従来から、この種の電子源として、例えば、図9や図10に示す構成の電子源10’,10”が知られている。
図9に示す構成の電子源10’は、導電性基板としてのn形シリコン基板1の主表面(一表面)側に酸化した多孔質多結晶シリコンよりなる強電界ドリフト層6’が形成され、強電界ドリフト層6’上に金属薄膜(例えば、金薄膜)よりなる表面電極7が形成されている。また、n形シリコン基板1の裏面にはオーミック電極2が形成されており、n形シリコン基板1とオーミック電極2とで下部電極12を構成している。なお、表面電極7の厚さ寸法は例えば10nm程度に設定されている。また、図9に示す構成の電子源10’では、下部電極12と強電界ドリフト層6’との間にノンドープの多結晶シリコン層3を介在させてあり、多結晶シリコン層3と強電界ドリフト層6’とで、下部電極12と表面電極7との間に介在し電子が通過する電子通過層を構成しているが、多結晶シリコン層3を介在させずに強電界ドリフト層6’のみで電子通過層を構成したものも提案されている。
一方、図10に示した電子源10”は、絶縁性を有するガラス基板よりなる絶縁性基板11の一表面上に形成した金属膜により下部電極12を構成している点が図9の構成とは相違するだけなので、図9に示した電子源10’と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
上述の電子源10’,10”から電子を放出させるには、例えば、表面電極7に対向配置されたコレクタ電極21を設け、表面電極7とコレクタ電極21との間を真空とした状態で、表面電極7が下部電極12に対して高電位側となるように表面電極7と下部電極12との間に直流電圧Vpsを印加するとともに、コレクタ電極21が表面電極7に対して高電位側となるようにコレクタ電極21と表面電極7との間に直流電圧Vcを印加する。ここに、直流電圧Vpsを適宜に設定すれば、下部電極12から注入された電子が強電界ドリフト層6’をドリフトし表面電極7を通して放出される(図9、図10中の一点鎖線は表面電極7を通して放出された電子e−の流れを示す)。なお、強電界ドリフト層6’の表面に到達した電子はホットエレクトロンであると考えられ、表面電極7を容易にトンネルし真空中に放出される。
上述の各電子源10’,10”では、表面電極7と下部電極12との間に流れる電流をダイオード電流Ipsと呼び、コレクタ電極21と表面電極7との間に流れる電流をエミッション電流(放出電子電流)Ieと呼ぶことにすれば(図9、図10参照)、ダイオード電流Ipsに対するエミッション電流Ieの比率(=Ie/Ips)が大きいほど電子放出効率(=(Ie/Ips)×100〔%〕)が高くなる。なお、上述の電子源10’,10”では、表面電極7と下部電極12との間に印加する直流電圧Vpsを10〜20V程度の低電圧としても電子を放出させることができ、直流電圧Vpsが大きいほどエミッション電流Ieが大きくなる。
ところで、電界放射により電子線を放射する電子源としては、上述の構成のもの以外にも種々の構成のものが提案されており、例えば、電子通過部を多孔質半導体層とした構造の電子源(例えば、特許文献1参照)や、絶縁体層としたMIM(Metal−Insulator−Metal)構造の電子源や、電子通過部を絶縁体層とし電子通過部と下部電極との間に半導体層を介在させたMIS(Metal−Insulator−Semiconductor)構造の電子源などが提案されている。
また、ディスプレイ用の電子源として、図10に示した構成の電子源10”における下部電極12と電子通過層と表面電極7とで構成される電子源素子に相当する構造を1つの基板に多数形成した構成の電子源も提案されている。(例えば、特許文献2、3、4参照)。
図11に示す電子源10は、ディスプレイ用の電子源を構成した一例であって、絶縁性を有するガラス基板よりなる絶縁性基板11と、絶縁性基板11の一表面上に列設された金属材料からなる複数本の帯板状の下部配線12aと、下部配線12aに重なる形で形成された複数の酸化した多孔質多結晶シリコン層よりなるドリフト部6aおよびドリフト部6aの間を埋めるノンドープの多結晶シリコン層よりなる分離部6bとを有する強電界ドリフト層6と、各ドリフト部6aそれぞれに積層された複数の表面電極7と、強電界ドリフト層6上に形成され各表面電極7それぞれに対応する部位が開口された絶縁層8と、絶縁層8上において下部配線12aと交差する方向(直交する方向)に列設された複数のバス配線25’とを備えている。
ここにおいて、バス配線25’は、下部配線12aに交差する方向に列設された複数の表面電極7を各列ごとに共通接続するものであって、表面電極7の側方に位置しており、各表面電極7の側縁からは、絶縁層8の表面およびバス配線25’における表面電極7側の一側面を沿ってバス配線25’の表面まで延長され表面電極7とバス配線25’とを電気的に接続する接続配線16が連続一体に形成されている。言い換えれば、接続配線16は、表面電極7の側縁からバス配線25’上まで延長され表面電極7とバス配線25’との間を電気的に接続するものであり、表面電極7と同じ材料により同時一体に形成されている。また、下部配線12aは、長手方向の両端部上にそれぞれパッド27が形成されている。また、バス配線25’は長手方向の両端部でそれぞれパッド28に接続されている。なお、バス配線25’は電子をトンネルさせる必要がないので、表面電極7に比べて膜厚を厚くすることができ、低抵抗化を図ることができる。
