JP3767160B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクを用いて記録を行うインクジェット記録用紙に関し、特に低コストで製造可能であってインク溢れが少なく、高濃度かつ高画質で写真の風合いが得られるインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。この方式で従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インクおよび装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、さまざまな分野に急速に普及している。
【0003】
このインクジェット記録方式で使用される記録用紙としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が一般的には要求されている。
【0004】
インクジェット記録用紙としては従来から種々の記録用紙が用いられている。例えば、普通紙、紙支持体上に親水性バインダーと無機顔料から成る層を塗設した各種の塗工紙(アート紙、コート紙、キャストコート紙等)、更にはこれらの紙、透明または不透明の各種のプラスチックフィルム支持体あるいは紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した各種の支持体上に記録層としてインク吸収性層を塗設した記録用紙が用いられている。
【0005】
上記インク吸収性層としては、親水性バインダーを主体に構成されるいわゆる膨潤型のインク吸収性層と、空隙層を記録層中に持つ空隙型のインク吸収層に大きく分けられる。
【0006】
膨潤型インク吸収性層の利点はインク溶媒(水及び高沸点有機溶媒)が完全に蒸発した後では非常に高い光沢性と高い最高濃度が得られる点にあるが、反面、インク吸収速度が後述する空隙型記録用紙に比べて遅く、高インク領域でビーディング等を起こしてザラツキの発生による画質が低下しやすい問題があり、更にインク溶媒、特に高沸点有機溶媒の蒸発が極めて遅いために印字後しばらくは親水性バインダー中に高沸点有機溶媒が残存して親水性バインダーが膨潤した湿潤状態に長期間置かれることに伴う問題がある。
【0007】
具体的には印字後数時間、場合により数日間は印字表面を強く擦ったり紙などを重ねることができない状況にある。
【0008】
一方、空隙型のインク吸収性層は、記録層中に空隙を有するために高いインク吸収性を示す。このため、膨潤型に比較して高インク領域における画像のビーディングが起こりにくく高濃度域において画質の劣化が少ない。
【0009】
また、空隙型のインク吸収性層は空隙容量がインク量に対して十分あれば、空隙構造中に有機溶媒が残存していたとしても、少なくとも表面は印字直後に見かけ上乾いた状態になり、表面に触れたりプリント同士を重ね合わせること等も一応可能となる。
【0010】
この種のインク吸収性層としては、比較的透明性の高い層が形成される点から低屈折率(特に約1.6以下の屈折率が好ましい)でしかも粒径の小さな微粒子(特に200nm以下が好ましい)が好ましく用いられ、中でもかかる条件を満たすシリカ微粒子が空隙を効率良く形成し、しかも比較的高い光沢性が得られ、高い最高濃度の画像が得られることなどから特に好ましく用いられる。
【0011】
そのような粒径の小さな微粒子をインクジェット記録用紙に使用する従来技術として、例えば、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−219084号、特開平2−274857号、同4−93284号、同5−51470号、同7−179029号、同7−137431号、同8−25800号、同8−67064号および同8−118790号等の各公報に記載されているコロイダルシリカ、特公平3−56552号、特開昭63−170074号、特開平2−113986号、同2−187383号、同7−276789号、同8−34160号、同8−132728号、及び同8−174992号の各公報に記載されている気相法により合成された微粒子シリカ、例えば特公平3−24906号、同3−24907号、同6−98844号、同7−2430号、特開昭60−245588号、特開平2−43083号、同2−198889号、同2−263683号、同8−112964号、同8−197832号および同8−258397号等に記載されている多孔質アルミナまたはその水和物、例えば、特開昭57−120486号、同57−129778号、同58−55283号、同61−20792号、同63−57277号、特開平4−250091号、同3−251487号、同4−250091号、同4−260092号および同7−40648号等に記載された微粒子炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0012】
上記空隙型のインク吸収層を支持体上に有する記録用紙は、特に高い光沢性、高空隙率、高い最高濃度が得られる点で優れており、しかも比較的高い平面性の支持体を使用した場合に高い光沢面を持つ記録用紙が得られる。
