JP4547061B2 - 印刷装置 - Google Patents
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Description
本発明は、孔版印刷装置等の印刷装置に関し、詳しくは、印刷用紙の1回の搬送で多色印刷が可能に印刷ドラムが複数配置された印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷装置では、インキの色が異なる印刷ドラムを複数本通紙(搬送)方向に並置し、印刷用紙を搬送しながら上流側から順に1色目、2色目...と転写し、いわゆる1パス(1回の通紙)で多色印刷を行なうことが行われている。
この1パス方式は、色毎に印刷ドラムを交換して再給紙する方式に比べ作業能率が非常に良いが、1パス故の印刷間隔の短さに起因した問題がある。
すなわち、上流の印刷ドラム(例えば1色目の印刷ドラム)で印刷された画像のインキが未乾燥状態で下流の印刷ドラム(例えば2色目の印刷ドラム)のニップ部へ進入するために、下流の印刷ドラムに巻装されているマスタへそのインキが転移し、マスタへ転移したインキが次の印刷用紙に転移する現象が起こる。
【0003】
最初の1枚目の印刷用紙では、1色目の未乾燥インキは2色目の印刷ドラムのマスタに転移するだけに終わるので問題はないが、2枚目の印刷用紙では1色目の印刷ドラムで印刷された画像上に、1枚目の印刷において2色目の印刷ドラムのマスタに転移した1色目のインキが転移する。
これは再転写と呼ばれている。再転写は同色インキの重なり現象であるので、本来の印刷画像との間に位置ずれがなければ画像品質上の問題は生じない。
しかしながら、再転写が本来の印刷画像に対してずれると、影のように見えるいわゆるオフセットゴーストとなる。オフセットゴーストでは、ずれ量が同じでも太い線はにじみに見え、細い線はダブリに見えるため、画像品質が著しく低下する。
【0004】
1パス方式の多色印刷では再転写現象は避けられないが、オフセットゴーストは再転写位置の位置ずれによるものであるので、上流の印刷ドラムと下流の印刷ドラムの同期回転精度が高精度に保たれ、印刷用紙の搬送精度が高精度に保たれれば、オフセットゴーストの発生を高精度に抑制することができる。
従来、オフセットゴーストを抑制するために、上流の印刷ドラムと下流の印刷ドラムを連結駆動する構成が採用されており、この連結駆動の方式としては、例えば特開平4−329175号公報に開示されるように印刷ドラムの回転駆動軸を複数のギアで連結する方式と、例えば特開平7−17121号公報に開示されるようにタイミングプーリとタイミングベルトで連結する方式がある。
【0005】
タイミングベルト連結方式の一例を図13に示す。
印刷用紙Pの搬送方向に間隔をおいて配置された2つの印刷ドラム100(上流側),102(下流側)にそれぞれタイミングプーリとしての歯付きのドラム駆動プーリ104,106が取り付けられており、これらのドラム駆動プーリ104,106間にタイミングベルト108が掛け渡されて印刷ドラム100,102が連結駆動可能となっている。
印刷ドラム100,102間には、印刷ドラム100,102間の位相を調整するドラム間位相調整手段110(印刷用紙の搬送方向である天地方向の1色目と2色目の色ずれ調整手段)が設けられている。
【0006】
ドラム間位相調整手段110は、図示しない駆動手段により上下方向に移動するフレーム112と、このフレーム112の上下端部に回転自在に支持された歯付きの調整用プーリ114a,114b(以下、適宜に、単に調整用プーリ114と呼ぶときがある)等を有しており、各調整用プーリ114はタイミングベルト108に噛み合っている。調整用プーリ114と印刷ドラム100,102との間には、タイミングベルト108を偏向させる4個の偏向プーリ116が位置固定されて設けられており、ドラム間位相調整手段110の上下変位による位相調整が短距離変位で効率的になされるようになっている。偏向プーリ116はタイミングベルト108の裏面に当接するため、平プーリが用いられている。図13において符号118,120は印刷ドラム100,102に対して接離自在なプレスローラを示す。
【0007】
フレーム112が上方に移動して調整用プーリ114a,114bが上方に変位すると、印刷ドラム100は矢印a方向に、印刷ドラム102は矢印b方向に回転し、印刷ドラム100,102の位相が変化する。フレーム112が下方に移動すると逆方向の位相変化を得ることができる。
ドラム間位相調整手段110は、印刷用紙Pの搬送方向の印刷位置のずれを修正するもので、印刷速度の変化による位置ずれ修正等が可能であり、実際上不可欠なものとなっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、タイミングベルト108に噛み合うドラム駆動プーリ104,106及び調整用プーリ114は、加工精度、組付精度などにより少なからず偏心することを避けられない。
また、無視できないのが、タイミングベルト108自身もその芯線位置精度による偏心成分を有していることである。さらには、前述のドラム間位相調整手段110が設けられていることを考慮すると、タイミングベルト108の裏面に当接する偏向プーリ116の存在によってタイミングベルト108の全周長における厚さの不均一さも偏心成分として加算されることになる。
【0009】
ドラム駆動プーリ104,106についてはそれぞれが偏心していても、オフセットゴーストの発生は印刷ドラム100,102、すなわち、ドラム駆動プーリ104,106が1回転に1回の現象であるので、印刷ドラム100と印刷ドラム102との間には同期回転のずれは生じない。
しかしながら、調整用プーリ114が偏心している場合には、調整用プーリ114が回転する毎に、また、タイミングベルト108が偏心成分を有している場合には、ドラム駆動プーリ104,106が回転する毎に印刷ドラム100と印刷ドラム102の位相をずらしていることになる。
【0010】
調整用プーリ114が偏心している場合にオフセットゴーストが発生する理由を図14及び図15に基づいて説明する。
