JP4438327B2 - 固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびガス拡散層用部材の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびガス拡散層用部材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、固体高分子電解質の利用により、携帯可能な小型の固体高分子型燃料電池の開発が進められている。通常、固体高分子型燃料電池では、一対の電極(単セル)による起電力が小さいので、複数の単セルを直列に接続することにより大きな起電力を得ている。
【0003】
ところで、複数の単セルを順次接続するために、単セルを積み重ねた構成(いわゆるスタック型)を採用すると、積み重ねた各単セル間にセパレータ板を配置しなければならず、また、積み重ねた狭い流路に燃料であるメタノール水溶液や空気を送る必要が生じ、ポンプなどの補機が必要となる。そのため、体積、重量、コスト等の点で不利となる。そこで、省スペース化を図るために、セパレータ板を用いずに単セルを平面に並べて接続する、いわゆる平面型の開発が進められている。
【0004】
平面型燃料電池としては、たとえば、燃料極と空気極との間に電解質層を挟んだ単セルを構成し、各単セルの燃料極および空気極の電解質層とは反対側の面に、貫通孔を有する接続板を配置して、隣り合う単セルの燃料極と空気極とを接続板で順次接続する構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−56855号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、まずガスシール部、燃料極および空気極を一体化した単セルを複数形成しておき、その単セルを平面上に間隔をおいて並べ、隣り合う単セルの一方の下面と他方の上面とに接続するZ字状の接続板を順次配置し、さらに接続板間の隙間にシール剤を充填するという多くの工程を行わなければならず、組み立てる部材も多いため、製造が容易ではない。
【0007】
また、燃料電池のより一層の小型化が図られた場合、何層もの構造を有する単セル間の微小な隙間に確実にシール剤を充填するのは困難であり、シール剤の充填不足によるセル間の絶縁不良や液体燃料の漏れ等の問題が生じるおそれもある。
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたもので、構成が単純で小型化が可能であり、さらに製造が容易かつ効率のよい電力供給が可能な燃料電池を実現することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係るガス拡散層用部材は、三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体からなり一方の面が、電解質層に臨む電極面とされたガス拡散電極と、該ガス拡散電極の周囲を被覆する樹脂部とを備え、固体高分子型燃料電池に用いられるガス拡散層用部材であって、前記ガス拡散電極の側面の一つが前記ガス拡散電極と前記ガス拡散層用部材外部とを連通させる連通面とされており、前記樹脂部が、前記ガス拡散電極のうち、前記電極面に対向する背面と、前記連通面を除く側面と、を被覆していることを特徴としている。すなわち、本発明のガス拡散層用部材は、ガス拡散電極の電極面と、ガス拡散電極とガス拡散層用部材の外部とを連通させる連通面とを除くガス拡散電極の表面を、樹脂部が被覆している構成を有している。
【0010】
また、請求項2の発明に係るガス拡散層用部材は、三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体からなり一方の面が、電解質層に臨む電極面とされたガス拡散電極と、該ガス拡散電極の周囲を被覆する樹脂部とを備え、固体高分子型燃料電池に用いられるガス拡散層用部材であって、前記樹脂部には、前記ガス拡散電極の側面の一つと前記ガス拡散層用部材外部とを連通させる連通路が形成されており、前記樹脂部は、前記ガス拡散電極の前記電極面に対向する背面と、前記連通路部分を除いた側面とを被覆していることを特徴としている。
さらに、請求項3の発明に係るガス拡散層用部材は、前記導電性多孔質体が発泡金属焼結シートであることを特徴としている。
【0011】
これらの発明によれば、ガス拡散電極がいわゆるガス拡散層および集電板を兼ねるので構成が単純であり、燃料電池の小型化を可能にすることができる。また、樹脂部によってガス拡散電極が補強されているので、取り扱い性が良好であり、燃料電池の生産性を向上させることができる。さらに、ガス拡散電極の周囲を被覆する樹脂部が一体に設けられることにより、多数の部材を気密に組み立てる手間が省けるので、燃料電池の生産性をより向上させることができる。
