JP4488578B2 - 難燃性塩化ビニル系樹脂成形体 - Google Patents

難燃性塩化ビニル系樹脂成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた難燃性を有する塩化ビニル系樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル樹脂は成形性が良く、機械的強度が高く、安価であって、耐薬品性も良好であるため、工業用材料、特に耐食工業用材料として半導体製造装置をはじめ、あらゆる分野に広く利用されている。
【0003】
かかる塩化ビニル樹脂は塩素を含むので、ある程度の難燃性を有しているが、火災が発生すると熱分解して煙や腐食性ガスを多量に出すため、この塩化ビニル樹脂の成形体を半導体製造装置等に用いると、火災時に発生する煙や腐食性ガスによって製造施設内の空気が汚れ、製造装置類、機器類、半導体部品などが汚染されたり侵されたりする恐れがあった。このような事情から、更に高い難燃性を有する塩化ビニル樹脂の成形体が要求されるようになり、この要求を満足する塩化ビニル樹脂成形体の研究が行われている。
【0004】
塩化ビニル樹脂成形体の難燃性を高めるには、従来から、多量の無機フィラーを含有させたり、ハロゲン系の難燃剤を含有させるなどの手段が主に採用されているが、このような手段を採用すると、以下に述べるような問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、無機フィラーを多量に含有させる場合は、塩化ビニル樹脂成形体が脆弱化して実用強度を有する成形体を得ることが難しくなり、また、透明な成形体を得ることもできない上に、成形体の耐薬品性や耐蝕性が低下するという問題があった。
【0006】
一方、ハロゲン系の難燃剤を含有させる場合は、成形体の難燃性を向上させることはできるが、火災時にハロゲンを含んだ腐食性ガスを多量に発生するという問題があり、また、透明な成形体にハロゲン系難燃剤を含有させると、透明性が大幅に低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決し得る優れた難燃性塩化ビニル系樹脂成形体の提供を目的とする。
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、塩素化度が58〜73%の塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、リン系難燃剤を0.5〜15重量部、塩素化ポリエチレンを0.5〜20重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部、発泡剤、又は、分解促進剤であるラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛のいずれかの亜鉛化合物、メラミン、トリエチルアミンのいずれかのアミン化合物、水酸化鉄のいずれかを0.0005〜10重量部含有せしめた、全光線透過率が50%以上、ヘイズ値が60%以下であることを特徴とする透明な成形体である。
この難燃性塩化ビニル系樹脂成形体によれば、燃焼時にリン系難燃剤が酸化ないし熱分解してリン酸を生成し、該リン酸が塩化ビニル系樹脂の表面に残留して酸素移動を妨げると共に、表面の炭化を促進して燃焼を抑制する作用を発揮する。そして、塩素化ポリエチレンは熱分解により塩素ガスを発生して燃焼を遅らせる作用をし、塩素化度の高い塩化ビニル系樹脂も熱分解により多量の塩素ガスを発生して燃焼を遅らせる。そのため、この塩化ビニル系樹脂成形体は難燃性に優れ、発煙量が少ない。
また、この塩化ビニル系樹脂成形体のようにリン系難燃剤を含有させると、ハロゲン系難燃剤を含有させる場合に比べて透明性が向上し、上記のように50%以上の全光線透過率と、60%以下のヘイズ値を有する成形体が得られる。錫系難燃剤は透明な塩化ビニル系樹脂成形体を得るために不可欠な熱安定剤であり、鉛系安定剤を添加しても透明な成形体を得ることは困難である。なお、上記の全光線透過率とヘイズ値は、成形体の厚さが5mmのときの値である。
リン系難燃剤と塩素化ポリエチレンの含有量が塩化ビニル系樹脂100重量部に対してそれぞれ0.5重量部より少なくなると、成形体に充分な難燃性を付与することが困難となる。一方、リン系難燃剤の含有量が15重量部より多くなると、該難燃剤がブリードアウトするようになり、また、塩素化ポリエチレンの含有量が20重量部より多くなると、透明性が低下する。
塩化ビニル系樹脂の塩素化度と難燃性は正の相関関係があり、塩素化度が高くなるほど熱分解により塩素ガスを多量に発生して燃焼を遅らせるため、難燃性は向上する。従って、塩素化度が58%より低い塩化ビニル系樹脂を用いると、難燃性を向上させる上で不利となり、また、塩素化度が73%より高い塩化ビニル系樹脂は、熱安定性、成形性、耐薬品性、耐蝕性等が悪いので不適当である。