図14は、ドラム駆動プーリ(104,106)の歯数:調整用プーリ114の歯数=4.3:1の場合、換言すれば、ドラム駆動プーリ(104,106)の歯数が調整用プーリ114の非整数倍である場合のドラム駆動プーリ(104,106)と調整用プーリ114に偏心があった場合の速度変動を示す波形図である。なお、図14は代表的に、ドラム駆動プーリ104と調整用プーリ114aについてのみ図示してあり、ドラム駆動プーリ106と、調整用プーリ114bの波形図は省略してある。
【0011】
つまり、図14において、実線S1はドラム駆動プーリ104の速度変動を、実線S2はドラム駆動プーリ104の速度変動波形の原点と調整用プーリ114aの速度変動波形の原点とをわかりやすいように一致させて示した、調整用プーリ114aの速度変動を、破線S3はドラム駆動プーリ104と調整用プーリ114aとの偏心位置に差があった場合の調整用プーリ114aの速度変動を示している。ここで、通常は、破線S3で示すように、ドラム駆動プーリ104の速度波形の原点と調整用プーリ114aの速度波形の原点とはずれていることが多い。
【0012】
図15は、合成速度変動を示す波形図で、実線C1は図14における実線S1と実線S2の合成速度変動を、破線C2は実線S1と破線S3の合成速度変動を示している。
図15から明らかなように、ドラム1周期をどこから始めても、毎周期で速度変動の形が異なる。
従って、印刷ドラム100と印刷ドラム102とのずれ方が毎周期で異なるのでオフセットゴーストが発生する。
【0013】
次に、タイミングベルト108が偏心している場合にオフセットゴーストが発生する理由を図16、図17及び図18に基づいて説明する。
図16は、ドラム駆動プーリ(104,106)の歯数:タイミングベルト108の歯数=1:2.5の場合、換言すれば、タイミングベルト108の歯数がドラム駆動プーリ(104,106)の歯数の非整数倍である場合のドラム駆動プーリ(104,106)とタイミングベルト108に偏心があった場合の速度変動を示す波形図である。なお、図16は代表的に下流のドラム駆動プーリ106とタイミングベルト108についてのみ図示してあり、上流のドラム駆動プーリ104の波形図は省略してある。
【0014】
つまり、図16において、実線S4はドラム駆動プーリ106の速度変動を、実線S5はドラム駆動プーリ106の速度変動波形の原点とタイミングベルト108の速度変動波形の原点とをわかりやすいように一致させて示した、タイミングベルト108の速度変動を、破線S6はドラム駆動プーリ106とタイミングベルト108との偏心位置に差があった場合のドラム駆動プーリ106の速度変動を示している。ここで、通常は、破線S6で示すように、ドラム駆動プーリ106の速度波形の原点とタイミングベルト108の速度波形の原点とはずれていることが多い。
【0015】
図17は、合成速度変動を示す波形図で、実線C3は図16における実線S4と実線S5の合成速度変動を、破線C4は実線S5と破線S6の合成速度変動を示している。
図17から明らかなように、どこから始めても、毎周期で速度変動の形が異なる。但し、ドラム駆動プーリ106の歯数:タイミングベルト108の歯数=1:2.5の設定であることから、タイミングベルト108が2周期でドラム駆動プーリ106が5周期の関係が保たれ、実線C3はドラム駆動プーリ106が5周期する毎に同じ波形を繰り返している。
図18は、図17における実線C3の、ドラム駆動プーリ106が1周期する毎の波形の斜線部の面積の和をプロットしたもので、面積の和の大小がすなわち、ドラム駆動プーリ106の同期ずれ量である。
ドラム駆動プーリ106の周期毎の回転同期ずれ量もタイミングベルト108が2周期する毎に同じずれ量が繰り返し発生することがわかる。
【0016】
印刷ドラム同士を連結駆動するためのギアやタイミングベルト等の回転部材は加工により少なからず偏心成分が生じるので、1回転中の速度変動は避けられない。
印刷ドラムの回転駆動軸をギアで連結する方式では、ギア列による高剛性のためにギアの精度を高くすることでオフセットゴーストのずれ量を小さくすることができるが、精度の高いギアを複数使用しなければならない構成であるため、製造コストが高くなるという問題があった。
一方、タイミングベルトで連結する方式では、射出成形等による量産が可能なタイミングプーリ等の製造コストの低い部品を使用できるため、全体としてコスト低下を実現できるがタイミングベルトやタイミングプーリの偏心成分によってオフセットゴーストのずれ量が大きいという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、コスト増加を来すことなくオフセットゴーストのずれ量を小さくできる印刷装置の提供を、その目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
オフセットゴーストの発生は印刷ドラムの1回転に1回の現象であり、途中で生じる速度変動は搬送される印刷用紙のたわみ部分で吸収される。本発明はこの着眼点の下、上記目的の達成を図ったものである。
また、上述のように、ドラム駆動プーリ及び調整用プーリ等は、加工精度、組付精度などにより少なからず偏心することを避けられない。加工精度、組付精度を向上させることは製造コストの上昇につながり、特に、タイミングベルト連結駆動方式ではその利点を阻害することになる。
本発明は、加工精度、組付精度の現状を容認し、その上でオフセットゴーストの抑制を狙ったものである。
また、本発明は、偏向プーリの偏心がオフセットゴーストの発生に絡んでいるとの予測の下に、その対策を図ったものである。
【0019】
具体的には、請求項1記載の発明では、印刷用紙の搬送方向に間隔をおいて配置された複数の印刷ドラムと、該印刷ドラムの回転軸に設けられた歯付きのドラム駆動プーリと、上記複数の印刷ドラムを連結駆動可能に上記ドラム駆動プーリ間に掛け渡されたタイミングベルトと、上記印刷ドラム間で上記タイミングベルトに噛み合う調整用プーリを備え該調整用プーリを変位させて上記印刷ドラム間の位相を調整するドラム間位相調整手段とを有する印刷装置において、駆動源からの駆動力が、上記印刷ドラムの回転軸に上記ドラム駆動プーリと同期回転可能に設けられたプーリに駆動ベルトを掛け回わして伝達され、上記調整用プーリの歯数は上記ドラム駆動プーリの歯数の1/整数に設定され、該整数は2以上である、という構成を採っている。
