JP3739157B2 - 水性インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式によるプリンターやプロッターは、騒音が少ないこと、ランニングコスト及び本体のコストが低いこと、マルチカラー化が可能であること、ドットパターンの微細化により従来より鮮明な画像が得られることなどの理由から、広く普及している。
一般に、インクジェット記録方式に採用される記録シートでは、以下のような特性が要求されている。
【0003】
(1)インクの吸収性に優れており、記録シート上に付着したインクドットを速やかに記録シート内部に吸収し得ること。この条件は、インクジェット記録シートが、具備しなければならない最も基本的な性質である。カラーインクジェットでは、シート面の一点に2個以上のインクドットが重なる場合が多く、単位面積当たりのインクの使用量が多くなるので、単色のインクジェット記録の場合に比べてインクドットをより速やかに吸収し得ることが強く求められる。
【0004】
(2)記録シート上のインクドットの拡がりを抑制し得ること。
インクドットの拡がりを防止することにより、インクドット間の繋がりを無くして解像度を高めることができ、かつ記録物の反射濃度を高めることができる。また、カラーインクジェットの場合には、インクドットの拡がりを抑制することにより、色の異なる2個以上のインクドットの繋がりにより発生する混色に起因する彩明度の低下を防止することができるため、インクドットの拡がりをより一層抑制することが求められている。
【0005】
上記(1)及び(2)の基本的な特性以外にも、次のような特性が求められている。
【0006】
(3)インク吸収層が透明であること。
これは、特に、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)用シートの記録層に必要な条件である。普通、OHP用シートはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような透明シートにより構成されているが、PETフィルム自体は水溶性インクを吸収しない。従って、PETフィルムを支持体とし、その上に記録層を設けることにより、水溶性インクの吸収が図られている。しかしながら、この記録層が透明でないと、光が遮蔽されたり、散乱されたりし、OHP用シートとして使用できないことになる。
【0007】
(4)記録シートが優れた耐水性を有していること。
インクジェット記録シートでは、インクジェット記録層の耐水性が悪い場合には、水が付着したり、水に浸漬したりすると、記録層が剥がれ、画像が消失することになる。
【0008】
従来、インクジェット記録方式で使用されている記録シートとしては、例えば、プラスチックフィルム、紙、ガラス板などの支持体上に、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂からなる記録層を設けたものが知られている(例えば、特開昭55−146786号公報、特開昭59−174381号公報など)。
【0009】
しかしながら、これらの記録シートは、水性インクの吸収性及び定着性は良好であるものの、記録層の耐水性が充分でないという問題があった。
他方、インクの吸収性と、耐水性とのバランスを保つために、親水性高分子と親油性高分子とを混合する方法(例えば、特開昭57−102391号公報)も提案されている。
【0010】
しかし、親水性高分子と親油性高分子との相溶性が良好でなく、透明性が十分でなかった。従って、OHP用シートには使用できなかった。そこで、ポリビニルフェニルアセトアセタールなどの耐水性のポリビニルアセタール樹脂を用いることが提案されている(例えば、特公平5−23597号公報)。
【0011】
しかしながら、近年、マルチカラー化、ファインドット化、印字の高速化に伴い、記録層のインク吸収能の向上がより強く求められている。特に、解像度については320dpiから640dpiに高められてきている。また、黒を発色させる場合、シアン、イエロー及びマジェンタの3色を混合して発色させているが、このような発色に際し、単位面積当たりに付着されるインクの量が多くなってきている。従って、インク吸収能が低いと、記録層表面でにじみが生じたり、インクの乾燥に時間がかかるといった問題が生じる。
【0012】
そこで、インクの吸収能を向上させるため、多孔質の無機微粒子(例えば粒径が1μm程度の多孔質アルミニウムやシリカゲル)をポリビニルアルコール等のバインダー中に均一分散させ、これを支持体上に均一分散させたものなどが提案されている(特開平6−199035号公報、特開平7−76161号公報)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これら無機微粒子を分散させる方法は、分散剤を用いる必要があり、そのため、印字特性、耐湿性、透明性を損なうことがある。
【0014】
本発明の目的は上記の課題を解決し、分散剤を使わずに、透明性が良好であっても、定着性、耐水性が良好でインク吸収能に優れた水性インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂は、部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールのミクロゲルを含有するポリビニルアセタール樹脂であって、上記ポリビニルアルコールのミクロゲルのゲル生成前の初期重合度が800以下であることを特徴としている。
