JP4501385B2 - 固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材及びセル部材、固体高分子型燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材及びセル部材、固体高分子型燃料電池 Download PDF

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本発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材及びセル部材、固体高分子型燃料電池に関するものである。
近年、固体高分子電解質の利用により、携帯可能な小型の固体高分子型燃料電池の開発が進められている。通常、固体高分子型燃料電池では、一対の電極(単セル)による起電力が小さいので、複数の単セルを直列に接続する構造となっている。ところが、複数の単セルを順次接続するために、単セルを積み重ねた構成(いわゆるスタック型)を採用すると、積み重ねた各単セル間にセパレータ板を配置しなければならず、また、積み重ねた狭い流路に燃料であるメタノール水溶液や空気を送る必要が生じ、ポンプなどの補機が必要となる。そのため、体積、重量、コスト等の点で不利となる。そこで、セパレータ板を用いずに単セルを平面に並べて接続することにより省スペース化を図る、いわゆる平面型の開発が進められている。
平面型燃料電池としては、例えば、燃料極と空気極との間に電解質層を挟んだ単セルを構成し、各単セルの燃料極および空気極の電解質層とは反対側の面に、貫通孔を有する接続板を配置して、隣り合う単セルの燃料極と空気極とを接続板で順次接続する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−56855号公報
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、まずガスシール部、燃料極及び空気極を一体化した単セルを複数形成しておき、その単セルを平面上に間隔をおいて並べ、隣り合う単セルの一方の下面と他方の上面とに接続するZ字状の接続板を順次配置し、さらに接続板間の隙間にシール剤を充填するという多くの工程を行わなければならず、組み立てる部材も多いため、製造が容易ではない。
また、燃料電池のより一層の小型化が図られた場合、何層もの構造を有する単セル間の微小な隙間に確実にシール剤を充填するのは困難であり、シール剤の充填不足によるセル間の絶縁不良や液体燃料の漏れ等の問題が生じるおそれもある。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたもので、構成が単純で小型化が可能であり、さらに製造が容易かつ効率のよい電力供給が可能な燃料電池を実現することを目的とする。
本発明による固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材は、複数のシート状の導電性多孔質体が面方向に互いに間隔をあけるようにして配列され、これら複数の導電性多孔質体同士の間に形成された隙間に、導電性を有さない樹脂部が連ねられており、該樹脂部によって複数の導電性多孔質体が互いに絶縁された状態で一体化され、前記面方向における最外周部の側面の全周に亘って前記導電性多孔質体が露出させられていることを特徴とするものである。
また、本発明による固体高分子型燃料電池のセル部材は、電解質層と、この電解質層を挟む一対の請求項1に記載のガス拡散層用部材とを備え、前記ガス拡散層用部材は、その一面に触媒層が形成され、該触媒層が前記電解質層側を向くようにして前記電解質層を挟みこんでおり、前記電解質層を挟んで一方側に位置する前記ガス拡散層用部材の各導電性多孔質体が燃料極とされるとともに、他方側に位置する前記ガス拡散層用部材の各導電性多孔質体が空気極とされていることを特徴とするものである。
また、本発明による固体高分子型燃料電池は、本発明のセル部材と、前記燃料極とされる複数の前記導電性多孔質体に対して燃料を供給するための燃料供給部とを備え、前記燃料極と前記空気極とが直列接続されていることを特徴とするものである。
本発明によれば、ガス拡散層及び集電体を兼ねる複数の導電性多孔質体を樹脂部によって一体化して補強しているので、簡素な構成であって製造が容易であるとともに、取り扱い性の向上を図ることができる。そして、このガス拡散層用部材を用いて、各導電性多孔質体の一方の面に触媒層を形成しておき、触媒層を設けた面を対向させた2枚のガス拡散層用部材間に電解質膜を配置してホットプレス等でこれらを接合するだけで、相互間を絶縁して複数の単セルを平面的に並べたセル部材を容易に実現することができる。
