JP2006331670A - 燃料電池用セパレータの製造方法とこの燃料電池用セパレータを用いた燃料電池 - Google Patents

燃料電池用セパレータの製造方法とこの燃料電池用セパレータを用いた燃料電池 Download PDF

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拓海 田中
Yoshifumi Ota
佳史 大田
Seiji Sano
誠治 佐野
Takashi Kajiwara
▲隆▼ 梶原
Hiromichi Sato
博道 佐藤
Fumihiko Inui
文彦 乾
Sho Usami
祥 宇佐美
Katsumi Sato
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Abstract

【課題】 金属多孔質体をガス拡散層として一体に備えたセパレータの新たな製造方法を提供する。
【解決手段】 まず、金属プレート等の平板状の基板30を準備し(ステップS100)、その基板(即ち、セパレータ)におけるガス拡散層の形成箇所に、金属粉懸濁スラリー(ニッケルスラリー)をスクリーン印刷手法にて塗布する(ステップS120)。塗布スラリーを乾燥させた後、スラリー塗布済みの基板30を、焼結炉にて加熱処理する(ステップS130)。この加熱処理により、スラリーにおけるニッケルが焼結し、基板30の表面にニッケル多孔質体が直接、焼結形成される。これにより、ニッケル多孔質体をガス拡散層25として一体に備えるセパレータ27が作製される。
【選択図】 図2

Description

本発明は、表面に触媒層を備えた電解質層に対するガス供給を行うガス拡散層を有する燃料電池用セパレータの製造方法とこうしたセパレータを用いた燃料電池に関する。
燃料電池は、一般に、単セルの積層構造を取り、単セルは、表面に触媒層を形成する電解質層からなるMEA(Membrance Electrode Assembly)を、燃料ガス・酸化ガスのガス流路形成部材で挟持し、更に当該部材の外側にセパレータを配置する。近年では、こうしたガス流路形成部材に金属多孔質体を用いることが行われつつあり、金属多孔質体とセパレータとを一体化することも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−273359号公報
この特許文献では、金属多孔質体とセパレータの一体化に際して、金属多孔質体とセパレータとを積層して、加圧・還元性雰囲気下において熱処理し、両者を固相拡散接合させている。こうすることにより、金属多孔質体とセパレータとの接合部における接触抵抗の低減をもたらし、この金属多孔質体とセパレータの一体化物を燃料電池に用いることで、燃料電池自体の発電能力の向上を図っている。
しかしながら、上記の一体化物の製造の上では、金属多孔質体とセパレータとを別途準備した上で、両部材の取り扱い、両部材の積層の際の位置決め等も必要となり、煩雑であった。
本発明は、かかる課題の少なくとも一部を解決するため、金属多孔質体をガス拡散層として一体に備えたセパレータの製造方法の簡便化を図ることをその目的とする。
上記課題を踏まえ、本発明の燃料電池用セパレータの製造方法で採用した手順は、
燃料電池のセパレータとして機能する基材と、該基材の表面のガス拡散層とを有する燃料電池用セパレータの製造方法であって、
前記基材の表面に、焼結後に金属多孔体層を形成し得る金属粉懸濁スラリーを塗布する塗布工程と、
該金属粉懸濁スラリーの塗布済みの基材を、前記金属粉懸濁スラリーによる前記金属多孔体層の焼結形成が可能な温度環境下で加熱して、前記金属多孔体層を焼結形成する熱処理工程とを備える。
こうすれば、基材表面に金属多孔体層を直接焼結形成でき、この金属多孔体層をガス拡散層とできることから、基材と金属多孔体の準備、この両者の取り扱い・位置決め等を要せず、簡便である。また、金属多孔体層の焼結形成と金属多孔体層と基材との接合とを熱処理工程において同時に行うことができるので、製造時間の短縮化、工程の簡略化を達成できる。更には、金属多孔体層の焼結形成に際して加圧を要しないので、多孔体層の細孔の潰れ・変形等を抑制でき、気孔率等の多孔体性状確保の上で好ましい。
金属粉懸濁スラリーの塗布については、スクリーン印刷、マスク印刷等、既存の印刷・塗布手法をそのまま採用できる。また、懸濁させる金属粉としては、金属粉末ばかりか、金属繊維のスライバ(短繊維)を用いることもできる。
金属粉懸濁スラリーの調合に際しては、結合剤を含有して金属粉を懸濁させることもできる。こうすれば、熱処理に伴う金属多孔体層の焼結形成の信頼性が高まると共に、金属粉の大きさ調整や結合剤選定・結合材含有量調整等により、金属多孔体層の気孔率等の性状を調節することができる。
