JP4531279B2 - インクジェット記録用光沢紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用光沢紙に関し、特に表面光沢性に優れ、かつ、インク吸収性及び耐にじみ性に優れた記録用紙を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、インクの液滴を吐出し、記録紙上に付着させることによりドットを形成し記録を行う方式である。インクジェット記録シートとしては、一般の普通紙でも一定以上のサイズ性があれば、滲みも少なくある程度の印字品質が期待できる。一方、より高い印字品質を求める場合には媒体上にインクジェットプリンターのインクに対して適性のあるインク受容層を各種基材上に設けた専用の媒体が使用される。これらインクジェット記録専用の媒体としては紙やフィルムを支持体として、顔料と結着剤を主成分とする顔料塗工層または顔料を含まない樹脂塗工層を表面に設けたものが多く使用される。インク受容層としては前者の場合が現在では主流であるが、空隙率が高く、インク受容性に富むものの、層表面での光の散乱などの理由により高い光沢を付与するのは難しい問題となっている。
【0003】
一方、印字面の光沢を付与することは、銀塩写真により近い外観を要求する場合には必要である。光沢媒体の製法としては、各種の方法が提案されているが、一般的方法は印画紙用基材上にインク受容層を形成する方法とキャスト法によりインク受容層を形成し表面に光沢を付与する方法である。
【0004】
印画紙用基材は一般にRC紙(レジンコート紙)といわれるように、紙の基材上にポリエチレンのフィルム層が形成されているためにインク受容層をその表面に形成した場合、フィルム面が平滑であることからインク受容層表面も平滑で、光沢ある表面が形成しやすい。しかし、インク吸収性をあげるために塗工量を多くする必要があり、また基材そのものが紙よりも高価であることから全体のコストはキャスト法による光沢媒体に比べ高いものとなる。また、廃棄する場合には複合素材であることからリサイクルがきかないといった問題もある。
【0005】
キャストコート法の場合、結着剤の存在によって塗布層の多孔性が減少し、記録時のインク吸収性を極端に低下させる等の問題がある。このインク吸収性を改善するために、キャストコート層のインク受容性が向上するように多孔質化することも考えられるが、空隙を多数設けるためには結着剤の添加量を減らす必要がある。しかしながら、結着剤の量の減少は成膜性の低下及び光沢度の低下を招くおそれがある。また、表面光沢を向上させるためには、より微小な顔料を使用しなければいけないが、微小な顔料で満足した成膜性を得るためには結着剤の量を増やす必要があるため、インクの吸収性が悪化してしまう。以上のように、キャストコート法では、インク吸収性と表面光沢を同時に満足させることは困難であった。
【0006】
これらの課題を解決するために各種の提案がなされている。それらの中で、特開平11−348416号公報においてゲル化法によるキャストコート層を形成させ、かつ、表面の亀裂の大きさ及び個数を規定することによって優れた光沢感及びインク受容性を有するインクジェット記録用紙が得られるとの提案もあるが、亀裂数が少なすぎると光沢感が増す一方インク吸収性が低下するという問題点もある。
【0007】
以上のように、キャスト法によって製造されたインクジェット記録用光沢紙において、印画紙基材あるいはフィルム基材を用いて製造された媒体を超える表面光沢と、優れたインク吸収性を有する記録媒体は無いのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、キャストコート法によるインクジェット記録用光沢紙において、塗工液中及び塗工層中に高沸点有機溶媒を含有させ、その含有量を調整することで、塗工層を急激に加熱乾燥する際の塗工層内の突沸を抑制して塗工層表面荒れを抑制し、かつ塗工層の表面のひび割れによる光沢度の低下を防止する。本発明の第一の目的は、上記の高沸点有機溶媒の役割により、表面光沢性とインク吸収性という相容れない性質の両立を解決し、インク吸収性、耐にじみ性に優れ、かつひび割れがなく、表面光沢性に優れたインクジェット記録用光沢紙を提供することにある。
【0009】
本発明の目的は、必要最小限の結着剤を添加した場合においても、より優れたインク吸収性を有し、耐にじみ性に優れ、かつひび割れがなく、表面光沢性に優れたインクジェット記録用光沢紙を提供することにある。
【0010】
本発明は、高沸点有機溶媒は沸点165℃以上のものを用いることで前記塗工層内の突沸を防止することを目的とする。
【0011】
本発明は、高沸点有機溶媒に、入手容易で沸点が高い流動パラフィン又はエチレングリコールを含有させることで前記塗工層内の突沸を防止することを目的とする。
【0012】
本発明は、顔料としてアルミナを含有させることで、より高い表面光沢度及び優れたインク吸収性を付与させることを目的とする。
【0013】
