JP3720929B2 - 水性インク用記録材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インク用記録材に関し、より詳細には、フルカラー化に伴う画像の鮮明度が要求される記録材に好適に用い得る水性インク用記録材に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式によるプリンターやプロッターは、騒音が少ないこと、ランニングコスト及び本体のコストが低いこと、マルチカラー化が可能であること、ドットパターンの微細化により従来より鮮明な画像が得られることなどの理由から、広く普及している。
【0003】
一般に、インクジェット記録方式に採用される記録シートでは、以下のような特性が要求されている。
(1)インクの吸収性に優れており、記録シート上に付着したインクドットを速やかに記録体内部に吸収し得ること。この条件は、インクジェット記録シートが、具備しなければならない最も基本的な性質である。カラーインクジェットでは、シート面の一点に2個以上のインクドットが重なる場合が多く、単位面積当たりのインクの使用量が多くなるので、単色のインクジェット記録の場合に比べて記録シートにインクドットをより速やかに吸収し得ることが強く求められる。
【0004】
(2)記録シート上のインクドットの拡がりを抑制し得ること。
インクドットの拡がりを防止することにより、インクドット間の繋がりを無くして解像度を高めることができ、かつ記録物の反射濃度を高めることができる。また、カラーインクジェットの場合には、インクドットの拡がりを抑制することにより、色の異なる2個以上のインクドットの繋がりにより発生する混色に起因する彩明度の低下を防止することができるため、インクドットの拡がりをより一層抑制することが求められている。
【0005】
上記(1)及び(2)の基本的な特性以外にも、次のような特性が求められている。
(3)インク吸収層が透明であること。
これは、特に、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)用シートの記録層に必要な条件である。普通、OHP用シートはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのような透明シートにより構成されているが、PETフィルム自体は水溶性インクを吸収しない。従って、PETフィルムを支持体とし、その上に記録層を設けることにより、水溶性インクの吸収が図られている。しかしながら、この記録層が透明でないと、光が遮蔽されたり、散乱されたりし、OHP用シートとして使用できないことになる。
【0006】
(4)記録シートが優れた耐水性を有していること。
インクジェット記録シートでは、インクジェット記録層の耐水性が悪い場合には、水が付着したり、水に浸漬したりすると、記録層が剥がれ、画像が消失することになる。
【0007】
従来、インクジェット記録方式で使用されている記録シートとしては、例えば、プラスチックフィルム、紙、ガラス板などの支持体上に、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂からなる記録層を設けたものが知られている(例えば、特開昭55−146786号公報、特開昭59−174381号公報など)。
【0008】
しかしながら、これらの記録シートは、水性インクの吸収性及び定着性は良好であるものの、記録層の耐水性が充分でないという問題があった。
他方、インクの吸収性と、耐水性とのバランスを保つために、親水性高分子と親油性高分子とを混合する方法(例えば、特開昭57−102391号公報)も提案されている。
【0009】
しかし、このような記録層では、親水性高分子と親油性高分子との相溶性が良好でなく、透明性が十分でなかった。従って、OHP用シートには使用できなかった。そこで、ポリビニルフェニルアセトアセタールなどの耐水性のポリビニルアセタール樹脂を用いることが提案されている(例えば、特公平5−23597号公報)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、マルチカラー化、ファインドット化、印字の高速化に伴い、記録層のインク吸収能の向上がより強く求められている。特に、解像度については320dpiから640dpiに高められてきている。また、黒を発色させる場合、シアン、イエロー及びマジェンタの3色を混合して発色させているが、このような発色に際し、単位面積当たりに付着されるインクの量が多くなってきている。従って、インク吸収能が低いと、記録層表面でにじみが生じたり、インクの乾燥に時間がかかるといった問題が生じる。
【0011】
本発明の目的は、印字の際に単位面積当たりのインク付着量が多くなったとしてもにじみを引き起こし難くインク吸収性が良好であり、かつ定着性及び耐水性に優れたインク受容層を備えた水性インク用記録材を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる水性インク用記録材は、−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−PO(OM)2 、
【0013】
【化2】
【0014】
(但し、Rは、Hまたはアルキル基を、Mは、H、Li、NaまたはKを示す。)、三級アミン、四級アンモニウム塩及びベタインからなる群から選択した少なくとも一つの親水性基団を有し、かつ芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドを用いてアセタール化された水溶性の変性ポリビニルアセタール樹脂と、ケイ酸、シリカ、カオリン、クレー、アルミナ、炭酸カルシウム、ゼオライト、酸化チタン及びタルクからなる群から選択した少なくとも1種からなる微粉末とを含むインク受容層が支持体上に設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる水性インク用記録材では、好ましくは、請求項2に記載のように、前記芳香族アルデヒドでアセタール化されたアセタール化度が3〜10モル%、アセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール化度が10〜30モル%である。