【0013】
ところで、カラーインクジェット記録で得られる画質を写真に近づけようとする試みが近年数多く行われている。
【0014】
その中でドットに関する画質向上の最大のポイントはドット1個1個が肉眼で識別できないようにすることであり、そのためにインクを小液滴化すること、あるいは特にハイライト部でドットの反射濃度を低くしドットの識別を困難にするため、低染料濃度のインクを併用すること等がポイントとなる。
【0015】
このために打たれるインクの量は増加の傾向にあり、インクの吸収容量が不足し溢れることによる、画質や乾燥性の低下が見られるようになってきた。しかし、そのため空隙型のインク吸収性層を厚くすると、その皮膜の特性からクラックが発生しやすくなったり、乾燥能力から塗布スピードを低下したりして、製造コストが増大する等の課題が発生した。
【0016】
記録用紙として普通紙、上質紙、あるいはコート紙やキャストコート紙等を使うと支持体中にインクが浸透するため、インクの吸収容量としては満足するものもあるが、印字部分にインクの吸収・乾燥に起因するうねりが発生して印字品質が大きく低下したり、光沢が低下したり、染料の支持体への浸透で最高濃度が出にくく鮮明な画像が得にくいという欠点があった。
【0017】
本発明は、水性インクを用いて記録を行うインクジェット記録用紙に関し、特に低コストで製造可能であり、高画質で写真の風合いが得られるインクジェット記録用紙に関する。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実態に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、支持体上に空隙層を記録層として有する記録用紙において、印字部にうねりの発生がなく、高いインク吸収性が得られ、低コストで製造可能であり、かつ、高光沢、高濃度画質の記録用紙を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記構成により達成される。
【0020】
1.厚さが160μm以上、300μm以下の吸水性支持体上に、平均粒径が100nm以下であって、粒径30nm以下の1次粒子の2次凝集粒子である気相法により合成されたシリカと、ポリビニルアルコールおよびカチオン性ポリマー媒染剤を有し、該気相法により合成されたシリカ/ポリビニルアルコールが重量比で3〜8であり、硬膜剤により硬膜されている、乾燥膜厚が5〜20μmのインク吸収層を空隙層として有する記録紙の、インクとしてAcid Red52の2%水溶液を用いた時のブリストウ法により測定した接触時間が0.08秒、2.0秒における液体転移量をそれぞれ、Q1,Q2としたとき、以下の条件を満たすことを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0021】
1)Q2が50ml/m2以下、かつ
2)Q1/Q2が0.5以上
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明のインクジェット記録用紙において、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87に記載のブリストウ法(なお、インクとしてAcid Red52の2%水溶液を用いる)により測定した接触時間が0.08秒、2.0秒における液体転移量それぞれQ1、Q2は、Q2が50ml/m2以下、かつQ1/Q2>0.5以上1.0以下(ブリストウ法からして原理的に1.0以下)である。Q1はインクの初期の転移量を表し、Q2は記録用紙の空隙容量を表す。Q1/Q2が0.5未満の場合、初期のインクの吸収速度が遅いため、記録用紙上で液滴がはじかれてムラになる、異なる色の境界領域において混色するなどの問題により画質が低下する。Q2が50ml/m2以上では記録用紙のうねり発生の問題が生じてしまう。一方、下限については本発明の目的を達成する上から20ml/m2以上が好ましい。
【0028】
本発明のインクジェット記録用紙の吸水性支持体としては、所望の吸水性を有する物、例えば、一般の紙、合成紙等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れ、かつコスト的にも優れるために最も好ましい。以下に紙支持体について説明する。
【0029】
紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ、等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。また、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することが出来る。
【0030】
紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。サイズ剤としては高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等が、顔料としては炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン等が、紙力増強剤としてはスターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等が、定着剤としては硫酸バンド、カチオン性高分子電解質等が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0031】
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。また、必要に応じて抄紙段階または抄紙後にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理をしたり、各種コート処理をしたり、カレンダー処理したりすることも出来る。
【0032】
上記支持体の厚さは種々検討した結果、写真の風合いを出すためには160μm以上が必要で、好ましくは180μm以上であり、160μmより薄いと印字部分がうねり状になりやすく印字品質が低下することがある。上限は、取り扱いの点から300μm以下である。
【0033】
インク吸収層の乾燥膜厚は一般に被膜の空隙率や要求される空隙量により決まるが、本発明のインクジェット記録用紙では5μm以上、20μm以下であることが必要である。5μmより小さいと、光沢性や最高濃度が低くなることがあり、20μmより大きくすると、空隙層の塗布後の乾燥時に皮膜が収縮する過程で、皮膜のクラックが発生しやすくなり、光沢性や平面性が劣化したり、また、乾燥膜厚を上げるためには塗布量を多くすることが必要で、乾燥負荷が大きくなり生産性が悪くなるという欠点がある。
【0034】
本発明においては、支持体上に親水性バインダーと微粒子を含有する空隙層をインク吸収層として少なくとも1層有する。
【0035】
上記微粒子としては、低屈折率で粒径の小さな微粒子が好ましく、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ベーマイト水酸化アルミニウムまたはその水和物等の微粒子が挙げられるが、好ましくはシリカ微粒子である。
【0036】
シリカ微粒子としては、本発明の請求項3記載の発明に示したように、気相法により合成されたシリカ微粒子を用いることが、本発明の目的を特に効果的に達成するために好ましい。気相法により合成されたシリカ微粒子とは、ハロゲン化珪素を高温で気相法加水分解によって得られるもの、ケイ砂とコークスを電気炉でアーク法により加熱還元気化しこれを空気酸化して得られるもの等が知られている。本発明においては、気相法により合成されたシリカであればいかなる製造方法のものを用いてもよい。
【0037】
本発明で用いる微粒子の平均粒径は、その1次粒子として30nm以下である。また、該微粒子は、1次粒子のままでバインダー中に均一に分散された状態で用いられることも、また2次凝集粒子を形成してバインダー中に分散された状態で用いられてもよいが後者がより好ましい。そして、粒径30nm以下の1次粒子の2次凝集粒子を用いると、本発明の効果をより顕著に発揮できる。
【0038】
なお、該微粒子が気相法により合成されたシリカ微粒子である場合には、その1次粒子の粒径が、3〜25nmであることが好ましく、更には特に6〜20nmであることが好ましい。
【0039】
上記において微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定したときのその直径で表したものである。
【0040】
本発明の記録用紙において、上記微粒子と組み合わせて用いられる親水性バインダーとしては、ポリビニルアルコールおよびその誘導体を用いる。また、用いても良いバインダーとして、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ゼラチン、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、プルラン、カゼイン、デキストラン等を挙げることができるが、インクが含有する高沸点有機溶媒や水に対する膨潤性や溶解性が低い親水性バインダーを使用するのが印字直後の皮膜強度の点から好ましい。
【0041】
本発明で用いるポリビニルアルコールまたはその誘導体は、中でも平均重合度が1000以上、最も好ましくは平均重合度が2000以上のポリビニルアルコールまたはその誘導体である。また、ケン化度は70〜100%が好ましく、特に80〜100%が最も好ましい。
【0042】
上記親水性バインダーは2種以上併用することもできるが、この場合であってもポリビニルアルコールまたはその誘導体を少なくとも50重量%以上含有しているのが好ましい。
【0043】
上記ポリビルアルコール誘導体としては、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコールまたはノニオン変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0044】
