JP4546654B2 - 生産管理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生産管理方法に関し、特に液晶表示装置の薄膜トランジスタ(TFT)基板の製造に用いて好適な生産管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
装置の長時間停止が他工程に影響することを防ぐ安全仕掛数を計算し、ジャストインタイム生産を実現する生産管理方法は、本願出願人による日本国特許出願(特開2000−263388号公報(以下、文献1という))に提案されている。この生産管理方法では、複数の装置が複数の工程を処理する場合の一般的な安全仕掛数の計算方法を提示し、安全仕掛数を装置停止が起こる工程の直後に確保し、安全仕掛数と同数の空棚を直前に用意することで、装置停止の影響を受けないライン管理の方法を説明している。
【0003】
また、本願出願人による日本国特許出願(特願2000−085434号(以下、文献2という))では、一般に装置の共用化によりお互いに能力の授受が可能な工程群における生産管理方法が提案されている。この生産管理方法では、まずこれらの工程群の各工程の製品処理能力に対する各工程の必要製品処理数の比率である負荷率を、中日程生産計画の対象となる操業期間全体での各工程の累積能力に対する各工程の累積生産予定の比率として求める。次に、負荷率が工程群の各工程で等しくなるように、各装置の各工程に対する最適使用比率を計算する。操業期間での各装置の各工程に対する使用比率を最適使用比率とほぼ等しくなるように各工程の処理予定を定めている。
【0004】
また、TOCと呼ばれる生産改善手法の基本的な生産管理方法は、隘路工程と出荷前工程に仕掛を集中させる一方で、他の工程には十分な保護能力を持たせる方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
まず、文献1に提案された方法は、装置の長時間停止が起こり得る全ての工程に安全仕掛を設定する場合、仕掛が増加してライン全体の手配番数(手番)が増加するという問題を有している。
【0006】
また、文献2に提案された方法は、一般に装置の共用化によりお互いに能力の授受が可能な工程群において、中日程生産計画の対象となる操業期間全体に対して、工程群の各工程間の負荷の平準化を図ることができる。しかし、ライン全体での手番の管理方法や仕掛の設定方法は決定できず、納期管理を十分に行えないという問題を有している。
【0007】
また、液晶表示装置に用いるTFT基板の生産ラインのように、投資効率の最大化が必須のラインは、隘路工程の能力と他の工程の能力がかなり近づいているため、十分な保護能力を持たせることが難しい。また、装置の計画的長時間停止や突発的長時間停止が起こる工程が多数あり、隘路工程が状況により移動しやすいため、隘路工程を予め予測して仕掛を集中的に管理するだけではラインのスループットを最大化することが難しいという問題を有している。
【0008】
さらに従来は、異なるいくつかの工程で共用化が可能な装置について、そのうち1つの工程が隘路工程又は制約工程(状況により隘路となる可能性がある工程)である場合、積極的に装置の共用関係を作り、隘路工程又は制約工程に他の工程から能力を回すための生産管理方法や仕掛の管理方法が示されていない。同様に、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群が隘路工程又は制約工程となる場合の生産管理方法や仕掛の管理方法も示されていない。
【0009】
本発明の目的は、装置群を工程群で共用して隘路工程又は制約工程の能力を改善する場合に、この工程群で前工程の停止に対する最適な安全仕掛を確保し、さらにこのような工程群を含むライン全体で最大のスループットを確保し、かつ手番を予測し最小化できる生産管理方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
隘路工程又は制約工程と他の工程又は工程群との間で装置の共用化が可能である場合、装置の共用関係を工程間又は工程群間で作ることにより、余裕のある工程から隘路工程又は制約工程に能力を回すことが可能となり、ライン全体としてのスループットを改善することができる。
【0011】
そして、このように装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群を作り、これらの工程群の各工程の製品処理能力に対する各工程の必要製品処理数の比率である負荷率を中日程生産計画の対象となる操業期間全体での各工程の累積能力に対する各工程の累積生産予定の比率として求める。その負荷率が工程群の各工程で等しくなるように、各装置の各工程に対する最適使用比率を計算する。操業期間全体での各装置の各工程に対する使用比率が最適使用比率にほぼ等しくなるように各工程の処理予定を定めることにより、各工程の負荷は生産計画の対象期間で均等になり、工程群の間で負荷が均等化し隘路工程又は制約工程の能力は改善される。
【0012】
このようにすることで、共用化が可能な装置が異なるいくつかの工程にあり、一つの工程は隘路工程又は制約工程であって他の工程は能力に余裕がある場合に、積極的に装置の共用関係を作って、隘路工程又は制約工程に他の工程から能力を回すとともに、これらの工程群の各工程の処理予定を最適に管理することができる。同様に、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群が隘路工程又は制約工程となる場合にも、上記の方法でこれらの工程群の各工程の最適な処理予定を作成することが可能となる。
【0013】
さらに、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群が隘路工程又は制約工程となる場合に、この工程群の適正仕掛を以下のように設定することでスループットが最大化され、かつ手番が適正化できる。
【0014】
