JP2001236971A - 固体高分子型燃料電池セルの製造方法 - Google Patents

固体高分子型燃料電池セルの製造方法

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一彦 永山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 セル製造過程において部品の密着一体化を図
り、組み立て性の改善と電気接触抵抗の軽減を図った固
体高分子型燃料電池セルの製造方法を提供する。 【解決手段】 電解質膜上への触媒層塗布工程２５にお
いて触媒層を形成し、ホットロールを用いて触媒層・電
解質接合体を一体化し、次に、拡散層一体化工程２６に
おいて、電解質溶液を拡散層に塗布乾燥後の拡散層を、
触媒層・電解質接合体の両面に配置し、ホットロールに
より拡散層を接合する。次に、ガス流路溝形成工程２７
および焼成工程２８で焼成したセパレータとセル枠との
接合工程２９で、周囲部に接着層を付けたセル枠とセパ
レータとをホットロールにより接合し、最後に、単セル
一体化工程３０において、セパレータにセル枠を接合し
たものを、触媒層・電解質接合体と拡散層とを一体化し
たものの両面に載置し、ホットロールにて一体化するこ
とにより、単セルを連続的に得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】この発明は、固体高分子型燃
料電池セルの製造方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】燃料電池は水素と酸素を利用し、電解質
を介在して直流電気を発電する装置である。固体高分子
型燃料電池は、電解質として、高分子膜が含水すること
でイオン導電性を示す例えばパーフルオロエチレンスル
ホン酸樹脂膜を用いたもので、その燃料電池セルの構成
の斜視図を図６に示す。図６において、電解質膜５１の
両面には、例えば白金または白金化合物からなる触媒層
５０と、カーボンペーパーやカーボンクロスなどからな
る多孔質の拡散層５３とを備え、さらに、一方の拡散層
に水素を含む燃料ガスを供給・排出するための燃料ガス
流路を有し，他方の拡散層に酸化剤ガスを供給・排出す
るための酸化剤ガス流路を有してなるセパレータ５２と
を備える。なお図６において、前記セパレータは、一つ
のセパレータの両側にガス流路を有するものを示した
が、製造上の理由から、片側に流路を有するものを背中
合わせに積層する場合もある。上記セルを多数積層した
ものをスタックという。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、固体高
分子型燃料電池セルは、多数の部品の組み立て体からな
る。これらの部品を積層し、多数のセルをスタックとし
て組み立て一体化する作業は、量産性の観点から好まし
くなく、あらかじめ部品の製造過程で一体化できるもの
は一体化して、組み立て部品の点数を出来るかぎり低減
することが望まれる。また、上記組み立て工数とは別
に、部品間の電気的な接触抵抗の軽減も燃料電池の特性
改善の観点から望まれる。部品間の接触の数が多いとそ
の分、接触抵抗の増大をもたらす。
【０００４】この発明は、上記の点に鑑みてなされたも
ので、この発明の課題は、燃料電池セルの製造過程にお
いて部品の密着一体化を図り、組み立て性の改善と電気
接触抵抗の軽減を図った固体高分子型燃料電池セルの製
造方法を提供することにある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するた
めに、この発明は、固体高分子電解質膜を挟んで両主面
に触媒層を有してなる触媒層・電解質接合体と、この接
合体の両側に配設した多孔質の拡散層と、一方の拡散層
に水素を含む燃料ガスを供給・排出するための燃料ガス
流路を有してなるセパレータと、他方の拡散層に酸化剤
ガスを供給・排出するための酸化剤ガス流路を有してな
るセパレータとを備えた固体高分子型燃料電池セルを製
造する方法において、前記触媒層・電解質接合体と拡散
層と前記両セパレータとを熱圧着または接着剤等により
