JP3721771B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクを用いて記録を行うインクジェット記録用紙に関し、特にインク吸収層と支持体との接着性、および光沢性を改善したインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。この方式で従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インクおよび装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、さまざまな分野に急速に普及している。
【0003】
その詳細は例えば、インクジェット記録技術の動向(中村孝一編、平成7年3月31日、日本科学情報株式会社発行)に記載されている。
【0004】
このインクジェット記録方式で使用される記録用紙としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が一般的には要求されている。
【0005】
インクジェット記録用紙としては従来から種々の記録用紙が用いられている。例えば、普通紙、紙支持体上に親水性バインダーと無機顔料から成る層を塗設した各種の塗工紙(アート紙、コート紙、キャストコート紙等)、更にはこれらの紙、透明または不透明の各種のプラスチックフィルム支持体あるいは紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した各種の支持体上に記録層としてインク吸収性層を塗設した記録用紙が用いられている。
【0006】
上記インク吸収性層としては、親水性バインダーを主体に構成されるいわゆる膨潤型のインク吸収性層と、空隙層を記録層中に持つ空隙型のインク吸収層に大きく分けられる。
【0007】
膨潤型インク吸収性層の利点はインク溶媒(水及び高沸点有機溶媒)が完全に蒸発した後では非常に高い光沢性と高い最高濃度が得られる点にあるが、反面、インク吸収速度が後述する空隙型記録用紙に比べて遅く、高インク領域でビーディング等を起こしてザラツキの発生による画質が低下しやすい問題があり、更にインク溶媒、特に高沸点有機溶媒の蒸発が極めて遅いために印字後しばらくは親水性バインダー中に高沸点有機溶媒が残存して親水性バインダーが膨潤した湿潤状態に長期間置かれることに伴う問題がある。
【0008】
具体的には印字後数時間、場合により数日間は印字表面を強く擦ったり紙などを重ねることができない状況にある。
【0009】
一方、空隙型のインク吸収性層は、記録層中に空隙を有するために高いインク吸収性を示す。このため、膨潤型に比較して高インク領域における画像のビーディングが起こりにくく高濃度域において画質の劣化が少ない。
【0010】
また、空隙型のインク吸収性層は空隙容量がインク量に対して十分あれば、空隙構造中に有機溶媒が残存していたとしても、少なくとも表面は印字直後に見かけ上乾いた状態になり、表面に触れたりプリント同士を重ね合わせること等も一応可能となる。
【0011】
この種のインク吸収性層としては、比較的透明性の高い層が形成される点から低屈折率(特に約1.6以下の屈折率が好ましい)でしかも粒径の小さな微粒子(特に200nm以下が好ましい)が好ましく用いられ、中でもかかる条件を満たすシリカ微粒子が空隙を効率良く形成し、しかも比較的高い光沢性が得られ、高い最高濃度の画像が得られることなどから特に好ましく用いられる。
【0012】
そのような粒径の小さな無機微粒子をインクジェット記録用紙に使用する従来技術として、例えば、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−219084号、特開平2−274857号、同4−93284号、同5−51470号、同7−179029号、同7−137431号、同8−25800号、同8−67064号および同8−118790号等の各公報に記載されているコロイダルシリカ、特公平3−56552号、特開昭63−170074号、特開平2−113986号、同2−187383号、同7−276789号、同8−34160号、同8−132728号、及び8−174992号の各公報に記載されている気相法により合成された微粒子シリカ、例えば特公平3−24906号、同3−24907号、同6−98844号、同7−2430号、同121609号、特開昭60−245588号、特開平2−43083号、同2−198889号、同2−263683号、同8−112964号、同8−197832号および同8−258397号等に記載されている多孔質アルミナまたはその水和物、例えば、特開昭57−120486号、同57−129778号、同58−55283号、同61−20792号、同63−57277号、特開平4−250091号、同3−251487号、同4−250091号、同4−260092号および同7−40648号等に記載された微粒子炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0013】
上記空隙型のインク吸収層を支持体上に有する記録用紙は、特に高い光沢性、高空隙率、高い最高濃度が得られる点で優れており、しかも比較的高い平面性の支持体を使用した場合に高い光沢面を持つ記録用紙が得られる。
【0014】
