JP2004303627A - 直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法 - Google Patents

直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法 Download PDF

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Abstract

【課題】直接メタノール形燃料電池に用いる電解質膜−電極積層体(MEA)を効率よく、かつ精度よく作製する。
【解決手段】電解質膜10の一方の面に第1電極11の一方の面を位置させ、前記電解質膜10の他方の面に第2電極12の他方の面を位置させるとともに、前記第1電極11の他方の面に第1治具1を配し、前記第2電極12の一方の面に第2治具2を配し、各治具によって加圧して電解質膜−電極積層体とする作製方法において、前記第1治具1または第2治具2は両者の対向位置を定めるためのガイドピンを有し、かつ前記各電極に第1枠体3および第2枠体4を周設し、前記第1治具1と第2治具2によって第1電極11、電解質膜10および第2電極12を保持した後ホットプレスによって接合する。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロトン導電性固体高分子膜からなる電解質膜の両面に一対の空気極と燃料極とを接合し、燃料極側にメタノール水溶液を供給し、空気極側に空気中の酸素を供給することによって発電を行う直接メタノール形燃料電池を構成するための、電解質膜に、空気極としての触媒層または触媒層付ガス拡散層を接合し、燃料極としての触媒層または触媒層付ガス拡散層を接合して一体化する直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法に関するものであり、さらに詳しく言えば、上記電解質膜−電極積層体の作製時に、電解質膜と空気極または燃料極との積層を安定して行うことができ、また前記電解質膜に水分を含浸させ、膨潤させたものを用いても、電解質膜と空気極または燃料極との積層を安定して行うことができる作製方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題や資源問題への対策が重要になってきており、その対策のひとつとして燃料電池の開発が活発に行われている。特に、プロトン導電性固体高分子膜からなる電解質膜を用いた直接メタノール型燃料電池は、構造がシンプルであることから、小型化、軽量化が容易であり、移動体用電源、家庭用コジェネレーション電源、携帯用電源として有望である。
【0003】
このような直接メタノール形燃料電池は、パーフルオロスルフォン酸系の電解質膜の両面に空気極および燃料極を接合した電解質膜−電極積層体(以下、MEAと略称する)を基本に構成されている。
【0004】
この基本となるMEAには大きく分けて二種類あり、その一つは電解質膜の表面に、直接、触媒粉末、撥水材およびパーフルオロスルフォン酸系樹脂からなる触媒層を接合したものであり、通常、このようなMEAでは、触媒層の外側にガス拡散層が別途設けられる(以下、このタイプのMEAを3層形MEAと略称する)。
【0005】
一方、もう一つは、前述した触媒層を、撥水処理を行ったカーボンペーパーやカーポンクロスからなるガス拡散層の表面に形成し、電解質膜の表面に接合するものである(以下、このタイプのMEAを5層形MEAと略称する)。
【0006】
いずれのMEAでも、空気極の触媒には白金微粒子を比表面積が大きい炭素粉末に担持させたものが用いられ、燃料極の触媒には白金微粒子およびルテニウム微粒子を比表面積が大きい炭素粉末に担持させたものが用いられる。
【0007】
3層形MEAを作製する方法の一例としては、前述した触媒粉末、PTFEの微粉末からなる撥水材およびパーフルオロスルフォン酸系樹脂溶液を少量の溶媒中に分散させて得た触媒ペーストを、フッ素樹脂シートに、スクリーン印刷法やコーター法によって塗布し、これをホットプレスすることによって触媒層と電解質膜を接着して一体化させる方法がある。この方法では、一体化させた後、フッ素樹脂シートをMEAから剥離させれば、3層MEAが得られる。この方法は、触媒層をフッ素樹脂シートから電解質膜に転写する方法であるため、転写法とも言われる。
【0008】
5層MEAを作製する方法の一例としては、微細なパーフルオロスルフォン酸系樹脂溶液に、3層MEAの場合と同じ触媒粉末、PTFEの微粉末からなる撥水材を分散させ、これを、撥水処理を施したカーボンペーパーやカーポンクロスからなる拡散層の表面に塗布して、乾燥することによって表面に触媒層が形成された拡散層を作製する方法がある。この方法は、燃料極、空気極の触媒層付拡散層をそれぞれ作製した後、これらを電解質膜の各面に配してホットプレスを行って拡散層、触媒層、電解質膜、触媒層および拡散層を接着して一体化させるものであり、これによって5層MEAが得られる。この方法は、一回で5層MEAが作製できるため、これにセパレータ板を組み合わせると、容易にセルが作製できる点で3層MEAよりすぐれている、と言える。