すなわち、この工程群を処理順序で投入口に近い順に工程pn(n=1,2,…,i−1,i,…)とし、工程piの直前仕掛を、工程p(i−1)と工程piとの間にある工程の中で定期メンテナンスあるいは付帯作業による停止時間に対応する安全仕掛数が最も多い工程pjに対する安全仕掛と工程piの基本仕掛の和に等しくする。この仕掛は装置の共用関係で能力を授受できるこの工程群の全ての工程に設定する。
【0015】
そして、前記工程群が隘路工程である場合は、ラインで突発故障による停止時間に対応する安全仕掛が最も多い工程の安全仕掛に等しい仕掛を前記工程群のいずれかの工程の直前仕掛に加える。したがってこの工程の仕掛は、前の工程の定期メンテナンス又は付帯作業に対応する安全仕掛と基本仕掛、そして突発故障による停止に対する安全仕掛の総和となる。
【0016】
また、前記工程群は制約工程であり、それ以外に隘路となる工程がある場合は、この隘路より投入口側の工程の中で、突発故障による停止時間に対応する安全仕掛が最も多い工程の安全仕掛に等しい仕掛と、前記隘路工程の基本仕掛の和を、前記隘路工程の適正仕掛とする。
【0017】
このようにすることで、まず、定期メンテナンスや付帯作業などのルーチン的な装置の長時間停止に対して、前記の工程群が影響を受けることなく、平準化した処理を確保することができる。
【0018】
一方、突発的な障害が発生した場合には、前記工程群が隘路工程である場合において、どこで突発的な障害が発生していても、障害が発生した工程の後で、前記の工程群に属する最初の工程で製品待ちが発生した場合に、前記工程群に属する各工程間でお互いに能力の授受が可能なため、結果的に、ラインの突発的な最長停止に対する安全仕掛を設定した工程に能力を回すことができ、隘路工程の装置で損失が生ずることを防止できる。そして障害復旧後は、再び装置の共用関係を利用して回した能力を徐々に製品待ちが発生した工程に戻すことにより、前記工程群の各工程の累積処理のバランスを回復することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態による生産管理方法について図1乃至図4を用いて説明する。
本実施の形態による生産管理方法は、隘路工程又は制約工程と他の工程又は工程群の間で装置の共用化が可能である場合、装置の共用関係を工程間又は工程群間で作ることにより、余裕のある工程から隘路工程又は制約工程に能力を回すことを可能としている。
【0020】
まず、隘路工程又は制約工程を一部に含み、隘路工程又は制約工程と他の工程との間での装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群において、各工程の負荷率を、中日程生産計画の対象となる操業期間全体での各工程の累積能力に対する前記各工程の累積生産予定の比率として求める。負荷率とは、各工程の製品処理能力に対する各工程の必要製品処理数の比率である。
【0021】
次に、各工程の負荷率が等しくなるように、装置の各工程に対する最適使用比率を算出する。操業期間での各装置の各工程に対する使用比率を、算出された最適使用比率とほぼ等しくなるように各工程の処理予定を定める。このように、生産計画の対象期間における各工程の間の負荷を均等化して、隘路工程又は制約工程の能力を改善する。
【0022】
隘路工程とは、各工程が計画通りの能力を発揮した場合にライン全体のスループットを律速する工程である。制約工程とは、条件によってはライン全体のスループットを律速する工程のことである。例えば1ヶ月の間に起こり得る装置の最長停止予測時間でライン能力を管理している場合における、統計的に3ヶ月に1度といった頻度で起こり得るライン能力の管理外である設備の長時間停止の発生等が条件となる。
【0023】
複数の隘路工程又は制約工程の間で装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群においても、上記の方法で生産管理を行うことができる。
【0024】
隘路工程又は制約工程となる工程群の各工程の処理予定を定めた後、この工程群以外の工程の仕掛が基本仕掛を越えたら能力範囲内で最大限の処理を行い、仕掛が基本仕掛以内であれば平準化した処理を行うように工程の処理予定を定める。平準化した処理とは、操業期間の各操業日毎の各工程の負荷率が、中日程生産計画の対象となる操業期間全体での負荷率に等しくなるように、各工程を処理する装置のメンテナンス予定や付帯作業予定の日程に対して各工程の日毎の処理予定を定めた場合の処理予定数の処理である。
【0025】
装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群が隘路工程又は制約工程となる場合に、この工程群の適正仕掛を以下のように設定する。まず、この工程群を、処理順序が投入口に近い方から順に工程pn(n=1,2,…,i−1,i,…)とする。工程piの直前仕掛は、工程p(i−1)と工程piとの間の工程であって、定期メンテナンス又は付帯作業による停止時間に対応する安全仕掛(以下、メンテ停止に対する安全仕掛という)が最も多い工程pjの安全仕掛と工程piの基本仕掛との和に等しくする。この直前仕掛は、装置の共用関係で能力を授受できるこの工程群の全ての工程に設定される。
【0026】
安全仕掛とは、ある工程で装置が1台停止した場合に、装置停止中にこの工程での処理が必要な基板数から、実際に処理できる基板数を減じた値である。この値は、装置停止中に後の工程で不足する基板数に相当する。基本仕掛とは、この工程で装置停止がない場合に、1日の目標数を処理するのに必要な最低限の基板数である。
【0027】
次に、工程群の各工程がライン全体の隘路工程である場合は、全工程のうち突発故障による停止に対応する安全仕掛(以下、突発停止に対する安全仕掛という)が最も多い工程の安全仕掛に等しい仕掛を工程群のいずれかの工程の直前仕掛に加える。したがって、この工程の仕掛は、前の工程のメンテ停止に対する安全仕掛と基本仕掛、及び突発停止に対する安全仕掛の総和となる。このいずれかの工程とは、工程群のいずれか1つの工程でもよいし、工程群の複数又は全ての工程に分散して設定してもよい。分散して設定した場合、必ずしも各工程への割り振りを固定する必要はなく、総和が一定であれば状況に応じて割り振りを変化させてもよい。