しかしながら、無機微粒子に対する親水性バインダーの含有量があまりにも多すぎると、無機微粒子自身あるいは無機微粒子間に形成させる空隙を塞いでしまったり、あるいはインク吸収時に親水性バインダー自身がインク吸収初期に膨潤して空隙層を塞ぎ、十分な量のインクを吸収性しにくい等の問題が生じる。
【0015】
また、親水性バインダーに対する無機微粒子の含有量が高すぎると、皮膜の脆弱性が低下すると同時に、支持体とインク吸収層との接着性も弱くなる。また、インクジェット記録後の染料の耐水性を向上させる目的で、カチオンポリマーを添加すると、前述の接着性は更に低下する。特に、この傾向はカチオンモノマーの比率が30重量%以上のカチオンポリマーを使用した場合に著しい。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実態に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、染料の耐水性を向上したインク吸収層と支持体との接着性がよく、かつ、高光沢の記録用紙を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成によって達成される。
【0019】
1.支持体に隣接する、シリカおよび親水性バインダーを含有する空隙層が、ガラス転移点20℃以下−50℃以上かつ平均粒子径0.5μm以下であるポリマーラテックスを含有し、その含有量がシリカに対して、2.5重量%以上15重量%以下であり、当該空隙層の上に、ポリマーラテックスを含有せず、シリカ、カチオン性ポリマーおよび親水性バインダーを含有する空隙層が単層または複数層存在することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明は、支持体に隣接する、無機微粒子および親水性バインダーを含有する空隙層が、ガラス転移点が20℃以下−50℃以上かつ平均粒径が0.5μm以下であるポリマーラテックスを含有することを特徴とするインクジェット用記録用紙であるが、当該ポリマーラテックスの平均粒子径が0.5μm以下であると本発明の効果が顕著に得られる。下限については、光沢の点からより小さいほうが好ましい。また、当該ガラス転移点が20℃以下であると顕著に本発明の効果が得られる。下限は−50℃以上であると本発明の効果が顕著に得られる。
【0022】
本発明は、支持体に隣接する、無機微粒子および親水性バインダーを含有する空隙層が、ガラス転移点が20℃以下−50℃以上かつ平均粒径が0.5μm以下であるポリマーラテックスを含有し、その含有量が2.5重量%以上で15重量%以下の場合に、特に本発明の効果が得られる。更に好ましくはそのうち含有量が3重量%以上で13重量%以下の場合に、特に本発明の効果が得られるという点で好ましい。従って、本発明のうち支持体に隣接する、無機微粒子および親水性バインダーを含有する空隙層が、ガラス転移点が20℃以下かつ−50℃以上、且つ平均粒径が0.5μm以下であるポリマーラテックスを含有し、その含有量が3重量%以上で13重量%以下である場合が、特に顕著に本発明の効果が得られるという点において好ましい。
【0023】
本発明に係るインクジェット記録用紙の空隙型インク吸収層の空隙の総量は、特に良好なインクの吸収作用を発揮し、印字後の高い乾燥性を確保するために20ml/m2以上であることが好ましい。
【0024】
一方、空隙容量の上限については、ひび割れなどの発生を抑えて良好な物理特性を発揮する点において50ml/m2以下であることが好ましく、40ml/m2以下であると更に好ましい。
【0025】
本発明に係るインクジェット記録用紙は、少なくとも支持体に隣接する層が本発明の空隙層であればよく、当該本発明の空隙層のみが支持体に隣接して存在し、更にその上に、ラテックスポリマーを含まず、無機微粒子および親水性バインダーを含有する空隙層(以下、インク吸収層という場合もある)が単層または複数層存在する態様でもよいが、支持体と空隙層との膜付性と、得られた画像の透明性との両方が特に優れるという点から後者の態様が好ましい。
【0026】
また、支持体に隣接して本発明の空隙層が存在した上に膨潤タイプのインク吸収層が存在する態様であっても、本発明の効果が得られる。
【0027】
かかる膨潤層には通常親水性バインダーが用いられ、ここに用いられる親水性バインダーの例としては、前記空隙層の用いられる親水性バインダーが挙げられる。
【0028】
本発明に用いられるカチオン性ポリマーとしては第1級〜第3級アミノ基および第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが用いられるが、経時での変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが好ましい。
【0029】
以下に好ましく用いられる、4級アンモニウム塩基を有するモノマーの具体例を表す。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
上記モノマーと共重合しうるモノマーの具体例を以下に示す。
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
以下に、好ましく用いられる第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマー媒染剤の具体例を示す。(数字はモノマーのモル百分率を示す。)
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