【0016】
以下、本発明の詳細を説明する。
変性ポリビニルアセタール樹脂
本発明にかかる水性インク用記録材に用いられる上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、前述した特定の親水性基団を有する変性ポリビニルアルコールに、芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドを酸触媒を用いて反応させ、アセタール化することにより得られる。
【0017】
なお、後述するように、変性ポリ酢酸ビニルをケン化して上記変性ポリビニルアルコールを得ることができるため、上記変性ポリビニルアルコールを用いる代わりに、変性ポリ酢酸ビニルを用い、ケン化及びアセタール化を並行して行ってもよい。
【0018】
上記変性ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルの重合の際に、特定の親水性基団を有するエチレン性モノマーを共重合させて、上記親水性基団を有するユニットを含む変性ポリ酢酸ビニルを製造し、この酢酸ビニルをケン化することにより得ることができる。もっとも、導入される親水性基団は、後で行われるケン化及びアセタール化に関与しないことが必要である。
【0019】
上記特定の親水性基団を有するエチレン性モノマーとしては、種々のものが考えられるが、例えば親水性基団が−COOMの場合を例にとると、下記の化合物(1),(2)が挙げられる。
【0020】
(1) MOOC−CH=CH−COOM
【0021】
【化3】
【0022】
−SO3 Mを含む親水性基団によるエチレンのモノ置換体としては、下記の化合物(3)〜(10)が挙げられる。
(3) CH2 =CH−SO3 M
(4) CH2 =CH−CH2 −SO3 M
【0023】
【化4】
【0024】
【化5】
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
【化8】
【0028】
【化9】
【0029】
上記のようにして得られる変性ポリビニルアルコールは、重合度が200〜3500、ケン化度が75〜99.8モル%のものが好ましい。重合度が200未満では、変性ポリビニルアルコールの合成が難しくなることがあり、逆に重合度が3500を超えると、これを水溶液としたときにその粘度が高くなりすぎることがある。また、ケン化度が75モル%未満の%には、水に対する溶解性が十分でないことがあり、ケン化度が99.8モル%を超えると、変性ポリビニルアルコールの合成が難しくなることがある。
【0030】
変性ポリビニルアルコールの変性度、すなわち前記親水性基団を有するユニットの割合は、0.01〜5モル%の範囲であることが好ましい。この場合、変性ポリビニルアルコールと未変性のポリビニルアルコールとを混合し、全体として、上記ユニットの割合が0.01〜5モル%となるようにしてもよい。
【0031】
親水性基団を有するユニットの割合が5モル%を超えると、湿度の影響を受け易くなり、耐水性が低下することがあり、逆に、親水性基団を有するユニットの割合が0.01モル%未満では、インク吸収能が充分とならずインク付着量が多いとにじみが生じ、本発明の効果が十分に発揮されないことがある。
【0032】
上記変性ポリビニルアルコールをアセタール化する際のアルデヒドとしては、芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドが併用される。用い得る芳香族アルデヒドについては特に限定されるものではなく、例えば、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒドなどのアルキル置換ベンズアルデヒド;ハロゲン置換ベンズアルデヒド;p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒドなどのヒドロキシル基が置換した芳香族アルデヒド;アルコキシ基、アミノ基、シアノ基などの置換基を有する芳香族アルデヒド;フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒドなどのフェニル置換アルキルアルデヒドなどを挙げることができる。
【0033】
上記芳香族アルデヒドでは、親水性を高めるために、水酸基などの極性基を多く有するものであってもよい。芳香族アルデヒドの水酸基や他の極性基を増加させると、耐水性が大きく変化するが、アセトアルデヒドを添加することにより、親水性を大きく変化させることなく、記録層全体としての耐水性を高めることができる。
【0034】
上記アセタール化の方法としては、溶解法、沈殿法、均一法など、従来より公知の技術を用いることができる。
上記酸触媒については特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸;酢酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸などを用い得る。
【0035】
アセタール化度
請求項2に記載のように、上記変性ポリビニルアセタール樹脂では、好ましくは、芳香族アルデヒドでアセタール化したアセタール化度が3〜10モル%、アセトアルデヒドでアセタール化したアセトアセタール化度が10〜30モル%とされている。芳香族アルデヒドに由来するアセタール化度が3モル%未満の場合には、耐水性が低下することがあり、10モル%を超えると、逆に耐水性が高くなりすぎ、印字に際し、インクの吸収性が低下し、にじみが発生することがある。アセトアルデヒド由来のアセタール化度が10モル%未満の場合には、耐水性が低下して、本発明の効果が十分に発揮されないことがあり、30モル%を超えると、逆に耐水性が高くなりすぎ、にじみの発生することがある。