【0028】
この工程群が制約工程であり、工程群以外に隘路となる工程がある場合は、この隘路工程より投入口側の工程であって突発停止に対する安全仕掛が最も多い工程の安全仕掛に等しい仕掛と、隘路工程の基本仕掛との和を隘路工程の適正仕掛とする。
【0029】
また、工程pjの直前工程からの日毎の受入数が中日程生産計画の対象期間内で平準化しており、かつ工程pjの装置が安全仕掛に換算した数が最も多く、したがって停止時間の影響が最も大きい停止に入る直前の仕掛が工程pjの基本仕掛に等しいと仮定して、工程pjを処理する各装置のメンテナンス及び付帯作業予定のカレンダーを基に定めた工程pjの日毎処理予定から仕掛推移を計算する。次に、この工程pjの日毎処理予定と同じ数が工程piの日毎受入数になると仮定し、かつ工程pjの装置が安全仕掛に換算した数が最も多く、したがって停止時間の影響が最も大きい停止に入る直前の工程piの仕掛が、工程pjの装置停止に対する安全仕掛数と工程piの基本仕掛の和に等しいと仮定して、工程piの日毎処理予定から工程piの仕掛推移を計算する。このようにして工程piと工程pjの仕掛を前記工程群の全ての工程に対して計算し、この仕掛推移の平均仕掛を工程piと工程pjの適正仕掛として設定する
【0030】
上記の方法で工程piと工程pjの適正仕掛を計算した後、他の工程の適正仕掛を各工程の基本仕掛に等しいと仮定して、ラインの全工程に対して適正仕掛を設定する。次に、ラインの全工程の適正仕掛を合計してラインの適正総仕掛を求める。そして、実際のラインの総仕掛がこの適正総仕掛と等しくなるようにライン全体の出荷数と投入数を管理する。さらに、状況によりラインの総仕掛と適正総仕掛との間に偏差が生じた場合、ラインの総仕掛が速やかに適正総仕掛に等しくなるように出荷数と投入数を調整する。
【0031】
上記の方法によりラインの総仕掛を管理し、かつ手番を(総仕掛÷日毎平均出荷数)で予測することにより生産計画を作成し、納期を管理する。
【0032】
また、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群の工程piが隘路工程となっており、この工程群以外の工程であって、工程piより出荷口側でかつ工程p(i+1)より投入口側のいずれかの工程で装置の長時間停止などのトラブルにより処理不足が起こった場合に、工程piより出荷口側の工程の製品待ちによる処理量低下で余剰となる能力を工程pi又は工程piより投入口側の工程群の各工程に振り向けることで、工程群の総能力の損失を防止する。このようにすることで、突発停止に対する安全仕掛をなくし、総仕掛を減少させ、手番を短縮することができる。この時、工程piより投入口側の工程群の各工程の処理量を増加させるために、ラインの総仕掛に一定の許容上限を設け、その範囲内に総仕掛が収まるように一定期間投入口からの製品投入量を増加させることを許容する。
【0033】
総仕掛の許容上限は、この許容上限と正常時の総仕掛との差を工程群の工程piより出荷口側の工程数で割った値が、これらの工程群の平均処理能力と、これらの工程群に次いで隘路となる工程(準隘路工程)の処理能力との月当たりの能力の差となるように定める。突発故障の復旧後に、工程pi又は工程piより投入口側の工程群の各工程に振り向けた能力を工程piより出荷口側の工程群の各工程に戻すことにより、工程piより出荷口側の各工程の処理量を増加させ、出荷量を投入量より増加させる。それによって、許容上限の範囲で増加した総仕掛を正常時の総仕掛まで減少させる。
【0034】
また、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群の工程pn(n=1,2,…,i,i+1,…)が隘路工程となる場合に、通常時は工程p1の前の工程に設定するメンテ停止に対する安全仕掛を0とし、工程p1の直前仕掛を基本仕掛のみとする。工程p1と投入口の間の工程の装置のメンテナンス停止予定日が近づいたとき、一定期間投入量を増加させることで、メンテ停止に対する安全仕掛に相当する仕掛を確保する。ここで一定期間は、工程p1の前の工程に設定していたメンテ停止に対する安全仕掛を、これらの工程群の日平均処理予定数と、工程p1より投入口側の各工程のうち最も能力の小さい工程の日平均処理能力との差で割った日数とする。
【0035】
さらに、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群の工程pn(n=1,2,…,i−1,i,i+1,…)が隘路工程となる場合に、通常時は工程piの直前の工程に設定する安全仕掛を(工程piの元の安全仕掛)−(工程p(i+1)の元の安全仕掛)(ただし負となる場合は0)とし、工程piの直前仕掛を基本仕掛のみとする。
【0036】
工程piと工程p(i−1)の間の工程に用いる装置のメンテナンス停止予定日が近づいた場合のみ、第1の一定期間工程piの処理量を減少させ、工程pjにその余剰処理能力を振り向けてメンテナンス停止に対する安全仕掛を確保する。メンテナンス日以降の第2の一定期間で再び工程pjの処理量を減少させ、工程piにその余剰処理能力を振り向けて工程piのリカバリを行う。ここで、第1の一定期間とは、工程piの直前の安全仕掛を工程pjに工程piから1日あたり回せる処理能力で割った値である。また、第2の一定期間とは、工程piと工程p(i−1)の間でメンテナンス停止が発生した工程から、メンテナンス時に溜まった仕掛を工程piまで送り込むのに必要な日数である。
【0037】
この生産管理方法は、工程piの能力を振り向ける工程pjの安全仕掛が、工程piの元の安全仕掛と工程p(i+1)の安全仕掛のうちどちらか少ない方の仕掛より多い場合に成立する。工程pjの安全仕掛の方が少ない場合は、工程piの直前に設定した安全仕掛を通常は(工程piの元の安全仕掛)−(工程pjの安全仕掛)とすればよい。
【0038】