【0020】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の印刷装置において、上記ドラム駆動プーリと調整用プーリ間に位置固定され上記タイミングベルトの裏面に当接して該タイミングベルトを偏向させる偏向プーリを有し、該偏向プーリのピッチ円直径が上記ドラム駆動プーリのピッチ円直径の1/整数に設定され、該整数は2以上である、という構成を採っている。
【0021】
請求項2記載の発明では、印刷用紙の搬送方向に間隔をおいて配置された複数の印刷ドラムと、該印刷ドラムの回転軸に設けられた歯付きのドラム駆動プーリと、上記複数の印刷ドラムを連結駆動可能に上記ドラム駆動プーリ間に掛け渡されたタイミングベルトと、上記印刷ドラム間で上記タイミングベルトの裏面に当接する調整用プーリを備え該調整用プーリを変位させて印刷ドラム間の位相を調整するドラム間位相調整手段を有する印刷装置において、上記調整用プーリのピッチ円直径が上記ドラム駆動プーリのピッチ円直径の1/整数に設定され、該整数は2以上である、という構成を採っている。
【0022】
請求項4記載の発明では、請求項3記載の印刷装置において、上記ドラム駆動プーリと調整用プーリ間に位置固定され上記タイミングベルトに噛み合って該タイミングベルトを偏向させる偏向プーリを有し、該偏向プーリの歯数が上記ドラム駆動プーリの歯数の1/整数に設定され、該整数は2以上である、という構成を採っている。
【0029】
【実施例】
以下、本発明の実施例(但し、図1乃至図5に示す例は参考例である)を図に基づいて説明する。
図1に示すように、印刷装置としての2色印刷タイプの孔版印刷装置2は、給紙手段4と、レジストローラ対6と、給紙手段4から供給される印刷用紙Pの搬送方向に間隔をおいて配置された2つの印刷ドラム8,10と、図示しない接離機構により上流の印刷ドラム8に対して接離自在に設けられた押圧部材としてのプレスローラ12と、1色目を印刷された印刷用紙Pを印刷ドラム8から分離するエアー吐出方式の分離手段13と、印刷ドラム8,10間において印刷用紙Pの搬送を行なうエアー吸着ベルト方式の中間搬送手段14と、図示しない接離機構により下流の2色目の印刷ドラム10に対して接離自在に設けられた押圧部材としてのプレスローラ16と、2色目を印刷された印刷用紙Pを印刷ドラム10から分離するエアー吐出方式の分離手段17と、下流の印刷ドラム10から分離された印刷用紙Pを排紙トレイ19に排出するエアー吸着ベルト方式の排紙搬送手段18と、印刷ドラム8,10間の位相を調整するためのドラム間位相調整手段20等を有している。
【0030】
印刷ドラム8には印刷ドラム8を交換可能にドラム駆動ギア220が、印刷ドラム10には印刷ドラム10を交換可能にドラム駆動ギア222が取り付けられている。印刷ドラム8のドラム駆動ギア220には、タイミングプーリ224を一体に有する中継ギヤ226が位置固定されて噛み合っている。同様に印刷ドラム10のドラム駆動ギア222には、タイミングプーリ228を一体に有する中継ギヤ230が位置固定されて噛み合っている。
タイミングプーリ224とタイミングプーリ228間にはドラム間位相調整手段20を介してタイミングベルト232が掛け渡されており、印刷ドラム8と印刷ドラム10が連結駆動可能となっている。
上流の印刷ドラム8はメイン駆動ベルト23を介してメイン駆動モータ25により回転駆動され、この回転駆動力が中継ギヤ226、タイミングベルト232等により下流の印刷ドラム10に伝達される。メイン駆動ベルト23はプーリ27によりテンションを付与されている。
【0031】
給紙手段4では図示しないモータ装置により間欠的に上昇する給紙台24に複数の印刷用紙Pが積載されており、給紙ローラ26、分離ローラ28、分離パッド30等により最上の印刷用紙Pから順に一枚ずつ分離されてレジストローラ対6へ送られる。
印刷用紙Pはレジストローラ対6で斜めずれ等を修正された後、印刷ドラム8の画像先端と印刷用紙Pの先端部の所定位置とが一致するタイミングでレジストローラ対6により印刷ドラム8へ向けて送られる。
このタイミングに合わせてプレスローラ12が印刷ドラム8に押圧される。プレスローラ12によって印刷用紙Pが印刷ドラム8に押圧されると、印刷ドラム8に内蔵された図示しないインキ供給手段により供給された1色目のインキが印刷ドラム8の外周面に巻装された図示しない製版済みのマスタの穿孔部から滲み出て印刷用紙Pに転移する。これにより印刷用紙Pに1色目の画像が印刷される。プレスローラ12は印刷ドラム8の外周面に設けられたマスタクランパ32との干渉を避けるように間欠的に押圧される。
【0032】
印刷がなされた印刷用紙Pは印刷ドラム8から分離手段13により分離され、中間搬送手段14により搬送される。中間搬送手段14には図示しないファンが設けられており、エアー吸引によってベルト上に印刷用紙Pを吸着しながら搬送する。中間搬送手段14の搬送線速度は印刷用紙Pの線速度の所定倍に設定されている。
中間搬送手段14で搬送された印刷用紙Pは下流の印刷ドラム10とプレスローラ16のニップ部に進入する。
プレスローラ16によって印刷用紙Pが印刷ドラム10に押圧されると、印刷ドラム10に内蔵された図示しないインキ供給手段により供給された2色目のインキが印刷ドラム10の外周面に巻装された図示しない製版済みのマスタの穿孔部から滲み出て印刷用紙Pに転移する。これにより印刷用紙Pに2色目の画像が印刷される。プレスローラ16は印刷ドラム10の外周面に設けられたマスタクランパ34との干渉を避けるように間欠的に押圧される。
【0033】