図11に示した構成の電子源10では、絶縁性基板11の一表面上に列設された複数本の下部配線12aと、強電界ドリフト層6上に形成された複数の表面電極7との間に強電界ドリフト層6のドリフト部6aが挟まれているから、バス配線25’と下部配線12aとの組を適宜選択して選択した組間に電圧を印加することにより、選択されたバス配線25’において下部配線12aとの交点に相当する部位に近接した表面電極7下のドリフト部6aにのみ強電界が作用して電子が放出される。つまり、図11に示した構成の電子源10は、表面電極7と表面電極7下のドリフト部6aと下部配線12aのうちドリフト部6aおよび表面電極7に重なる部分(この部分が図10における下部電極12を構成する)とからなる電子源素子を表面電極7の数だけ備えていることになり、電圧を印加するバス配線25’と下部配線12aとの組を選択することによって所望の電子源素子から電子を放出させることが可能になる。ここに、図11に示した電子源10では、強電界ドリフト層6が電子通過層を構成しており、電子通過層におけるドリフト部6aを電子が下部配線12aから表面電極7へ向かって通過するが、電子通過層の全てをドリフト部6aにより構成した構造も提案されている。
なお、上述のように多数の電子源素子およびバス配線を備えた電子源は、上記特許文献2〜4に限らず、上記特許文献1にも開示されている。
特開平9−259795号公報
特開2000−188057号公報
特開2002−343230号公報
特開2003−197088号公報
ところで、上述の電子源10における電子源素子は、表面電極7を通して電子が放射されるものであるから、表面電極7とバス配線25’とで要求される特性が異なり、表面電極7とバス配線25’とが互いに異なる金属材料により形成されることが多い。
ここに、上述の電子源素子は、電子が表面電極7をトンネルして放出されるものであるから、膜厚を10nm以下に設定してあり、表面電極7の表面が酸化などの変質を起こすと電子放出効率が減少するので、表面電極7の材料としては、耐酸化性が要求され、化学的安定性の観点から、金や白金などの貴金属を採用することが望ましいと考えられている。一方、バス配線25’は、電子をトンネルさせる必要がなく低抵抗であることが要求されるから、バス配線25’の材料としては、電気伝導度の観点から、金、銀、銅、アルミニウム、金合金、銅合金、アルミニウム合金などの低抵抗材料を採用することが考えられ、材料コストの観点から、アルミニウムやアルミニウム合金を採用することが望ましいと考えられる。
しかしながら、表面電極7とバス配線25’とで異なる材料を採用した場合、バス配線25’および表面電極7を形成した後に、電子源素子の特性の均一性、安定性を向上させるための熱処理や、組立時の真空封止工程での熱処理によって、バス配線25’と表面電極7との間で断線不良が発生したりバス電極25’と表面電極7との間の抵抗値が上昇するという問題があった。
また、バス配線25’は、複数の表面電極7が電気的に接続されるとともに外部接続用のパッド28が電気的に接続されるものであって、絶縁層8上で複数の下部配線12aに交差する方向を長手方向として形成されるので、個々の電子源素子の電子放出量を多くする(つまり、表面電極7の表面積を大きくする)ためにバス配線25’の線幅を小さくすることが要求され、しかも、下部配線12aに起因した絶縁層8表面の段差を反映した段差部での断線を防止する必要があるので、バス配線25’の厚さ寸法を比較的大きく設定することが要求される
特にディスプレイ用の電子源においては、表示面積の大面積化、高輝度化のために長くて細いバス配線25’が要求され、表示の均一性向上、応答速度向上のために低抵抗のバス配線25’が要求される。したがって、製造技術としては、長く且つ細い低抵抗のバス配線を無欠陥ないし低欠陥密度で作製する技術が要求される。
しかしながら、低抵抗材料は、一般に融点が比較的低く、金属原子のマイグレーションが起こりやすいので、電子源素子の特性の均一性、安定性を向上させるための熱処理や、組立時の真空封止工程での熱処理によって、下部配線12aに起因した段差部で金属原子のマイグレーションにより確率的に断線が発生するという問題があった。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、熱処理の影響を受けてバス配線やバス配線と表面電極との間が断線するのを防止することができる電子源およびその製造方法を提供することにある。
