JP4524181B2 - Cd16a結合タンパク質および免疫障害治療のための使用 - Google Patents

Cd16a結合タンパク質および免疫障害治療のための使用 Download PDF

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Description

本発明は、CD16A結合タンパク質、および免疫障害治療のための方法に関する。本発明は、生物医学分野および免疫学分野において適用される。
Fcγ受容体(FcγR)は、免疫グロブリンG(IgG)分子のFc領域に結合する細胞表面受容体である。様々な機能の中でもとりわけ、これらの受容体は、抗体抗原複合体の形成をエフェクター細胞応答に共役させる。例えば、免疫複合体による活性化Fcγ受容体(activating Fcγ receptor)の架橋結合によって、病原菌食作用、直接細胞傷害による外来細胞および形質転換細胞の死滅、有害物質の除去、ならびに炎症反応の開始が引き起こされることがある。Fcγ受容体が自己免疫で重要な役割を果たすことが、特に注目される。自己抗体が活性化Fc受容体に結合することによって、特発血小板欠乏症性紫斑病、炎症性関節腫脹、全身性エリテマトーデス、および自己免疫溶血性貧血などの自己免疫疾患の病原性続発症(pathogenic sequelae)が引き起こされる。
ヒトおよび齧歯動物には、3クラスのFcγ受容体があり、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIと呼ばれる(Ravetch and Bolland、2001 Annual Rev.Immunol 19:275-90、およびRavetch and Kinet、1991、Annual Rev.Immunol.9:457-92参照)。FcγRI部位は、概して単量体免疫グロブリンが占めるが、RII受容体およびRIII受容体は通常空いており、免疫複合体との相互作用に利用可能である。FcγRIは、CD64とも呼ばれ、単量体免疫グロブリンと高い親和性で結合し、単球表面およびマクロファージ表面に存在する。FcγRIIは、CD32とも呼ばれ、中等度の親和性で多量体免疫グロブリン(免疫複合体または凝集IgG)に結合し、B細胞、血小板、好中球、マクロファージ、および単球を含む様々なタイプの細胞の表面に存在する。FcγRIIIは、CD16とも呼ばれ、中等度の親和性で多量体免疫グロブリンに結合し、骨髄細胞表面における主要な活性化FcγRである。2つの型のFcγRIIIが見出されている。FcγRIIIA(CD16A)は、膜貫通シグナル伝達型(50-65 kDa)であり、NK細胞、単球、マクロファージ、および特定のT細胞で発現される。FcγRIIIB(CD16B)は、グリコシルホスファチジルイノシトール固定型(48kDa)型であり、ヒト好中球によって発現される。例えば、Scallon et al.、1989、Proc.Natl.Acad Sci.、U.S.A.86:5079-83、およびRavetch et al.、1989、J.Exp.Med.170:481-97参照。CD16Aのタンパク質配列および核酸配列は、GenBankに登録番号P08637(タンパク質)およびX52645(核酸)として、ならびにSWISS-PROTに登録番号CAA36870として登録されている。CD16Bのタンパク質配列および核酸配列は、GenBankに登録番号O75015(タンパク質)およびX16863(核酸)として、ならびにSWISS-PROTに登録番号CAA34753として登録されている。
一態様において、本発明は自己免疫疾患をもつ患者の治療に使用できるCD16A結合タンパク質を提供する。本発明のCD16A結合タンパク質は、マウス抗体ではなく、VHドメインおよび/またはVLドメインを含有する、キメラ抗体、ヒト抗CD16Aモノクローナル抗体、ヒト化抗CD16Aモノクローナル抗体、それらの断片、単鎖抗体、ならびに他の結合タンパク質を含む。
一態様において、このCD16A結合タンパク質は、エフェクター機能を欠失し、かつ/または、Fcエフェクターリガンドへの結合性が低下するように改変されているヒトIgG重鎖由来のFc領域(例えば、ヒトIgG1に由来するFc領域)を含む。一実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、例えば、Fc領域の残基297で置換されているため、グリコシル化されない。
一態様において、このCD16A結合タンパク質は、マウスモノクローナル抗体3G8のVHドメインに由来する3つの相補性決定領域(CDR)を含むVHドメインを有するヒト化3G8抗体である。一実施形態において、このVHドメインは、Hu3G8VH-1のVHドメインの配列をもつ。一実施形態において、このCD16A結合タンパク質のCDRは、マウスCDRの配列をもつ。いくつかの変形実施形態において、このVH領域CDRは、少なくとも、下記に示す置換の1つまたは複数によって、3G8のCDRと異なったものとなっている。すなわち、CDR1内の34位にあるVal、CDR2内の50位にあるLeu、CDR2内の52位にあるPhe、CDR2内の54位にあるAsn、CDR2内の60位にあるSer、CDR2内の62位にあるSer、CDR3内の99位にあるTyr、およびCDR3内の101位にあるAspである。一実施形態において、このVHドメインは、Hu3G8VH-22のVHドメインの配列をもつ。一実施形態において、このVHドメインは、配列番号51の配列をもつFR3ドメインを含む。このVHドメインは、定常ドメイン、例えば、ヒトCγ1抗体重鎖定常ドメインに結合することができる。
いくつかの変形実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、表3に記載の配列をもつVHドメインを有する。いくつかの変形実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、表1に示されている置換の1つまたは複数によって、Hu3G8VH-1の配列と異なったものとなっているVHドメインを有する。
一態様において、このCD16A結合タンパク質は、マウスモノクローナル抗体3G8のVLドメインに由来する3つの相補性決定領域(CDR)を含むVLドメインを有するヒト化3G8抗体である。一実施形態において、このCD16A結合タンパク質のCDRは、マウスCDRの配列をもつ。いくつかの変形実施形態において、このVL領域CDRは、少なくとも、下記に示す置換の1つまたは複数で、3G8のCDRと相違している。すなわち、CDR1内の24位にあるArg、CDR1内の25位にあるSer、CDR1内の32位にあるTyr、CDR1内の33位にあるLeu、CDR1内の34位にあるAla、CDR2内の50位にあるAsp、Trp、またはSer、CDR2の51位にあるAla、CDR2内の53位にあるSer、CDR2内の55位にあるAlaまたはGln、CDR2内の56位にあるThr、CDR3内の92位にあるTyr、CDR3内の93位にあるSer、およびCDR3内の94位にあるThrである。一実施形態において、このVLドメインは、Hu3G8VL-1、Hu3G8VL-22、またはHu3G8VL-43のVLドメインの配列をもつ。このVLドメインは、定常ドメイン、例えば、ヒトCκ抗体重鎖定常領域に結合することができる。
いくつかの変形実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、表4に記載の配列をもつVLドメインを有する。いくつかの変形実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、表2に示されている置換の1つまたは複数で、Hu3G8VL-1の配列と相違しているVLドメインを有する。
一態様において、このCD16A結合タンパク質は、上述のようなVHドメインおよびVLドメインの両方(それらは、重鎖をコードするポリヌクレオチドと、軽鎖をコードするポリヌクレオチドとの共発現によって調製できる)を含む。場合によっては、ヒト化重鎖可変領域は表3に記載の配列を含むものであり、かつ/またはヒト化軽鎖可変領域は表4に記載の配列を含むものである。例えば、例示的実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、配列番号113の配列をもつ重鎖可変領域と、配列番号96、100、または1118の配列をもつ軽鎖可変領域とを有する。別の例示的実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、配列番号109の配列をもつ重鎖可変領域と、配列番号96の配列をもつ軽鎖可変領域とを有する。別の例示的実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、配列番号104の配列をもつ重鎖可変領域と、配列番号96の配列をもつ軽鎖可変領域とを有する。
一実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、2つの軽鎖と、2つの重鎖とを含む四量体抗体であり、前記軽鎖はVLドメインおよび軽鎖定常ドメインを含み、前記重鎖はVHドメインおよび重鎖定常ドメインを含む。一実施形態において、軽鎖定常ドメインはヒトCκであり、かつ/または重鎖定常領域はCγ1である。
本発明の一実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、CD16AまたはsCD16Aが、5nMより小さい結合定数で結合する抗原結合部位を含む。
一実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、無改変のFc領域を含む標準CD16A結合タンパク質(例えば、297位でグリコシル化されたヒトIgG1Fcドメイン)に比べて、少なくとも1つのFcエフェクターリガンドに対する結合性が低下している、グリコシル化されていないFc領域を含む。Fcエフェクターリガンドは、FcγRIII、または補体成分C1qであってもよい。
一実施形態において、本発明は、CD16Aに結合して、Fc受容体がCD16に結合するのを阻害するヒト化抗体であるCD16A結合タンパク質を提供する。
一態様において、本発明は、本明細書に記載されているCD16A結合タンパク質、および薬剤として許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
一態様において、本発明は単離ポリヌクレオチドを提供し、任意選択で、本明細書に記載されているCD16A結合タンパク質のVHドメインをコードする発現ベクターを提供する。一態様において、本発明は単離核酸を提供し、任意選択で、本明細書に記載されているCD16A結合タンパク質のVLドメインをコードする発現ベクターを提供する。一態様において、本発明は、本明細書に記載されているポリヌクレオチドを含む細胞を提供し、任意選択で、そのようなポリヌクレオチドを含む哺乳類細胞を提供する。一態様において、本発明は、本明細書に記載されているCD16A結合タンパク質を発現する細胞系を提供し、任意選択で、そのようなCD16A結合タンパク質を発現する哺乳類細胞系を提供する。
本発明はさらに、哺乳動物に、本明細書に記載されているCD16A結合タンパク質を投与することを含む、哺乳動物で有害な免疫応答(または、望ましくない免疫応答)を軽減する方法を提供する。一実施形態において、有害な免疫応答の軽減は、抗体介在性の血小板欠乏症に対する防御を含む。
一態様において、本発明は、哺乳動物で好中球減少症(例えば、重症の好中球減少症、または中等度の好中球減少症)を引き起こすことなく、有害な免疫応答を治療する方法であって、哺乳動物にヒトIgG由来のFc領域をもつCD16A結合タンパク質を投与することを含み、かつこのFc領域の297位にあるアミノ酸がグリコシル化されていない方法を提供する。
上述の方法の実施形態において、有害な免疫応答は炎症反応であり、例えば自己免疫疾患によって引き起こされる炎症反応である。一実施形態において、このような炎症反応は、特発血小板欠乏症性紫斑病(ITP)、慢性関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫溶血性貧血(AHA)、強皮症、自己抗体誘発じんま疹、天疱瘡、脈管炎症候群、全身性血管炎、グッドパスチャー症候群、多発性硬化症(MS)、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、ライター症候群、Kowasaki病、多発性筋炎、および皮膚筋炎によって引き起こされる。本発明によって治療可能な、疾病または病態の他の例には、静脈免疫グロブリン(IVIG)療法による治療が効果をもつどのような疾病(例えば、アレルギー性ぜん息)も含まれる。本発明は、自己免疫疾患から防御し、かつ、著しい好中球減少を哺乳動物でもたらさないCD16A結合タンパク質を提供する。一実施形態において、これらのCD16A結合タンパク質は抗CD16A抗体である。これらのCD16A結合タンパク質は、特に、ヒト治療薬として有用である。一態様において、本発明は、ヒトIgGに由来するFc領域を有し、かつ、グリコシル化されていないアミノ酸を、Fc領域の各CH2ドメインの297位に有するCD16A結合タンパク質を投与することによって、哺乳動物の自己免疫疾患を、その哺乳動物において好中球減少すなわち好中球減少症を伴うことなく治療する方法を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、CD16A結合タンパク質が細胞表面のFcγRIIIに結合する条件下に、細胞をCD16A結合タンパク質と接触させることによって、IgG抗体が細胞表面のFcγRIIIに結合するのを阻害する方法を提供する。
一態様において、本発明は、有害な免疫応答の治療における治療効率が向上しているCD16A結合タンパク質を作る方法であって、i)IgGに由来するFc領域を含む、第1のCD16A結合タンパク質を得るステップと、ii)第1のCD16A結合タンパク質のFc領域を改変して、Fc領域の297位が脱グリコシル化されている、第2のCD16A結合タンパク質を生成するステップとを含み、第2のCD16A結合タンパク質が、哺乳動物に投与したとき、有害な免疫応答の治療において、第1のCD16A結合タンパク質より、効果的であるCD16A結合タンパク質を作る方法を提供する。
一態様において、本発明は、有害な免疫応答の治療における治療効率が向上しているCD16A結合タンパク質を作る方法であって、i)IgGに由来するFc領域を含む、第1のCD16A結合タンパク質を得るステップと、ii)第1のCD16A結合タンパク質のFc領域を改変して、第1のCD16A結合タンパク質の改変されていないFc領域に比べ、Fcエフェクターリガンドへの結合性が低下している、第2のCD16A結合タンパク質を生成するステップとを含み、第2のCD16A結合タンパク質が、哺乳動物に投与したとき、有害な免疫応答の治療において、第1のCD16A結合タンパク質より、効果的であるCD16A結合タンパク質を作る方法を提供する。一実施形態において、Fcエフェクターリガンドは、FcγRIIIまたは補体成分C1qである。
一態様において、この方法は、CD16A結合タンパク質を投与して、3G8の投与に起因する、1つまたは複数の著しい有害効果を誘発することなく、また、そのような有害効果が誘発されても、マウス3G8の投与によって誘発されるレベルより有意に低いレベルに抑えながら、対象における有害な免疫応答を軽減させるものである。
本発明の一実施形態において、有害な免疫応答の治療における治療効率を向上させることは、抗体介在性の血小板欠乏症に対する防御の有効性を向上させることを含む。そのような有害な免疫応答は、場合によっては、特発血小板欠乏症性紫斑病(ITP)によるもの、または、マウスモノクローナル抗体6A6をmuFcγRIII-/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに投与したことによるものである。
本発明は、エフェクター機能が欠損されているFc領域であって、ヒトIgG重鎖に由来するFc領域を含有するCD16A結合タンパク質の、免疫異常症の治療のため、または免疫異常症治療用薬物の調製のための使用法を提供する。
1.定義
別段の定義がない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語、表記法、および他の科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって共通に理解されている意味をもつものとする。本明細書において、場合によっては、共通に理解されている意味をもつ用語が、明確さを目的として、および/または参照の容易さを目的として定義されているが、本明細書にそのような定義が含まれていても、必ずしも当技術分野で一般に理解されている意味との実質的な相違を表すものと解釈するべきではない。本発明の実施は、別段の指示がない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生理学、生化学、核酸化学、および免疫学における従来技術を使用するものであり、それらは当技術分野の技術に含まれる。そのような技術は、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.、eds.、1999、including supplements through 2001);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.、eds.、1987、including supplements through 2001);Molecular Cloning:A Laboratory Manual、third edition(Sambrook and Russel、2001);PCR:The Polymerase Chain Reaction、(Mullis et al.、eds.、1994);The Immunoassay Handbook(D.Wild、ed.、Stockton Press NY、1994);Bioconjugate Techniques(Greg T.Hermanson、ed.、Academic Press、1996);Methods of Immunological Analysis(R.Masseyeff、W.H.Albert、and N.A.Staines、eds.、Weinheim:VCH Verlags gesellschaft mbH、1993);Harlow and Lane、Using Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1999;およびBeaucage et al.eds.、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry、John Wiley & Sons,Inc.、New York、2000)などの文献に十全に説明されている。
「重鎖」、「軽鎖」、「可変領域」、「フレームワーク領域」、「定常ドメイン」などの用語は、免疫学の分野における、それらの通常の意味を有し、天然存在の免疫グロブリンの各ドメイン、および合成(例えば、組換え)結合タンパク質(例えば、ヒト化抗体)の対応する各ドメインを意味する。天然存在の免疫グロブリン(例えば、IgG)の基本的構造単位は、2つの軽鎖と、2つの重鎖とをもつ四量体である。通常、天然存在の免疫グロブリンは、約150,000ダルトンの糖タンパク質として発現されるが、下記に説明するように、IgGはグリコシル化されていない形状でも生成することができる。各鎖のアミノ末端(「N」)部分は、約100から110個のアミノ酸、またはそれより多数のアミノ酸からなる、主として抗原認識の役割をもつ可変領域を含む。各鎖のカルボキシル末端(「C」)部分は定常領域を画定しており、軽鎖は単一の定常領域をもち、重鎖は通常3つの定常領域と、ヒンジ領域とをもつ。即ち、IgG分子軽鎖の構造はN-VL-CL-Cであり、IgG重鎖の構造はN-VH-CH1-H-CH2-CH3-C(ただし、Hはヒンジ領域)である。IgG分子の可変領域は複数の相補性決定領域(CDR)からなり、相補性決定領域は、抗原と、フレームワークセグメントと呼ばれる非CDRセグメントとに接触する残基を含むが、フレームワークセグメントは、CDRの構造を維持し、CDRループの位置決定を行うものである。即ち、VLドメインおよびVHドメインは、N-FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4-Cという構造をもつ。