2色目の印刷がなされた印刷用紙Pは印刷ドラム10から分離手段17により分離され、排紙搬送手段18により搬送される。排紙搬送手段18には図示しないファンが設けられており、エアー吸引によってベルト上に印刷用紙Pを吸着しながら搬送する。排紙搬送手段18により搬送された印刷用紙Pは排紙トレイ19に排出されてスタックされる。符号180は印刷用紙Pに腰を付けるためのジャンプ板である。
【0034】
ドラム間位相調整手段20にはタイミングプーリとしての2つの調整用プーリ40,42が設けられており、調整用プーリ40,42と中継ギヤ226、230間にはドラム間位相調整手段20の上下変位による位相調整を短距離変位で効率的に行なうための4つの偏向プーリ44が位置固定されて設けられている。ここでの偏向プーリ44はテンションプーリとしても機能する。
ドラム駆動ギア220,222、タイミングプーリ224,228、中継ギヤ226,230、タイミングベルト232、調整用プーリ40,42、偏向プーリ44が印刷ドラム8,10を連結駆動するための回転部材である。
【0035】
ドラム間位相調整手段20は、図2に示すように、上下方向に延びるフレーム54と、フレーム54の上下端部に回転自在に支持された調整用プーリ40,42と、フレーム54の上端部に固定された上下方向に延びるネジ軸58と、ネジ軸58に螺合し、図示しないブラケットにより位置決めされたナットギア60と、モータ62と、モータ62の回転軸に固定されてナットギア60に噛み合う駆動ギア64等を有している。
モータ62の回転によるねじ送り構成により、フレーム54は図示しない装置本体側板に固定されたガイド部材によりガイドされながら上下に移動する。
平プーリとしての各偏向プーリ44は、図示しない装置本体側板に固定された軸66に回転自在に支持されており、調整用プーリ40,42と中継ギヤ226、230間においてタイミングベルト232を絞り込むように配置され、タイミングベルト232の裏面に当接している。
【0036】
モータ62が回転駆動され、フレーム54が上方向(矢印X方向)に移動すると、調整用プーリ40,42が共に上方に変位し、印刷ドラム8,10はそれぞれ図1において矢印c、d方向に回転する。これにより印刷ドラム8,10の位相が変化し、位相調整(色ずれ調整)が可能となる。
上記と逆方向の位相調整をする場合には、モータ62を逆回転させ、フレーム54を下方向(矢印Y方向)に移動させればよい。
【0037】
上記構成の下、本実施例においては、上記各回転部材の1周期が印刷ドラム8,10の1周期と同じかそれ以下であり、且つ、印刷ドラム8,10の1周期における上記各回転部材の回転数が印刷ドラム8,10の回転数の整数倍となるように設定されている。
例えば、ドラム駆動ギア(220,222)の歯数:中継ギヤ(226,230)の歯数=4:1、タイミングプーリ(224,228)の歯数:調整用プーリ(40,42)の歯数=1:1、タイミングプーリ(224,228)の歯数:タイミングベルト232の歯数=1:4、すなわち、印刷ドラム8,10が1回転でタイミングベルト232も1回転する。タイミングプーリ(224,228)のピッチ円直径:偏向プーリ44のピッチ円直径=1:1と設定するものである。
このように歯数等の比を全て整数比とすると、印刷ドラム8,10の1周期において、上記各回転部材の回転数は印刷ドラム8,10の整数倍となる。これにより印刷ドラム8,10間の位相ずれ(同期回転ずれ)は生じず、オフセットゴーストの発生を防止することができる。
【0038】
その理由を図3及び図4に基づいて説明する。
図3は、ドラム駆動ギア(220,222)と調整用プーリ(40,42)に偏心があった場合の速度変動を示す波形図で、ドラム駆動ギア(220,222)の歯数:調整用プーリ(40,42)の歯数=4:1の条件の場合である。
なお、図3は代表的に、ドラム駆動ギア220と、調整用プーリ40についてのみ図示しており、ドラム駆動ギア222と調整用プーリ42の波形図は省略している。
図3において、実線S7はドラム駆動ギア220の速度変動を、実線S8はドラム駆動ギア220の速度変動波形の原点と、調整用プーリ40の速度変動波形の原点とをわかりやすいように一致させて示した、調整用プーリ40の速度変動を、破線S9はドラム駆動ギア220と調整用プーリ40との偏心位置に差があった場合の調整用プーリ40の速度変動を示している。偏心位置に差が無い場合には、ドラム駆動ギア(220,222)の1周期の中に調整用プーリ(40,42)の4周期が丁度入る。
【0039】
図4は、合成速度変動を示す波形図で、実線C5は図3における実線S7と実線S8の合成速度変動を、破線C6は実線S7と破線S9の合成速度変動を示している。
図4から明らかなように、ドラム1周期をどこから始めても、毎周期で速度変動の形は同じである。実線C5でも破線C6でも速度変動の形は同じである。従って、印刷ドラム8と印刷ドラム10とのずれ方が毎周期同じであるのでオフセットゴーストの発生がない。
このことは、タイミングベルト232に偏心成分があった場合でも、タイミングベルト232とドラム駆動ギア(220,222)の回転周期の比、すなわち、タイミングベルト232と印刷ドラム8,10の回転周期の比が1:1であれば、その他の回転部材も全て整数比の関係を保っているため、オフセットゴーストは発生しないということである。
整数倍の関係によって各回転部材の偏心成分が印刷ドラム8,10の1周期中ではキャンセルされるからである。
【0040】
オフセットゴーストの発生は印刷ドラム8,10が1回転に1回の現象であり、2色目の印刷部へ印刷用紙Pの先端が進入した後の途中で生じる速度変動は、搬送される印刷用紙Pのたわみ部分のところで吸収される。従って、2色印刷の場合、印刷毎に2色目の印刷ニップ部へ印刷用紙Pが進入する時点で1色目の印刷ドラム8との同期ずれがなければオフセットゴーストの発生は無い。
2色目へ印刷用紙Pが進入した後、印刷用紙Pが1,2色目の印刷ニップ部両方へまたがっている期間に1色目の印刷ドラム8と2色目の印刷ドラム10に同期のずれが生じたとしても印刷用紙Pのたわみ部がそのずれを吸収するので問題はない。その後、印刷用紙Pの後端が1色目の印刷ニップ部を抜けた場合には、なおのこと1色目の印刷ドラム8と2色目の印刷ドラム10の同期ずれは問題にならない。
