同様の手法により、上記で形成した中間層A(両側)の表面に、アルミニウム板に対して負のバイアス電圧を印加することなく、100nmの厚さのCrからなる水透過防止層を形成した。
続いて、上記と同様の手法により、アルミニウム板に対して印加する負のバイアス電圧の絶対値を50Vまで徐々に増加させながら、中間層全体としての厚さが1μmとなるまでCrからなる中間層Bを形成した。なお、負のバイアス電圧の絶対値の増加速度は5V/secとし、50Vに達した後は50Vで一定に維持した。
さらに、UBMS法により、固体グラファイトをターゲットとして、アルミニウム板に対して140Vの大きさの負のバイアス電圧を印加しながら、アルミニウム板の両面の中間層の上に、それぞれ0.2μmの厚さの導電性炭素層を形成した。これにより、本実施例の導電部材を作製した。
[実施例2]
水透過防止層を形成する際に印加する負のバイアス電圧の大きさ(絶対値)を200Vとした。また、中間層Bを形成する際に印加する負のバイアス電圧の絶対値を10V/secの減少速度で減少させ、50Vに達した後は50Vで一定に維持した。これら以外の操作・条件については上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の導電部材を作製した。
水透過防止層を形成する際に印加する負のバイアス電圧の大きさ(絶対値)を200Vとした。また、中間層Bを形成する際に印加する負のバイアス電圧の絶対値を10V/secの減少速度で減少させ、50Vに達した後は50Vで一定に維持した。これら以外の操作・条件については上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の導電部材を作製した。
[実施例3]
中間層Aの厚さを片面につき0.05μmとし、水透過防止層を形成する際に、印加する負のバイアス電圧の大きさ(絶対値)を50Vとし、アルミニウム板を300℃に加熱したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の導電部材を作製した。
中間層Aの厚さを片面につき0.05μmとし、水透過防止層を形成する際に、印加する負のバイアス電圧の大きさ(絶対値)を50Vとし、アルミニウム板を300℃に加熱したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本実施例の導電部材を作製した。
[実施例4]
導電部材を構成する金属基材層の構成材料として、アルミニウム板(厚さ:200μm)を準備した。このアルミニウム板を、前処理としてエタノール水溶液中で3分間超音波洗浄した。次いで、洗浄したアルミニウム板を真空チャンバ内に設置し、Arガスによるイオンボンバード処理を行なって、表面の酸化皮膜を除去した。なお、上述した前処理(洗浄)およびイオンボンバード処理は、いずれもアルミニウム板の両面に対して行った。
導電部材を構成する金属基材層の構成材料として、アルミニウム板(厚さ:200μm)を準備した。このアルミニウム板を、前処理としてエタノール水溶液中で3分間超音波洗浄した。次いで、洗浄したアルミニウム板を真空チャンバ内に設置し、Arガスによるイオンボンバード処理を行なって、表面の酸化皮膜を除去した。なお、上述した前処理(洗浄)およびイオンボンバード処理は、いずれもアルミニウム板の両面に対して行った。
続いて、アンバランスドマグネトロンスパッタリング(UBMS)法により、Crをターゲットとして、アルミニウム板に対して50Vの大きさの負のバイアス電圧を印加しながら、アルミニウム板の両面にそれぞれ0.1μmの厚さのCrからなる中間層Aを形成した。なお、中間層Aの形成時にはアルミニウム板を150℃に加熱した。
その後、上記と同様の手法により、Tiをターゲットとして、上記で形成した中間層A(両側)の表面に、アルミニウム板に対して50Vの大きさの負のバイアス電圧を印加しながら、50nmの厚さのTiからなる水透過防止層を形成した。
続いて、上記と同様の手法により、Crをターゲットとして、上記で形成した水透過防止層(両側)の表面に、アルミニウム板に対して50Vの大きさの負のバイアス電圧を印加しながら、中間層全体としての厚さが1μmとなるまでCrからなる中間層Bを形成した。
さらに、UBMS法により、固体グラファイトをターゲットとして、アルミニウム板に対して140Vの大きさの負のバイアス電圧を印加しながら、アルミニウム板の両面の中間層の上に、それぞれ0.2μmの厚さの導電性炭素層を形成した。これにより、本実施例の導電部材を作製した。
[比較例]
