JP2005190745A - 固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびその製造方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 導電性多孔質体を有する燃料電池の組立て工数を低減できるとともに、組立て精度の向上を図ることができる固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】 固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材10であって、導電性多孔質体14の表面に当該面方向に延びる二次元網目構造を有する集電体15が配設され、少なくとも導電性多孔質体14の外周縁に、面方向に延びる樹脂部12が全周にわたって一体に形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびその製造方法に関するものである。
近年、固体高分子電解質の利用により、携帯可能な小型の固体高分子型燃料電池の開発が進められている。通常、固体高分子型燃料電池では、一対の電極(単セル)による起電力が小さいので、複数の単セルを直列に接続することにより大きな起電力を得ている。この単セルは一般に、導電性の多孔質体を有する構成とされている。
ところで、複数の単セルを順次接続するために、単セルを積み重ねた構成(いわゆるスタック型)を採用すると、積み重ねた各単セル間にセパレータ板を配置しなければならず、また、積み重ねた狭い流路に燃料であるメタノール水溶液や空気を送る必要が生じ、ポンプなどの補機が必要となる。そのため、体積、重量、コスト等の点で不利となる。そこで、省スペース化を図るために、セパレータ板を用いずに単セルを平面に並べて接続する、いわゆる平面型の開発が進められている。
平面型燃料電池としては、たとえば、燃料極と空気極との間に電解質層を挟んだ単セルを構成し、各単セルの燃料極および空気極の電解質層とは反対側の面に、燃料供給用若しくは空気供給用の貫通孔を有する導電性の接続板を配置して、隣り合う単セルの燃料極と空気極とを接続板で順次電気的に接続する構成が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
そして、このような平面型燃料電池を組立てる方法として、燃料マニホールドの上に、各ガスシール部とともに一体化された各単セルと各接続板とを配置した後に、隣接する接続板間の隙間にシール剤を充填することにより一体化された単セルの直列接続体を乗せ、さらにその上に電気絶縁板を乗せ、各部材を貫通するねじ穴に締め付けねじを通して所定の圧力で締め付けることにより行う方法が開示されている。
特開2002−56855号公報
しかしながら、前記従来では、燃料マニホールドの上に、各単セル等を配置した後に、隣接する接続板間の隙間にシール剤を充填するので、この電池の組立て工数がかかるとともに、シール剤の硬化収縮挙動により、各単セル等が位置ずれし、高精度に燃料電池を組立てることが困難であるという問題があった。特に、単セルを構成する導電性多孔質体は強度が低いので、取り扱いが難しく、前記組立て工数の増大を増長するという問題があった。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたもので、導電性多孔質体を有する燃料電池の組立て工数を低減できるとともに、組立て精度の向上を図ることができる固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体と、該導電性多孔質体の表面に配設された集電体とを備え、該集電体は面方向に延びる二次元網目構造を有し、少なくとも前記導電性多孔質体の外周縁に、面方向に延びる樹脂部が全周にわたって一体に形成されてなることを特徴とする。
なお、樹脂部を構成する樹脂は、いわゆる合成樹脂に限らずエラストマーなどのゴム材なども含むものとする。また、集電体は、導電性多孔質体より面内抵抗、すなわち表面上の所定位置における2点間の電気抵抗値が小さい特性を有する。さらに、集電体の二次元網目構造は、この面方向に延びる構成であれば、必ずしもこの方向に平行でなくてもよい。この集電体としては、エキスパンドメタル,金網,若しくはパンチングメタル等の穴明き平板状構造がある。
この発明では、少なくとも導電性多孔質体の外周縁に樹脂部が一体に形成されているので、このガス拡散層用部材の取り扱い性の向上を図ることができ、このガス拡散層用部材を用いて固体高分子型燃料電池を組立てる際の組立て工数の低減を図ることができるとともに、組立て精度の向上を図ることができる。
また、樹脂部が、少なくとも導電性多孔質体の外周縁に全周にわたって配設されているので、たとえば、樹脂部にのみ加工を施し、装置固定用の穴等の形状を容易に付与することも可能になる。