本発明は、顔料として平均粒子径1μm以下のシリカを含有させることで、表面の平滑性を与え、最表面における光の散乱を防止して、高い表面光沢度及び優れたインク吸収性を付与させることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、キャストコート法によるインクジェット記録用光沢紙に関して、上記技術的問題を解決するために鋭意検討の結果、塗工液中に高沸点有機溶媒を含有させることによって、必要最低限の結着剤を使用することでも表面光沢性に優れ、ひび割れがなく、かつインク吸収性及び耐にじみ性に優れた記録シートが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち本発明のインクジェット記録用光沢紙は、基材の片面又は両面に形成した塗工層が高光沢を有するキャストコート紙であって、キャストコート法の光沢面を形成する方法が凝固法であり、該塗工層は、顔料、結着剤としてポリビニルアルコール、該結着剤と凝固し得る凝固剤として硼砂、及び沸点が165℃以上である高沸点有機溶媒を含有し、かつ該塗工層中の該高沸点有機溶媒の含有量は該顔料100重量部に対して0.01〜20重量部であり、前記塗工層中の前記ポリビニルアルコールの含有量は、前記顔料100重量部に対して1〜20重量部であることを特徴とする。
【0018】
本発明のインクジェット記録用光沢紙では、前記高沸点有機溶媒は、流動パラフィン又はエチレングリコールを含有することが好ましい。
【0019】
本発明のインクジェット記録用光沢紙では、前記顔料は、アルミナを含有することが好ましい。
【0020】
本発明のインクジェット記録用光沢紙では、前記顔料は、平均粒子径1μm以下のシリカを含有することが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施の形態に限定して解釈されるものではない。本発明の光沢紙は紙を基材として公知のキャストコート法によって製造される。
【0022】
キャストコート法には光沢面を形成する方法によりウエット法、リウエット法、凝固法に分類できるが、高い表面光沢を得るためには凝固法がもっとも好ましい。光沢度及び成膜性の制御には凝固の仕方と乾燥条件が重要である。凝固法では、インク受容層で用いる結着剤に対応した凝固剤の選択、凝固剤の量が重要である。
【0023】
凝固剤としては蟻酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、硫酸等のカルシウム、亜鉛、バリウム、鉛、マグネシウム、カドミウム、アルミニウム等の塩や硫酸カリウム、クエン酸カリウム、硼砂、硼酸を使用できる。
【0024】
本発明で用いられる顔料は無機顔料として軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、ゼオライト、珪藻土、水酸化マグネシウム等の白色顔料を用いることができる。本発明においては、高い表面光沢度及び優れたインク吸収性を付与するために、シリカ及びアルミナを使用するのが好ましい。シリカは粒子径が大きくなると、表面の平滑性が低下し、最表面において光の散乱が起きやすく、光沢度が低下するため、平均粒子径は1μm以下が好ましい。さらに好ましくは、0.005〜0.3μmが好ましい。また無機顔料と併用して有機顔料を添加することも可能である。
【0025】
本発明で用いられる結着剤はポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、ポリエチレンイミド系樹脂、ポリビニルピロヒドリン系樹脂、ポリアクリル酸またはその共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、スチレン‐ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート‐ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス類、エチレン‐酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス類の樹脂類が例示され、単独または併用して用いられる。特に好ましい結着剤はポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、カゼインであり、これら単独または上記樹脂類と併用して用いられる。結着剤の使用量は、記録媒体の印字適性、インク受容層の強度、塗料液性を考慮して決定される。一般的なキャストコート紙の製造においては、結着剤は顔料重量に対し10〜400重量部を添加されるが、本発明では、塗工層中のポリビニルアルコールの含有量は、前記顔料100重量部に対して1〜20重量部であり、好ましくは5〜20重量部、更に好ましくは10〜20重量部の範囲で添加される。結着剤を顔料重量に対し20重量部を超えて添加すると塗布層の多孔性が減少し、記録時のインク吸収性を極端に低下させる。
【0026】