本明細書において、「CD16A結合タンパク質」、「CD16A抗体」、および「抗CD16A抗体」という用語は、互換性をもって使用され、様々な免疫グロブリン様タンパク質、または免疫グロブリン由来タンパク質を意味する。「CD16A結合タンパク質」は、VLドメインおよび/またはVHドメインとの相互作用を介して(Fc介在結合とは異なって)、CD16Aと結合する。CD16A結合タンパク質の例には、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体(例えば、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む)、それらの断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片)、二機能性抗体または多機能性抗体(例えば、Lanzavecchia et al.、1987、Eur.J.Imnaunol.17:105参照)、単鎖抗体(例えば、Bird et al.、1988、Science 242:423-26参照)、融合タンパク質(例えば、ファージディスプレー融合タンパク質)、「低分子抗体(minibody)」(例えば、米国特許第5,837,821号参照)、ならびにVLドメインおよび/またはVHドメインを含む他の抗原結合タンパク質、またはそれらの断片が含まれる。一態様において、CD16A結合タンパク質は「四量体抗体」であり、即ち、概ね天然存在のIgGの構造をもち、可変ドメインおよび定常ドメインの両方を含む(即ち、VLドメイン、およびヒトCκなどの軽鎖定常ドメインを含む軽鎖2つ、ならびにVHドメインと、重鎖ヒンジドメインと、ヒトCγ1などの重鎖定常ドメインとを含む重鎖2つ)。明確に指摘される場合を除き、マウス抗体3G8は、CD16A結合タンパク質の定義から特別に除外される。
結合タンパク質または抗体(本明細書で広義に定義される)について言及するとき、各ドメインへのアミノ酸の指定は、Kabat、SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST(National Institutes of Health、Bethesda、Md.、1987 and 1991)の定義に従って行った。免疫グロブリンの成熟型重鎖および軽鎖の可変領域に由来するアミノ酸は、その成熟型重鎖または軽鎖におけるアミノ酸の位置によって命名される。Kabatは、多数の抗体のアミノ酸配列を記載し、各サブ群のアミノ酸共通配列を同定し、さらに各アミノ酸の残基番号を指定した。Kabatのナンバリングスキームは、保存されているアミノ酸を参照して問題の抗体をKabatの総説にある共通配列の1つと整列させることによって、Kabatの総説に含まれていない抗体にも拡張することが可能である。残基番号を指定するこの方法は、当技術分野における標準となっており、この方法によって、キメラ変種またはヒト化変種を含む様々な抗体における、等価な位置にあるアミノ酸の同定が容易にできる。例えば、ヒト抗体軽鎖の50位にあるアミノ酸は、マウス抗体軽鎖の50位にあるアミノ酸と等価な位置を占める。したがって、本明細書で、キメラ抗体またはヒト化抗体について述べる文脈において、「Fc領域の297位にある」などといった言及は、ある免疫グロブリン鎖中、ある免疫グロブリン鎖の領域中、またはある免疫グロブリン鎖に由来するポリペプチドの領域中における、対応するヒト免疫グロブリンの297位に対応するアミノ酸位置を意味する。
免疫グロブリン「Fc領域」とは、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を意味する。Fc領域の境界は幾分変化しうるものであるが、通常、Fc領域は、このポリペプチドのほぼ226〜230位からカルボキシル末端までにわたる領域をいう(CH2ドメインおよびCH3ドメインを包含する)。ヒトFc領域の配列は、上記のKabatの総説に記載されている。さらに、様々なアロタイプ性変種の存在が知られている。
「Fcエフェクターリガンド」は、IgG抗体のFc領域に結合し、それによってエフェクター機構を活性化して、病原体の除去または破壊をもたらすリガンドである。Fcリガンドには、3つの細胞性Fc受容体型、即ちFcRγI、FcRγII、およびFcRγIIIが含まれる。これら3つのFc受容体型それぞれがもつ多数のイソ型もFcエフェクターリガンドに含まれる。したがって、「Fcエフェクターリガンド」という用語には、FcRγIIIA(CD16A)およびFcRγIIIB(CD16B)が両方とも含まれる。「Fcエフェクターリガンド」という用語には、さらに新生児Fc受容体(Fcγn)およびC1q補体成分も含まれる。IgGがFc受容体に結合することによって、抗体依存-細胞媒介細胞傷害(ADCC)と、炎症仲介物質の放出と、抗体産生の制御と、免疫複合体の除去と、抗体で被覆された粒子の破壊とを含む様々な生物学的プロセスが引き起こされる。C1q補体成分がIgGに結合すると、補体系が活性化される。補体の活性化は、オプソニン化、病原体細胞の溶解、および炎症反応において重要な役割を果たしている。
本明細書における「エフェクター機能を欠失している」Fc領域とは、Fc領域に結合せず、かつ/またはC1q補体成分に結合せず、さらにそのような結合に特徴的な生物学反応を引き起こさないFc領域である。
「グリコシル化部位」という用語は、哺乳類細胞によって糖残基が結合する場所として認識されるアミノ酸残基を意味する。オリゴ糖などの糖が結合するアミノ酸残基は、通常、アスパラギン残基(N-結合)、セリン残基(O-結合)、およびトレオニン残基(O-結合)である。糖鎖の特異的結合部位は、通常、特徴的なアミノ酸配列をもち、それらの配列は、「グリコシル化部位配列」と呼ばれている。N結合型グリコシル化のためのグリコシル化配列は、-Asn-X-Ser-、または-Asn-X-Thr-であるが、ここでXは、プロリン以外の通常のアミノ酸であればどのアミノ酸でもよい。ヒトIgGのFc領域は、2か所のグリコシル化部位をもち、CH2ドメインそれぞれに1か所ずつある。ヒトIgGのCH2ドメイン中のグリコシル化部位で起きるグリコシル化は、297位にあるアスパラギン(Asn297)におけるN結合型グリコシル化である。
抗体について述べるとき、「キメラ」という用語は、当技術分野における通常の意味をもち、重鎖および/または軽鎖の一部が、ある生物種(例えば、マウス)からの抗体と同一または相同であるが、それ以外の部分が別の生物種(例えば、ヒト)の抗体と同一または相同である抗体を意味する。
本明細書において、「ヒト化」という用語は、当技術分野における、その用語の通常の意味をもつ。一般的に言って、非ヒト抗体のヒト化では、非ヒト免疫グロブリンのVL領域からのCDR配列、およびVH領域からのCDR配列が、置換によってヒトフレームワーク領域中に挿入される。さらに、本明細書における「ヒト化」抗体は、親和性を増大させるため、または他の目的のために、CDR領域および/またはフレームワーク領域に、置換または変異を追加導入することもできる。例えば、非ヒトフレームワークのアミノ酸残基群を、ヒト配列で置換することによって、親和性を増大させることが可能である。例えば、Jones et al.、1986、Nature 321:522-25;Queen et al.、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:10029-33;Foote and Winter、1992、J.Mol.Biol.224:487-99;Chothia et al.、1989、Nature 342:877-83;Riechmann et al.、1988、Nature 332:323-27;Co et al.、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88:2869-73;Padlan、1991、Mol.Immunol 28:489-98を参照のこと。その結果得られる可変ドメインは、非ヒトCDR配列と、ヒト抗体フレームワーク配列、またはヒト共通配列(例えば、上記のKabatの総説に開示されている)に由来するフレームワーク配列とをもつ。様々な異なるヒトフレームワーク領域は、本発明のヒト化モノクローナル抗体のベースとして、単独で用いることもできるし、または組み合わせて用いることもできる。ヒト化抗体のフレームワーク配列は、「実質上ヒトの」配列であり、これは、ヒト抗体配列の少なくとも約70%、通常少なくとも約80%、最も高い頻度では少なくとも約90%のフレームワーク配列が、ヒト抗体配列に由来することを意味する。いくつかの実施形態において、実質上ヒトのフレームワークは、FR4ドメイン(例えば配列番号64)の113位にあるセリンを含む。本明細書における「ヒト化抗体」には、非ヒト抗体に由来するCDRと、ヒトフレームワーク領域に由来するフレームワーク配列とを含有する、四量体抗体、単鎖抗体、および抗体断片などが含まれる。
本明細書における「哺乳動物」には、ヒト、非ヒト霊長類、マウスやラットなどの齧歯動物、および他の哺乳動物が含まれる。
本明細書において、「好中球減少症」は、通常の意味をもち、血液中を循環する好中球の数が異常に少ない状態を意味する。ヒト血液中における好中球の正常レベルは、年齢および人種によってわずかに異なる。成人の平均レベルは、約1500細胞/mm3血液である。好中球数が500細胞/mm3より少なくなると、深刻な感染症にかかる危険が非常に大きくなる。一般的に言って、ヒトにおける深刻な好中球減少症は、血中好中球数が約500細胞/mm3より少ないことによって定義され、また中程度の好中球減少症は、血中好中球数が約500〜1000細胞/mm3であることによって特徴付けられる。
本明細書において、「治療」とは、治療されている個体または細胞の疾病過程を変化させようと試みる臨床的診療行為を意味し、予防を目的として行うことも、または臨床病理検査の実践過程において行うこともできる。治療効果には、疾患の発病予防または再発予防、症候の寛解、疾患の直接的または間接的な予後(pathological consequence)のいずれかの軽減、疾患の進行速度の低減、病態の改善または寛解、および予後の寛解または改善が含まれるが、これらに限定されるものではない。
「有効量」とは、治療において、有益な、または望ましい臨床結果を与えるのに十分な量である。有効量は、患者に1回用量として投与しても、複数回用量として投与してもよい。「治療有効量」とは、疾患の寛解、改善、もしくは安定化、疾患進行の逆転もしくは減速、またはその他の方法による、疾患の予後の軽減、もしくは疾患の症候の軽減を行うのに十分な量である。そのような寛解または軽減は、恒久的なものである必要はなく、また、通常恒久的ではないが、少なくとも1時間、少なくとも1日、少なくとも1週間、またはそれ以上の期間からの範囲にある一定の期間にわたるものであろう。有効量は、一般的には医師によってケースバイケースの原則で決定され、そのような技術も、当技術分野の技術の範囲内にある。有効量を達成するのに適切な用量を決定する際には、通常、いくつかの要因を考慮に入れる。これらの要因には、患者の年齢、性別、および体重、治療する病態、病態の重篤度、ならびに投与されるCD16A結合タンパク質の形状および有効濃度が含まれる。「炎症を軽減する量」とは、対象の炎症を軽減する量である。炎症の軽減は、C反応性タンパク質レベルの減少、補体消費の減少、炎症部位(例えば、慢性関節リウマチ患者の関節、狼蒼患者の腎臓、髄鞘など)における免疫複合体沈降物の減少、部位カイン放出の減少、マクロファージおよび好中球の移動などを含む当技術分野で公知の基準によって評価することができる。
本明細書において、「実質上の配列同一性」とは、2つ以上の配列または部分配列(例えば、ドメイン)を比較し、一致率が最大になるように整列させたとき、それらが、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸同一性をもつことを意味する。2つの類似配列(例えば、抗体可変領域)間の配列同一性は、(1)それらの配列の全長にわたって、または、2つの配列の配列の長さが異なる場合には、それらのうちの短い方の全長にわたって、同一アミノ酸の総数が最大になるように、それらの配列を整列する(ここで、整列した配列の長さ、または整列した配列の短い方の長さを「L」残基とする)こと;(2)アミノ酸同一性が存在する位置を計数し(比較から除外するように指定された残基の数「E」は含まない)、同一である位置の数を「N」とすること;(3)および、Nを、LからEを引いた数で割ることによって、評価できる。例えば、それぞれ約80残基の長さの2つの配列を比較し、そのうち特定の6残基が比較から除外され、かつ残りの74の位置のうち65の位置で同一であった場合、配列同一性は、N/(L-E)、即ち65/(80-6)、即ち87.8%であるだろう。(限定ではなく、例示の目的で言うと、ある複数の残基が融合タンパク質の非抗体ドメインにあるとき、これらの残基が比較から「除外される」残基として指定することができる)。あるいは、最適整列および配列同一性は、Smith & Waterman、1981、Adv.Appl.Math.2:482[局所相同性アルゴリズム]、Needleman & Wunsch、1970、J.Mol.Biol.48:443[相同性整列アルゴリズム]、Pearson & Lipman、1988、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444[類似性探索法]、またはAltschul et al.、1990、J.Mol.Biol.215:403-10[BLASTアルゴリズム]に記載されているアルゴリズムをコンピューターによって実行することで計算することもできる。上記のAusubel et al、およびWisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WI)におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAを参照のこと。前述のアルゴリズムのどれかを用いるときには、デフォルトパラメータ(ウインドウ長、ギャップペナルティなど)が使用される。あるアミノ酸配列または核酸配列が、第2の配列に「実質上類似」であるのは、配列相同性の程度が少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、または少なくとも約90%同一、または実に、少なくとも95%同一であるときである。相互に実質上同一である配列は、相互に実質上類似でもある。
本明細書において、あるポリペプチド配列、ポリペプチドドメイン配列、ポリペプチド領域配列、またはアミノ酸配列が、別の配列に「由来する」とは、そのような2つの配列が同一または実質上類似であり、かつ類似の生物機能をもつ場合をいう。例えば、ヒト化マウスモノクローナル抗体においては、相補性決定領域(CDR)が対応するマウスモノクローナル抗体CDRに「由来し」、可変ドメインフレームワーク領域が対応するヒト抗体フレーム配列に「由来する」ことができる。あるドメイン等と、その親ドメインとが、例えば、本明細書に記載されているタンパク質など、このドメイン等を含むタンパク質の結合親和性もしくは他の特性を変化させる突然変異、あるいは変化させない突然変異の導入により、異なる配列をもつ場合でも、このドメイン等が、その親ドメイン等に由来しうることは明白であろう。また、通常、ある親ドメイン等に「由来する」ドメイン等は、この親分子からの物質(例えば、遺伝物質)または情報(例えば、核酸配列、もしくはアミノ酸配列)を用いて、生成、産生、または設計されることが、理解されるであろう。
下記のような、アミノ酸を表す標準的な略号が使用される。すなわち、アラニン、Ala(A);セリン、Ser(S);トレオニン、Thr(T);アスパラギン酸、Asp(D);グルタミン酸、Glu(E);アスパラギン、Asn(N);グルタミン、Gln(Q);アルギニン、Arg(R);リジン、Lys(K);イソロイシン、Ile(I);ロイシン、Leu(L);メチオニン、Met(M);バリン、Val(V);フェニルアラニン、Phe(F);チロシン、Tyr(Y);トリプトファン、Trp(W);グリシン、Gly(G);ヒスチジン、His(H);プロリン、Pro(P);およびシステイン、Cys(C)である。
2.緒言
FcγRIIIA受容体、すなわちCD16Aは、細胞傷害抗体および免疫複合体抗体をエフェクター反応と共役させる役割を果たしている。自己免疫疾患および他の疾患状態では、FcγRIIIA受容体と免疫グロブリン凝集(例えば、免疫複合体)との相互作用が生じ、それによって、対象における有害な炎症反応が引き起こされると考えられている。特定の機構に拘泥するものではないが、この炎症反応は、FcγRIIIA受容体(本明細書において、通常、「CD16A」または「CD16A受容体」と呼ぶ)と、免疫グロブリン凝集との相互作用を減弱させることによって、緩和されるものと考えられている。同様に特定の機構に拘泥するものではないが、CD16Aと免疫グロブリン凝集との相互作用を減少させる方法の1つは、抗CD16A抗体、または他のCD16A結合タンパク質を使用して、この相互作用を阻害することであると考えられている。
モノクローナル抗体3G8(「mAb3G8」)は、ヒトCD16AおよびCD16BのFc結合ドメインにKaが1×109M-1で結合するマウスモノクローナル抗体である(Fleit et al.、1982、Proc.Natl.A cad Sci.U.S.A 79:3275-79)。3G8は、ヒトIgG1複合体が、単離ヒトNK細胞、単球、好中球、およびCD16Aを遺伝子導入した293細胞に結合するのを阻害する。特発血小板欠乏症性紫斑病(ITP)治療を目的として、ヒト患者にmAb 3G8を投与する実験が行われている(Clarkson et al.、1986、N.Engl.J Med.314:1236-39;Soubrane、et al.、1993、Blood 81:15-19)。3G8投与によって血小板レベルが増大することが報告されたが、これには、HAMA反応、部位カイン放出症候群、および/または著しい好中球減少症を含む1つまたは複数の著しい副作用が伴っていた。
本発明は、ヒト化および/または非グリコシル化モノクローナル抗体を含む新規CD16A結合タンパク質、ならびにこれらのタンパク質を投与することによって、有害な免疫応答を軽減する方法を提供する。自己免疫溶血性貧血(AHA)および特発血小板欠乏症性紫斑病という、2つの異なる自己免疫疾患のよく確立されたモデルにおいて、これらCD16A結合タンパク質の投与は予防効果があることが示されている。これらの結果は、この治療が他の自己免疫疾患にも治療効果をもつことを示唆している。さらに、本発明者らは、予想外なことに、エフェクター機能が改変されている抗CD16A抗体(例えば、非グリコシル化抗体)を投与することによって、自己免疫疾患に特徴的な有害な免疫応答に対する防御が、深刻な急性好中球減少症を引き起こすことなく行えることを発見した。即ち、本発明は、他の治療法の使用で見られる著しい副作用を伴わない、自己免疫病態の抗体介在エフェクター機能性治療(antibody-mediated effected treatment)の新規試薬および方法を提供する。
3.CD16A結合タンパク質
本発明の方法において、様々なCD16A結合タンパク質を使用することができる。適当なCD16A結合タンパク質には、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、およびCD16A結合タンパク質断片(例えば、scFv抗体、単鎖抗体、Fab断片、低分子抗体)、ならびに、軽鎖可変領域、重鎖可変領域、または、これら両方との相互作用を介してCD16Aに結合する他の抗体様タンパク質が含まれる。