また、熱処理工程における加熱温度を、前記金属粉懸濁スラリーにおける金属粉の焼結と、焼結を経て形成される前記金属多孔体層と前記基材との結合とを起こす範囲の温度とすることができ、こうすれば、金属多孔体層と基材との接合の信頼性が高まる。
加えて、熱処理工程を、還元雰囲気下、或いは、酸化被膜の形成を抑制可能な程度に酸素が希薄の真空環境下で実行するようにもできる。こうすれば、金属多孔体層の孔表面や基板との接合界面に酸化皮膜の形成を抑制できる。
また、塗布工程における金属粉懸濁スラリーの塗布は、基材への塗布後の金属粉懸濁スラリーが平坦な表面となるよう形成することができる。こうすれば、焼結後の金属多孔体層表面も平坦となるので、この金属多孔体層を電解質層に接合させた際において、層同士の接合にとって好ましい。
この場合、基材の金属粉懸濁スラリー塗布面側を平坦としておけば、金属粉懸濁スラリーを平坦に塗布することが簡単となる。
また、基材は単一のものに限られず、金属粉混濁スラリーの塗布対象となる板状部材を含む複数の部材からなる基材とすることもできる。こうする場合、板状部材の裏面側に他の部材を接合して備え、該他の部材を、冷却媒体が流通可能な冷却流路を有する部材とすることができる。こうすれば、裏面に冷却媒体流路を有する基材(板状部材)に、既述したように、直接、金属多孔体層を焼結形成できる。この他の部材は、冷却流路を有する部材とできるほか、他の用途に適した部材とすることも可能である。
また、基材を複数部材から構成するに際して、対向する平板状の第1部材と第2部材との間に第3部材を配設した基材とし、該第3部材を前記第1、第2部材と接合させた基材とすることもできる。その上で、熱処理工程において、第3部材と第1、第2部材との接合箇所において、部材同士を接合させるようにすることもできる。こうすれば、複数の部材からなる基材についても、金属多孔体層の形成と並行して、部材接合ができ好ましい。
こうした第1から第3の部材を接合した基材とする場合、予めこれら部材を接合させたいわゆるサブアッシー品としておき、このサブアッシー品の基材表面に、既述したように、金属多孔体層を焼結形成するようにすることもできる。
こうした複数部材からなる基材においては、第3部材を第1、第2部材と接合させて、金属粉懸濁スラリーの塗布面と反対側に冷却媒体が流通可能な冷却流路を形成するようにすることもできる。こうすれば、冷却流路を有する基材を、金属多孔体層の形成と並行して形成でき好ましい。
この場合、塗布工程において、基材における第1部材の表面と前記第2部材の表面とに、前記金属粉懸濁スラリーを塗布するようにすることもできる。こうすれば、両面にガス拡散層となる金属多孔体層を有するセパレータを容易に製造できる。
本発明は、上記の燃料電池用セパレータを用いた燃料電池としても適用でき、表面に触媒層を備えた電解質層をガス拡散層を介在させてセパレータにて挟持するに当たり、上記した燃料電池用セパレータ製造方法により製造した燃料電池用セパレータが有する前記金属多孔体層を前記ガス拡散層として、前記電解質膜を前記ガス拡散層の側に位置させて挟持する。
また、本発明の別の燃料電池は、表面に触媒層を備えた電解質層を含む単セルを積層した燃料電池であって、両面に金属粉懸濁スラリー塗布を行って製造した燃料電池用セパレータと前記電解質とを交互に積層させている。
この燃料電池は、セパレータを挟んで単セルが積層した燃料電池となる。
そして、前記電解質と前記燃料電池用セパレータとの間に、導電性多孔質体からなるガス拡散層を介在させるようにすることもできる。
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。本発明の実施例の燃料電池は、固体高分子型燃料電池であり、単セルを複数積層したスタック構造を有している。図1は実施例の燃料電池を構成する単セル20の構成の概略を現わす断面模式図である。単セル20は、表面に触媒層(図示せず)を備える電解質層21と、電解質層21を両側から挟持してサンドイッチ構造を形成する電解質側ガス拡散層22,23と、このサンドイッチ構造をさらに両側から挟持するガス流路形成用のガス拡散層25,26と、その外側に配設されたセパレータ27,28とを備えている。
電解質層21は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。本実施例では、ナフィオン膜(デュポン社製)を使用した。電解質層21上に形成される触媒層は、電気化学反応を促進する触媒、例えば、白金、あるいは白金と他の金属から成る合金を備えている。触媒層形成するには、例えば、白金または白金と他の金属からなる合金を担持したカーボン粉を作製し、この触媒を担持したカーボン粉を適当な有機溶剤に分散させ、電解質溶液(例えば、Aldrich Chemical社、Nafion Solution)を適量添加することで、ペーストを作製すればよい。このペーストを、電解質層21上にスクリーン印刷等の方法により塗布することで、触媒層を形成することができる。あるいは、上記触媒を担持したカーボン粉を含有するペーストを膜成形してシートを作製し、このシートを電解質層21上にプレスすることによって触媒層を形成したり、上記ペーストを電解質側ガス拡散層22,23側に塗布することとしても良い。