【0016】
上記部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールのミクロゲルの製造方法としては、例えば、以下の方法があげられる。
(1)粒径が1μm程度の均一なポリビニルアルコール微粒子をポリビニルアルコール水溶液に分散させ、ポリビニルアルコール微粒子が完全に溶解しない温度に保持したまま、アルデヒドと触媒を加えてアセタール化する。
(2)ポリビニルアルコール水溶液を0℃程度に冷却して、ミクロゲルを生成させ、アルデヒドと触媒を加えてアセタール化する。
【0017】
上記の方法において用いるポリビニルアルコール水溶液の重合度は、高すぎるとインクの定着度が悪くなり、又、黒を発色させる場合にムラが発生するので800以下に限定され、低すぎるとインクの耐水性が低下し、高すぎるとインクの吸収能が低下するので、200〜800が好ましく、ケン化度は低すぎても高すぎてもインクの吸収能が低下するので、好ましくは85〜99.9mol%、さらに好ましくは85〜99mol%である。
【0018】
上記アセタール化に使用されるアルデヒドは特に限定されず、例えば、(パラ)ホルムアルデヒド、(パラ)アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド等の脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド等のアルキル置換ベンズアルデヒド;ハロゲン置換ベンズアルデヒド;p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド等のヒドロキシル基が置換した芳香族アルデヒド;アルコキシ基、アミノ基、シアノ基等の置換基を有する芳香族アルデヒド;フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等のフェニル置換アルキルアルデヒドなどが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種類以上併用されてもよい。
【0019】
上記アセタール化に使用される触媒としては、特に限定されず、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸p−トルエンスルホン酸等の有機酸など、通常のアセタール化反応に用いられる触媒が使用できる。
【0020】
上記アセタール化されたミクロゲルのアセタール化度は、使用するアルデヒドにより異なるが、低すぎると耐水性が低下し、高すぎるとインクの吸収性が低下し、にじみが発生することがあるので脂肪族アルデヒドを用いる場合には2〜40mol%が好ましく、さらに好ましくは、5〜30mol%であり、芳香族アルデヒドを用いる場合には5〜10mol%が好ましい。
【0021】
本発明において必要に応じ本発明の目的を妨げない範囲で適宜の添加物が添加されてもよい。上記添加物としては、特に限定されるものではなく、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、界面活性剤などの水性インクの吸着能改善剤;紫外線吸収剤などのインクの耐候性向上剤;顔料分散剤;消泡剤;シリカ、タルク、アルミナなどの顔料;pH調整剤などが挙げられる。
【0022】
本発明のインクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂を用いて記録シートを製造するにあたっては、支持体上に、上記ポリビニルアセタール樹脂を塗布し、乾燥させることにより得ることができる。
【0023】
上記支持体については特に限定されず、例えば、ポリエステル、セルロイド、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムもしくはシート;紙、不織布、ガラス板などからなるものを挙げることができる。またこれら支持体の上に、記録層の接着性を向上させる目的で、接着層を設けてもよいし、支持体表面をプラズマ等で処理してもよい。
【0024】
上記ポリビニルアセタール樹脂層を支持体上に形成する方法についても特に限定されず、例えば、樹脂溶液をロールコーター法、ブレードコーター法などにより塗布した後、乾燥させる方法など、適宜の方法を挙げることができる。
【0025】
(作用)
本発明の水性インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂は、部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールのミクロゲルを含有するポリビニルアセタール樹脂であって、上記ポリビニルアルコールのミクロゲルのゲル生成前の初期重合度が800以下であるから、親水性と耐水性向上のために部分的に水酸基が凝集したミクロゲル部分と耐水性を持ったポリビニルアセタール部分が作られ、かつミクロゲル部分とポリビニルアセタール部分とが分枝構造的に似通っているため、分散剤がなくても均一分散できるため、透明性が良好であっても、定着性、耐水性が良好でインク吸収能に優れたものになると考えられる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもってさらに詳しく説明する。
