JP4688997B2 - タイミングベルト - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、1パス方式多色印刷装置等の同期回転が必要な装置に用いられるタイミングベルトに関する。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷装置では、インキの色が異なる印刷ドラムを複数本印刷用紙の搬送方向に並置し、印刷用紙を搬送しながら上流側から順に1色目、2色目...と転写し、いわゆる1パス(1回の通紙)で多色印刷を行なうことが行われている。
この1パス方式は、色毎に印刷ドラムを交換して再給紙する方式に比べ作業能率が非常に良いが、1パス故の印刷間隔の短さに起因した問題がある。
すなわち、上流の印刷ドラム(例えば1色目の印刷ドラム)で印刷された画像のインキが未乾燥状態で下流の印刷ドラム(例えば2色目の印刷ドラム)のニップ部へ進入するために、下流の印刷ドラムに巻装されている孔版原紙としてのマスタへそのインキが転移し、マスタへ転移したインキが次の印刷用紙に転移する現象が起こる。
【0003】
最初の1枚目の印刷用紙では、1色目の未乾燥インキは2色目の印刷ドラムのマスタに転移するだけに終わるので問題はないが、2枚目の印刷用紙では1色目の印刷ドラムで印刷された画像上に、1枚目の印刷において2色目の印刷ドラムのマスタに転移した1色目のインキが転移する。
これは再転写と呼ばれている。再転写は同色インキの重なり現象であるので、本来の印刷画像との間に位置ずれがなければ画像品質上の問題は生じない。
しかしながら、再転写が本来の印刷画像に対してずれると、影のように見えるいわゆるオフセットゴーストとなる。オフセットゴーストでは、ずれ量が同じでも太い線はにじみに見え、細い線はダブリに見えるため、画像品質が著しく低下する。
【0004】
1パス方式の多色印刷では再転写現象は避けられないが、オフセットゴーストは再転写位置の位置ずれによるものであるので、上流の印刷ドラムと下流の印刷ドラムの同期回転精度が高精度に保たれ、印刷用紙の搬送精度が高精度に保たれれば、オフセットゴーストの発生を高精度に抑制することができる。
従来、オフセットゴーストを抑制するために、上流の印刷ドラムと下流の印刷ドラムを連結駆動する構成が採用されており、この連結駆動の方式としては、例えば特開平4−329175号公報に開示されるように、印刷ドラムの回転駆動軸を複数のギアで連結する方式と、例えば特開平7−17121号公報に開示されるように、タイミングプーリとタイミングベルトで連結する方式がある。
【0005】
タイミングベルト連結方式の一例を図15に示す。
印刷用紙Pの搬送方向に間隔をおいて配置された2つの印刷ドラム100(上流側),102(下流側)にそれぞれタイミングプーリとしての歯付きのドラム駆動プーリ104,106が取り付けられており、これらのドラム駆動プーリ104,106間にタイミングベルト108が掛け渡されて印刷ドラム100,102が連結駆動可能となっている。
印刷ドラム100,102間には、印刷ドラム100,102間の位相を調整するドラム間位相調整手段110(印刷用紙の搬送方向である天地方向の1色目と2色目の色ずれ調整手段)が設けられている。
【0006】
ドラム間位相調整手段110は、図示しない駆動手段により上下方向に移動するフレーム112と、このフレーム112の上下端部に回転自在に支持された歯付きの調整用プーリ114a,114b(以下、適宜に、単に調整用プーリ114と呼ぶときがある)等を有しており、各調整用プーリ114はタイミングベルト108に噛み合っている。調整用プーリ114と印刷ドラム100,102との間には、タイミングベルト108を偏向させる4個の偏向プーリ116が位置固定されて設けられており、ドラム間位相調整手段110の上下変位による位相調整が短距離変位で効率的になされるようになっている。偏向プーリ116はタイミングベルト108の裏面に当接するため、平プーリが用いられている。図15において符号118,120は印刷ドラム100,102に対して接離自在なプレスローラを示す。
【0007】
フレーム112が上方に移動して調整用プーリ114a,114bが上方に変位すると、印刷ドラム100は矢印a方向に、印刷ドラム102は矢印b方向に回転し、印刷ドラム100,102の位相が変化する。フレーム112が下方に移動すると逆方向の位相変化を得ることができる。
ドラム間位相調整手段110は、印刷用紙Pの搬送方向の印刷位置のずれを修正するもので、印刷速度の変化による位置ずれ修正等が可能であり、実際上不可欠なものとなっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、タイミングベルト108に噛み合うドラム駆動プーリ104,106及び調整用プーリ114は、加工精度、組付精度などにより少なからず偏心することを避けられない。