いくつかの実施形態において、本発明に従って使用するCD16A結合タンパク質は、マウス抗CD16A抗体などの非ヒト抗CD16A抗体に由来する配列をもつ1つまたは複数のCDRと、1つまたは複数のヒト免疫グロブリンのフレームワーク配列に由来する1つまたは複数のフレームワーク領域とを有する、VLドメインおよび/またはVHドメインを含む。CDRおよび他の配列をそれから得ることのできる非ヒト抗CD16Aモノクローナル抗体は多数知られている(例えば、Tamm and Schmidt、1996、J.Imm.157:1576-81;Fleit et al.、1989、p.159;LEUKOCYTE TYPING II:HUMAN MYELOID AND HEMATOPOIETIC CELLS、Reinherz et al.、eds.New York、Springer-Verlag、1986;LEUKOCYTE TYPING III:WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS McMichael AJ、ed.、Oxford:Oxford University Press、1986;LEUKOCYTE TYPING IV:WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS、Kapp et al.、eds.Oxford Univ.Press、Oxford;LEUKOCYTE TYPING V:WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS、Schlossman et al.、eds.Oxford Univ.Press、Oxford;LEUKOCYTE TYPING VI:WHITE CELL DIFFERENTIATION ANTIGENS、Kishimoto、ed.Taylor & Francisを参照のこと)。加えて、実施例に示されるように、細胞表面に発現するヒトCD16Aを認識する新規なCD16A結合タンパク質は、モノクローナル抗体または関連する結合タンパク質を生成、選択する周知の方法(例えば、ハイブリドーマ技術、ファージディスプレーなど)を用いて取得することができる。例えば、O'Connel et al.、2002、J.Mol.Biol.321:49-56;Hoogenboom and Chames、2000、Imm.Today 21:371078;およびKrebs et al.、2001、J.Imm.Methods 254:67-84;ならびに本明細書に引用されている他の参考文献を参照のこと。非ヒト生物種からのモノクローナル抗体は、当技術分野で公知の抗体ヒト化技術を用いて、キメラ化またはヒト化することができる。
あるいは、ヒト免疫系の構成要素をもつトランスジェニック動物を用いて(米国特許第5569825号、および第5545806号などを参照)、ヒト末梢血細胞を用いて(Casali et al.、1986、Science 234:476)、Huse et al.、1989、Science 246:1275に概説されている一般プロトコルに従ってヒトB細胞から作製したDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、または他の方法によって、CD16Aに対する純粋なヒト抗体を生成することもできる。
3G8がCD16A受容体に結合するのと同じエピトープで、または少なくとも、3G8のCD16A受容体への結合を阻止するのに十分なほど、このエピトープに近いエピトープで、CD16A受容体に結合するCD16A結合タンパク質を使用することが、目的によっては、有益であろうと考えられる。望ましい結合特性をもつ結合タンパク質を特定するための、エピトープマッピング法および競合結合実験法は、実験免疫学分野の当業者に周知のものである。例えば、Harlow and Lane、上記引用済み;Stahl et al.、1983、Methods in Enzymology 9:242-53;Kirkland et al.、1986、J.Immunol.137:3614-19;Morel et al.、1988、Molec.Immunol.25:7-15;Cheung et al.、1990、Virology 176:546-52;およびMoldenhauer et al.、1990、Scand J.Imnzunol.32:77-82を参照のこと。また、下記の実施例および第3節G(i)を参照されたい。例えば、2つの抗体のうち1つを用いて、抗原をELISAプレート上に捕捉し、次に捕捉した抗原に対する第2の抗体の結合能を測定することによって、これら2つの抗体が同じ部位に結合するかどうか決定することが可能である。第1の抗体を、直接または間接に、酵素、放射性ヌクレオチド、または蛍光色素で標識し、細胞表面、溶液中、または固相表面にある抗原に第1の抗体が結合するのを、標識されていない第2の抗体が阻害する際の、阻害能を測定することによって、エピトープ比較を行うこともできる。
ELISAプレート上に形成された免疫複合体に、CD16A受容体が結合するのを阻害する、抗体の阻害能を測定することも可能である。そのような免疫複合体は、まず、プレートをフルオレセインなどの抗原でコートし、次に特異的な抗フルオレセイン抗体をプレート上に添加することで形成できる。この免疫複合体は、次にsFcRIIIaなどの可溶性Fc受容体のリガンドとして機能する。あるいは、可溶性免疫複合体を形成させ、酵素、放射性ヌクレオチド、または蛍光色素で、直接または間接に標識することもできる。その後、これら標識免疫複合体が細胞表面、溶液中、または固相表面にあるFc受容体に結合するのを阻害する、抗体の阻害能を測定することができる。
本発明のCD16A結合タンパク質は、ヒト免疫グロブリンFc領域を含んでいてもよいし、または含んでいなくてもよい。例えば、scFv結合タンパク質中には、Fc領域が存在しない。例えば、ヒトまたはヒト化四量体モノクローナルIgG抗体中には、Fc領域が存在する。下記に詳細に記載するが、本発明のいくつかの実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、エフェクター機能が改変されているFc領域、例えば、Fc受容体またはC1補体成分などのエフェクターリガンドに対する親和性が、無改変のFc領域(例えば、天然存在のIgG1タンパク質のFc)に比べて低下しているFc領域を含む。一実施形態において、このFc領域は、297位に対応するFc領域アミノ酸がグリコシル化されていないものである。そのような抗体は、Fcエフェクター機能を欠失している。
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、Fcドメインをもたないため、Fc受容体またはC1補体成分などのエフェクターリガンドに対する、Fc介在性の結合を示さないが、他の場合には、そのような結合、またはエフェクター機能の欠如は、抗体の定常領域中の改変による。
4.mAb 3G8 CDR配列類似のCDR配列を含むCD16A結合タンパク質
本発明の実施において使用できるCD16A結合タンパク質には、マウスモノクローナル抗体3G8のCDR配列に由来する(例えば、それらに同一または類似の配列をもつ)CDR配列を含むタンパク質が含まれる。マウス3G8モノクローナル抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域をコードする相補的なcDNAを、CDRをコードする配列も含めて、実施例に記載されるように、クローニングし、さらに配列決定した。3G8の核酸配列およびアミノ酸配列は下記に提供されており、配列番号1および2(VL)、ならびに配列番号3および4(VH)と指定されている。マウス可変領域配列およびCDR配列を用いて、3G8 CDRに由来する相補性決定領域を含む、多数のキメラモノクローナル抗体およびヒト化モノクローナル抗体を生成し、それらの特性を分析した。CD16Aに高い親和性で結合し、さらに他の望ましい特性をもつヒト化抗体を特定するため、3G8に由来するCDRをもつVH領域を含む抗体重鎖を生成し、3G8に由来するCDRをもつVL領域を含む抗体軽鎖と組み合わせ、分析用四量体抗体を生成した。得られた四量体抗体の特性を、下記のようにして測定した。本明細書下記にあるヒト化抗体タンパク質などの、3G8 CDR含有CD16A結合タンパク質は、下記のように、有害な免疫応答を軽減するために、本発明に従って使用することができる。
A.VH領域
一態様において、本発明のCD16Aタンパク質は、少なくとも1つのCDR(通常3つのCDR)が、マウスモノクローナル抗体3G8重鎖の1つのCDR(より典型的には、3つのCDRすべて)の配列をもつものであり、このCD16A結合タンパク質の残部が実質上ヒト配列(1つまたは複数のヒト抗体の重鎖可変領域に由来し、かつこれに実質上類似)である重鎖可変ドメインを含むこともある。
一態様において、本発明は、実質上ヒトフレームワーク中に、3G8抗体に由来する複数のCDRを含むヒト化3G8抗体または抗体断片であって、重鎖可変領域中のこれら複数のCDRのうち少なくとも1つが、対応するマウス抗体3G8重鎖CDRとは異なる配列をもつヒト化3G8抗体または抗体断片を提供する。例えば、一実施形態において、この(これらの)CDRは、少なくとも、表1に示すCDR置換(例えば、CDR1中の34位にあるバリン、CDR2中の50位にあるロイシン、CDR2中の52位にあるフェニルアラニン、CDR2中の52位にあるチロシン、CDR2の52位にあるアスパラギン酸、CDR2中の54位にあるアスパラギン、CDR2中の60位にあるセリン、CDR2中の62位にあるセリン、CDR3中の99位にあるチロシン、および/またはCDR3中の101位にあるアスパラギン酸)の1つまたは複数をもつことで、3G8のCDR配列から異なるものとなっている。適当なCD16結合タンパク質は、これらの置換の0、1、2、3、または4つ、あるいはさらに多数(しばしばこれらの置換の1から4つをもつ)を含むことができ、場合によっては、さらに別の置換をもつこともできる。
一実施形態において、CD16A結合タンパク質は、Hu3G8VH-1構成体のVHドメインと同一、または類似の重鎖可変ドメイン配列を含むことができる。Hu3G8VH-1構成体の配列を、表3に提供する。例えば、本発明は、(1)表1に記載するCDR置換の0、1つ、または複数によって、Hu3G8VH-1のVHドメインとは異なったものとなっており;(2)表1に記載するフレームワーク置換の0、1つ、または複数によって、Hu3G8VH-1のVHドメインとは異なったものとなっており;かつ(3)残部がHu3G8VH-1 VH配列と少なくとも約80%同一、しばしば少なくとも約90%同一、さらに時々約95%同一、または実に約98%同一である配列をもつVHドメインを含むCD16A結合タンパク質を提供する。
本発明のCD16A結合タンパク質の典型的VHドメインは、表3および表6に示すHu3G8VH-5配列、およびHu3G8VH-22配列をもつ。
このVHドメインは、表1に示す置換の、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または少なくとも6つによって、Hu3G8VH-1(表3)の配列と異なったものとなっている配列をもつことができる。これらの置換は、CD16Aに対する親和性の増大をもたらし、かつ/または、CD16A結合タンパク質をヒトに投与した際の免疫原性を低下させるものである。ある特定の実施形態では、残部におけるHu3G8VH-1 VHドメインとの配列同一性の程度が少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも95%、または少なくとも98%である。
Figure 0004524181
限定ではなく、例示のために、表3に多数のCD16A結合タンパク質VHドメインの配列を示す。下記実施例に記載するように、これらの配列を含む重鎖をヒトCγ1定常領域と融合し、hu3G8VL-1軽鎖(下記)と共発現して、四量体抗体を形成させた。さらに、この抗体のCD16Aへの結合を測定し、hu3G8VH-1 VHドメインと比べることによって、アミノ酸置換の影響を評価した。VHドメインがhu3G8VH-1、2、3、4、5、8、12、14、16、17、18、19、20、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、42、43、44、および45の配列をもつ構成体は高親和性結合を示し、hu3G8VH-6およびhu3G8VH-40 VHドメインは中程度の結合を示した。hu3G8VH-5およびhu3G8VH-22のVHドメインを含むCD16A結合タンパク質は、特に好ましい結合特性を有するとみなされる。
B.VL領域
好ましい結合特性を有する軽鎖可変ドメイン配列を特定するための同様な実験を行った。一態様において、本発明は、少なくとも1つのCDR(通常、3つのCDR)がマウスモノクローナル抗体3G8軽鎖の1つのCDR(より典型的には、3つのCDRすべて)の配列をもつ軽鎖可変領域を含むCD16A結合タンパク質であって、その残部が実質上ヒト配列(1つまたは複数のヒト抗体の軽鎖可変領域に由来し、かつ、これに実質上類似)であるCD16A結合タンパク質を提供する。
一態様において、本発明は、実質上ヒトフレームワーク中に、3G8抗体に由来する複数のCDRを含むヒト化3G8抗体または抗体断片であって、軽鎖可変領域中のこれら複数のCDRのうち少なくとも1つが、マウスモノクローナル抗体3G8軽鎖CDRとは異なる配列をもつヒト化3G8抗体または抗体断片を提供する。一実施形態において、この(これらの)CDRは、少なくとも、表2に示す置換(例えば、CDR1内の24位にあるアルギニン、CDR1内の25位にあるセリン、CDR1内の32位にあるチロシン、CDR1内の33位にあるロイシン、CDR2内の50位にあるアスパラギン酸、トリプトファン、もしくはセリン、CDR2内の53位にあるセリン、CDR2内の55位にあるアラニンもしくはグルタミン、CDR2内の56位にあるトレオニン、CDR3内の93位にあるセリン、および/またはCDR3内の94位にあるトレオニン)の1つまたは複数などの、1つまたは複数のアミノ酸置換を、1つのCDR中にもつことによって、3G8配列と異なったものとなっている。様々な実施形態において、この軽鎖可変ドメインは、これらの置換の0、1、2、3、4、5つ、またはさらに多数をもち(しばしばこれらの置換の1つから4つをもつ)、場合によっては、さらに別の置換をもつこともできる。
一実施形態において、適当なCD16A結合タンパク質は、Hu3G8VL-1構成体のVLドメインと同一、または類似の軽鎖可変ドメイン配列を含むことができる。Hu3G8VL-1構成体の配列を、表4に提供する。例えば、本発明は、(1)表2に記載するCDR置換の0、1つ、または複数によって、Hu3G8VL-1のVLドメインとは異なったものとなっており;(2)表2に記載するフレームワーク置換の0、1つ、または複数によって、Hu3G8VL-1のVLドメインとは異なったものとなっており;かつ(3)残部がHu3G8VL-1 VL配列と少なくとも約80%同一、しばしば少なくとも約90%同一、さらに時々約95%同一、または実に約98%同一である配列をもつVLドメインを含むCD16A結合タンパク質を提供する。
本発明のCD16結合タンパク質の典型的VLドメインは、表4または表6に示す、Hu3G8VL-1またはHu3G8VL-43の配列をもつ。
VLドメインは、表2に示す置換のうち、0、1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、または少なくとも9つによって、Hu3G8VL-1(表4)の配列と異なったものとなっている配列をもつことができる。これらの置換は、CD16Aに対する親和性の増大をもたらし、かつ/または、CD16A結合タンパク質をヒトに投与した際の免疫原性を低下させるものである。ある特定の実施形態では、残部における配列同一性の程度が少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも95%、または少なくとも98%である。
Figure 0004524181
限定ではなく、例示のために、表4に多数のCD16A結合タンパク質VLドメインの配列を示す。下記実施例に記載するように、これらの配列を含む軽鎖をヒトCκ定常領域と融合し、Hu3G8VH-1重鎖(上記)と共発現して、四量体抗体を形成させた。さらに、この抗体のCD16Aへの結合を測定し、Hu3G8VL-1 VLドメインと比べることによって、アミノ酸置換の影響を評価した。VLドメインがhu3G8VL-1、2、3、4、5、10、16、18、19、21、22、24、27、28、32、33、34、35、36、37、および42の配列をもつ構成体は高親和性結合を示し、hu3G8VL-15、17、20、23、25、26、29、30、31、38、39、40、および41は中程度の結合を示した。hu3G8VL-1、hu3G8VL-22、およびhu3G8VL-43のVLドメインを含むCD16A結合タンパク質は、特に好ましい結合特性を有するとみなされる。
C.VLドメインおよび/またはVHドメインの併用
当技術分野で公知であり、さらに本明細書の他の場所に記載するように、免疫グロブリンの軽鎖と重鎖とを、両者が会合して四量体抗体を生成する条件下で、組換えによって発現させることができ、あるいは生体外で両者を混合することによって四量体抗体を生成させることができる。同様に、VLドメインおよび/またはVHドメインの混合を複数の単鎖抗体として発現することができ、さらには、VLドメインおよび/またはVHドメインを含む他のCD16A結合タンパク質を公知の方法で発現させることもできる。本明細書に記載の3G8由来VLドメインは、本明細書に記載の3G8由来VHドメインと混合してCD16A結合タンパク質を生成できるものであり、そのような組合せのすべてが考慮されることが理解されるであろう。
限定ではなく、例示のために言うと、有用なCD16A結合タンパク質は、例えば、少なくとも1つのVHドメインと、少なくとも1つのVLドメインを含むタンパク質であり、この場合、VHドメインはhu3G8VH-1、hu3G8VH-22またはhu3G8VH-5から得たものであり、VLドメインはhu3G8VL-1、hu3G8VL-22またはhu3G8VL-43から得たものである。特に、hu3G8VH-22、およびhu3G8VL-l、hu3G8VL-22またはhu3G8VL-43、あるいは、hu3G8VH-5およびhu3G8VL-1を含むヒト化抗体は、好ましい特性を有する。
本明細書に記載のVLドメイン配列およびVHドメイン配列を、親和性成熟(affinity maturation)(Schier et al.、1996、J.Mol.Biol.263:551-67;Daugherty et al.、1998、Protein Eng.11:825-32;Boder et al.、1997、Nat.Biotechnol.15:553-57;Boder et al.、2000、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 97:10701-705;Hudson and Souriau、2003、Nature Medicine 9:129-39参照)など、当技術分野で公知の方法によって、さらに改変できることが、当業者に理解されるであろう。例えば、CD16A結合タンパク質を親和性成熟技法を用いて改変し、CD16Aに対する親和性が向上しており、かつ/またはCD16Bに対する親和性が低下しているタンパク質を特定することができる。
D.定常ドメインおよびFc領域
