JP2010097895A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】触媒層の周縁であって、ガス拡散層と電解質膜の間に保護フィルムを備え、この保護フィルムの端部が触媒層に積層(ラップ)している電極体と、該電極体の周縁に射出成形にてガスケットが形成されてなる燃料電池において、保護フィルムと触媒層と電解質膜の間に生じ得る隙間によって電解質膜等に亀裂が生じ易くなるという課題を効果的に解消することのできる燃料電池を提供する。
【解決手段】電解質膜1が触媒層2,3で被覆されていない周縁の露出領域とガス拡散層5,6の間には、保護フィルム7A,7Bが介在し、かつ、該保護フィルム7A,7Bの端部が触媒層2,3上に積層しており、ガスケット9を成形した際の樹脂が、保護フィルム7A,7B周りのガス透過層(ガス拡散層5,6)の一部に含浸されており、かつ、少なくとも保護フィルム7A,7Bと当接する触媒層2,3の一部と接触している燃料電池である。
【選択図】図1

Description

本発明は、触媒層の周縁であって、ガス拡散層と電解質膜の間に保護フィルムを備え、かつガスケットを電極体の周縁に備えた燃料電池に関するものである。
固体高分子型燃料電池の燃料電池セルは、イオン透過性の電解質膜と、該電解質膜を挟持するアノード側およびカソード側の触媒層とから膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)が形成され、このMEAとこれを挟持するアノード側およびカソード側のガス拡散層(GDL)とから電極体(MEGA:Membrane Electrode & Gas Diffusion Layer Assembly)が形成され、電極体に燃料ガスもしくは酸化剤ガスを提供するとともに電気化学反応によって生じた電気を集電するための多孔体からなるガス流路層とセパレータが電極体の両側に配されて構成されている。なお、セパレータにガス流路溝が形成された燃料電池セルも従来一般のものであり、この形態の場合にはガス流路層となる多孔体は不要である。実際の燃料電池スタックは、所要電力に応じた基数の燃料電池セルが積層され、スタッキングされることによって形成されている。
上記する燃料電池では、アノード電極に燃料ガスとして水素ガス等が提供され、カソード電極には酸化剤ガスとして酸素や空気が提供され、各電極では固有のガス流路層(またはセパレータに形成されたガス流路溝)にて面内方向にガスが流れ、次いでガス拡散層にて拡散されたガスが電極触媒層に導かれて電気化学反応がおこなわれるものである。
上記するガス拡散層の形態として、拡散層基材と集電層(MPL:Micro Porous Layer)とから構成されるものは一般に知られるところである。一般には、触媒層は電解質膜よりも狭小な平面積(小さな平面積)を有しており、電解質膜が触媒層にて被覆されていない触媒層の周縁の露出領域には、ポリマー素材の保護フィルムが配設されており、この保護フィルムが拡散層基材と電解質膜の間に介在した構造が一般的である。保護フィルムを触媒層の周縁領域で拡散層基材と電解質膜の間に介在させることにより、触媒層を有する電解質膜(MEA)とガス拡散層をたとえば100〜130℃程度の高温雰囲気下、1〜3MPa程度の圧縮力で熱圧着する(電解質膜に影響を与えない熱圧着条件)際に、繊維質の拡散層基材の表面から突出する毛羽が電解質膜に突き刺さることを抑止することができる。
また、上記する燃料電池セルにおいては、膜電極接合体に供給される燃料ガスや酸化剤ガス、さらにはセルの昇温を抑止するための冷却水などの流体をシールするためのガスケットが電極体や多孔体の周縁に形成されている。このガスケット成形は一般に射出成形や圧縮成形にておこなわれている。たとえばガス流路となる多孔体を具備する燃料電池セルにおいては、成形型のキャビティ内にアノード側もしくはカソード側の一方の多孔体を収容し、次いで電極体(MEGA)を収容し、次いでアノード側もしくはカソード側の他方の多孔体を収容した姿勢で、電極体および多孔体の周縁のガスケット形成用キャビティに樹脂を注入してガスケット成形がおこなわれている。なお、キャビティ内にアノード側もしくはカソード側いずれか一方のセパレータを最初に収容し、次いで上記する構成部材を収容して射出成形をおこなう方法もある。