【0012】
さらに、ガス拡散電極に樹脂部によって被覆しない連通面を設けることにより、効率よくガス拡散電極内部へ燃料を供給し、また電極反応により生成した生成物をガス拡散電極外部へ排出させることができる。また、連通面を開放させる代わりに樹脂部を貫通させて連通路を形成することにより、樹脂部に被覆されているガス拡散電極の側面の面積が大きくなるので、より強度が高く、取り扱い性のよいガス拡散層用部材を実現することができる。
【0013】
請求項4の発明に係る製造方法は、導電性多孔質体をインサート部品として射出成形することにより、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス拡散層用部材を製造することを特徴としている。
【0014】
この発明によれば、樹脂部とガス拡散層とが接続される部分において、導電性多孔質体の表面に開放している気孔中に溶融樹脂が入り込んで固化するので、アンカー効果によりガス拡散電極と樹脂部とが強固に接続され、強度が高いガス拡散層用部材を提供することができる。
【0015】
なお、固体高分子型燃料電池に用いられる代表的な燃料としては水素ガスとメタノール水溶液の2種類があり、メタノール水溶液を用いる場合には導電性多孔質体を流れる燃料は液体であるが、この部分は慣用的にガス拡散層と呼ばれている。ここでは、液体燃料を用いる場合も含めて、慣用に従いガス拡散層と呼んでいるのであって、気体燃料用に限定するものではない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
図1に、本発明の第1の実施形態に係るガス拡散層用部材10を示す。このガス拡散層用部材10は、面方向に間隔をおいて複数枚(本実施形態では4枚)並んで配置されたガス拡散電極11と、このガス拡散電極11の周囲を被覆する樹脂部12と、ガス拡散電極11に接続された接続用の端子部13とを備えている。
【0017】
ガス拡散電極11は、三次元網目構造を有する導電性多孔質材から形成され、その一方の面が電極面11aとされている。なお本実施形態では、導電性多孔質材として、気孔率や厚さを適宜調節でき、使用できる原料金属も多様である発泡金属焼結シートを採用している。そして、このガス拡散電極11の周囲は、電極面11aと、ガス拡散電極11とガス拡散層用部材10外部とを連通させる連通面11bとを除く面、すなわち電極面11aの背面11cと、連通面11bを除く側面11d,11e,11fが樹脂部12によって被覆されている。
なお、発泡金属焼結シートは、金属粉末をバインダ、溶媒を加えて混練したものに発泡剤を混ぜて発泡性スラリーとし、発泡成形後に焼結して得られるものである。
【0018】
樹脂部12は、導電性および通気性のない樹脂(本実施形態では熱可塑性樹脂)からなり、ガス拡散電極11および端子部13をインサート部品としてインサート成形を行うことにより、これらガス拡散電極11および端子部13と一体に形成されている。
【0019】
端子部13は、導電性を有し通気性のない薄板状の金属部材であり、ガス拡散電極11の背面11cに、スポット溶接により接合されている。
【0020】
図2に、このガス拡散層用部材10を適用した固体高分子型燃料電池の要部を示す。この燃料電池では、燃料極Aと空気極Bとが、電解質層20を挟んで配置されている。
電解質層20は、たとえばフッ素樹脂系の高分子電解膜で形成され、膜中では水素イオンが移動可能である反面、電子を通過させないという性質を有している。
【0021】
燃料極Aは、本実施形態のガス拡散層用部材10で形成されており、樹脂部12によって被覆されていない連通面11bに、燃料の保持および供給用の燃料供給部40が接続されている。また、ガス拡散層用部材10は、電極面11aを電解質層20に臨ませて配置されており、この電極面11aには触媒層Cが形成されている。触媒層Cは、白金系触媒微粒子を担持させたカーボン粒子を含む高分子電解質溶液を塗布することにより形成される。
【0022】
空気極Bは、平板状のガス拡散層用部材30で形成されている。ガス拡散層用部材30は、燃料極Aのガス拡散電極11と同じく金属粉末を焼結したシートからなりガス拡散電極11にそれぞれ対向して配置された4枚のガス拡散電極31と、燃料極Aの樹脂部12と同様の材料からなりガス拡散電極31の周囲を囲んで面方向に延びる樹脂部32と、燃料極Aの端子13と同様に各ガス拡散電極31に接続された端子33とを備えている。このガス拡散層用部材30も、ガス拡散層用部材10と同様に、ガス拡散電極31の電解質層20に臨む面(電極面31a)に触媒層Cが形成されており、その背面31bに端子33が溶接されている。
【0023】
端子13,33は、各ガス拡散電極11,31を電気的に接続する接続用の端子であるとともに、直列に接続された両端では燃料電池の正極あるいは負極となる端子であり、本実施形態では金属製薄板で形成され、ガス拡散電極11,31に対してスポット溶接、抵抗溶接、超音波接合等により固定されている。