接合して、燃料電池セル全体を一体化することとする
（請求項１）。
【０００６】上記によれば、多数のセルをスタックとし
て組み立て一体化する作業が容易となり、また各部品の
密着一体化により電気接触抵抗の軽減が図れる。
【０００７】また、上記請求項１のように燃料電池セル
全体を一体化せず、請求項２の発明のように、触媒層・
電解質接合体と拡散層とを部分的に一体化しても、相応
の効果が得られる。即ち、固体高分子電解質膜を挟んで
両主面に触媒層を有してなる触媒層・電解質接合体と、
この接合体の両側に配設した多孔質の拡散層と、一方の
拡散層に水素を含む燃料ガスを供給・排出するための燃
料ガス流路を有してなるセパレータと、他方の拡散層に
酸化剤ガスを供給・排出するための酸化剤ガス流路を有
してなるセパレータとを備えた固体高分子型燃料電池セ
ルを製造する方法において、前記拡散層に固体高分子電
解質の溶液を塗布し、前記触媒層・電解質接合体と拡散
層とを熱圧着して一体化することとする。
【０００８】前記請求項１または２の実施態様として、
下記の方法が好適である。即ち、請求項２記載の製造方
法において、前記電解質の溶液塗布は、スプレー法，ス
クリーン印刷法，ロール印刷法のいずれかの方法により
行う（請求項３）。また、請求項２記載の製造方法にお
いて、前記熱圧着は、ホットプレス法またはホットロー
ル法により行う（請求項４）。さらに、請求項１記載の
製造方法において、前記触媒層・電解質接合体と拡散層
とを一体化した後、前記両セパレータを額縁状のセル枠
を介して接着し、燃料電池セル全体を一体化する（請求
項５）また、前記請求項５の実施態様として、下記が好
適である。即ち、請求項５記載の製造方法において、前
記接着のために額縁状のセル枠のセパレータおよび電解
質膜との接着面にあらかじめ接着層を形成し、熱圧着に
より一体化する（請求項６）。さらに、前記請求項６記
載の製造方法において、前記接着層は、スクリーン印刷
またはシート状接着剤により形成する（請求項７）。ま
た、請求項５記載の製造方法において、前記熱圧着は、
ホットプレス法またはホットロール法により行う（請求
項８）。
【０００９】さらに、請求項９の発明のように、請求項
１ないし８のいずれかに記載の製造方法において、前記
触媒層・電解質接合体は、ペースト化した触媒層を直接
固体高分子電解質膜の両面に塗布し、塗布時のペースト
溶液で電解質膜が膨潤による変形をおこす前に加熱圧縮
することによって形成することとすることにより、燃料
電池セルの全部品が密着一体化され、流れ生産工程に基
づく量産性の向上と接触電気抵抗の軽減が図れる。
【００１０】
【発明の実施の形態】図面に基づき、この発明の実施の
形態について以下にのべる。
【００１１】図１は、請求項９の発明の実施例に関わ
り、触媒層・電解質接合体の製作から単セル化までの製
作を連続的に行う工程を説明する図である。各工程の詳
細は後述するが、図１により全工程の概要を以下に説明
する。
【００１２】まず、電解質膜上への触媒層の塗布工程２
５において触媒層を形成し、例えばホットロールを用い
て触媒層・電解質接合体を一体化した。次に、拡散層一
体化工程２６において、電解質溶液を拡散層に塗布し、
乾燥後の拡散層を触媒層・電解質接合体の両面に配置
し、例えばホットロールにより、温度８０〜１５０℃，
変形率３０〜８０％の加熱変形を施すことで拡散層を接
合した。
【００１３】次に、セパレータへのガス流路溝の形成工
程２７において溝パターンを塗布されたセパレータを、
焼成工程２８で焼成し、セル枠とセパレータとの接合工
程２９で、周囲部に接着層を付けたセル枠とセパレータ
とをホットロールにより、温度８０〜１５０℃，変形率
３０〜８０％で接合した。
【００１４】最後に、単セル一体化工程３０において、
セパレータにセル枠を接合したものを、触媒層・電解質
接合体と拡散層とを一体化したものの両面に載置し、ホ
ットロールにて温度８０〜１５０℃，変形率３０〜８０
％で一体化することにより、単セルを連続的に得た。
【００１５】上記によれば、燃料電池セルの全部品が流
れ生産工程によって密着一体化されるので、量産性の向
上と接触電気抵抗の軽減が実現できる。