請求項1の発明は、基板の一表面側に形成された下部電極と、基板の前記一表面側において下部電極を覆うように形成された電子通過層と、電子通過層の表面上に形成され下部電極に重なる表面電極と、電子通過層の表面側で表面電極の側方に位置し表面電極から連続一体に延長された接続配線の一部が積層され接続配線を介して表面電極が接続されるバス配線とを備え、バス配線と下部電極との間にバス配線を高電位側として電圧を印加することにより表面電極を通して電子が放射される電子源であって、バス配線は、当該バス配線用にパターニングされた低抵抗金属膜と、低抵抗金属膜を覆うように形成された高融点導体膜とからなり、接続配線の一部が高融点導体膜上に積層されてなることを特徴とする。
この発明によれば、バス配線の低抵抗金属膜と表面電極から連続一体に延長された接続配線との間に高融点導体膜が介在しているので、低抵抗金属膜と表面電極とが異なる材料により形成されている場合に低抵抗金属膜と接続配線との間で互いの構成原子が拡散するのを防止することができて、バス配線と表面電極との間で断線や抵抗値上昇が起こるのを防止することができ、また、熱処理による低抵抗金属膜の金属原子のマイグレーションが起こって低抵抗金属膜が局所的に断線しても低抵抗金属膜の断線箇所は高融点導体膜を介して電気的に接続されているので、バス配線が断線するのを防止することができる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記低抵抗金属膜は、金、銀、銅、アルミニウム、金合金、銀合金、銅合金、アルミニウム合金からなる群より選択される低抵抗金属により形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、前記バス配線における前記低抵抗金属膜の抵抗値を低くすることができるとともに、前記低抵抗金属膜の形成を一般的な半導体製造プロセスで行うことができる。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記高融点導体膜は、導電性窒化金属、導電性炭化金属、高融点金属からなる群より選択される高融点導体により形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、前記高融点導体膜の拡散バリア性を再現性良く確保することができ、前記バス配線と前記表面電極との間で断線や抵抗値の上昇が起こるのをより確実に防止することができる。
請求項4の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記高融点導体膜は、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、クロム、タンタル、チタン、タングステンからなる群より選択される高融点導体により形成されてなることを特徴とする。
この発明によれば、前記高融点導体膜の拡散バリア性を再現性良く確保することができ、前記バス配線と前記表面電極との間で断線や抵抗値の上昇が起こるのをより確実に防止することができる。
請求項5の発明は、請求項1記載の電子源の製造方法であって、前記バス配線の形成にあたっては、前記基板の前記一表面側にバス配線形成用の開口パターンを有するレジスト層を形成し、その後、前記基板の前記一表面側に低抵抗金属膜、高融点導体膜を順次成膜してから、レジスト層およびレジスト層上の低抵抗金属膜と高融点導体膜との積層膜を除去することによりバス配線を形成することを特徴とする。
この発明によれば、熱処理の影響を受けてバス配線やバス配線と表面電極との間が断線するのを防止することができる電子源を提供することができる。
請求項6の発明は、請求項1記載の電子源の製造方法であって、前記バス配線の形成にあたっては、前記基板の前記一表面側にバス配線用にパターニングされた低抵抗金属膜を形成し、その後、選択CVD法により低抵抗金属膜を覆う高融点導体膜を成膜することを特徴とする。
この発明によれば、熱処理の影響を受けてバス配線やバス配線と表面電極との間が断線するのを防止することができる電子源を提供することができる。
請求項1の発明では、バス電極を備えた電子源の製造歩留まりを高めることができるとともに、信頼性および動作安定性を向上できるという効果がある。
請求項5,6の発明では、熱処理の影響を受けてバス配線やバス配線と表面電極との間が断線するのを防止することができる電子源を提供することができるという効果がある。
(実施形態1)
まず、図1および図2を参照しながら本実施形態の電子源10について説明した後で、製造方法について図3を参照しながら説明するが、図11に示した従来構成と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
本実施形態の電子源10の基本構成は図11に示した構成と略同じであって、バス配線25が、当該バス配線25用にパターニングされた低抵抗金属膜23aと、低抵抗金属膜23aを覆う形で形成された高融点導体膜24aとからなり、接続配線16の一部が高融点導体膜24aに積層されてなる点などが相違する。なお、本実施形態では、絶縁性基板11が基板を構成している。