【0036】
微粉末
本発明にかかる水性インク用記録材は、支持体上に、上記変性ポリビニルアセタール樹脂に上記微粉末を添加してなるインク受容層を設けることにより構成されている。この場合、微粉末としては、上記のように、ケイ酸、シリカ、カオリン、クレー、アルミナ、炭酸カルシウム、ゼオライト、酸化チタン及びタルクからなる群から選択した少なくとも1種を用いることができる。微粉末の平均粒径は、0.05μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.02μm以下とされる。平均粒径が0.05μmを超えると、インクを十分に捕捉し得ず、鮮明度が劣化することがある。
【0037】
また、上記微粉末は、インク受容層中0.3〜20g/m2 の範囲で含有されていることが好ましい。0.3g/m2 未満では、微粉末を添加したことによるにじみ防止、インク吸収量のアップの効果が十分でなく、20g/m2 を超えると親水性が強くなりすぎ、逆ににじみの原因となるからである。
【0038】
支持体
本発明において、上記支持体としては、特に限定されず、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの合成樹脂からなるフィルムもしくはシート、不織布、繊維、布、紙、ガラス板、板、金属板などを用いることができる。
【0039】
水性インク用記録材の製造
本発明にかかる水性インク用記録材は、上記支持体上に、上記変性ポリビニルアセタール樹脂に上記微粉末及び、必要に応じて後述の添加物を添加してなるインク受容層を形成することにより得られる。より具体的には、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の水溶液に、上記微粉末等を添加し、良く混合した後、この水溶液をロールコーター法やブレードコーター法などの適宜の方法で支持体上に塗布し、乾燥することにより水性インク用記録材を形成することができる。もっとも、水性インク用記録材の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0040】
また、インク受容層は、一般に、乾燥重量で0.5〜30g/m2 程度となるように塗工することが好ましい。0.5g/m2 未満では、インク吸収量が十分でなくにじみが発生することがあり、30g/m2 を超えると、高湿度雰囲気下での吸湿性が大きくなり、耐水性が低下したり、カール(記録材が筒上に曲がること)が発生したりすることがある。
【0041】
なお、インク受容層には、本発明の目的を妨げない範囲で、必要に応じて、公知の各種添加物を配合することができる。例えば、耐水性を高めるために、ポリアミド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、グリオキザールなどの耐水化剤を添加してもよい。また、インクの吸着性能を高めるために、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、その他界面活性剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、消泡剤、防腐剤、pH調整剤などの充填剤などを添加してもよい。また、支持体とインク受容層との接着性を改善するために、支持体表面をコロナ放電などにより予め酸化処理したり、支持体に接着性樹脂層を設けてもよい。
【0042】
インク
本発明にかかる水性インク用記録材に対して用いられる水性インクとしては、特に限定されず、従来より水性インク用記録材に用いられる適宜の水性インク、例えば特開昭47−12105号公報、特開昭49−89534号公報、特開昭49−97620号公報、特開昭50−102407号公報、特開昭50−143602号公報に記載されているように、水溶性染料、水、その他水混和性有機溶剤、湿潤剤、染料可溶化剤、防黴剤などを含むものが用いられる。
【0043】
作用
請求項1の記載にかかる水性インク用記録材では、上記特定の親水性基団を有する水溶性の変性ポリビニルアセタール樹脂がインク受容層に用いられているため、印字に際し、単位面積当たりのインク使用量が多い場合であっても、後述の実施例から明らかなように、インクが速やかに吸収され、にじみが効果的に防止される。これは、上記特定の親水性基団を有するため、該親水性基団の親水性によりインク吸収性が高められているためと考えられる。
【0044】
すなわち、記録層として変性ポリビニルアセタール樹脂を用いる場合、水性インクとしては、カチオン系もしくはアニオン系の顔料または染料を用いる場合が多いが、例えば、カチオン系の顔料または染料を含む水性インクは、変性ポリビニルアセタール樹脂のアニオン系親水性基団と強く結びつくため、インクの吸収性が高められるものと考えられる。同様に、アニオン系の顔料または染料を用いる場合には、変性ポリビニルアセタール樹脂のカチオン性親水性基団と強く結びつくため、インクの吸収性が高められるものと考えられる。
【0045】
上記のように、芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドを併用してアセタール化されているので、耐水性も高められる。
また、請求項2に記載の発明では、上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、芳香族アルデヒド及び、アセトアルデヒド由来のアセタール化度が上記特定の割合とされているため、より一層インク吸収性が高められると共に、耐水性も良好なものとされる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の非限定的な実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0047】
