JP2010198763A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】スタッキング時等で作用する圧縮力が補強膜の端部もしくはその近傍箇所に集中するのを抑制でき、圧縮力の集中箇所を起点として膜電極接合体を貫通するガスのクロスリーク路が形成されることを効果的に解消できる、燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜1と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜1の両側で当接する触媒層2,3と、から膜電極接合体4が形成されて燃料電池セルを成し、該燃料電池セルが積層されてなる燃料電池であり、少なくとも、電解質膜1のうち、触媒層2,3で被覆されていない周縁の露出領域1’とガス透過層5,6の間には補強膜7A,7Bが介在し、かつ、補強膜7A,7Bの一部が触媒層2,3上に積層して積層箇所7A’,7B’を形成し、積層箇所7A’,7B’はその途中で厚みが変化するものであり、触媒層中央側の領域7Aa,7Baに比して露出領域側の領域7Ab、7Bbが相対的に厚くなっている。
【選択図】図1
【解決手段】電解質膜1と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜1の両側で当接する触媒層2,3と、から膜電極接合体4が形成されて燃料電池セルを成し、該燃料電池セルが積層されてなる燃料電池であり、少なくとも、電解質膜1のうち、触媒層2,3で被覆されていない周縁の露出領域1’とガス透過層5,6の間には補強膜7A,7Bが介在し、かつ、補強膜7A,7Bの一部が触媒層2,3上に積層して積層箇所7A’,7B’を形成し、積層箇所7A’,7B’はその途中で厚みが変化するものであり、触媒層中央側の領域7Aa,7Baに比して露出領域側の領域7Ab、7Bbが相対的に厚くなっている。
【選択図】図1
Description
本発明は、触媒層の周縁であって、ガス拡散層と電解質膜の間に補強膜を備え、かつガスケットを電極体の周縁に備えた燃料電池に関するものである。
固体高分子型燃料電池の燃料電池セルは、イオン透過性の電解質膜と、該電解質膜を挟持するアノード側およびカソード側の触媒層とから膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)が形成され、このMEAとこれを挟持するアノード側およびカソード側のガス拡散層(GDL)とから電極体(MEGA:Membrane Electrode & Gas Diffusion Layer Assembly)が形成され、電極体に燃料ガスもしくは酸化剤ガスを提供するとともに電気化学反応によって生じた電気を集電するための金属多孔体からなるガス流路層とセパレータが電極体の両側に配されて構成されている。なお、セパレータにガス流路溝が形成された燃料電池セルも従来一般のものであり、この形態の場合にはガス流路層となる金属多孔体は不要である。実際の燃料電池スタックは、所要電力に応じた基数の燃料電池セルが積層され、スタッキングされることによって形成されている。
上記する燃料電池では、アノード電極に燃料ガスとして水素ガス等が提供され、カソード電極には酸化剤ガスとして酸素や空気が提供され、各電極では固有のガス流路層(またはセパレータに形成されたガス流路溝)にて面内方向にガスが流れ、次いでガス拡散層にて拡散されたガスが電極触媒層に導かれて電気化学反応がおこなわれるものである。
上記するガス拡散層の形態として、拡散層基材と集電層(MPL:Micro Porous Layer)とから構成されるものは一般に知られるところである。一般には、触媒層は電解質膜よりも狭小な平面積(小さな平面積)を有しており、電解質膜が触媒層にて被覆されていない触媒層の周縁の露出領域には、ポリマー素材の補強膜(もしくは保護フィルム)が配設されており、この補強膜が拡散層基材と電解質膜の間に介在した構造が一般的である。補強膜を触媒層の周縁領域で拡散層基材と電解質膜の間に介在させることにより、触媒層を有する電解質膜(膜電極接合体)とガス拡散層をたとえば100〜130℃程度の高温雰囲気下、1〜3MPa程度の圧縮力で熱圧着する(電解質膜に影響を与えない熱圧着条件)際に、繊維質の拡散層基材の表面から突出する毛羽が電解質膜に突き刺さることを抑止することができる。