【0041】
この関係は、さらに3色、4色印刷装置にしても同じであり、下流の印刷ドラムへの印刷用紙進入時点で、上流の印刷ドラムと下流の印刷ドラムとの同期ずれが無いような関係を保てればオフセットゴーストの発生はない。上記回転部材の回転数を整数倍とするのは、下流の印刷ドラムへの印刷用紙進入時点で、上流の印刷ドラムと下流の印刷ドラムとの同期ずれが無いような関係を保つための一例である。
【0042】
次に、図5に基づいてギア連結駆動方式の実施例(請求項2)を説明する。なお、上記実施例と同一部分は同じ符号で示し、特に必要がない限り重複説明は省略する。
本実施例におけるドラム間位相調整手段70は、ドラム駆動ギア222に噛み合うギア72と、ギア72の回転軸に回動自在に支持された扇形状ギア74と、扇形状ギア74のギア部74aに噛み合う駆動ギア76と、駆動ギア76を回転駆動する位相調整用モータ78と、扇形状ギア74の本体部に支持されギア72に噛み合う小径ギア80と、一端部をドラム駆動ギア220の回転軸に支持されて回動自在に設けられたアーム82と、アーム82の他端部に回転自在に支持されドラム駆動ギア220と小径ギア80に噛み合う小径ギア84と、小径ギア80と小径ギア84を連結するアーム86を有している。
位相調整用モータ78の回転により扇形状ギア74が矢印L又はR方向に変位し、これにより印刷ドラム8と印刷ドラム10間の色ずれが調整される。
【0043】
本実施例における連結駆動するための回転部材は、ドラム駆動ギア220,222、ギア72、小径ギア80,84である。
本実施例においても上記実施例と同様に、各回転部材の1周期が印刷ドラム8,10の1周期と同じかそれ以下であり、且つ、印刷ドラム8,10の1周期における上記各回転部材の回転数が印刷ドラム8,10の回転数の整数倍となるように設定されている。
例えば、ドラム駆動ギア(220,222)の歯数:ギア72の歯数=1:1、ドラム駆動ギア(220,222)の歯数:小径ギア(80,82)の歯数=4:1と設定するものである。
歯数比の関係(整数倍の関係)によって各回転部材の偏心成分が印刷ドラム8,10の1周期中ではキャンセルされ、これによりオフセットゴーストの発生が防止される。
【0044】
次に、図6乃至図10に基づいて、本発明の実施例を説明する。
図6に示すように、印刷装置としての孔版印刷装置302は、給紙手段304と、レジストローラ対306と、給紙手段304から供給される印刷用紙Pの搬送方向に間隔をおいて配置された2つの印刷ドラム308,310と、図示しない接離機構により上流の印刷ドラム308に対して接離自在なプレスローラ312と、印刷ドラム308,310間の印刷用紙Pの搬送を行なうエアー吸着ベルト方式の中間搬送手段314と、図示しない接離機構により下流の印刷ドラム310に対して接離自在なプレスローラ316と、下流の印刷ドラム310から分離した印刷用紙Pを図示しない排紙トレイに排出するエアー吸着ベルト方式の排紙搬送手段318と、印刷ドラム308,310を連結駆動するためのタイミングベルト320と、印刷ドラム308,310間の位相を調整するためのドラム間位相調整手段322等を有している。
上流の印刷ドラム308はメイン駆動ベルト323を介してメイン駆動モータ325により回転駆動され、この回転駆動力がタイミングベルト320により下流の印刷ドラム310に伝達される。メイン駆動ベルト323はプーリ327によりテンションを付与されている。
【0045】
給紙手段304では図示しないモータ装置により間欠的に上昇する給紙台324に複数の印刷用紙Pが積載されており、給紙ローラ326、分離ローラ328、分離パッド330等により最上の印刷用紙Pから順に一枚ずつ分離されてレジストローラ対306へ送られる。
印刷用紙Pはレジストローラ対306で斜めずれ等を修正された後、印刷ドラム308の画像先端と印刷用紙Pの先端部の所定位置とが一致するタイミングでレジストローラ対306により印刷ドラム308へ向けて送られる。
このタイミングに合わせてプレスローラ312が印刷ドラム308に押圧される。プレスローラ312によって印刷用紙Pが印刷ドラム308に押圧されると、印刷ドラム308に内蔵された図示しないインキ供給手段により供給された1色目のインキが印刷ドラム308の外周面に巻装された図示しない製版済みのマスタの穿孔部から滲み出て印刷用紙Pに転移する。これにより印刷用紙Pに1色目の画像が印刷される。プレスローラ312は印刷ドラム308の外周面に設けられたマスタクランパ332との干渉を避けるように間欠的に押圧される。
【0046】
印刷がなされた印刷用紙Pは印刷ドラム308から図示しない分離手段により分離され、中間搬送手段314により搬送される。中間搬送手段314には図示しないファンが設けられており、エアー吸引によってベルト上に印刷用紙Pを吸着しながら搬送する。中間搬送手段314の搬送線速度は印刷用紙Pの線速度の所定倍に設定されている。
中間搬送手段314で搬送された印刷用紙Pは下流の印刷ドラム310とプレスローラ316のニップ部に進入する。
プレスローラ316によって印刷用紙Pが印刷ドラム310に押圧されると、印刷ドラム310に内蔵された図示しないインキ供給手段により供給された2色目のインキが印刷ドラム310の外周面に巻装された図示しない製版済みのマスタの穿孔部から滲み出て印刷用紙Pに転移する。これにより印刷用紙Pに2色目の画像が印刷される。プレスローラ316は印刷ドラム310の外周面に設けられたマスタクランパ334との干渉を避けるように間欠的に押圧される。
【0047】
2色目の印刷がなされた印刷用紙Pは印刷ドラム310から図示しない分離手段により分離され、排紙搬送手段318により搬送される。排紙搬送手段318には図示しないファンが設けられており、エアー吸引によってベルト上に印刷用紙Pを吸着しながら搬送する。排紙搬送手段318により搬送された印刷用紙Pは図示しない排紙トレイに排出されてスタックされる。
【0048】