カチオン変性ポリビニルアルコールは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0045】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0046】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0047】
カチオン変性ポリビニルアルコールの重合度は通常500〜4000、好ましくは1000〜4000が好ましい。
【0048】
また、酢酸ビニル基のケン化度は通常60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0049】
アニオン変性ポリビニルアルコールは例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号、および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0050】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0051】
本発明の記録用紙の空隙層の親水性バインダーに対する無機微粒子の比率は高い空隙率と高い皮膜強度を得ることができるという点から、重量比で3倍以上であることが好ましい。3倍以上であれば十分なインク吸収容量が得られる高空隙率が達成でき、また、インクジェット記録後の十分な皮膜強度が得られる。この点から、更に好ましくは、無機微粒子の親水性バインダーに対する重量比は6以上である。
【0052】
一方、空隙層の塗布後の乾燥時に皮膜が収縮する過程で、皮膜の剛性が高すぎるために、支持体表面の微少なうねりや凹凸により局所的に皮膜に微小なクラックが入ることがあり、本発明インクジェット記録用紙の親水性バインダーに対する無機微粒子の比率の上限は、概ね8以下であることが好ましい。
【0053】
本発明の記録用紙の空隙層中には前記親水性バインダーと架橋し得る硬膜剤を添加するのが空隙層の造膜性の改良、皮膜の耐水性、および印字後の皮膜強度を改善する点で好ましい。そのような硬膜剤としてはエポキシ基、エチレンイミノ基、活性ビニル基等を含有する有機硬膜剤、クロムみょうばん、ほう酸、あるいはほう砂等の無機硬膜剤が挙げられる。
【0054】
親水性バインダーがポリビニルアルコールである場合には特に、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ系硬膜剤、ほう酸またはその塩、ほう砂が好ましい。ほう酸としてはオルトほう酸だけでなく、メタほう酸や四ほう酸等も使用出来る。
【0055】
上記硬膜剤の添加量は上記親水性バインダー1g当たり1〜200mg、好ましくは2〜100mgである。
【0056】
本発明の記録用紙の空隙層中にはカチオン性ポリマー媒染剤を添加するのが、画像の耐水性や耐滲み性を改良する点から必要である。また、インク吸収層以外に支持体もインク吸収が可能で、かつ、支持体の厚みの大きい本発明の場合、インク中の染料をインク吸収層に媒染するという点から見ても好ましい。
【0057】
本発明に用いられるカチオン性ポリマー媒染剤としては第1級〜第3級アミノ基および第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマー媒染剤が用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマー媒染剤が好ましい。
【0058】
好ましいカチオン性ポリマー媒染剤は下記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0059】
以下に好ましく用いられる第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの具体例を表す。
【0060】
(MA−1〜11)
【0061】
【化1】
【0062】
【化2】
【0063】
上記モノマーと共重合し得るモノマーの具体例を以下に示す。
【0064】
(MB−1〜24)
【0065】
【化3】
【0066】
【化4】
【0067】
以下に好ましく用いられる第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマー媒染剤の具体例を示す。(数字はモノマーのモル百分率を示す)
(Mor−1〜15)
【0068】
【化5】
【0069】
【化6】
【0070】
【化7】
【0071】
カチオン媒染剤は水溶性のポリマー媒染剤であることも、また、乳化重合で合成されたラテックス粒子であることもできるが、本発明の場合には水溶性のポリマー媒染剤が好ましい。
【0072】
水溶性カチオン媒染剤の中でも、平均分子量が5万以下であるカチオン媒染剤が、無機微粒子と凝集が少ないのでカチオンサイトが効果的に耐水性や耐湿性の改良に寄与し、また、光沢性が劣化しにくいので好ましい。
【0073】
好ましい平均分子量は3万以下である。平均分子量の下限は特に制約はないが耐水性や耐湿性の観点より大凡2000以上である。
【0074】