ところで、本実施形態の電子源10における強電界ドリフト層6のドリフト部6aは、後述の製造方法にて説明するように絶縁性基板11の上記一表面側に各下部配線12aを形成した後で絶縁性基板11の上記一表面側に成膜したノンドープの多結晶シリコン層に対してナノ結晶化プロセス、酸化プロセスを順次施すことにより形成されており、図2に示すように、少なくとも、下部配線12aの表面側に列設された柱状の多結晶シリコンのグレイン(半導体結晶)51と、グレイン51の表面に形成された薄いシリコン酸化膜52と、グレイン51間に介在する多数のナノメータオーダのシリコン微結晶(半導体微結晶)63と、シリコン微結晶63の表面に形成され当該シリコン微結晶63の結晶粒径よりも小さな膜厚の絶縁膜であるシリコン酸化膜64とから構成されると考えられる。ここに、各グレイン51は、下部配線12aの厚み方向に延びている(つまり、絶縁性基板11の厚み方向に延びている)。図2中の矢印は、電子源10を駆動する際に表面電極7を高電位側として表面電極7と下部配線12aとの間に電圧を印加した時に下部配線12aから注入された電子e−の流れを示しており、下部配線12aから注入された電子はシリコン酸化膜64にかかっている強電界により加速され、ドリフト部6aにおけるグレイン51間の領域を表面電極7に向かってドリフトし、表面電極7を通して放出される。
本実施形態では、表面電極7の材料として金を採用しているが、金に限らず、白金などの他の貴金属を採用してもよい。また、表面電極7の膜厚を10nmに設定してあるが、表面電極7の膜厚は10nm以下に設定することが望ましく、膜厚制御性、被覆性などの観点から、5nm〜10nmの範囲で設定することが好ましい。
また、バス配線25の低抵抗金属膜23aの材料としては、抵抗値を決める電気伝導度の観点から、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、金合金、銀合金、銅合金、アルミニウム合金などの低抵抗金属を採用することが望ましいが、電気伝導度、材料コスト、汎用性の観点からは、アルミニウムまたはアルミニウム合金(例えば、Al−Siなど)を採用することが好ましい。
また、高融点導体膜24aの材料としては、電子源素子の特性の均一性、安定性を向上させるための熱処理や、組立時の真空封止工程での熱処理によってマイグレーションが起こりにくく且つ抵抗が比較的低い材料を採用する必要があるが、高融点導体膜24aの材料としては、抵抗値、耐熱性、材料コストなどの観点から、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウムなどの導電性窒化金属や、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタルなどの導電性炭化金属や、クロム、タンタル、チタン、タングステンなどの高融点金属を採用することが好ましい。ただし、高融点導体膜24aの材料としては、これらの材料以外の高融点導体材料を採用してもよい。
しかして、本実施形態の電子源10では、バス配線25がバス配線25用にパターニングされた低抵抗金属膜23aと高融点導体膜24aとで構成されており、低抵抗金属膜23aと表面電極7から連続一体に延長された接続配線16との間に高融点導体膜24aが介在しているので、低抵抗金属膜23aと表面電極7とが異なる材料により形成されている場合に、電子源素子の特性の均一性、安定性を向上させるための熱処理や、組立時の真空封止工程での熱処理が行われた時に高融点導体膜24aが拡散バリア層として機能し、低抵抗金属膜23aと接続配線16との間で互いの構成原子が拡散するのを防止することができて、バス配線25と表面電極7との間で断線や抵抗値上昇が起こるのを防止することができる。また、電子源素子の特性の均一性、安定性を向上させるための熱処理や、組立時の真空封止工程での熱処理によって低抵抗金属膜23aの金属原子のマイグレーションが起こって低抵抗金属膜23aが局所的に断線したり、仮にその他の要因で低抵抗金属膜23aが局所的に断線したりしても、低抵抗金属膜23aの断線箇所は高融点導体膜24aを介して電気的に接続されているので、バス配線25が断線するのを防止することができる。その結果、製造歩留まりの向上による低コスト化を図れるとともに、動作信頼性を高めることができる。ここに、高融点導体膜24aの膜厚は、低抵抗金属膜23aの膜厚よりも小さく設定してある。なお、高融点導体膜24aの膜厚は、バス配線25の設計抵抗値および上限膜厚に応じて、低抵抗金属膜23aの抵抗値および膜厚と合わせて決めればよいが、低抵抗金属膜23aが局所的に断線した後で当該断線箇所を接続している高融点導体膜24aを流れる電流によるジュール熱に起因して高融点導体膜24aが断線するのをより確実に防止するために40nm以上に設定することが望ましい。
以下、本実施形態の電子源10の製造方法について図3を参照しながら説明する。