(実施例1)
変性ポリビニルアセタール樹脂の調製
重合度1700、ケン化度88モル%、変性度1モル%のイタコン酸変性ポリビニルアルコール200gを、純水1600gに加え、90℃の温度で約2時間攪拌し、溶解させた。得られた溶液を45℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸50gを加え、さらに、20℃まで冷却し、ベンズアルデヒド15gと、アセトアルデヒド30gとを加え、25℃で4時間アセタール化反応を行った。
【0048】
しかる後、液温を20℃まで冷却し、攪拌下で濃度10重量%の水酸化ナトリウム水溶液192gを加えて、中和し、スポンジ状の沈殿物を得た。得られたスポンジ状の沈殿物を水洗し、中和塩及び未反応アルデヒドを除去し、乾燥することにより、粉末のポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0049】
水性インク用記録材の作製
上記のようにして得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を水とエタノールとを重量比で1:1で含む混合溶媒に溶解し、しかる後、平均粒径0.02μmの微粉末状ケイ酸を加え、良く混合した後、厚さ100μmのPETフィルム上に乾燥重量が12g/m2 となるように塗布し、乾燥し、インク受容層を形成した。なお、微粉末状ケイ酸は、乾燥重量12g/m2 のうち、6g/m2 であるように添加した。
【0050】
水性インク用記録材の評価
上記のようにして得た水性インク用記録材上に、市販のインクジェットプリンタ(シアン、イエロー、マジェンタの混色で黒を発色するタイプ)にて3×3cm角の領域に黒色をベタ塗り印字し、印字された画像部分の耐水性及びにじみを下記の要領で評価した。
【0051】
▲1▼耐水性…3×3cm角の黒色ベタ塗りの画像部について、印字24時間後に水道水に1分間浸漬し、引き上げた後、直後の画像部の状態を目視により観察した。結果を下記の判定基準で表した。
優 :浸す前と変わらない状態。
良 :膨潤しているが、水が乾燥すると、元の状態に戻る。
可 :インクが一部溶出し、インク受容層が膨潤している状態。
不可:インク受容層が溶解し、流れ去っている状態。
【0052】
▲2▼にじみ…3×3cm角の黒色ベタ塗りの印字部について、印字24時間後の画像部の状態を画像部周辺のぼけ具合を目視することにより観察した。判定基準は以下の通りである。
◎:画像部周辺のにじみが50μm以下の大きさ。
○:画像部周辺のにじみが100μm以下の大きさ。
△:画像部周辺のにじみが300μm以下の大きさ。
×:画像部周辺のにじみが300μmよりも大きい。
【0053】
なお、上記にじみの大きさとは、印字した狙いの大きさから画像部周辺が印字していない外側へにじんだ最大のにじみ長さを計測した場合の長さ寸法を言うものとする。
結果を下記の表1に示す。
【0054】
(実施例2)
変性ポリビニルアルコールとして、重合度1700、ケン化度98モル%であり、変性度1モル%のイタコン酸変性の変性ポリビニルアルコールを用いたこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を7モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を15モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
【0055】
上記のようにして得た変性ポリビニルアセタール樹脂を用い、平均粒径0.01μmの微粉末ケイ酸を用いたことを除いては、実施例1と同様にして記録層を形成し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0056】
(実施例3)
重合度800、ケン化度88モル%、変性度2モル%のマレイン酸変性ポリビニルアルコールを用いたこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を6モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を25モル%としたことを除いては実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
【0057】
上記のようにして得た変性ポリビニルアセタール樹脂を用い、かつ平均粒径0.01μmの微粉末アルミナを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、記録材を作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0058】
(実施例4)
重合度2000、ケン化度94モル%、変性度0.5モル%のスルホン酸変性ポリビニルアルコールを用いたこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を9モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を12モル%としたことを除いては実施例1と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。
【0059】
上記のようにして得た変性ポリビニルアセタール樹脂を用い、かつ平均粒径0.01μmの微粉末アルミナを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、記録材を作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0060】
(実施例5)