電解質側ガス拡散層22,23は、ガス透過性および電子伝導性を有する部材によって構成されており、例えば、発泡金属や金属メッシュなどの金属製部材や、カーボンクロスやカーボンペーパなどのカーボン製部材により形成することができる。このような電解質側ガス拡散層22,23は、電気化学反応に供されるガスを拡散させると共に、触媒層との間で集電を行なう。
ガス拡散層25,26は、電解質層21のそれぞれの側において、電解質層主面側にガス流路となる空間を形成する。この場合、電解質側ガス拡散層22の側に配設されるガス拡散層25は、酸素を含有する酸化ガスが通過する単セル内酸化ガス流路25aを形成する。また、電解質側ガス拡散層23の側に配設されるガス拡散層26は、水素を含有する燃料ガスが通過する単セル内燃料ガス流路26aを形成する。ここで、本実施例では、ガス拡散層25,26を、焼結形成した金属多孔質体として形成している。用いる金属としては、ニッケル、チタン、鉄、ステンレス等種々のものを採用できるが、特に、チタンは耐食性に優れた金属であることから、強い還元雰囲気となる単セル内燃料ガス流路26aや強い酸化雰囲気となる単セル内酸化ガス流路25aを形成する部材の構成材料として望ましい。なお、耐久性が許容できる場合には、ニッケル、ステンレス、鉄など他種の金属の金属多孔質体をガス拡散層25,26とすればよい。ガス拡散層25,26の製造手法については、後に詳しく説明する。
セパレータ27,28は、既存の単セルにおけるセパレータとしても機能する基材から成り、電子伝導性を有する材料で形成されてガス不透過性を有する。また、後述するように、セパレータに金属多孔質体であるガス拡散層を直接焼結形成することから、セパレータには、焼結形成時の加熱処理における耐熱性と、このガス拡散層との加熱による接合ができる性状も求められる。こうした性状を満たせば、セパレータの材料に特段の制限はなく、例えば、セパレータを、ステンレス鋼等の金属部材やカーボン部材によって形成することができる。本実施例のセパレータ27,28は、薄板状に形成されており、ガス流路形成用のそれぞれのガス拡散層25,26と接する面は、凹凸のない平坦面となっている。なお、図示の都合上、セパレータ27,28やガス拡散層25,26は厚肉状に描画されているが、これらは0.1〜0.3mm、或いは数mm程度の肉厚に過ぎない。
なお、単セル20の外周部には、部材接合箇所におけるガスシール性を確保するために、ガスケット等のシール部材が各部材間に適宜配設されている。また、単セル20の外周部には、単セル20の積層方向と平行であって燃料ガスあるいは酸化ガスが流通する複数のガスマニホールドが設けられている(図示せず)。これら複数のガスマニホールドのうちの燃料ガス供給マニホールドを流れる燃料ガスは、各単セル20に分配され、電気化学反応に供されつつガス拡散層26が形成する各単セル内燃料ガス流路26aおよび電解質側ガス拡散層23を通過し、その後、燃料ガス排出マニホールドに集合する。同様に、酸化ガス供給マニホールドを流れる酸化ガスは、各単セル20に分配され、電気化学反応に供されつつガス拡散層25が形成する単セル内酸化ガス流路25aおよび電解質側ガス拡散層22を通過し、その後、酸化ガス排出マニホールドに集合する。
燃料電池で発電を行なう際には、単セル内酸化ガス流路25aと触媒層との間で、電解質側ガス拡散層22を介して、酸化ガスが給排される。また、燃料電池が発電する際には、電気化学反応の進行に伴いカソード側の触媒層上で生成水が生じるが、本実施例では、電解質側ガス拡散層22を介して、触媒層から単セル内酸化ガス流路25aへと生成水が排出される。なお、単セル内燃料ガス流路26aにおいても同様に、触媒層との間で燃料ガスの給排が行なわれる。
図1に示す単セル20は、アノード側とカソード側の燃料ガス(H2)・酸化ガス(O2)の流れ方向が単セル内燃料ガス流路26aと単セル内酸化ガス流路25aで同方向に流れるが、両ガスの流れ方向はこれに限られず、直交或いは逆行するよう両ガスを流すこともできる。こうしたガスの流れは、ガス通過孔の形成位置により、種々変更可能である。
燃料電池に供給される燃料ガスとしては、炭化水素系燃料を改質して得られる水素リッチガスを用いても良いし、純度の高い水素ガスを用いても良い。また、燃料電池に供給される酸化ガスとしては、例えば空気を用いることができる。
