JP5830403B2 - 燃料電池用電解質膜・電極構造体 - Google Patents

燃料電池用電解質膜・電極構造体 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子電解質膜の両面に、アノード電極とカソード電極とが設けられるとともに、アノード触媒層の表面寸法とカソード触媒層の表面寸法とが異なる寸法に設定される燃料電池用電解質膜・電極構造体に関する。
一般的に、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ触媒層(電極触媒層)及びガス拡散層(多孔質カーボン)を有するアノード電極とカソード電極とを配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を、セパレータ(バイポーラ板)によって挟持している。燃料電池は、所定の数だけ積層して燃料電池スタックを構成するとともに、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
電解質膜・電極構造体では、一方の電極が固体高分子電解質膜よりも小さな表面積に設定されるとともに、他方の電極が前記固体高分子電解質膜と同一の表面積に設定される、所謂、段差型MEAを構成する場合がある。
例えば、特許文献1に開示されている固体高分子形燃料電池では、図11に示すように、固体高分子電解質膜1の両面に、アノード電極2とカソード電極3とが配置されている。アノード電極2及びカソード電極3は、それぞれの外周部にガスシール部4a、4bを配して、セパレータ5、6間に挟持されている。
アノード電極2は、固体高分子電解質膜1の一方の面に配置されたアノード電極触媒層2aと、前記アノード電極触媒層2aの外側に配置された電極基材(拡散層)2bとを有している。カソード電極3は、固体高分子電解質膜1の他方の面に配置されたカソード電極触媒層3aと、前記カソード電極触媒層3aの外側に配置された電極基材(拡散層)3bとを有している。
アノード電極触媒層2a及び電極基材2bは、同一の外形寸法を有し、カソード電極触媒層3a及び電極基材3bは、同一の外形寸法を有している。さらに、アノード電極2は、カソード電極3よりも大きな外形寸法に設定されている。
セパレータ5には、アノード電極2に燃料ガスを供給するための燃料ガス流路5aが形成されるとともに、セパレータ6には、カソード電極3に酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス流路6aが形成されている。
特開2009−99265号公報
上記の特許文献1では、カソード電極触媒層3aの外形寸法が、アノード電極触媒層2aの外形寸法よりも小さく設定されており、電解質膜・電極構造体には、固体高分子電解質膜1の一方の面にのみ触媒層が設けられている、所謂、半電極部位7が設けられている。このため、酸化剤ガス流路6aに供給された酸化剤ガスの一部は、多孔質体である電極基材3bを透過して半電極部位7に侵入するおそれがある。
従って、半電極部位7では、水素と酸素とが反応して過酸化水素(H)が発生し易い(H+O→H)。この過酸化水素は、電極中のカーボン担体や白金(Pt)上で分解し、例えば、ヒドロキシラジカル(・OH)が発生する。これにより、固体高分子電解質膜1及び電極を劣化させるという問題がある。
しかも、アノード電極2側では、半電極部位7に積層方向に対向するセパレータ5には、燃料ガス流路5aが設けられておらず、閉塞されている。このため、半電極部位7に進入した酸化剤ガスは、この半電極部位7に滞留してしまい、上記の劣化反応が促進されるという問題がある。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、一方の触媒層のみが設けられる固体高分子電解質膜の端部に反応ガスが進入することを阻止するとともに、前記反応ガスの滞留を阻止することにより、前記固体高分子電解質膜の端部劣化を有効に抑制することが可能な燃料電池用電解質膜・電極構造体を提供することを目的とする。
本発明は、固体高分子電解質膜の一方の面には、アノード触媒層及び該アノード触媒層よりも表面寸法の大きなアノード拡散層を有するアノード電極が設けられ、前記固体高分子電解質膜の他方の面には、カソード触媒層及び該カソード触媒層よりも表面寸法の大きなカソード拡散層を有するカソード電極が設けられるとともに、前記アノード触媒層の表面寸法と前記カソード触媒層の表面寸法とが異なる寸法に設定される燃料電池用電解質膜・電極構造体に関するものである。
この燃料電池用電解質膜・電極構造体では、固体高分子電解質膜とカソード拡散層の外周縁部又はアノード拡散層の外周縁部との間には、前記固体高分子電解質膜よりもガス透過性が低い材料で構成された反応ガス不透過領域であって、カソード触媒層又はアノード触媒層の外周端部と重なり部位を有して額縁状の反応ガス不透過領域が設けられるとともに、対極の拡散層側には、対極の触媒層の外周を周回して反応ガス透過領域が設けられている。