【0009】
また、これらのMEAを作製する場合のホットプレスの方法としては、2枚のステンレスやチタン等の薄い金属板で、前述した空気極の触媒層を設けたフッ素樹脂シート、電解質膜および燃料極の触媒層を設けたフッ素樹脂シートを挟持して、または前記金属板で、拡散層、触媒層、電解質膜、触媒層および拡散層を挟持して、それぞれホットプレスの加圧板の間にセットして接合する方法が行われていた。
【0010】
一方、ナフィオン(商標)によって代表されるパーフルオロスルフォン酸系の電解質膜は水分を含むと膨潤する性質を有しており、十分に含水させると、乾燥時と比較して10〜18%程度膨張する。すなわち、直接メタノール形燃料電池のような燃料極に直接水溶液を循環させるようなタイプの燃料電池では、それが動作状態にあれば、電解質膜は膨潤した状態にある。このため、電極と電解質膜とを接合する際に、電解質膜を膨潤させた条件下で行い、燃料電池の運転中の、MEAの電極と電解質膜との間の応力を小さくし、応力によって電極と電解質との剥離が生じないようにすることが不可欠であった。
【0011】
また、電極と電解質膜を接合する際、電解質膜を乾燥させた状態で接合を行うと、電解質膜の含水率が著しく低下してその抵抗が大きくなり、電池抵抗が大きくなることも知られている。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−110197号公報
【特許文献2】
特開平3−295171号公報
【特許文献3】
特開平9−63621号公報
【特許文献4】
特開平10−40932号公報
【0013】
前記特許文献1には、5層MEAを作製するために、拡散層、触媒層、電解質膜、触媒層および拡散層を積層したものを室温でホットプレス装置の加圧板に挟み、これを加圧した後、加熱を開始し、所定の温度まで加熱した後、該プレス装置を冷却して温度を低下させる方法が開示されている。また、前記特許文献2には、電解質膜と電極をセットした周囲をゴムシートで覆い、ホットプレスの際に水分が蒸発するのを防止する方法が開示されている。さらに、前記特許文献3,4には、ホットプレスの際またはホットプレスの後でも電解質膜やMEAに水分が含まれた状態にするプレス条件が開示されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、電解質膜を膨潤させた状態でホットプレスを行う場合に、上記した特許文献1に示されたような方法では、一つのMEAを作製するのに、ホットプレス装置の加圧板の温度を上下させなければならないことから、生産性の点で問題があるだけでなく、加熱のためのエネルギーや冷却のための設備を設けなければならないことから、コストの点でも問題があった。
【0015】
また、上記した特許文献1〜4に開示されたものは、いずれも作製したMEAの空気極と燃料極の位置ずれを小さくする手だてを持たないだけでなく、空気および燃料を供給するためのセパレータ板を組み合わせて燃料電池とするに際して、電解質膜を挟んだ前記各電極の位置ずれを小さくすることができないという問題があった。
【0016】
【課題を解決するための手段】
このような問題に鑑み、直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製に際し、MEAの品質向上、製造コストの低減および生産性の向上を図ることができる作製方法を得ることが不可欠であった。
【0017】
すなわち、その請求項1記載の発明は、プロトン導電性固体高分子膜からなる電解質膜の一方の面に第1電極の触媒層面を位置させ、前記電解質膜の他方の面に第2電極の触媒層面を位置させるとともに、前記第1電極の非触媒層面に第1治具を配し、前記第2電極の非触媒層面に第2治具を配して各治具によって前記第1電極、電解質膜および第2電極を加圧して電解質膜−電極積層体とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、前記第1治具または第2治具は両者の対向位置を定めるためのガイドピンを有し、かつ前記各電極に第1枠体および第2枠体を周設し、前記第1治具および第1枠体と第2治具および第2枠体によって第1電極、電解質膜および第2電極を保持した後ホットプレスによって接合することを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0018】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1電極および第2電極は、触媒層付ガス拡散層または触媒層付フイルムであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0019】