【0024】
燃料供給部40は、燃料(ここではメタノール水溶液)を保持し、燃料極Aのガス拡散電極11に供給するフェルトなどからなる多孔質部41が、樹脂枠42によって被覆された構造となっている。そして、燃料供給部40の多孔質部41を燃料極Aのガス拡散電極11の連通面11bに接触して配置させることにより、多孔質部41に保持された燃料を、浸透圧によってガス拡散電極11に供給させることができる。燃料供給部40の樹脂枠42とガス拡散層用部材10,30の樹脂部12,32とは、たとえば超音波接合により固定されている。
【0025】
つまり、燃料極Aおよび空気極Bのガス拡散電極11,31は、この固体高分子型燃料電池において、3次元網目構造による通気性および導電性を備えることにより、いわゆるガス拡散層と集電板とを兼ねる部材である。
【0026】
なお、触媒層Cは、ここではガス拡散電極11,31の表面に塗布形成したが、ガス拡散電極11,31と電解質層20との界面に設けられていればよいので、電解質層20の表面に形成することもできる。
【0027】
以上のように構成された燃料電池は、燃料供給部40からガス拡散電極11(燃料極A)に供給された燃料中の水素が、触媒層C上で電極反応によりイオン化して電解質層20をガス拡散電極31(空気極B)に向かい移動する。そして、電解質層20を挟んで他方側に配置されたガス拡散電極31(空気極B)に到達した水素は、電解質層20と触媒層Cとの界面で、ガス拡散電極31の背面31bから供給された空気中の酸素と電極反応により反応して水を生成する。
【0028】
一方で、水素のイオン化により発生した電子は、ガス拡散層部材10の外部に設けられた回路(図示せず)を、燃料極A(ガス拡散電極11)から端子13および端子33を介して空気極B(ガス拡散電極31)へと移動する。この電子の移動により、電気エネルギを発生させることができる。
【0029】
ここで、ガス拡散電極11,31に好適な発泡金属焼結シートの製造方法について説明する。この発泡金属焼結シートは、たとえば、金属粉末を含むスラリーSを薄く成形して乾燥させたグリーンシートGを焼成することにより製造される。
【0030】
スラリーSは、導電性を有する金属粉末、発泡剤(ヘキサン)、有機バインダ(メチルセルロース)、溶媒(水)等を混合したものである。このスラリーSをドクターブレード法により薄く成形するグリーンシート製造装置50を図3に示す。
【0031】
グリーンシート製造装置50において、まず、スラリーSが貯蔵されたホッパー51から、キャリアシート52上にスラリーSが供給される。キャリアシート52はローラ53によって搬送されており、キャリアシート52上のスラリーSは、移動するキャリアシート52とドクターブレード54との間で延ばされ、所要の厚さに成形される。
【0032】
成形されたスラリーSは、さらにキャリアシート52によって搬送され、加熱処理を行う発泡槽55および加熱炉56を順次通過する。発泡槽55では高湿度雰囲気下にて加熱処理を行うので、スラリーSにひび割れを生じさせずに発泡剤を発泡させることができる。そして、発泡により空洞が形成されたスラリーSが加熱炉56にて乾燥されると、粒子間に空洞を形成している金属粉末が有機バインダによって接合された状態のグリーンシートGが形成される。
【0033】
このグリーンシートGを、キャリアシート52から取り外した後、図示しない真空炉にて脱脂・焼成することにより、有機バインダが取り除かれ、金属粉末同士が焼結して三次元網目構造となった発泡金属焼結シート(ガス拡散電極11,31)が得られる。
【0034】
なお、ガス拡散電極11,31をなすシート状の導電性多孔質体としては、カーボンペーパー、カーボンクロスといったカーボン製多孔体を用いてもよいが、ガス拡散性と導電性がともに良好な、3次元網目構造を有する金属製のもの、たとえば金属粉末を焼結したシート、金属不織布、積層メッシュ等を用いることが望ましい。なかでも、気孔率や厚さを適宜調節でき、使用できる原料金属も多様である金属粉末を焼結したシートは、このガス拡散層用部材の導電性多孔質体として、より好適である。さらにまた、金属粉末をバインダ、溶媒を加えて混練したものに発泡剤を混ぜて発泡性スラリーとし、発泡成形後に焼結して得られる発泡金属焼結シートでは、高い気孔率までも製造可能であることから、より好ましい。
【0035】
また、樹脂部12,32は、ガス拡散電極11,31の周囲をシールするとともに、各ガス拡散電極11,31間を絶縁して一体に固定している。したがって、樹脂部12,32の材質としては、上記実施形態の熱可塑性樹脂の他、エラストマー(ゴムを含む)など、射出成形可能な材質で、かつ導電性および通気性を有していなければよいので、耐熱温度や硬度等を考慮し、適宜選択すればよい。たとえば軟質な樹脂を用いれば、シール性を高めることができる。