重合度1000、ケン化度80モル%、リン酸エステルを用いて変性された変性度0.1モル%の変性ポリビニルアルコールを用いたこと、芳香族アルデヒドとしてフェニルアセトアルデヒドを用いたこと、並びに、フェニルアセトアルデヒドによるアセタール化度を5モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を10モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
【0061】
この変性ポリビニルアセタール樹脂を用い、かつ平均粒径0.02μmの微粉末シリカを用いたことを除いては、実施例1と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0062】
(実施例6)
重合度1700、ケン化度88モル%、第四級アンモニウム塩としてN−〔3−(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミドを用いて変性された変性度1モル%の変性ポリビニルアルコールを用いたこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を4モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を25モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
【0063】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用い、かつ平均粒径0.02μmの微粉末シリカを用いたことを除いては、実施例1と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0064】
(実施例7)
重合度1700、ケン化度98モル%、第四級アンモニウム塩としてN−〔3−(ジメチルアミノ)プロピル〕メタクリルアミドを用いて変性された変性度1モル%の変性ポリビニルアルコールを用いたこと、芳香族アルデヒドとしてp−ヒドロキシベンズアルデヒドを用いたこと、並びに、p−ヒドロキシベンズアルデヒドによるアセタール化度を6モル%、アセトアルデヒドによるアセトアセタール化度を20モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
【0065】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用い、かつ平均粒径0.02μmの微粉末シリカを用いたことを除いては、実施例1と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表1に示す。
【0066】
(比較例1)
アセトアルデヒドを用いずに、ベンズアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を9モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0067】
(比較例2)
アセトアルデヒドを用いずに、ベンズアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、ベンズアルデヒドによるアセタール化度を12モル%としたことを除いては、実施例2と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例2と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0068】
(比較例3)
ベンズアルデヒド及びアセトアルデヒドを用いずに、フェニルアセトアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、フェニルアセトアルデヒドによるアセタール化度を10モル%としたことを除いては、実施例4と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例3と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0069】
(比較例4)
アセトアルデヒドを用いずに、p−ヒドロキシベンズアルデヒドのみでアセタール化したこと、並びに、p−ヒドロキシベンズアルデヒドによるアセタール化度を14モル%としたことを除いては、実施例6と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例7と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0070】
(比較例5)
芳香族アルデヒドを用いずに、アセトアルデヒドのみを用いてアセタール化したこと、並びに、アセトアルデヒドによるアセタール化度を30モル%としたことを除いては、実施例1と同様にして変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例1と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0071】
(比較例6)
芳香族アルデヒドを用いずに、アセトアルデヒドのみを用いてアセタール化したこと、並びに、アセトアルデヒドによるアセタール化度を20モル%としたことを除いては、実施例2と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例2と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0072】
(比較例7)
芳香族アルデヒドを用いずに、アセトアルデヒドのみを用いてアセタール化したこと、並びに、アセトアルデヒドによるアセタール化度を50モル%としたことを除いては、実施例4と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例4と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0073】