上記する保護フィルムとガスケットを備えた従来の燃料電池セルの構造を図2に示している。電極体(MEGA)は、電解質膜aと、カソード側およびアノード側の触媒層b1、b2と、から膜電極接合体c(MEA)が形成され、この膜電極接合体cをカソード側およびアノード側のガス拡散層d(拡散層基材d1と集電層d2とから構成される)が挟持して形成される。触媒層b1、b2は電解質膜aに比して狭小であり、電解質膜aが触媒層b1、b2で被覆されていない露出領域にはカソード側およびアノード側の保護フィルムe1,e2が配され、これらが電解質膜aと拡散層基材d1の間に介在している。また、図示例はガス流路となる多孔体fをカソード側およびアノード側に備えたものであり、電極体と多孔体fの周縁には、射出成形され、その内部に流体流通用のマニホールドMを有するとともにその端部のマニホールドMの周縁に該マニホールドMを囲繞する無端リブg1を具備するガスケットGが形成されている。
図示例のごとく、保護フィルムe1,e2は、その触媒層側端部が触媒層b1、b2にラップ(積層)しているのが一般的である。この保護フィルムe1,e2は、熱圧着時に拡散層基材の毛羽が電解質膜aに突き刺さると、この突き刺さり箇所がガスのクロスリークを助長することとなり、燃料電池のクロスリーク耐久性が低下し、発電性能の低下に直結するという課題を解消するために設けられている。すなわち、電解質膜aが触媒層b1、b2と接触している領域は、該触媒層b1、b2にて電解質膜aが毛羽の突き刺さりから保護されている一方で、上記する電解質膜aの露出領域は保護フィルムe1,e2で毛羽の突き刺さりから保護される。ここで、触媒層b1、b2の端部から毛羽が電解質膜aに通じることを回避するべく、図示するように、保護フィルムe1,e2の端部を触媒層b1、b2にラップさせるようにしている。なお、図2のごとく保護フィルム(補強フィルム)の端部を触媒層にラップさせてなる公開技術として、特許文献1を挙げることができる。
保護フィルムe1,e2の触媒層側端部が触媒層b1、b2とラップすることにより、該保護フィルムe1,e2は電解質膜aからその表面に接着した触媒層b1、b2に跨って延びることから、保護フィルムe1,e2、触媒層b1、b2、電解質膜aの間には自ずと隙間hが生じてしまう。
燃料電池セルの特に電極体の内部では、プロトン伝導の際の随伴水の移動やカソード側電極にて生成された生成水の逆拡散などにより、アノード側とカソード側の間の水分移動がおこなわれているが、上記する隙間hが存在することで、この移動する水分がガス拡散層や触媒層から隙間hへ流れ込んでしまい(図中のX方向)、一時的に水溜りを形成してしまう。ここで、電解質膜aのうち、この水溜りに接する領域a1は、電解質膜aの他の領域に比して含水率が高くなっており、したがって、セル内の温度変化に応じた伸縮の割合が相対的に高くなってしまう。
ところで、燃料電池スタックは複数の燃料電池セルが積層され、スタッキングされて形成されるものであるが、このスタッキング時の圧縮力は各燃料電池セルに伝達され、図示のごとく膜電極接合体cに対してその上下から圧縮力Pとして作用し、セル構成部材間の界面抵抗を極力少なくしながら所望の発電を励起させている。ここで、隙間hの両側に注目すると、この両側では圧縮力Pが作用し合うことで電解質膜aの領域a1はその両側で拘束されている一方で、隙間hが存在するために電解質膜aの領域a1には圧縮力Pは作用しない。
電解質膜aの領域a1は相対的に含水率が高いこと(したがって、伸縮し易いこと)、および、その両端が圧縮力Pで拘束されて該領域a1は無荷重でフリーな領域となっていること、より、たとえば電解質膜aに生じた収縮応力はこのフリーな領域a1に集中し易くなってしまい、この領域a1を起点として電解質膜aに亀裂が生じ易くなるということが本発明者等によって特定されている。
特開2002−216789号公報
