JP3730725B2 - インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂に関し、より詳細には、インクジェット記録方式における記録シート上に設けられる記録層に好適に用いることができるポリビニルアセタール樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式によるプリンターやプロッターは、騒音が少ないこと、ランニングコスト及び本体のコストが低いこと、マルチカラー化が可能であること、ドットパターンの微細化により従来より鮮明な画像が得られることなどの理由から、広く普及している。
一般に、インクジェット記録方式に採用される記録シートでは、以下のような特性が要求されている。
【0003】
(1)インクの吸収性に優れており、記録シート上に付着したインクドットを速やかに記録シート内部に吸収し得ること。この条件は、インクジェット記録シートが、具備しなければならない最も基本的な性質である。カラーインクジェットでは、シート面の一点に2個以上のインクドットが重なる場合が多く、単位面積当たりのインクの使用量が多くなるので、単色のインクジェット記録の場合に比べてインクドットをより速やかに吸収し得ることが強く求められる。
【0004】
(2)記録シート上のインクドットの拡がりを抑制し得ること。
インクドットの拡がりを防止することにより、インクドット間の繋がりを無くして解像度を高めることができ、かつ記録物の反射濃度を高めることができる。また、カラーインクジェットの場合には、インクドットの拡がりを抑制することにより、色の異なる2個以上のインクドットの繋がりにより発生する混色に起因する彩明度の低下を防止することができるため、インクドットの拡がりをより一層抑制することが求められている。
【0005】
上記(1)及び(2)の基本的な特性以外にも、次のような特性が求められている。
【0006】
(3)インク吸収層が透明であること。
これは、特に、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)用シートの記録層に必要な条件である。普通、OHP用シートはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような透明シートにより構成されているが、PETフィルム自体は水溶性インクを吸収しない。従って、PETフィルムを支持体とし、その上に記録層を設けることにより、水溶性インクの吸収が図られている。しかしながら、この記録層が透明でないと、光が遮蔽されたり、散乱されたりし、OHP用シートとして使用できないことになる。
【0007】
(4)記録シートが優れた耐水性を有していること。
インクジェット記録シートでは、インクジェット記録層の耐水性が悪い場合には、水が付着したり、水に浸漬したりすると、記録層が剥がれ、画像が消失することになる。
【0008】
従来、インクジェット記録方式で使用されている記録シートとしては、例えば、プラスチックフィルム、紙、ガラス板などの支持体上に、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂からなる記録層を設けたものが知られている(例えば、特開昭55−146786号公報、特開昭59−174381号公報など)。
【0009】
しかしながら、これらの記録シートは、水性インクの吸収性及び定着性は良好であるものの、記録層の耐水性が充分でないという問題があった。
他方、インクの吸収性と、耐水性とのバランスを保つために、親水性高分子と親油性高分子とを混合する方法(例えば、特開昭57−102391号公報)も提案されている。
【0010】
しかし、親水性高分子と親油性高分子との相溶性が良好でなく、透明性が十分でなかった。従って、OHP用シートには使用できなかった。そこで、ポリビニルフェニルアセトアセタールなどの耐水性のポリビニルアセタール樹脂を用いることが提案されている(例えば、特公平5−23597号公報)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、マルチカラー化、ファインドット化、印字の高速化に伴い、記録層のインク吸収能の向上がより強く求められている。特に、解像度については320dpiから640dpiに高められてきている。また、黒を発色させる場合、シアン、イエロー及びマジェンタの3色を混合して発色させているが、このような発色に際し、単位面積当たりに付着されるインクの量が多くなってきている。従って、インク吸収能が低いと、記録層表面でにじみが生じたり、インクの乾燥に時間がかかるといった問題が生じる。
【0012】
本発明の目的は、印字の際に単位面積当たりのインク付着量が多くなったとしても、にじみを発生し難く、かつ耐水性が良好であり、さらに透明な記録層を形成し得るインクジェット記録シート用樹脂を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するために成されたものであり、−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−PO(OM)2 、
【0014】
【化2】
【0015】
(但し、RはHまたはアルキル基を、Mは、H、Li、NaまたはKを示す。)、三級アミン、四級アンモニウム塩及びベタインからなる群から選択した少なくとも一つの親水性基団を有する変性ポリビニルアルコールに、アルデヒドを反応させてアセタール化して得られるインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂であって、前記アルデヒドが、芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂では、好ましくは、請求項2に記載のように、上記芳香族アルデヒドでアセタール化されたアセタール化度が3〜10モル%の範囲であり、アセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール化度が10〜30モル%の範囲にある。