更に、本発明の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、発泡剤、又は、分解促進剤であるラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛のいずれかの亜鉛化合物、メラミン、トリエチルアミンのいずれかのアミン化合物、水酸化鉄のいずれかを0.0005〜10重量部含有させているので、発泡剤の後述する熱遮断作用や、分解促進剤の後述する炭化促進作用によって、難燃性が更に高められる。発泡剤又は分解促進剤の含有量が0.0005重量部より少なくなると、難燃性を更に向上させることが難しくなり、一方、10重量部より多量に含有させても、それに見合った難燃性向上効果が得られないので無駄となる。
次に、本発明の請求項2に係る難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、塩素化度が58〜73%の塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、リン系難燃剤を0.5〜15重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部、発泡剤、又は、分解促進剤であるラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛のいずれかの亜鉛化合物、メラミン、トリエチルアミンのいずれかのアミン化合物、水酸化鉄のいずれかを0.0005〜10重量部含有せしめた、全光線透過率が40%以上、ヘイズ値が60%以下であることを特徴とする透明な成形体である。
この成形体のように発泡剤又は分解促進剤を配合する場合は、発泡剤又は分解促進剤によって成形体の難燃性が高められるので、リン系難燃剤と塩素化ポリエチレンの双方を含有させなくても、リン系難燃剤を含有させるだけで、優れた難燃性を付与することが可能となる。尚、この成形体に配合されるリン系難燃剤、錫系安定剤等の作用は、前記請求項1の成形体のところで説明した通りである。
【0009】
次に、上記請求項1,2に係る難燃性塩化ビニル系樹脂成形体以外の本発明に係る難燃性塩化ビニル系樹脂成形体について説明する。
第一の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめたことを特徴とするものである。
上記の発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤を塩化ビニル系樹脂に含有させると難燃性が向上する理由については、次のように考えられる。
【0010】
一般に、塩化ビニル系樹脂成形体に外部から過度の熱が加わると、塩化ビニル系樹脂中の塩素が熱により離脱して難燃作用を発揮すると共に、塩素の離脱した樹脂が熱分解して燃焼に至る。この燃焼に至る過程において、成形体に発泡剤が含有されていると、該発泡剤が熱分解により発泡して外部からの熱を遮断する作用をし、分解促進剤が含有されていると、該分解促進剤が塩化ビニル系樹脂の分解を促進して炭化を早める作用をし、ラジカル発生剤が含有されていると、発生するラジカルが塩化ビニル系樹脂の分解を促進して炭化を早める作用をし、架橋剤が含有されていると、該架橋剤が塩化ビニル系樹脂のポリマー分子と反応して高分子量化することによりガス化を抑制する作用をするため、塩化ビニル系樹脂成形体の難燃性が向上するものと考えられる。
【0011】
第二の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、発泡剤を0.0005〜10重量部、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめたことを特徴とする。
【0012】
発泡剤は、燃焼に至る過程の初期の段階において発泡により外部からの熱を遮断するため、初期の燃焼を抑制する上で、他の分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤よりも有効である。従って、この塩化ビニル系樹脂成形体のように発泡剤を必須成分とし、この発泡剤と他の分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤のいずれかとを組合わせて含有させたものは、発泡剤の熱遮断作用によって初期の燃焼が充分抑制されると共に、その後は発泡剤の熱遮断作用と、分解促進剤、ラジカル発生剤又は架橋剤の前述した作用との相乗作用によって、優れた難燃性が発揮される。
【0013】
第三の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた層であり、表面層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、発泡剤を0〜10重量部含有せしめるか、又は、発泡剤を0〜10重量部、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた層であることを特徴とする。