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、触媒層の周縁であって、ガス拡散層と電解質膜の間に保護フィルムを備え、この保護フィルムの端部が触媒層に積層(ラップ)している電極体と、該電極体の周縁に射出成形にて形成されたガスケットと、を備えた燃料電池において、保護フィルムと触媒層と電解質膜の間に生じ得る隙間によって電解質膜等に亀裂が生じ易くなるという課題を、効果的に解消することのできる燃料電池を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による燃料電池は、電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス透過層が配され、該膜電極接合体およびガス透過層の周縁に流体シール用のガスケットが形成されて燃料電池セルを成し、該燃料電池セルが積層されてなる燃料電池であって、少なくとも、前記電解質膜が触媒層で被覆されていない周縁の露出領域とガス透過層の間には、保護フィルムが介在し、かつ、該保護フィルムの端部が触媒層上に積層しており、ガスケットを成形した際の樹脂が、保護フィルム周りのガス透過層の一部に含浸されており、かつ、少なくとも保護フィルムと当接する触媒層の一部と接触しているものである。
本発明の燃料電池を構成するセル構造は、膜電極接合体(MEA)のアノード側とカソード側の双方に拡散層基材と集電層からなるガス拡散層を具備する形態、アノード側とカソード側のいずれか一方は集電層のみを具備する(拡散層基材が廃された)形態の双方を含んでいる。また、本明細書では、これらのいずれの形態も電極体(MEGA)と称呼している。また、電極体の両側にガス流路溝が形成されたセパレータが直接配された形態は勿論のこと、いわゆるフラットタイプのセパレータと電極体の間に、ガス流路層(エキスパンドメタル等の金属多孔体)が配された形態を含むものである。さらに、「ガス透過層」とは、ガス拡散層とガス流路層の双方を含む意味である。したがって、ガス流路層を具備しないセル形態においては「ガス透過層」は「ガス拡散層」を意味するものであり、ガス拡散層とガス流路層の双方を具備するセル形態においては「ガス透過層」は「ガス拡散層」と「ガス流路層」の双方もしくはいずれか一方を意味するものである。
本発明の燃料電池は、触媒層の周縁であって、たとえばガス拡散層と電解質膜の間に保護フィルムを備え、この保護フィルムの端部が触媒層に積層(ラップ)している電極体と、該電極体の周縁にガスケットが形成されてなる燃料電池に関し、成形時の樹脂を保護フィルムの周縁のガス拡散層の一部と触媒層の一部に含浸させることにより、保護フィルムと触媒層と電解質膜の間に生じ得る図2で示した隙間をこの樹脂にて閉塞し、もってこの隙間によって電解質膜等に亀裂が生じ易くなるという課題を解消することのできる燃料電池である。
電極体周縁のガスケットの成形方法は、膜電極接合体とアノード側および/またはカソード側のガス拡散層(GDL)とからなる電極体を成形型内に収容して該電極体の周縁にガスケットを成形するものや、エキスパンドメタルや金属発泡焼結体からなるアノード側およびカソード側の多孔体を電極体とともに成形型内に収容してそれらの周縁にガスケットを成形するものなどがある。
たとえば平面視が矩形の電極体において、電解質膜周縁の露出領域とガス拡散層の間に介在する保護フィルムは、この矩形の輪郭を有した無端の枠状を呈していて、ガス拡散層が当接し得る電解質膜の露出領域を完全に包囲している。さらに、使用される保護フィルムはポリマー樹脂素材であり、成形型内に投入される樹脂がその内部に浸透できるものではない。さらに、一般に使用される成形型にてガスケット用の樹脂を注入する場合、成形型内に収容された電極体の外周から、たとえば水平方向に注入樹脂がガスケット用のキャビティに流れ込んできて該キャビティ内に充填される方法などがある。
したがって、この成形において、上記する隙間に注入樹脂を充填するには、該樹脂を保護フィルム周縁のガス拡散層の一部を通過させ、この通過してきた樹脂を該保護フィルムの触媒層側端部から保護フィルムと接触している触媒層に回り込ませ、たとえば保護フィルムと接触している触媒層表面の微視的な凹凸を通過させて上記する隙間に導くこととなる。
本発明の燃料電池は、電解質膜に亀裂を生じさせ得る上記隙間を、ガスケット成形時の樹脂をそのまま該隙間まで導いて閉塞させるだけの極めて簡易な方法で製造できるものであり、この簡易な方法によって隙間を閉塞することにより、水溜りの防止とこれに起因する電解質膜の過度な収縮の抑制、さらには、これに起因する亀裂発生の抑制を図ることができる。