この請求項2記載の発明において、触媒層付ガス拡散層とは、微細なPTFEやPFAのようなフッ素樹脂を分散させた溶液を用いて、撥水処理を施したカーボンペーパーやカーポンクロスからなる拡散層の表面に、空気極用または燃料極用の触媒層を形成し、これを乾燥したものであり、触媒層付フイルムとは、PTFEやPFAのようなフッ素樹脂シートに、空気極用または燃料極用の触媒粉末、撥水材およびパーフルオロスルフォン酸系樹脂溶液を少量の溶媒中に分散させて得た触媒ペーストを塗布して触媒層を形成し、これを乾燥したものである。従って、5層MEAでは、電解質膜に触媒層付ガス拡散層を接合して、これらを一体化する工程において、位置決め用のガイドピンを設けた第1冶具または第2冶具を用い、このガイドピンを挿通させて第1枠体および第2枠体を配し、触媒層付ガス拡散層が前記各枠体の内側に位置するようにできるから、触媒層付ガス拡散層の位置ずれが防止でき、3層MEAでは、電解質膜に触媒層を接合して、これらを一体化する工程において、位置決め用のガイドピンを設けた第1冶具または第2冶具を用い、このガイドピンを挿通させて第1枠体および第2枠体を配し、触媒層付フイルムが前記各枠体の内側に位置するようにできるから、触媒層付フイルムの位置ずれが防止できる。
【0020】
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1電極は空気極触媒層付ガス拡散層または空気極触媒層付フイルムであり、第2電極は燃料極触媒層付ガス拡散層または燃料極触媒層付フイルムであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0021】
また、請求項4記載の発明は、請求項2記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1電極は燃料極触媒層付ガス拡散層または燃料極触媒層付フイルムであり、第2電極は空気極触媒層付ガス拡散層または空気極触媒層付フイルムであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0022】
この請求項3、4記載の発明によれば、第1電極が空気極で、第2電極が燃料極のものでも、また、第1電極が燃料極で、第2電極が空気極のものでも、用いる触媒を選択することによって適用することができる。
【0023】
また、請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、含水処理によって膨潤させた電解質膜を第1電極および第2電極に接合することを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0024】
この請求項5記載の発明によれば、電解質膜に含水処理を行い、これを膨潤させた状態で第1冶具、第2冶具および枠体に固定してプレスすることができるから、電解質膜を膨潤させた状態でのMEAを作製することができ、直接メタノール燃料電池の運転時に、電解質膜と電極との間で発生する応力を低減することができる。
【0025】
また、請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1電極、電解質膜および第2電極を第1治具と第2治具によって保持させる際の温度を40℃以下とすることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0026】
この請求項6記載の発明によれば、第1冶具、第2冶具および枠体に電極と電解質膜を保持する際、各冶具および枠体の温度が比較的室温に近いため、含水、膨潤した電解質膜の乾燥による収縮が防止できる。ここで、前記温度が40℃以上であれば、電解質膜が乾燥して収縮し始めて電解質膜を不均一に収縮させ、これによってプレスした後のMEAにもシワが生じる。このようなシワの生じたMEAを用いて燃料電池を構成すると、電池の気密性が低下するため、好ましくない。なお、この請求項6記載の発明は、プレスを開始する前に電解質膜を膨潤させた状態にしておくものであり、前記特許文献3、4のように、プレス中またはプレス後に電解質膜やMEAを含水させるものではない。従って、プレス中に第1冶具と第1枠体との隙間や第2冶具と第2枠体との隙間から水蒸気が漏出するが、プレス終了後、各冶具と各枠体を除去し、MEAを数分〜十数分程度大気中に放置して冷却すれば、MEAはほぼ乾燥した状態となる。
【0027】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、ホットプレス時の第1治具と第2治具の温度が150〜250℃であることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0028】