また、無視できないのが、タイミングベルト108自身もその心線位置精度による偏心成分を有していることである。さらには、前述のドラム間位相調整手段110が設けられていることを考慮すると、タイミングベルト108の裏面に当接する偏向プーリ116の存在によってタイミングベルト108の全周長における厚さの不均一さも偏心成分として加算されることになる。
【0009】
ドラム駆動プーリ104,106についてはそれぞれが偏心していても、オフセットゴーストの発生は印刷ドラム100,102が1回転に1回、すなわち、ドラム駆動プーリ104,106が1回転に1回の現象であるので、印刷ドラム100と印刷ドラム102との間には同期回転のずれは生じない。
しかしながら、調整用プーリ114が偏心している場合には、調整用プーリ114が回転する毎に、また、タイミングベルト108が偏心成分を有している場合には、ドラム駆動プーリ104,106が回転する毎に印刷ドラム100と印刷ドラム102の位相をずらしていることになる。
【0010】
調整用プーリ114が偏心している場合にオフセットゴーストが発生する理由を図16及び図17に基づいて説明する。
図16は、ドラム駆動プーリ(104,106)の歯数:調整用プーリ114の歯数=4.3:1の場合、換言すれば、ドラム駆動プーリ(104,106)の歯数が調整用プーリ114の非整数倍である場合のドラム駆動プーリ(104,106)と調整用プーリ114に偏心があった場合の速度変動を示す波形図である。なお、図16は代表的に、ドラム駆動プーリ104と調整用プーリ114aについてのみ図示してあり、ドラム駆動プーリ106と、調整用プーリ114bの波形図は省略してある。
【0011】
つまり、図16において、実線S1はドラム駆動プーリ104の速度変動を、実線S2はドラム駆動プーリ104の速度変動波形の原点と調整用プーリ114aの速度変動波形の原点とをわかりやすいように一致させて示した、調整用プーリ114aの速度変動を、破線S3はドラム駆動プーリ104と調整用プーリ114aとの偏心位置に差があった場合の調整用プーリ114aの速度変動を示している。ここで、通常は、破線S3で示すように、ドラム駆動プーリ104の速度波形の原点と調整用プーリ114aの速度波形の原点とはずれていることが多い。
【0012】
図17は、合成速度変動を示す波形図で、実線C1は図16における実線S1と実線S2の合成速度変動を、破線C2は実線S1と破線S3の合成速度変動を示している。
図17から明らかなように、ドラム1周期をどこから始めても、毎周期で速度変動の形が異なる。
従って、印刷ドラム100と印刷ドラム102とのずれ方が毎周期で異なるのでオフセットゴーストが発生する。
【0013】
次に、タイミングベルト108が偏心している場合にオフセットゴーストが発生する理由を図18、図19及び図20に基づいて説明する。
図18は、ドラム駆動プーリ(104,106)の歯数:タイミングベルト108の歯数=1:2.5の場合、換言すれば、タイミングベルト108の歯数がドラム駆動プーリ(104,106)の歯数の非整数倍である場合のドラム駆動プーリ(104,106)とタイミングベルト108に偏心があった場合の速度変動を示す波形図である。なお、図18は代表的に下流のドラム駆動プーリ106とタイミングベルト108についてのみ図示してあり、上流のドラム駆動プーリ104の波形図は省略してある。
【0014】
つまり、図18において、実線S4はドラム駆動プーリ106の速度変動を、実線S5はドラム駆動プーリ106の速度変動波形の原点とタイミングベルト108の速度変動波形の原点とをわかりやすいように一致させて示した、タイミングベルト108の速度変動を、破線S6はドラム駆動プーリ106とタイミングベルト108との偏心位置に差があった場合のドラム駆動プーリ106の速度変動を示している。ここで、通常は、破線S6で示すように、ドラム駆動プーリ106の速度波形の原点とタイミングベルト108の速度波形の原点とはずれていることが多い。
【0015】
図19は、合成速度変動を示す波形図で、実線C3は図18における実線S4と実線S5の合成速度変動を、破線C4は実線S5と破線S6の合成速度変動を示している。
図19から明らかなように、どこから始めても、毎周期で速度変動の形が異なる。但し、ドラム駆動プーリ106の歯数:タイミングベルト108の歯数=1:2.5の設定であることから、タイミングベルト108が2周期でドラム駆動プーリ106が5周期の関係が保たれ、実線C1はドラム駆動プーリ106が5周期する毎に同じ波形を繰り返している。
図20は、図19における実線C3の、ドラム駆動プーリ106が1周期する毎の波形の斜線部の面積の和をプロットしたもので、面積の和の大小がすなわち、ドラム駆動プーリ106の同期ずれ量である。