また、この燃料電池用電解質膜・電極構造体では、反応ガス不透過領域は、額縁状の内周側端部が、アノード触媒層又はカソード触媒層の外周端部と厚さ方向に重なり部位を有することが好ましい。
本発明によれば、カソード触媒層又はアノード触媒層の外周端部と重なり部位を有して額縁状の反応ガス不透過領域が設けられるため、カソード電極側又はアノード電極側から固体高分子電解質膜に反応ガスが接触することがない。しかも、対極の拡散層側には、対極の触媒層の外周を周回して反応ガス透過領域が設けられている。従って、対極側に反応ガスが滞留することがなく、前記反応ガスを円滑に排出させることができる。
これにより、固体高分子電解質膜の端部が、酸化剤ガスと燃料ガスとの反応により生成される劣化促進物質により劣化することを、有効且つ確実に抑制することが可能になる。
本発明の第1の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体が組み込まれる固体高分子型燃料電池の要部分解斜視説明図である。 前記燃料電池の、図1中、II−II線断面説明図である。 前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の要部断面説明図である。 前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体の一方の面の説明図である。 前記燃料電池を構成する第1セパレータの正面説明図である。 前記樹脂枠付き電解質膜・電極構造体を製造する方法の断面説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体が組み込まれる固体高分子型燃料電池の断面説明図である。 フィルム部材に代えて使用される他の反応ガス不透過領域の説明図である。 本発明の第3の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体が組み込まれる固体高分子型燃料電池の断面説明図である。 本発明の第4の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体が組み込まれる固体高分子型燃料電池の断面説明図である。 特許文献1に開示されている固体高分子形燃料電池の説明図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、長方形状の固体高分子型燃料電池12に組み込まれるとともに、複数の前記燃料電池12が矢印A方向に積層されて燃料電池スタックが構成される。
燃料電池12は、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10を第1セパレータ14及び第2セパレータ16で挟持する。第1セパレータ14及び第2セパレータ16は、縦長の長方形状を有し、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板や、カーボン部材等で構成されている。
図2及び図3に示すように、長方形状の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、電解質膜・電極構造体10aを備えるとともに、前記電解質膜・電極構造体10aは、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜18と、前記固体高分子電解質膜18を挟持するアノード電極20及びカソード電極22とを有する。固体高分子電解質膜18は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質が使用される。アノード電極20は、固体高分子電解質膜18及びカソード電極22よりも小さな表面積を有する。
アノード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに接合される電極触媒層(アノード触媒層)20aと、前記電極触媒層20aに積層されるガス拡散層(アノード拡散層)20bとを設ける。図3に示すように、ガス拡散層20bの外周端部20beは、電極触媒層20aの外周端部20aeよりも外方(矢印C方向外方)に突出するとともに、前記ガス拡散層20bは、固体高分子電解質膜18の外形寸法よりも小さな外形寸法に設定される。
カソード電極22は、固体高分子電解質膜18の面18bに接合される電極触媒層(カソード触媒層)22aと、前記電極触媒層22aに積層されるガス拡散層(カソード拡散層)22bとを設ける。電極触媒層22aの外周端部22aeは、電極触媒層20aの外周端部20aeよりも内方(矢印C方向内方)に離間するとともに、ガス拡散層22bの外周端部22beは、固体高分子電解質膜18の外形寸法と同一(又は同一未満)の外形寸法に設定される。