また、上記する燃料電池セルにおいては、膜電極接合体に供給される燃料ガスや酸化剤ガス、さらにはセルの昇温を抑止するための冷却水などの流体をシールするためのガスケットが電極体や金属多孔体の周縁に形成されている。このガスケット成形は一般に射出成形や圧縮成形にておこなわれている。たとえばガス流路となる金属多孔体を具備する燃料電池セルにおいては、成形型のキャビティ内にアノード側もしくはカソード側の一方の金属多孔体を収容し、次いで電極体を収容し、次いでアノード側もしくはカソード側の他方の金属多孔体を収容した姿勢で、電極体および金属多孔体の周縁のガスケット形成用キャビティに樹脂を注入してガスケット成形がおこなわれている。なお、キャビティ内にアノード側もしくはカソード側いずれか一方のセパレータを最初に収容し、次いで上記する構成部材を収容して射出成形をおこなう方法もある。
上記する補強膜とガスケットを備えた従来の燃料電池セルの構造を図6に示している。電極体は、電解質膜aと、カソード側およびアノード側の触媒層b1、b2と、から膜電極接合体cが形成され、この膜電極接合体cをカソード側およびアノード側のガス拡散層d(拡散層基材d1と集電層d2とから構成される)が挟持して形成される。触媒層b1、b2は電解質膜aに比して狭小であり、電解質膜aが触媒層b1、b2で被覆されていない露出領域にはカソード側およびアノード側の補強膜e1,e2が配され、これらが電解質膜aと拡散層基材d1の間に介在している。また、図示例はガス流路となる金属多孔体fをカソード側およびアノード側に備えたものであり、電極体と金属多孔体fの周縁には、射出成形され、その内部に流体流通用のマニホールドMを有するとともにその端部のマニホールドMの周縁に該マニホールドMを囲繞する無端リブg1を具備するガスケットgが形成されている。
図示例のごとく、補強膜e1,e2は、その触媒層側端部が触媒層b1、b2にラップ(積層)しているのが一般的である。この補強膜e1,e2は、熱圧着時に拡散層基材の毛羽が電解質膜aに突き刺さると、この突き刺さり箇所がガスのクロスリークを助長することとなり、燃料電池のクロスリーク耐久性が低下し、発電性能の低下に直結するという課題を解消するために設けられている。すなわち、電解質膜aが触媒層b1、b2と接触している領域は、該触媒層b1、b2にて電解質膜aが毛羽の突き刺さりから保護されている一方で、上記する電解質膜aの露出領域は補強膜e1,e2で毛羽の突き刺さりから保護される。ここで、触媒層b1、b2の端部から毛羽が電解質膜aに通じることを回避するべく、図示するように、補強膜e1,e2の端部を触媒層b1、b2にラップさせるようにしている。
ところで、燃料電池スタックは複数の燃料電池セルが積層され、スタッキングされて形成されるものであるが、このスタッキング時の圧縮力は各燃料電池セルに伝達され、図示のごとく膜電極接合体cに対してその上下から圧縮力Pとして作用する。ここで、図示のごとく補強膜e1,e2が触媒層b1、b2とラップしている場合、該補強膜e1,e2の端部e1’、e2’はセル積層方向で揃っており、この端部e1’、e2’から集中的に荷重P1,P1が作用し易いために、該端部e1’、e2’に対応する触媒層部位で亀裂が生じ易くなり、これは、電解質膜の対応部位の亀裂をも助長してガスのクロスリーク路の形成に至るという大きな課題となっている。
さらに、電解質膜はその発電経過でその乾湿が変化し、その温度が変化することで膨張と収縮を繰り返すが、上記する補強膜e1,e2の端部e1’、e2’で拘束された電解質膜部位を起点としてその左右で膨張と収縮を繰り返す際に、やはり、端部e1’、e2’に対応する部位もしくはその近傍で亀裂が生じ易くなる。さらには、カソード側とアノード側で酸化剤ガスと燃料ガスに差圧がある場合においても、この差圧に起因する外力が補強膜e1,e2の端部e1’、e2’に対応する電解質膜部位に作用し、これによっても亀裂が生じ易くなるという課題を有している。
ところで、アノード側およびカソード側それぞれの補強膜のうち、膜電極接合体に積層しているそれぞれの端部をずらした構成の燃料電池が特許文献1に開示されており、この構造を適用することで上記する応力集中の緩和が可能となる。
しかし、単にアノード側およびカソード側の補強膜の端部を相互にずらす構成のみでは、補強膜がアノード側およびカソード側いずれか一方にのみ存在する場合の応力緩和効果を期待することができない。すなわち、アノード側とカソード側のいずれか一方にのみ補強膜が存在している場合であっても、該補強膜が存在する電極側の毛羽の突き刺さりを防止することで、膜電極接合体にクロスリーク路となる貫通孔の発生を回避できるという技術思想に立てば、必ずしもアノード側とカソード側の双方に補強膜を設ける必要性はないのである。