まず、絶縁性を有するガラス基板からなる絶縁性基板11の一表面上に下部配線12a用の導電性層(例えば、タングステン膜などの金属膜や、ITO膜や、n形多結晶シリコン層などの低抵抗半導体層)をスパッタ法や蒸着法やCVD法などによって成膜してから、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記導電性層をパターニングすることによって複数本の下部配線12aを形成し、その後、絶縁性基板11の上記一表面側にノンドープの多結晶シリコン層をCVD法によって形成した後、上記多結晶シリコン層のうちドリフト部6aの形成予定部位に対して、後述のナノ結晶化プロセス、酸化プロセスを順次施すことでドリフト部6aを形成するとともに強電界ドリフト層6を形成し、絶縁性基板11の上記一表面側に、表面電極7の形成予定部位が開口されたSiO2膜からなる絶縁層8をリフトオフ法により形成することによって、図3(a)に示す構造を得る。ここにおいて、絶縁層8をリフトオフ法により形成するにあたっては、強電界ドリフト層6の形成後に絶縁性基板11の上記一表面側にフォトレジストを塗布してから、表面電極7の形成予定部位に対応した部分以外が開口されたレジスト層を形成し、続いて、絶縁性基板11の上記一表面側にSiO2膜を例えばスパッタ法により成膜し、レジスト層およびレジスト層上のSiO2膜を除去することで強電界ドリフト層6上でパターニングされたSiO2膜からなる絶縁層8を形成する。なお、絶縁層8は、SiO2膜に限らず、例えば、Si3N4膜でもよい。また、絶縁層8となるSiO2膜やSi3N4膜の成膜方法は、スパッタ法に限らず、例えば、電子ビーム蒸着法などの他の成膜方法を採用してもよい。また、絶縁層8のパターン形成方法についてもリフトオフ法に限らず、例えば、成膜工程とリソグラフィ工程とエッチング工程とを組み合わせたパターン形成方法でもよい。、
図3(a)の後の工程については、上述のナノ結晶化プロセスおよび酸化プロセスそれぞれについて説明した後で説明する。
上述のナノ結晶化プロセスでは、例えば、55wt%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合した混合液よりなる電解液を用い、下部配線12aを陽極とし、電解液中において上記多結晶シリコン層に白金電極よりなる陰極を対向配置して、500Wのタングステンランプからなる光源により上記多結晶シリコン層の主表面に光照射を行いながら、電源から陽極と陰極との間に定電流(例えば、電流密度が12mA/cm2の電流)を所定時間(例えば、10秒)だけ流すことによって、多結晶シリコンのグレイン51およびシリコン微結晶63を含む第1の複合ナノ結晶層をドリフト部6aの形成予定領域に形成する。また、上述の酸化プロセスでは、エチレングリコールからなる有機溶媒中に0.04mol/lの硝酸カリウムからなる溶質を溶かした溶液よりなる電解液を用い、下部配線12aを陽極とし、電解液中において第1の複合ナノ結晶層に白金電極よりなる陰極を対向配置して、下部配線12aを陽極とし、電源から陽極と陰極との間に定電流(例えば、電流密度が0.1mA/cm2の電流)を流し陽極と陰極との間の電圧が20Vだけ上昇するまで第1の複合ナノ結晶層を電気化学的に酸化することによって、上述のグレイン51、シリコン微結晶63、各シリコン酸化膜52,64を含む第2の複合ナノ結晶層からなるドリフト部6aを形成するようになっている。ここにおいて、ノンドープの多結晶シリコン層3のうち隣り合うドリフト部6aの間を埋める部分が上述の分離部6bとなる。なお、本実施形態では、上述のナノ結晶化プロセスを行うことによって形成される第1の複合ナノ結晶層においてグレイン51、シリコン微結晶63以外の領域はアモルファスシリコンからなるアモルファス領域となっており、ドリフト部6aにおいてグレイン51、シリコン微結晶63、各シリコン酸化膜52,64以外の領域がアモルファスシリコン若しくは一部が酸化したアモルファスシリコンからなるアモルファス領域65となっているが、ナノ結晶化プロセスの条件によってはアモルファス領域65が孔となり、このような場合の第2の複合ナノ結晶層は従来例と同様の酸化した多孔質多結晶シリコン層と同じ構成とみなすことができる。なお、本実施形態の電子源10では、絶縁性基板11が基板を構成し、強電界ドリフト層6が電子通過層を構成し、下部配線12aにおいてドリフト部6aおよび表面電極7に重なる部分が下部電極を構成している。
次に、図3(a)の後の工程について説明する。
絶縁性基板11の上記一表面側にバス電極25形成用の開口パターンを有するレジスト層9を形成し、その後、絶縁性基板11の上記一表面側に例えばアルミニウム膜からなる低抵抗金属膜23a,23bを電子ビーム蒸着法により成膜し、さらに、絶縁性基板11の上記一表面側に例えばタングステン膜からなる高融点導体膜24a,24bを電子ビーム蒸着法により成膜することによって、図3(b)に示す構造を得る。なお、レジスト層9の開孔部は逆テーパ状に開孔されている。また、低抵抗金属膜23a,23bの成膜時および高融点導体膜24a,24bの成膜時には、低抵抗金属膜23aの表面および側面が高融点導体膜24aにより覆われるように斜め蒸着を行っている。また、低抵抗金属膜23a,23bの成膜方法および高融点導体膜24a,24bの成膜方法は、蒸着源の加熱方法として電子線を蒸着源に照射し加熱する方法を採用した電子ビーム蒸着法に限らず、加熱方法として抵抗加熱法を採用した蒸着法を採用してもよいし、各種のスパッタ法などを採用してもよい。ここに、成膜レートおよび再現性の観点からは電子ビーム蒸着法が好ましく、低抵抗金属膜23aの材料として、アルミニウム合金、金合金、銀合金、銅合金などの合金を採用する場合の低抵抗金属膜23aの成膜方法としては、低抵抗金属膜23aの組成の安定性および再現性の観点からスパッタ法が適している。