以上の説明から理解できるように、本発明の燃料電池によれば、ガスケット成形時の樹脂が電解質膜とガス拡散層と保護フィルムで画成された隙間を閉塞するため、この隙間があることによって電解質膜に亀裂が生じ易くなる、という課題を効果的に解消することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例は電極体の両側にガス流路となる多孔体が配されたものであり、これは、3層構造のセパレータがさらに配されて燃料電池セルを形成する形態のものであるが、セパレータにガス流路溝が形成されて多孔体が不要な燃料電池セルの場合には、ガスケットの上下端面はカソード側およびアノード側のガス拡散層の端面付近に位置することになる。また、アノード側およびカソード側のいずれか一方からガス拡散層の拡散層基材が廃された形態であってもよい。
図1は、本発明の燃料電池の電極体とガスケットの一部を拡大した縦断面図である。この電極体10は、電解質膜1と、カソード側およびアノード側の触媒層2,3と、から膜電極接合体4が形成され、これをカソード側およびアノード側のガス拡散層5,6が挟持して形成されている。なお、図示例では、電極体10の両側にカソード側およびアノード側のガス流路となる多孔体8A,8Bが配され、この電極体10および多孔体8A,8Bの周縁に樹脂素材のガスケット9が形成されている。
ここで、触媒層2,3は電解質膜1に比してそれらの面積が狭小であり、したがって、電解質膜1の両側の触媒層2,3の周縁には該触媒層2,3が存在しない露出領域が形成される。
この露出領域には、カソード側およびアノード側の保護フィルム7A,7Bが配されており、より具体的には、該保護フィルム7A,7Bの触媒層側端部が触媒層2,3上にラップした姿勢で密着しており、ガス拡散層5,6から突出する毛羽が電解質膜1に突き刺さるのを防護している。
ここで、膜電極接合体4を構成する電解質膜1は、たとえば、スルホン酸基やカルボニル基を持つフッ素系イオン交換膜、置換フェニレンオキサイドやスルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン、スルホン化フェニレンスルファイドなどの非フッ素系のポリマーなどから形成される。
また、触媒層2,3は、触媒が担持された導電性担体(粒子状のカーボン担体など)と、電解質と、分散溶媒(有機溶媒)と、を混合して触媒溶液(触媒インク)を生成し、これを電解質膜1やガス拡散層5,6等の基材に塗工ブレードにて層状に引き伸ばして塗膜を形成し、温風乾燥炉等で乾燥することで触媒層が形成される。ここで、触媒溶液を形成する電解質は、プロトン伝導性ポリマーである、有機系の含フッ素高分子を骨格とするイオン交換樹脂、例えばパーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等のスルホン化プラスチック系電解質、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルケトン、スルホアルキル化ポリエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホアルキル化ポリスルホン、スルホアルキル化ポリスルフィド、スルホアルキル化ポリフェニレンなどのスルホアルキル化プラスチック系電解質などを挙げることができる。なお、市販素材としては、ナフィオン(Nafion)(登録商標、デュポン社製)やフレミオン(Flemion)(登録商標、旭硝子株式会社製)などを挙げることができる。また、分散溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、プロピレンカーボネート、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類、芳香族系あるいはハロゲン系の種々の溶媒を挙げることができ、さらには、これらを単独で、もしくは混合液として使用することができる。