上述のように、本発明のCD16A結合タンパク質は、軽鎖定常領域および/または重鎖定常領域(IgG分子のCH1ドメインおよびCH2ドメインを接続するヒンジ領域を含む)を含むことができる。どのタイプ(例えば、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgE)の免疫グロブリンからの定常ドメインを用いてもよい。軽鎖定常ドメインはラムダでも、カッパでもよい。重鎖定常ドメインはどのイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)でもよい。キメラ定常ドメイン、定常ドメインの部分、および天然存在のヒト抗体定常ドメインの変種(アミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を含む)を用いることもできる。例えば、定常ドメインのアミノ酸を改変することによって、結果として生じるポリペプチドの免疫原性または半減期を改変するなど、特性の追加、または異なる特性の提供を行うことができる。そのような改変は、少数(例えば、10未満、つまり1つ、2つ、3つなど)のアミノ酸残基の挿入、欠失、または置換に始まり、定常ドメインのかなりの改変に至るまでの広い範囲のものである。考慮される改変には、膜受容体との相互作用、補体結合、循環の持続性、および他のエフェクター機能に影響を与える改変が含まれる。例えば、米国特許第6,277,375号に記載されているように、ヒンジ領域または他の領域を改変することができる。特に、Fc領域のアミノ酸を欠失または改変することは、しばしば有益となるだろう。例えば、Fc領域を改変することによって、抗体のエフェクター機能が失われる(または、大幅に低下する)ように、FcγRIIIおよびC1q補体成分などのエフェクターリガンドへの結合性を低下もしくは消失させることができる。そのような改変Fc領域をもつ抗体は、哺乳動物に投与した際、無改変の抗体に比べ、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/または補体介在細胞溶解をまったく引き起こさないか、またはほとんど引き起こさない。エフェクター機能を欠失している抗体を特定するためのアッセイは、当技術分野で公知である。米国特許第6,194,551号、第6,528,624号、および第5,624,821号、欧州特許EP 0 753 065 B1、ならびに国際公開WO 00/42072を参照のこと。
本発明のCD16A結合タンパク質は、このCD16A結合タンパク質のFcドメインと、FcγRIIAおよび/またはFcγRIIIAとの相互作用の低下(例えば、マクロファージ活性化の可能性を最小にし、かつ/または好中球減少を最小に抑える)、ならびに/あるいはFc領域のFcγRIIBへの結合の増強(例えば、エフェクター細胞活性化のFcγRIIB介在性阻害の増強;Bolland and Ravetch、1999、Adv.in Immunol.72:149参照)をもたらす1つまたは複数のアミノ酸置換もしくはアミノ酸欠失を有するIgG1Fcドメイン(天然存在の親IgG1と比べて)を含むことができる。結合性に望ましい変化を与える特定の変異は、微生物、ウイルス、または哺乳類細胞表面に発現された変異Fcライブラリーのディスプレーを用いた選別、および望ましい1つもしくは複数の特性を有するFc変異種を得るためのそのようなライブラリーのスクリーニングによって特定することができる。さらに、文献には、Fcの特定の残基または領域がFcγ相互作用に必要であり、したがってこれらの残基を欠失または変異させることでFcR結合が低下するであろうことが予測されると、報告されている。ヒト抗体上のFcγRに対する結合部位は、残基233〜239であると報告されている(Canfield et al.、1991、J Exp Med 173:1483-91;Woof et al、1986、Mol.Imm.23:319-30;Duncan et al.、1988、Nature 332:563)。FcγRIIIとヒトIgG1 Fcとの複合体の結晶構造から、このFcγ受容体とそのリガンドとの間の複数の潜在的な接触が明らかになり、さらに、単一のFcγRIII単量体がFcホモ二量体の両サブユニットに非対称的に結合することも明らかになった。Fc領域のアラニンスキャニング突然変異誘発によって、推定接触残基のほとんどのものの重要性が確認された(Shields et al.、2001、J.Biol.Chem.276:6591-6604)。
典型的なFc領域変異には、例えば、Cγ1に導入された、L235E、L234A、L235A、およびD265Aが含まれ、これらは、すべてのFcRに対して低親和性をもつことが示されている(Clynes et al.、2000、Nat.Med.6:443-46;Alegre et al.、1992、J Immunol 148:3461-68;Xu et al.、2000、Cell Immunol 200:16-26)。FcR結合に影響を与えると主張されている他のFc領域改変は、国際公開WO 00/42072(例えば、「クラス4」Fc領域変種)および国際公開WO 02/061090に記載されている。
FcγRIIAおよびFcγIIIA、または他のタンパク質へのFcの結合は、単離された組換えFcγRへの結合を測定するELISA、および細胞への結合を測定するRIAまたはFACSを含む多数ある方法のどれによってでも測定できる。免疫複合体、および加熱凝集または化学架橋されたFcまたはIgGを用いて、そのようなアッセイにおけるFcRに対する親和性を試験することができる。一実施形態においては、ある抗原(例えばフルオレセイン)に対して親和性をもつFabの存在下にFcを発現し、この抗体と抗原とを混合して免疫複合体を形成させることによって、免疫複合体を生成する。
E.非グリコシル化またはグリコシル化の変化による、Fcエフェクターリガンドへの結合性が低下したFc領域
上述のように、Fcドメインを含む(例えば、抗CD16Aモノクローナル抗体)本発明のCD16A結合タンパク質中のFcドメインは、所望の特性をもたらすように改変することができる。ある特定の態様において、本発明は、グリコシル化されていないFc領域を含む、ヒトまたはヒト化抗CD16Aモノクローナル抗体などの、CD16A結合タンパク質を提供する。下記実施例10に実証されるように、本発明は、予想外にも、エフェクター機能が改変されている抗CD16A抗体(非グリコシル化抗体)を投与することで、深刻な急性好中球減少症を引き起こすことなく、自己免疫障害に対する防御が得られることを発見した。この発見に基づき、危険な副作用を引き起こすことなく、自己免疫障害に対する防御を与える治療用抗CD16A抗体を設計することができる。
一実施形態において、本発明は、ヒトIgG1に由来するFc領域を含み、このFc領域のCH2ドメインにおける297位に相当するアミノ酸がグリコシル化されていないCD16A結合タンパク質を提供する。Fc領域全体、またはFc領域内の特定のアミノ酸残基に関して言及するとき、「非グリコシル化」または「グリコシル化されていない」という用語は、指定された領域または残基に糖残基が結合していないことを意味する。
グリコシル化されていないヒトIgG抗体は、Fc受容体またはC1qなどのFcエフェクターリガンドに対する、結合性が低下している(例えば、Jefferis et al.、1995、Immunology Letters 44:111-17;Tao、1989、J.of Immunology、143:2595-2601;Friend et al.、1999、Transplantation 68:1632-37;Radaev and Sun、2001、J.of Biological Chemistry 276:16478-83;Shields et al、2001、J.of Biological Chemistry 276:6591-6604、および米国特許第5,624,821号参照)。特定の機構に拘泥するものではないが、本明細書に記載したCD16A結合タンパク質のFcドメインの297位にあるアミノ酸の非グリコシル化は、CD16Aへの結合、およびC1q補体成分への結合を低下させる結果を導くと考えられている。そのようなグリコシル化されていない抗体は、エフェクター機能を欠失している。
ヒトIgG1定常領域において、297位にある残基はアスパラギンである。本発明の一実施形態において、CD16A結合タンパク質のFc領域の297位にある残基、またはこれに対応する残基はアスパラギン以外である。アスパラギンの代わりに他のアミノ酸残基で置換すると、297位にあるNグリコシル化部位が除去される。哺乳類細胞でCD16A結合タンパク質を発現した際にグリコシル化されないどのアミノ酸残基で置換しても、この実施形態に適合する。例えば、本発明のいくつかの実施形態においては、297位にあるアミノ酸残基がグルタミンまたはアラニンである。いくつかの実施形態においては、297位にあるアミノ酸残基はシステインであり、このシステインは、任意選択でPEGに結合している。
本発明の他の実施形態においては、297位にある残基はアスパラギンであっても、アスパラギンでなくてもよく、ただしグリコシル化されていないものである。これは、様々な方法によって達成できる。例えば、297位にあるアスパラギン以外にも、297位でのN結合型グリコシル化に重要であると知られているアミノ酸残基があり(Jefferis and Lund、1997、Chem.Immunol.65:111-28参照)、CH2ドメイン297位以外の位置にあるアミノ酸残基を置換することによって、残基の297位がグリコシル化されていないCD16A結合タンパク質が生じることもある。限定ではなく、例示のために示すと、CH2ドメイン中の299位にある残基がトレオニンまたはセリンではない場合、297位がグリコシル化されていない抗体が得られるであろう。同様に298位にあるアミノ酸をプロリンで置換すると、297位が非グリコシル化アミノ酸を有する抗体を生成するであろう。本発明の他の実施形態においては、IgG1ドメインのFc領域ではなく、むしろIgG2またはIgG4のFc領域が使用される。
CD16A結合タンパク質のアミノ酸残基を改変するのは、当業者であれば問題なく行えることであり、CD16A結合タンパク質、またはその一部をコードするポリヌクレオチドに突然変異を導入することで達成できる。IgG由来のFc領域を含むCD16A結合タンパク質を非グリコシル化するためには、必ずしも、アミノ酸レベルでの突然変異を導入する必要はない。IgG由来のFc領域における297位がグリコシル化されていないCD16A結合タンパク質は、Asn297でのグリコシル化が起きないある種の細胞(例えば、大腸菌(E.coli);国際公開WO 02061090A2参照)、細胞系、または細胞培養増殖条件でCD16A結合タンパク質を発現させることによって生成できる。あるいは、CD16A結合タンパク質を発現させた後に、炭水化物基を該タンパク質から、例えば酵素を用いて、除去することもできる。タンパク質上の炭水化物基を除去または改変する方法は公知であり、エンドグリコシダーゼおよびペプチドN-グリコシダーゼの使用を含む。
様々な方法を用いて、CD16A結合タンパク質のFc領域を改変し、CD16A結合タンパク質の特性を変化させることができることは明らかであろう。したがって、別段の指定がない限り、本明細書において、「改変する」という用語には、CD16A結合タンパク質のFc領域を改変することに言及する場合、このタンパク質それ自体を直接改変すること、このタンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変すること、および/またはこのタンパク質を生成するのに適切な発現系を改変もしくは選択することが含まれる。
アルギニン297位に相当する位置で非グリコシル化されているCD16A結合タンパク質に加えて、この位置にある炭水化物を部分的に除去または改変しただけによって、Fcエフェクターリガンドへの結合性が低下している変種も本発明に用いることができる。例えば、天然には存在しない炭水化物を含むようにFc領域を改変し、CD16A結合タンパク質がエフェクター機能をもたないようにすることもできる。本明細書において、「改変Fc領域」とは、親Fc領域に由来するが、グリコシル化パターンが親Fc領域とは異なるFc領域のことである。
F.CD16A結合タンパク質の生成
本発明のCD16A結合タンパク質は、新規蛋白質合成、およびCD16A結合タンパク質をコードする核酸の組換え発現を含む、当技術分野において周知の様々な方法によって、生成することができる。所望の核酸は、組換え法(例えば、所望のポリペプチドの、以前に調製した変種をPCRによって突然変異誘発する)、または固相DNA合成によって生成可能である。通常、組換え発現法が用いられる。一態様において、本発明は、本明細書に記載のCD16A結合タンパク質あるいはそのCD16A結合断片をコードする配列、例えば、本明細書に記載のVLもしくはVH、または本明細書に記載の抗体重鎖もしくは軽鎖をコードする配列を含むポリヌクレオチドを提供する。遺伝暗号の縮重のため、免疫グロブリンの各アミノ酸配列は、様々な核酸配列によってコードされ、本発明は、本明細書に記載したCD16A結合タンパク質をコードするすべての核酸を含むものである。
抗体の組換え発現は当技術分野において周知のものであり、例えば、任意選択で定常領域に連結した、軽鎖可変領域をコードする核酸と、重鎖可変領域をコードする核酸とを発現ベクターに挿入することによって行うことができる。発現ベクターは、通常、プロモーター、エンハンサー、および転写終結配列などの制御配列を含み、ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン重鎖および軽鎖)をコードするDNAセグメントがこれらに作用可能に連結して、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実なものとしている。発現ベクターは、通常、エピソームとして、または、宿主染色体DNAに組み込まれた一部として、宿主中で複製可能である。軽鎖および重鎖は、同じ発現ベクターにクローニングしてもよいし、別々の発現ベクターにクローニングしてもよい。
免疫グロブリン軽鎖および重鎖は、標準的な方法を用いて発現される。複数のポリペプチド鎖からなる抗体、または抗体断片種を単一宿主細胞発現系で生成することができ、この場合、抗体各鎖、または複数の抗体断片が宿主細胞によって産生され、それら複数のポリペプチド鎖が多量体構造に会合し、生体内で抗体または抗体断片を形成する。例えば、Lucas et al.、1996、Nucleic Acids Res.、24:1774-79を参照のこと。重鎖および軽鎖を別々の発現ベクターにクローニングした場合、それらのベクターを宿主に同時導入することによって、完全な免疫グロブリンを発現、会合させる。あるいは、別々の発現宿主において、抗体重鎖および軽鎖を組換えによって生成し、続いて別々の重鎖と、軽鎖とを生体外で抗体に会合させられることも、公知である。例えば、米国特許第4,816,567号、およびCarter et al.、1992、Bio/TeChnology 10:163-67を参照のこと。
従来、CD16A結合タンパク質は、原核細胞または真核細胞において発現される。抗体の発現に有用な宿主には、細菌(例えば、国際公開WO02/061090を参照)、酵母(例えば、Saccharomyces)、昆虫細胞培養(Putlitz et al.、1990、Bio/Technology 8:651-54)、植物および植物細胞培養(Larrick and Fry、1991、Hum.Antibodies Hybridomas 2:172-89)、および哺乳類細胞が含まれる。発現方法は、当技術分野において周知である。例えば大腸菌内で、pelBなどの原核細胞の様々な分泌シグナル配列に融合させた重鎖および軽鎖の発現を推進するための、lacプロモーターを用いたベクターによって、scFv断片およびFab断片をペリプラスム間隙中、または培養液中に分泌させることに成功している(Barbas et al.、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 88:7978-82)。T7プロモーターの代わりにlacプロモーターが挿入されているpET25b由来のベクターを用いることができる。
哺乳類細胞は、四量体抗体およびその断片を含むCD16A結合タンパク質を生成するのに特に有用である。異種タンパク質をそのまま分泌できる適当な宿主細胞系は多数知られており、そのような宿主細胞系には、CHO細胞系、COS細胞系、HeLa細胞、L細胞、および骨髄腫細胞系が含まれる。哺乳類細胞用発現ベクターは、複製起点、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列などの発現制御配列を含むことができる。発現制御配列の例には、内在性遺伝子、部位メガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルスなどに由来するプロモーターが含まれる。一実施形態において、CD16A結合タンパク質は、pCDNA3.1などのベクター中にあるCMV前初期エンハンサー/プロモーターを用いて発現される。遺伝子は、分泌を促進させるために、Orlandi et al.、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 86:3833-37に記載され、免疫グロブリンを高レベルに分泌させるために広く用いられているマウスVHドメインのシグナル配列を含む遺伝子カセットに融合させることもできる。
所定のポリペプチドをコードするDNAセグメントを含むベクターは、宿主細胞のタイプに応じた日常的手法を用いて宿主細胞に導入することができる。例えば、原核細胞用には、通常、塩化カルシウム法による形質導入が用いられるが、他の宿主細胞用には、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、微粒子銃、またはウイルスベースの形質移入を用いることができる。哺乳類細胞の形質転換に用いる他の方法には、ポリブレンの使用、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、およびマイクロインジェクションが含まれる(概説として、上記Sambrook et al.参照)。一過性発現用には、例えば、HEK293などの細胞に、陽イオン性脂質(例えば、Lipofectamine 2000、Invitrogen)を用いて、別々の重鎖発現ベクターと軽鎖発現ベクターとを、同時導入することができる。この方法によって、IgGの濃度が、3日後の条件培地中で10-20mg/lに達する発現レベルを得ることができる。その後、細胞に新しい培養液を与え、さらに3日後に同様の量を回収することができる。使用目的によっては、CD16A結合タンパク質を発現する細胞を、ウシIgGの濃度が非常に低いことで選ばれたFBSを含む培地中、あるいは、無血清培地中に、維持できることが理解されるであろう。
四量体抗体の発現に加えて、単鎖抗体、抗体断片、または他のCD16A結合タンパク質を調整することができる。例えば、免疫グロブリン断片は、四量体抗体のタンパク質分解によって、またより頻繁には、切断型抗体構成体を組換え発現によって調製できる。通常、単鎖V領域(「scFv」)構成体は、短い連結ペプチドを用いて、VLおよび/またはVHドメインを連結することで構築される(例えば、Bird et al.、1988、Science 242:423-26;米国特許第4946778号;第5455030号;第6103889号;および第6207804号参照)。
一旦発現されれば、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル電気泳動など、当技術分野において周知の方法によって、CD16A結合タンパク質を精製することができる(概説として、Harris and Angal、1990、PROTEIN PURIFICATION APPLICATIONS、A PRACTICAL APPROACH Oxford University Press、Oxford、UK;および上記のColigan et al.参照)。一実施形態において、精製は、Poros A(Perseptive Biosystems,Inc)などの高流速プロテインA樹脂を用いて抗体を捕捉し、低pHで溶出、続いてゲルろ過クロマトグラフィーを行って、残存する凝集体をすべて除去することで行われる。FcγRIIIAは、凝集したIgGに選択的に結合するため、適用目的によっては、凝集体の除去が望ましいであろう。CD16A結合タンパク質は、所望の場合、相当な程度に、例えば、少なくとも約80%の純度に、しばしば少なくとも約90%の純度に、より頻繁には少なくとも95%の純度に、または少なくとも98%の純度に、精製することができる。この場合、パーセント純度は、調製物の総タンパク質含量に対する重量パーセントとして計算され、このCD16A結合タンパク質の精製の後、故意に組成物に添加される構成成分は含まれない。