好ましいカチオン性ポリマーは上記第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体または縮重合体として得られる。
【0040】
カチオン性ポリマーの中でも、好ましい平均分子量は3万以下である。平均分子量の下限は特に制約はないが耐水性や耐湿性の観点よりおよそ2000以上である。
【0041】
ここで平均分子量は数平均分子量のことであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求めたポリスチレン換算値を言う。
【0042】
また、上記カチオン性ポリマーの使用量の上限は特に規定されないが、空隙容量を確保し、また無用なカールを抑制する点から3g/m2以下が好ましい。
【0043】
本発明で用いる、ポリマーラテックスは、乳化重合法で重合されたポリマーラテックスであり、例えば、ポリスチレンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、ポリアクリル酸エステル系ラテックス、ポリメタクリル酸系ラテックス、塩化ビニル系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル系ラテックス等が好ましく用いられる。
【0044】
上記の重合体ラテックスの例として、例えば、スチレン/ブタジエンラテックス(7/3)、ポリ酢酸ビニルラテックス、酢酸ビニル/エチレンラテックス(9/1)、酢酸ビニル/メタクリル酸エチルラテックス(5/5)、塩化ビニル/アクリル酸エチル(3/2)、アクリル酸エチル/アクリル酸メチル/ヒドロキシルエチルメクリレート(5/4/1)、スチレン/アクリル酸ブチル/ヒドロキシルエチルメタクリレート(1/6/3)、シリコンラテックス等を挙げる事ができる。上記において、共重合比率はモル比を表す。
【0045】
空隙型のインク吸収層の乾燥膜厚は一般に被膜の空隙率や要求される空隙量により決まるが、その他にも、特に良好な光沢性と最高濃度を得るためには、10μm以上であることが好ましく、また、被膜のクラック発生を抑えて良好な光沢性と平面性を備え、かつ生産工程での乾燥負荷を抑えるためには20μm以下であることが好ましい。
【0046】
本発明に使用される無機微粒子としては、低屈折率で粒径の小さな無機微粒子が好ましく、例えば、シリカ、コロイダルシリカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ベーマイト水酸化アルミニウムまたはその水和物等が挙げられるが、特に好ましくはシリカである。
【0047】
シリカ微粒子は製造法により乾式法と湿式法に大別され、乾式法微粒子シリカとしてはハロゲン化珪素の高温での気相法加水分解による方法、およびケイ砂とコークスを電気炉でアーク法により加熱還元気化しこれを空気酸化する方法によって得られるものが知られている。また、湿式法シリカは珪酸塩の酸分解により活性シリカを生成した後、適度に重合させて凝集・沈殿させて得られる。
【0048】
本発明においてはシリカ微粉末の中でも、特に乾式法により合成された無水シリカが特に空隙率と強い皮膜強度が得られる点で好ましい。
【0049】
上記無機微粒子の平均粒径は、光沢性、インク吸収性から、その1次粒子として100nm以下であることが必要で、30nm以下であることが好ましい。
【0050】
無機微粒子が乾式法シリカである場合には1次粒子の平均粒径が3〜30nmであり、特に6〜20nmが最も好ましい。乾式法シリカは塗布液中で2次凝集してより大きな粒子を形成することができるが、この場合、2次凝集粒子の平均粒径は0.03〜0.2μmが好ましい。
【0051】
上記において無機微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは空隙層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、100個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定したときのその直径で表したものである。
【0052】
本発明の記録用紙において、上記無機微粒子と組み合わせて用いられる親水性バインダーとしては、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ゼラチン、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、プルラン、カゼイン、デキストラン等を用いることができるが、インクが含有する高沸点有機溶媒や水に対する膨潤性や溶解性が低い親水性バインダーを使用するのが印字直後の皮膜強度の点から好ましい。
【0053】
本発明では特にポリビニルアルコールが好ましく、中でも平均重合度が1000以上、最も好ましくは平均重合度が2000以上のポリビニルアルコールである。また、ケン化度は70〜100%が好ましく、特に80〜100%が最も好ましい。
【0054】
上記親水性バインダーは2種以上併用することもできるが、この場合であってもポリビニルアルコールを少なくとも50重量%以上含有してるのが好ましい。
【0055】
本発明の記録用紙の空隙層中には前記親水性バインダーと架橋し得る硬膜剤を添加するのが空隙層の造膜性の改良、皮膜の耐水性、および印字後の皮膜強度を改善する点で好ましい。そのような硬膜剤としてはエポキシ基、エチレンイミノ基、活性ビニル基等を含有する有機硬膜剤、クロムみょうばん、ほう酸、あるいはほう砂等の無機硬膜剤が挙げられる。