また、工程pjと次の工程piとが共通のストッカー又は保管棚を使用することにより、保管スペースを効率よく設定できる。すなわち、工程pjの装置で長時間停止する場合は、工程pjの仕掛が増加して工程piの仕掛が減少し、長時間停止後に工程pjの装置が最大稼働して工程piに仕掛が移動した後は、工程piの仕掛が増加して工程pjの仕掛が減少する。その結果、工程piと工程pjの仕掛の合計はほぼ一定となり、保管棚は常に有効に利用できる。
【0039】
【実施例】
以下、具体的に実施例を用いて本生産管理方法について説明する。
〔実施例1〕
生産ラインの工程が工程1,2,…,19の19工程からなる生産ラインにおいて、工程2,5,8,11,14,17の6工程は、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群である工程piとなる。装置A,B,Cは工程2,8を処理可能であり、装置Dは5,11を、装置Eは5,14を、装置Fは5のみを、装置Gは11,14を、装置Hは14のみを、装置I,J,Kは工程8,17をそれぞれ処理可能である。この場合、工程2,5,8,11,14,17の工程群は装置の共用により、工程群の任意の工程から任意の工程へ能力を回すことができる。それは各工程間が装置の共用により鎖の輪のように繋がれているためである。
【0040】
図1(a)、(b)は、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群における負荷率及び各装置の最適使用比率の計算例を示す表である。工程名の欄は各工程で使用する装置を表しており、例えば2(♯A)は工程2で使用する装置Aのことを表している。各装置が複数の品種を処理する場合、装置が1枚の基板を処理するのに要する時間であるタクトは品種毎に異なる可能性があり、図1(a)では異なる2つの品種のタクトを品種毎タクトt1(sec)、t2(sec)と表している。そこで加重平均タクトを理論時間H(sec)と呼び、H=Σ(品種毎タクト×品種毎処理予定数)/Σ(品種毎処理予定数)と定義する。ここで、品種毎処理予定数とは、中日程生産計画の対象となる操業期間で設定されている品種毎の予定数を日割りの平準化した予定数に換算して求めたものであり、図1(a)では、生産比率P1、P2として表している。すなわち、
【0041】
H=Σ(tk・Pk)/ΣPk
となる。
【0042】
次に、その装置が一定の処理枚数毎に一定時間の付帯作業により停止することを考慮して、付帯時間W(sec)をW=(付帯作業による装置停止時間)/(付帯作業後の稼動開始から次の付帯作業による停止までに処理する基板数)と定義する。本実施例では、W=5.0としている。ここで、各装置が基板1枚を処理するのに要する平均時間はH+W(sec)となる。
【0043】
そして、各装置の各工程で最大限使用した場合の能力である最大日平均処理能力(スループット(枚/日))は、(24×60×60×(可動率)×(正味稼働率))/(H+W)で計算できる。可動率は、装置起因で装置が停止している時間の割合であり、通常1ヶ月程度の期間における累積操業時間に対する累積可動時間の比率で求める。本実施例では、装置Hは可動率=95.0%であり、その他の装置は可動率=90.0%である。また、正味稼働率は、可動時間のうち装置が実際に製品を処理した時間の割合であり、同様に1ヶ月程度の期間における累積可動時間に対する累積製品処理時間の比率で求める。本実施例では、装置Hは正味稼動率=95.0%であり、その他の装置は正味稼動率=90.0%である。可動率×正味稼働率は、一般に稼働率と呼ばれている。
【0044】
次に、各装置の各工程に対する日平均処理能力(処理枚数(枚/日))は、(最大日平均処理能力)×(装置をその工程に使用する比率(装置使用比率))で算出される。各工程iの日平均処理予定数Ni(枚/日)は、
【0045】
Ni=ΣNij
【0046】
で表され(Nijは各装置jの各工程iに対する日平均処理予定数)、本実施例では全ての工程iでNi=1000としている。中日程生産計画の対象となる操業期間全体での各工程iの累積能力に対する各工程の累積生産予定の比率である負荷率Liは、Ni/(各工程iの日平均処理能力)で表される。
【0047】
図1(a)、(b)に示した表は、各工程の負荷率が等しくなるように装置使用比率を設定するために開発されたツールである。すなわち、各装置の各工程に対する日平均処理能力を工程毎に合計して求められる各工程の日平均処理能力が、各工程で等しくなるようにすれば、負荷率Liは各工程で等しくなる。各工程の負荷率Liが等しくなるための装置使用比率Rij(最適使用比率)は、図1(a)、(b)に示した表を使用し、線形計画法、カット・アンド・トライ法等を用いて求めることができる。図1(b)のように装置使用比率Rijを設定すれば、各工程の負荷率Liが等しくなり、この工程群が隘路工程である場合は、ライン全体のスループットを最大化できる。なお、装置Eの工程5と工程14における装置使用比率の合計が1とならないのは、実験等の目的で製品処理以外でも使用しているためである。本実施例では、各工程の日平均処理能力は1031枚程度であり、日平均処理予定数Niが1000枚/日である中日程生産計画に対する負荷率Liは97%となっている。
【0048】
また、この工程群が隘路工程でなく制約工程である場合も、各工程に均等な余裕度を設定でき、ライン全体の円滑な運用を行うことができる。
【0049】
本実施例において、日割りの各工程の処理予定数は、その工程を処理する各装置のある日のメンテナンス予定時間をS(sec)とし、また月平均でみた平均故障停止時間をU(sec)として次式で計算できる。
【0050】
その日の処理予定数=Σ((24×60×60−S−U)×(装置使用比率Rij)/(H+W))
【0051】
図2(a)、(b)は、装置の共用関係がない場合の各工程の日平均処理能力の計算例を示す表である。図2(a)、(b)に示すように、この例では工程11の日平均処理能力は737枚となり、これがライン全体のスループットとなる。日平均処理予定数Niが1000枚/日の中日程生産計画に対する負荷率Liは136%となり、完全に処理不足の状態になっている。