その後、レジスト層9およびレジスト層9上の堆積物(低抵抗金属膜23bと低抵抗金属膜23b上の高融点導体膜24bとの積層膜)を除去することにより残りの低抵抗金属膜23a(つまり、バス配線25用にパターニングされた低抵抗金属膜23a)と高融点導体膜24aとからなるバス電極25を形成することによって、図3(c)に示す構造を得る。要するに、バス電極25の形成にあたっては、レジスト層9を有機溶剤などを用いて溶解除去することでレジスト層9上の堆積物を除去するリフトオフ工程を採用しているが、レジスト層9の代わりにレジスト層9と同様にパターニングされた犠牲層を形成しておき、犠牲層の除去によるリフトオフ工程を採用するようにしてもよい。
続いて、絶縁性基板11の上記一表面側に所定膜厚(例えば、5nm〜10nm)の金属薄膜(ここでは、金薄膜)を例えば電子ビーム蒸着法によって成膜し、上記金属薄膜上に表面電極7および接続配線16の形成用にパターニングされたレジスト層を形成し、当該レジスト層をマスクとしてArガスを用いたイオンミリング工程により表面電極7および接続配線16を形成した後、レジスト層を除去することによって、図3(d)に示す構造の電子源10を得る。なお、本実施形態では、上記金属薄膜の成膜方法として、上記金属薄膜の膜質、膜厚制御性、成膜コストの観点から電子ビーム蒸着法を採用している。また、上記金属薄膜のパターニングは、イオンミリング工程に限らず、例えば、反応性イオンエッチング装置などを用いたエッチング工程を採用してもよい。
以上説明した製造方法によれば、上述のように熱処理の影響を受けてバス配線25やバス配線25と表面電極7との間が断線するのを防止することができる電子源10を製造することができ、しかも、バス電極25を備えた電子源10の製造歩留まりを高めることができて製造コストを低減することができる。また、上述の製造方法で製造した電子源10では、従来に比べて動作信頼性および動作安定性を向上できる。また、上述の製造方法では、バス配線25のパターン形成にリフトオフ工程を採用しているので、バス配線25のパターン形成を、レジスト層をマスクとしたドライエッチングやイオンミリングなどにより行う場合に比べて、強電界ドリフト層6において後の工程で表面電極7が形成される表面(つまり、ドリフト部6aのうち絶縁層8に覆われていない露出表面)へのダメージを比較的小さくすることができ、電子源素子の電子放出特性(電子放出効率やエミッション電流など)や動作信頼性を向上させることができる。また、バス配線25のパターン形成を、レジスト層をマスクとしたエッチングにより行う場合、エッチング選択比の大きなエッチング条件(つまり、ドリフト部6aがほとんどエッチングされないようにバス配線25のエッチングレートに比べてドリフト部6aのエッチングレートが十分に小さくなるような条件)を採用することにより、ドリフト部6aへのダメージを比較的小さくすることが可能となる。また、バス配線25における低抵抗金属膜23aの材料として、金、銀、銅のいずれかを採用する場合には、金属微粒子と溶媒との混合物を用いたインクジェット法によって、フォトリソグラフィ技術を利用することなしにパターニングされた低抵抗金属膜23aを形成することが可能となり、材料節減、工程削減の効果があるとともに、ドリフト部6aへのダメージを小さくすることができる。また、高融点導体膜24aは、インクジェット法による成膜が困難なので、パターニングされた高融点導体膜24aを形成した後、パターニングされた低抵抗金属膜23aをインクジェット法により形成するようにしてもよいし、絶縁性基板11の上記一表面側の全面に高融点導体膜を成膜した後、パターニングされた低抵抗金属膜23aをインクジェット法により形成し、低抵抗金属膜23aをマスクとして高融点導体膜の不要部分をエッチングすることでパターニングされた高融点導体膜24aを形成するようにしてもよい。
なお、本実施形態で説明した電子源10は、電子源素子における電子通過層が上述のドリフト部6aにより構成されたものであるが、電子源素子の構造は特に限定するものではなく、上記各電子源素子に対応する部位に例えば電子通過層が多孔質半導体層により形成された電子源素子やMIM型の電子源素子やMIS型の電子源素子を設けた構成としてもよい。また、本実施形態では、基板として絶縁性を有するガラス基板からなる絶縁性基板11を採用しているが、この種のガラス基板としては、例えば、石英ガラス基板、無アルカリガラス基板、低アルカリガラス基板、ソーダライムガラス基板などを採用可能である。ここに、電子源10の大面積化および低コスト化の点からは石英ガス基板を採用するよりも、無アルカリガラス基板、低アルカリガラス基板、ソーダライムガラス基板などのガラス基板を採用する方が好ましい。また、絶縁性基板11はガラス基板に限らず、例えば、アルミナ基板などのセラミック基板を採用してもよい。また、基板としては、シリコン基板のような半導体基板を用いてもよい。