【0017】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明のインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂は、上記特定の変性ポリビニルアルコールにアルデヒドを酸触媒を用いて反応させ、アセタール化することにより得られる。
【0018】
なお、後述するように、変性ポリ酢酸ビニルをケン化して上記変性ポリビニルアルコールを得ることができるため、変性ポリビニルアルコールを用いる代わりに、変性ポリ酢酸ビニルを用い、ケン化及びアセタール化を並行して行ってもよい。
【0019】
変性ポリビニルアルコール
上記変性ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルの重合の際に、特定の親水性基団を有するエチレン性モノマーを共重合させて、上記親水性基団を有するユニットを含む変性ポリ酢酸ビニルを製造し、この酢酸ビニルをケン化することにより得ることができる。もっとも、導入される親水性基団は、後で行われるケン化及びアセタール化に関与しないことが必要である。
【0020】
上記特定の親水性基団を有するエチレン性モノマーとしては、種々のものが考えられるが、例えば親水性基団が−COOMの場合を例にとると、下記の化合物(1),(2)が挙げられる。
【0021】
(1) MOOC−CH=CH−COOM
【0022】
【化3】
【0023】
−SO3 Mを含む親水性基団によるエチレンのモノ置換体としては、下記の化合物(3)〜(10)が挙げられる。
(3) CH2 =CH−SO3 M
(4) CH2 =CH−CH2 −SO3 M
【0024】
【化4】
【0025】
【化5】
【0026】
【化6】
【0027】
【化7】
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
上記のようにして得られる変性ポリビニルアルコールは、重合度が200〜3500、ケン化度が75〜99.8モル%のものが好ましい。重合度が200未満では、変性ポリビニルアルコールの合成が難しくなることがあり、逆に重合度が3500を超えると、これを水溶液としたときにその粘度が高くなりすぎることがある。また、ケン化度が75モル%未満では、水に対する溶解性が十分でないことがあり、ケン化度が99.8モル%を超えると、変性ポリビニルアルコールの合成が難しくなることがある。
【0031】
変性ポリビニルアルコールの変性度、すなわち前記親水性基団を有するユニットの割合は、0.01〜5モル%の範囲であることが好ましい。この場合、変性ポリビニルアルコールと未変性のポリビニルアルコールとを混合し、全体として、上記ユニットの割合が0.01〜5モル%となるようにしてもよい。
【0032】
親水性基団を有するユニットの割合が5モル%を超えると、湿度の影響を受け易くなり耐水性が低下することがあり、逆に、親水性基団を有するユニットの割合が0.01モル%未満では、インク吸収能が充分とならず、インク付着量が多いとにじみが生じ、本発明の効果が十分に発揮されないことがある。
【0033】
上記変性ポリビニルアルコールを芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドを用いてアセタール化するが、本発明で用いられる芳香族アルデヒドについては特に限定されるものではなく、例えば、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒドなどのアルキル置換ベンズアルデヒド;ハロゲン置換ベンズアルデヒド;p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒドなどのヒドロキシル基が置換した芳香族アルデヒド;アルコキシ基、アミノ基、シアノ基などの置換基を有する芳香族アルデヒド;フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒドなどのフェニル置換アルキルアルデヒドなどを挙げることができる。
【0034】
本発明で用いられる芳香族アルデヒドは、親水性を高めるために、水酸基や極性基を多く有するものであってもよい。水酸基や他の極性基を増加させると、耐水性が大きく変化するが、アセトアルデヒドが併用されるので、親水性を大きく変化させることなく、記録層全体としての耐水性を高めることができる。
【0035】
上記アセタール化の方法としては、溶解法、沈殿法、均一法など、従来より公知の技術を用いることができる。
上記酸触媒については特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸;酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸などを用い得る。
【0036】
アセタール化度
請求項2に記載のように、本発明にかかるインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂では、好ましくは、芳香族アルデヒドでアセタール化したアセタール化度が3〜10モル%、アセトアルデヒドでアセタール化したアセトアセタール化度が10〜30モル%とされている。
【0037】
芳香族アルデヒドに由来するアセタール化度が3モル%未満の場合には、耐水性が低下することがあり、10モル%を超えると、逆に耐水性が高くなりすぎ、印字に際し、インクの吸収性が低下し、にじみが発生することがある。アセトアルデヒド由来のアセタール化度が10モル%未満の場合には、耐水性が低下して、本発明の効果が十分に発揮されないことがあり、30モル%を超えると、逆に耐水性が高くなりすぎ、にじみの発生することがある。
【0038】
他の添加物