印刷ドラム308,310の回転軸350,352(図7)の奥側(図7で手前側)にはそれぞれタイミングプーリとしての歯付きのドラム駆動プーリ336,338が印刷ドラム308,310を交換可能に取り付けられており、このドラム駆動プーリ336,338間にタイミングベルト320が掛け渡されている。
ドラム間位相調整手段322には2つのタイミングプーリとしての調整用プーリ340,342が設けられており、調整用プーリ340,342とドラム駆動プーリ336,338間にはドラム間位相調整手段322の上下変位による位相調整を短距離変位で効率的に行なうための4つの偏向プーリ344が位置固定されて設けられている。ここでの偏向プーリ344はテンションプーリとしても機能する。
【0049】
ドラム間位相調整手段322は、図7に示すように、上下方向に延びるフレーム354と、フレーム354の上下端部に回転自在に支持された調整用プーリ340,342と、フレーム354に形成されたラック部354aに噛み合う図示しないピニオンと、このピニオンを駆動する図示しないモータ等を有している。
フレーム354の上半部と下半部にはそれぞれ上下に延びる長孔354b,354cが形成されており、長孔354b,354cには図示しない装置本体側板に固定されたガイドピン356,358が係合している。フレーム354はガイドピン356,358と図示しない装置本体側板に固定されたガイド部材によりガイドされながら上下に移動する。
平プーリとしての各偏向プーリ344は、図示しない装置本体側板に固定された軸360に回転自在に支持されており、調整用プーリ340,342とドラム駆動プーリ336,338間においてタイミングベルト320を絞り込むように配置され、タイミングベルト320の裏面に当接している。
【0050】
図示しないピニオンが回転駆動され、フレーム354が上方向(矢印X方向)に移動すると、調整用プーリ340,342が共に上方に変位し、印刷ドラム308,310はそれぞれ矢印a、b方向に回転する。これにより印刷ドラム308,310の位相が変化し、位相調整(色ずれ調整)が可能となる。
上記と逆方向の位相調整をする場合には、図示しないピニオンを逆回転させ、フレーム354を下方向(矢印Y方向)に移動させればよい。
【0051】
ドラム駆動プーリ336,338の歯数は互いに同じであり、ドラム間位相調整手段322における調整用プーリ340,342よりも歯数は多い。調整用プーリ340,342の歯数も互いに同じである。
【0052】
上記構成の下、本実施例においては、調整用プーリ340,342の歯数をドラム駆動プーリ336,338の歯数の1/整数に設定している。換言すれば、ドラム駆動プーリ336,338の歯数を調整用プーリ340,342の歯数の整数倍としている。
例えば、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数144に対して調整用プーリ(340,342)の歯数を36に設定するものである。
このようにすれば、調整用プーリ340,342が偏心していても歯数比の関係によって印刷ドラム308,310間の位相ずれ(同期回転ずれ)は生じず、オフセットゴーストの発生も抑制される。
【0053】
その理由を図8及び図9に基づいて説明する。
図8は、ドラム駆動プーリ(336,338)と調整用プーリ(340,342)に偏心があった場合の速度変動を示す波形図で、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数:調整用プーリ(340,342)の歯数=4:1の場合である。なお、図8は代表的に、ドラム駆動プーリ336と調整用プーリ340についてのみ図示しており、ドラム駆動プーリ338、調整用プーリ342の波形図は省略してある。
つまり、図8において、実線S10はドラム駆動プーリ336の速度変動を、実線S11はドラム駆動プーリ336の速度変動の波形の原点と、調整用プーリ340の速度変動の波形の原点とをわかりやすいように一致させて示した、調整用プーリ340の速度変動を、破線S12はドラム駆動プーリ336と調整用プーリ340との偏心位置に差があった場合の調整用プーリ340の速度変動を示している。偏心位置に差が無い場合には、ドラム駆動プーリ(336,338)の1周期の中に調整用プーリ(340,342)の4周期が丁度入る。
【0054】
図9は、合成速度変動を示す波形図で、実線C7は図8における実線S10と実線S11の合成速度変動を、破線C8は実線S10と破線S12の合成速度変動を示している。
図9から明らかなように、ドラム1周期をどこから始めても、毎周期で速度変動の形は同じである。すなわち、実線C7でも破線C8でも速度変動の形は同じである。
従って、印刷ドラム308と印刷ドラム310とのずれ方が毎周期同じであるのでオフセットゴーストの発生がない。
【0055】
本実施例では、偏向プーリ344を有する構成を示したが、偏向プーリ344を有しない構成においても1/整数に設定する方式とした場合、上記と同様の理由により同様のオフセットゴースト抑制機能を得ることができる。
【0056】
また、偏向プーリ344を有する構成において、調整用プーリ340,342の歯数をドラム駆動プーリ336,338の歯数の1/整数に設定することに加え、偏向プーリ344のピッチ円直径をドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径の1/整数に設定してもよい。換言すれば、ドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径を偏向プーリ344のピッチ円直径の整数倍としてもよい。
例えば、ドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径:偏向プーリ344のピッチ円直径=5:1に設定するものである。各偏向プーリ344のピッチ円直径は互いに同じである。
この場合の偏向プーリ344のピッチ円直径d1は、図10に示すように、タイミングベルト320のピッチ線(ベルト芯線の位置)tまでの距離である。
本実施例は、偏向プーリ344の偏心も印刷ドラム308,310間の位相ずれを引き起こす要因となるとの想定の下にその解決を図ったもので、実験の結果、オフセットゴーストの発生をさらにハイレベルに抑制することが確認された。