水透過防止層を形成せずに、1μmの厚さのCrからなる中間層を形成したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本比較例の導電部材を作製した。
水透過防止層を形成せずに、1μmの厚さのCrからなる中間層を形成したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、本比較例の導電部材を作製した。
[イオン溶出量の測定]
上記の各実施例および比較例において作製した導電部材について、酸性水に対する浸漬試験を行ない、その際の金属基材層からのアルミニウムイオンの溶出量を測定した。具体的には、各導電部材を30mm×30mmのサイズに切り出し、80℃の温度の酸性水(pH6以下)に100時間浸漬して、浸漬によるAlイオンの溶出量をICP−MSにより測定した。得られた結果を下記の表1に示す。
上記の各実施例および比較例において作製した導電部材について、酸性水に対する浸漬試験を行ない、その際の金属基材層からのアルミニウムイオンの溶出量を測定した。具体的には、各導電部材を30mm×30mmのサイズに切り出し、80℃の温度の酸性水(pH6以下)に100時間浸漬して、浸漬によるAlイオンの溶出量をICP−MSにより測定した。得られた結果を下記の表1に示す。
[接触抵抗の測定]
上記の各実施例および比較例において作製した導電部材について、導電部材の積層方向の接触抵抗の測定を行なった。具体的には、図12に示すように、作製した導電部材100を1対のガス拡散基材200で挟持し、得られた積層体をさらに1対の触媒層300で挟持し、その両端に電源を接続し、1MPaの荷重で保持して、測定装置を構成した。この測定装置に1Aの定電流を流し、その際の電圧値から、積層体の接触抵抗値を算出した。また、実施例2および比較例の導電部材については、上記浸漬試験後にも接触抵抗値を算出した。得られた結果を下記の表1および図13に示す。
上記の各実施例および比較例において作製した導電部材について、導電部材の積層方向の接触抵抗の測定を行なった。具体的には、図12に示すように、作製した導電部材100を1対のガス拡散基材200で挟持し、得られた積層体をさらに1対の触媒層300で挟持し、その両端に電源を接続し、1MPaの荷重で保持して、測定装置を構成した。この測定装置に1Aの定電流を流し、その際の電圧値から、積層体の接触抵抗値を算出した。また、実施例2および比較例の導電部材については、上記浸漬試験後にも接触抵抗値を算出した。得られた結果を下記の表1および図13に示す。
表1に示す結果から、実施例で得られた導電部材の浸漬試験によるAlイオンの溶出量は比較例のものと比べて極めて少なかった。
また、実施例2の導電部材では、浸漬試験の前後での接触抵抗値の増大が、比較例と比べて抑えられている。これは、金属基材層からのAlイオンの溶出が少なかったためであると考えられる。実施例1、3、および4の導電部材についても、比較例とは異なる構造上の相違に起因してAlイオンの溶出量が比較例と比べて小さい値に抑えられている。したがって、これらの実施例についても、浸漬試験や燃料電池の運転時のような酸性水による湿潤条件下においても、優れた耐食性を示すであろうことが十分に予想される。
1 固体高分子形燃料電池(PEFC)、
2 固体高分子電解質膜、
3a アノード触媒層、
3c カソード触媒層、
4a アノードガス拡散層、
4c カソードガス拡散層、
5a アノードセパレータ、
5c カソードセパレータ、
6a アノードガス流路、
6c カソードガス流路、
7 冷媒流路、
10 膜電極接合体(MEA)、
52 金属基材層、
54 導電性炭素層、
56 中間層、
56a 中間層の主層、
56b 水透過防止層、
60 燃料電池車、
61 燃料電池スタック、
100 導電部材、
200 ガス拡散基材、
300 触媒層。
2 固体高分子電解質膜、
3a アノード触媒層、
3c カソード触媒層、
4a アノードガス拡散層、
4c カソードガス拡散層、
5a アノードセパレータ、
5c カソードセパレータ、
6a アノードガス流路、
6c カソードガス流路、
7 冷媒流路、
10 膜電極接合体(MEA)、
52 金属基材層、
54 導電性炭素層、
56 中間層、
56a 中間層の主層、
56b 水透過防止層、
60 燃料電池車、
61 燃料電池スタック、
100 導電部材、
200 ガス拡散基材、
300 触媒層。
Claims (15)
- 金属基材層と、
前記金属基材層の少なくとも一方の主表面に位置する、導電性炭素を含む導電性炭素層と、
前記金属基材層と前記導電性炭素層との間に介在する、導電部材の積層方向に成長した柱状結晶からなる結晶構造を有する中間層と、