本発明のインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂では、本発明の目的を妨げない範囲で適宜の添加物を添加してもよい。上記添加物としては、特に限定されるものではなく、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、界面活性剤などの水性インクの吸着能改善剤;紫外線吸収剤などのインクの耐候性向上剤;顔料分散剤;消泡剤;シリカ、タルク、アルミナなどの顔料;pH調整剤などが挙げられる。
【0039】
インクジェット記録シートの製造
本発明のインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂を用いて記録シートを製造するにあたっては、支持体上に、上記ポリビニルアセタール樹脂を塗布し、乾燥させることにより得ることができる。
【0040】
上記支持体については特に限定されず、例えば、ポリエステル、セルロイド、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムもしくはシート;紙、不織布、ガラス板などからなるものを挙げることができる。
【0041】
上記ポリビニルアセタール樹脂層を支持体上に形成する方法についても特に限定されず、例えば、樹脂溶液をロールコーター法、ブレードコーター法などにより塗布した後、乾燥させる方法など、適宜の方法を挙げることができる。
【0042】
なお、本発明にかかるポリビニルアセタール樹脂を用いて得られた記録シートに使用される水性インクについても特に限定されるものではなく、例えば、特開昭47−12105号公報、特開昭49−89534号公報、特開昭49−97620号公報、特開昭50−143602号公報、特開昭50−12407号公報などに記載されている水溶性染料、湿潤剤、染料可溶化剤、水、水混和性有機溶剤などを含む適宜のものを用いることができる。
【0043】
作用
請求項1に記載の発明にかかるインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂では、印字に際し、単位面積当たりのインク使用量が多い場合であっても、インクが速やかに吸収され、にじみが効果的に防止される。これは、上記特定の親水性基団を有するため、該親水性基団の親水性により、インク吸収性が高められているものと考えられる。
【0044】
すなわち、記録層として変性ポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、水性インクとしては、カチオン系もしくはアニオン系の顔料または染料を用いる場合が多いが、例えば、カチオン系の顔料または染料を含む水性インクは、変性ポリビニルアセタール樹脂のアニオン系親水性基団と強く結びつくため、インクの吸収性が高められるものと考えられる。同様に、アニオン系の顔料または染料を用いる場合には、変性ポリビニルアセタール樹脂のカチオン性親水性基団と強く結びつくため、インクの吸収性が高められるものと考えられる。
【0045】
また、請求項1に記載の発明にかかるポリビニルアセタール樹脂では、ポリビニルアルコールと比べて残存水酸基が少なくなっており、さらに、上記特定の親水性基団の導入により、残存水酸基が一層少なくなっているので、耐水性が高められているものと考えられる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の非限定的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0047】
(実施例1)
重合度1700、ケン化度88モル%、変性度1モル%のイタコン酸変性ポリビニルアルコール200gを、純水1600gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し、溶解させた。得られた溶液を45℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸50gを加え、さらに、20℃まで冷却し、ベンズアルデヒド15gと、アセトアルデヒド30gとを加え、25℃で4時間アセタール化反応を行った。
【0048】
しかる後、液温を20℃まで冷却し、攪拌下で濃度10重量%の水酸化ナトリウム水溶液192gを加えて、中和し、スポンジ状の沈殿物を得た。得られたスポンジ状の沈殿物を水洗し、中和塩及び未反応アルデヒドを除去し、乾燥することにより、粉末のポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0049】
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の芳香族アルデヒドに由来するアセタール化度は5モル%、アセトアルデヒドに由来するアセトアセタール化度は20モル%であった。
【0050】
次に、上記変性ポリビニルアセタール樹脂を水とエタノールとを重量比で1:1で含む混合溶媒に8重量%となるように溶解し、得られた溶液を厚さ100μmのPETフィルム上に、乾燥重量が2g/m2 となるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥し、記録層を形成した。この記録層は透明性に優れていた。
【0051】
上記のようにしてPETフィルムからなる支持体上に記録層が形成されている記録シートの記録層上に、市販のインクジェットプリンター(シアン、イエロー及びマジェンタの混色で黒を発色するタイプ)にて3×3cm角の領域に黒色をベタ塗り印字し、印字された画像部分の耐水性及びにじみを下記の要領で評価した。
【0052】
▲1▼耐水性…3×3cm角の黒色ベタ塗りの画像部について、印字24時間後に水道水に1分間浸漬し、引き上げた後、直後の画像部の状態を目視により観察した。結果を下記の判定基準で表した。
【0053】
優 :浸す前と変わらない状態。
良 :膨潤しているが、水が乾燥すると、元の状態に戻る。
可 :インクが一部溶出し、記録層が膨潤している状態。
不可:記録層が溶解し、流れ去っている状態。