ここで平均分子量は数平均分子量のことであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求めたポリスチレン換算値を言う。
【0075】
また、上記媒染剤の使用量の上限は特に規定されないが、空隙容量を確保し、また無用なカールを抑制する点から3g/m2以下が好ましい。本発明を達成するために必要な下限は乾燥膜厚にもよるが0.3g/m2以上である。
【0076】
本発明のインクジェット記録用紙のインク受容性層側の任意の層中には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。
【0077】
例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0078】
本発明の記録用紙をインクジェット用記録用紙として使用する場合には、インク吸収層における空隙層の空隙容量として記録用紙1m2当たり5〜15mlになる範囲に調整されることが好ましい。
【0079】
空隙容量とは、空隙層の乾燥膜厚から空隙層中のバインダーや各種の充填剤等の固形分の容量の総量を差し引いた値である。例えば、無機微粒子(比重2.0)6g/m2と親水性バインダー(比重1.0)1g/m2、カチオン性ポリマー媒染剤(比重1.0)1g/m2からなる空隙層が、乾燥膜厚10μmであるときその空隙容量は下式の様にして5ml/m2と求められる。
【0080】
10−(6÷2.0)−(1÷1.0)−(1÷1.0)=5
本発明の記録用紙は、前記した空隙層を有する記録層を2層以上有していても良く、この場合、2層以上の空隙層の無機微粒子の親水性バインダーに対する比率はお互いに異なっていてもよい。
【0081】
また、上記空隙層以外に、空隙を有さず、インクに対して膨潤性の層を有していても良い。
【0082】
このような膨潤層は空隙層の下層(支持体に近い側)あるいは空隙層の上層(支持体から離れた側)に設けても良く、更には空隙層が2層以上有る場合には空隙層の間に設けられても良い。かかる膨潤性層には通常親水性バインダーが用いられ、ここに用いられる親水性バインダーの例としては、前記空隙層に用いられる親水性バインダーが挙げられる。
【0083】
本発明の記録用紙のインク吸収性層を有する側と支持体に対して反対側には、カール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるために種々の種類のバック層を設けてもよい。
【0084】
以上の構成からなる本発明の記録用紙は例えば以下の方法によって得ることが出来る。まず、前記の空隙層形成用の材料を適当な溶媒、例えば水、アルコールあるいは各種有機溶媒に添加して塗布液を調製し、これを前記吸水性支持体に塗布し、乾燥させて空隙層とする。
【0085】
上記空隙層を支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0086】
塗布後の乾燥は、いったん冷却して塗布液の粘度を増大させるか、ゲル化させてから温風を吹き付けて乾燥させるのが好ましい。
【0087】
塗布液温度は通常25〜60℃であり、30〜50℃が好ましい。冷却は塗布後の膜面温度が20℃以下、更には5〜15℃になるようにするのが好ましく、その後の乾燥は20〜60℃の風を吹き付けて乾燥するのが均一な膜面を得る点から好ましい。
【0088】
塗布する湿潤膜厚は目的とする乾燥膜厚によって変わるが、概ね50〜300μm、好ましくは70〜250μm、塗布速度は乾燥能力に大きく依存するが、概ね20〜200m/分である。乾燥時間は概ね2〜10分である。
【0089】
本発明のインクジェット記録用紙におけるインク記録面側の塗布固形分の量は概ね5〜40g/m2が好ましく、10〜30g/m2がより好ましい。
【0090】
次に本発明の記録用紙をインクジェット記録用紙として使用する場合の水性インクについて以下に説明する。
【0091】
水性インクは、通常は水溶性染料及び液媒体、その他の添加剤から成る記録液体である。水溶性染料としてはインクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料が使用できるが直接染料、または酸性染料が好ましい。
【0092】
水性インクの溶媒は水を主体としてなるが、インク液が乾燥した際に染料が析出してノズル先端やインク供給経路での目詰まりを防止するために、通常沸点が約120℃以上で室温で液状の高沸点有機溶媒が使用される。高沸点有機溶媒は水が蒸発した際に染料などの固形成分が析出して粗大析出物の発生を防止する作用を持つために水よりはるかに低い蒸気圧を有することが要求される一方、水に対して混和性が高い必要がある。
【0093】
そのような目的での高沸点有機溶媒としては高沸点の有機溶媒が通常多く使用されるが、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール(平均分子量が約300以下)等のアルコール類が挙げられる。また、上記した以外にも、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等も使用できる。
【0094】