【００１６】次に、前記の各工程に関して以下に詳述す
る。図２は、触媒層を電解質膜上に直接塗布する工程２
５を説明する断面図である。触媒と電解質溶液を混合し
たインク１は、湿潤状態の触媒に電解質溶液を１０〜５
０ｗｔ％の割合で添加し製作した。溝加工ロール３と塗
布ロール４の間に触媒層インク１を投入し、溝加工ロー
ル３の溝部分に溜まったインクを塗布ロールに付着さ
せ、電解質膜２の裏表同時に塗布した後、１００〜１７
０℃，変形率３０〜８０％でホットロール５により熱圧
着する。
【００１７】図３は、拡散層と触媒層・電解質接合体と
を一体化する工程２６を説明する図であり、図３（ａ）
は電解質溶液の塗布工程を、（ｂ）は電解質溶液の乾燥
工程を、（ｃ）は触媒層・電解質接合体と拡散層との熱
圧着工程を示す。拡散層６表面にアルコールで希釈した
電解質溶液８をスプレーノズル７により噴霧し、ヒータ
１０により８０〜１２０℃の温度で乾燥する。続いて、
電解質溶液を塗布した拡散層９と触媒層・電解質接合体
１１とを、電解質溶液の接着効果により、１００〜１７
０℃，変形率３０〜８０％でホットロールを施し一体化
する。
【００１８】図４は、図１における工程２７〜２９を説
明する図であり、図４（ａ）はセパレータにおけるガス
流路の溝部の塗布工程を、（ｂ）は同溝部の焼成工程
を、（ｃ）はセル枠への接着層の塗布工程を、（ｄ）は
セル枠とセパレータとの接合工程を示す。
【００１９】セパレータ溝形成用のインク１２は、ジエ
チレングリコール・エチレエーテルに結合材エチルセル
ローズを４．２％混合した溶液にカーボン粉末とテフロ
ン粉末を添加したもので、これをスリーンメッシュ１３
上に投入して、スキージ１４を用いてセパレート板１５
の表面に溝パターンを印刷し、ヒータ１０により１５０
〜３００℃の温度で焼成する。セルの外形部分となるセ
ル枠１６の表面にスリーンメッシュ１３に投入した接着
剤ペースト１７をスキージ１４により塗布し、接着層１
８を形成する。溝を形成したセパレータ１９に接着層を
つけたセル枠２０を組み合わせて、ホットプレス２１を
用いて、温度８０〜２００℃,圧力９．８×１０5〜１０
6Ｐａ（約１０〜１００kg/cm2）で接合する。
【００２０】次に、図５は、図１における工程３０を説
明する図であり、図５（ａ）は図１には図示しない図で
あって、セル枠セパレータ一体化品への接着層の塗布工
程を示し、（ｂ）は単セルの一体化工程を示す。
【００２１】セル枠とセパレータを一体化した２２の表
面にスリーンメッシュ１３に投入した接着剤ペースト１
７をスキージ１４により塗布し、接着層１８を形成し、
触媒層・電解質接合体と拡散層とを一体化したもの２４
を、セル枠とセパレータとを一体化して表面に接着層を
つけたもの２３（２枚）で挟み込み、ホットプレス２１
により、温度８０〜２００℃,圧力９．８×１０5〜１０
6Ｐａ（約１０〜１００kg/cm2）で接合して単セル化す
る。
【００２２】
【発明の効果】上記のとおり、この発明によれば、固体
高分子電解質膜を挟んで両主面に触媒層を有してなる触
媒層・電解質接合体と、この接合体の両側に配設した多
孔質の拡散層と、一方の拡散層に水素を含む燃料ガスを
供給・排出するための燃料ガス流路を有してなるセパレ
ータと、他方の拡散層に酸化剤ガスを供給・排出するた
めの酸化剤ガス流路を有してなるセパレータとを備えた
固体高分子型燃料電池セルを製造する方法において、前
記触媒層・電解質接合体と拡散層と前記両セパレータと
を熱圧着または接着剤等により接合して、燃料電池セル
全体を一体化することとしたので、組み立て性の改善と
電気接触抵抗の軽減を図った固体高分子型燃料電池セル
の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の実施例に関わる燃料電池セルの全製
造工程の概要を説明する図
【図２】図１における触媒層の塗布工程に関わる図
【図３】図１における触媒層・電解質接合体と拡散層と
の一体化工程に関わる図
【図４】図１におけるセパレータの製造およびセル枠と
の接合までの工程に関わる図
【図５】図１における単セル一体化工程に関わる図