ドラム駆動プーリ106の周期毎の回転同期ずれ量もタイミングベルト108が2周期する毎に同じずれ量が繰り返し発生することがわかる。
【0016】
印刷ドラム同士を連結駆動するためのギアやタイミングベルト等の回転部材は加工により少なからず偏心成分が生じるので、1回転中の速度変動は避けられない。
印刷ドラムの回転駆動軸をギアで連結する方式では、ギア列による高剛性のためにギアの精度を高くすることでオフセットゴーストのずれ量を小さくすることができるが、精度の高いギアを複数使用しなければならない構成であるため、製造コストが高くなるという問題があった。
一方、タイミングベルトで連結する方式では、射出成形等による量産が可能なタイミングプーリ等の製造コストの低い部品を使用できるため、全体としてコスト低下を実現できるが、上述のようにタイミングベルトやタイミングプーリの偏心成分によってオフセットゴーストのずれ量が大きいという問題があった。
【0017】
以上のように、タイミングベルトで連結する方式においては、タイミングベルトの偏心成分に起因する回転ずれを抑制することができれば、低コストという絶対的有利性を得ることができる。
そこで、本発明は、偏心成分に起因する回転ずれを抑制することができるタイミングベルトの提供を、その目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
タイミングベルトが偏心成分を有していても結果的にその偏心成分を回転中にキャンセルすることができれば問題はなく、本発明はその偏心成分のキャンセルをタイミングベルトの構成自体によって得ることとした。
【0019】
具体的には、請求項1記載の発明では、一つのタイミングベルトを分割して得られる2つの細幅タイミングベルトにより1組のタイミングベルトを構成し、あるいは円筒状に形成された幅広のタイミングベルトを複数に分割して得られる相隣合う2つの細幅タイミングベルトにより1組のタイミングベルトを構成してなるタイミングベルトにおいて、分割する前に、上記タイミングベルトにおける1つの位置と、上記タイミングベルトの歯数をnとしたとき、上記1つの位置からn/2歯ずれた位置とに、それぞれの位置を区別できるマーキングが、上記2つの細幅タイミングベルトに分割された後も分割面同士の同じ位置を位置合わせ可能に施され、回転時に互いに偏心成分を打ち消すように、上記マーキングに基づいて一方の細幅タイミングベルトに対する他方の細幅タイミングベルトの位置調整がなされ、上記位置調整では、上記2つの細幅タイミングベルトが分割面同士を突き合わせ、且つ、n/2歯ずらされている、という構成を採っている。
【0020】
請求項2記載の発明では、一つのタイミングベルトを分割して得られる2つの細幅タイミングベルトにより1組のタイミングベルトを構成し、あるいは円筒状に形成された幅広のタイミングベルトを複数に分割して得られる相隣合う2つの細幅タイミングベルトにより1組のタイミングベルトを構成してなるタイミングベルトにおいて、分割する前に、上記タイミングベルトにおける1つの位置と、上記タイミングベルトの歯数をnとしたとき、上記1つの位置からn/2歯ずれた位置とに、それぞれの位置を区別できるマーキングが、上記2つの細幅タイミングベルトに分割された後も分割面同士の同じ位置を位置合わせ可能に施され、回転時に互いに偏心成分を打ち消すように、上記マーキングに基づいて一方の細幅タイミングベルトに対する他方の細幅タイミングベルトの位置調整がなされ、上記位置調整では、一方の細幅タイミングベルトの向きを反転させてその非分割面と他方の細幅タイミングベルトの分割面を突き合わせ、且つ、n/2歯ずらされている、という構成を採っている。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1に示すように、同期回転が必要な装置としての孔版印刷装置302は、給紙手段304と、レジストローラ対306と、給紙手段304から供給される印刷用紙Pの搬送方向に間隔をおいて配置された2つの印刷ドラム308,310と、図示しない接離機構により上流の印刷ドラム308に対して接離自在なプレスローラ312と、印刷ドラム308,310間の印刷用紙Pの搬送を行なうエアー吸着ベルト方式の中間搬送手段314と、図示しない接離機構により下流の印刷ドラム310に対して接離自在なプレスローラ316と、下流の印刷ドラム310から分離した印刷用紙Pを図示しない排紙トレイに排出するエアー吸着ベルト方式の排紙搬送手段318と、印刷ドラム308,310を連結駆動するためのタイミングベルト320と、印刷ドラム308,310間の位相を調整するためのドラム間位相調整手段322等を有している。
上流の印刷ドラム308はメイン駆動ベルト323を介してメイン駆動モータ325により回転駆動され、この回転駆動力がタイミングベルト320により下流の印刷ドラム310に伝達される。メイン駆動ベルト323はプーリ327によりテンションを付与されている。