【0052】
〔実施例2〕
図3は、実施例1の場合におけるラインの適正仕掛設定と手番計算の例を示す表である。装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群に属する各工程2,5,8,11,14,17の直前の工程1,4,7,10,13,16(工程pj)が、工程群の各工程間で装置の定期メンテナンス又は付帯作業による停止(以下、メンテ停止という)時間が最も長い工程であるとする。最長の停止時間と装置台数、各装置の日平均処理能力は図3に示す通りとする。簡単のため各工程における複数台の装置は能力もメンテ停止時間も同じと考える。
【0053】
工程1,4,7,10,13,16の各装置のメンテ停止に対して工程2,5,8,11,14,17の各工程の直前に設定すべき安全仕掛(枚)は、
【0054】
メンテ停止に対する安全仕掛=Ni×(メンテ停止時間)/24−Σ((停止した装置以外の各装置のその工程に対する日平均処理能力)×(メンテ停止時間)/24)
=(Ni−Σ(停止した装置以外の各装置のその工程に対する日平均処理能力))×(メンテ停止時間)/24
で表される。
【0055】
工程1,4,7,10,13,16のいずれかの工程で装置のメンテ停止が起こると、メンテナンス終了時にはその工程の直前に安全仕掛に相当する仕掛がたまる。この仕掛を処理して本来の基本仕掛まで仕掛が低減するまでのリカバリ期間(日)は、
【0056】
リカバリ期間=(安全仕掛)/((装置の日平均処理能力)×(装置台数)−Ni)
【0057】
で表される。したがって工程1,4,7,10,13,16の各工程の平均仕掛(枚)は、
【0058】
平均仕掛=(基本仕掛)+((メンテ停止に対する安全仕掛)×(リカバリ期間)/2)/(停止間隔)
【0059】
で表され、その値が適正仕掛として設定される。
次に、工程2,5,8,11,14,17の工程群の各工程の適正仕掛は、基本仕掛に直前工程のメンテ停止に対する安全仕掛を加えたものが設定される。また、その他の工程の適正仕掛は、基本仕掛が設定される。以上で設定された適正仕掛を図3に適正仕掛1として示す。本実施例では基本仕掛を200枚としている。
【0060】
そして工程2,5,8,11,14,17が隘路工程である場合は、最長突発停止に対する安全仕掛のうち、最も多い仕掛(本実施例では工程7の1667枚)をこの工程群のいずれかの工程(本実施例では工程8)の適正仕掛に加算する。ここで、最長突発停止に対する安全仕掛は、統計的に算出される最長突発停止時間を用いて、
【0061】
最長突発停止に対する安全仕掛=Ni×(最長突発停止時間)/24−Σ((停止した装置以外の各装置のその工程に対する日平均処理能力)×(最長突発停止時間)/24)
=(Ni−Σ(停止した装置以外の各装置のその工程に対する日平均処理能力))×(最長突発停止時間)/24
【0062】
で表される。図3に、以上で設定された適正仕掛を適正仕掛2として示すとともに、各工程の適正仕掛2を合計して求められるラインの総仕掛と、(ラインの総仕掛)/Niで求められる適正手番を示す。総仕掛を約9500枚とし、出荷基板数と等しい数の基板数を投入する管理を行い、日毎平均出荷数1000を維持することで、手番9.5日を安定して維持することができる。
【0063】
図4は、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群以外の工程が隘路工程である場合におけるラインの適正仕掛設定と手番計算の例を示す表である。図4では、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群の各工程の日平均処理能力(1031枚/日)より小さい工程の日平均処理能力(1011枚/日)を有する工程10が隘路工程となっている。工程10の適正仕掛2は、最長突発停止に対する安全仕掛(1667枚)を工程10の適正仕掛1に加算して求められる。この場合のラインの総仕掛は約9800枚となり、手番は9.8日となる。
【0064】
〔実施例3〕
次に、図3に示した装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群が隘路工程となる場合に、突発停止に対する安全仕掛(工程7の1667枚)をなくした例について説明する。工程8の適正仕掛は1242枚となり、総仕掛は約7800枚となる。したがって通常時の手番は7.8日に短縮できる。
【0065】
このラインにおいて、工程7で突発故障による長時間停止が発生した場合を考える。最長突発停止時間である40時間停止したとすると、この期間工程8は1667枚の処理能力を有する。すなわち、メンテ停止に対する安全仕掛と基本仕掛の合計である適正仕掛の1242枚を使い果たし、さらに425枚分の製品待ちによる処理能力の余剰が発生する。この余剰処理能力を工程2の処理を増加させることで吸収する。次に、工程7の装置が復旧した後、工程2の処理能力を処理が減少した工程8に回してリカバリを行う。さらに、工程7の直前には1667枚分の仕掛が溜まっているため、これをリカバリする必要がある。工程7の能力余裕(=(工程の日平均処理能力)−Ni)は150枚/日であり、約11日間で工程8の425枚の余剰処理能力が解消されるとともに安全仕掛1242枚が復旧される。
【0066】
〔実施例4〕
次に、実施例3で説明した突発停止に対する安全仕掛(工程7の1667枚)をなくした場合であって、さらに工程群の各工程のうち、最も投入口に近い工程のメンテ停止に対する安全仕掛(工程1の500枚)をなくした例について説明する。工程2の適正仕掛は200枚となり、総仕掛は約7300枚となる。したがって、通常時の手番は7.3日に短縮できる。
【0067】