なお、固体高分子型燃料電池に用いられる燃料としては水素ガスとメタノール水溶液の2種類があり、メタノール水溶液を用いる場合には導電性多孔質体を流れる燃料は液体であるが、この部分は慣用的にガス拡散層と呼ばれている。ここでは、液体燃料を用いる場合も含めて、慣用に従いガス拡散層と呼んでいるのであって、気体燃料用に限定するものではない。
導電性多孔質体としては、カーボンペーパー、カーボンクロスといったカーボン製多孔質体を用いてもよいが、ガス拡散性と導電性がともに良好な、3次元網目構造を有する金属製のもの、例えば金属粉末を焼結したシート、金属不織布、積層メッシュ等を用いることが好ましい。なかでも、気孔率や厚さを適宜調節でき、使用できる原料金属も多様である金属粉末を焼結したシートは、このガス拡散層用部材の導電性多孔質体として、より好ましい。さらにまた、金属粉末をバインダ、溶媒を加えて混練したものに発泡剤を混ぜて
率までも製造可能であることから、より好ましい。
以下、本発明の実施形態を添付した図1〜図3を参照しながら説明する。
図1に、本発明の実施形態による固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材10を示す。このガス拡散層用部材10は、シート状の導電性多孔質体11が面方向に複数配列され、これら複数の導電性多孔質体11同士が樹脂部12によって一体化されたものである。
複数の導電性多孔質体11は、互いに間隔をあけるようにして一列に配列されている。これに対し、上記の樹脂部12は、互いに隣接する導電性多孔質体11同士の間に形成される隙間を埋めるようにして導電性多孔質体11に連ねられており、ガス拡散層用部材10の最外周部においては導電性多孔質体11の周囲には連ねられていない。
そのため、本実施形態のガス拡散層用部材10では、その最外周部の側面の全周に亘って導電性多孔質体11の側面が露出させられており、図1に示したガス拡散層用部材10では、このガス拡散層用部材10の最外周の各辺を構成する各側面に対して導電性多孔質体11の側面が露出させられている。
導電性多孔質体11は、固体高分子型燃料電池において、3次元網目構造による通気性および導電性を備えることによりガス拡散層と集電板とを兼ねるシート状部材であって、具体的には、例えば金属粉末を焼結したシート、発泡金属焼結シート、金属不織布、積層メッシュなどを所要形状に形成したものである。
ここで、導電性多孔質体11の一例として、金属粉末を焼結して製造される多孔質の発泡金属焼結シート11について説明する。この発泡金属焼結シート11は、例えば、金属粉末を含むスラリーSを薄く成形して乾燥させたグリーンシートGを焼成することにより製造される。
スラリーSは、導電性を有する金属粉末、発泡剤(ヘキサン)、有機バインダ(メチルセルロース)、溶媒(水)等を混合したものである。このスラリーSをドクターブレード法により薄く成形するグリーンシート製造装置30を図3に示す。
グリーンシート製造装置30において、まず、スラリーSが貯蔵されたホッパー31から、ローラ32によって搬送されるキャリアシート33上にスラリーSが供給される。キャリアシート33上のスラリーSは、移動するキャリアシート33とドクターブレード34との間で延ばされ、所要の厚さに成形される。
成形されたスラリーSは、さらにキャリアシート33によって搬送され、加熱処理を行う発泡槽35および加熱炉36を順次通過する。発泡槽35では高湿度雰囲気下にて加熱処理を行うので、スラリーSにひび割れを生じさせずに発泡剤を発泡させることができる。そして、発泡により空洞が形成されたスラリーSが加熱炉36にて乾燥されると、粒子間に空洞を形成している金属粉末が有機バインダによって接合された状態のグリーンシートGが形成される。
このグリーンシートGを、キャリアシート33から取り外した後、図示しない真空炉にて脱脂・焼成することにより、有機バインダが取り除かれ、金属粉末同士が焼結した多孔質体が得られる。この多孔質体を適当な大きさに切断して、発泡金属焼結シート(導電性多孔質体)11とすることができる。