【0014】
このような成形体は、表面層に発泡剤が単独で、又は、他の分解促進剤などと組合わせて含有されているため、燃焼に至る初期の段階で表面層に含まれる発泡剤の熱遮断作用により初期の優れた燃焼抑制効果が発揮されると共に、その後は発泡剤の熱遮断作用と、表面層や基層に含まれる分解促進剤、ラジカル発生剤又は架橋剤の前述した作用との相乗作用によって優れた難燃性が発揮される。また、表面層の発泡剤の分解で生じた気泡が、基層で発生する腐食性ガスをとらえるので、ガス放出量も少なくなる。
【0015】
第四の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩素化度が58%未満の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた層であり、表面層は、塩素化度が58%以上の塩化ビニル系樹脂の層であることを特徴とする。
【0016】
塩化ビニル系樹脂の塩素化度と難燃性は正の相関関係があり、塩素化度が高くなるほど難燃性は向上する。従って、この成形体のように、塩素化度が58%以上と高い塩化ビニル系樹脂で表面層を形成すると、発泡剤などの難燃性付与成分を全く含有させなくても表面層の難燃性が向上する。そのため、この成形体は、基層が発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤のいずれかの含有によって難燃性が高められていることと相俟って、全体として優れた難燃性を発揮する。
【0017】
以上の第一〜第四の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、いずれも無機フィラーを含有しないので、耐薬品性や耐蝕性が良好であり、また、脆弱化により強度低下を生じることもない。
【0018】
尚、第一〜第四の成形体において、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の含有量が前記のそれぞれの範囲を下回る場合は、成形体に充分な難燃性を付与することが困難になり、一方、前記のそれぞれの範囲を上回るように含有させても、それに見合った難燃性の更なる向上が見られないので、材料の無駄使いとなる。
【0019】
次に、第五の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン化合物を5〜50重量部、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめたことを特徴とするものであって、チタン化合物としては、酸化チタンやチタン酸カリウムなどが使用される。
【0020】
酸化チタンなどのチタン化合物は熱分解温度がきわめて高く、その白色度や熱伝導率が高い粉末であるため、このようなチタン化合物が塩化ビニル系樹脂に含有されていると、燃焼に至る過程において、該チタン化合物が1200〜1300℃の高温まで分解することなく、その高い白色度によって外部からの熱を遮断する働き(熱遮断作用)をすると共に、塩素離脱後の樹脂の熱分解及び燃焼の段階では高い熱伝導率によって該樹脂をより速く炭化させる働き(炭化促進作用)をする。そして、このチタン化合物と共に発泡剤が含有されている場合は、該発泡剤の前述した熱遮断作用がチタン化合物の熱遮断作用に加わって一層優れた難燃性が発揮され、また、分解促進剤やラジカル発生剤が含有されている場合は、該分解促進剤や該ラジカル発生剤の前述した炭化促進作用がチタン化合物の炭化促進作用に加わって一層優れた難燃性が発揮され、更に、架橋剤が含有されている場合は、該架橋剤の前述したガス化抑制作用とチタン化合物の熱遮断作用及び炭化促進作用とが相乗して一層優れた難燃性が発揮される。
【0021】
この第五の成形体において、チタン化合物の含有量が50重量部を越え、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の含有量が10重量部を越えると、難燃性は顕著に向上するが、成形体の耐薬品性、強度、曲げ加工性などが低下する。一方、チタン化合物の含有量が5重量部を下回り、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の含有量が0.0005重量部を下回ると、熱遮断作用や炭化促進作用が不充分となり、難燃性を向上させることが困難となる。
【0022】
上記第一、第二又は第五の成形体においては、更に、塩素捕獲化合物、無機質助剤の少なくともいずれか一種を2〜30重量部含有せしめてもよい。
【0023】
この成形体は、塩素捕獲化合物を含む場合は、燃焼時に塩素が塩素捕獲化合物によって捕獲されるため、塩素ガスや塩化水素ガスなどの腐食性ガスの発生量が更に減少し、また、無機質助剤を含む場合は、チタン化合物と無機質助剤が相乗して塩化ビニル系樹脂の炭化を一層促進するため、発煙量が更に減少して難燃性が一層向上する。