これらの多くの高沸点有機溶媒の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0095】
水性インクが含有するその他の添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、及び防錆剤、等が挙げられる。
【0096】
水性インク液は記録用紙に対する濡れ性を良好にするため及びインクジェットノズルからの吐出を安定化させる目的で、25℃において、25〜50dyne/cm、好ましくは28〜40dyne/cmの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。
【0097】
また、水性インクの粘度は通常25℃において2〜8cp、好ましくは2.5〜5cpである。
【0098】
水性インクのpHは通常4〜10の範囲である。
【0099】
インクノズルから吐出される最小インク液滴としては1〜30×10-3nlの容量の場合、記録紙上で約20〜60μmの直径の最小ドット径が得られるので好ましい。このようなドット径で印字されたカラープリントは高画質画像を与える。好ましくは2〜20×10-3nlの容積を有する液滴が最小液滴として吐出される場合である。
【0100】
また、前記水性インクが、少なくともマゼンタおよびシアンについて、各々濃度が2倍以上異なる2種類のインクで記録する方式において、ハイライト部では低濃度のインクが使用されるためにドットの識別がしにくくなるが、本発明はかかる記録方式を採用した場合も適用できる。
【0101】
インクジェット記録方法において、記録方法としては、従来公知の各種の方式を用いることができ、その詳細はたとえば、インクジェット記録技術の動向(中村孝一編,平成7年3月31日,日本科学情報株式会社発行)に記載されている。
【0102】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0103】
実施例1
《記録用紙の作製》
厚さ200μmの吸水性紙支持体・支持体1の記録面側に、下記の構成による塗布液−1を調製し、湿潤膜厚が80μmになるようにして塗布した後、皮膜温度が15℃以下になるように30秒以内に急速に冷却し、後、50℃の風で3分間乾燥させて記録用紙−1とした。このようにして形成される空隙層の乾燥膜厚は15μmであった。
【0104】
塗布液−1
微粒子シリカ分散液(1)※1 450ml
カチオン性ポリマー媒染剤Mor−1(平均分子量10000) 12g
エタノール 35ml
n−プロパノール 10ml
酢酸エチル 5ml
ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製PVA203) 0.1g
ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製PVA235) 12g
ホウ酸 2.0g
ホウ砂 1.0g
※1微粒子シリカ分散液(1)の調製:
日本アエロジル株式会社製アエロジル200(平均1次粒径12nm気相法シリカ)の80gを純水400ml中に添加し、乳化分散機で分散した後、全量を純水で450mlに仕上げる。
【0105】
比較例として、吸水性紙支持体・支持体1の厚さを135μm、285μmの厚さ変えた支持体を用いた他は記録用紙−1と同様にして記録用紙−2、−3をそれぞれ作製した。尚、更に支持体1そのものを記録用紙−4として(空隙層を設けてなく、紙そのものではあるが、比較として記録用紙として)比較として評価テストに供した。
【0106】
得られた記録用紙について以下の項目について評価した。
【0107】
(1)液体転移量
J.TAPPI紙パルプ試験方法No.51−87紙および板紙の液体吸収性試験方法(ブリストゥ法)に記載された方法で、熊谷理機工業株式会社製、Bristow試験機II型(加圧式)を使用し、接触時間0.08秒間における転移量(ml/m2)をQ1、接触時間2.0秒間における転移量(ml/m2)をQ2として求めた。尚、J.TAPPIでは、押付圧0.1MPa(1.02kg/cm2)が標準であるが、吸収性の良好な紙はこの荷重では測定中に紙が破れてしまうため、押付圧を0.05Mpa(500g/cm3)とした他は、上記方法に準じた。また、用いたインクはダイワ化成製Acid Red52の2%水溶液である。
【0108】
(2)光沢度
日本電色工業株式会社製変角光度計(VGS−101DP)で75度鏡面光沢を測定した。
【0109】
(3)最高濃度
セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンターMJ5000Cを用い、イエロー、マゼンタおよびシアンのベタ印字を行い、反射濃度をそれぞれ青、緑、赤の単色光にて測定した。
【0110】
(4)印字後のうねり
うねりは印字後のシート面を肉眼により下記基準で判定した。品質上問題にならないのはA及びBである。
【0111】
A:うねりは判らず、美観を損なわない
B:うねりは小さく、美観を損なうことはない
C:うねりは大きく、美観を損なう
(5)画質