【0036】
また、電極反応による電子が各ガス拡散層11,31および端子13,33を流れるので、これらガス拡散層11,31および端子13,33は導電性に優れた材質で形成されている。腐食が問題となる場合には、これらの部材(ガス拡散層11,31および端子13,33)にステンレス鋼などの耐食材料を用いることが好ましい。
【0037】
次に、本発明の一実施形態に係るガス拡散層用部材の製造方法について説明する。この方法は、導電性多孔質体をインサート部品としてインサート成形するものであり、ここでは、1つのガス拡散層用部材について、4つの導電性多孔質体をインサートするものとする。
【0038】
まず、予め端子13が溶接された4つの導電性多孔質体(ガス拡散電極)11を、互いに面方向に間隔を空けて、図4に示す射出成形用金型60の一対の型板61,62間に形成されたキャビティ63内に配置しておく。
キャビティ63内では、キャビティ63内に突出するピン部材64によって各導電性多孔質体11を固定するとともに、各型板61,62によって各導電性多孔質体11を挟持させ、射出される樹脂の圧力によってキャビティ内63で導電性多孔質体11が移動しないように固定する。
【0039】
そして、型閉したキャビティ内63に、ランナ65からゲート66を通じて射出した溶融樹脂67を充填することにより、各導電性多孔質体11の背面11cおよび側面11d,11e,11fに樹脂部12が一体に形成される。
このとき、導電性多孔質体11の一方の面11aには型板61が接しているので、この面は樹脂に被覆されずに樹脂部12から露出し、電極面11aとなる。また、同じく導電性多孔質体11の側面11bには型板62が接しているので、この面も樹脂に被覆されずに樹脂部12から露出し、連通面11bとなる。
【0040】
なお、樹脂の種類に応じて、射出圧力や成形温度などの射出成形条件を選定する。たとえば、射出圧力が高すぎると、導電性多孔質体中に樹脂が過剰に充填されてしまい、通気性を損なうなど、多孔質体の機能を発揮できなくなる。また、熱可塑性樹脂を用いる場合は導電性多孔質体に接する金型表面を部分的に冷却したり、シリコーンゴムのような熱硬化性樹脂を用いる場合は金型表面を部分的に加熱するなどして、多孔質体への樹脂の浸透を制御することができる。
【0041】
また、導電性多孔質体11の背面11cおよび側面11d,11e,11fに開口する気孔中、5μm〜1000μm程度の深さまで溶融樹脂が入り込んで硬化することにより、導電性多孔質体11と樹脂部12とは強固に接合される。
【0042】
なお、このような構造の成形金型では、ピン部材64が背面11cに当接した状態で射出成形が行われるので、背面11cにガス拡散電極11と外部とを連通させる貫通孔が形成されることになる。この貫通孔を、電極反応により生成した二酸化炭素の排出に用いることもできるが、この部分でのガス拡散電極11と外部との連通を避けたい場合には、通気性のない箔などで背面11cを覆って射出成形すればよい。
【0043】
ここで、成形された樹脂部12の外面(側面)に対して、端子13は、その先端が一致している必要はなく、突出していても構わない。また、端子13の先端まで溶融樹脂が回り込んだために樹脂部12の外面に先端が露出していない場合、樹脂部12を研削するなどすれば、端子13先端を露出させることができる。
【0044】
なお、導電性多孔質体11の気孔径や気孔率が小さすぎると溶融樹脂が気孔中に入り込めないので、ガスシール効果およびアンカー効果が不十分となる虞がある。一方、気孔径や気孔率が大きすぎると、強度が不足して樹脂成形圧および樹脂硬化時の圧縮に耐えられず、変形の虞がある。したがって、導電性多孔質体11は、気孔径10μm〜2mm程度、気孔率40〜98%程度であるとより好ましい。
【0045】
また、樹脂枠の材質は、熱可塑性樹脂、エラストマー(ゴムを含む)など、射出成形可能な材質で、かつ導電性および通気性を有していなければよいので、耐熱温度や硬度等を考慮し、適宜選択すればよい。たとえば軟質な樹脂を用いれば、導電性多孔質体の側部のシール性を高めることができる。
【0046】
なお、樹脂部12および端子13をいわゆる二色成形により成形することもできる。つまり、導電性樹脂を射出成形して端子13を形成し、非導電性樹脂を射出成形して樹脂部12を形成すればよい。
【0047】
なお、以上の実施形態において示した各構成部材、その諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求に基づき種々変更可能である。
たとえば、本発明のガス拡散層用部材は、図5に示すような構成であってもよい。このガス拡散層用部材70は、ガス拡散電極71と、このガス拡散電極71の周囲を被覆する樹脂部72と、ガス拡散電極71に接続された接続用の端子部73とを備えている。