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、触媒層の周縁であって、ガス透過層と電解質膜の間に補強膜(たとえば保護フィルム)を備え、この補強膜の端部が触媒層に積層(ラップ)している電極体と、該電極体の周縁に射出成形等にて形成されたガスケットと、を備えた燃料電池セルが積層された燃料電池において、カソード側および/またはアノード側の補強膜端部から作用する圧縮力等により、該補強膜端部もしくはその近傍で触媒層や電解質膜に亀裂が生じ易くなるという課題を、効果的に解消することのできる燃料電池を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による燃料電池は、電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス透過層が配され、該膜電極接合体およびガス透過層の周縁に流体シール用のガスケットが形成されて燃料電池セルを成し、該燃料電池セルが積層されてなる燃料電池であって、少なくとも、前記電解質膜のうち、触媒層で被覆されていない周縁の露出領域とガス透過層の間には、補強膜が介在し、かつ、該補強膜の一部が触媒層上に積層して積層箇所を形成しており、補強膜の前記積層箇所は、その途中で厚みが変化するものであって、該積層箇所のうち、触媒層中央側の領域に比して前記露出領域側の領域が相対的に厚くなっているものである。
本発明の燃料電池を構成する燃料電池セルは、アノード側およびカソード側の双方の電極に補強膜(たとえば保護フィルム)を有する形態、アノード側とカソード側のいずれか一方の電極に補強膜を有する形態の双方を包含するものである。そして、この補強膜は、電解質膜のうち、触媒層で被覆されていない周縁の露出領域とガス透過層の間に介在し、かつ、該補強膜の一部が触媒層上に積層して積層箇所を形成するものであり、この構造により、ガス透過層からの毛羽が膜電極接合体に突き刺さり、これがアノード側からカソード側へ貫通してガスのクロスリーク路を形成することを回避するものである。
ここで、燃料電池セルの構造は、膜電極接合体(MEA)のアノード側とカソード側の双方に拡散層基材と集電層からなるガス拡散層を具備する形態、アノード側とカソード側のいずれか一方は集電層のみを具備する(拡散層基材が廃された)形態の双方を含んでいる。また、本明細書では、これらのいずれの形態も電極体(MEGA)と称呼している。また、電極体の両側にガス流路溝が形成されたセパレータが直接配された形態は勿論のこと、いわゆるフラットタイプのセパレータと電極体の間に、ガス流路層(エキスパンドメタル等の金属多孔体)が配された形態を含むものである。さらに、「ガス透過層」とは、ガス拡散層とガス流路層の双方を含む意味である。したがって、ガス流路層を具備しないセル形態においては「ガス透過層」は「ガス拡散層」を意味するものであり、ガス拡散層とガス流路層の双方を具備するセル形態においては「ガス透過層」は「ガス拡散層」と「ガス流路層」の双方もしくはいずれか一方を意味するものである。
上記する補強膜の膜電極接合体に積層する積層箇所は、その途中で厚みが変化するものであり、該積層箇所のうち、触媒層中央側の領域に比して電解質膜の露出領域側の領域が相対的に厚くなっている。この構造により、従来構造のごとく、補強膜の積層箇所の端部にスタッキング時の圧縮力が集中し、この集中部位を起点としてガスのクロスリーク路が形成され易くなっていたという課題が解消される。すなわち、補強膜の積層箇所において、従来構造の場合にその端部に集中していたスタッキング時の圧縮力は、補強膜の積層箇所の他の部位、すなわち上記する、触媒層中央側の領域に比して相対的に厚くなっている電解質膜の露出領域側の領域に分散されるため、補強膜の端部の荷重集中が緩和され、該端部に対応する膜電極接合体部位における内部応力(圧縮応力)は効果的に緩和される。
ここで、「補強膜の前記積層箇所は、その途中で厚みが変化するものであって、該積層箇所のうち、触媒層中央側の領域に比して前記露出領域側の領域が相対的に厚くなっている」なる構成として、例えば以下の複数の形態を挙げることができる。
その一つの形態は、補強膜の前記積層箇所の端部に関し、その厚みが触媒層表面に向かって薄くなっている形態である。
たとえば、テーパー状に直線的に厚みが薄くなる形態、湾曲状に厚みが薄くなる形態、階段状に厚みが薄くなる形態など、その具体的な形態は多様である。
また、他の形態は、少なくとも2つの補強膜がそれぞれの端部をずらした姿勢で積層されることで前記補強膜が形成されるものであり、外側の該補強膜の端部の左右で前記積層箇所の厚みが変化している形態である。