電極触媒層20a、22aは、カーボンブラックに白金粒子を担持した触媒粒子を形成し、イオン導伝性バインダーとして高分子電解質を使用し、この高分子電解質の溶液中に前記触媒粒子を均一に混合して作製された触媒ペーストを、固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bに印刷、塗布又は転写することによって構成される。ガス拡散層20b、22bは、カーボンペーパ等からなるとともに、前記ガス拡散層22bの平面寸法は、前記ガス拡散層20bの平面寸法よりも大きく設定される。
カソード電極22では、固体高分子電解質膜18の面18bとガス拡散層22bとの間に、電極触媒層22aの外周端部22aeと重なり部位24aを有して額縁状のフィルム部材(反応ガス不透過領域)24が設けられる。フィルム部材24は、固体高分子電解質膜18よりもガス透過性が低い材料で構成され、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーンゴム、フッ素ゴム又はEPDM(エチレンプロピレンゴム)等で形成される。
図1〜図4に示すように、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、固体高分子電解質膜18の外周を周回するとともに、アノード電極20及びカソード電極22に接合される樹脂製枠部材26を備える。樹脂製枠部材26は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)、LCP(リキッドクリスタルポリマー)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、シリコーンゴム、フッ素ゴム又はEPDM(エチレンプロピレンゴム)等で構成される。
樹脂製枠部材26は、アノード電極20の外周側に突出して固体高分子電解質膜18の外周縁部に当接する薄肉状の内周膨出部26aを有する。内周膨出部26aは、アノード電極20と同一の肉厚、実質的には、ガス拡散層20bと同一の肉厚を有する。
樹脂製枠部材26の内周膨出部26aと固体高分子電解質膜18の外周縁部とは、接着剤層27により接着される。接着剤層27は、例えば、エステル系又はウレタン系のホットメルト接着剤が使用される。樹脂製枠部材26とアノード電極20のガス拡散層20bとは、樹脂含浸部28aにより一体化される一方、前記樹脂製枠部材26とカソード電極22のガス拡散層22bとは、樹脂含浸部28bにより一体化される。
接着剤層27は、固体高分子電解質膜18の外周縁部の全周に亘って額縁状に形成される。樹脂含浸部28aは、アノード電極20のガス拡散層20bの全周に亘って額縁状に形成されるとともに、樹脂含浸部28bは、カソード電極22を構成するガス拡散層22bの全周に亘って額縁状に形成される。
図1に示すように、樹脂製枠部材26のアノード電極20側の面26asには、上端縁部に後述する燃料ガス流路の入口側に対応する入口バッファ部29aが設けられる。樹脂製枠部材26の面26asには、下端縁部に燃料ガス流路の出口側に対応する出口バッファ部29bが設けられる。入口バッファ部29a及び出口バッファ部29bは、複数の突起部により構成される。
図4に示すように、樹脂製枠部材26のカソード電極22側の面26csには、上端縁部に後述する酸化剤ガス流路の入口側に対応する入口バッファ部29cが設けられる。樹脂製枠部材26の面26csには、下端縁部に酸化剤ガス流路の出口側に対応する出口バッファ部29dが設けられる。入口バッファ部29c及び出口バッファ部29dは、複数の突起部により構成される。
図1に示すように、燃料電池12の矢印C方向(図1中、重力方向)の上端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔30a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔32a、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔34aが、矢印B方向(水平方向)に配列して設けられる。
燃料電池12の矢印C方向の下端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔34b、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔32b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔30bが、矢印B方向に配列して設けられる。