さらに、触媒が担持された導電性担体に関し、この導電性担体としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどの炭素材料のほか、炭化ケイ素などに代表される炭素化合物などを挙げることができ、この触媒(金属触媒)としては、たとえば、白金や白金合金、パラジウム、ロジウム、金、銀、オスミウム、イリジウムなどのうちのいずれか一種を使用することができ、好ましくは白金または白金合金を使用するのがよい。さらに、この白金合金としては、たとえば、白金と、アルミニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、バナジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、チタンおよび鉛のうちの少なくとも一種との合金を挙げることができる。
また、ガス拡散層5,6は、拡散層基材51,61と集電層52,62(MPL)からなるものであり、拡散層基材51,61としては、電気抵抗が低く、集電を行えるものであれば特に限定されるものではないが、たとえば、導電性無機物質を主とするものを挙げることができ、この導電性無機物質としては、ポリアクリロニトリルからの焼成体、ピッチからの焼成体、黒鉛及び膨張黒鉛等の炭素材やこれらのナノカーボン材料、ステンレススチール、モリブデン、チタン等を挙げることができる。また、拡散層基材51,61の導電性無機物質の形態は特に限定されるものではなく、たとえば繊維状あるいは粒子状で用いられるが、ガス透過性の点から無機導電性繊維であって、特に炭素繊維が好ましい。無機導電性繊維を用いた拡散層基材51,61としては、織布あるいは不織布いずれの構造のものも使用することができ、カーボンペーパーやカーボンクロスなどを挙げることができる。織布としては、平織、紋織、綴織など、特に限定されるものではなく、不織布としては、抄紙法、ニードルパンチ法、ウォータージェットパンチ法によるものなどが挙げられる。さらに、この炭素繊維としては、フェノール系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などを挙げることができる。さらに、集電層52,62はアノード側、カソード側の触媒層3,2から電子を集める電極の役割を果たすものであり、導電性材料である、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、金、銀、銅及びこれらの化合物または合金、導電性炭素材料などから形成できる。
また、多孔体8A,8Bは、エキスパンドメタルや金属発砲焼結体からなり、この発砲焼結体においては、チタンやステンレス、銅、ニッケル等の耐食性に優れた金属素材が使用されるのがよく、さらには、ステンレス中にクロム炭化物や鉄−クロム炭化物などを分散した発泡体であってもよい。
さらに、保護フィルム7A,7Bは、ポリテトラフルオロエチレン、PVDF(二フッ化ポリビニル)、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、ポリアミドエラストマ、ポリイミド、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマ、シリコーン、シリコンゴム、シリコンベースのエラストマなどから形成されるものである。
ガスケット9は、その端部のマニホールドMの周縁に該マニホールドMを囲繞する無端リブ9aを有するものである。その成形方法の概要は、不図示の成形型内にアノード側の多孔体8B,アノード側のガス拡散層6、膜電極接合体4、カソード側のガス拡散層5、カソード側の多孔体8Aの順に収容して型閉めし、膜電極接合体4の側方のガスケット用キャビティ内に樹脂を注入する(射出成形)等の方法でおこなわれる。ここで、このガスケットの材料としては、耐メタノール性を有するエポキシ系樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタンRTVゴムやブチルゴム系樹脂、シリコーンRTVゴム、EPDM系樹脂等が使用できる。