(実施形態2)
本実施形態の電子源10の構成は実施形態1と同じなので、製造方法についてのみ図4を参照しながら説明するが、実施形態1と同様の製造工程については説明を適宜省略する。
まず、実施形態1と同様に、絶縁性基板11の上記一表面側に複数本の下部配線12a、ノンドープの多結晶シリコン層を順次形成した後、多結晶シリコン層にナノ結晶化プロセスおよび酸化プロセスを施すことによりドリフト部6aを有する強電界ドリフト層6を形成し、その後、絶縁性基板11の上記一表面側に、表面電極7の形成予定部位が開口された絶縁層8を形成することによって、図4(a)に示す構造を得る。
次に、絶縁性基板11の上記一表面側にバス電極25形成用の開口パターンを有するレジスト層9を形成し、その後、絶縁性基板11の上記一表面側に例えばアルミニウム膜からなる低抵抗金属膜23a,23bを電子ビーム蒸着法により成膜することによって、図4(b)に示す構造を得る。
その後、有機溶剤を用いたリフトオフ工程によりレジスト層9およびレジスト層9上の低抵抗金属膜23bを除去することでバス配線25用にパターニングされた低抵抗金属膜(バス配線25の基体)23aを形成し、続いて、選択CVD法により低抵抗金属膜23aを覆うタングステン膜からなる高融点導体膜24aを形成することによって、図4(c)に示す構造となる。なお、高融点導体膜24aの形成方法は選択CVD法に限らず、絶縁性基板11の上記一表面側の全面にCVD法により高融点導体膜を成膜してから、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して高融点導体膜の不要部分を除去することにより形成してもよい。
続いて、絶縁性基板11の上記一表面側に所定膜厚(例えば、5nm〜10nm)の金属薄膜(ここでは、金薄膜)を例えば電子ビーム蒸着法によって成膜し、上記金属薄膜上に表面電極7および接続配線16の形成用にパターニングされたレジスト層を形成し、当該レジスト層をマスクとしてArガスを用いたイオンミリング工程により表面電極7および接続配線16を形成した後、レジスト層を除去することによって、図4(d)に示す構造の電子源10を得る。
以上説明した製造方法によれば、実施形態1にて説明した製造方法と同様、上述のように熱処理の影響を受けてバス配線25やバス配線25と表面電極7との間が断線するのを防止することができる電子源10を製造することができ、しかも、バス電極25を備えた電子源10の製造歩留まりを高めることができて製造コストを低減することができる。
ところで、上述の製造方法では、リフトオフ工程によりパターニングされた低抵抗金属膜23aを形成しているが、パターニングされた低抵抗金属膜23aの形成方法はリフトオフ法に限らず、例えば、絶縁性基板11の上記一表面側の全面に低抵抗金属膜をスパッタ法、蒸着法、CVD法、めっき法などにより成膜してから、図5に示すように、当該低抵抗金属膜上にバス配線25用にパターニングされたレジスト層19を形成し、レジスト層19をマスクとして低抵抗金属膜の不要部分を除去することで形成してもよい。
なお、実施形態1,2にて説明したバス配線25は、低抵抗金属膜23aの上面および幅方向の両側面が高融点導体膜24aにより覆われているが、バス配線25において接続配線16と接しない側の一側面(図1における低抵抗金属膜23aの左側面)が高融点導体膜24aにより覆われていなくてもバス配線25の断線防止には十分な効果がある。
(参考例1)
本参考例の電子源10の基本構成は実施形態1と略同じであって、図6に示すように、表面電極7と同一材料からなり表面電極7から連続一体に延長された接続配線16が絶縁層8上に形成され、バス配線25が、バス配線用にパターニングされ一部が接続配線16上に積層された高融点導体膜24aと高融点導体膜24a上に積層された低抵抗金属膜23aとの積層膜により構成されている点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
しかして、本参考例の電子源10では、バス配線25がバス配線25用にパターニングされた高融点導体膜24aと高融点導体膜24a上に積層された低抵抗金属膜23aとで構成されており、低抵抗金属膜23aと表面電極7から連続一体に延長された接続配線16との間に高融点導体膜24aが介在しているので、低抵抗金属膜23aと表面電極7とが異なる材料により形成されている場合に、電子源素子の特性の均一性、安定性を向上させるための熱処理や、組立時の真空封止工程での熱処理が行われた時に高融点導体膜24aが拡散バリア層として機能し、低抵抗金属膜23aと接続配線16との間で互いの構成原子が拡散するのを防止することができて、バス配線25と表面電極7との間で断線や抵抗値上昇が起こるのを防止することができる。また、電子源素子の特性の均一性、安定性を向上させるための熱処理や、組立時の真空封止工程での熱処理によって低抵抗金属膜23aの金属原子のマイグレーションが起こって低抵抗金属膜23aが局所的に断線したり、仮にその他の要因で低抵抗金属膜23aが局所的に断線したりしても、低抵抗金属膜23aの断線箇所は高融点導体膜24aを介して電気的に接続されているので、バス配線25が断線するのを防止することができる。その結果、製造歩留まりの向上による低コスト化を図れるとともに、動作信頼性を高めることができる。