【0035】
給紙手段304では図示しないモータ装置により間欠的に上昇する給紙台324に複数の印刷用紙Pが積載されており、給紙ローラ326、分離ローラ328、分離パッド330等により最上の印刷用紙Pから順に一枚ずつ分離されてレジストローラ対306へ送られる。
印刷用紙Pはレジストローラ対306で斜めずれ等を修正された後、印刷ドラム308の画像先端と印刷用紙Pの先端部の所定位置とが一致するタイミングでレジストローラ対306により印刷ドラム308へ向けて送られる。
このタイミングに合わせてプレスローラ312が印刷ドラム308に押圧される。プレスローラ312によって印刷用紙Pが印刷ドラム308に押圧されると、印刷ドラム308に内蔵された図示しないインキ供給手段により供給された1色目のインキが印刷ドラム308の外周面に巻装された図示しない製版済みのマスタの穿孔部から滲み出て印刷用紙Pに転移する。これにより印刷用紙Pに1色目の画像が印刷される。プレスローラ312は印刷ドラム308の外周面に設けられたマスタクランパ332との干渉を避けるように間欠的に押圧される。
【0036】
印刷がなされた印刷用紙Pは印刷ドラム308から図示しない分離手段により分離され、中間搬送手段314により搬送される。中間搬送手段314には図示しないファンが設けられており、エアー吸引によってベルト上に印刷用紙Pを吸着しながら搬送する。中間搬送手段314の搬送線速度は印刷用紙Pの線速度の所定倍に設定されている。
中間搬送手段314で搬送された印刷用紙Pは下流の印刷ドラム310とプレスローラ316のニップ部に進入する。
プレスローラ316によって印刷用紙Pが印刷ドラム310に押圧されると、印刷ドラム310に内蔵された図示しないインキ供給手段により供給された2色目のインキが印刷ドラム310の外周面に巻装された図示しない製版済みのマスタの穿孔部から滲み出て印刷用紙Pに転移する。これにより印刷用紙Pに2色目の画像が印刷される。プレスローラ316は印刷ドラム310の外周面に設けられたマスタクランパ334との干渉を避けるように間欠的に押圧される。
【0037】
2色目の印刷がなされた印刷用紙Pは印刷ドラム310から図示しない分離手段により分離され、排紙搬送手段318により搬送される。排紙搬送手段318には図示しないファンが設けられており、エアー吸引によってベルト上に印刷用紙Pを吸着しながら搬送する。排紙搬送手段318により搬送された印刷用紙Pは図示しない排紙トレイに排出されてスタックされる。
【0038】
印刷ドラム308,310の回転軸350,352(図2)の奥側(図2で手前側)にはそれぞれタイミングプーリとしての歯付きのドラム駆動プーリ336,338が印刷ドラム308,310を交換可能に取り付けられており、このドラム駆動プーリ336,338間にタイミングベルト320が掛け渡されている。
ドラム間位相調整手段322には2つのタイミングプーリとしての調整用プーリ340,342が設けられており、調整用プーリ340,342とドラム駆動プーリ336,338間にはドラム間位相調整手段322の上下変位による位相調整を短距離変位で効率的に行なうための4つの偏向プーリ344が位置固定されて設けられている。ここでの偏向プーリ344はテンションプーリとしても機能する。
【0039】
ドラム間位相調整手段322は、図2に示すように、上下方向に延びるフレーム354と、フレーム354の上下端部に回転自在に支持された調整用プーリ340,342と、フレーム354に形成されたラック部354aに噛み合う図示しないピニオンと、このピニオンを駆動する図示しないモータ等を有している。
フレーム354の上半部と下半部にはそれぞれ上下に延びる長孔354b,354cが形成されており、長孔354b,354cには図示しない装置本体側板に固定されたガイドピン356,358が係合している。フレーム354はガイドピン356,358と図示しない装置本体側板に固定されたガイド部材によりガイドされながら上下に移動する。
平プーリとしての各偏向プーリ344は、図示しない装置本体側板に固定された軸360に回転自在に支持されており、調整用プーリ340,342とドラム駆動プーリ336,338間においてタイミングベルト320を絞り込むように配置され、タイミングベルト320の裏面に当接している。
【0040】
図示しないピニオンが回転駆動され、フレーム354が上方向(矢印X方向)に移動すると、調整用プーリ340,342が共に上方に変位し、印刷ドラム308,310はそれぞれ矢印a、b方向に回転する。これにより印刷ドラム308,310の位相が変化し、位相調整(色ずれ調整)が可能となる。
上記と逆方向の位相調整をする場合には、図示しないピニオンを逆回転させ、フレーム354を下方向(矢印Y方向)に移動させればよい。