CD16A結合タンパク質は、発現の後に改変することができる。例えば、ポリエチレングリコールによる抗体の誘導(「PEG化(pegylation)」)は、生物活性を変化させることなく、滞留時間(半減期および安定性)を延長し、生体内での免疫原性を低下させると報告されている。例えば、Leong et al.、2001、Cytokine 16:106-19;Koumenis et al.、2000、Int J Pharm 198:83-95;米国特許第6025158号を参照のこと。CD16A結合タンパク質は、検出可能な標識またはリガンド(例えば、放射性同位体、またはビオチン)に結合させることができる。他の改変は当技術分野で周知であり、これらもまた考慮される。
G.CD16A結合タンパク質の特性
特定の実施形態において、下記の特性をもつCD16A結合タンパク質が本発明の方法で用いられる。
i)結合親和性
CD16A結合タンパク質は、それらの結合特性および生物活性を参照して記述することができる。様々な実施形態において、本発明のCD16A結合タンパク質と、CD16Aとの相互作用に関する結合定数は、0.1nMから5nMの間、約2.5nM未満、約1nM未満、または約0.5nM未満である。通常、CD16A結合タンパク質は、3G8、または本明細書において後述する重鎖Ch3G8VHおよび軽鎖Ch3G8VLを含むキメラ抗体が同様条件下に示す結合親和性の4倍以下の結合親和性、場合によっては、2倍以下の親和性でCD16Aに結合する。一実施形態において、CD16A結合タンパク質のCD16Aに対する結合親和性は、3G8の結合親和性より高い。別の実施形態において、CD16A結合タンパク質のCD16Bに対する結合親和性は、3G8またはキメラ抗体Ch3G8の親和性より高くなく、さらに、これらの親和性より低いことが好ましい。
ELISA、バイオセンサー(動態分析)、およびラジオイムノアッセイ(RIA)を含む様々な方法を用いて結合を測定することができる。ELISAは、周知の方法であり(上記のHarlow and Lane、および上記のAusubel et al.を参照)、結合タンパク質を含む培養上清を用いて、あるいは精製した抗体を用いて行うことができる。見かけ上の最大結合に対して50%の結合を導く抗体濃度によって、抗体Kdの推定値が得られる。
バイオセンサーアッセイを用いて結合の検出を行うこともできる。この方法によって、抗体がFcγRIIIAに結合する際の動態特性および平衡特性に関する情報が得られる。バイオセンサーアッセイの例には、BIAcoreシステムを用いたものがある(Malmqvist et al.、1997、Curr.Opin.Chem.Biol.1:378-83)。BIAcoreシステムは、リガンド(例えば、CD16A)が表面に固定されているセンサーチップの上で、分析対象を通過させることに基づいている。分析対象の結合は、チップに結合した質量に正比例して変化する表面プラズモン共鳴(SPR)シグナルを経時観測することで測定できる。所定濃度の分析対象を、チップ上で一定時間通過させ、そのことにより、結合速度、即ちk(on)の測定が可能となる。この段階の後、緩衝液のみをチップ上で通過させ、分析対象がチップ表面から遊離する速度、即ちk(off)が測定できる。平衡遊離定数は、これらの速度定数の比から計算できる。即ち、Kd=k(on)/k(off)である。
ラジオイムノアッセイ(RIA)は、抗体の、FcγRIII発現細胞に対する親和性を測定するのに用いることができ、さらに細胞に対するIgG複合体形成の抗体による阻害を測定するためにも用いることができる。アッセイの一例においては、125Iで標識された結合タンパク質を調製し、この結合タンパク質の比放射能を測定する。標識された結合タンパク質と、細胞とを混合して数時間置き、遠心により細胞と結合物質とを非結合物質から分離し、両画分の放射能を測定する。ヨウ化した結合タンパク質のKd、および結合部位数は、直接結合方式で測定し、結合データをスキャッチャード解析して決定した。特異的相互作用が確実に結果に反映されるように、過剰のコールド(非標識)結合タンパク質を競合物質として含む対照を用いることもできる。適当な細胞の例には、(1)正常ヒト末梢血リンパ球に由来するNK細胞またはマクロファージ;(2)huCD16Aトランスジェニックマウスから得られた細胞(Li、1996 J.Exp.Med.183:1259-63);(3)RIIまたは他の受容体(CD8またはLFA-3など)の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合されたCD16Aの細胞外部分を発現する哺乳類細胞系;(4)CD16A発現ベクターで一過性に、または安定に形質移入された(また、発現受容体発現の最適化のために、任意選択でγ鎖を同時発現する)哺乳類細胞系(例えば、CHO、HEK-293、COS)が含まれる。
CD16A、および結合アッセイで用いられる他のペプチドの発現に有用な発現ベクターの例には、CD16A遺伝子がその中に導入されるポリリンカー領域に隣接した強力なプロモーター/エンハンサー配列(例えば、CMV前初期プロモーター/エンハンサー配列)およびポリアデニル化/転写終結部位を含む哺乳類発現ベクター(例えば、pCDNA 3.1またはpCI-neo)が含まれる。通常、このような発現ベクターは、ネオマイシン抵抗性遺伝子などの選択マーカーを含む。
一実施形態において、アッセイでの使用のために発現されるCD16Aは、下記に記載の配列をもつ。
Figure 0004524181
また、下記に記載の配列をもつCD16Aも使用できる。
Figure 0004524181
CD16Aの他の変種または代用物は、当業者にとって、既知であるか、または科学文献から容易に認識可能なものであろう。
競合アッセイ方式を用いて、他の分子のCD16A受容体への結合に対するCD16A結合タンパク質の阻害能を測定することができる。例えば、一競合アッセイ方式においては、一定量の標識3G8を、様々な量の非標識の3G8、CD16A結合タンパク質、または無関係のIgG(対照)と混合し、FcγRIIIA発現細胞に添加する。インキュベートし、溶液中の非結合物質から細胞に結合した物質を分離した後、結合した標識3G8の量(および/または、任意選択で非結合標識3G8)を測定する。そして、標識3G8の結合が50%に減少する非標識mAbの濃度(IC50)を、このデータから決定する。
ii.FcγRIIIAに対する免疫複合体結合の阻害
本発明のCD16A結合タンパク質における別の特性は、CD16Aへの免疫複合体の結合に対する阻害能(IC阻害能)をもつことである。通常、本発明のCD16A結合タンパク質は、3G8、または本明細書に記載のキメラ抗体、Ch3G8が同様条件下に示すIC阻害能の4倍以下、好ましくは、2倍以下のIC阻害能をもつ。
複合IgGのCD16への結合に対する抗体の阻害能を測定するアッセイは公知である。例えば、Knappら、1989年、LEUKOCYTE TYPING IV、Oxford University Press、Oxford、p.574-97;およびEdberg and Kimberly、1997、J Immunol 159:3849-57を参照のこと。適当なアッセイの1つは、競合アッセイの上述方式によるRIAアッセイであるが、上述の競合アッセイで使用される125I標識3G8の代わりに、125I標識された無関係のヒトIgG1凝集体が使用される。
本発明は、IgG抗体が細胞表面のCD16に結合するのを、CD16A結合タンパク質が細胞表面のFcγRIIIに結合する条件下に、この細胞をCD16A結合タンパク質と接触させることによって阻害する方法を提供する。このような接触は、生体内で(例えば、CD16A結合タンパク質を哺乳動物に投与することによって)行うことも、または生体外で(例えば、FcγRIIIを発現する培養細胞に抗体を添加することによって)行うこともできる。FcγRIIIへの結合が阻害されるIgG抗体は、CD16A結合タンパク質を投与または添加する前または後に、哺乳動物に投与、または培養培地に添加することができ、あるいは、哺乳動物に正常状態で存在するか、または疾病状態に応答して存在するものでもよい。一実施形態において、このような細胞表面にあるCD16は、CD16Aである。
iii.血小板欠乏症に対する生体内防御
有害な免疫応答を軽減する、本発明のCD16A結合タンパク質の能力は、様々な動物モデルで評価することができる。モデル系の一例には、特発血小板欠乏症性紫斑病(ITP)のマウスモデルがある(Oyaizuら、1988年、J Exp.Med.167:2017-22;Mizutaniら、1993年、Blood 82:837-44参照)。後述の実施例9を参照のこと。他の適当なモデルは、当技術分野において公知である。他の動物モデルには、炎症性疾患の齧歯類モデルが含まれ、これらのモデルに関しては、例えばCurrent Protocols in Immunologyに記載されている(場合によっては、ヒトCD16Aによって形質転換された齧歯類動物を使用する変更が加えられる)。トランスジェニックマウスは、日常的手法を用いて作製可能であり、また、販売元から購入することもできる(例えば、TaconIC Inc.、German Town New York)。
マウスモデルにおいて血小板欠乏症から防御するCD16A結合タンパク質の能力を評価するのに適した方法の一例は、下記の実施例8に記載されている。CD16A結合タンパク質を、様々な濃度で、muFcγRIII-/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに投与し、続いて、このマウスにマウスでITPを誘導する(例えば、6A6抗体、またはキメラ6A6抗体を投与することによって)ことができる。6A6/Ch6A6投与の後、一定時間間隔にマウスから採血し、血小板数を測定する。任意選択で、陰性対照群において血小板の最大欠乏が観測された時点での各分子のIC50を測定する。実施例8の結果および先行研究に基づくと、最大欠乏は6A6投与の2〜6時間後に起きている。SigmaPlotプログラムで提供されている4パラメータ適合などのカーブ適合プログラムを用い、グラフからIC50を計算した。無処置群、およびイソタイプが同じ無関係のmAbが同一の処方で投与された群に比べ、処置群における6A6投与後の、血小板欠乏症阻害が統計的に有意であった場合に、所望の生物活性があることを意味する。
CD16A結合タンパク質による防御をアッセイする実験を、下記の実施例に記載する。HEK-293細胞で産生された組換えマウス3G8、ヒトIgG1またはIgG2定常ドメインをもつキメラ3G8(HEK-293およびCHO-K1細胞で産生されたch3G8-γ1、ならびにHEK-293で産生されたch3G8-γ2)、およびCh3G8-γ1変種(ch3G8-γ1 D265A)の調製物は有意な防御を与えなかった。ハイブリドーマで産生されたマウス3G8、およびHEK-293細胞で産生された、グリコシル化されていないヒトG1定常領域を含む3G8のキメラ変種(Ch3G8-G1 N297Q)は、マウスモデルにおいて、マウスを血小板欠乏症から防御することができた。下記の実施例10、11、および15-17に示すように、Ch3G8 N297Qおよびグリコシル化されていないヒト化抗体は、ITPマウスモデルにおいて血小板欠乏症に対する防御を与えた。特定の仮説に拘泥するものではないが、ch3G8 N297Qにエフェクター機能が大きく欠失しているため、マウスをITPから防御するのにch3G8より効果的であったというのが1つの可能性である。したがって、これらのデータは、エフェクター機能をもたない抗CD16A抗体がある種のグリコシル化されている抗体(例えば、グリコシル化されている組換え抗体)と比べて、有利であることを示唆している。さらに、実施例に記載するように、muFcgRIII-/-、huFcRIIIBトランスジェニックマウスへの、グリコシル化されていない抗CD16A抗体の投与は、血液、脾臓および骨髄における好中球の欠乏を引き起こさなかった。特定の仮説に拘泥するものではないが、これら予想外の結果には可能性のある説明がいくつかある。タンパク質のグリコシル化は、異なる細胞系、特に異なる種から得られた細胞系では、異なっていることが知られている。異なった細胞系で発現されたことによる、抗体定常領域に結合した炭水化物の性質の相違が、活性の相違の原因となっている、即ち、活性の欠失が一部、Ch3G8が抗体Fc領域を介してFc受容体(または補体)に、グリコシル化依存的に結合することによって引き起こされるエフェクター細胞の活性化によるものである可能性がある。あるいは、活性に影響を与える他の翻訳後修飾が、組換えマウスおよび
ch3G8に含まれている可能性もあり、CD16A結合タンパク質を発現するのに異なる細胞系を用いることで、そのような翻訳後修飾が除去されているのかもしれない。イソタイプおよび/またはイソタイプを含む変異を組み合わせてエフェクター機能を除去することによって、Fcから炭水化物を除去するのと同様の防御効果が得られる可能性がある。
5.治療方法
本明細書に記載したように、有害な免疫応答に特徴づけられる多数の疾病および症状を、本発明のCD16A結合タンパク質(例えば、本明細書に記載のVLドメインおよび/またはVHドメインを含み、さらに、任意選択で、本明細書に記載した、エフェクター機能を低下させる改変をもつFc領域を含む)を用いて治療することができる。一実施形態において、CD16A結合タンパク質は自己免疫疾患(即ち、自己抗体の産生によって特徴づけられる疾患)を患っている対象に投与される。自己免疫疾患でみられる病原性のIgG抗体は、これらの疾患の病原トリガーであるか、または疾患の進行に寄与し、さらに細胞性Fc受容体の不適切な活性化を通して疾患を媒介すると考えられている。凝集した自己抗体および/または自己抗原と自己抗体との複合体(免疫複合体)は活性化FcRに結合し、それによって多数の自己免疫疾患の病原性続発症(これは一部、免疫に媒介された、自己組織に対する炎症に起因する)を引き起こす。特定の作用機構に拘泥するものではないが、本明細書に記載のCD16A結合タンパク質は、自己免疫抗体とFcγRIII受容体との相互作用に干渉し、これを減弱させる。
治療可能な自己免疫疾患の例には、特発血小板欠乏症性紫斑病(ITP)、リウマチ関節炎(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫溶血性貧血(AHA)、強皮症、自家抗体起因性じんま疹、天疱瘡、脈管炎症候群、全身性血管炎、グッドパスチャー症候群、多発性硬化症(MS)、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、ライター症候群、川崎病、多発性筋炎、および皮膚筋炎が含まれる。本発明によって治療可能である他の疾患または症状例には、静脈免疫グロブリン(IVIG)療法による治療が効果をもつどのような疾病(例えば、アレルギー性ぜん息)も含まれる。したがって、これまでIVIG療法によって治療された自己免疫疾患(一実施形態においては、ITP以外の症状)の治療も考慮される。IVIGの活性機序の詳細な理解はいまだ確立されていないが、IVIGの生体内での有効性には、細胞性FcγRの活性化を調節することが1つの役割を果たしていると提唱されている。IVIGのもつ防御作用は、この調製物にごく少ない比率で存在する2量体IgGまたは多量体IgGに依存しているのかもしれない。FcγRIIIパスウェイによって、細胞傷害および免疫複合体がエフェクター応答と特異的に共役されること、ならびにこのパスウェイがmAbによって直接阻害されることから、IVIGに比べて向上された活性が抗FcγRIII抗体にあるであろうと強く示唆されている。
有害な免疫応答の軽減は、炎症の軽減として検出できる。あるいは、有害な免疫応答の軽減は、治療されている症状に特徴的な症状の軽減(例えば、自己免疫疾患を患っている対象が示す症状の軽減)としても、または医師もしくは自己免疫疾患の実験従事者によって容易に認識されるであろう他の判定基準によっても、検出可能である。多くの場合、軽減を示す特定の徴候が治療されている特定の症状によるものであることは明らかであろう。限定ではなく、例示としては、例えば、ITPを患っている対象における有害な免疫応答の軽減は、対象における血小板レベルの増大によって検出できる。同様に貧血を患っている対象における有害な免疫応答の軽減は対象におけるRBCレベルの増大として検出できる。臨床医であれば、血小板レベルもしくはRBCレベルの有意な変化、または治療後の他の応答を認識するであろう。
有害な免疫応答は、場合によっては、抗血小板抗体の投与に起因する特発血小板欠乏症性紫斑病によるものであり、この場合、抗血小板抗体は、場合によっては、muFcγRIII-/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに投与されるマウスモノクローナル抗体6A6である。
一態様において、本発明は、ITPなどの自己免疫疾患を、エフェクター機能が大部分失われているCD16A結合タンパク質を投与することによって治療する方法を提供する。一実施形態において、CD16A結合タンパク質は、ヒトIgGに由来するFc領域を含む。一実施形態において、このFc領域は非グリコシル化されている。一実施形態において、各CH2ドメインの297位は、アスパラギンまたはプロリン以外の残基である。一態様において、CD16A結合タンパク質は、本明細書の他の場所で記載した可変領域の配列をもつ。しかし、本明細書で論じたように、本発明の組成物および治療方法は、マウスmAb 3G8に由来する特定のCD16A結合タンパク質に限定されるものではなく、CD16A結合タンパク質全般に適するものである。一実施形態において、このCD16A結合タンパク質は、2本の軽鎖と2本の重鎖とをもつ4量体抗体タンパク質である。
関連した一態様において、本発明は、好中球レベルを著しく減少させることなく、即ち好中球減少症(例えば、重度の好中球減少症、または中程度の好中球減少症)を引き起こすことなく、哺乳動物における有害な免疫応答を、本明細書に記載のCD16A結合タンパク質を含む薬剤組成物を、治療有効量この哺乳動物に投与することによって軽減する方法を提供する。一実施形態において、この哺乳動物はヒトである。一実施形態において、この哺乳動物は、1つまたは複数のヒト導入遺伝子を含む非ヒト哺乳動物(例えば、マウス)である。
治療応用のため、本発明のCD16A結合タンパク質は、薬剤として許容される賦形剤または担体と共に処方され、そのような担体には、例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどの水性担体があり、任意選択で、安定性もしくは有効期間を増大させるために、または生理条件に近似させるために他の物質(酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、ヒスチジン、およびアルギニン)が含まれる。個体に投与するためには、そのような組成物は無菌であることが好ましく、さらにピロゲンおよび他の夾雑物が含まれていないことが好ましい。CD16A結合タンパク質は、例えば、重量比で、約0.01%未満から、通常少なくとも約0.01%、多くて5%までの広い範囲の濃度で用いることができる。非経口的に投与可能な組成物を調製する方法は、当業者にとって既知であるか、自明なものであり、例えば、Remington、THE SCIENCE OF PRACTICE AND PHARMACY、20th Edition Mack Publishing Company、Easton、Pa.、2001により詳細に記載されている。本発明の薬剤組成物は、通常、非経口経路で、さらに典型的には、静脈内、皮下、または筋肉内経路で投与されるが、他の経路での投与も利用される(例えば、粘膜投与、表皮投与、腹腔内投与、経口投与、鼻腔内投与、および肺内投与)。必須ではないが、正確な量の投与に適した単位剤形で薬剤組成物を供給することが好ましい。一実施形態において、CD16A結合タンパク質は、徐放性(例えば、数週間から数カ月の期間にわたっての放出)の形状、処方、または装置で投与される。