なお、以上のように形成された発泡金属焼結シート11には、端子用タブが接続されていてもよい。例えば、端子用タブは、通気性がなく導電性のよい金属薄板や導電性樹脂からなり、導電性多孔質体11から突出するように設けられる。端子用タブは金属薄板からなり、導電性多孔質体11から面方向に突出するように、導電性多孔質体11に対して一部分を重ねた状態で、スポット溶接等により溶着される。また、端子用タブは、導電性多孔質体11中で集電した電子を流出させる、あるいは流入した電子を導電性多孔質体11中に流出させるため、導電性多孔質体11および端子用タブ12は導電性に優れた材質で形成される。さらに、腐食が問題となる場合には、ステンレス鋼などの耐食材料を用いて端子用タブを構成することが好ましい。
次に、本発明の実施形態によるガス拡散層用部材10の製造方法の一例について説明する。この方法は、発泡金属焼結シート11をインサート部品としてインサート成形するものであり、ここでは、1つのガス拡散層用部材10について、複数の発泡金属焼結シート11をインサートするものとする。
まず、必要に応じて各発泡金属焼結シート11に端子用タブを溶接して一体としておき、これら複数の発泡金属焼結シート11を、互いに面方向に間隔を空けて、射出成形用金型の一対の型板間に形成されたキャビティ内に配置しておく。
キャビティ内では、各型板によって各発泡金属焼結シート11を挟持させ、射出される樹脂の圧力によってキャビティ内で発泡金属焼結シート11が移動しないように固定する。したがって、溶融樹脂を発泡金属焼結シート11とほぼ同じ厚さで充填させることになるので、発泡金属焼結シート11の両面の大部分をガス拡散層用部材10の表面に露出させることができる。
なお、型閉時のキャビティの厚さを発泡金属焼結シート11よりも若干小さくして、型閉時に型板間で発泡金属焼結シート11が3〜90%圧縮させるようにすると、射出樹脂圧に対して発泡金属焼結シート11をキャビティに固定できるとともに、発泡金属焼結シート11の平坦度を向上させることができる。
そして、型閉したキャビティ内に、ランナからゲートを通じて射出した溶融樹脂を充填することにより、各発泡金属焼結シート11に連なるように発泡金属焼結シート11と等しい厚さの樹脂部12が一体に形成される。
このとき、発泡金属焼結シート11の両面には型板が接しているので、この面全体を樹脂が被覆することはなく、樹脂部12から発泡金属焼結シート11の面は露出している。
また、発泡金属焼結シート11の側部に開口する気孔中、5μm〜1000μm程度の深さまで溶融樹脂が入り込んで硬化することにより、発泡金属焼結シート11と樹脂部12とは強固に接合され、発泡金属焼結シート11の側部の一部が樹脂部12によって覆われる。
なお、発泡金属焼結シート11の気孔径や気孔率が小さすぎると溶融樹脂が気孔中に入り込めないので、ガスシール効果およびアンカー効果が不十分となるおそれがある。一方、気孔径や気孔率が大きすぎると、強度が不足して樹脂成形圧および樹脂硬化時の圧縮に耐えられず、変形のおそれがある。したがって、発泡金属焼結シート11は、気孔径10μm〜2mm程度、気孔率40〜98%程度であるとより好ましい。
また、樹脂部12の材質は、熱可塑性樹脂、エラストマー(ゴムを含む)など、導電性および通気性を有していなければよいので、耐熱温度や硬度等を考慮し、適宜選択すればよい。また、射出成形可能であれば、低コスト化できることからより好ましい。例えば軟質な樹脂を用いて樹脂部12を構成するようにしてもよい。
以上のように製造されたガス拡散層用部材10は、図2から理解できるように、各導電性多孔質体11の一面に触媒層13を形成して空気極あるいは燃料極とし、電解質層15を挟んで燃料極と空気極とを順次接続することにより、固体高分子型燃料電池のセル部材20を構成することができる。
さらに、このセル部材20を用いれば、図2に示すように、電解質層15を挟んで一方側に位置して燃料極とされる複数の導電性多孔質体11に対して燃料を供給するための燃料供給部25を、例えば上記燃料極側に積層することによって、固体高分子型燃料電池30を構成することができる。
すなわち、図2に示すように、各導電性多孔質体11の片面に、スクリーン印刷等により白金系触媒を塗布し、ここに触媒層13を形成する。
次いで、触媒層13側を対向させて配置した2枚のガス拡散層用部材10間に、固体高分子膜から形成された電解質層15を配置し、各部材をたとえば120℃の高温で厚さ方向に圧接させるホットプレスを行うことにより、各ガス拡散層用部材10の樹脂部12と電解質層15とを接合させるとともに、軟質化した電解質層15を触媒層13に密着させる。
このとき、触媒層13は多孔質体の表面に触媒を塗布して形成されているので、その表面に開放気孔を有している。そして、この気孔内に電解質層15が押し込まれることにより、触媒層13と電解質層15とが大きな面積で接触するので、触媒層13と電解質層15との間の電気抵抗が抑えられる。