ドラム駆動プーリ336,338の歯数は互いに同じであり、ドラム間位相調整手段322における調整用プーリ340,342よりも歯数は多い。調整用プーリ340,342の歯数も互いに同じである。
【0041】
本実施形態におけるタイミングベルト320は、図2に示すように、印刷ドラム308,310の軸方向、すなわち、ドラム駆動プーリ336,338の軸方向に並置された2つの細幅タイミングベルト320a、320bとから構成されている。
タイミングベルト320は、図3に示すように、元々の幅(印刷ドラムの軸方向の幅)がWで歯数nの単一のベルトMBを出発材料としており、その中心位置Tで2等分に切断したものである。なお、図3等においては、タイミングベルト320の厚みや長さを無視して模式的に表示している。
図4に示すように、切断して得られた分割体としての各細幅タイミングベルト320a、320bにより全体としてのタイミングベルト320が構成されている。
【0042】
各細幅タイミングベルト320a、320bの位置関係の調整によってタイミングベルト320の偏心成分を抑制する訳であるが、各細幅タイミングベルト320a、320bの位置変更を分かり易くするために、図3及び図4に示すように、ベルト上部の外面中心位置にはそれぞれアルファベットのAを、ベルト下部の外面中心位置、すなわち、n/2歯の位置にはそれぞれアルファベットのB(破線となる)を同一向きにマーキングしている。
【0043】
本実施形態では、図5に示すように、各細幅タイミングベルト320a、320bの切断面(分割面)同士を突き合わせ、且つ、細幅タイミングベルト320aを細幅タイミングベルト320bに対してn/2歯ずらして組み付けている。
タイミングベルト320をこのように構成することにより、タイミングベルト320の偏心成分を全体として打ち消すことができる。その理由を以下に述べる。
【0044】
単体としてのタイミングベルト320の速度変動は、例えば図6(a)に示すような波形となる。タイミングベルト320を上述のように分割した場合、出発部材が同一であるので、各細幅タイミングベルト320a、320bの速度変動の波形は、図6(b)に示すように、それぞれ図6(a)で示したものと同じになる。
ここで、細幅タイミングベルト320aをn/2歯ずらすということは、図6(c)に示すように、各細幅タイミングベルト320a、320bの偏心成分の発現特性が対称性を有することとなる。このため、タイミングベルト320全体としては、各回転位置での偏心成分が対称的大きさを有する偏心成分で打ち消される。
結果としてタイミングベルト320全体では、図6(d)に示すように、偏心成分が回転全域に亘ってキャンセルされ、タイミングベルト320の偏心成分に起因するオフセットゴーストが高精度に抑制される。
【0045】
次に、タイミングベルト320以外の回転部材が偏心している場合のオフセットゴースト抑制手法について述べる。
上記構成の下、本実施形態では、調整用プーリ340,342の歯数をドラム駆動プーリ336,338の歯数の1/整数に設定している。換言すれば、ドラム駆動プーリ336,338の歯数を調整用プーリ340,342の歯数の整数倍としている。
例えば、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数144に対して調整用プーリ(340,342)の歯数を36に設定するものである。
このようにすれば、調整用プーリ340,342が偏心していても歯数比の関係によって印刷ドラム308,310間の位相ずれ(同期回転ずれ)は生じず、オフセットゴーストの発生も抑制される。
【0046】
その理由を図7及び図8に基づいて説明する。
図7は、ドラム駆動プーリ(336,338)と調整用プーリ(340,342)に偏心があった場合の速度変動を示す波形図で、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数:調整用プーリ(340,342)の歯数=4:1の場合である。なお、図7は代表的に、ドラム駆動プーリ336と調整用プーリ340についてのみ図示しており、ドラム駆動プーリ338、調整用プーリ342の波形図は省略してある。
つまり、図7において、実線S7はドラム駆動プーリ336の速度変動を、実線S8はドラム駆動プーリ336の速度変動の波形の原点と、調整用プーリ340の速度変動の波形の原点とをわかりやすいように一致させて示した、調整用プーリ340の速度変動を、破線S9はドラム駆動プーリ336と調整用プーリ340との偏心位置に差があった場合の調整用プーリ340の速度変動を示している。偏心位置に差が無い場合には、ドラム駆動プーリ(336,338)の1周期の中に調整用プーリ(340,342)の4周期が丁度入る。
【0047】
図8は、合成速度変動を示す波形図で、実線C5は図7における実線S7と実線S8の合成速度変動を、破線C6は実線S7と破線S9の合成速度変動を示している。