(比較例8)
芳香族アルデヒドを用いずに、アセトアルデヒドのみを用いてアセタール化したこと、並びに、アセトアルデヒドによるアセタール化度を40モル%としたことを除いては、実施例7と同様にして、変性ポリビニルアセタール樹脂を作製した。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を用いて、実施例7と同様にして記録材を作製し、評価した。結果を下記の表2に示す。
【0074】
(比較例9)
微粉末状ケイ酸を添加しなかったことを除いては、実施例1と同様にして(ただし、インク受容層の乾燥重量は12g/m2 となるようにして)、水性インク用記録材を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を下記の表2に示す。
【0075】
(比較例10)
微粉末状ケイ酸を用いなかったことを除いては、実施例2と同様にして(ただし、インク受容層の乾燥重量は12g/m2 となるようにして)、水性インク用記録材を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を下記の表2に示す。
【0076】
(比較例11)
微粉末状アルミナを用いなかったことを除いては、実施例3と同様にして(ただし、インク受容層の乾燥重量は12g/m2 となるようにして)、水性インク用記録材を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を下記の表2に示す。
【0077】
結果
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
比較例1〜4では、アセトアルデヒドによりアセタール化していないためか、画像部周辺にぼけがかなり大きく現れており、従って、インク吸収性が充分でないことがわかる。
【0081】
他方、比較例5〜8では、芳香族アルデヒドを用いていないためか、耐水性が悪く、記録性が溶解し、流れ去っていた。
なお、比較例9〜11では、微粉末状ケイ酸またはアルミナをインク受容層に添加していないため、インク受容層が膨潤し、にじみが生じていた。
【0082】
これに対して、実施例1〜7にかかる水性インク用記録材では、芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドでアセタール化してなる変性ポリビニルアセタール樹脂を用いており、かつ上記微粉末を配合しているため、画像部ににじみが全く生じず、画像周辺におけるぼけも殆ど生じず、透明性に優れていた。
【0083】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、インク受容層が、上記特定の親水性基団を有し、上記変性ポリビニルアルコールに芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドの双方を反応させてアセタール化して得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を用いているため、上記親水性基団の作用により、並びに芳香族アルデヒド及びアセトアルデヒドを用いてアセタール化しているため、耐水性及びインク吸収性の何れも良好な水性インク用記録材を提供することが可能となる。
【0084】
よって、インク付着量が多い場合でもにじみが生じ難いので、記録のマルチカラー化、ファインドット化、印字速度の高速化に容易に対応することが可能となる。さらに、透明性においても優れているため、OHP用シートなどの記録画像の透過光により画像を観察するシートにも上記水性インク用記録材を好適に用いることができる。
【0085】
また、請求項2に記載の発明にかかる水性インク用記録材では、芳香族アルデヒド由来のアセタール化度が3〜10モル%、アセトアルデヒド由来のアセタール化度が10〜30モル%の範囲とされているので、耐水性及びインク吸収性の双方においてより一層優れた水性インク用記録材を確実に提供することが可能となる。
Claims (2)
- 前記芳香族アルデヒドでアセタール化されたアセタール化度が3〜10モル%、アセトアルデヒドでアセタール化されたアセトアセタール化度が10〜30モル%である請求項1に記載の水性インク用記録材。
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JP28257496A JP3720929B2 (ja) | 1996-10-24 | 1996-10-24 | 水性インク用記録材 |
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JPH10119421A JPH10119421A (ja) | 1998-05-12 |
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JP28257496A Expired - Lifetime JP3720929B2 (ja) | 1996-10-24 | 1996-10-24 | 水性インク用記録材 |
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JP3458068B2 (ja) | 1999-04-02 | 2003-10-20 | 株式会社巴川製紙所 | インクジェット記録用媒体 |
-
1996
- 1996-10-24 JP JP28257496A patent/JP3720929B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10119421A (ja) | 1998-05-12 |
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