【0054】
▲2▼にじみ…3×3cm角の黒色ベタ塗りの画像部について、印字24時間後の画像部の状態を画像部周辺のぼけの具合を目視することにより観察した。判定基準は以下の通りである。
【0055】
◎:画像部周辺にぼけが全く認められない。
○:画像部周辺が僅かにぼけている状態。
×:画像部周辺のぼけがかなり大きい場合。
【0056】
上記耐水性及びにじみについての評価結果を下記の表1に、変性ポリビニルアセタール樹脂の詳細と共に示す。
【0057】
(実施例2)
変性ポリビニルアルコールとして、重合度1700、ケン化度98モル%であり、変性度1モル%のイタコン酸変性の変性ポリビニルアルコールを用いたこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を7モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を15モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記のようにして得た変性ポリビニルアセタール樹脂を用い、実施例1と同様にして記録層を形成し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0058】
(実施例3)
重合度800、ケン化度88モル%、変性度2モル%のマレイン酸変性ポリビニルアルコールを用いたこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を6モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を25モル%としたことを除いては実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記のようにして得た変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして、記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0059】
(実施例4)
重合度2000、ケン化度94モル%、変性度0.5モル%のスルホン酸変性ポリビニルアルコールを用いたこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を9モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を12モル%としたことを除いては実施例1と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
上記のようにして得た変性ポリビニルアセタール樹脂を用い、実施例1と同様にして、記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0060】
(実施例5)
重合度1000、ケン化度80モル%、リン酸変性エステルを用いて変性された変性度0.1モル%の変性ポリビニルアルコールを用いたこと、芳香族アルデヒドとしてフェニルアセトアルデヒドを用いたこと、並びに、フェニルアセトアルデヒドによるアセタール化度を5モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を10モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
この変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0061】
(実施例6)
重合度1700、ケン化度88モル%、第四級アンモニウム塩としてN−〔3−(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミドを用いて変性された変性度1モル%の変性ポリビニルアルコールを用いたこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を4モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を25モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0062】
(実施例7)
重合度1700、ケン化度98モル%、第四級アンモニウム塩としてN−〔3−(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミドを用いて変性された変性度1モル%の変性ポリビニルアルコールを用いたこと、芳香族アルデヒドとしてp−ヒドロキシベンズアルデヒドを用いたこと、並びに、p−ヒドロキシベンズアルデヒドによるアセタール化度を6モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を20モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0063】
(比較例1)
アセトアルデヒドを用いずに、ベンズアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を9モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0064】
(比較例2)
アセトアルデヒドを用いずに、ベンズアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を12モル%としたことを除いては、実施例2と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0065】
(比較例3)
ベンズアルデヒド及びアセトアルデヒドを用いずに、フェニルアセトアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、フェニルアセトアルデヒドによるアセタール化度を10モル%としたことを除いては、実施例4と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0066】