第2セパレータ16の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10に向かう面16aには、酸化剤ガス入口連通孔30aと酸化剤ガス出口連通孔30bとに連通する酸化剤ガス流路36が設けられる。酸化剤ガス流路36の入口側(上端側)には、樹脂製枠部材26の面26csの上端縁部に設けられた入口バッファ部29cが当接するバッファ領域38aが実質的に平坦状に設けられる。このバッファ領域38aの上部側一端には、酸化剤ガス入口連通孔30aから複数本の入口連結路40aが連結される。
酸化剤ガス流路36の出口側(下端側)には、樹脂製枠部材26の面26csの下端縁部に設けられた出口バッファ部29dが接触するバッファ領域38bが設けられる。このバッファ領域38bの一端側には、酸化剤ガス出口連通孔30bから複数本の出口連結路40bが連結される。
図5に示すように、第1セパレータ14の樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10に向かう面14aには、燃料ガス流路42が矢印C方向に延在して設けられる。
燃料ガス流路42の入口側(上端側)には、樹脂製枠部材26の面26asの上端縁部に設けられた入口バッファ部29aに接触するバッファ領域44aが設けられる。バッファ領域44aの燃料ガス入口連通孔34a側の端部には、複数本の入口連結路46aが連結されるとともに、前記入口連結路46aは、複数の供給孔部48aに連通する。
燃料ガス流路42の出口側(下端側)には、樹脂製枠部材26の面26asの下端縁部に設けられた出口バッファ部29bが当接するバッファ領域44bが設けられる。バッファ領域44bの燃料ガス出口連通孔34b側の端部には、複数本の出口連結路46bを介して排出孔部48bが連通する。
図1に示すように、第1セパレータ14の面14b側には、供給孔部48aと燃料ガス入口連通孔34aとを連通する複数本の入口連結路50a、及び排出孔部48bと燃料ガス出口連通孔34bとを連通する複数本の出口連結路50bが設けられる。面14bには、冷却媒体入口連通孔32aと冷却媒体出口連通孔32bとを連通する冷却媒体流路52が矢印C方向に設けられる。
図2に示すように、ガス拡散層20bは、積層方向に沿って重なり合う領域が燃料ガス流路42に対向している。すなわち、ガス拡散層20b側には、電極触媒層20aの外周を周回して反応ガス透過領域53が設けられる。
図1及び図2に示すように、第1セパレータ14の面14a、14bには、この第1セパレータ14の外周端部を周回して、第1シール部材54が一体化される。第2セパレータ16の面16a、16bには、この第2セパレータ16の外周端部を周回して、第2シール部材56が一体化される。
図2に示すように、第1シール部材54は、一定の厚さを有する平面シールを有し、前記平面シールには、第2シール部材56に当接する凸状シール54aが設けられる一方、前記第2シール部材56は、一定の厚さを有する平面シールを有し、前記平面シールには、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10を構成する樹脂製枠部材26に当接する凸状シール56aが設けられる。
第1シール部材54及び第2シール部材56には、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
次いで、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10を製造する方法について、以下に説明する。
先ず、図6に示すように、段差MEAである電解質膜・電極構造体10aが作製される。具体的には、固体高分子電解質膜18の両方の面18a、18bには、電極触媒層20a、22aが塗布される。そして、固体高分子電解質膜18の面18a側に、すなわち、電極触媒層20aにガス拡散層20bが配置される。一方、固体高分子電解質膜18の面18bに、すなわち、電極触媒層22aには、フィルム部材24を介装してガス拡散層22bが配置される。これらは一体に積層されてホットプレス処理されることにより、電解質膜・電極構造体10aが作製される。
一方、樹脂製枠部材26は、射出成形機(図示せず)により予め成形される。樹脂製枠部材26は、額縁形状に成形されるとともに、肉薄形状の内周膨出部26aが設けられる。樹脂製枠部材26の長手方向両端縁部には、両面に複数の突起部が形成されることにより、入口バッファ部29a、29c及び出口バッファ部29b、29dが設けられる。
次いで、電解質膜・電極構造体10aでは、アノード電極20の外周から外部に露呈する固体高分子電解質膜18の外周縁部に接着剤層27が設けられる。そして、樹脂製枠部材26と電解質膜・電極構造体10aとが位置合わせされる。
樹脂製枠部材26は、内周膨出部26aがアノード電極20側に配置され、接着剤層27が加熱溶融(ホットメルト)されるとともに、荷重(プレス等)が付与される。このため、内周膨出部26aと固体高分子電解質膜18とが接着される。