次に、ガス拡散層25,26を有するセパレータ27,28の製造手順について説明する。セパレータ27とセパレータ28は、同じ構成であるため、以下、セパレータ27について説明する。図2はセパレータ27の作製プロセスを示す手順フロー、図3はこのプロセスにおける基板準備の様子を説明するための説明図、図4はセパレータ作製プロセスにおけるスラリー塗布の様子を模式的に説明する説明図である。
セパレータ27の作製に際しては、まず、平板状の基板30を準備する(ステップS100)。この基板30は、図示しないステンレス鋼板から打ち抜きプレス・シャーリング等の工程を経て形成される。
この基板30は、セパレータとして機能するものであることから、ガス流通・冷却媒体流通のため、基板周縁に、酸化ガスの流入開口40と、酸化ガスの排出開口41と、燃料ガスの通過開口42,43の他、冷却媒体としての水の通過開口44を備える。酸化ガスの流入開口40と排出開口41とは上下に対角に配置され、単セル内酸化ガス流路25aにおけるガスの流れに、著しい偏りが起きないようにされている。なお、この排出開口41から排出されたガスは図示しないマニホールドにて集められ、セル外に運び出される。
燃料ガスの通過開口42,43は、隣接する単セル20における単セル内燃料ガス流路26aに燃料ガスを流し込むためのものであり、酸化ガスの流入開口40と排出開口41と同様、対角に形成されている。水の通過開口44についても同様である。これら開口は、打ち抜きプレスされ、基板30、即ちセパレータ27におけるガス拡散層25の形成領域KRを取り囲む。
燃料電池を図1に示す単セル20を積層させたものとする場合には、セパレータ27(基板30)に燃料ガスの通過開口42,43や水の通過開口44が形成される。しかし、燃料電池を単セル20を多列に並べた構成や大きなサイズの単セル20で構成する場合には、セパレータ27には、酸化ガスの流入開口40と排出開口41が有れば良い。つまり、燃料ガス供給はセパレータ28の側で行われるので、セパレータ27には不要となる。また、冷却媒体である水の流路は、セパレータ27の背面(図1におけるセパレータ27の右方側)で別途形成できるので、通過開口44も不要となる。
次いで、金属粉懸濁スラリーを調整する(ステップS110)。このスラリー調整は、基板準備と並行して、或いはこれに先立って行うこともでき、例えば、ニッケルの微細粉末・スライバを所定の大きさ・長さで準備し、これらを結合剤であるメチルセルロースと一緒に純水に混合すればよい。この際、発泡剤などを添加することができるほか、メチルセルロース以外の結合剤を用いることもできる。また、スラリー(ニッケルスラリー)調整に際しては、その粘度を金属粉末・結合剤等の配合にて調整し、後述のスラリー塗布(スクリーン印刷)に適したものとすることが好ましい。金属粉末・結合剤等の配合は、焼結形成後の金属多孔質体における気孔率にも影響することから、気孔率の観点から、配合調整を行えばよい。
そして、図4に模式的に示すように、基板30を、スクリーン印刷装置におけるスクリーンSに押し当て、スクリーンS上の金属粉懸濁スラリーを印刷ローラRで基板30の表面に印刷する(ステップS120)。この場合、スクリーンSには、基板30におけるガス拡散層25の形成領域KRと合致した窓KRKが形成されているので、基板30には、その形成領域KRに金属粉懸濁スラリーが塗布されることになる。この場合、塗布されたスラリーは、窓KRKの方形形状に倣って基板30の表面に留まる。また、基板30が平板上で平坦な表面であることから、塗布されたスラリーは、ほぼ同じ厚みで平坦に塗布される。つまり、塗布後のスラリー最外表面も平坦となる。
印刷塗布後のスラリーを乾燥させた後、スラリー塗布済みの基板30を、図示しない焼結炉にセットし、これを焼結する(ステップS130)。この焼結の際の加熱温度は、金属粉懸濁スラリーの金属粉材質等を考慮して定められ、ニッケルスラリーを用いた場合には、焼結炉内を、体積比で5%の割合で水素を含む窒素と水素の混合気環境(即ち、還元雰囲気)とした上で、約750℃x30分の加熱処理を基板30に施す。この場合、金属粉懸濁スラリーとしてチタンスラリーを用いれば、真空度が10−3Pa以下の真空環境下とすることもできる。
この加熱処理により、ニッケルスラリーに含まれるニッケルは焼結し、結合剤および水(純水)の蒸発を経て、基板30の形成領域KRにはニッケルの多孔質体が形成される。これにより、ニッケル多孔質体をガス拡散層25として一体に備えるセパレータ27が作製される。つまり、セパレータ27には、ガス拡散層25としてのニッケル多孔質体が直接焼結形成されるので、セパレータ27とガス拡散層25とを別々に準備したり、両者を接合に際しての取り扱いや位置決めの必要性が無い。よって、ガス拡散層25を一体としたセパレータ27を簡便に作製できる。しかも、セパレータ27にガス拡散層25としてのニッケル多孔質体を焼結形成するに際して加圧を要しないので、焼結形成されたニッケル多孔質体(ガス拡散層25)における細孔の潰れ・変形等を抑制でき、気孔率等の多孔体性状を確保できる。