図8から明らかなように、ドラム1周期をどこから始めても、毎周期で速度変動の形は同じである。すなわち、実線C5でも破線C6でも速度変動の形は同じである。
従って、印刷ドラム308と印刷ドラム310とのずれ方が毎周期同じであるのでオフセットゴーストの発生がない。
【0048】
本実施形態では、偏向プーリ344を有する構成を示したが、偏向プーリ344を有しない構成においても1/整数に設定する方式とした場合、上記と同様の理由により同様のオフセットゴースト抑制機能を得ることができる。
また、偏向プーリ344を有する構成において、調整用プーリ340,342の歯数をドラム駆動プーリ336,338の歯数の1/整数に設定することに加え、偏向プーリ344のピッチ円直径をドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径の1/整数に設定してもよい。
換言すれば、ドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径を偏向プーリ344のピッチ円直径の整数倍としてもよい。例えば、ドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径:偏向プーリ344のピッチ円直径=5:1に設定するものである。各偏向プーリ344のピッチ円直径は互いに同じである。
この場合の偏向プーリ344のピッチ円直径d1は、図9に示すように、タイミングベルト320のピッチ線(ベルト心線の位置)tまでの距離である。
【0049】
ドラム間位相調整手段322の調整用プーリ340,342の偏心が無く、偏向プーリ344のみ偏心がある場合には、偏向プーリ344のピッチ円直径をドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径の1/整数に設定する対策のみでオフセットゴーストの発生を抑制できる。
【0050】
ところで、上記実施形態でドラム駆動プーリ(336,338)の歯数144に対して調整用プーリ(340,342)の歯数を36としたのは、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数と調整用プーリ(340,342)の歯数の比を4:1に設定する場合の好ましい例である。
この他の歯数で整数比4:1、又は3:1、又は5:1を、精度とコストのバランスを考慮して設定するなら、ドラム駆動プーリ(336,338)の歯数が108〜180であることが望ましい。
【0051】
本実施形態のドラム連結駆動部は、図1に示すように、高精度なギヤを使用せずに、ドラム駆動プーリ336,338と調整用プーリ340,342及び、偏向プーリ344で構成する回転部材にタイミングベルト320が掛け渡されているだけの極めてシンプルな駆動方式を採っている。
従って、上記回転部材に偏心があってもそれぞれのピッチ円直径がドラム駆動プーリ336,338のピッチ円直径と1/整数の関係が保たれることによって印刷ドラム308,310の間の位相ずれは生じないが、極めてシンプルな構成上、タイミングベルト320とドラム駆動プーリ336,338の歯数を1:1とすることができないため、タイミングベルト320自身の持つ偏心量だけが位相ずれの発生源となり得る。
【0052】
しかしながら、タイミングベルト320の偏心成分は、上述のように各細幅タイミングベルト320a、320bの組み合わせ構成によって容易且つ高精度にキャンセルできるため、上記回転部材の偏心成分キャンセル構成と、タイミングベルト320の偏心成分キャンセル構成との組み合わせにより、装置全体としてはオフセットゴーストを高精度に抑制することができる。
【0053】
次に、他の実施形態を説明する。
上記実施形態では、各細幅タイミングベルト320a、320bの分割面同士を突き合わせ、且つ、一方をn/2歯ずらして組む構成であったが、図10に示すように、一方の細幅タイミングベルト320aの向きを反転させてその非分割面と他方の細幅タイミングベルト320bの分割面を突き合わせ、分割時の歯を合わせて組み合わせる構成としてもよい。
この場合にも各細幅タイミングベルト320a、320bは互いに偏心成分を打ち消す位置関係となり、上記実施形態と同様のタイミングベルト320の偏心成分に起因するオフセットゴースト抑制機能を得ることができる。
【0054】
また、図11に示すように、一方の細幅タイミングベルト320aの向きを反転させてその非分割面と他方の細幅タイミングベルト320bの分割面を突き合わせ、且つ、細幅タイミングベルト320bに対して細幅タイミングベルト320aをn/2歯ずらして設ける構成としてもよい。
この場合にも各細幅タイミングベルト320a、320bは互いに偏心成分を打ち消す位置関係となり、上記実施形態と同様のタイミングベルト320の偏心成分に起因するオフセットゴースト抑制機能を得ることができる。