さらに、アノード電極20側には、樹脂含浸部28aを形成するための樹脂部材28aaが用意される一方、カソード電極22側には、樹脂含浸部28bを形成するための樹脂部材28bbが用意される。樹脂部材28aa、28bbは、枠形状(額縁形状)を有しており、例えば、樹脂製枠部材26と同一の材料で構成される。なお、樹脂含浸部28aは、必要に応じて用いればよく、不要にすることもできる。
そこで、電解質膜・電極構造体10aと樹脂製枠部材26とには、樹脂部材28aa、28bbが配置されて荷重が付与された状態で、前記樹脂部材28aa、28bbが加熱される。加熱方式としては、レーザ溶着、赤外線溶着やインパルス溶着等が採用される。
従って、樹脂部材28aa、28bbは、加熱溶融され、前記樹脂部材28aaは、アノード電極20を構成するガス拡散層20b及び樹脂製枠部材26に跨って含浸される。また、樹脂部材28bbは、カソード電極22を構成するガス拡散層22b及び樹脂製枠部材26に跨って含浸される。これにより、図2に示すように、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10が製造される。
樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10は、第1セパレータ14及び第2セパレータ16により挟持されて燃料電池12が構成される。燃料電池12は、所定数だけ積層されて燃料電池スタックが構成されるとともに、図示しないエンドプレート間に締め付け荷重が付与される。
このように構成される燃料電池12の動作について、以下に説明する。
先ず、図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔30aに酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔34aに水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔32aに純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。
このため、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔30aから第2セパレータ16の酸化剤ガス流路36に導入され、矢印C方向に移動して電解質膜・電極構造体10aのカソード電極22に供給される。一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔34aから供給孔部48aを通って第1セパレータ14の燃料ガス流路42に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路42に沿って矢印C方向に移動し、電解質膜・電極構造体10aのアノード電極20に供給される。
従って、電解質膜・電極構造体10aでは、カソード電極22に供給される酸化剤ガスと、アノード電極20に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
次いで、カソード電極22に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔30bに沿って矢印A方向に排出される。同様に、アノード電極20に供給されて消費された燃料ガスは、排出孔部48bを通り燃料ガス出口連通孔34bに沿って矢印A方向に排出される。
また、冷却媒体入口連通孔32aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ14と第2セパレータ16との間の冷却媒体流路52に導入された後、矢印C方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体10aを冷却した後、冷却媒体出口連通孔32bから排出される。
この場合、第1の実施形態では、図2及び図3に示すように、カソード電極22では、固体高分子電解質膜18とガス拡散層22bとの間に、電極触媒層22aの外周端部22aeと重なり部位24aを有して額縁状のフィルム部材24が設けられている。
このため、カソード電極22側からガス拡散層22bを透過した酸化剤ガスは、固体高分子電解質膜18に接触することがない。従って、固体高分子電解質膜18の端部で酸化剤ガスと燃料ガスとの反応が惹起されることがなく、前記固体高分子電解質膜18の劣化を可及的に抑制することが可能になる。
しかも、アノード電極20では、ガス拡散層20b側には、電極触媒層20aの外周を周回して反応ガス透過領域(燃料ガス流路42を含む)53が設けられている。これにより、固体高分子電解質膜18の端部に、前記固体高分子電解質膜18を透過した酸化剤ガスが滞留することがなく、前記酸化剤ガスをガス拡散層20bから燃料ガス流路42に円滑且つ確実に排出させることができる。