【0056】
親水性バインダーがポリビニルアルコールである場合には特に、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ系硬膜剤、ほう酸またはその塩、ほう砂が好ましい。ほう酸としてはオルトほう酸だけでなく、メタほう酸や次ほう酸等も使用出来る。
【0057】
上記硬膜剤の添加量は上記親水性バインダー1g当たり1〜200mg、好ましくは2〜100mgである。
【0058】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層側の任意の層中には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。
【0059】
例えば、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0060】
本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体としては、従来インクジェット記録用紙として公知のものを適宜使用できる。
【0061】
透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルムや板、およびガラス板などを挙げられ、この中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、約10〜200μmが好ましい。
【0062】
また、透明である必要のない場合に用いる支持体としては、例えば、一般の紙、合成紙、樹脂被覆紙、布、木材、金属等からなるシートや板、および上記の透光性支持体を公知の手段により不透明化処理したもの等を挙げることができる。不透明の支持体としては、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0063】
本発明の記録用紙のインク吸収性層を有する側と支持体に対して反対側には、カール防止や印字直後に重ね合わせた際のくっつきやインク転写を更に向上させるために種々の種類のバック層を設けてもよい。バック層には他の記録用紙とのくっつき防止、筆記性改良、さらにはインクジェット記録装置内での搬送性改良のために表面を粗面化できる。この目的で好ましく用いられるのは粒径が2〜20μmの有機または無機の微粒子である。
【0064】
以上の構成からなる本発明の記録用紙は例えば以下の方法によって得ることが出来る。まず、前記の空隙層形成用の材料を適当な溶媒、例えば水、アルコールあるいは各種有機溶媒に添加して塗布液を調製し、これを前記支持体に塗布し、乾燥させて空隙層とする。
【0065】
上記空隙層を支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0066】
塗布後の乾燥はいったん冷却して塗布液の粘度を増大させるかゲル化させてから温風を吹き付けて乾燥させるのが好ましい。
【0067】
塗布液温度は通常25〜60℃であり、30〜50℃が好ましい。冷却は塗布後の膜面温度が20℃以下、更には5〜15℃になるようにするのが好ましく、その後の乾燥は20〜60℃の風を吹き付けて乾燥するのが均一な膜面を得る点から好ましい。
【0068】
塗布する湿潤膜厚は目的とする乾燥膜厚によって変わるが、概ね50〜300μm、好ましくは70〜250μm、塗布速度は乾燥能力に大きく依存するが概ね20〜200m/分である。乾燥時間は概ね2〜10分である。
【0069】
本発明のインクジェット記録用紙におけるインク吸収層面側の塗布固形分の量は概ね5〜40g/m2が好ましく、10〜30g/m2がより好ましい。
【0070】
次に本発明の記録用紙をインクジェット記録用紙として使用する場合の水性インクについて以下に説明する。
【0071】
水性インクは、通常は水溶性染料及び液媒体、その他の添加剤から成る記録液体である。水溶性染料としてはインクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料が使用できるが直接染料、または酸性染料が好ましい。
【0072】
水性インクの溶媒は水を主体としてなるが、インク液が乾燥した際に染料が析出してノズル先端やインク供給経路での目詰まりを防止するために、通常沸点が約120℃以上で室温で液状の高沸点有機溶媒が使用される。高沸点有機溶媒は水が蒸発した際に染料などの固形成分が析出して粗大析出物の発生を防止する作用を持つために水よりはるかに低い蒸気圧を有することが要求される一方、水に対して混和性が高い必要がある。
【0073】
そのような目的で高沸点有機溶媒としては高沸点の有機溶媒が通常多く使用されるが、具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール(平均分子量が約300以下)等のアルコール類が挙げられる。また、上記した以外にも、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等も使用できる。
【0074】
これらの多くの高沸点有機溶媒の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0075】
水性インクが含有するその他の添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、及び防錆剤、等が挙げられる。