ガスケット9用の樹脂を成形型内に注入するとともに、これを電極体10や多孔体8A,8Bの一部、すなわち、少なくとも保護フィルム7A,7Bを完全に包囲する範囲に含浸させる。当該範囲に含浸した樹脂は、保護フィルム7A,7Bの触媒層側端部を回り込み(Y方向)、保護フィルム7A,7Bとラップしている触媒層2,3の領域を介して(たとえば保護フィルム7A,7Bと接触している触媒層表面の微視的な凹凸を介して)、図2で示した空隙に到達してこれを閉塞し、図1で示す樹脂含浸部Gが形成される。
図1からも明らかなように、保護フィルム7A,7Bと触媒層2,3と電解質膜1の間に生じ得る隙間が含浸樹脂にて完全に閉塞されるため、この隙間が存在する場合の課題、すなわち、電解質膜等に亀裂が生じ易くなるという課題は効果的に解消される。
実際の燃料電池は、図示する多孔体8A,8Bの両側に3層構造のセパレータが配されて燃料電池セルをなし、所望する発電量に応じて該燃料電池セルが所定段積層されて燃料電池スタックが形成される。さらに、この燃料電池スタックは、最外側にエンドプレート、テンションプレート等を備え、両端のテンションプレート間に圧縮力が加えられて燃料電池が形成される。電気自動車等に車載される燃料電池システムは、この燃料電池と、水素ガスや空気を収容する各種タンク、これらのガスを燃料電池に提供するためのブロア、燃料電池を冷却するためのラジエータ、燃料電池で生成された電力を蓄電するバッテリ、この電力で駆動する駆動モータ等から大略構成されるものである。なお、3層構造のセパレータとは、導電性金属(ステンレスやチタンなど)からなる2枚の金属プレートと、その間に、金属素材で冷却水流路が形成された中間層が介層された形態や、樹脂素材の枠材を中間層とし、2枚の金属プレートの一方のプレートから多数のディンプル、もしくは流路画成用のリブが突出された形態のセパレータのことである。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
本発明の燃料電池の電極体とガスケットの一部を拡大した縦断面図である。 従来の燃料電池の電極体とガスケットの一部を拡大した縦断面図である。
符号の説明
1…電解質膜、2…カソード側の触媒層、3…アノード側の触媒層、4…膜電極接合体(MEA)、5…カソード側のガス拡散層(ガス透過層)、51…拡散層基材、52…集電層、6…アノード側のガス拡散層(ガス透過層)、61…拡散層基材、62…集電層、7A…カソード側の保護フィルム、7B…アノード側の保護フィルム、8A…カソード側の多孔体、8B…アノード側の多孔体、9…ガスケット、10…電極体(MEGA)、G…樹脂含浸部

Claims (4)

  1. 電解質膜と、これよりも狭小な平面積で該電解質膜の両側で当接する触媒層と、から膜電極接合体が形成され、該膜電極接合体の両側にガス透過層が配され、該膜電極接合体およびガス透過層の周縁に流体シール用のガスケットが形成されて燃料電池セルを成し、該燃料電池セルが積層されてなる燃料電池であって、
    少なくとも、前記電解質膜が触媒層で被覆されていない周縁の露出領域とガス透過層の間には、保護フィルムが介在し、かつ、該保護フィルムの端部が触媒層上に積層しており、
    ガスケットを成形した際の樹脂が、保護フィルム周りのガス透過層の一部に含浸されており、かつ、少なくとも保護フィルムと当接する触媒層の一部と接触している、燃料電池。
  2. 前記ガスケットを成形した際の樹脂が、保護フィルムと触媒層と電解質膜とで画成された空隙を閉塞している、請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記ガス透過層がガス拡散層である、請求項1または2に記載の燃料電池。
  4. 前記ガス透過層は、ガス拡散層、金属多孔体からなるガス流路層、該ガス拡散層と該ガス流路層の組み合わせ、のいずれかの形態からなり、
    アノード側とカソード側双方のガス透過層が、複数の前記形態中の同一の形態、もしくは異なる形態のいずれかからなる、請求項1または2に記載の燃料電池。
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JP2018032629A (ja) * 2017-08-31 2018-03-01 株式会社フジクラ 燃料電池の膜電極接合体
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