このため、固体高分子電解質膜18の端部は、酸化剤ガスと燃料ガスとの反応により生成される過酸化水素や前記過酸化水素を前駆体として生成されるヒドロキシラジカル(・OH)等の劣化促進物質により劣化することを、有効且つ確実に抑制されるという効果が得られる。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体60が組み込まれる固体高分子型燃料電池62の断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る燃料電池12と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
樹脂枠付き電解質膜・電極構造体60を構成するアノード電極20は、固体高分子電解質膜18の一方の面18aに接合される電極触媒層(アノード触媒層)20cと、前記電極触媒層20cに積層されるガス拡散層(アノード拡散層)20dとを設ける。ガス拡散層20dの外周端部20deは、電極触媒層20cの外周端部20ceよりも外方(矢印C方向外方)に突出するとともに、前記ガス拡散層20dは、固体高分子電解質膜18の外形寸法よりも小さな外形寸法に設定される。
カソード電極22は、固体高分子電解質膜18の面18bに接合される電極触媒層(カソード触媒層)22cと、前記電極触媒層22cに積層されるガス拡散層(カソード拡散層)22dとを設ける。電極触媒層22cの外周端部22ceは、電極触媒層20cの外周端部20ceよりも外方(矢印C方向外方)に突出するとともに、ガス拡散層22dの外周端部22deは、固体高分子電解質膜18の外形寸法と同一(又は同一未満)の外形寸法に設定される。
カソード電極22では、固体高分子電解質膜18とガス拡散層22dとの間に、電極触媒層22cの外周端部22ceと重なり部位24bを有して額縁状のフィルム部材24が設けられる。フィルム部材24の重なり部位24bは、アノード電極20を構成する電極触媒層20cの外周端部20ceと厚さ方向(矢印A方向)に重なり合っている。ガス拡散層20dには、電極触媒層20cの外周を周回して反応ガス透過領域53が設けられる。
このように構成される第2の実施形態では、アノード電極20の電極触媒層20cの表面寸法が、カソード電極22の電極触媒層22cの表面寸法よりも小さく設定されており、この関係は、第1の実施形態とは逆である。その他、第2の実施形態では、フィルム部材24及び反応ガス透過領域53を備えており、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
図8は、フィルム部材24に代えて使用される反応ガス不透過領域70を示す。この反応ガス不透過領域70は、電極触媒層22aの外周端部22aeと重なり部位70aを有する。
反応ガス不透過領域70は、例えば、樹脂部材をガス拡散層22bに含浸させるとともに、表面全体を平滑化させて構成することができる。また、反応ガス不透過領域70は、ガス拡散層22bの外周縁部をプレスして緻密化を図るとともに、表面全体を平滑化させて構成することも可能である。
これにより、反応ガス不透過領域70は、フィルム部材24と同様の効果が得られる。なお、反応ガス不透過領域70は、第1の実施形態に係る燃料電池12に採用したが、第2の実施形態に係る燃料電池62に用いてもよい。
図9は、本発明の第3の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体80が組み込まれる固体高分子型燃料電池82の断面説明図である。なお、第3の実施形態は、基本的に第1の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体10と同様に構成される。
樹脂枠付き電解質膜・電極構造体80では、アノード電極20を構成するガス拡散層20bの外周端部20beは、電極触媒層20aの外周端部20aeよりも外方(矢印C方向外方)に突出するとともに、前記ガス拡散層20bは、固体高分子電解質膜18の外形寸法よりも小さな外形寸法に設定される。
カソード電極22を構成する電極触媒層22aの外周端部22aeは、電極触媒層20aの外周端部20aeよりも内方(矢印C方向内方)に離間するとともに、ガス拡散層22bの外周端部22beは、固体高分子電解質膜18の外形寸法と同一(又は同一未満)の外形寸法に設定される。カソード電極22の電極触媒層22aの表面寸法は、アノード電極20の電極触媒層20aの表面寸法よりも小さく設定される。
アノード電極20では、固体高分子電解質膜18の面18aとガス拡散層20bとの間に、電極触媒層20aの外周端部20aeと重なり部位24aを有して額縁状のフィルム部材(反応ガス不透過領域)24が設けられる。ガス拡散層22b側には、電極触媒層22aの外周を周回して酸化剤ガス流路36に対向する反応ガス透過領域53が設けられる。