本発明では、必要最小限度の結着剤のみを添加してキャストコート層の多孔質性を確保し、しかも満足する成膜性及び高い表面光沢のあるインク受容層を得ることが出来るが、これには塗工液中に高沸点有機溶媒の含有が不可欠である。本発明における光沢面形成は、後述するように塗工層が湿潤状態にあるうちに塗工層を加熱された鏡面仕上げの金属面を有するキャストドラムに塗工層表面を圧着することで行われるが、高沸点有機溶媒は、塗工層を急激に加熱乾燥する際の塗工層内の突沸を抑制し、塗工層表面荒れを抑制する。したがって、必要最小限度の結着剤を用いた場合においても塗工層表面を容易に光沢面とすることが可能となる。
【0027】
使用する高沸点有機溶媒としては、沸点が165℃以上のものを使用する。更に好ましくは、沸点が180℃以上の高沸点有機溶媒を使用することである。例えば、ジメチルアセトアミド(165℃)、ブチルセロソルブ(171.2℃)、2−エチルヘキサノ−ル(184.7℃)、ベンジルアルコール(205.8℃)、アセト酢酸エチル(180.8℃)、エチレングリコール(198℃)、トリクレジルホスフェート(240〜260℃)、流動パラフィン(300℃〜)、エチレングリコールモノアセテート(182℃)、エチレングリコールジアセテート(191℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(189℃)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(197.8℃)、N‐メチルピロリドン(202℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(217.4℃)、エチレングリコールモノへキシルエーテル(208.3℃)等が挙げられ、これら単独または上記高沸点溶媒類と併用して用いられる。流動パラフィン又はエチレングリコールを含有させることがより好ましい。
【0028】
本発明において、上記に示したような高沸点有機溶媒の含有量は塗工液中の顔料に対して0.01〜20重量部の範囲が好ましい。含有量が20重量部より多くなると、乾燥速度が著しく低下するため、インク受容層の成膜性及び光沢度の低下を招くおそれがある。含有量が0.01重量部より少ないと、表面のひび割れが生じ、光沢度の低下を招くおそれがある。
【0029】
本発明において、上記の、顔料、結着剤類、高沸点有機溶媒以外にカチオン性の高分子電解質を添加することが好ましい。カチオン性高分子電解質を添加することで、インク中に使用されている染料中のアニオン成分と反応し水に不溶な塩を形成することから、記録画像の耐水性が向上する。このようなカチオン性高分子電解質としてはポリエチレンイミン、エピクロルヒドリン変性ポリアルキルアミン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムハライド、ポリジアクリルジメチルアンモニウムハライド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート塩酸塩、ポリビニルピリジウムハライド、その他第4級アンモニウム塩類及びポリアミン等が用いられる。カチオン性高分子電解質はインク受容層を構成する塗工液または凝固液に添加することができる。添加量は全結着剤重量に対し1〜50重量%の範囲で使用される。とくに好ましい添加範囲は5〜30重量部である。
【0030】
その他の添加剤としては、必要に応じて消泡剤、潤滑剤、分散剤、湿潤剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤等を使用できる。
【0031】
本発明のインク受容層を形成する塗料の塗工法としてはエアーナイフ、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等の公知の塗工機が用いられる。塗工量は固形分換算で5〜40g/m2、好ましくは7〜30g/m2の範囲が好ましい。塗工量が40g/m2を超えるとインク受容層表面に亀裂が入りやすく、塗工量が5g/m2より少ない場合には十分な光沢面が形成しづらい。
【0032】
発明における光沢面形成は、基材の片面又は両面に上記コーターで顔料及び結着剤を含有する塗料を塗工した後、凝固液を塗工面に付与して塗料を凝固させ、塗工層が湿潤状態にあるうちに塗工層を加熱された鏡面仕上げの金属面を有するキャストドラムに表面を圧着することで行われる。この工程は本発明の高い光沢度を有し、かつインク吸収性能の高いインク受容層を形成する際に重要な工程である。使用する凝固剤については上記した通りであるが、加えて凝固剤を付与してキャストドラムに到達するまでの時間、キャストドラム温度、圧着する際の圧力、ライン速度を調整することでより光沢度の高いインク受容層表面が形成できる。これらの諸条件については、使用する設備、塗料に応じて最適条件を求めることで適正化する必要がある。
【0033】