しかも、上記したセパレータ27を作製するに当たって、本実施例では、ニッケルスラリー塗布済みの基板30を焼結する際の加熱処理を約750℃x30分とした。この加熱温度は、例えば、ステンレス製のセパレータ27(基板30)の表面(界面)にニッケルが焼結して接合できる温度である。よって、この加熱処理の間において、ニッケル焼結に伴うニッケル多孔質体の形成と、このニッケル多孔質体と例えばステンレス製のセパレータ27(基板30)との接合とを行うことができる。この結果、セパレータ27とガス拡散層25とを別々に準備して両者を一体とする場合と比較して、製造時間の短縮化、工程の簡略化を図ることができる。この場合、上記した加熱温度条件(温度x時間)は、多孔質体形成のための金属焼結、セパレータ界面における多孔質体金属とセパレータ金属の接合が起き得るもので有れば良く、金属粉種別やセパレータ材料に応じて適宜選択すればよい。
また、金属粉懸濁スラリー(ニッケルスラリー)の調合に際しては、結合剤としてメチルセルロースを含有させたので、この結合剤の働きにより、ニッケル多孔質体のガス拡散層25を確実に焼結生成できる。
また、焼結炉を還元雰囲気環境とした上で、炉内での熱処理によりニッケルの焼結とニッケルのセパレータ27表面への焼結結合を図ったので、ニッケル多孔質体の孔表面やセパレータ27の接合界面に酸化皮膜の形成を抑制でき、好ましい。真空環境下で焼結した場合も同様である。
更に、ニッケルスラリーの塗布に際しては、スクリーンSを用いたスクリーン印刷手法を採用したので、基板30を平坦な平板上としたことと相俟って、塗布後のスラリー表面を平坦なものとした。よって、焼結後に得られるニッケル多孔質体表面(即ち、ガス拡散層25の表面)を平坦とできるので、このガス拡散層25と電解質層21の側の電解質側ガス拡散層22とは、層表面に亘ってほぼ均等に接合することから、ガス拡散を図る上で好ましいと共に、これら両ガス拡散層間の接触電気抵抗の低減を図る上でも好ましい。
次に、他の実施例について説明する。この実施例は、セパレータがその両面に金属多孔質体(例えば、ニッケル多孔質体)のガス拡散層を有する点、セパレータが一対の平板状の基板の間に流路形成材を有する複数部材からなる点に特徴がある。図5は他の実施例におけるセパレータ27Aをその分解形態と組み付け形態について模式的に表す斜視図、図6はこのセパレータ27Aを用いた単セル20Aを積層した燃料電池の概略構成を表す説明図である。
図5に示すように、セパレータ27Aは、既述した基板30を対向して備え、この両基板の間に、流路形成枠体50を挟持して有する。流路形成枠体50は、基板30と同一の材料(例えば、ステンレス)の板材を屈曲形成して構成され、折り返し屈曲した経路51を有する。そして、セパレータ27Aは、流路形成枠体50を両基板で挟持して流路形成枠体50の経路51を基板30で塞ぎ、この経路51を両基板間の冷却媒体流路とする。
この場合、流路形成枠体50は、経路51の一方端側を一方の基板30の通過開口44の側に位置させ、経路51の他方端側を他方の基板30の通過開口44の側に位置させる。よって、一方の基板30の通過開口44から流入した冷却媒体(例えば、水)は、経路51からなる冷却媒体流路を折り返して流れ、他方の基板30の通過開口44から排出される。この排出された水は、隣のセパレータ27Aにおける一方の基板30の通過開口44に流れ込む。こうした流れを起こすことで、それぞれの単セル20Aのセパレータ27Aにおいてセルの冷却が行われる。
上記したセパレータ27Aは、既述した単板の基板30からなるセパレータ27と同様の手順で作製される。つまり、このセパレータ27Aのプロセスでは、図2のステップS100において一対の基板30が準備され、それぞれの基板30の一方の面における形成領域KRに、調整済みのニッケルスラリーがスクリーン印刷される(ステップS120)。続くステップS130では、図5の組み付け形態に示すように、対向する基板30で流路形成枠体50を挟持した状態で、焼結炉内で熱処理を行い、セパレータ27Aを作製する。
この場合、対向する基板30で流路形成枠体50を挟持する際に、適宜の数カ所において基板30と流路形成枠体50を銀ロウづけ、或いは接着剤等にて仮止めしておき、炉内セットの際に基板30と流路形成枠体50が不用意にずれないようにしておくこともできる。また、ステップS100で一対の基板30を準備した際に、上記のように基板30と流路形成枠体50を仮止めし、ステップS120では、対向する基板30の各面にニッケルスラリーを塗布するようにすることもできる。