一実施形態においては、CD16A結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えば、CD16A結合タンパク質発現ベクター)が患者に投与される。投与後、CD16A結合タンパク質が患者内で発現される。CD16A結合タンパク質の投与に有用なベクターは、ウイルス性(例えば、アデノウイルス由来)であっても、または非ウイルス性であってもよい。通常、そのようなベクターは、プロモーターを含み、任意選択で、1つまたは複数のタンパク質の転写を推進する作用をもつエンハンサー含むであろう。そのような治療用ベクターは、生体内(in vivo)、生体外(in vitro)、またはエキソビボ(ex vivo)で、細胞内または組織内に導入することができる。エキソビボ治療用には、患者から採取した細胞、例えば幹細胞にベクターを導入し、これらの細胞をクローンとして増殖させ、同じ患者に自家移植することができる(例えば、米国特許第5399493号、および第5437994号参照)。
この組成物は、予防用および/または治療用に投与することができる。予防用に適用する際、組成物は、予期されるか、または潜在的である有害な免疫応答に先立って、患者に投与される。例えば、特発血小板欠乏症性紫斑病および全身性エリテマトーデスは、特定の薬物の投与により有害な免疫応答が悪化する可能性のある症状である。本発明のCD16A結合タンパク質は、そのような薬物誘導性応答を予期して、そのような応答の程度を軽減するために投与することができる。治療用に適用する際、組成物は、既に有害な免疫応答に患わされている患者に、そのような症状および複合症を少なくとも部分的に寛解するのに十分な量投与される。これを達成するのに適当な量は、「治療有効量」または「治療有効用量」であろう。このような使用に有効な量は、症状の重篤度、および患者自身の免疫系の全般的状態によるが、通常、1用量当たり、約0.01mgから約100mgまでの範囲であり、より一般的には、0.1mgから50mgの服用量で、1患者当たり1mgから10mgが用いられる。「炎症を軽減する量」のCD16A結合タンパク質を哺乳動物に投与して、有害な免疫応答を軽減することもできる。
CD16A結合タンパク質は、例えば、病気の性質、患者の病状、およびこの結合タンパク質の半減期などの要因に応じて、治療を行う医師の判断によって、例えば、毎日、毎週、隔週、あるいは他の適当な間隔で投与することができる。
CD16A結合タンパク質は、有害な免疫応答、またはその症候もしくは後続症の軽減を目的とした他の治療と併用して投与することもできる。したがって、CD16A結合タンパク質は、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、アスピリン、イブプロフェン)、ステロイド(例えば、コルチコイド、プレドニソン)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、メトトレキセート、部位キサン)、および抗体(例えば、IVIGと併せて)などの化学療法薬など、1つまたは複数の他の薬剤の同時投与を含む治療計画の一部として投与することができる。
6.CD16A結合タンパク質治療効果の向上
関連する一態様において、本発明は、1つまたは複数のFc領域を含むCD16A結合タンパク質(例えば、2つのFcドメインを含む抗CD16A抗体)の治療効果を、このタンパク質を改変して、元の(無改変の)Fc領域と比べ、少なくとも1つのFcエフェクターリガンドに対する結合性を低下させることによって向上させる方法を提供する。例えば、Fc領域を改変して、Fc領域がグリコシル化されないようにすることができる。上述のように、Fc領域の改変はいくつかの方法で(例えば、遺伝的突然変異によって、Fcのグリコシル化パターンが変わるように発現系を選択することによって、および同様の方法によって)行うことができる。一実施形態において、FcエフェクターリガンドはFcγRIIIである。一実施形態において、FcエフェクターリガンドはC1q補体成分である。この文脈で用いられるように、対象のCD16A結合タンパク質が投与されたとき、好中球減少症を引き起こさない(または、引き起こした好中球減少がより軽度である)場合、対象のCD16A結合タンパク質は、好中球減少症を引き起こす標準結合タンパク質に比べて、「治療効果」が向上されているという。例えば、有害な免疫応答(例えば、ITPまたは、哺乳動物で実験的に誘導されたITP)の重篤度を低下させ、さらにこの哺乳動物における好中球レベルをx%低下させるCD16A結合タンパク質が、この哺乳動物において有害な免疫応答の重篤度を低下させ、さらに好中球レベルをy%低下させるCD16A結合タンパク質に比べて、より大きな治療効果をもつのは、yがxより大きい場合、例えば、2倍大きい場合である。一実施形態において、CD16A結合タンパク質は、改変されたタンパク質が非グリコシル化されているような変異によって改変される。
例えば、本発明は、改変免疫グロブリン重鎖を含む改変CD16A結合タンパク質を生成する方法であって、(i)少なくとも1つの変異を、親免疫グロブリン重鎖をコードする親ポリペプチドに導入して、改変免疫グロブリン重鎖をコードする改変ポリヌクレオチドを生成し、この変異によって、親免疫グロブリン重鎖のCH2ドメインにおけるグリコシル化を変化、減少、または除去するアミノ酸置換を、改変免疫グロブリン重鎖に導入すること、ならびに、(ii)改変ポリヌクレオチドを、改変免疫グロブリン重鎖として、細胞内で発現して、改変CD16A結合タンパク質重鎖を生成することによって、この改変CD16A結合タンパク質が、親免疫グロブリン重鎖を含む親CD16A結合タンパク質より、大きな治療効果をもつ方法を提供する。任意選択で、この重鎖は、軽鎖を同時発現する条件で生成され、四量体抗体を産生する。
実施例
マウス3G8 VHおよびVLならびにこれらから生成されたキメラ分子
A)マウス3G8 VHおよびVL
マウス3G8抗体軽鎖をコードするcDNAをクローニングした。3G8抗体重鎖の配列はJeffry Ravetch博士によって提供された。3G8 VHおよびVLのアミノ酸配列を、表1および表3に提供する。可変部をコードする核酸配列は、下記の通りである。
Figure 0004524181
Figure 0004524181
B)キメラ重鎖
ヒト定常ドメインに融合したマウス3G8 VHの発現をコードするキメラ遺伝子を生成するために、標準的な技法(オーバーラップPCR増幅を含む)を用い、シグナルペプチドをコードする配列(Orlandiら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 86:3833-37;下記小文字下線部)、およびヒトCγ1定常領域(下記小文字)に、3G8 VHをコードする核酸を融合した。クローニングを容易にするためにSacl部位を導入し、その結果、VH FR4(ala->ser)という単一残基変化が生じた。FR4におけるこの変化は、CD16への結合性に影響を与えない。この結果得られた核酸は、下記に示す配列をもつ。VHドメインをコードする領域を大文字で示す。
Figure 0004524181
Figure 0004524181
細胞内でのキメラ重鎖の発現に使用するため、この構成体をポリリンカーのNheI-EcoRl部位でpCI-Neo(Promega Biotech)に挿入した。
C)キメラ軽鎖
ヒト定常ドメインに融合されたマウス3G8 VLをコードするキメラ遺伝子を生成するために、標準的な技法を用いて、この3G8 VL断片を、上記VH用のシグナル配列(小文字下線部)およびヒトCκ定常領域(小文字)cDNAに融合して、下記に示す配列をもつ核酸を得た。
Figure 0004524181
細胞内でのキメラ軽鎖の発現に使用するため、この構成体を、ポリリンカーのNheI-EcoRl部位で、pCI-Neo(Promega Biotech)に挿入した。
D)発現
上述のキメラタンパク質ch3G8VHおよびch3G8VLを同時発現し、ch3G8と名付けたキメラ抗体を形成させた。キメラ抗体ch3G8は、骨髄腫細胞中、または他の哺乳類細胞(例えば、CHO、BEK-293)中で発現することができる。ch3G8および変種などのCD16A結合タンパク質を発現のための操作手順の一例を、下記の実施例4に提供する。
ヒト化抗CD16A結合タンパク質
A)ヒト化重鎖
マウス3G8 VHクローンから得たCDRをコードする配列をヒト生殖系列VH配列VH2-70に由来するフレームワーク配列に融合して、Hu3G8VHと名付けたVHをコードするポリヌクレオチドを生成した。このポリヌクレオチドは、オーバーラップPCR法で生成した。第1段階では、下記に示すプライマーおよびストラテジーを用い、マウス3G8 VHポリヌクレオチド(配列番号1)をテンプレートとして用いた。
Figure 0004524181
この結果得られた断片を、EcoRIおよびSacIで消化し、pUC18にクローニングした。配列決定の後、1つのプラスミドを、最終回のオーバーラップPCRを行うために選択して、第2PCRステップ中に生じた欠失の修正を行った。この結果得られたポリヌクレオチドは、下記に示す配列をもつ。
Figure 0004524181
その後、Hu3G8VH配列は、分泌シグナル配列をコードする断片(上述の通り、小文字下線部)、およびヒトCγ1定常領域(小文字)cDNAと結合した。この結果得られたポリヌクレオチドは、下記に示す配列をもつ。
Figure 0004524181
哺乳類細胞(HEK-293)中で発現するために、Hu3G8VH-1配列を、pUCおよびpCDNA3.1に中間的にクローニングした後、NheI-EcoRI部位でpCI-Neoポリリンカーにクローニングした。
B)ヒト化軽鎖
マウス3G8 VLクローンから得たCDRをコードする配列を、ヒトB3生殖系列V-κ遺伝子に由来するフレームワーク配列に融合した。このポリヌクレオチドは、下記に示すストラテジーおよびプライマーを用い、マウス3G8 VLポリヌクレオチド(配列番号2)をテンプレートとして用いて、オーバーラップPCR法により生成した。
Figure 0004524181
この結果得られたポリヌクレオチドは、下記に示す配列をもつ。
Figure 0004524181
Hu3G8 VL遺伝子断片は、標準的な技法を用いて、シグナル配列(上述の通り、小文字下線部)およびヒトC-κ定常領域(小文字)cDNAと結合し、この結果、下記に示す配列の産物を得た。
Figure 0004524181
哺乳類細胞中で発現するために、この構成体をpCI-Neoに挿入した。
変異CD16A結合タンパク質
部位指向性突然変異によって、構成体中のVLドメインまたはVHドメインに配列変化が導入されている発現構成体を、追加構成体として生成した。典型的な突然変異生成反応は、容積0.05mlに、プラスミドDNA(E.coliのメチル化可能株から単離)10ng、それぞれ所定の変異を含有する順向プライマーおよび逆向プライマー各125ng、反応緩衝液、ならびにdNTPを含む。2.5ユニットのPfuTurbo DNAポリメラーゼ(Stratagene)を添加し、反応液を、95℃、30秒;55℃、1分;68℃、12分で15サイクル処理した。その後、PCR産物をDpnIエンドヌクレアーゼで消化し、制限酵素処理されたDNAを用いて、E.coli株XL-10 Goldを形質転換した。DpnIはメチル化されたDNAのみを消化するので、この酵素によって、変異していない親プラスミドが消化され、所定の変異を含有する新規合成の非メチル化産物が支配的分子種として残されるであろう。
変異VHドメインの配列を表3に示し、変異VLドメインの配列を表4に示す。
哺乳類細胞における発現
組換え四量体抗体(即ち、2つの重鎖と、2つの軽鎖とを含む)の一過性発現のために、EEK-293細胞中に、様々な組合せの重鎖発現プラスミドおよび軽鎖発現プラスミド(例えば、上述のヒトCγ1定常ドメインおよびCκ定常ドメインに融合されたキメラ、ヒト化、および変異VLドメインおよびVHドメインを含む)を同時導入した。このような組換え四量体抗体は、本明細書において、時々「組換え抗体」と呼ばれる。トランスフェクションは、メーカーの指示に従い、6ウェルプレートにおいてLipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて行った。
組換え抗体は、重鎖発現プラスミド(即ち、VHドメインおよび定常ドメインを含む重鎖をコードする)、および軽鎖発現プラスミド(即ち、VLドメインおよび定常ドメインを含む軽鎖をコードする)を、組換え抗体の一過性発現のためにHEK-293細胞中に同時導入することで調製した。
表3に記載のHu3G8VH変種を、hu3G8VL-1軽鎖と同時発現した。参考のために記すと、ほとんどのアッセイに(i)ch3G8VHおよびch3G8VLの共発現で生成した組換え抗体(「ch3G8VH/ch3G8VL」)、ならびに(ii)hu3G8VH-1とhu3G8VL-1の共発現で生成した組換え抗体(「hu3G8VH-1/hu3G8VL-1」)が含まれていた。
表4に記載のHu3G8VL変種を、ch3G8VH重鎖と同時発現した。参考のために記すと、ほとんどのアッセイに(i)ch3G8VHおよびch3G8VLの共発現で生成した組換え抗体(「ch3G8VH/ch3G8VL」)、ならびに(ii)ch3G8VHとhu3G8VL-1の共発現で生成した組換え抗体(「ch3G8VH/hu3G8VL-1」)が含まれていた。
3日後に、培養上清中の組換え抗体のレベルをELISAで測定し、実施例5に記載するように、捕捉されたsCD16Aに対する組換え抗体の結合をELISAによって分析した。選択された抗体を、実施例6に示すように、CD16Aの細胞外領域を発現する細胞に対する細胞結合に関してアッセイした。
CD16Aに対する結合のELISA測定
可溶型CD16Aに対する抗体の結合を検出するために、サンドイッチELISA行った。
可溶性ヒトCD16A
可溶型ヒトCD16Aを、膜貫通領域のすぐ手前で切断されたCD16A遺伝子を含むpcDNA3.1由来発現ベクターを用いて、HEK-293細胞で発現させた。ベクターを構築するために、CD16AをコードするcDNAを、プライマー3Aleft[gttggatcctccaactgctctgctacttctagttt](配列番号27)および3Aright[gaaaagcttaaagaatgatgagatggttgacact](配列番号28)を用いて増幅し、BamHIおよびHindIIIで消化し、ポリリンカーのBamHI/HindIII部位で、ベクターpcDNA3.1(Novagen)にクローニングした。構成体は、BEK-293細胞を一過的に形質移入するのに用いた。アッセイによっては、ヒトIgGセファロースカラムにおけるアフィニティークロマトグラフィーを用いて、分泌産物を培養上清から精製した。また、いくつかのアッセイでは、培養上清中のsCD16Aの量を定量し、未精製のsCD16Aを用いた。ELISA捕獲抗体(LNK16 mAb)は、この抗原に特異的に結合するため、精製の必要はなく、洗浄ステップで、夾雑物を除去することが可能であった。
sCD16構成体のアミノ酸配列を、下記に示す(下線部のシグナル配列は、発現中に切断される;最後の7残基は、CD16A遺伝子ではなく、ベクターpCDNA3.1に由来することに注意)。
Figure 0004524181
ELISA方式
プレートはまず、炭酸緩衝液中の抗CD16 mAb LNK16(Advanced Immuno Chemical、Long Beach CA;5th Human Lymphocyte Differentiation Antigens Workshopを参照)を100ng/ウェルを用いて、室温で2時間コーティングした。3G8の結合を阻害しないどの抗sCD16A抗体でも、用いることができる。PBS-T-BSAで30分間ブロッキングを行った後、sCD16A培養上清を1/10希釈で添加し、室温で16時間インキュベートした。あるいは、精製したsCD16を用いた場合、精製sCD16をPBS-T-BSAで50ng/mlの濃度に希釈した。各ウェルに0.05mlを添加し、少なくとも2時間室温でインキュベートした。
プレートを洗浄し、PBS-T-BSA中に希釈した組換え抗体の0.5μg/mlから始まる複数の希釈液を添加し、室温で1時間、インキュベートした。捕捉されているsCD16Aへの組換え抗体の結合を、抗ヒトIgG-HRP結合体と、TMB基質とを用いて測定した。希硫酸を用いて発色を停止した後、450nMでプレートを読み取った。
結合アッセイの結果
この実施例は、CD16Aへの結合に関する、ヒト化抗CD16A抗体の結合特性が、キメラ3G8抗体の結合特性と同じであるか、または類似であることを示す。
比較結合実験に基づき、組換え抗体を、高親和性、中間的親和性、または低親和性で結合するものとして分類した。結合親和性の高い抗体、および中程度の抗体に関しては、上記第4節において論じた。hu3G8VH9、10、11、13、15、21、38、39、または41のVHドメインをもつ組換え抗体は、sCD16Aに対してまったく結合性を示さなかったか、またはごくわずかしか示さなかった。これらのデータから、ある種の置換(または、置換の組合せ)は、結合に対して概ね有害であると思われる。例えば、VHの52位をチロシンまたはアスパラギン酸で置換すること(すなわち、52Yおよび52D)、または94位をトレオニンで置換すること(94T)は、結合に有害である。同様に、50位におけるロイシンと54位におけるアスパラギン酸との組合せ(50L+54N)は結合に有害であり、94位におけるアルギニンと101位におけるアスパラギン酸との組合せも(94R+101D)も同様である。しかし、101位におけるアスパラギン酸は、94位がグルタミン、リジン、ヒスチジンまたはアラニンである(ただし、アルギニンではない)場合には許容される。さらに、34V+94R+101Dは、中程度の活性をもつ。これは、高親和性結合を維持する際の34位、94位、および101位の間の関係を示し、34Vが特に重要な残基でありうることを示唆する。同様に、hu3G8VL-6、7、8、9、11、12、13、および14のVLドメインをもつ組換え抗体は、sCD16Aに対してまったく結合性を示さなかったか、またはごくわずかしか示さなかった。これらのデータから、ある種の置換(または、置換の組合せ)は、結合に対して概ね有害であると思われる。例えば、34位におけるアラニンでの置換(34A)または、92位におけるチロシン(92Y)での置換は概ね結合に有害である。
典型的結合アッセイの結果を図1に示す。
CD16Aを発現する細胞への抗体結合
CHO-K1細胞で発現されたCD16Aに対する、選択されたヒト化抗体の結合を、直接結合競合アッセイによって測定した。
FcRIIbの膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに融合されたFcRIIIaの細胞外ドメインを発現するCHO-K1細胞を、細胞結合アッセイに用いた。細胞を、平底の96ウェル組織培養プレート(FALCON MICROTEST Tissue Culture plate、96well)に、1ウェルあたり40000細胞の密度でプレーティングし、37℃のCO2インキュベーターで約24時間インキュベートした。その後、プレートを25mM Hepes、75μM EDTA、11.5mM KCl、115mM NaCl、6mM MgS04、1.8mM CaCl2、0.25% BSA(結合緩衝液)で穏やかに3回洗浄した。