【図６】燃料電池セルの構成の斜視図
【符号の説明】
１，１２：インク、２：電解質膜、３：溝加工ロール、
４：塗布ロール、５：ホットロール、６：拡散層、８：
電解質溶液、１０：ヒータ、１１：触媒層・電解質接合
体、１６：セル枠、１８：接着層、１９：セパレータ、
２１：ホットプレス、２５：触媒層塗布工程、２６：拡
散層一体化工程、２７：セパレータ溝形成工程、２８：
セパレータ焼成工程、２９：セル枠とセパレータとの接
合工程、３０：単セル一体化工程。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 固体高分子電解質膜を挟んで両主面に触
    媒層を有してなる触媒層・電解質接合体と、この接合体
    の両側に配設した多孔質の拡散層と、一方の拡散層に水
    素を含む燃料ガスを供給・排出するための燃料ガス流路
    を有してなるセパレータと、他方の拡散層に酸化剤ガス
    を供給・排出するための酸化剤ガス流路を有してなるセ
    パレータとを備えた固体高分子型燃料電池セルを製造す
    る方法において、前記触媒層・電解質接合体と拡散層と
    前記両セパレータとを熱圧着または接着剤等により接合
    して、燃料電池セル全体を一体化することを特徴とする
    固体高分子型燃料電池セルの製造方法。
  2. 【請求項２】 固体高分子電解質膜を挟んで両主面に触
    媒層を有してなる触媒層・電解質接合体と、この接合体
    の両側に配設した多孔質の拡散層と、一方の拡散層に水
    素を含む燃料ガスを供給・排出するための燃料ガス流路
    を有してなるセパレータと、他方の拡散層に酸化剤ガス
    を供給・排出するための酸化剤ガス流路を有してなるセ
    パレータとを備えた固体高分子型燃料電池セルを製造す
    る方法において、前記拡散層に固体高分子電解質の溶液
    を塗布し、前記触媒層・電解質接合体と拡散層とを熱圧
    着して一体化することを特徴とする固体高分子型燃料電
    池セルの製造方法。
  3. 【請求項３】 請求項２記載の製造方法において、前記
    電解質の溶液塗布は、スプレー法，スクリーン印刷法，
    ロール印刷法のいずれかの方法により行うことを特徴と
    する固体高分子型燃料電池セルの製造方法。
  4. 【請求項４】 請求項２記載の製造方法において、前記
    熱圧着は、ホットプレス法またはホットロール法により
    行うことを特徴とする固体高分子型燃料電池セルの製造
    方法。
  5. 【請求項５】 請求項１記載の製造方法において、前記
    触媒層・電解質接合体と拡散層とを一体化した後、前記
    両セパレータを額縁状のセル枠を介して接着し、燃料電
    池セル全体を一体化することを特徴とする固体高分子型
    燃料電池セルの製造方法。
  6. 【請求項６】 請求項５記載の製造方法において、前記
    接着のために額縁状のセル枠のセパレータおよび電解質
    膜との接着面にあらかじめ接着層を形成し、熱圧着によ
    り一体化することを特徴とする固体高分子型燃料電池セ
    ルの製造方法。
  7. 【請求項７】 請求項６記載の製造方法において、前記
    接着層は、スクリーン印刷またはシート状接着剤により
    形成することを特徴とする固体高分子型燃料電池セルの
    製造方法。
  8. 【請求項８】 請求項５記載の製造方法において、前記
    熱圧着は、ホットプレス法またはホットロール法により
    行うことを特徴とする固体高分子型燃料電池セルの製造
    方法。
  9. 【請求項９】 請求項１ないし８のいずれかに記載の製
    造方法において、前記触媒層・電解質接合体は、ペース
    ト化した触媒層を直接固体高分子電解質膜の両面に塗布
    し、塗布時のペースト溶液で電解質膜が膨潤による変形
    をおこす前に加熱圧縮することによって形成することを
    特徴とする固体高分子型燃料電池セルの製造方法。
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