さらに、集電体が面方向に延びる二次元網目構造を有するので、固体高分子型燃料電池で発生した電流を、集電体によりこの面方向に良好に伝導させることが可能になる。
さらにまた、樹脂部を導電性多孔質体の外周縁のみならず、集電体の外周縁にも一体に形成した構成では、これらの導電性多孔質体と集電体とを互いが対向する表面同士で略一様に接続させることが可能になる。したがって、導電性多孔質体と集電体との間の電気抵抗を最小限に抑制することができる。
請求項2の発明は、三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体と、該導電性多孔質体の表面に配設された集電体とを備える固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材の製造方法であって、前記導電性多孔質体の表面に前記集電体を配置してなる当該導電性多孔質体および集電体をインサート部品として、金型面上に配置した前記インサート部品をこれらの金型面によってこの厚さ方向に圧縮して固定するとともに、キャビティを形成する型締め工程と、該型締め工程の後に、前記キャビティに溶融樹脂を射出し、前記導電性多孔質体および前記集電体の外周縁に、面方向に延びる樹脂部を全周にわたって一体に形成することを特徴とする。
この発明によれば、導電性多孔質体と集電体と樹脂部とが一体に形成されてなる固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材を良好に形成することができる。特に、型締め工程で、金型面により前記インサート部品をこの厚さ方向に圧縮して固定した後に、この状態で、キャビティ内に溶融樹脂を射出するので、金型面と前記インサート部品とを密接させることが可能になる。したがって、金型面と導電性多孔質体および集電体との間に溶融樹脂が入り込むことを抑制することができるとともに、溶融樹脂のキャビティ内での射出圧によりこのインサート部品が位置ずれすることを抑制することが可能になる。これにより、このガス拡散層用部材を高精度にかつ確実に形成することができる。
また、導電性多孔質体と樹脂部とが接続される部分において、導電性多孔質体の側部に開口する気孔中に溶融樹脂が入り込んで固化するので、アンカー効果により前記多孔質体と樹脂部とが強固に接続される。したがって、樹脂部が前記多孔質体の外周縁のみならず集電体の外周縁にも一体に形成されると、導電性多孔質体と集電体と樹脂部とからなるガス拡散層用部材の各部材の接続の高強度化および長寿命化を図ることができる。
本発明に係る固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびその製造方法によれば、導電性多孔質体を有する燃料電池の組立て工数を低減できるとともに、この組立て精度の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
まず、本発明の固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材10の一実施形態について図1に従い説明する。
ところで、固体高分子型燃料電池に用いられる代表的な燃料としては水素ガスとメタノール水溶液の2種類があり、メタノール水溶液を用いる場合には導電性多孔質体を流れる燃料は液体であるが、この部分は慣用的にガス拡散層と呼ばれている。ここでは、液体燃料を用いる場合も含めて、慣用に従いガス拡散層と呼んでいるのであって、気体燃料用に限定するものではない。
このガス拡散層用部材10は、面方向に間隔をおいて複数枚(本実施形態では4枚)並んで配置されたガス拡散電極11と、このガス拡散電極11の外周縁を被覆する樹脂部12と、ガス拡散電極11に接続された接続用の端子部13とを備える概略構成とされている。
ガス拡散電極11は、三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体(以下、単に「多孔質体」という)14と、この多孔質体14の一方の表面に配設され、当該面方向に延びる二次元網目構造を有する集電体15とを備えている。そして、本実施形態では、多孔質体14の表面のうち、集電体15が配設された表面と反対側の表面が、電極面11aとされている。以下、説明の便宜のため、ガス拡散層用部材10の表面のうち、電極面11aが位置する表面をガス拡散層用部材10の電極面10aという。なお、ガス拡散電極11の表面のうち、集電体15が配設された側の表面を電極面11aとしてもよい。
多孔質体14は、気孔率や厚さを適宜調節でき、使用できる原料金属も多様である発泡金属焼結シートにより形成されている。この発泡金属焼結シートは、後述するように、金属粉末をバインダ、溶媒を加えて混練したものに発泡剤を混ぜて発泡性スラリーとし、発泡成形後に焼結して得られるものである。