工程1の装置のメンテナンスが近づいたときには、工程1の処理量を増加させ、工程2の直前に500枚の安全仕掛を確保する必要がある。工程1の処理能力の余裕は、工程の日平均処理能力(1200枚/日)と日平均処理予定数Ni(1000枚/日)との差である200枚/日である。メンテナンスの2.5日前から工程1の処理量を1200枚/日に増加させれば、メンテナンス時には工程2の安全仕掛500枚を確保できる。このときの総仕掛は7800枚であるが、メンテナンス終了後から2.5日間工程1の処理量を800枚/日に減少させることで総仕掛を7300枚に戻すことができる。この場合、月平均の総仕掛は7342枚となり、月平均の手番は7.34日となる。
【0068】
〔実施例5〕
次に、実施例3で説明した突発停止に対する安全仕掛(工程7の1667枚)をなくし、実施例4で説明した最も投入口に近い工程のメンテ停止に対する安全仕掛(工程1の500枚)をなくした場合であって、さらに工程群のうち工程11のメンテ停止に対する安全仕掛(217枚)をなくした例について説明する。
工程11の適正仕掛は200枚となり、総仕掛は約7100枚となる。したがって、通常時の手番は7.1日に短縮できる。
【0069】
工程10の装置のメンテナンスが近づいたときには、工程11の処理量を減少させ、余剰処理能力を工程8に振り向けて工程8の処理量を増加させ、メンテナンス前に工程11の直前に217枚の安全仕掛を確保する必要がある。このとき工程14は、工程14自身のメンテ停止に対する安全仕掛469枚を消費することで工程11の処理量が217枚分低下する影響から免れる。このような生産管理を可能とするためには、工程10のメンテナンス日からa日前に工程8にメンテ停止に対する安全仕掛が溜まっており、工程10のメンテナンス日からb日後まで工程7でメンテナンスが行われないことが必要である。
【0070】
本実施の形態による生産管理方法は、フォトリソグラフィ法をパターニング手段として使用する加工ラインを含む生産ラインを管理又は構成する際などに適用できる。特に、装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群がフォトレジストのパターニング工程である生産ラインを管理、構成する際に適用できる。
【0071】
また、本実施の形態による生産管理方法は、複数の工程で共通の装置を使用するTFT基板やカラーフィルタ(CF)基板などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用基板又は半導体装置の製造ラインを管理、構成する際などに適用できる。
【0072】
以上説明した実施の形態による生産管理方法は、以下のようにまとめられる。
(付記1)
隘路工程又は制約工程を一部に含み、前記隘路工程又は制約工程と他の工程との間で装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群において、
前記工程群の各工程の製品処理能力に対する前記各工程の必要製品処理数の比率である負荷率を、中日程生産計画の対象となる操業期間全体での前記各工程の累積能力に対する前記各工程の累積生産予定の比率として求め、
前記各工程の前記負荷率がほぼ等しくなるように、前記装置の前記各工程に対する最適使用比率を計算し、
前記操業期間での前記各装置の前記各工程に対する使用比率を前記最適使用比率とほぼ等しくなるように前記各工程の処理予定を定め、
生産計画の対象期間における前記各工程の間の負荷をほぼ均等化すること
を特徴とする生産管理方法。
【0073】
(付記2)
複数の隘路工程又は制約工程の間で装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群において、
前記工程群の各工程の製品処理能力に対する前記各工程の必要製品処理数の比率である負荷率を、中日程生産計画の対象となる操業期間全体での前記各工程の累積能力に対する前記各工程の累積生産予定の比率として求め、
前記各工程の前記負荷率がほぼ等しくなるように、前記装置の前記各工程に対する最適使用比率を計算し、
前記操業期間での前記各装置の前記各工程に対する使用比率を前記最適使用比率とほぼ等しくなるように前記各工程の処理予定を定め、
生産計画の対象期間における前記各工程の間の負荷をほぼ均等化すること
を特徴とする生産管理方法。
【0074】
(付記3)
付記2記載の生産管理方法において、
前記各工程の処理予定を定めた後、
前記工程群以外の工程の仕掛が基本仕掛を越えたら能力範囲内でほぼ最大限の処理を行い、前記仕掛が前記基本仕掛以内であれば平準化した処理を行うように前記工程群以外の工程の処理予定を定めること
を特徴とする生産管理方法。
【0075】
(付記4)
複数の隘路工程又は制約工程の間で装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群において、
前記工程群の各工程を、処理順序が投入口に近い方から順に工程pn(n=1,2,…,i−1,i,i+1,…)とし、
前記工程piの直前仕掛は、前記工程p(i−1)と前記工程piとの間の工程であって定期メンテナンス又は付帯作業による停止時間に対応する安全仕掛が最も多い工程pjに対する安全仕掛と前記工程piの基本仕掛との和にほぼ等しくすること
を特徴とする生産管理方法。
【0076】
(付記5)
付記4記載の生産管理方法において、
前記工程群の各工程が隘路工程である場合、全工程のうち突発故障による停止時間に対応する安全仕掛が最も多い工程の安全仕掛とほぼ等しい仕掛を前記工程群のいずれかの工程の直前仕掛に加算すること
を特徴とする生産管理方法。
【0077】
(付記6)
付記5記載の生産管理方法において、
前記仕掛を前記工程群のいずれか複数の工程の直前仕掛に分散して加算すること
を特徴とする生産管理方法。
【0078】
(付記7)
付記5又は6記載の生産管理方法において、
前記工程群の工程の直前仕掛をほぼ一定の総和を保ちながら変動させること
を特徴とする生産管理方法。
【0079】
(付記8)
付記4記載の生産管理方法において、
前記工程群の各工程が制約工程であり、前記工程群以外の工程が隘路工程である場合、前記隘路工程より投入口側の工程のうち突発故障による停止時間に対応する安全仕掛が最も多い工程の安全仕掛とほぼ等しい仕掛と、前記隘路工程の基本仕掛との和を前記隘路工程の適正仕掛とすること