この請求項7記載の発明によれば、40℃以下の温度で各電極と電解質膜を第1冶具および第2冶具にセットし、これを、既に温度を150〜250℃に加熱したホットプレスにセットして加圧するものであるから、一つのMEAを作製するのに、ホットプレスの温度を上下させることを回避できる。実際のプレス作業では、第1、第2冶具、第1、第2枠体および第1、第2電極と電解質膜をセットし、温度を上昇させたホットプレスにセットすると、数分〜二十数分程度で各冶具の温度が熱伝導によって上昇し、ほぼホットプレスの加熱板と同程度の温度に達するので、1〜5分程度加圧状態を維持した後圧力を解除して各冶具を取り出し、その後の冶具の温度が40℃付近まで低下するのを待ってMEAを取り出すようにすれば、冶具の自重によって加圧状態が維持された状態で温度が低下するので、電解質膜が収縮することはない。なお、実用性を考慮するならば、冶具を数セット用意し、電解質膜と電極をセットした冶具を順次プレスしていくのがよい。また、プレスに使用した後の冶具は水冷等によって、その温度を早く下げることによって、用意する冶具のセット数を減らすことができる。ここで、ホットプレス時の第1治具と第2治具の温度を150〜250℃のように、通常の温度より高くしているのは、電極添加剤として用いているナフィオン(登録商標)の溶解を防止するためである。
【0029】
また、請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、ホットプレス時の第1治具と第2治具の圧力が電極の有効面積当り10〜150kg/cmであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0030】
この請求項8記載の発明によれば、これ以下の圧力では作製したMEAの触媒層やガス拡散層の剥離が生じ、これ以上の圧力ではガス拡散層のカーボンペーパーがカーボンクロスが圧力によって破壊して特性低下の原因となるだけでなく、電解質膜の含水率が低下して内部抵抗が増加する原因となって、好ましくない。
【0031】
また、請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1冶具、第2冶具および枠体の材質がフェライト系またはオーステナイト系ステンレスであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0032】
この請求項9記載の発明によれば、第1冶具、第2冶具および枠体に錆が発生することはなく、MEAへの不純物の混入が防止できる。
【0033】
また、請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1冶具または第2冶具の少なくとも一方は電極に当接する面を凸状にしたことを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法である。
【0034】
この請求項10記載の発明によれば、凸状にすることにより、枠体をガイドピンに挿通させなくても、電極の位置決めが可能であり、安定した加圧を行うことができる。なお、このように、凸状にするのは第1冶具または第2冶具の少なくとも一方であればよい。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、その実施の形態に基づいて説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態に係る直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法を説明するための図である。
【0037】
図1において、1は第1冶具、2は第2冶具、3は第1枠体、4は第2枠体を示している。また、10は電解質膜、11は第1電極、12は第2電極を示している。以下、5層MEAを例にして、その作製方法について述べる。まず、位置決め用のガイドピン1aを四隅に設けた平板状の第1冶具1の上面に、前記ガイドピン1aを挿通させるための孔3aが四隅に設けられ、触媒層付ガス拡散層を配するための穴3bが中央に設けられた第1枠体3を配し、この第1枠体3と前記穴3bによって形成される凹部に、カーボンペーパー(東レ製)上に白金微粒子を比表面積が大きい炭素粉末に担持させた空気極触媒、PTFEの微粉末を主成分とする撥水材およびパーフルオロスルフォン酸系樹脂溶液を少量の溶媒中に分散させたものを塗布して乾燥させて得た第1電極11としての空気極触媒付ガス拡散層を配する。