たとえば、一般に使用される補強膜の厚みが20〜30μmの場合に、その厚みを二等分してなる薄厚な2つの補強膜を用意し、その端部をずらして積層させて一つの補強膜を形成し、これを触媒層で被覆されていない電解質膜の周縁の露出領域とガス透過層の間に介在させるものである。なお、この実施例の場合には、補強膜の積層箇所の途中で、その厚みがたとえば15μm等から階段状に30μm等に変化する。なお、補強膜の端部、すなわち、相対的に薄い層の端部をさらに上記のごとくテーパー状に厚みを変化させるようにしてもよい。
また、本発明による燃料電池の他の実施の形態において、前記補強膜は、カソード側とアノード側の双方に配されており、それぞれの補強膜の前記積層箇所の端部が、燃料電池セルの積層方向で相互にずらされているものである。
カソード側とアノード側の双方の電極に補強膜を有する形態に関し、それぞれの補強膜の積層箇所の厚みがその途中で変化する構造に加えて、カソード側とアノード側双方の補強膜の端部を燃料電池セルの積層方向で相互にずらすことで、膜電極接合体を貫通するクロスリーク路の形成をより効果的に抑止できる。
以上の説明から理解できるように、本発明の燃料電池によれば、少なくとも、電解質膜のうち、触媒層で被覆されていない周縁の露出領域とガス透過層の間に補強膜が介在し、かつ、該補強膜の一部が触媒層上に積層して積層箇所を形成するものに関し、アノード側およびカソード側の双方の電極に補強膜を有する場合であっても、アノード側とカソード側のいずれか一方の電極に補強膜を有する場合であっても、スタッキング時等で作用する圧縮力がたとえば補強膜の端部もしくはその近傍箇所に集中するのを抑制することができ、圧縮力の集中箇所を起点として膜電極接合体を貫通するガスのクロスリーク路が形成されることを効果的に解消できるため、クロスリーク耐久に優れた燃料電池を提供することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例は電極体の両側にガス流路となる金属多孔体が配されたものであり、これは、3層構造のセパレータがさらに配されて燃料電池セルを形成する形態のものであるが、セパレータにガス流路溝が形成されて金属多孔体が不要な燃料電池セルの場合には、ガスケットの上下端面はカソード側およびアノード側のガス拡散層の端面付近に位置することになる。また、アノード側およびカソード側のいずれか一方からガス拡散層の拡散層基材が廃された形態であってもよい。
図1は、本発明の燃料電池(燃料電池セル)の一実施の形態の電極体とガスケットの一部を拡大した縦断面図である。この電極体10は、電解質膜1と、カソード側およびアノード側の触媒層2,3と、から膜電極接合体4が形成され、これをカソード側およびアノード側のガス拡散層5,6が挟持して形成されている。なお、図示例では、電極体10の両側にカソード側およびアノード側のガス流路となる金属多孔体8A,8Bが配され、この電極体10および多孔体8A,8Bの周縁に樹脂素材のガスケット9が形成されている。
ここで、触媒層2,3は電解質膜1に比してそれらの面積が狭小であり、したがって、電解質膜1の両側の触媒層2,3の周縁には該触媒層2,3が存在しない露出領域1’が形成される。
この露出領域1’には、カソード側およびアノード側の補強膜7A,7Bが配されており、より具体的には、該補強膜7A,7Bの一部が触媒層2,3上にラップして積層領域7A’、7B’を形成した姿勢で、触媒層2,3から露出領域1’に亘って補強膜7A,7Bが配されており、ガス拡散層5,6から突出する毛羽が電解質膜1に突き刺さるのを防護している。
この補強膜7A,7Bの積層領域7A’、7B’はさらに、触媒層中央側の領域7Aa、7Baと、露出領域側の領域7Ab、7Bbと、から構成されており、触媒層中央側の領域7Aa、7Baの厚みは、その端部に向かってテーパー状に薄厚に形成されている。
このように、積層領域7A’、7B’がその途中で厚みが変化し、触媒層中央側の領域7Aa、7Baに比して露出領域側の領域7Ab、7Bbが相対的に厚くなっていることにより、露出領域側の領域7Ab、7Bbの剛性を相対的に高くすることができる。その結果、たとえばスタッキング時に積層領域7A’、7B’に圧縮力が作用した際に、この圧縮力を積層領域7A’、7B’の端部のみならず、該積層領域7A’、7B’の他の領域(露出領域側の領域7Ab、7Bb)に分散させることができる。したがって、図6で示したように、従来構造の燃料電池セルにおいてスタッキング時等の圧縮力がその補強膜の端部から集中的に膜電極接合体に作用し、これを起点としてガスのクロスリーク路が形成されることを効果的に解消できる。
ここで、膜電極接合体4を構成する電解質膜1は、たとえば、スルホン酸基やカルボニル基を持つフッ素系イオン交換膜、置換フェニレンオキサイドやスルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン、スルホン化フェニレンスルファイドなどの非フッ素系のポリマーなどから形成される。