上記したセパレータ27Aは、ステップS130での焼結処理(加熱処理)において、既述したセパレータ27と同様、一方の基板30の形成領域KRにニッケル多孔質体のガス拡散層25を形成し、他方の基板30の側には同じくニッケル多孔質体のガス拡散層26を形成する。しかも、このセパレータ27Aでは、加熱処理の過程において、流路形成枠体50とその上下の基板30とをその接合箇所に亘って拡散接合させ、上下の基板30の間に、閉鎖した経路51による冷却媒体流路を形成する。
つまり、一対の基板30と流路形成枠体50とを有するセパレータ27Aの作製プロセスによれば、セパレータ両面におけるニッケル多孔質体のガス拡散層25,26の焼結形成と同時に、対向する基板30とその間に位置する流路形成枠体50とを拡散接合してセパレータ27Aを容易に製造することができる。加えて、これら部材の拡散接合を経ることで、流路形成枠体50が有する経路51を基板間の冷却媒体流路とできることから、より簡便となる。
ステップS130での加熱処理に際し、焼結炉を炉内圧力を高めた状態(加圧環境下)としておけば、基板30と流路形成枠体50とを、その接合箇所において密着させておくことができる。こうすれば、加熱処理に伴う拡散接合の信頼性が高まり、好ましい。
こうして得られたセパレータ27Aは、その両面にガス拡散層25,26を有するので、図6に示すように電解質層21とその両側の電解質側ガス拡散層22,23と、交互に積層される。これにより、単セル20Aを積層した燃料電池が完成する。なお、図6では酸化ガス(空気)と燃料ガス(水素)がガス拡散層25,26に達する様子を実線・点線で示しているが、この両ガスは個々の流路で独立に供給されていることは勿論である。つまり、図5に示す対向する基板30の間には、図示しない他の部材が組み込まれ、この部材により、流入開口40と通過開口42、排出開口41と通過開口43とを区画してガス流路を区分すると共に、燃料ガス或いは酸化ガスをそれぞれのガス拡散層に送り込むことがなされる。この場合、こうしたガス区画機能を果たす部材を、流路形成枠体50と一体に設けるようにすることもできる。
このように冷却媒体流路を有するセパレータ、即ち複数部材からなるセパレータとしては、次のようなものとすることができる。図7は複数部材からなるセパレータ27Bを模式的に示す斜視図である。
図示するように、このセパレータ27Bは、基板30の裏面に多孔質体プレート60を有する。多孔質体プレート60は、導電性多孔体からなるプレートであり、その有する孔を冷却媒体の流路とする。つまり、多孔質体プレート60は上記した流路形成枠体50に変わる冷却媒体流路の形成材であり、銀ロウ等により各コーナー部等において基板30に接合・固定されている。そして、この多孔質体プレート60によって形成される冷却媒体流路は、基板30が有する冷却媒体供給マニホールド(図における一方の通過開口44)と冷却媒体排出マニホールド(他方の通過開口44)に連通し、両マニホールド間の流路となる。なお、基板30に多孔質体プレート60を接合したセパレータ27Bは、図示しない他の部材により、積層時において多孔質体プレート60の周囲を水密にシールされ、この他の部材によっても、上記したようなガス区画が行われる。
こうした多孔質体プレート60を金属製多孔体とするには、金属発泡体、エキスパンドメタル等が用いられている。また、金属製多孔体に換えて、カーボン製あるいは導電性の樹脂製の多孔体等としてもよい。
図7に示すセパレータ27Bにあっても、図2に示したプロセスに従って、ガス拡散層25或いはガス拡散層26がニッケル多孔質体として焼結形成される。なお、この焼結に際しては、多孔質体プレート60の接合・固定前の基板30にニッケル多孔質体を焼結し、その後、多孔質体プレート60をニッケル多孔質体焼結済みの基板30に接合・固定することもできる。
図8は複数部材からなるまた別のセパレータ27Cを模式的に示す斜視図である。図示するように、このセパレータ27Cは、上下の基板30でプレート70を挟持・固定した構成を有する。このプレート70は、上下の基板30が対向させて有する通過開口44の間に亘る打ち抜きの矩形形状の長孔72を備え、この長孔72を、一方の通過開口44から他方の通過開口44にかけての冷却媒体流路とする。
図8に示すセパレータ27Cにあっても、図2に示したプロセスに従って、ガス拡散層25或いはガス拡散層26がニッケル多孔質体として焼結形成される。この焼結に際しては、プレート70を挟持・固定済みの基板30にニッケル多孔質体を焼結することができるほか、プレート70の挟持・固定前の基板30にニッケル多孔質体を焼結し、その後、プレート70をニッケル多孔質体焼結済みの基板30で挟持・固定することもできる。
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記した実施例では、セパレータに焼結形成されるニッケル多孔質体のガス拡散層25,26と触媒層との間に電解質側ガス拡散層22,23を設けた。通常、こうした電極側ガス拡散層は燃料電池における集電性向上のために用いられるが、本実施例では、ガス拡散層25,26は多孔質であるためにガス供給に支障はなく、金属多孔質体(ニッケル多孔質体)であることから集電にも特段の支障はない。よって、電極側ガス拡散層を設けない構成とすることも可能である。