【0027】
(実施例1)
5リットルのセパラブルフラスコで、重合度300、ケン化度98mol%のポリビニルアルコール100gを、水1000gに分散して加温して溶解させた後、0℃まで冷却し、3時間放置したところミクロゲルが生成した。一方で、重合度3500、ケン化度98mol%のポリビニルアルコール250gを、水2000gに分散して加温して溶解させた後20℃まで冷却したものを加え、15℃で放置した。その後、35重量%の塩酸200g、ベンズアルデヒド30gを徐々に加え、15℃で6時間放置した。その結果、スポンジ状の沈殿物を得た。
【0028】
この混合物に20重量%の水酸化ナトリウム300gを加えて中和し、得られたスラリーを水洗して中和塩及び未反応のベンズアルデヒドを除去し、乾燥させて、部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールのミクロゲルを含有するポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は8mol%であった。
【0029】
次に、上記ポリビニルアセタール樹脂を水とエタノールとを重量比で1:1で含む混合溶媒に 重量%となるように溶解し、得られた溶液を厚さ100μmのPETフィルム上に、乾燥重量が2g/m2 となるようにアプリケーターを用いて塗布し、乾燥し、記録層を形成した。この記録層は透明性に優れていた。
【0030】
(実施例2〜7、比較例4)
ミクロゲルを生成させたポリビニルアルコールの重合度、量、水溶液で加えたポリビニルアルコールの重合度、量、加えたベンズアルドヒドの量を表1に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールのミクロゲルを含有するポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は表1に示した通りであった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして透明性に優れた記録層を形成した。
【0031】
(比較例1〜3)
ミクロゲルを生成させたポリビニルアルコールを用いなかったこと、ポリビニルアルコールの重合度、量、加えたベンズアルドヒドの量を表1に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は表1に示した通りであった。
得られたポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして透明性に優れた記録層を形成した。
【0032】
実施例1〜7、比較例1〜4で得られたポリビニルアセタール樹脂を用い、実施例1と同様にして記録層を形成し、PETフィルムからなる支持体上に記録層が形成されている記録シートを得た。
上記のようにして得られた記録シートの記録層上に、市販のインクジェットプリンター(キャノンBJC−210C)にて印字し、下記の要領で評価した。
【0033】
1.定着時間
印字後の記録シートの記録層上に濾紙を押し当てて、インクが濾紙に転写されなくなるまでの時間を測定した。
【0034】
2.耐水性
印字1時間後の記録シートを水道水に1分間浸漬し、引き上げた後、直後の画像部の状態を目視により観察した。結果を下記の判定基準で表した。
【0035】
優 :浸す前と変わらない状態。
良 :膨潤しているが、水が乾燥すると、元の状態に戻る。
可 :インクが一部溶出し、記録層が膨潤している状態。
不可:記録層が溶解し、流れ去っている状態。
【0036】
3.黒色ムラ
黒色部のベタの部分を肉眼で観察し、ムラの無いものには○、ムラがあるものには×を記した。
以上の結果を表1に纏めて示した。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
本発明の水性インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂は上述の如きものであるから、分散剤を使わずに、透明性が良好であっても、定着性、耐水性が良好でインク吸収能に優れた水性インクジェット記録シート用樹脂となる。
Claims (1)
- 部分的にアセタール化されたポリビニルアルコールのミクロゲルを含有するポリビニルアセタール樹脂であって、上記ポリビニルアルコールのミクロゲルのゲル生成前の初期重合度が800以下であることを特徴とする水性インクジェット記録シート用ポリビニルアセタール樹脂。
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- 1997-02-27 JP JP04397797A patent/JP3739157B2/ja not_active Expired - Fee Related
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