集電体15は、図1および図2に示すように、エキスパンドメタル若しくは金網により形成され、両者ともに材質はSUS316Lとされている。
エキスパンドメタルの場合、図2においてLW値が約3.0mm、SW値が1.0mm、W値が0.6mm,厚さが0.2mmとされ、また、金網の場合、線径が0.05mmで50メッシュ〜300メッシュとされている。
樹脂部12は、導電性および通気性のない樹脂(本実施形態では熱可塑性樹脂)により形成され、各ガス拡散電極11,すなわち多孔質体14および集電体15の外周縁に、この面方向に延びて一体に形成されており、これら14,15の外周縁全体が樹脂部12によって被覆され、各ガス拡散電極11間が絶縁されるようになっている。さらに、この樹脂部12により、多孔質体14と集電体15とが、互いに対向する表面同士が一様に接続された構成となっている。
端子部13は、導電性を有し通気性のない薄板状の金属部材であり、集電体15の側面15aにスポット溶接により接合されている。
なお、本実施形態では、前述したように、多孔質体14として、発泡金属焼結シートを採用したが、これに代えて、金属不職布、またはカーボンペーパー、カーボンクロスといったカーボン製多孔体を用いてもよい。ただし、固体高分子型燃料電池に供される多孔質体14は、良好なガス拡散性および導電性が要求されるため、発泡金属焼結シート,金属不職布,および積層メッシュ等が好ましい。なかでも発泡金属焼結シートは、前述したように、気孔率や厚さを適宜調節でき、使用できる原料金属も多様であり、さらに高い気孔率までも製造可能であるため、より好ましい。
また、集電体15として、エキスパンドメタル若しくは金網を示したが、これに限らず、例えばパンチングメタル等であってもよい。すなわち、面方向および厚さ方向に導電性を有し、特に面方向の導電性が多孔質体14より良好で(電気抵抗が小さい)、かつ厚さ方向に通気性を有する構成、つまり面方向に延びる二次元網目構造を有する導電体であればよい。
さらに、ガス拡散層用部材10が固体高分子型燃料電池に用いられる場合、端子部13,多孔質体14,集電体15には、電極反応による電子が流れることになるので、これらの各部材13〜15は、ステンレス鋼等の耐食材料を用いることが好ましい。
図3に、このガス拡散層用部材10を適用した固体高分子型燃料電池20の要部断面図を示す。
この燃料電池20は、一対のガス拡散層用部材10,10と、これら一対のガス拡散層用部材10,10の電極面10a,10aに挟まれた電解質層30と、燃料極Aとしての一方のガス拡散層用部材10に燃料を供給する燃料供給部40とを備える概略構成とされている。電解質層30は、例えばフッ素樹脂系の高分子電解質膜で形成され、膜中では水素イオンが移動可能である反面、電子を通過させないという性質を有している。なお、一対のガス拡散層用部材10,10のうち他方は空気極Bとされている。
燃料極Aは、各ガス拡散電極11の電極面11aが触媒層Cを介して電解質層30に接続されるとともに、この電極面11aと反対側の表面が燃料を保持および供給する燃料供給部40に接続された構成となっている。触媒層Cは、ガス拡散電極11の電極面11aの表面に、白金系触媒微粒子を担持させたカーボン粒子を含む高分子電解質溶液を塗布することにより形成される。
燃料極Aおよび空気極Bにそれぞれ4つ連設された各ガス拡散電極11は、これらの電極11に各別に設けられた端子部13によって、ガス拡散電極11の連設方向に直列に接続されるように、電解質層30を挟んでこの連設方向の隣に位置するガス拡散電極11の端子部13に、配線16を介して接続されている。そして、前記直列の両端に位置する端子部13がこの燃料電池20の陽極21,陰極22として機能するようになっている。
燃料供給部40は、燃料(ここではメタノール水溶液)を保持し、燃料極Aのガス拡散電極11に供給するフェルトなどからなる多孔質部41が、樹脂枠42によって被覆された構造となっている。そして、燃料供給部40の多孔質部41を燃料極Aのガス拡散電極11の集電体15に接触して配置させることにより、多孔質部41に保持された燃料を、浸透圧によってガス拡散電極11に供給させることができる。燃料供給部40の樹脂枠42とガス拡散層用部材10の樹脂部12とは、たとえば超音波接合により固定されている。
つまり、燃料極Aおよび空気極Bのガス拡散電極11は、この固体高分子型燃料電池20において、三次元網目構造を有する多孔質体14が通気性および導電性を備え、また、二次元網目構造を有する集電体15も通気性および導電性、特に面方向における導電性を備えることにより、いわゆるガス拡散層と集電板とを兼ねるようになっている。
なお、触媒層Cは、ここではガス拡散電極11の電極面11aに塗布形成したが、ガス拡散電極11と電解質層30との界面に設けられていればよいので、電解質層30の表面に形成してもよい。