(比較例4)
アセトアルデヒドを用いずに、ベンズアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を8モル%としたことを除いては、実施例6と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0067】
(比較例5)
アセトアルデヒドを用いずに、p−ヒドロキシベンズアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、p−ヒドロキシベンズアルデヒドによるアセタール化度を14モル%としたことを除いては、実施例7と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録シートを作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0068】
(比較例6)
芳香族アルデヒドを用いずに、アセトアルデヒドのみを用いてアセタール化したこと、並びに、アセトアルデヒドによるアセタール化度を30モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を下記の表2に示す。
【0069】
(比較例7)
芳香族アルデヒドを用いずに、アセトアルデヒドのみを用いてアセタール化したこと、並びに、アセトアルデヒドによるアセタール化度を20モル%としたことを除いては、実施例2と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を下記の表2に示す。
【0070】
(比較例8)
芳香族アルデヒドを用いずに、アセトアルデヒドのみを用いてアセタール化したこと、並びに、アセトアルデヒドによるアセタール化度を50モル%としたことを除いては、実施例7と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を下記の表2に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
比較例1〜5では、アセトアルデヒドによりアセタール化していないため、記録シートにおいて画像部周辺にぼけがかなり大きく現れており、従ってインクの吸収性が十分でないことがわかる。
【0074】
他方、比較例6〜8では、芳香族アルデヒドを用いていないためか、耐水性が悪く、記録層が溶解し、流れ去っていた。
これに対して、実施例1〜7では、何れにおいても、耐水性が良好であり、評価前と変わらない状態であった。また、画像周辺部においてのぼけが全く認められなかった。また、実施例1〜7の記録シートの記録層は、何れも透明性の点においても十分であった。
【0075】
従って、本発明に従って、上記特定の親水性基団を有する変性ポリビニルアルコールを芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドの双方を用いてアセタール化して得られた変性ポリビニルアセタール樹脂では、インク付着量が単位面積当たりにかなり多い場合であっても、インクのにじみが生じず、かつ印字された画像部の耐水性が十分であることがわかる。
【0076】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明にかかるポリビニルアセタール樹脂は、上記特定の親水性基団を有する変性ポリビニルアルコールに、芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドの双方を反応させてアセタール化して得られたものであるため、上記親水性基団の作用、並びに、芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドの双方を用いてアセタール化していることにより、インクの吸収性を著しく高め得る。また、アセトアルデヒドのみを用いてアセタール化した場合に比べると、芳香族アルデヒドをも用いてアセタール化しているため、耐水性も高め得る。
【0077】
よって、請求項1に記載の発明にかかるインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂を用いることにより、インク付着量が多い場合でもにじみが生じ難く、インク吸収性及び耐水性の双方において優れた記録シートを容易に提供することが可能となり、インクジェット記録方式におけるマルチカラー化、ファインドット化、印字速度の高速化に容易に対応することが可能となる。さらに、透明性においても優れているため、OHP用シートなどの記録画像の透過光により画像を観察するシートにも、請求項1に記載の発明にかかるインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂を好適に用いることができる。
【0078】
また、請求項2に記載の発明にかかるインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂では、芳香族アルデヒド由来のアセタール化度が3〜10モル%、アセトアルデヒド由来のアセタール化度が10〜30モル%の範囲とされているため、耐水性及びインク吸収性の双方においてより一層優れたインクジェット記録シートを確実に提供することが可能となる。
Claims (2)
- 前記芳香族アルデヒドでアセタール化されたアセタール化度が3〜10モル%、アセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール化度が10〜30モル%である請求項1に記載のインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂。
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