を特徴とする生産管理方法。
【0080】
(付記9)
付記4記載の生産管理方法において、
前記工程pjの直前工程からの日毎の受入数が中日程生産計画の対象期間内で平準化しており、かつ前記工程pjの装置の安全仕掛が最も多く、したがって停止時間の影響が最も大きい停止に入る直前の仕掛が前記工程pjの基本仕掛に等しいと仮定して、前記工程pjを処理する各装置のメンテナンス及び付帯作業予定の日程を基に定めた前記工程pjの日毎処理予定から前記工程pjの仕掛推移を計算し、
前記工程pjの日毎処理予定と同じ数が、前記工程piの日毎受入数になると仮定し、かつ前記工程pjの装置が安全仕掛に換算した数が最も多く、したがって停止時間の影響が最も大きい停止に入る直前の工程piの仕掛が、前記工程pjの装置停止に対する安全仕掛数と前記工程piの基本仕掛の和に等しいと仮定して、前記工程piの日毎処理予定から前記工程piの仕掛推移を計算し、
前記工程piと前記工程pjの仕掛を前記工程群の全ての工程に対して計算し、前記仕掛推移の平均仕掛を前記工程piと前記工程pjの適正仕掛として設定すること
を特徴とする生産管理方法。
【0081】
(付記10)
付記9記載の生産管理方法において、
前記工程piと前記工程pjの適正仕掛を計算した後、他の工程の適正仕掛を前記他の工程の基本仕掛に等しいと仮定して、ラインの全工程に対する適正仕掛を設定し、
前記全工程に対する適正仕掛を合計し、前記ラインの適正総仕掛を定め、
前記ラインの総仕掛と前記適正総仕掛とがほぼ等しくなるように前記ライン全体の出荷数と投入数を管理すること
を特徴とする生産管理方法。
【0082】
(付記11)
付記10記載の生産管理方法において、
前記ラインの総仕掛と前記適正総仕掛との間に偏差が生じたとき、前記偏差を減少させるように前記出荷数と前記投入数を調整すること
を特徴とする生産管理方法。
【0083】
(付記12)
付記9乃至11のいずれか1項に記載の生産管理方法において、
前記ラインの総仕掛を管理し、前記ラインの総仕掛から手番を予測することにより生産計画の作成と納期の管理を行うこと
を特徴とする生産管理方法。
【0084】
(付記13)
付記4記載の生産管理方法において、
前記工程群以外の工程であって、前記工程piより出荷口側で前記工程p(i+1)より投入口側のいずれかの工程で、装置の長時間停止等のトラブルにより処理不足が生じた場合、前記工程piより出荷口側の前記工程群の製品待ちによる処理量減少で余剰となる能力を前記工程pi又は前記工程piより投入口側の前記工程群の各工程に振り向けることで、前記工程群の総処理能力の損失を防止すること
を特徴とする生産管理方法。
【0085】
(付記14)
付記13記載の生産管理方法において、
前記工程piより投入口側の前記工程群の各工程の処理量を増加させるために、ラインの総仕掛に一定の許容上限を設け、前記許容上限の範囲内に前記総仕掛が収まるように一定期間投入口からの製品投入量を増加させることを許容すること
を特徴とする生産管理方法。
【0086】
(付記15)
付記14記載の生産管理方法において、
前記許容上限は、前記許容上限から正常時の総仕掛を差し引いた差の仕掛量を前記工程群の工程piより出荷口側の工程数で割った値が、前記工程群の平均能力と前記工程群に次いで準隘路となる工程の能力との月当たりの能力の差となるように定め、
前記許容上限内で増加した前記総仕掛を、前記工程pi又は前記工程piより投入口側の前記工程群の各工程にトラブル時に振り向けた能力分を、トラブル復旧後に前記工程piより出荷口側の前記工程群の各工程に戻すことにより、前記工程piより出荷口側の各工程の処理量を増加させ、出荷を投入より増加させることで正常時の仕掛数まで減少させること
を特徴とする生産管理方法。
【0087】
(付記16)
付記4記載の生産管理方法において、
前記工程p1の直前に設定した安全仕掛を通常は0として、前記工程p1の直前仕掛を通常は基本仕掛のみとし、
前記工程p1と投入口の間の工程の装置メンテナンス停止予定日が近づいた場合のみ、一定期間投入を増やすことで、メンテナンス停止に対する安全仕掛を確保すること
を特徴とする生産管理方法。
【0088】
(付記17)
付記16記載の生産管理方法において、
前記一定期間は、前記工程p1より投入口側の各工程のうち最も能力の小さい工程の日平均処理能力と日平均処理予定数との差で、前記工程p1の直前に設定していた安全仕掛を割った日数とすること
を特徴とする生産管理方法。
【0089】
(付記18)
付記4記載の生産管理方法において、
前記工程pjの安全仕掛が、前記工程piの元の安全仕掛と前記工程p(i+1)の安全仕掛のうちどちらか少ない方の仕掛より多い場合に、
前記工程群のうち前記工程piの直前に設定した通常時の安全仕掛を前記工程piの元の安全仕掛と前記工程p(i+1)の安全仕掛の差(ただし負となる場合は0)として、通常時の直前仕掛を基本仕掛のみとし、
前記工程p(i−1)と前記工程piの間の工程の装置メンテナンス停止予定日が近づいた場合のみ、第1の一定期間前記工程piの処理量を減少させ、前記工程pjにその余剰処理能力を振り向けてメンテナンス停止に対する安全仕掛を確保し、
メンテナンス日以降の第2の一定期間で再び前記工程p(i−1)の処理量を減少させ、前記工程pjにその余剰処理能力を振り向けて前記工程piのリカバリを行うこと
を特徴とする生産管理方法。
【0090】
(付記19)
付記18記載の生産管理方法において、
前記第1の一定期間は、前記工程pjに前記工程piから1日あたりに振り向けられる前記余剰処理能力で前記工程piの直前の安全仕掛を割った値であること
を特徴とする生産管理方法。
【0091】
(付記20)
付記18又は19に記載の生産管理方法において、
前記第2の一定期間は、前記工程p(i−1)と前記工程piとの間で装置メンテナンスが発生した工程から、前記メンテナンス時に溜まった仕掛を前記工程piまで送り込むために必要な日数であること