【0048】
ガス拡散電極71は、三次元網目構造を有する導電性多孔質材から形成され、その一方の面が電極面71aとされている。なお本実施形態でも、導電性多孔質材として、気孔率や厚さを適宜調節でき、使用できる原料金属も多様である発泡金属焼結シートを採用している。そして、このガス拡散電極71の周囲は、電極面71aを除く面、すなわち電極面71aの背面71cと、側面71b,71d,71e,71fが樹脂部72によって被覆されている。
【0049】
この樹脂部72のうち、側面71bを覆う部分には、樹脂部72を貫通してガス拡散電極71とガス拡散層用部材70の外部とを連通させる連通路74が形成されている。連通路74は、本実施形態では樹脂部72の表面に形成した溝形状により形成したが、ガス拡散電極71の側面71bと樹脂部72の外部とを連通させることができればよく、ピン穴のような形状などでもよい。
【0050】
このガス拡散層用部材70によって燃料極が構成された燃料電池では、連通路74を通じて、燃料供給部からガス拡散電極71へ燃料を供給したり、電極反応による生成物をガス拡散電極71から排出させたりすることができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のガス拡散層用部材は、構成が単純で取り扱い性が良好であり、さらに多数の部材を一体としているので、燃料電池の小型化および生産性の向上を実現することができる。
【0052】
また、本発明の製造方法によれば、ガス拡散電極と樹脂部とが強固に接続されるので、強度が高く、携帯機器の燃料電池にも好適なガス拡散層用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るガス拡散層用部材を示す斜視図である。
【図2】 図1に示すガス拡散層用部材を用いた固体高分子型燃料電池の要部を示す断面図である。
【図3】 本発明のガス拡散層用部材のガス拡散電極に好適な導電性多孔質体の製造に用いるグリーンシート製造装置を示す模式図である。
【図4】 図1に示すガス拡散層用部材を製造するインサート成形における射出成形金型を示す断面図である。
【図5】 本発明の他の実施形態に係るガス拡散層用部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
10,70 ガス拡散層用部材
11,71 ガス拡散電極
11a,71a 電極面
11b 連通面
11c,71c 背面
11d,11e,11f、71b,71d,71e,71f 側面
12,72 樹脂部
13,73 端子部
31 ガス拡散電極
74 連通路
Claims (4)
- 三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体からなり一方の面が、電解質層に臨む電極面とされたガス拡散電極と、該ガス拡散電極の周囲を被覆する樹脂部とを備え、固体高分子型燃料電池に用いられるガス拡散層用部材であって、
前記ガス拡散電極の側面の一つが前記ガス拡散電極と前記ガス拡散層用部材外部とを連通させる連通面とされており、
前記樹脂部が、前記ガス拡散電極のうち、前記電極面に対向する背面と、前記連通面を除く側面と、を被覆していることを特徴とする固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材。 - 三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体からなり一方の面が、電解質層に臨む電極面とされたガス拡散電極と、該ガス拡散電極の周囲を被覆する樹脂部とを備え、固体高分子型燃料電池に用いられるガス拡散層用部材であって、
前記樹脂部には、前記ガス拡散電極の側面の一つと前記ガス拡散層用部材外部とを連通させる連通路が形成されており、
前記樹脂部は、前記ガス拡散電極の前記電極面に対向する背面と、前記連通路部分を除いた側面とを被覆していることを特徴とする固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材。 - 前記導電性多孔質体が発泡金属焼結シートであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス拡散層用部材。
- 前記導電性多孔質体をインサート部品として、インサート成形により前記樹脂部を形成し、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス拡散層用部材を製造することを特徴とする固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材の製造方法。
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