また、上記の実施例では、電解質層21のアノード側とカソード側のセパレータを、ニッケル多孔質体のガス拡散層25,ガス拡散層26を有するセパレータ27としたが、一方の側のみを、このセパレータ27とすることもできる。
また、図5に示した複数部材からなるセパレータ27Aにガス拡散層25を焼結形成する場合、次のようにすることもできる。つまり、図5に示す基板30の間に流路形成枠体50を配置し、これら部材を銀ロウ付けにより予め接合・固定させ、図5の下端側に示したサブアッシー品のセパレータ27Aとしておく。そして、このサブアッシー品のセパレータ27Aに、スラリー塗布・焼結(ステップS120、130)を経てガス拡散層25、26を形成することもできる。この場合には、焼結において加圧環境とする必要はない。
図5に示すセパレータ27Aを用いた場合、ガス拡散層25を焼結形成する際にセパレータ27Aの構成部材(上下の基板30と流路形成枠体50)とを拡散接合させることとしたが、これら構成部材の接触箇所に熱硬化性の接着剤を介在させ、ガス拡散層25の焼結形成と構成部材の接合・接着を同時に行うようにすることもできる。こうすれば、焼結において加圧環境とする必要はない。
また、上記の実施例では、経路51を流路形成枠体50で形成したが、流路形成枠体50をプレートとし、当該プレートに経路51の軌跡に沿った屈曲孔を打ち抜き加工を施すこともできる。こうすれば、上下の基板30で屈曲孔を有するプレートを挟持・固定することで、プレート積層形態のセパレータとでき、上下の基板30の間に冷却媒体流路(屈曲孔による経路51)を形成できる。
更に、セパレータを基板30とその他の部材の複数の部材から構成した場合において、この他の部材を冷却媒体流路を形成のためのものとしたが、流路形成以外の用途を有する部材とすることもできる。
また、上記の各実施例では、固体高分子型燃料電池を例に挙げ説明したが、異なる種類の燃料電池に適用することも可能である。
実施例の燃料電池を構成する単セル20の構成の概略を現わす断面模式図である。 セパレータ27の作製プロセスを示す手順フローである。 このプロセスにおける基板準備の様子を説明するための説明図である。 セパレータ作製プロセスにおけるスラリー塗布の様子を模式的に説明する説明図である。 他の実施例におけるセパレータ27Aをその分解形態と組み付け形態について模式的に表す斜視図である。 このセパレータ27Aを用いた単セル20Aを積層した燃料電池の概略構成を表す説明図である。 複数部材からなるセパレータ27Bを模式的に示す斜視図である。 複数部材からなるまた別のセパレータ27Cを模式的に示す斜視図である。
符号の説明
20,20A...単セル
21...電解質層
22,23...電解質側ガス拡散層
25,26...ガス拡散層
25a...単セル内酸化ガス流路
26a...単セル内燃料ガス流路
27,28...セパレータ
27A...セパレータ
30...基板
40...流入開口
41...排出開口
42,43...通過開口
44...通過開口
50...流路形成枠体
51...経路
60...多孔質体プレート
70...プレート
72...長孔
KR...形成領域
KRK...窓
R...印刷ローラ
S...スクリーン

Claims (16)

  1. 燃料電池のセパレータとして機能する基材と、該基材の表面のガス拡散層とを有する燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記基材の表面に、焼結後に金属多孔体層を形成し得る金属粉懸濁スラリーを塗布する塗布工程と、
    該金属粉懸濁スラリーの塗布済みの基材を、前記金属粉懸濁スラリーによる前記金属多孔体層の焼結形成が可能な温度環境下で加熱して、前記金属多孔体層を焼結形成する熱処理工程とを備える
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  2. 請求項1記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記金属粉懸濁スラリーは、結合剤を含有して金属粉を懸濁させている
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  3. 請求項1または請求項2記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記熱処理工程における加熱温度は、前記金属粉懸濁スラリーにおける金属粉の焼結と、焼結を経て形成される前記金属多孔体層と前記基材との結合とを起こす温度とされている