以上のように構成された燃料電池20は、燃料供給部40から燃料極A側のガス拡散電極11に供給された燃料中の水素が、触媒層C上で電極反応によりイオン化して電解質層30を空気極Bに向かい移動する。そして、電解質層30を挟んで他方側に配置された空気極Bに到達した水素イオンは、電解質層30と触媒層Cとの界面で、このガス拡散電極11の電極面11aと反対側の表面から供給された空気中の酸素と電極反応により反応して水を生成する。
一方で、水素のイオン化により発生した電子は、ガス拡散層用部材10の外部に設けられた回路(図示せず)を、燃料極Aから端子部13を介して空気極Bへと移動する。この電子の移動により、電気エネルギを発生させることができる。
ここで、ガス拡散電極11に好適な発泡金属焼結シートの製造方法について説明する。この発泡金属焼結シートは、たとえば、金属粉末を含むスラリーSを薄く成形して乾燥させたグリーンシートGを焼成することにより製造される。
スラリーSは、導電性を有する金属粉末、発泡剤(ヘキサン)、有機バインダ(メチルセルロース)、溶媒(水)等を混合したものである。このスラリーSをドクターブレード法により薄く成形するグリーンシート製造装置50を図4に示す。
グリーンシート製造装置50において、まず、スラリーSが貯蔵されたホッパー51から、キャリアシート52上にスラリーSが供給される。キャリアシート52はローラ53によって搬送されており、キャリアシート52上のスラリーSは、移動するキャリアシート52とドクターブレード54との間で延ばされ、所要の厚さに成形される。
成形されたスラリーSは、さらにキャリアシート52によって搬送され、加熱処理を行う発泡槽55および加熱炉56を順次通過する。発泡槽55では高湿度雰囲気下にて加熱処理を行うので、スラリーSにひび割れを生じさせずに発泡剤を発泡させることができる。そして、発泡により空洞が形成されたスラリーSが加熱炉56にて乾燥されると、粒子間に空洞を形成している金属粉末が有機バインダによって接合された状態のグリーンシートGが形成される。
このグリーンシートGを、キャリアシート52から取り外した後、図示しない真空炉にて脱脂・焼成することにより、有機バインダが取り除かれ、金属粉末同士が焼結して三次元網目構造となった発泡金属焼結シート(多孔質体14)が得られる。
次に、本発明の一実施形態に係るガス拡散層用部材の製造方法について説明する。
この方法は、端子部13,多孔質体14,および集電体15をインサート部品としてインサート成形するものであり、ここでは、1つのガス拡散層用部材10について、4組の端子部13,多孔質体14,および集電体15をインサートするものとする。
まず、このインサート成形を実施するためのインサート成形用金型装置40の概略構成について図5および図6に従い説明する。
このインサート成形用金型装置40は、可動金型面41aと固定金型面42aとが互いに対向するように配設された一対の可動金型41と固定金型42とを備える概略構成とされ、可動金型41が固定金型42に向かって進退可能に支持された構成となっている。そして、可動金型41が固定金型42に向って前進移動し型締め状態になると、各金型面41a,42a間にキャビティ43が形成されるようになっている。なお、図示はしていないが、前記インサート部品を金型面41a,42aの表面に沿った方向に位置決めするための位置決めピンが、可動金型面41aの表面に出没可能に支持されている。
以上のように構成されたインサート成形用金型装置40により、図1に示すガス拡散層用部材10を形成するに際しては、まず予め、集電体15の端面15aに端子部13を溶接しておき、これらのうち集電体15の表面に多孔質体14を積層配置したもの4つを、可動金型面41a上のうち、前記位置決めピンが突出した位置に合わせて、互いに面方向に間隔を空けて、集電体14および端子部13の表面が可動金型面41aと当接するように配置する。
ここで、多孔質体14の厚さと集電体15の厚さとの総和は、型締め時に形成されるキャビティ43の深さ(型開閉方向の大きさ)より大きくされ、具体的には、集電体15の厚さ以下の大きさだけ、キャビティ43の深さより大きく設定されている。
次に、可動金型41を固定金型42に向って前進移動し型締めを行いキャビティ43を形成する。この際、前述のように、多孔質体14と集電体15との積層方向の大きさは、キャビティ43の深さより大きく設定されているので、型締め時に、多孔質体14と固定金型面42aとが、および集電体15と可動金型面41aとがそれぞれ一様に密接するとともに、型締め方向に多孔質体14が塑性変形され、多孔質体14,集電体15,および端子部13が金型面41a,42a間で強固に固定される。また、この際、多孔質体14は3〜90%圧縮されることにより、製造するガス拡散層用部材10を構成する多孔質体14の気孔率に調整されるとともに、二次元網目構造を構成する集電体15の複数の孔内に、多孔質体14が各別に食い込んだ状態で、多孔質体14と集電体15とが接続され、これらの各部材14,15の互いが対向する表面同士が密接することになる。