【0057】
ドラム間位相調整手段322の調整用プーリ340,342の偏心が無く、偏向プーリ344のみ偏心がある場合には、偏向プーリ344のピッチ円直径をドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径の1/整数に設定する対策のみでオフセットゴーストの発生を抑制できる。
【0058】
ところで、前述の実施例でドラム駆動プーリ(336,338)の歯数144に対して調整用プーリ(340,342)の歯数を36としたのは、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数と調整用プーリ(340,342)の歯数の比を4:1に設定する場合の好ましい例である。
この他の歯数で整数比4:1、又は3:1、又は5:1を、精度とコストのバランスを考慮して設定するなら、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数が108〜180であることが望ましいい。
本実施例のドラム連結駆動部は、図1に示すように、高精度なギヤを使用せずに、ドラム駆動プーリ336,338と調整用プーリ340,342及び、偏向プーリ344で構成する回転部材にタイミングベルト320が掛け渡されているだけの極めてシンプルな駆動方式を採っている。
【0059】
従って、前記回転部材に偏心があってもそれぞれのピッチ円直径がドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径と1/整数の関係が保たれることによって印刷ドラム308,310の間の位相ずれは生じないが、極めてシンプルな構成上、タイミングベルト320とドラム駆動プーリ336,338の歯数を1:1とすることができないため、タイミングベルト自身の持つ偏心量だけが位相ずれの発生源となり得る。
タイミングベルト320による位相ずれは下流のドラム駆動プーリ338のピッチ円直径に作用し、画像を形成する印刷ドラム310の版胴上のずれ量は、印刷ドラム310の版胴直径:ドラム駆動プーリ338のピッチ円直径の比で拡大されることになる。
【0060】
このことにより、ドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径は大きいほどオフセットゴーストを抑制する効果が高いことになるが、版胴直径に近い大径プーリはコスト高を招くため、ドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径を設定する際は精度とコストのバランスを考慮する必要がある。
また、本構成ではタイミングベルトの精度がオフセットゴーストの発生源となることから、タイミングベルトはできる限り高精度でなければならず、必然的にベルトピッチは3mm以下に設定されるべきである。さらに、本例のドラム連結駆動方式で高精度な伝達駆動を行うためには、高負荷に耐えられる剛性も求められることを考慮すると、ベルトピッチを2mm以下に設定することは避けるべきであり、結局、ベルトピッチは3mmが最適である。
従って、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数と調整用プーリ(340,342)の歯数の比を4:1、又は3:1、又は5:1に設定する場合は、タイミングベルト320のピッチを3mmとし、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数を108〜180とすることが望ましい。
【0061】
次に、図11及び図12に基づいて他の実施例を説明する。なお、図6乃至図10で示した実施例と同一部分は同一符号で示し、特に必要がない限り重複説明は省略する。
本実施例におけるドラム間位相調整手段322は、フレーム354に上下方向に接近して配置された平プーリとしての調整用プーリ362,364を有しており、調整用プーリ362,364はタイミングベルト320の裏面に当接している。
調整用プーリ362,364とドラム駆動プーリ336,338との間には、位置固定された歯付きの偏向プーリ366が4個配置されてタイミングベルト320に噛み合っている。
【0062】
本実施例では、オフセットゴーストを抑制するために、調整用プーリ362,364のピッチ円直径をドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径の1/整数に設定している。例えば、ドラム駆動プーリ(336,338)のピッチ円直径:調整用プーリ(362,364)のピッチ円直径=4:1に設定するものである。ドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径は互いに同じで調整用プーリ362,364のピッチ円直径よりも大きい。調整用プーリ362,364のピッチ円直径も互いに同じである。
ここでの調整用プーリ362,364のピッチ円直径d2は、図12に示すように、タイミングベルト320のピッチ線tまでの距離である。
本実施例においても、調整用プーリ362,364の偏心があっても、ピッチ円直径の1/整数の関係によって印刷ドラム308,310間の位相ずれは生じず、オフセットゴーストの発生が抑制される。
本実施例では、偏向プーリ366を有する構成を示したが、偏向プーリ366を有しない構成においても上記1/整数に設定する方式とした場合、同様のオフセットゴースト抑制機能を得ることができる。
【0063】
また、偏向プーリ366を有する構成において、調整用プーリ362,364のピッチ円直径をドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径の1/整数に設定することに加え、偏向プーリ366の歯数をドラム駆動プーリ336,338の歯数の1/整数に設定してもよい。例えば、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数:偏向プーリ366の歯数=4:1に設定するものである。この場合、ドラム駆動プーリ336,338の歯数は互いに同じで偏向プーリ366の歯数よりも多い。また、各偏向プーリ366の歯数も互いに同じである。