また、触媒層2,3は、触媒が担持された導電性担体(粒子状のカーボン担体など)と、電解質と、分散溶媒(有機溶媒)と、を混合して触媒溶液(触媒インク)を生成し、これを電解質膜1やガス拡散層5,6等の基材に塗工ブレードにて層状に引き伸ばして塗膜を形成し、温風乾燥炉等で乾燥することで触媒層が形成される。ここで、触媒溶液を形成する電解質は、プロトン伝導性ポリマーである、有機系の含フッ素高分子を骨格とするイオン交換樹脂、例えばパーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化プラスチック系電解質、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィド、スルホアルキル化ポリフェニレンなどのスルホアルキル化プラスチック系電解質などを挙げることができる。なお、市販素材としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標、デュポン社製)やフレミオン(Flemion)(登録商標、旭硝子株式会社製)などを挙げることができる。また、分散溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、芳香族系あるいはハロゲン系の種々の溶媒を挙げることができ、さらには、これらを単独で、もしくは混合液として使用することができる。さらに、触媒が担持された導電性担体に関し、この導電性担体としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料のほか、炭化ケイ素などに代表される炭素化合物などを挙げることができ、この触媒(金属触媒)としては、たとえば、白金や白金合金、パラジウム、ロジウム、金、銀、オスミウム、イリジウムなどのうちのいずれか一種を使用することができ、好ましくは白金または白金合金を使用するのがよい。さらに、この白金合金としては、たとえば、白金と、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、バナジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、チタンおよび鉛のうちの少なくとも一種との合金を挙げることができる。
また、ガス拡散層5,6は、拡散層基材51,61と集電層52,62(MPL)からなるものであり、拡散層基材51,61としては、電気抵抗が低く、集電を行えるものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、導電性無機物質を主とするものを挙げることができ、この導電性無機物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材やこれらのナノカーボン材料、ステンレススチール、モリブデン、チタン等を挙げることができる。また、拡散層基材51,61の導電性無機物質の形態は特に限定されるものではなく、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、ガス透過性の点から無機導電性繊維であって、特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた拡散層基材51,61としては、織布あるいは不織布いずれの構造のものも使用することができ、カーボンペーパーやカーボンクロスなどを挙げることができる。織布としては、平織、紋織、綴織など、特に限定されるものではなく、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、ウォータージェットパンチ法によるものなどが挙げられる。さらに、この炭素繊維としては、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などを挙げることができる。さらに、集電層52,62はアノード側、カソード側の触媒層3,2から電子を集める電極の役割を果たすとともに、生成水等を排水する撥水作用を有するものであり、導電性材料である、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、銀、銅及びこれらの化合物または合金、導電性炭素材料と、フッ素樹脂(PTFE)などから形成できる。
また、金属多孔体8A,8Bは、エキスパンドメタルや金属発砲焼結体からなり、この発砲焼結体においては、チタンやステンレス、銅、ニッケル等の耐食性に優れた金属素材が使用されるのがよく、さらには、ステンレス中にクロム炭化物や鉄−クロム炭化物などを分散した発泡体であってもよい。