そして、前記位置決めピンを可動金型面41a上から後退移動した後に、ランナ44からゲート45を通じて射出した溶融樹脂46をキャビティ43内に充填することにより、多孔質体14,集電体15,および端子部13と、樹脂部12とが連なり一体になったインサート成形品であるガス拡散層用部材10を形成する。
なお、射出圧力や成形温度等の射出成形条件は、樹脂の種類に応じて適宜選定される。たとえば、射出圧力が高すぎると、導電性多孔質体中に樹脂が過剰に充填されてしまい、通気性を損なうなど、多孔質体の機能を発揮できなくなる。また、熱可塑性樹脂を用いる場合は導電性多孔質体に接する金型面を部分的に冷却したり、シリコーンゴムのような熱硬化性樹脂を用いる場合は金型面を部分的に加熱するなどして、多孔質体への樹脂の浸透を制御することができる。具体的に一例を挙げると、樹脂部12としてポリプロピレンを採用した場合、成形温度180℃、80kNで型締めし、成形圧250kg/cmで射出成形すると、このようなガス拡散層用部材10が得られる。
以上説明したように、本実施形態によるガス拡散層用部材10によれば、多孔質体14および集電体15の外周縁に樹脂部12が一体に形成されているので、このガス拡散層用部材10の取り扱い性の向上を図ることができ、このガス拡散層用部材10を用いて固体高分子型燃料電池20を組立てる際の組立て工数の低減を図ることができるとともに、組立て精度の向上を図ることができる。
また、樹脂部12が、多孔質体14および集電体15の外周縁に全周にわたって配設されているので、たとえば、樹脂部12にのみ加工を施し、装置固定用の穴等の形状を容易に付与することも可能になる。
さらに、集電体15が面方向に延びる二次元網目構造を有するので、固体高分子型燃料電池20で発生した電流を、集電体15によりこの面方向に良好に伝導させることが可能になる。
さらにまた、本実施形態では、樹脂部12を多孔質体14の外周縁のみならず、集電体15の外周縁にも一体に形成しているので、これらの多孔質体14と集電体15とを互いが対向する表面同士で略一様に接続させることが可能になる。したがって、多孔質体14と集電体15との間の電気抵抗を最小限に抑制することができる。また、この場合、樹脂部12によりこれらの接続状態を長期にわたって維持することが可能になる。
さらに、集電体15は、導電性多孔質体14の表面に配置された状態で、これらの厚さ方向に圧縮され、導電性多孔質体14をこの厚さ方向に塑性変形させることにより、導電性多孔質体14に配設されるので、二次元網目構造を構成する集電体15の複数の孔内に、多孔質体14が各別に食い込んだ状態で、多孔質体14と集電体15とが接続され、これらの各部材14,15の互いが対向する表面同士が密接することになる。したがって、多孔質体14と集電体15との、互いが対向する表面同士での一様な接続状態を確実に実現することができる。
また、本実施形態によるガス拡散層用部材の製造方法によれば、導電性多孔質体14と集電体15とをこれらの積層方向に圧縮して固定した状態で、キャビティ43内に溶融樹脂46を射出するので、キャビティ43内における溶融樹脂46の射出圧により、多孔質体14および集電体15が金型面41a,42aに沿った方向に位置ずれすることを抑制することができる。さらに、型締め時に、導電性多孔質体14をこの厚さ方向に塑性変形させるとともに、集電体15が二次元網目構造を有するので、集電体15表面の孔内に多孔質体14を食い込ませることができる。したがって、前述した、多孔質体14と集電体15との一様な接続状態を容易に実現できるとともに、位置ずれ発生を確実に抑制することができる。
また、多孔質体14と固定金型面42aとが、および集電体15と可動金型面41aとがそれぞれ密接した状態で、キャビティ43内に溶融樹脂46を射出するので、この樹脂46がこれらの14,42a間、および15,41a間に入り込むことを抑制することができる。
以上により、多孔質体14と集電体15との間の電気抵抗を最小限に抑制することが可能なガス拡散層用部材10を確実にかつ高精度に形成することができる。
特に、集電体15としてパンチングメタルを採用した場合には、パンチングメタルの製造プロセス上、集電体15の表裏面のうち一方の表面における、貫通孔の開口縁部が、この表面から突起することになる。したがって、多孔質体14の表面に、集電体15を、前記一方の表面が対向するように配置した状態で、これらを圧縮すると、集電体15を多孔質体14の表面に良好に食い込ませることができる。
さらに、溶融樹脂46をキャビティ43に射出した際、この溶融樹脂46は多孔質体14の側部に開口する気孔内に5μm〜1000μm程度の深さまで含浸して硬化することなり、多孔質体14と樹脂部12とはアンカー効果で強固に接合されることになる。また、キャビティ43内に溶融樹脂46を射出する際に、前述したように、多孔質体14と集電体15とが密接していることと相俟って、多孔質体14,集電体15,端子部13,および樹脂部12の接続の高強度化および長寿命化を図ることができる。