本発明で使用する基材としては、通常の上質紙、中質紙、白板紙等の紙基材が用いられる。燃料としてリサイクルされる場合を考慮し原料パルプとしては塩素含有量の少ないECFパルプまたはTCEパルプの使用が望ましい。キャストコート時における塗料の過度の浸透を押さえるために、サイズプレスで澱粉、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を塗工した原紙を使用することが好ましい。
【0034】
また、基材上に顔料と接着剤からなる下塗り層を設け、この上に本発明のキャストコート層を設けることもできる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」及び「%」は特に明示しない限り固形重量部および固形重量%を示す。
【0036】
(実施例1)顔料として平均粒子径0.3μmであるシリカ(サイロジェット703C:グレースジャパン(株)製の商品名)の分散液(固形分として100重量部)に対し結着剤としてポリビニルアルコール(PVA217:(株)クラレ製)20重量部、高沸点有機溶媒としてエチレングリコール(198℃)0.05重量部、インク定着剤としてカチオン性高分子電解質(パピオゲンP−105:センカ(株)製)10重量部からなる固形分15重量%の塗料を調製した。凝固剤として硼砂を水に溶解した凝固液を調整した。酸化澱粉で表面処理した坪量160g/m2の上質紙に上記塗料をロールコーターで塗工量15g/m2になるよう塗布し、次いで凝固剤量がポリビニルアルコール重量に対し10重量%になるよう塗布したのち、得られた塗工層表面が湿潤状態にあるうちに表面温度100℃のキャストドラムに圧着し、塗工層表面が高い光沢を有するように、圧着時圧力、ラインスピードを調整し、インクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0037】
(実施例2)実施例1においてエチレングリコールの含有量が顔料に対して15重量部である以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0038】
(実施例3)実施例1において高沸点有機溶媒として流動パラフィン(300℃〜)を使用し、その含有量が顔料に対して0.05重量部である以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0039】
(実施例4)実施例3において流動パラフィンの含有量が顔料に対して15重量部である以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0040】
(実施例5)実施例1において高沸点有機溶媒としてジメチルアセトアミド(165℃)を使用し、その含有量が顔料に対して0.05重量部である以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0041】
(実施例6)実施例1において顔料が平均粒子径13nmのアルミナ(Aluminum Oxide C:日本アエロジ―ル(株)製の商品名)である以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0042】
(実施例7)実施例6において高沸点有機溶媒として流動パラフィンを使用し、その含有量が顔料に対して0.05重量部である以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0043】
(比較例1)実施例1においてエチレングリコールの含有量が顔料に対して0.005重量部であること以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0044】
(比較例2)実施例1においてエチレングリコールの含有量が顔料に対して25重量部であること以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0045】
(比較例3)実施例1において低沸点有機溶媒としてメチルアルコール(64.7℃)を使用し、その含有量が顔料に対して0.05重量部であること以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0046】
(比較例4)実施例1において低沸点有機溶媒として酢酸ブチル(126.1℃)を使用し、その含有量が顔料に対して0.05重量部であること以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0047】
(比較例5)実施例1において結着剤の含有量が顔料に対して300重量部であること以外は実施例1に記載した通りの条件でインクジェット記録用光沢紙を作製した。
【0048】
上記インクジェット記録用光沢紙について以下の試験を実施し、結果を表1に示した。
【0049】
(1)表面のひび割れ
インクジェット記録用光沢紙の表面のひび割れを目視で判定し下記の基準で評価した。
○:ひび割れが発生していない。
△:ひび割れがわずかに発生している。
×:ひび割れが発生している。
【0050】
(2)表面の光沢性
インクジェット記録用光沢紙の表面の光沢性を目視で観察し、下記の基準で判定した。