さらに、補強膜7A,7Bは、ポリテトラフルオロエチレン、PVDF(二フッ化ポリビニル)、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、シリコーン、シリコンゴム、シリコンベースのエラストマなどから形成されるものである。
ガスケット9は、その端部のマニホールドMの周縁に該マニホールドMを囲繞する無端リブ9aを有するものである。その成形方法の概要は、不図示の成形型内にアノード側の金属多孔体8B,アノード側のガス拡散層6、膜電極接合体4、カソード側のガス拡散層5、カソード側の金属多孔体8Aの順に収容して型閉めし、膜電極接合体4の側方のガスケット用キャビティ内に樹脂を注入する(射出成形)等の方法でおこなわれる。ここで、このガスケットの材料としては、耐メタノール性を有するエポキシ系樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタンRTVゴムやブチルゴム系樹脂、シリコーンRTVゴム、EPDM系樹脂等が使用できる。
図2は、本発明の燃料電池の他の実施の形態の電極体とガスケットの一部を拡大した縦断面図である。
この燃料電池の電極体10Aは、そのカソード側電極にのみ電極体10と同様の補強膜7Aを有し、アノード側電極の補強膜が省略されている。なお、図示例以外にも、アノード側電極にのみ補強膜を具備する形態であってもよい。この電極体10Aは、アノード側とカソード側のいずれか一方にのみ補強膜が存在している場合であっても、該補強膜が存在する電極側の毛羽の突き刺さりを防止することにより、膜電極接合体4にクロスリーク路となる貫通孔の発生を回避できるという技術思想に立脚したものである。
電極体10Aにおいても、触媒層中央側の領域7Aaの厚みが、その端部に向かってテーパー状に薄厚に形成されていることにより、露出領域側の領域7Abの剛性を相対的に高くすることができ、スタッキング時に積層領域7A’に圧縮力が作用した際に、この圧縮力を積層領域7A’の端部のみならず、該積層領域7A’の他の領域(露出領域側の領域7Ab)に分散させることができる。
図3は、本発明の燃料電池のさらに他の実施の形態の電極体とガスケットの一部を拡大した縦断面図である。
この燃料電池の電極体10Bは、カソード側およびアノード側の補強膜7C,7Dが、それぞれ薄層の外側の補強膜7C1および内側の補強膜7C2、外側の補強膜7D1および内側の補強膜7D2の積層構造を呈するものであり、外側の補強膜7C1、7D1の先端が、内側の補強膜7C2,7D2の途中位置で留まっていることで、積層領域7C’、7D’はその途中で厚みが変化し、触媒層中央側の領域に比して露出領域側の領域が相対的に厚くなっている構造を有するものである。
なお、たとえば、外側の補強膜7C1と内側の7C2、外側の補強膜7D1と内側の補強膜7D2それぞれの厚みを、図1,2で示す電極体10,10Aで使用した補強膜7A,7Bの半分程度の厚みとすることで、補強膜7C1、7C2の積層箇所、補強膜7D1,7D2の積層箇所の厚みを補強膜7A,7Bと同程度とすることができ、これらと同等の毛羽の突き刺さり防止効果を期待できる。
また、補強膜の製造効率、製造容易性の観点からすれば、電極体10Bのごとく2つの薄層の補強膜を積層する形態の方が、20〜30μm程度の極薄の補強膜の先端をテーパー状に加工する形態よりも好ましい。なお、この積層構造の補強膜の場合においても、アノード側もしくはカソード側の一方にのみ補強膜を設ける形態であってもよい。
図4は、本発明の燃料電池のさらに他の実施の形態の電極体とガスケットの一部を拡大した縦断面図である。
この燃料電池の電極体10Cは、図1で示す電極体10に構造変更を加えたものであり、具体的には、カソード側の補強膜7Aの積層箇所7A’の触媒層中央側の領域7Aaと、アノード側の補強膜7B1の積層箇所7B”の触媒層中央側の領域7Ba”と、を燃料電池セル積層方向Xに対してずらしたものである。
カソード側とアノード側で双方の補強膜の先端がずらされていることで、スタッキング時に該先端から膜電極接合体4に集中荷重が作用した場合でも、その作用線をセル積層方向Xでずらすことができ、膜電極接合体4に過度の圧縮力が作用するのを回避することで貫通孔の形成可能性を低減できる。
図5は、本発明の燃料電池のさらに他の実施の形態の電極体とガスケットの一部を拡大した縦断面図である。
この燃料電池の電極体10Dは、図3で示す電極体10Bに図4で示す電極体10Cのごとき構造変更を加えたものである。具体的には、カソード側の補強膜7Cの積層箇所7C’の触媒層中央側の領域と、アノード側の補強膜7D”の積層箇所7D”aの触媒層中央側の領域と、を燃料電池セル積層方向Xに対してずらした構造を有している。