なお、以上の実施形態において示した各構成部材、その諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求に基づき種々変更可能である。
例えば、樹脂部12の材質として前記実施形態では、熱可塑性樹脂を採用した構成を示したが、これに限られるものではない。すなわち、樹脂部12は、エラストマー(ゴムを含む)など、射出成形可能な材質で、かつ導電性および通気性を有していなければよいので、耐熱温度や硬度等を考慮し、適宜選択することが可能である。軟質な樹脂を用いれば、シール性を高めることができる。
また、樹脂部12および端子部13をいわゆる二色成形により成形することもできる。つまり、導電性樹脂を射出成形して端子部13を形成し、その後、非導電性樹脂を射出成形して樹脂部12を形成してよい。
さらに、前述したインサート成形を行うに先立ち、多孔質体14と集電体15とを予め、ろう付け,スポット溶接,若しくは拡散接合しておいてもよい。この場合、キャビティ43内に溶融樹脂46を射出する前に、前記位置決めピンを後退移動させる際の、多孔質体14と集電体15との相対的な位置ずれ発生を確実に抑制することができる。
また、ガス拡散層用部材10を用いて固体高分子型燃料電池を形成するに際して、この部材10の集電体15が配設されている表面を電極面11aとすることも可能である。
さらに、前記実施形態では、樹脂部12を多孔質体14および集電体15の双方の外周縁部に一体に形成した構成を示したが、図7に示すように、多孔質体14の外周縁部にのみ樹脂部12を形成してもよい。この場合においても、ガス拡散層用部材10を用いた燃料電池の組立て工数を低減できるとともに、組立て精度の向上を図ることができる。
導電性多孔質体を有する燃料電池の組立て工数を低減できるとともに、組立て精度の向上を図ることができる固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材およびその製造方法を提供する。
本発明の一実施形態として示した固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材の平面図および断面図である。 図1に示す集電体の拡大平面図である。 図1に示すガス拡散層用部材を用いた固体高分子型燃料電池の一実施形態である。 多孔質体を製造する方法の一例を示す模式図である。 本発明の一実施形態として示した固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材をインサート成形する際の第1工程を示す図である。 本発明の一実施形態として示した固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材をインサート成形する際の第2工程を示す図である。 本発明の第二実施形態として示した固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材の断面図である。
符号の説明
10 ガス拡散層用部材
11a 電極面
12 樹脂部
14 導電性多孔質体
15 集電体
20 固体高分子型燃料電池
41a,42a 金型面
43 キャビティ
46 溶融樹脂

Claims (2)

  1. 三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体と、該導電性多孔質体の表面に配設された集電体とを備え、該集電体は面方向に延びる二次元網目構造を有し、
    少なくとも前記導電性多孔質体の外周縁に、面方向に延びる樹脂部が全周にわたって一体に形成されてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材。
  2. 三次元網目構造を有するシート状の導電性多孔質体と、該導電性多孔質体の表面に配設された集電体とを備える固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材の製造方法であって、
    前記導電性多孔質体の表面に前記集電体を配置してなる当該導電性多孔質体および集電体をインサート部品として、
    金型面上に配置した前記インサート部品をこれらの金型面によってこの厚さ方向に圧縮して固定するとともに、キャビティを形成する型締め工程と、
    該型締め工程の後に、前記キャビティに溶融樹脂を射出し、前記導電性多孔質体および前記集電体の外周縁に、面方向に延びる樹脂部を全周にわたって一体に形成することを特徴とする固体高分子型燃料電池のガス拡散層用部材の製造方法。

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