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  4. 請求項1ないし請求項3いずれか記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記熱処理工程を、還元雰囲気下、或いは、酸化被膜の形成を抑制可能な程度に酸素が希薄の真空環境下で実行する
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4いずれか記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記塗布工程において前記基材に塗布後の前記金属粉懸濁スラリーは、平坦な表面を形成するよう塗布されている
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  6. 請求項5記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記基材の前記金属粉懸濁スラリー塗布面側は平坦とされている
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  7. 請求項1ないし請求項6いずれか記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記基材は、前記金属粉混濁スラリーの塗布対象となる板状部材を含む複数の部材から構成されている
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  8. 請求項7記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記基材は、前記板状部材の裏面側に他の部材を接合して備え、該他の部材を、冷却媒体が流通可能な冷却流路を有する部材としている
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  9. 請求項7記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記基材は、対向する平板状の第1部材と第2部材との間に第3部材を配設し、該第3部材を前記第1、第2部材と接合させて構成されている
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  10. 請求項9記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記熱処理工程は、前記第3部材と前記第1、第2部材との接合箇所において、部材同士を接合させる
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  11. 請求項9または請求項10記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記基材は、前記第3部材を前記第1、第2部材と接合させ、前記金属粉懸濁スラリーの塗布面と反対側に冷却媒体が流通可能な冷却流路を形成する
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  12. 請求項11記載の燃料電池用セパレータの製造方法であって、
    前記塗布工程は、前記基材における第1部材の表面と前記第2部材の表面とに、前記金属粉懸濁スラリーを塗布する
    燃料電池用セパレータの製造方法。
  13. 表面に触媒層を備えた電解質層を、ガス拡散層を介在させてセパレータにて挟持した燃料電池であって、
    請求項1ないし請求項11いずれか記載の燃料電池用セパレータ製造方法で製造した燃料電池用セパレータが有する前記金属多孔体層を前記ガス拡散層として、前記電解質膜を前記ガス拡散層の側に位置させて挟持した
    燃料電池。
  14. 請求項13記載の燃料電池であって、
    前記燃料電池用セパレータを対向させて備え、前記電解質層が対向した前記燃料電池用セパレータが有する前記ガス拡散層の間に位置するよう、前記電解質層を前記対向した前記燃料電池用セパレータで挟持した
    燃料電池。
  15. 表面に触媒層を備えた電解質層を含む単セルを積層した燃料電池であって、
    請求項12記載の燃料電池用セパレータ製造方法で製造した燃料電池用セパレータと前記電解質層とを交互に積層させた
    燃料電池。
  16. 請求項13ないし請求項15いずれか記載の燃料電池であって、
    前記電解質と前記燃料電池用セパレータとの間に、導電性多孔質体からなるガス拡散層を介在させた
    燃料電池。
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