上記する電極体10、10A,10B,10C,10Dを具備する燃料電池セル、この燃料電池セルが積層されてなる燃料電池によれば、ガス透過層からの毛羽の膜電極接合体への突き刺さりに起因するガスのクロスリーク路形成を補強膜によって抑止しながら、この補強膜が触媒層に積層することで生じ得る圧縮力等に起因するガスのクロスリーク路の形成をも効果的に抑止することができ、クロスリーク耐久性に優れた燃料電池となる。
なお、実際の燃料電池は、図示する多孔体8A,8Bの両側に3層構造のセパレータが配されて燃料電池セルをなし、所望する発電量に応じて該燃料電池セルが所定段積層されて燃料電池スタックが形成される。さらに、この燃料電池スタックは、最外側にエンドプレート、テンションプレート等を備え、両端のテンションプレート間に圧縮力が加えられて燃料電池が形成される。電気自動車等に車載される燃料電池システムは、この燃料電池と、水素ガスや空気を収容する各種タンク、これらのガスを燃料電池に提供するためのブロア、燃料電池を冷却するためのラジエータ、燃料電池で生成された電力を蓄電するバッテリ、この電力で駆動する駆動モータ等から大略構成されるものである。なお、3層構造のセパレータとは、導電性金属(ステンレスやチタンなど)からなる2枚の金属プレートと、その間に、金属素材で冷却水流路が形成された中間層が介層された形態や、樹脂素材の枠材を中間層とし、2枚の金属プレートの一方のプレートから多数のディンプル、もしくは流路画成用のリブが突出された形態のセパレータのことである。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…電解質膜、1’…電解質膜の露出領域、2…カソード側の触媒層、3…アノード側の触媒層、4…膜電極接合体、5…カソード側のガス拡散層(ガス透過層)、51…拡散層基材、52…集電層、6…アノード側のガス拡散層(ガス透過層)、61…拡散層基材、62…集電層、7A,7C…カソード側の補強膜、7A’,7C’…補強膜の積層箇所、7Aa…触媒層中央側の領域、7Ab…露出領域側の領域、7B,7B1,7D,7D”…アノード側の補強膜、7B’,7B”,7D’,7D”a…補強膜の積層箇所、7Ba,7Ba”…触媒層中央側の領域、7Bb,7Bb”…露出領域側の領域、7C1…外側の補強膜、7C2…内側の補強膜、7D1,7D1’…外側の補強膜、7D2,7D2’…内側の補強膜、8A…カソード側の金属多孔体、8B…アノード側の金属多孔体、9…ガスケット、10,10A,10B,10C,10D…電極体、X…セル積層方向
Claims (6)
- 電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス透過層が配され、該膜電極接合体およびガス透過層の周縁に流体シール用のガスケットが形成されて燃料電池セルを成し、該燃料電池セルが積層されてなる燃料電池であって、
少なくとも、前記電解質膜のうち、触媒層で被覆されていない周縁の露出領域とガス透過層の間には、補強膜が介在し、かつ、該補強膜の一部が触媒層上に積層して積層箇所を形成しており、
補強膜の前記積層箇所は、その途中で厚みが変化するものであって、該積層箇所のうち、触媒層中央側の領域に比して前記露出領域側の領域が相対的に厚くなっている、燃料電池。 - 補強膜の前記積層箇所の端部は、その厚みが触媒層表面に向かって薄くなっている、請求項1に記載の燃料電池。
- 前記補強膜は、少なくとも2つの補強膜がそれぞれの端部をずらした姿勢で積層されるものであり、外側の該補強膜の端部の左右で前記積層箇所の厚みが変化している、請求項1または2に記載の燃料電池。
- 前記補強膜は、カソード側とアノード側の双方に配されており、それぞれの補強膜の前記積層箇所の端部が、燃料電池セルの積層方向で相互にずらされている、請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池。
- 前記補強膜は、カソード側とアノード側のいずれか一方にのみ配されている、請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池。
- 前記ガス透過層は、ガス拡散層、金属多孔体からなるガス流路層、該ガス拡散層と該ガス流路層の組み合わせ、のいずれかの形態からなり、
アノード側とカソード側双方のガス透過層が、複数の前記形態中の同一の形態、もしくは異なる形態のいずれかからなる、請求項1〜5のいずれかに記載の燃料電池。
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