【0024】
塩素捕獲化合物や無機質助剤の含有量が2重量部より少ない場合は、腐食性ガスや煙の発生量があまり減少せず、難燃性の更なる向上も難しくなる。一方、含有量が30重量部を越える場合は、成形体の耐薬品性、強度、曲げ加工性、成形性などが低下する。
【0025】
次に、第六の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン化合物を5〜50重量部含有せしめた層であり、表面層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対してチタン化合物を0〜30重量部、発泡剤を0.0005〜10重量部含有せしめた層であることを特徴とする。
【0026】
かかる成形体は、表面層のチタン化合物の含有量が30重量部以下と少ないので、成形体の表面が塩化ビニル系樹脂本来の良好な耐薬品性及び耐蝕性を有しており、しかも、この成形体の基層には熱遮断作用及び炭化促進作用を発揮するチタン化合物が5〜50重量部含有され、表面層には熱遮断作用を発揮する発泡剤が0.0005〜10重量部含有されているため、この成形体は全体として優れた難燃性を有している。そして、表面層の発泡剤の分解で生じた気泡が、基層で発生する腐食性ガスをとらえるので、ガス放出量も減少する。
【0027】
次に、第七の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン化合物を5〜50重量部、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた層であり、表面層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対してチタン化合物を0〜30重量部、発泡剤を0.0005〜10重量部含有せしめた層であることを特徴とする。
【0028】
かかる成形体も、表面層のチタン化合物の含有量が30重量部以下と少ないため、成形体の表面が塩化ビニル系樹脂本来の良好な耐薬品性及び耐蝕性を有している。しかも、基層は、熱遮断作用及び炭化促進作用を発揮するチタン化合物と共に、炭化促進作用を発揮する分解促進剤やラジカル発生剤や架橋剤が含有されているため難燃性に優れており、この基層で発生する腐食性ガスを、表面層の発泡剤の分解により生じた気泡でとらえてガス放出量を抑制する。従って、この成形体は全体として優れた難燃性を有している。
【0029】
次に、第八の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン酸カリウムを5〜50重量部含有せしめたことを特徴とするものである。
【0030】
この成形体のように、チタン化合物であるチタン酸カリウムを5〜50重量部含有させるだけでも、火災時にチタン酸カリウムが熱遮断作用と炭化促進作用を発揮するため、難燃性が向上し、煙や腐食性ガスの発生量が減少する。
【0035】
次に、第九の透明な難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、透明な塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、亜鉛化合物を金属亜鉛の量に換算して0.0005〜5重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有せしめた、全光線透過率が40%以上、ヘイズ値が60%以下の成形体であることを特徴とする。
【0036】
この成形体のように亜鉛化合物を含有させると、燃焼時に亜鉛化合物の樹脂分解促進作用により塩化ビニル樹脂の炭化が促進されるため、難燃性が向上する。亜鉛化合物の含有量が金属亜鉛の量に換算して0.005重量部より少なくなると、成形体に充分な難燃性を付与することが困難となり、一方、5重量部より多くなると、透明性が悪くなる。なお、上記の全光線透過率とヘイズ値は、成形体の厚さが5mmのときの値である。
【0037】
第九の成形体においては、塩化ビニル系樹脂の塩素化度が略56%であることが好ましい
【0038】
この成形体のように、塩素化度が略56%の塩化ビニル系樹脂を用いると、耐薬品性が良好で難燃性を有する成形体とすることができる。
【0039】
また、第九の成形体においては、更に発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめてもよい
【0040】
このような成形体は、発泡剤の前述した熱遮断作用、分解促進剤やラジカル発生剤の前述した炭化促進作用、架橋剤の前述したガス化抑制作用によって、難燃性が更に高められる。これらの含有量が0.0005重量部より少なくなると、難燃性を更に向上させることが難しくなり、一方、10重量部より多量に含有させても、それに見合った難燃性向上効果が得られないので無駄となる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体(請求項1〜3の成形体及び前記第一〜第九の成形体)の具体的な実施形態を詳述する。