この場合、第3の実施形態では、アノード電極20では、固体高分子電解質膜18の面18aとガス拡散層20bとの間に、電極触媒層20aの外周端部20aeと重なり部位24aを有して額縁状のフィルム部材24が設けられている。
このため、アノード電極20側からガス拡散層20bを透過した燃料ガスは、固体高分子電解質膜18に接触することがない。従って、固体高分子電解質膜18の端部で酸化剤ガスと燃料ガスとの反応が惹起されることがなく、前記固体高分子電解質膜18の劣化を可及的に抑制することが可能になる。
しかも、カソード電極22では、ガス拡散層22b側に反応ガス透過領域53が設けられている。これにより、固体高分子電解質膜18の端部に、前記固体高分子電解質膜18を透過した燃料ガスが滞留することがなく、前記燃料ガスをガス拡散層22bから酸化剤ガス流路36に円滑且つ確実に排出させることができる。
図10は、本発明の第4の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体90が組み込まれる固体高分子型燃料電池92の断面説明図である。なお、第4の実施形態では、基本的に第2の実施形態に係る樹脂枠付き電解質膜・電極構造体60と同様に構成される。
樹脂枠付き電解質膜・電極構造体90では、アノード電極20を構成するガス拡散層20dの外周端部20deは、電極触媒層20cの外周端部20ceよりも外方(矢印C方向外方)に突出するとともに、前記ガス拡散層20dは、固体高分子電解質膜18の外形寸法よりも小さな外形寸法に設定される。
カソード電極22を構成する電極触媒層22cの外周端部22ceは、電極触媒層20cの外周端部20ceよりも外方(矢印C方向外方)に突出するとともに、ガス拡散層22dの外周端部22deは、固体高分子電解質膜18の外形寸法と同一(又は同一未満)の外形寸法に設定される。
アノード電極20では、固体高分子電解質膜18とガス拡散層20dとの間に、電極触媒層20cの外周端部20ceと重なり部位24bを有して額縁状のフィルム部材24が設けられる。
このように構成される第4の実施形態では、アノード電極20の電極触媒層20cの表面寸法が、カソード電極22の電極触媒層22cの表面寸法よりも小さく設定されており、この関係は、第3の実施形態とは逆である。その他、第4の実施形態では、上記の第3の実施形態と同様の効果が得られる。
10、60、80、90…樹脂枠付き電解質膜・電極構造体
10a…電解質膜・電極構造体 12、62、82、92…燃料電池
14、16…セパレータ 18…固体高分子電解質膜
20…アノード電極
20a、20c、22a、22c…電極触媒層
20b、20d、22b、22d…ガス拡散層
22…カソード電極
20ae、20be、20ce、20de、22ae、22be、22ce、22de…外周端部
24…フィルム部材
24a、24b、70a…重なり部位 26…樹脂製枠部材
26a…内周膨出部 28a、28b…樹脂含浸部
29a、29c…入口バッファ部 29b、29d…出口バッファ部
30a…酸化剤ガス入口連通孔 30b…酸化剤ガス出口連通孔
32a…冷却媒体入口連通孔 32b…冷却媒体出口連通孔
34a…燃料ガス入口連通孔 34b…燃料ガス出口連通孔
36…酸化剤ガス流路 42…燃料ガス流路
52…冷却媒体流路 53…反応ガス透過領域
54、56…シール部材 70…反応ガス不透過領域

Claims (2)

  1. 固体高分子電解質膜の一方の面には、アノード触媒層及び該アノード触媒層よりも表面寸法の大きなアノード拡散層を有するアノード電極が設けられ、前記固体高分子電解質膜の他方の面には、カソード触媒層及び該カソード触媒層よりも表面寸法の大きなカソード拡散層を有するカソード電極が設けられるとともに、前記アノード触媒層の表面寸法と前記カソード触媒層の表面寸法とが異なる寸法に設定される燃料電池用電解質膜・電極構造体であって、
    前記固体高分子電解質膜と前記カソード拡散層の外周縁部又は前記アノード拡散層の外周縁部との間には、前記固体高分子電解質膜よりもガス透過性が低い材料で構成された反応ガス不透過領域であって、前記カソード触媒層又は前記アノード触媒層の外周端部と重なり部位を有して額縁状の反応ガス不透過領域が設けられるとともに、
    対極の拡散層側には、対極の触媒層の外周を周回して反応ガス透過領域が設けられることを特徴とする燃料電池用電解質膜・電極構造体。
  2. 請求項1記載の燃料電池用電解質膜・電極構造体において、前記反応ガス不透過領域は、前記額縁状の内周側端部が、前記アノード触媒層又は前記カソード触媒層の外周端部と厚さ方向に重なり部位を有することを特徴とする燃料電池用電解質膜・電極構造体。
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