そして、前記空気極触媒付ガス拡散層の上面(第1電極11の触媒層面)と前記第1枠体3の上面(第1冶具1に当接していない面)に、あらかじめ90℃程度に加熱した水中に数時間浸漬して十分に膨潤させたパーフルオロスルフォン酸膜(ナフィオン/登録商標)からなる電解質膜10を配して該電解質膜10の一方の面が第1電極11の触媒層面に接触するようにする。さらに、前記電解質膜10の上面(第1枠体3に接触していない面)に、第1枠体3と同一形状の第2枠体4を、ガイドピン1aが孔4aに挿通するように配し、この第2枠体4と穴4bによって形成される凹部の、電解質膜10の上面(電解質膜10の他方の面)に、カーボンペーパー(東レ製)に白金微粒子とルテニウム微粒子を比表面積が大きい炭素粉末に担持させた燃料極触媒、PTFEの微粉末を主成分とする撥水材およびパーフルオロスルフォン酸系樹脂溶液を少量の溶媒中に分散させたものを塗布して乾燥させて得た第2電極12としての燃料極触媒層付ガス拡散層を配する。次いで、前記燃料極触媒層付ガス拡散層の上面(第2電極12の非触媒層面)に、その当接する部分が凸状で、前記ガイドピン1aが挿通する孔2aを有した第2冶具2を配して挟持する。
【0038】
このように挟持した挟持体は、図2に断面図で示したようなものであり、この挟持体を約145℃に加熱したホットプレスの加圧板に挟み込んで、挟持体の各冶具1、2間を、電極の有効面積当りの圧力が50kgf/cmになるように約10分間加圧して5層MEAを作製した。なお、前記挟持体は、ホットプレスの加圧板に挟み込む前にバネ等によって加圧しておくと、ホットプレス前に電解質膜10が収縮し、5層MEAにシワが発生することを防止することができる。
【0039】
こうして作製された5層MEAは、ホットプレスの加圧板自体の昇降温が必要であった従来のものが30分以上の時間を要したのに対し、約15分の時間で済んだ。また、本発明では、第1冶具1に設けたガイドピン1aによって各冶具、各枠体の位置決めが確実にでき、形成する空気極付ガス拡散層や燃料極付ガス拡散層の位置ずれについても、その精度を±0.2mm以下にすることができた。これらのことから、5層MEAの製造コストの削減と精度の向上を図ることができた。
【0040】
以上、5層MEAを例にして、その作製方法について説明したが、3層MEAについても、図1に基づいて同様に説明することができる。すなわち、3層MEAでは、カーボンペーパー(東レ製)に代えて、電極面積と同じサイズに切断したテフロン(登録商標)シートに空気極触媒、PTFEの微粉末を主成分とする撥水材およびパーフルオロスルフォン酸系樹脂溶液を少量の溶媒中に分散させたものを塗布し、乾燥させて得た第1電極11としての空気極触媒層付フィルムを形成したものを用いればよい。そして、前記空気極触媒付フィルムの触媒層面と前記第1枠体の上面に、あらかじめ90℃程度に加熱した水中に数時間浸漬して十分に膨潤させたパーフルオロスルフォン酸膜(ナフィオン/登録商標)からなる電解質膜10を配する。さらに、前記電解質膜10の上面に、カーボンペーパー(東レ製)に代えて、電極面積と同じサイズに切断したテフロン(登録商標)シートに燃料極触媒、PTFEの微粉末を主成分とする撥水材およびパーフルオロスルフォン酸系樹脂溶液を少量の溶媒中に分散させたものを塗布し、乾燥させて得た第2電極12としての燃料極触媒層付フィルムを配し、その後、同様に加圧して得た接合体からテフロン(登録商標)シートを剥離して3層MEAとする、ものである。
【0041】
上記した実施の形態では、第1電極11として空気極触媒付ガス拡散層または空気極触媒付フィルムを形成し、第2電極12として燃料極触媒層付ガス拡散層または燃料極触媒層付フィルムを形成したが、第1電極11として燃料極触媒層付ガス拡散層または燃料極触媒層付フィルムを形成し、第2電極12として空気極触媒付ガス拡散層または空気極触媒付フィルムを形成してもよい。
【0042】
また、上記した実施の形態では、第2電極12を燃料極触媒層付ガス拡散層および燃料極触媒層付フィルムとし、その非触媒層面に当接する部分が凸状である第2冶具2を配したが、第1電極11である空気極触媒付ガス拡散層または空気極触媒付フィルムの非触媒層面に当接する部分が凸状の第1冶具1を配したり、両方の冶具の各電極が当接する部分を凸状にしてもよい。第2冶具2を凸状にする場合、燃料極触媒層付ガス拡散層および燃料極触媒層付フィルムの非触媒層面が第2枠体4の上面より突出しないようにすれば、第2冶具2にガイドピンを挿通させなくても、電極の形成位置を決めることができる。これに対し、第2冶具2を平面状にする場合、燃料極触媒層付ガス拡散層および燃料極触媒層付フィルムの厚さと第2枠体4の厚さをほぼ等しくする必要があり、冶具のガイドピンに枠体を挿通させないと電極の形成位置を決めることができない。また、第1冶具1を凹状にする場合であれば、第1枠体3を省略することができる。なお、上記した例は第2冶具2を凸状または平面状にする場合、第1冶具1を凹状にする場合であるが、第1冶具1を凸状または平面状にする場合や第2冶具2を凹状にする場合など、多様な形態に応じた変形例が考えられる。