【0044】
本発明の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、▲1▼発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤(以下、これらをまとめて難燃性付与成分という)のいずれかを含み、チタン化合物やリン系難燃剤や亜鉛化合物を含まない成形体A、▲2▼難燃性付与成分のいずれかとチタン化合物を含む成形体B、▲3▼チタン化合物を含み、難燃性付与成分を含まない成形体C、▲4▼リン系難燃剤又は亜鉛化合物又は塩素化ポリエチレンと好ましくは難燃性付与成分のいずれかを含む透明な成形体Dに大別される。
【0045】
成形体Aの主な実施形態としては、以下に述べる単層構造の成形体A1 ,A2 ,A3 ,A4 ,A5 ,と、複層構造の成形体A6 ,A7 が挙げられる。
【0046】
成形体A1 は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、難燃性付与成分のうち発泡剤を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体A1 には、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。鉛系の安定剤は不透明な成形体を得る場合に使用され、錫系の安定剤は透明な成形体を得る場合に使用される。
【0047】
塩化ビニル系樹脂としては、(a)塩素化度が約56%の一般の塩化ビニル樹脂、(b)塩素化度が略58〜略73%の後塩素化塩化ビニル樹脂、(c)これらの塩化ビニル樹脂を混合した樹脂、(d)これらの塩化ビニル樹脂に酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂等を混合した樹脂、(e)塩化ビニルと酢酸ビニルやエチレン等との共重合樹脂、などが使用される。
【0048】
(a)の一般の塩化ビニル樹脂は耐薬品性に優れた成形体A1 を得る場合に特に有効であり、(b)の後塩素化塩化ビニル樹脂は難燃性に優れた成形体A1 を得る場合に特に有効であり、(c)の混合樹脂は耐薬品性と難燃性のバランスが良い成形体A1 を得る場合に特に有効であり、(d)の混合樹脂や(e)の共重合樹脂は成形性や曲げ加工性等の物性を改善した成形体A1 を得る場合に特に有効である。(c)(d)(e)の樹脂は、その平均塩素化度を約50〜約73%となるように混合したり、共重合させることによって、難燃性を保つようにしておく必要がある。
【0049】
この塩化ビニル系樹脂に含有される発泡剤としては、塩化ビニル系樹脂の成形加工温度より高い200℃以上の温度で発泡を開始するものが適しており、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラジド化合物(例えばパラトルエンスルホニルヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等)、無機炭酸塩と有機酸との混合物などが好ましく使用される。
【0050】
このような発泡剤を塩化ビニル系樹脂に含有せしめた単層構造の成形体A1 は、成形時や曲げ加工時には発泡することがなく、火災時に発泡温度以上に加熱されると発泡剤が発泡して優れた熱遮断作用を発揮するため、成形体A1 の難燃性が大幅に向上する。そして、気泡内に煙や腐食性ガスを取り込むため、発煙量や腐食性ガス発生量を減少させることもできる。
【0051】
発泡剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.0005〜10重量部とすることが必要であって、0.0005重量部未満では熱遮断作用が不足するため成形体に充分な難燃性を付与することが難しくなり、一方、10重量部より多量に含有させても、それに見合った難燃性向上効果がみられないので発泡剤の無駄使いとなる。発泡剤の更に好ましい含有量は、0.05〜5重量部である。
【0052】
この成形体A1 は、上記のように優れた難燃性を有することに加えて、無機フィラーを含まないため耐薬品性や耐蝕性が良好であり、脆弱化によって強度が低下することもない。
【0053】
次に、成形体A2 は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、難燃性付与成分のうち分解促進剤を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体A2 にも、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0054】