間接的な結合アッセイでは、その後、結合緩衝液中の抗CD16MAb希釈系列(最終濃度:1、0.5、0.25、0.125、0.0625、0.03、0.015、0μg/ml)100μlを各ウェルに加えた。プレートを、23℃で1時間、インキュベートし、結合緩衝液で3回洗浄した。ユウロピウム(EU)標識された抗ヒトIgG(100ng/ml)を各ウェルに50μl/ウェル加え、プレートを23℃で30分間インキュベートし、その後、結合緩衝液で3回洗浄した。最後に、100μlのDelfiaエンハンスメントソリューション(Delfia Enhancement solution)(PerkinElmer/Wallac)を添加した。振盪しながら15分間インキュベートした後、Victor2測定器(PerkinElmer/Wallac)で、時間分解蛍光(励起340nm;発光615nm)のプレートを読み取った。アッセイの結果を図2に示す。
上記のCHO-K1細胞を、競合アッセイに用いた。上述のように結合緩衝液で3回洗浄した後、異なった量の非標識の精製MAb(最終濃度1.2〜75nM)を、固定濃度のEU-Ch3G8-N297Q(最終濃度2.5nM)と混合した。プレートを、23℃で1時間、インキュベートし、結合緩衝液で3回洗浄した。100plのDelfiaエンハンスメントソリューション(PerkinElmer/Wallac)を添加し、振盪しながら15分間インキュベートした後、Victor2測定器(PerkinElmer/Wallac)で、時間分解蛍光(励起340nm;発光615nm)のプレートを読み取った。アッセイの結果を図3に示す。
これらのアッセイは、ヒト化抗CD16Aモノクローナル抗体が、形質移入細胞表面のCD16Aに、高い親和性で結合することを実証するものである。Hu3G8-22.1-N297Qは、ch3G8-N297Qより、高い親和性でCD16A発現細胞に結合する。
免疫複合体に対するsCD16A結合の阻害
FITC-BSAに対する4-4-20結合のアッセイ
FITC-BSAに対するch4-4-20またはch4-4-20(D265A)の結合をELISAによって評価した。(Ch4-4-20は、3G8のVH領域およびVL領域の代わりに、4-4-20のVH領域およびVL領域をそれぞれ含有していることを除いて、Ch3G8と同一である。したがって、Ch4-4-20は、ハプテンフルオレセインに対する高親和性および特異性を保持している。4-4-20に関しては、Bedzyk et al.、1989、J Biol Chem 264:1565-9に記載されている)。Nuncマキシソーブイムノプレート(maxisorb immunoplates)を、炭酸緩衝液中のFITC-BSA(1μg/ml、50ng/ウェル)でコーティングし、約16時間置いて結合させた。BSAでブロッキングを行った後、Ch4-4-20の希釈液をウェルに加え、室温に1時間置き、結合させた。結合していないMAbを洗い落とした後、HRP結合のヤギ抗ヒトIg二次抗体を加えた。1時間後に二次抗体を除去、洗浄し、TMB基質で発色させた。酸性停止液を加え、続いて450nmでプレートを読み取った。ch4-4-20およびch4-4-20(D265A)の両方が、FITC-BSAに高い親和性で結合した(データは示されていない)。
ch4-4-20/FITC-BSA免疫複合体に対するsFcR結合のアッセイ
ELISAプレート上で、ch4-4-20とFITC-BSAとの間で形成された免疫複合体(IC)に対するsFcRsの結合をアッセイするのにも、同じ方式を用いた。この場合、ビオチン化されたsFcR、またはビオチン化された抗ヒトG2 Mabを二次試薬として用い、これに続き、ストレプトアビジン-BRP検出を行った。
ICに対するsFcR結合の、マウス3G8、キメラ3G8、およびヒト化3G8による阻害
アッセイで最大シグナルの約90パーセントが得られるように、ch4-4-20濃度、およびsFcR濃度を固定した。sCD16Aをマウス3G8、キメラ3G8、またはヒト化3G8の系列希釈液と予備混合し、免疫複合体を含むプレートに加える前に、1時間インキュベートした。ヒト化3G8、またはキメラ3G8の系列希釈は、sCD16A-G2-ビオチンと一時間インキュベートした。この混合液は、その後、ヒトIgG1キメラ型の抗フルオレセインMab4-4-20と、FITC-BSAとの間の免疫複合体を含むELISAウェルに加えた。1時間後に、ICに対する可溶性受容体の結合を、ストレプトアビジン-HRP結合体とTMB発色を用いて検出した。この結果を図4に示す。このアッセイは、ヒト化抗CD16A抗体が、免疫複合体におけるCD16AのIgGへの結合に対する有効な阻害剤であることを示す。
抗CD16Aモノクローナル抗体の一団の分析
標準的方法を用いて、マウスをsCD16Aで免疫処置し、さらに追加免疫した後、一団のハイブリドーマを生成した。sCD16Aで直接コーティングされたプレート上で結合活性を示す抗体を得るために、ELISAによって、8枚の96ウェルプレートをスクリーニングした。これらのうち93が陽性シグナルを示し、これらをさらに増殖させた。これらのうち37は、ヒト血球との結合に関して、FACSで陽性を示した。これらの上清が、次に、CD16Aおよび免疫複合体の相互作用に対して阻害能を示すか、また、3G8の結合部位(エピトープ)に類似した結合部位をもつか分析した。アッセイは、キメラ3G8を用いた捕獲ELISA、およびsRIIIa-Igに対する免疫複合体結合の阻害を含んでいた。これらのアッセイに基づき、3G8に類似の結合特性および阻害特性をもつ抗体が単離され、同様に、3G8とは異なる結合特性および/または阻害特性をもつMabsも単離された。
DJ130c(DAKO)および3G8をこのアッセイの対照として用いた。MAb DJ130cは、購入可能なMabであり、3G8とは異なるエピトープでCD16に結合する(Tamm and Schmidt)。
このMabは、FcRIIIa-免疫複合体結合を阻害しない(Tamm and Schmidt)。ELISAベースの阻害アッセイにおいて、DJ130cは結合を阻害せず、むしろ促進する。
これらのデータは、Ch3G8と同じエピトープに結合し、かつ免疫複合体に対するsCD16Aの結合を阻害する抗体がこの一団に含まれていることを示す。また、この一団のMabには、Ch3G8と同じエピトープに結合しない抗体も含まれている。これらの後者の抗体の大部分は、免疫複合体におけるIgGとsCD16Aとの相互作用を阻害しない。
Figure 0004524181
血小板欠乏症の生体内誘導
自己免疫疾患の動物モデルを用いることで、自家抗体によって誘導されたヒトFc-FcγRIII相互作用を阻害するCD16A結合タンパク質の生体内活性を評価することができる。適当なモデルの1つは、ITPおよび抗血小板mAb 6A6の「受動的マウスモデル(passive mouse model)」である(Oyaizu et al.、1988、J Exp.Med.167:2017-22;Mizutani et al、1993、Blood 82:837-44参照)。6A6は、NZW x BSXBのF1個体に由来するIgG2aイソタイプmAbである。6A6の投与によって、muFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスでは、血小板欠乏症が起きるが、ヒト導入遺伝子をもたないmuFcyRIII-/-マウスでは起きない。Samuelsson et al.、2001、Science 291:484-86を参照のこと。6A6の代わりに、他の抗血小板モノクローナル抗体を用いることもできる。あるいは、ポリクローナル抗血小板抗体を用いることもできる。
血小板欠乏症に対する最大限の防御を与えるCD16A結合蛋白質は、muFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスにCD16A結合タンパク質を投与し、mAb 6A6で誘導された血小板欠乏症の軽減を測定することによって同定することができる。
上記に提供したプロトコルにおいて、マウスmAbの代わりに、6A6のキメラヒトIgG1κキメラ誘導体を用いることで、血小板欠乏症を引き起こすmAbがヒトイソタイプであるような同様のアッセイを行うことができる。このアッセイを行うために、マウス抗血小板モノクローナル抗体6A6のVH領域とおよびVL領域をコードするcDNA断片を、それぞれヒトCγ1およびCκ cDNA断片に融合させることによって、キメラ6A6モノクローナル抗体(ch6A6)を調製した。この結果得られた両遺伝子を293細胞の中で同時発現させ、キメラ6A6をプロテインAアフィニティクロマトグラフィと、これに続くゲルろ過クロマトグラフィーによって精製した。
キメラ6A6抗体が血小板欠乏症を誘導することを実証するため、ch6A6をmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに投与した。ch6A6は、各動物に静脈内(i.v.)投与、または腹腔内(i.p.)投与した(0.1μg/g)。ch6A6の投与後、2時間、5時間、24時間、および48時間に動物から血液を抜き、Coulter Z2粒子計数器、および70μmの口径を備えたサイズ分析器を用いて、血漿血小板数を測定した。粒径が1.5μmおよび4μmの間にある(血小板に相当する)粒子を計数し、各濃度において、時間に対する血小板数をプロットすることによって、データを分析した。
0.1μg/gのch6A6を腹腔内注射した2時間後に、約75%の血小板が欠乏していた。血小板数は、ch6A6注射の後5時間低いままであったが、ch6A6注射の72時間後に、急激に増加して、正常な血小板数に戻った。
0.1μg/gのch6A6を静脈内注射した2時間後に、約60%の血小板が欠乏していた。血小板数は、ch6A6注射の後6時間低いままであったが、ch6A6注射の48時間後に、急激に増加して、正常な血小板数に戻った。
マウスを血小板欠乏症から防御するCD16結合抗体の能力の分析
実験的ITPにおいて血小板欠乏症を軽減するCD16A結合タンパク質の効果は、下記のようにしてアッセイすることができる。muFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスの群に、リン酸緩衝溶液(PBS)中のCD16A結合タンパク質を、0.5、1、2または5μg/gの濃度で静脈内(i.v.)投与した。対照は、PBSのみ、無関係のヒトIgG1(陰性対照)、またはヒト静脈内免疫グロブリン(IVIG;陽性対照)であった。CD16A結合タンパク質または対照の投与後1時間に、0.1μg/g ch6A6を各動物に静脈内投与、または腹腔内投与することによって、ITPを誘導した。ch6A6の投与後、2時間、5時間、24時間、および48時間に動物から血液を抜いた。、血漿血小板数は、上述のCoulter Z2粒子計数器、およびサイズ分析器を用いて測定し、投与された結合タンパク質の各濃度において、時間に対する血小板数をプロットすることによって、データを分析した。
ch6A6を腹腔内注射する1時間前に、マウス3G8(0.5μg/g)をmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに注射した場合、ch6A6投与後2時間の時点で、33%の血小板が欠乏していた(図5)。血小板数は、ch6A6注射の24時間後に、急激に増加して、正常な血小板数に戻った。ch6A6を静脈内注射する1時間前に、マウス3G8(0.5μg/g)をmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに注射した場合、ch6A6投与後2時間の時点で、30%の血小板が欠乏していた(図6)。血小板数は、ch6A6注射の5時間後に、急速に増加して、正常な血小板数に戻った。
これらの結果は、ヒトIVIGを投与したときに見られた防御に類似のものであった。ch6A6を腹腔内注射する1時間前に、ヒトIVIG(1mg/g)をmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに注射した場合、Ch6A6投与後2時間の時点で、33%の血小板が欠乏していた(図5)。血小板数は、ch6A6注射の24時間後に、急激に増加して、正常な血小板数に戻った。ch6A6を静脈内注射する1時間前に、ヒトIVIG(1mg/g)をmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに注射した場合、ch6A6投与後2時間の時点で、20%の血小板が欠乏していた(図6)。血小板数は、ch6A6注射の5時間後に、急速に増加して、正常な血小板数に戻った。
図5および図6に示す結果は、m3G8によってch6A6介在性の血小板欠乏症からマウスが防御されることを示し、その際の防御レベルが、IVIGによって与えられる防御と類似のものであったことを示す。
HEK-293細胞で産生された組換え型マウス3G8、ヒトIgG1またはIgG2定常ドメインをもつキメラ3G8(HEK-293細胞およびCHO-Kl細胞で産生されたch3G8-γ1、ならびにHEK-293細胞で産生されたch3G8-γ2)、およびch3G8-y1変種(ch3G8-γ1 D265A)の調製物は、この実験において有意な防御を与えなかった。6A6を腹腔内注射する1時間前に、Ch3G8γ1またはCh3G8γ2(0.5μg/g)をmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに注射した場合、Ch6A6投与後5時間の時点で、約60%の血小板が欠乏していた(図7)。血小板数はその後、次第に正常に戻った。血小板欠乏症は、抗CD16A結合タンパク質をまったく投与されなかったマウスほど深刻ではなかったが、これらのキメラ抗体は、防御を与えたとしても、マウス抗体3G8に比べ有意に減弱した防御しか与えなかった。アスパラギン酸265がアラニンに変異しているch3G8変種も類似の結果を示した。興味深いことに、実施例11で示されるように、グリコシル化されない変種を生成するch3G8の改変によって、抗体の防御効果が増強した。
Ch3G8 N2970はch6A6介在性血小板欠乏症からマウスを防御する
Ch3G8-γ1の非グリコシル化型は、ch3G8-γ1をコードする発現ポリヌクレオチドに、残基297がアスパラギン(N)からグルタミン酸(Q)に変わる変異を導入し、コードしている抗体を発現させることによって調製した。残基297はN-結合型グリコシル化部位にあり、この変異によって、この部位でのFcドメインのグリコシル化が阻止される。この非グリコシル化抗体、即ちch3G8 N297Qを、ch3G8-γ1に関する記載(上記実施例4を参照)と同様にして、HEK-293細胞で生成した。ch6A6介在性血小板欠乏症に対して防御するch3G8-N297Qの能力を、上記のプロトコルを用いてテストした。
ch6A6を腹腔内注射する1時間前に、1μg/gの非グリコシル化型ch3G8(ch3G8 N297Q)をmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに注射した場合、ch6A6投与後2時間の時点で、約75%の血小板が欠乏していた(図8)。血小板レベルは、ch3G8 N297Qの非存在下より速やかに増強し、Ch6A6注射後24時間までに正常レベルに戻った。
ch6A6を静脈内注射する1時間前に、1μg/gのch3G8 N297QをmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに注射した場合、ch6A6投与後2時間の時点で、約60%の血小板が欠乏していた(図9)。血小板レベルは、ch3G8 N297Qの非存在下より速やかに増強し、ch6A6注射後48時間までに正常レベルに戻った。
ch6A6を静脈内注射する1時間前に、ch3G8 N297Q(2μg/g)をmuFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスに注射した場合、ch6A6投与後2時間の時点で、血小板が40%だけ欠乏していた(図9)。血小板レベルは、ch3G8 N297Qの非存在下より速やかに増強し、ch6A6注射後5時間までに正常レベルに戻った。
即ち、Ch3G8-N297Qは、一貫して、血小板数を有意に増加させることができた。エフェクター細胞上のヒトCD16に3G8が結合することによって、CD16は、免疫複合体と相互作用して、ADCCまたは食作用などのエフェクター機能を引き起こすことができなくなる。キメラ3G8およびマウス3G8分子は、CD16に対して類似の結合能をもち、生体外でsCD16が免疫複合体に結合するのを阻害するこれらの能力においても類似している。特定の機構に拘泥するものではないが、このmAbの結合活性および(したがって)遮断活性は、この抗体のFab部分に限定されると考えられ、huCD16の阻害がトランスジェニックマウスのITPモデルにおける防御機構であると考えられている。上記のデータは、Fcドメインのグリコシル化状態が、生体内における抗CD16A抗体の防御能に、影響を与えうることを示す。Fcドメインのグリコシル化を除去すること(例えば、D265AもしくはN297Q変異、またはヒトγ2Fcドメインの使用による)によって、FcRに対するFcの結合が減弱または除去される。非グリコシル化(N297Q)変種の場合、補体結合も消滅する。
非グリコシル化CD16A結合タンパク質投与後の好中球レベル
好中球レベルに対する非グリコシル化CD16A結合タンパク質の効果をテストし、グリコシル化CD16A結合タンパク質の効果と比較した。リン酸緩衝溶液(PBS)中で5μg/gの濃度のCD16A結合タンパク質、または無関係のヒトIgG1(陰性対照)もしくはマウス抗体RB6-8C5(陽性対照)などの対照を、muFcγRIII -/-、huFcγRIIIAトランスジェニックマウスの群に投与した。別の陰性対照は、PBSのみで投与された。24時間後に、マウスを安楽死させ、血液、脾臓、および骨髄を採取した。好中球は、FACSによって分析した。染色実験は、3%のFCSを含むRPMIで行った。マウス細胞は、FITC結合3G8(PharMingen)およびR-PE結合RB6-8C5(PharMingen)を用いて染色した。試料は、FACS Calibur(Becton DICkinson)を用いたフロー部位メトリーによって分析した。
5μg/g ch3G8(上述の通り調製)の腹腔内注射によって、血液中および脾臓内でマウス好中球欠乏が引き起こされた(図10、右上四分画)。マウス3G8投与の後でも、類似の結果が見られた(結果は示されていない)。ch3G8処理されたマウスの骨髄では、CD16の弱い染色が好中球でみられたが、これは受容体がキメラ抗体によって占められていることを示しているのかもしれないし、または、脱粒を示すものであるかもしれない(図10、右上四分画から左上四分画への移行)。対照的に、5μg/gのch3G8 N297Qの腹腔内注射では、血液、脾臓または骨髄においてもマウス好中球欠乏が引き起こされなかった(図10)。追加実験では、グリコシル化されたヒト化3G8抗体によって、非グリコシル化型の同一抗体よりも、有意に大きな循環血中好中球の減少がみられた。
自己免疫溶血性貧血モデル
この実施例は、CD16A結合タンパク質の投与によって、自己免疫溶血性貧血モデルにおける赤血球減少が阻止されることを実証する。
muFcRIII-/-、huFcRIIIa+マウスにおける抗体依存性赤血球欠乏を阻止するHu3G8-5.1-N297Qモノクローナル抗体の効果を評価した。Hu3G8-5.1-N297Qは、重鎖3G8VH-5および軽鎖Hu3G8VH-1をもつ非グリコシル化抗体であり、アスパラギン297の置換が示されている。0日目にマウスから血液を抜き、RBCレベルを、Coulter Z2粒子分析器を用いて測定した。翌日、3匹のマウスからなる各群に、0.5mg/kgのHu3G8-5.1-N297QまたはPBSを、静脈内注射した。一群のマウスには、いかなる化合物も投与されなかった。1時間後、マウス抗RBC IgG2a Mab 34-3Cを各マウスに腹腔内(i.p.)投与する(2.5mg/kg)ことによって、最初の2群にRBC欠乏を誘導した。34-3Cの投与後、2時間、5時間、24時間、および48時間にマウスから血液を抜き、RBC数を測定した。データは、RBC数をプロットすることによって分析した。図11に示すデータは、このモデルにおけるRBC欠乏を阻止するHu3G8-5.1-N297Qの能力を実証するものである。