【0043】
このような条件下で、形成する電極の厚さや形状を考慮して、冶具または枠体の形状を定めればよい。すなわち、前記各枠体は、作製する第1電極11や第2電極12の厚さまたは冶具のガイドピンの有無に応じて変更することができ、穴3b、4bの形状も作製する第1電極11や第2電極12の形状に応じて変更することができる。
【0044】
【発明の効果】
上記した如く、本発明は、直接メタノール形燃料電池に用いる電解質膜−電極積層体(MEA)を効率よく、かつ精度よく作製することができるので、直接メタノール形燃料電池の普及に寄与するところが大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法を説明するための図である。
【図2】前記作製過程における挟持体の断面図である。

Claims (10)

  1. プロトン導電性固体高分子膜からなる電解質膜の一方の面に第1電極の触媒層面を位置させ、前記電解質膜の他方の面に第2電極の触媒層面を位置させるとともに、前記第1電極の非触媒層面に第1治具を配し、前記第2電極の非触媒層面に第2治具を配して各治具によって前記第1電極、電解質膜および第2電極を加圧して電解質膜−電極積層体とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、前記第1治具または第2治具は両者の対向位置を定めるためのガイドピンを有し、かつ前記各電極に第1枠体および第2枠体を周設し、前記第1治具および第1枠体と第2治具および第2枠体によって第1電極、電解質膜および第2電極を保持した後、ホットプレスによって接合することを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  2. 請求項1記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1電極および第2電極は、触媒層付ガス拡散層または触媒層付フイルムであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  3. 請求項2記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1電極は空気極触媒層付ガス拡散層または空気極触媒層付フイルムであり、第2電極は燃料極触媒層付ガス拡散層または燃料極触媒層付フイルムであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  4. 請求項2記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1電極は燃料極触媒層付ガス拡散層または燃料極触媒層付フイルムであり、第2電極は空気極触媒層付ガス拡散層または空気極触媒層付フイルムであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、含水処理によって膨潤させた電解質膜を第1電極および第2電極に接合することを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1電極、電解質膜および第2電極を第1治具と第2治具によって保持させる際の温度を40℃以下とすることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  7. 請求項6記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、ホットプレス時の第1治具と第2治具の温度が150〜250℃であることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、ホットプレス時の第1治具と第2治具の圧力が電極の有効面積当り10〜150kg/cmであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1冶具、第2冶具および枠体の材質がフェライト系またはオーステナイト系ステンレスであることを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項記載の直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法において、第1冶具または第2冶具の少なくとも一方は電極に当接する面を凸状にしたことを特徴とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜−電極積層体の作製方法。
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