を特徴とする生産管理方法。
【0092】
(付記21)
付記4記載の生産管理方法において、
前記工程pjの安全仕掛が、前記工程piの元の安全仕掛と前記工程p(i+1)の安全仕掛のうちどちらか少ない方の仕掛より少ない場合、
前記工程群のうち前記工程piの直前に設定した通常時の安全仕掛を、前記工程piの元の安全仕掛と前記工程pjの安全仕掛の差(ただし負となる場合は0)として、通常時の直前仕掛を基本仕掛のみとし、
前記工程piと前記工程p(i−1)の間の工程の装置メンテナンス停止予定日が近づいた場合のみ、第1の一定期間前記工程piの処理量を減少させ、前記工程pjにその余剰処理能力を振り向けてメンテナンス停止に対する安全仕掛を確保し、
メンテナンス日以降の第2の一定期間で再び前記工程pjの処理量を減少させ、前記工程piにその余剰処理能力を振り向けて前記工程piのリカバリを行うこと
を特徴とする生産管理方法。
【0093】
(付記22)
付記4記載の生産管理方法において、
前記工程piと前記工程pjの合計仕掛がほぼ一定となるように、前記工程piと前記工程pjで共通のストッカー又は保管棚を使用することにより、前記工程pjで用いる装置が長時間停止した場合は前記工程pjの仕掛が増加して前記工程piの仕掛が減少し、
長時間停止後に前記工程pjで用いる装置が最大稼働して前記工程piに仕掛が移動した後は、前記工程piの仕掛が増加して前記工程pjの仕掛が減少すること
を特徴とする生産管理方法。
【0094】
(付記23)
付記1乃至22のいずれか1項に記載の生産管理方法において、
装置の共用関係により互いに能力の授受が可能な工程群が、フォトリソグラフィ法のパターニング工程群であること
を特徴とする生産管理方法。
【0095】
(付記24)
複数の工程で共通装置が使用されるフラットパネルディスプレイ用基板又は半導体装置の製造方法において、
付記1乃至23のいずれか1項に記載の生産管理方法を用いること
を特徴とするフラットパネルディスプレイ用基板又は半導体装置の製造方法。
【0096】
(付記25)
基板上にマトリクス状に配置された複数の画素のそれぞれにTFTを形成するTFT基板の製造方法において、
付記1乃至23のいずれか1項に記載の生産管理方法を用いること
を特徴とするTFT基板の製造方法。
【0097】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)隘路工程又は制約工程と他の工程又は工程群の間で装置の共用化が可能である場合、装置の共用関係を工程間又は工程群間で作り、余裕のある工程から隘路工程又は制約工程に能力を回すことでライン全体のスループットを改善する場合に、装置の最適な処理予定を定め、ラインの適正仕掛を設定することができる。また、これを基にライン管理を行い、適正手番で最大のスループットを確保することができる。
【0098】
(2)同様に装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群が隘路工程又は制約工程となる場合に、上記の方法でこれらの工程群の各工程の最適な処理予定を作成し、ラインの適正仕掛を設定し、これを基にライン管理を行い、適正手番で最大のスループットを確保することができる。
【0099】
(3)液晶表示装置のTFT基板の生産ラインなどは、投資効率の最大化が必須のラインであるが、隘路工程と他の工程の能力が接近しており保護能力を十分に持たせることが難しい。また、装置の計画的長時間停止や突発的長時間停止が起こる日程が多数あるため、隘路が状況により移動しやすく、隘路を予め予測して仕掛を集中的に管理するだけではラインのスループットを最大化することが難しい。本発明によれば、隘路工程又は制約工程を装置の共用化により工程群として分散させ、工程群以外の他工程に用いる装置の長時間停止に対する安全仕掛を工程群の各工程に分散させて確保しておくか、又は工程群の特定の工程に集中して確保しておく。工程間で能力を授受して工程群の他の工程で仕掛が不足した場合に、その工程の処理能力を仕掛を確保しておいた工程に順次回して吸収し得るようにして、柔軟性の高いライン管理を可能にすることができる。
【0100】
(4)本発明を実際の生産ラインに適用した結果、手番を約20%短縮してスループットを改善することができた。
【0101】
以上の通り、本発明によれば、装置群を工程群で共用して隘路工程又は制約工程の能力を改善する場合に、この工程群で前工程の停止に対する最適な安全仕掛を確保し、さらにこのような工程群を含むライン全体で最大のスループットを確保し、かつ手番を予測し最小化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による実施例1の生産管理方法を説明する表である。
【図2】本発明の一実施の形態による実施例1の生産管理方法を説明する表である。
【図3】本発明の一実施の形態による実施例2の生産管理方法を説明する表である。
【図4】本発明の一実施の形態による実施例2の生産管理方法を説明する表である。

Claims (2)

  1. 複数の隘路工程又は制約工程の間で装置の共用関係によりお互いに能力の授受が可能な工程群において、
    前記工程群の各工程を、処理順序が投入口に近い方から順に工程pn(n=1,2,…,i−1,i,i+1,…)とし、
    前記工程piの直前仕掛は、前記工程p(i−1)と前記工程piとの間の工程であって定期メンテナンス又は付帯作業による停止時間に対応する安全仕掛が最も多い工程pjに対する安全仕掛と前記工程piの基本仕掛との和にほぼ等しくすること
    を特徴とする生産管理方法。
  2. 請求項記載の生産管理方法において、
    前記工程群の各工程が隘路工程である場合、全工程のうち突発故障による停止時間に対応する安全仕掛が最も多い工程の安全仕掛とほぼ等しい仕掛を前記工程群のいずれかの工程の直前仕掛に加算すること
    を特徴とする生産管理方法。
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