【0055】
上記実施形態では単一のベルトを分割して細幅タイミングベルト320a,320bを得る方法を採用したが、図12乃至図14に基づいて他のタイミングベルトの作製方法を参考実施形態として述べる。
図12に示すように、図示しない側板に回転自在に支持され且つ図示しない駆動源に接続されて矢印方向に回転駆動される刃受けローラ370に、円筒状に形成された歯数nの幅広のタイミングベルト372を装着し、刃受けローラ370を回転させながら該刃受けローラ370の回転軸方向と略直交する矢印N方向に移動可能な切断手段374により切断する。
切断手段374は、刃受けローラ370の回転軸方向である矢印M方向にも移動可能となっている。
【0056】
図12は、3つ目の細幅タイミングベルト372cが切断し終わった状態を示しており、この後、372d...372nと切断が進行する。
相隣合う細幅タイミングベルト372a,372bをペアとして1つのタイミングベルトを構成し、次に、細幅タイミングベルト372cと相隣合う、次に切断される細幅タイミングベルト372dをペアとして1つのタイミングベルトを構成する。この作業を繰り返して1つの幅広のタイミングベルト372から複数のタイミングベルト320を得ることができる。
この場合、細幅タイミングベルト372a,372b間の切断面(分割面)は符号376で示す位置に存在する。
【0057】
図13に示すように、切断する前の幅広のタイミングベルト372の外周面には、タイミングベルト372の軸方向に略平行な直線L1と、この直線L1の近傍において直線L1に対して傾斜した斜線L2がマーキングされており、タイミングベルト372の外周面のn/2歯の位置には、直線L1に平行な直線L3がマーキングされている。本実施形態ではこれらのマーキングは白色で行っている。
【0058】
上記方法で作製された相隣合う細幅タイミングベルトのペア(例えば細幅タイミングベルト372a,372b)が実際に使用される1つのタイミングベルトを構成するわけであるが、図14に示すように、直線L1と斜線L2を合わせることにより、容易に両細幅タイミングベルト間の切断面を突き合わせることができる。すなわち、細幅タイミングベルト372bでは両側とも切断面となるため、切断後のばらばらの状態ではいずれが両者間の切断面か容易に判断しにくいが、直線L1と斜線L2を合わせて判断することにより容易となる。
細幅タイミングベルト372aに対して細幅タイミングベルト372bをn/2歯ずらす場合には、切断面を確認した後、直線L1と直線L3を合わせればよい。
2つの細幅タイミングベルトによる偏心成分をキャンセルするその他の位置関係は、上記実施例と同様であるので省略する。
【0059】
図12乃至図14で示した実施形態では、切断手段374として固定刃を使用したが、回転刃を用いてもよい。
また、本実施形態では刃受けローラ370を平滑面を有するローラとしたが、切断時の滑りを無くすために、少なくともローラ表面を摩擦係数の大きいゴム層としてもよい。また、切断時の負荷に十分耐えられるように、タイミングベルト372の歯より全歯たけの小さい歯を有するローラとし、両者が噛み合った状態で切断するようにしてもよい。
【0060】
上記各実施形態では、タイミングベルト320を2つの細幅タイミングベルト320a,320b又は372a,372bで構成したが、3つ以上の細幅タイミングベルトを用いて、それぞれの偏心成分を回転時に互いに打ち消す位置関係に設ける構成としてもよい。
また、単一のベルトを分割した細幅タイミングベルト320a、320bで1つのタイミングベルト320を構成し、あるいは幅広のタイミングベルト372を切断して得られた相隣合う細幅タイミングベルト372a、372bで1つのタイミングベルト320を構成したが、細幅タイミングベルトを単独に複数形成し、それらの中から偏心成分が互いに打ち消す関係にあるものを選定して組み合わせ、1つのタイミングベルト320を構成してもよい。
また、一方の細幅タイミングベルトを他方の細幅タイミングベルトに対してn/2歯ずらす構成としたが、これに限らず、任意の歯数ずらす構成によってもオフセットゴーストの抑制機能を少なからず得ることができる。
【0061】
上記各実施形態では、1パス方式の印刷装置への適用例を示したが、同期回転を必要とする他の同期駆動装置においても同様に適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、回転中全体に亘ってタイミングベルトの偏心成分をキャンセルすることができ、タイミングベルト連結方式の利点である低コスト化を維持しながら、タイミングベルトの偏心成分に起因する同期ずれを抑制することができる。
【0063】
本発明によれば、細幅タイミングベルトの出発材料が同一であるので、偏心成分が波形上で対称性を有する細幅タイミングベルトの組み合わせとなり、タイミングベルトの偏心成分に起因する同期ずれを容易に抑制することができる。