【0076】
水性インク液は記録用紙に対する濡れ性を良好にするため及びインクジェットノズルからの吐出を安定化させる目的で、25℃において、25〜50dyne/cm、好ましくは28〜40dyne/cmの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。
【0077】
また、水性インクの粘度は通常25℃において2〜8cp、好ましくは2.5〜5cpである。
【0078】
水性インクのpHは通常4〜10の範囲である。
【0079】
インクノズルから吐出される最小インク液滴としては1〜30×10-3nlの容量の場合、記録紙上で約20〜60μmの直径の最小ドット径が得られるので好ましい。このようなドット径で印字されたカラープリントは高画質画像を与える。好ましくは2〜20×10-3nlの容積を有する液滴が最小液滴として吐出される場合である。
【0080】
また、前記水性インクが、少なくともマゼンタおよびシアンについて、各々濃度が2倍以上異なる2種類のインクで記録する方式において、ハイライト部では低濃度のインクが使用されるためにドットの識別がしにくくなるが、本発明はかかる記録方式を採用した場合も適用できる。
【0081】
インクジェット記録方法において、記録方法としては、従来公知の各種の方式を用いることができ、その詳細はたとえば、インクジェット記録技術の動向(中村孝一編、平成7年3月31日、日本科学情報株式会社発行)に記載されている。
【0082】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0083】
実施例1
160g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆した写真用印画紙支持体に以下の塗布液−1を湿潤膜厚が50μmになるように塗設し、続いて、下記の構成による塗布液−2を調製したものを、湿潤膜厚が80μmになるようにして塗布した後、皮膜温度が15℃以下になるように30秒以内に急速に冷却し50℃の風で3分間乾燥させて記録用紙−1とした。このようにして形成される空隙層の乾燥膜厚は15μmであった。
【0084】
【0085】
【化8】
【0086】
塗布液−1において、本発明のラテックスポリマーを、表1に示すように変えた以外は同様にして記録用紙−2、3、5〜11を作製した。
【0087】
また、記録用紙−1において、塗布液−2のカチオン性ポリマー(2)を除いた以外は同様にして記録用紙−12を作製した。
【0088】
【表1】
【0089】
得られた記録用紙について以下の項目について評価した。
【0090】
(1)皮膜接着性
各記録用紙の記録面側をカッターで縦横3本ずつ、約3cmほど切り込みをいれ、セロテープをはりつけ、10往復つめで擦った後180°方向に剥離した。
【0091】
○:テープ面に何も付かない
×:塗膜がはがれる。
【0092】
(2)光沢度
日本電色工業株式会社製変角光度計(VGS−101DP)で75度鏡面光沢を測定した。
【0093】
(3)耐水性
セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンターPM−700Cを用い、シアンインクのベタ印字を行い、反射濃度を赤の単色光で測定した。この濃度をAとする。測定後、純水中に24時間浸漬し、水洗後、乾燥し、同じ場所を同じ方法で測定し、この時の濃度をBとする。(印字後の濃度A)−(水洗後の濃度B)を表に示す。
【0094】
表2に評価結果を記す。
【0095】
【表2】
【0096】
以上、本発明に従えば、インク吸収層と支持体との接着性が良好で、かつ高光沢で耐水性の良好な記録用紙が得られる。
【0097】
【発明の効果】
本発明により、染料の耐水性を向上したインク吸収層と支持体との接着性がよく、かつ、高光沢の記録用紙を提供することができた。
Claims (1)
- 支持体に隣接する、シリカおよび親水性バインダーを含有する空隙層が、ガラス転移点20℃以下−50℃以上かつ平均粒子径0.5μm以下であるポリマーラテックスを含有し、その含有量がシリカに対して、2.5重量%以上15重量%以下であり、当該空隙層の上に、ポリマーラテックスを含有せず、シリカ、カチオン性ポリマーおよび親水性バインダーを含有する空隙層が単層または複数層存在することを特徴とするインクジェット記録用紙。
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JP06564398A JP3721771B2 (ja) | 1998-03-16 | 1998-03-16 | インクジェット記録用紙 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP06564398A JP3721771B2 (ja) | 1998-03-16 | 1998-03-16 | インクジェット記録用紙 |
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1998
- 1998-03-16 JP JP06564398A patent/JP3721771B2/ja not_active Expired - Fee Related
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