以下、本参考例の電子源10の製造方法について図7を参照しながら説明するが、実施形態1と同様の製造工程については説明を適宜省略する。
まず、実施形態1と同様に、絶縁性基板11の上記一表面側に複数本の下部配線12a、ノンドープの多結晶シリコン層を順次形成した後、多結晶シリコン層にナノ結晶化プロセスおよび酸化プロセスを施すことによりドリフト部6aを有する強電界ドリフト層6を形成し、その後、絶縁性基板11の上記一表面側に、表面電極7の形成予定部位が開口された絶縁層8を形成することによって、図7(a)に示す構造を得る。
次に、絶縁性基板11の上記一表面側に所定膜厚(例えば、5nm〜10nm)の金属薄膜(ここでは、金薄膜)を例えば電子ビーム蒸着法によって成膜し、上記金属薄膜上に表面電極7および接続配線16の形成用にパターニングされたレジスト層を形成し、当該レジスト層をマスクとしてArガスを用いたイオンミリング工程により表面電極7および接続配線16を形成した後、レジスト層を除去することによって、図7(b)に示す構造を得る。
その後、絶縁性基板11の上記一表面側にバス電極25形成用の開口パターンを有するレジスト層9を形成し、その後、絶縁性基板11の上記一表面側に例えばタングステン膜からなる高融点導体膜24a,24bを電子ビーム蒸着法により成膜し、さらに、絶縁性基板11の上記一表面側にアルミニウム膜からなる低抵抗金属膜23a,23bを電子ビーム蒸着法により成膜することによって、図7(c)に示す構造を得る。
その後、レジスト層9およびレジスト層9上の堆積物(高融点導体膜24bと高融点導体膜24b上の低抵抗金属膜23bとの積層膜)を除去することにより残りの高融点導体膜24a(つまり、バス配線25用にパターニングされた高融点導体膜24a)と低抵抗金属膜23aとからなるバス電極25を形成することによって、図7(d)に示す構造の電子源10を得る。
以上説明した製造方法によれば、実施形態1にて説明した製造方法と同様、上述のように熱処理の影響を受けてバス配線25やバス配線25と表面電極7との間が断線するのを防止することができる電子源10を製造することができ、しかも、バス電極25を備えた電子源10の製造歩留まりを高めることができて製造コストを低減することができる。
(参考例2)
本参考例の電子源10の構成は参考例1と同じなので、製造方法についてのみ図8を参照しながら説明するが、参考例1と同様の製造工程については説明を適宜省略する。
まず、参考例1と同様に、絶縁性基板11の上記一表面側に複数本の下部配線12a、ノンドープの多結晶シリコン層を順次形成した後、多結晶シリコン層にナノ結晶化プロセスおよび酸化プロセスを施すことによりドリフト部6aを有する強電界ドリフト層6を形成し、その後、絶縁性基板11の上記一表面側に、表面電極7の形成予定部位が開口された絶縁層8を形成することによって、図8(a)に示す構造を得る。
次に、絶縁性基板11の上記一表面側にバス電極25形成用の開口パターンを有するレジスト層9を形成し、その後、絶縁性基板11の上記一表面側に例えばタングステン膜からなる高融点導体膜24a,24bを電子ビーム蒸着法により成膜し、さらに、絶縁性基板11の上記一表面側にアルミニウム膜からなる低抵抗金属膜23a,23bを電子ビーム蒸着法により成膜することによって、図8(b)に示す構造を得る。
その後、レジスト層9およびレジスト層9上の堆積物(高融点導体膜24bと高融点導体膜24b上の低抵抗金属膜23bとの積層膜)を除去することにより残りの高融点導体膜24a(つまり、バス配線25用にパターニングされた高融点導体膜24a)と低抵抗金属膜23aとからなるバス電極25を形成することによって、図8(c)に示す構造を得る。
次に、絶縁性基板11の上記一表面側に所定膜厚(例えば、5nm〜10nm)の金属薄膜(ここでは、金薄膜)を例えば電子ビーム蒸着法によって成膜し、上記金属薄膜上に表面電極7および接続配線16の形成用にパターニングされたレジスト層を形成し、当該レジスト層をマスクとしてArガスを用いたイオンミリング工程により表面電極7および接続配線16を形成した後、レジスト層を除去することによって、図8(d)に示す構造の電子源10を得る。
以上説明した製造方法によれば、実施形態1にて説明した製造方法と同様、上述のように熱処理の影響を受けてバス配線25やバス配線25と表面電極7との間が断線するのを防止することができる電子源10を製造することができ、しかも、バス電極25を備えた電子源10の製造歩留まりを高めることができて製造コストを低減することができる。