【0066】
本発明によれば、n/2歯ずらす構成としたので、タイミングベルトの偏心成分に起因する同期ずれをさらに高精度に抑制することができる。
【0070】
本発明によれば、マーキングにより細幅タイミングベルト間の分割面を容易に判断できるとともに、偏心成分をキャンセルするための位置ずらしを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る同期回転が必要な装置としての孔版印刷装置の概要正面図である。
【図2】ドラム間位相調整手段の概要斜視図である。
【図3】細幅タイミングベルトを得る単体ベルトの斜視図である。
【図4】タイミングベルトの分解斜視図である。
【図5】細幅タイミングベルトの組み合わせ状態を示す斜視図である。
【図6】タイミングベルトの偏心成分のキャンセル機能を示す波形図で、(a)は単体ベルト状態での速度変動の波形図、(b)は各細幅タイミングベルトの速度変動の波形図、(c)は各細幅タイミングベルトを互いに偏心成分を打ち消す位置関係に組み合わせた状態の速度変動の波形図、(d)は偏心成分がキャンセルされた状態の速度変動の波形図である。
【図7】調整用プーリ等に偏心があった場合の速度変動の波形図である。
【図8】合成速度変動の波形図である。
【図9】偏向プーリのピッチ円直径の概念を示す図である。
【図10】他の実施形態におけるタイミングベルトの斜視図である。
【図11】他の実施形態におけるタイミングベルトの斜視図である。
【図12】他の作製方法を示す斜視図である。
【図13】分割面を判断するためのマーキングを示す概要斜視図である。
【図14】分割された細幅タイミングベルト間のマーキングの位置合わせを示す概要斜視図である。
【図15】従来における孔版印刷装置の概要正面図である。
【図16】従来の装置において調整用プーリ等に偏心があった場合の速度の変動を示す波形図である。
【図17】従来の装置において調整用プーリ等に偏心があった場合の合成速度変動を示す波形図である。
【図18】従来の装置においてドラム駆動プーリとタイミングベルトに偏心があった場合の速度の変動を示す波形図である。
【図19】従来の装置においてドラム駆動プーリとタイミングベルトに偏心があった場合の合成速度変動を示す波形図である。
【図20】図16に示した合成速度変動の波形からドラム1周期毎の面積を計算して得られるドラムの回転ずれ量を示す図である。
【符号の説明】
320a,320b,372a,372b 細幅タイミングベルト
370 刃受けローラ
372 幅広のタイミングベルト
374 切断手段

Claims (2)

  1. 一つのタイミングベルトを分割して得られる2つの細幅タイミングベルトにより1組のタイミングベルトを構成し、あるいは円筒状に形成された幅広のタイミングベルトを複数に分割して得られる相隣合う2つの細幅タイミングベルトにより1組のタイミングベルトを構成してなるタイミングベルトにおいて、
    分割する前に、上記タイミングベルトにおける1つの位置と、上記タイミングベルトの歯数をnとしたとき、上記1つの位置からn/2歯ずれた位置とに、それぞれの位置を区別できるマーキングが、上記2つの細幅タイミングベルトに分割された後も分割面同士の同じ位置を位置合わせ可能に施され、
    回転時に互いに偏心成分を打ち消すように、上記マーキングに基づいて一方の細幅タイミングベルトに対する他方の細幅タイミングベルトの位置調整がなされ
    上記位置調整では、上記2つの細幅タイミングベルトが分割面同士を突き合わせ、且つ、n/2歯ずらされていることを特徴とするタイミングベルト。
  2. 一つのタイミングベルトを分割して得られる2つの細幅タイミングベルトにより1組のタイミングベルトを構成し、あるいは円筒状に形成された幅広のタイミングベルトを複数に分割して得られる相隣合う2つの細幅タイミングベルトにより1組のタイミングベルトを構成してなるタイミングベルトにおいて、
    分割する前に、上記タイミングベルトにおける1つの位置と、上記タイミングベルトの歯数をnとしたとき、上記1つの位置からn/2歯ずれた位置とに、それぞれの位置を区別できるマーキングが、上記2つの細幅タイミングベルトに分割された後も分割面同士の同じ位置を位置合わせ可能に施され、
    回転時に互いに偏心成分を打ち消すように、上記マーキングに基づいて一方の細幅タイミングベルトに対する他方の細幅タイミングベルトの位置調整がなされ、
    上記位置調整では、一方の細幅タイミングベルトの向きを反転させてその非分割面と他方の細幅タイミングベルトの分割面を突き合わせ、且つ、n/2歯ずらされていることを特徴とするタイミングベルト
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