抗体依存性細胞傷害(ADCC)の阻害
この実施例は、ヒト化3G8変種がマウス3G8の活性に類似した活性をもち、生体外でADCCを阻害することを実証する。
方法:抗体依存性細胞傷害(ADCC)を評価するためのプロトコルは、以前に(Ding et al.、1998、Immunity 8:403-11)に記載されたものと同様である。簡潔には、HER2を過剰発現する乳癌細胞系SK-BR-3に由来する標的細胞をユウロピウムキレートであるビス(アセトキシメチル)2,2':6,'2"-テラピリジン-6,6"-ジカルボン酸塩(bis(acetoxymethyl)2,2':6',2"-terpyridine-6,6"-dicarboxylate)(DELFIA BATDA Reagent、Perkin Elmner/Wallac)で標識した。標識された標的細胞は、キメラ抗HER2抗体(ch4D5、100ng/ml)またはキメラ抗フルオレセイン抗体(ch4-4-20、1μg/ml)でオプソニン化(コーティング)した。抗フルオレセイン抗体の場合、抗体オプソニン処理の前に、SK-BR-3細胞をフルオレセインハプテンでコーティングした。末梢血単核細胞(PBMC)を、FIColl-Paque(Amersham Pharmacia)勾配遠心で単離し、エフェクター細胞として用いた、(エフェクター:標的比は、ch4D5=(37.5:1)、および、ch4-4-20=(75:1)であった)。37℃、5%CO2で、3.5時間インキュベーションした後、細胞上清を採取し、酸性ユウロピウム溶液(DELFIA Europium Solution、Perkin Elmer/Wallac)に加えた。形成されたユウロピウム-TDAキレートの蛍光を、時間分解蛍光計(Victor21420、Perkin Elmer/Wallac)で定量した。標的細胞をそれぞれ2%TX-100および培地単独でインキュベーションすることによって、最大遊離(MR)および自然遊離(SR)を測定した。抗体非依存性細胞傷害(AICC)は、抗体非存在下で標的細胞およびエフェクター細胞をインキュベーションすることによって測定した。各アッセイを、3回繰り返した。平均比溶解率(mean percentage specific lysis)を、(ADCC-AICC)/(MR-SR)×100として計算した。
結果:HER2/neuタンパク質(ch4D5)(図12)、またはフルオレセインハプテン(ch4-4-20)(図13)に対する抗体に媒介されたADCCが抗CD16変種の添加によって阻害された。ch4D5に媒介されたADCCの阻害では、イソタイプ対照抗体がこのアッセイに影響を示さなかったのに対し、テストされたすべての3G8変種が300ng/mlの濃度において、50%を越える阻害を示した。抗フルオレセイン抗体の場合、イソタイプ対照抗体およびキメラ3G8がほとんど影響を与えなかったのに対し、マウス3G8(図13A)およびヒト化3G8変種(図13B)は、1μg/mlを越える濃度で、約50%の阻害を示した。
Hu3G8-5.1-N297Qの投与はhuFcRIIa+、huFcRIIIa+マウスにおける免疫性血小板欠乏症(ITP)を阻止する
この実施例は、抗CD16A抗体の投与が、CD32Aに媒介されたITPに対する防御を与えることを示す。FcγRIII-/-、hCD16Aマウスと同様に、FcyRIII-/-、hCD32Aトランスジェニックマウスにおいても、ch6A6抗体の投与によってITPが誘導される。0.1μg/gのch6A6を腹腔内注射した5時間後に、約80%の血小板が欠乏していた(データは示されていない)。血小板数は、ch6A6注射の後24時間低いままであったが、ch6A6注射の48時間後に、急激に増加して、正常な血小板数に戻った。予想通り、ch6A6注射の1時間前にhu3G8-5.1(0.5μg/g)を静脈内注射しても、ITPに対する防御をFcγRIII-/-、hCD32Aマウスに与えることはなかった(データは示されていない)。
単一トランスジェニックマウスと同様に、FcyRIII-/-、hCD16A、hCD32A二重トランスジェニックマウスにおいても、ch6A6によってITPが誘導される。0.1μg/gのch6A6を腹腔内注射した5時間後に、約80%の血小板が欠乏していた(図14)。血小板数は、ch6A6注射の後24時間低いままであったが、ch6A6注射の48時間後に、急激に増加して、正常な血小板数に戻った。
FcγRIII-/-、hCD32Aマウスと対照的に、FcyRIII-/-、hCD16A、hCD32Aマウスはhu3G8-5.1の投与によって、ITPから防御された。完全な防御は、ch6A6を腹腔内注射する1時間前に1μg/gのhu3G8-5.1を注射した際に観測され、部分的防御は、0.75μg/g、または0.5μg/gのh3G8-5.1が投与された際に得られた(図14)。即ち、これらのデータは、CD32AはITPを媒介しうるが、1μg/g h3G8 5.1の注射は、血小板欠乏症に対して、予想外かつ完全な防御をマウスに与えることを示している。
CHO-S細胞系で生成したHu3G8-5.1-N297Qを用いた血小板欠乏症の阻止
Hu3G8-5.1-N297QをCHO-S細胞系で生成した。Fc-yRIII-/-、hCD16A単一トランスジェニックマウスにおいて、ITPに対する防御を与える、この抗体の能力は、実施例13に記載した操作手順を用いて測定した。図15に示すように、ch6A6の腹腔内注射の1時間前に、CHO-S細胞で生成したHu3G8-5.1-N297Qを0.5mg/kg以上投与することによって、マウスをITPから完全に防御する。
非グリコシル化されたヒト化抗体の治療効果
上述の通り、時間0に0.1μg/gのch6A6を腹腔内注射することによって、ITPを誘導した。2時間後に、血漿中の血小板数を測定して、ITPの存在を確認した。ch6A6を腹腔内注射した3時間後に、異なった濃度のhu3G8-5.1 N297Qをマウスに静脈内注射した(矢印)。結果(図16A)は、無処理のマウスにおける血小板数が低いままであったのに対し、Hu3G8-5.1-N297Q注射後には、血小板数が急速に正常に戻ることを示している。これらの結果は、hu3G8-5.1-N297Q抗体の投与を用いることで、マウスモデルにおけるITPが治癒されうることを実証する。
この実験では、時間0に0.1μg/gのch6A6を腹腔内注射することによって、ITPを誘導した。2時間後に、血漿中の血小板数を測定して、ITPの存在を確認した。ch6A6を腹腔内注射した3時間後に、hu3G8-22.1-N297Qまたはhu3G8-22.43-N297Qを0.5μg/gで静脈内注射した(矢印)。結果は、無処理のマウスおよびHu3G8-22.43-N297Qで処理されたマウスにおける血小板数が低いままであったのに対し、Hu3G8-22.1-N297Q注射後には、血小板数が急速に正常に戻ることを示している。これらの結果は、hu3G8-22.1-N297Qを用いることで、マウスモデルにおけるITPが治癒されうることを実証する。
muFcyRIII-/-、huFcyRIIIAトランスジェニックマウスのAHAにおけるHu3G8-22.1-N297Qの治療効果
この実験では、0日目に、50μgのマウス抗RBC IgG2a Mab 34-3Cを腹腔内注射することによって、AHAを誘発した。1日目に、血中のRBC数を測定して、AHAの存在を確認した。2時間後に、様々な濃度のHu3G8-22.1-N297Qをマウスに静脈内注射した(矢印)。結果は、無処理のマウスにおけるRBC数が低下し続けたのに対し、Hu3G8-22.1-N297Q注射後には、RBC数が安定し続けたことを示している(図17)。Hu3G8-22.1-N297Qの至適濃度は0.5μg/gである。RBC数は、7日目にすべてのマウスで正常に戻った。RBC数に対する反復出血の効果を測定するために、対照マウスには注射を行わず、血液を毎日抜いた。マウスモデルにおけるこれらの結果は、Hu3G8-22.1-N297Qを用いることで、AHAを治癒しうることを示している。Hu3G8-22.1-N297Qは、自家抗体によるさらなるRBC減少を阻止し、したがって、マウスを貧血からも防御する。
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本明細書に記載された実施例および実施形態は、例示のみを目的とすると理解されるべきものである。これらが示すところによって、様々な改善または変更が当業者に示唆されることが予測され、そのような改善または変更も、本出願の精神および範囲、ならびに添付された請求の範囲の内に含まれる。本明細書に引用されたすべての刊行物(配列登録番号および対応する注解を含む)、特許、および特許出願の全体を、あらゆる目的で、参照により本明細書に組込み、これらは、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み込まれるように明確かつ個別に指示された場合と同程度に本明細書に組み込まれるものとする。
図1は、sCD16Aに対するCD16A結合タンパク質の結合を測定したELISAの結果を示す図である。Hu3G8-24.43は、重鎖Hu3G8VH-24、および軽鎖Hu3G8VL-43をもつ抗体である。Hu3G8-5.1は、重鎖Hu3G8VH-5、および軽鎖Hu3G8VL-1をもつ抗体である。Ch3G8は、キメラ3G8抗体である。Hu1gGlは、無関係の免疫グロブリンである。 図2は、CD16Aの細胞外ドメインを発現するCHO-K1細胞に対する、ヒト化抗体およびキメラ抗体の結合を測定したアッセイの結果を示す図である。Hu3G8-22.1は、重鎖Hu3G8VH-22、および軽鎖Hu3G8VL-1をもつ抗体である。Hu3G8-5.1は、重鎖Hu3G8VH-5、および軽鎖Hu3G8VL-1をもつ抗体である。Hu3G8-22.43は、重鎖Hu3G8VH-22、および軽鎖Hu3G8VL-43をもつ抗体である。N297Qは、抗体がグリコシル化されていないことを示す。 図3は、細胞ベース競合アッセイの結果を示す図である。図に示すグリコシル化されていないヒト化抗体は、CD16Aの細胞外ドメインを発現するCHO-K1細胞に対する結合において、グリコシル化されていないキメラ抗体と競合する。 図4は、免疫複合体に対するsCD16Aの結合の阻害を示す図である。Hu3G8-1.1は、重鎖Hu3G8VH-1、および軽鎖Hu3G8VL-1をもつ抗体である。 図5は、ch6A6の腹腔内注射の1時間前にmAb 3G8(0.5μg/g)またはヒトIVIG(1mg/g)を静脈内注射されたマウスにおけるITPに対する防御を示す図である。 図6は、ch6A6の静脈内注射の1時間前にmAb 3G8(0.5μg/g)またはヒトIVIG(1mg/g)を静脈内注射されたマウスにおけるITPに対する防御を示す図である。 図7は、ch6A6の腹腔内注射の1時間前にch3G8(0.5μg/g)を静脈内注射されたマウスにおけるITPに対する防御の欠如を示す図である。 図8は、ch6A6の腹腔内注射の1時間前にch3G8 N297Qを静脈内注射されたマウスにおけるITPに対する防御を示す図である。 図9は、ch6A6の腹腔内注射の1時間前にch3G8 N297Qを静脈内注射されたマウスにおけるITPに対する防御を示す図である。 図10は、CD16A結合タンパク質または対照の投与後における好中球のFACS走査の結果を示す図である。x軸はCD16に対する抗体の標識を示し、y軸はGr-1抗原に対する抗体の標識を示す。右上四分画は好中球を示し、左上四分画は他の顆粒球および3G8-FITCによってもはや染色されない好中球を示す。 図11は、ヒト化抗CD16抗体によるAIHAの阻止を示す図である。 図12は、ch4D5に媒介されたADCCのヒト化3G8抗体による阻害を示す図である。 図13は、ch4-4-20に媒介されたADCCのマウス3G8抗体(図13A)およびヒト化3G8抗体(図13B)による阻害を示す図である。 図14は、hu3G8-5.1の投与によるITPに対するFcγRIII-/-、hCD16A、hCD32Aマウスの防御を示す図である。 図15は、hu3G8-5.1 N297Qの投与によるITPに対するFcγRIII-/-、hCD16Aマウスの防御を示す図である。図15(A)は、表示した時間における、各用量のデータ値を示す。図15(B)は、5時間の時点での用量反応を示す。 図16は、血小板欠乏症が誘導されているマウスにグリコシル化されていないヒト化抗体を投与した際の治療効果を示す図である。図16(A)は、Hu3G8-5.1-N297Qの投与を示す。図16(B)は、Hu3G8-22.1-N297QおよびHu3G8-22.43-N297Qの投与を示す。 図17は、自己免疫溶血性貧血の治療におけるヒト化抗CD16A抗体の治療効果を示す図である。

Claims (23)

  1. 配列番号35のアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号59のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVHドメインと、配列番号67のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号75のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号88のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVLドメインとを含むマウス3G8抗体に由来する6つ全てのCDRを含むヒト又はヒト化抗CD16A抗体であって、
    前記CDRの少なくとも1つが、V H ドメインにおいては、CDR1内の34位にあるVal、CDR2内の50位にあるLeu、CDR2内の52位にあるPhe、CDR2内の54位にあるAsn、CDR2内の60位にあるSer、CDR2内の62位にあるSer、CDR3内の99位にあるTyr及びCDR3内の101位にあるAsp、並びにV L ドメインにおいては、CDR1内の24位にあるArg、CDR1内の25位にあるSer、CDR1内の32位にあるTyr、CDR1内の33位にあるLeu、CDR2内の50位にあるAsp、Trp又はSer、CDR2の51位にあるAla、CDR2内の53位にあるSer、CDR2内の55位にあるAla又はGln、CDR2内の56位にあるThr、CDR3内の92位にあるTyr、CDR3内の93位にあるSer及びCDR3内の94位にあるThrから成る群から選択される少なくとも1つの位置で、対応するマウスCDRと相違し、V H CDR1の34位がValでない限りはV H ドメインの94位にArg及びV H CDR3の101位にAspを同時に含まないか、又はV H CDR2内の50位にLeu及び54位にAsnを同時に含まないか、又はV L CDR3内の92位にTyr、93位にSer及び94位にThrを同時に含まず、
    天然のFc領域と比較してFc領域のアミノ酸配列の改変に起因してFc受容体及び補体のC1q成分に結合しないヒトIgG 1 Fc領域を含みここで前記改変は前記Fc領域の残基297に対応するアミノ酸の非グリコシル化(aglycosylation)を含む、
    前記抗体。
  2. 配列番号35のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号39のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号59のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVHドメインと、配列番号67のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号75のアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号88のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVLドメインとを含むヒト又はヒト化抗CD16A抗体であって、
    天然のFc領域と比較してFc領域のアミノ酸配列の改変に起因してFc受容体及び補体のC1q成分に結合しないヒトIgG 1 Fc領域を含み、ここで前記改変は前記Fc領域の残基297に対応するアミノ酸の非グリコシル化を含む、
    前記抗体
  3. 配列番号109又は104の配列を有するVHドメインと、配列番号96の配列を有するVLドメインとを含む、請求項1又は2に記載の抗体。
  4. 配列番号113の配列を有するVHドメインを含む、請求項1に記載の抗体。
  5. 配列番号96、100又は118の配列を有するVLドメインを含む、請求項1に記載の抗体。
  6. 配列番号113の配列を有するVHドメインと、配列番号96、100又は118の配列を有するVLドメインとを含む、請求項1に記載の抗体。
  7. 配列番号98の配列を有する軽鎖を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の抗体。
  8. 配列番号104の配列を有するVHドメインを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体。
  9. 配列番号109の配列を有するVHドメインを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体。
  10. 配列番号118の配列を有するVLドメインを含む、請求項1に記載の抗体。
  11. 配列番号66の配列を有するFR1ドメイン、配列番号74の配列を有するFR2ドメイン、配列番号87の配列を有するFR3ドメイン及び配列番号94の配列を有するFR4ドメインを含むVLドメインを含む、請求項1〜4、8及び9のいずれか1項に記載の抗体。
  12. 配列番号51の配列を有するFR3ドメインを含むVHドメインを含む、請求項1〜3、5、7及び9〜11のいずれか1項に記載の抗体。
  13. 配列番号31の配列を有するFR1ドメイン、配列番号38の配列を有するFR2ドメイン及び配列番号64の配列を有するFR4ドメインを含むVHドメインをさらに含む、請求項12に記載の抗体。
  14. 前記Fc領域の残基297に対応するアミノ酸がアスパラギンではない、請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗体。
  15. 配列番号111の配列を有する重鎖を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の抗体。
  16. 単鎖抗体である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の抗体。
  17. 四量体抗体である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の抗体。
  18. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体を非ヒト哺乳動物に投与することを含む、非ヒト哺乳動物において有害な免疫応答を軽減する方法。
  19. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体を非ヒト哺乳動物に投与することを含む、非ヒト哺乳動物で中程度の好中球減少症又は重度の好中球減少症を引き起こすことなく、非ヒト哺乳動物において有害な免疫応答を治療する方法。
  20. 前記有害な免疫応答が、自己免疫疾患によって引き起こされる炎症性応答である、請求項18又は19に記載の方法。
  21. 前記有害な免疫応答が、抗体介在性の血小板欠乏症である、請求項18又は19に記載の方法。
  22. 前記有害な免疫応答が特発血小板欠乏症性紫斑病又は自己免疫溶血性貧血である、請求項18又は19に記載の方法。
  23. 請求項1〜17のいずれか1項に記載の抗体と薬剤として許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
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