インク吸収速度による印字後の画質について、シート面を肉眼により下記基準で判定した。
【0112】
A:画質にムラがない
B:画質に目立たない程度のムラが生ずる
C:画質にムラが生じて、美観を損なう
評価結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1から明らかなように、支持体の厚さが本発明の範囲であれば吸収速度、最高濃度、光沢度が良好なことがわかる。また、空隙層を設けていない記録用紙−4については吸収容量が多く記録用紙とした支持体の厚さ方向へのインク染料の拡散が多くなり最高濃度が大きく低下し、印字後のうねりが大きいものとなった。また、空隙層を設けていないため、光沢も得られなかった。
【0115】
次に、塗布液−1の微粒子シリカを1次粒子平均粒径30nmの気相法シリカ(日本アエロジル株式会社アエロジル50)に変えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−5を作製した。
【0116】
比較例として、塗布液−1の微粒子シリカ分散液を、平均粒径300nmのシリカゾル(日産化学工業株式会社製MP−3040、固形分濃度40%)に変えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−6を作製した。
【0117】
評価結果を表2に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
表2から明らかなように、微粒子の粒径が大きい記録用紙−6では光沢度が大きく劣化しており、また最高濃度が大きく低下した。
【0120】
実施例2
下記の構成の塗布液を調製し用いる他は、実施例1の記録用紙−1と同様の製法で記録用紙−7を作製した。
【0121】
塗布液−2
微粒子シリカ分散液(1)※1 450ml
カチオン性ポリマー媒染剤Mor−1(平均分子量10000) 16g
エタノール 35ml
n−プロパノール 10ml
酢酸エチル 5ml
ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製PVA203) 0.1g
ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製PVA235) 24g
ホウ酸 2.0g
ホウ砂 1.0g
次に、塗布液−2のポリビニルアルコール(PVA235)の量を32g、7.9gに変える以外は記録用紙−7と同様にして記録用紙−9、10をそれぞれ作製した。
【0122】
評価結果を表3に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
表3から明らかなように、シリカ/PVA重量比が2.5になると(記録用紙−9)、空隙容量、吸収性はやや低下し、逆に10になると(記録用紙−10)、特に塗布後のひび割れの発生がやや増加が見られたが、本発明の記録用紙(記録用紙−7および8)は、いずれも十分な空隙容量とインク吸収性が得られ、最高濃度、光沢度も良好で、高画質な画像を形成することが可能となる。
【0125】
次に、乾燥膜厚が、3、10、20、35μmになるようにする以外は、塗布液−2を用いて記録用紙−7(乾燥膜厚15μm)と同様にして記録用紙−11、12、13、14をそれぞれ作製した。
【0126】
評価結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
【0128】
表4から明らかなように、乾燥膜厚が薄い記録用紙(記録用紙−11)は支持体へのインク染料の拡散が多くなり最高濃度の低下が見られ、印字後のうねりも劣化する。また、乾燥膜厚が厚い場合(記録用紙−14)には、塗布後の乾燥時に皮膜のクラックが発生し光沢が劣化した。
【0129】
以上、本発明により、高インク吸収性、高光沢性、及び鮮明な画像が得られ低コストで製造可能であり、かつ高画質な記録用紙が得られる。
【0130】
【発明の効果】
本発明により、支持体上に空隙層を記録層として有する記録用紙において、印字部にうねりの発生がなく、高いインク吸収性が得られ、低コストで製造可能であり、かつ、高光沢、高濃度画質の記録用紙を提供することができた。
Claims (1)
- 厚さが160μm以上、300μm以下の吸水性支持体上に、平均粒径が100nm以下であって、粒径30nm以下の1次粒子の2次凝集粒子である気相法により合成されたシリカと、ポリビニルアルコールおよびカチオン性ポリマー媒染剤を有し、該気相法により合成されたシリカ/ポリビニルアルコールが重量比で3〜8であり、硬膜剤により硬膜されている、乾燥膜厚が5〜20μmのインク吸収層を空隙層として有する記録紙の、インクとしてAcid Red52の2%水溶液を用いた時のブリストウ法により測定した接触時間が0.08秒、2.0秒における液体転移量をそれぞれ、Q1,Q2としたとき、以下の条件を満たすことを特徴とするインクジェット記録用紙。
1)Q2が50ml/m2以下、かつ
2)Q1/Q2が0.5以上
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