そして、電解質層15を挟んで対向する一方のガス拡散層用部材10の各導電性多孔質体11を燃料極とし、他方のガス拡散層用部材10の各導電性多孔質体11を空気極として、これら燃料極と空気極とを、それらの面方向で隣り合っているもの同士、例えばガス拡散層用部材10の側部端面に形成される配線16によって直列接続する。この配線16の形成は、例えば導電性塗料のスクリーン印刷により可能である。
さらに、燃料極としての導電性多孔質体11を有するガス拡散層用部材10の面に、燃料供給部25を接触させて積層配置する。燃料供給部25は、毛管作用により燃料を供給保持する例えばフェルトなどからなる多孔質体部26と、シールのためにこの多孔質部26の外周に設けられた樹脂部27とからなる構造となっている。
ここで、燃料供給部25の樹脂部27は、セル部材20の周囲までをも取り囲むように延出させられており、この樹脂部27により、ガス拡散層用部材10において導電性多孔質体11が露出している最外周部の側面をシールするようになっている。
以上説明した本実施形態によれば、ガス拡散層及び集電体を兼ねる複数の導電性多孔質体11を樹脂部12によって一体化して補強しているので、簡素な構成であって製造が容易であるとともに、取り扱い性の向上を図ることができる。
また、本実施形態によるガス拡散層用部材10では、各導電性多孔質体11の一方の面に触媒層13を形成しておき、触媒層13を設けた面を対向させた2枚のガス拡散用部材10間に電解質膜15を配置してこれらを接合するだけで、相互間を絶縁して複数の単セルを平面的に並べたセル部材を容易に実現することができる。
なお、本実施形態においては、複数の導電性多孔質体11を一列に配列させることによってガス拡散層用部材10を構成しているが、例えば、図4に示すように、複数の導電性多孔質体11を複数列に配列させることによってガス拡散層用部材10を構成してもよい。この場合においても、樹脂部12は、互いに隣接する導電性多孔質体11同士の間に形勢される隙間を埋めるようにして導電性多孔質体11に連ねられる。
(a)は本実施形態による固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材を示す平面説明図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。 本実施形態による固体高分子型燃料電池を示す断面説明図である。 導電性多孔質体を製造するための装置を示す断面説明図である。 (a)は本実施形態の変形例による固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材を示す平面説明図、(b)は(a)におけるB−B線断面図である。
符号の説明
10 ガス拡散層用部材
11 導電性多孔質体
12 樹脂部
15 電解質層
20 セル部材
30 固体高分子型燃料電池

Claims (3)

  1. 複数のシート状の導電性多孔質体が面方向に互いに間隔をあけるようにして配列され、これら複数の導電性多孔質体同士の間に形成された隙間に、導電性を有さない樹脂部が連ねられており、該樹脂部によって複数の導電性多孔質体が互いに絶縁された状態で一体化され、
    前記面方向における最外周部の側面の全周に亘って前記導電性多孔質体が露出させられていることを特徴とする固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材。
  2. 電解質層と、この電解質層を挟む一対の請求項1に記載のガス拡散層用部材とを備え、
    前記ガス拡散層用部材は、その一面に触媒層が形成され、該触媒層が前記電解質層側を向くようにして配置されており、
    前記電解質層を挟んで一方側に位置する前記ガス拡散層用部材の各導電性多孔質体が燃料極とされるとともに、他方側に位置する前記ガス拡散層用部材の各導電性多孔質体が空気極とされていることを特徴とする固体高分子型燃料電池のセル部材。
  3. 請求項2に記載のセル部材と、前記燃料極とされる複数の前記導電性多孔質体に対して燃料を供給するための燃料供給部とを備え、前記燃料極と前記空気極とが直列接続されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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