を有する導電部材であって、
前記中間層の少なくとも一部に、水透過防止層をさらに有することを特徴とする、導電部材。 - 前記導電性炭素層のラマン散乱分光分析により測定されたDバンドピーク強度(ID)とGバンドピーク強度(IG)との強度比R(ID/IG)が1.3以上である、請求項1に記載の導電部材。
- 前記水透過防止層を構成する第1の柱状結晶の平均径が、中間層の他の部位を構成する第2の柱状結晶の平均径よりも大きい、請求項1または2に記載の導電部材。
- 前記第1の柱状結晶の平均径が、前記第2の柱状結晶の平均径の1.2〜10倍である、請求項3に記載の導電部材。
- 前記水透過防止層を構成する第1の柱状結晶間の平均距離が、中間層の他の部位を構成する第2の柱状結晶間の平均距離よりも小さい、請求項1または2に記載の導電部材。
- 前記第1の柱状結晶間の平均距離が、前記第2の柱状結晶間の平均距離の0.1〜0.8倍である、請求項5に記載の導電部材。
- 前記水透過防止層を構成する材料が、中間層の他の部位を構成する材料とは異なる金属である、請求項1または2に記載の導電部材。
- 前記中間層の前記水透過防止層以外の部位を構成する材料がクロムである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電部材。
- 前記水透過防止層が、前記中間層の投影面積の50%以上に存在する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電部材。
- 湿潤環境および通電環境の下で使用される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の導電部材。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電部材から構成される、燃料電池用セパレータ。
- 高分子電解質膜、これを挟持する一対のアノード触媒層およびカソード触媒層、並びにこれらを挟持する一対のアノードガス拡散層およびカソードガス拡散層を含む膜電極接合体と、
前記膜電極接合体を挟持する一対のアノードセパレータおよびカソードセパレータと、
を有する固体高分子形燃料電池であって、
前記アノードセパレータまたは前記カソードセパレータの少なくとも一方が、請求項11に記載の燃料電池用セパレータであり、この際、前記燃料電池用セパレータが凹凸状に形成されてなり、当該凸部が前記膜電極接合体と接触し、当該凹部が燃料ガスまたは酸化剤ガスを流通するためのガス流路とされてなることを特徴とする、固体高分子形燃料電池。 - 請求項12に記載の固体高分子形燃料電池を搭載した車両。
- 金属基材層の少なくとも一方の主表面に中間層を成膜する工程と、
前記中間層の露出した主表面に導電性炭素層を成膜する工程と、
を含む、導電部材の製造方法であって、
前記中間層の成膜を、前記金属基材層に負のバイアス電圧を印加しながらスパッタリング法により行ない、
スパッタリングのいずれかの時点において、当該バイアス電圧の大きさを変化させるか、または、前記金属基材層の温度を変化させることを特徴とする、導電部材の製造方法。 - 金属基材層の少なくとも一方の主表面に中間層を成膜する工程と、
前記中間層の露出した主表面に導電性炭素層を成膜する工程と、
を含む、導電部材の製造方法であって、
前記中間層の成膜をスパッタリング法により行ない、
スパッタリングのいずれかの時点において、ターゲットを構成する材料を変えることを特徴とする、導電部材の製造方法。
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WO2016056557A1 (ja) * | 2014-10-10 | 2016-04-14 | 東レ株式会社 | グラフェン粉末、リチウムイオン電池用電極ペーストおよびリチウムイオン電池用電極 |
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WO2016056557A1 (ja) * | 2014-10-10 | 2016-04-14 | 東レ株式会社 | グラフェン粉末、リチウムイオン電池用電極ペーストおよびリチウムイオン電池用電極 |
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TWI676594B (zh) * | 2014-10-10 | 2019-11-11 | 日商東麗股份有限公司 | 石墨烯粉末、鋰離子電池用電極糊及鋰離子電池用電極 |
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