分解促進剤としては、塩化ビニル系樹脂の成形加工温度より高い200℃以上の温度で塩化ビニル系樹脂の分解を促進するものが適しており、その中でも亜鉛化合物(例えばラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛等の亜鉛石鹸)、アミン化合物(例えばメラミン、トリエチルアミン等)、水酸化鉄などが好ましく使用される。尚、塩化ビニル系樹脂は、前述の成形体A1 で用いたものと同じものが使用される。
【0055】
このような分解促進剤を塩化ビニル系樹脂に含有せしめた成形体A2 は、成形時や曲げ加工時に分解促進剤によって塩化ビニル系樹脂が分解されることはないが、火災時の燃焼に至る過程においては、分解促進剤により塩化ビニル系樹脂の分解が促進されて炭化が早められるため、優れた難燃性を発揮することができる。
【0056】
分解促進剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.0005〜10重量部とすることが必要であって、0.0005重量部未満では炭化促進作用が不足するため成形体に充分な難燃性を付与することが難しくなり、一方、10重量部より多量に含有させても、それに見合った難燃性向上効果がみられないので分解促進剤の無駄使いとなる。分解促進剤の更に好ましい含有量は0.05〜5重量部である。
【0057】
次に、成形体A3 は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、難燃性付与成分のうちラジカル発生剤を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体A3 にも、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0058】
ラジカル発生剤としては、塩化ビニル系樹脂の成形加工温度より高い200℃以上の温度でラジカルを発生させるものが適しており、例えば、ジアミルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の過酸化物や、過塩素酸塩などが好ましく使用される。尚、塩化ビニル系樹脂は、前述の成形体A1 で用いたものと同じものが使用される。
【0059】
上記のように高温で作用するラジカル発生剤を塩化ビニル系樹脂に含有せしめた成形体A3 は、成形時や加工時にはラジカルが発生しないので劣化の恐れはないが、火災時の燃焼に至る過程においては、ラジカル発生剤によって発生するラジカルが塩化ビニル系樹脂の分解を促進して炭化を早めるため、優れた難燃性を発揮することができる。
【0060】
ラジカル発生剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.0005〜10重量部とすることが必要であって、0.0005重量部未満では炭化促進作用が不足するため成形体に充分な難燃性を付与することが難しくなり、一方、10重量部より多量に含有させても、それに見合った難燃性向上効果がみられないのでラジカル発生剤の無駄使いとなる。ラジカル発生剤の更に好ましい含有量は0.05〜5重量部である。
【0061】
次に、成形体A4 は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、難燃性付与成分のうち架橋剤を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体A4 にも、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0062】
架橋剤としては、塩化ビニル系樹脂の成形加工温度より高い200℃以上の温度で架橋を開始するものが適しており、例えばトリアジンチオール化合物などが好ましく使用される。尚、塩化ビニル系樹脂は、前述の成形体A1 で用いたものと同じものが使用される。
【0063】
このように高温で作用する架橋剤を塩化ビニル系樹脂に含有させた成形体A4 は、成形時や加工時には架橋反応が生じないので種々の形状に成形又は二次加工することができる。そして、火災時の燃焼に至る過程においては、架橋反応によって塩化ビニル系樹脂のポリマー分子が高分子量化され、耐熱性が高められると共にガス化し難くなるため、優れた難燃性が発揮される。
【0064】
架橋剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.0005〜10重量部とすることが必要であって、0.0005重量部未満では高分子量化やガス化抑制作用が不足するため成形体に充分な難燃性を付与することが難しくなり、一方、10重量部より多量に含有させても、それに見合った難燃性向上効果がみられないので架橋剤の無駄使いとなる。架橋剤の更に好ましい含有量は0.05〜5重量部である。
【0065】