本実施例は、タイミングベルト320に噛み合う偏向プーリ366の偏心も印刷ドラム308,310間の位相ずれを引き起こす要因となるとの想定の下にその解決を図ったもので、実験の結果、オフセットゴーストの発生をさらにハイレベルに抑制することが確認された。
【0064】
ドラム間位相調整手段322の調整用プーリ362,364の偏心が無く、偏向プーリ366のみ偏心がある場合には、偏向プーリ366の歯数をドラム駆動プーリ336,338の歯数の1/整数に設定する対策のみでオフセットゴーストの発生を抑制できる。
【0065】
図6乃至12に対応する各実施例ではドラム間位相調整手段322におけるフレーム354の上下移動構成をラックとピニオンの噛み合い方式としたが、ねじ軸とこれに螺合するナット部材によるねじ送り方式としてもよい。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、調整用プーリの偏心による印刷ドラム間の位相ずれを防止でき、タイミングベルト連結駆動方式の利点である低コスト化を活かしながらオフセットゴーストの発生を抑制することができる。
また、偏向プーリの偏心による印刷ドラム間の位相ずれも防止でき、オフセットゴーストの発生をハイレベルに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る印刷装置としての孔版印刷装置の概要正面図である。
【図2】ドラム間位相調整手段の概要正面図である。
【図3】調整用プーリ等に偏心があった場合の速度変動の波形図である。
【図4】合成速度変動の波形図である。
【図5】他の実施例に係る印刷装置としての孔版印刷装置の概要正面図である。
【図6】他の実施例に係る印刷装置としての孔版印刷装置の概要正面図である。
【図7】図6で示した孔版印刷装置におけるドラム間位相調整手段の斜視図である。
【図8】図6で示した孔版印刷装置における調整用プーリ等に偏心があった場合の速度変動の波形図である。
【図9】図6で示した孔版印刷装置における合成速度変動の波形図である。
【図10】図6で示した孔版印刷装置における偏向プーリのピッチ円直径の概念を示す図である。
【図11】他の実施例にかかる印刷装置としての孔版印刷装置の概要正面図である。
【図12】図11で示した孔版印刷装置における調整用プーリのピッチ円直径の概念を示す図である。
【図13】従来における孔版印刷装置の概要正面図である。
【図14】従来の装置において調整用プーリ等に偏心があった場合の速度の変動を示す波形図である。
【図15】従来の装置において調整用プーリ等に偏心があった場合の合成速度変動を示す波形図である。
【図16】従来の装置においてドラム駆動プーリとタイミングベルトに偏心があった場合の速度の変動を示す波形図である。
【図17】従来の装置においてドラム駆動プーリとタイミングベルトに偏心があった場合の合成速度変動を示す波形図である。
【図18】図17に示した合成速度変動の波形からドラム1周期毎の面積を計算して得られるドラムの回転ずれ量を示す図である。
【符号の説明】
8,10 印刷ドラム
40,42 回転部材としての調整用プーリ
44 回転部材としての偏向プーリ
72 回転部材としてのギア
80,84 回転部材としての小径ギア
220,222 回転部材としてのドラム駆動ギア
224,228 回転部材としてのタイミングプーリ
226,230 回転部材としての中継ギヤ
232 回転部材としてのタイミングベルト
308,310 印刷ドラム
320 タイミングベルト
322 ドラム間位相調整手段
336,338 ドラム駆動プーリ
340,342 (歯付きの)調整用プーリ
344 偏向プーリ
362,364 調整用プーリ
366 (歯付きの)偏向プーリ
d1,d2 ピッチ円直径
P 印刷用紙
Claims (4)
- 印刷用紙の搬送方向に間隔をおいて配置された複数の印刷ドラムと、該印刷ドラムの回転軸に設けられた歯付きのドラム駆動プーリと、上記複数の印刷ドラムを連結駆動可能に上記ドラム駆動プーリ間に掛け渡されたタイミングベルトと、上記印刷ドラム間で上記タイミングベルトに噛み合う調整用プーリを備え該調整用プーリを変位させて上記印刷ドラム間の位相を調整するドラム間位相調整手段とを有する印刷装置において、
駆動源からの駆動力が、上記印刷ドラムの回転軸に上記ドラム駆動プーリと同期回転可能に設けられたプーリに駆動ベルトを掛け回わして伝達され、
上記調整用プーリの歯数は上記ドラム駆動プーリの歯数の1/整数に設定され、該整数は2以上であることを特徴とする印刷装置。 - 請求項1記載の印刷装置において、
上記ドラム駆動プーリと調整用プーリ間に位置固定され上記タイミングベルトの裏面に当接して該タイミングベルトを偏向させる偏向プーリを有し、該偏向プーリのピッチ円直径が上記ドラム駆動プーリのピッチ円直径の1/整数に設定され、該整数は2以上であることを特徴とする印刷装置。 - 印刷用紙の搬送方向に間隔をおいて配置された複数の印刷ドラムと、該印刷ドラムの回転軸に設けられた歯付きのドラム駆動プーリと、上記複数の印刷ドラムを連結駆動可能に上記ドラム駆動プーリ間に掛け渡されたタイミングベルトと、上記印刷ドラム間で上記タイミングベルトの裏面に当接する調整用プーリを備え該調整用プーリを変位させて印刷ドラム間の位相を調整するドラム間位相調整手段を有する印刷装置において、
上記調整用プーリのピッチ円直径が上記ドラム駆動プーリのピッチ円直径の1/整数に設定され、該整数は2以上であることを特徴とする印刷装置。 - 請求項3記載の印刷装置において、
上記ドラム駆動プーリと調整用プーリ間に位置固定され上記タイミングベルトに噛み合って該タイミングベルトを偏向させる偏向プーリを有し、該偏向プーリの歯数が上記ドラム駆動プーリの歯数の1/整数に設定され、該整数は2以上であることを特徴とする印刷装置。
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