◎:非常に良好な光沢性を示す。
○:良好な光沢性を示す。
△:やや光沢性が低い。
×:光沢性が低い。
【0051】
(3)インク吸収性
インクジェットプリンター(エプソン社製PM770C)による印字部のインク吸収性を目視にて観察し、下記の基準で判定した。
○:吸収性が良い。
△:やや吸収性が悪い。
×:吸収性が悪い。
【0052】
(4)混色にじみ(ブリーディング)
インクジェットプリンター(エプソン社製PM770C)を用いて4色のインク(ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー)をそれぞれ混ざらないように近接して印字し、混色にじみを目視によって観察し、下記の基準で判定した。
○:混色にじみがない。
△:やや混色にじみが発生する。
×:混色にじみが著しい。
【0053】
【表1】
【0054】
表1を参照すると、比較例1はエチレングリコールの含有量が少ないため、表面のひび割れが発生し、表面の光沢性も悪かった。比較例2は、エチレングリコールの含有量が多過ぎたため、乾燥速度が著しく低下して、インク受容層の成膜性が悪化し、表面のひび割れ、表面の光沢性、インク吸収性、混色にじみについてどれも充分な特性が得られなかった。比較例3は、高沸点有機溶媒の換わりに低沸点有機溶媒を使用したため、表面のひび割れが発生し、表面の光沢性も不充分であった。比較例4は、同様に高沸点有機溶媒の換わりに低沸点有機溶媒を使用したため、表面のひび割れが発生し、表面の光沢性も不充分であった。比較例5は、結着剤の含有量が多過ぎたため、インク吸収性及び混色にじみの特性が悪かった。
【0055】
これに対して、表1に示す結果から明らかなように、本発明のインクジェット記録用光沢紙は、必要最低限の結着剤の添加量でもひび割れがなく、優れた表面光沢性を有しかつインク吸収性、耐にじみ性に優れることがわかる。
【発明の効果】
【0056】
請求項1記載の発明では、キャストコート法によるインクジェット記録用光沢紙において、塗工液中及び塗工層中に高沸点有機溶媒を含有させ、その含有量を調整することで、塗工層を急激に加熱乾燥する際の塗工層内の突沸を抑制して塗工層表面荒れを抑制し、かつ塗工層の表面のひび割れによる光沢度の低下を防止する。上記の高沸点有機溶媒の役割により、表面光沢性とインク吸収性という相容れない性質の両立を解決し、インク吸収性、耐にじみ性に優れ、かつひび割れがなく、表面光沢性に優れたインクジェット記録用光沢紙を提供することができた。
【0057】
また、必要最小限の結着剤の添加であっても、より優れたインク吸収性、耐にじみ性に優れ、かつひび割れがなく、表面光沢性に優れたインクジェット記録用光沢紙を提供することができた。
【0058】
また、高沸点有機溶媒の沸点を165℃以上とすることで前記塗工層内の突沸を防止することができた。
【0059】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、高沸点有機溶媒に、入手容易で沸点が高い流動パラフィン又はエチレングリコールを含有させることで、前記塗工層内の突沸を防止することができた。
【0060】
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、顔料としてアルミナを含有させることで、より高い表面光沢度及び優れたインク吸収性を付与させることができた。
【0061】
請求項4記載の発明では、請求項1、2又は3記載の発明において、顔料として平均粒子径1μm以下のシリカを含有させることで、表面の平滑性を与え、最表面における光の散乱を防止して、高い表面光沢度及び優れたインク吸収性を付与させることができた。
Claims (4)
- 基材の片面又は両面に形成した塗工層が高光沢を有するキャストコート紙であって、
キャストコート法の光沢面を形成する方法が凝固法であり、
該塗工層は、顔料、結着剤としてポリビニルアルコール、該結着剤と凝固し得る凝固剤として硼砂、及び沸点が165℃以上である高沸点有機溶媒を含有し、かつ該塗工層中の該高沸点有機溶媒の含有量は該顔料100重量部に対して0.01〜20重量部であり、前記塗工層中の前記ポリビニルアルコールの含有量は、前記顔料100重量部に対して1〜20重量部であることを特徴とするインクジェット記録用光沢紙。 - 前記高沸点有機溶媒は、流動パラフィン又はエチレングリコールを含有することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用光沢紙。
- 前記顔料は、アルミナを含有することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット記録用光沢紙。
- 前記顔料は、平均粒子径1μm以下のシリカを含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載のインクジェット記録用光沢紙。
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