上記の成形体A1 〜A4 は、塩化ビニル系樹脂に対して難燃性付与成分のいずれか一種を含有させたものであるが、難燃性付与成分のいずれか二種以上を含有させてもよい。その場合は、次に述べる成形体A5 のように発泡剤を必須成分とし、この発泡剤と他の難燃性付与成分を組合わせて含有させることが望ましい。
【0066】
即ち、成形体A5 は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、発泡剤を0.0005〜10重量部、他の難燃性付与成分である分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であって、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合されたものである。
【0067】
塩化ビニル系樹脂や、難燃性付与成分である発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤は、前述の成形体A1 〜A4 に用いたものと同じものが使用される。
【0068】
発泡剤は、燃焼に至る過程の初期の段階において発泡により外部からの熱を遮断するため、初期の燃焼を抑制する上で他の難燃性付与成分よりも有効である。従って、この発泡剤を必須とし、他の難燃性付与成分の一種以上と組合わせて含有させた上記の成形体A5 は、発泡剤の熱遮断作用によって初期の燃焼が充分抑制されると共に、その後は発泡剤の熱遮断作用と、他の難燃性付与成分の前述した炭化促進作用やガス化抑制作用との相乗作用によって、優れた難燃性が発揮される。そして、発泡剤の分解で生じた気泡が、発生する煙や腐食性ガスをとらえるので、発煙量やガス放出量も少なくなる。
【0069】
発泡剤の含有量及び他の難燃性付与成分の含有量は、0.0005〜10重量部とすることが必要であって、これより少なくすると充分な難燃性を付与することが難しくなり、逆に、これより多くしても、それに見合った難燃性向上効果が得られないので難燃性付与成分の無駄使いとなる。発泡剤及び他の難燃性付与成分の更に好ましい含有量は、0.05〜5重量部である。
【0070】
以上説明した単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体A1 〜A5 は、難燃性付与成分や添加剤を選択して配合した塩化ビニル系樹脂組成物を、押出成形、カレンダープレス、射出成形、その他の公知の成形技術によって、平板やパイプや丸棒やアングルや他の異形品など所望の形状に成形して得られるものである。このような成形体は、そのまま、或は、更に二次加工して、難燃性が要求される各種用途に用いられる。
【0071】
次に、複層構造の成形体A6 は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、難燃性付与成分のうち分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた層であり、表面層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、発泡剤を0〜10重量部含有せしめるか、又は、発泡剤を0〜10重量部と、他の難燃性付与成分である分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた層からなるものである。この成形体A6 の基層や表面層にも、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0072】
また、塩化ビニル系樹脂や、難燃性付与成分である発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤は、前述の成形体A1 〜A4 に用いたものと同じものが使用される。
【0073】
このような複層構造の成形体A6 は、燃焼に至る初期の段階で表面層に含まれる発泡剤の熱遮断作用により初期の優れた燃焼抑制効果が発揮されると共に、その後は発泡剤の熱遮断作用と、表面層や基層に含まれる他の難燃性付与成分の炭化促進作用やガス化抑制作用との相乗作用によって、優れた難燃性が発揮される。そして、表面層の発泡剤の分解で生じた気泡が、基層で発生する煙や腐食性ガスをとらえるので、発煙量やガス放出量も少なくなる。
【0074】
基層の難燃性付与成分である分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の含有量、及び、表面層の発泡剤や他の難燃性付与成分の含有量は、上記の範囲内とすることが必要であって、基層の難燃性付与成分の含有量が0.0005重量部より少なくなり、表面層の発泡剤の含有量が0重量部、他の難燃性付与成分の含有量が0.0005重量部より少なくなると、充分な難燃性を成形体A6 に付与することが難しくなる。一方、基層の難燃性付与成分の含有量が10重量部を越え、表面層の発泡剤や他の難燃性付与成分の含有量が10重量部を越えても、それに見合った難燃性向上効果が得られないので難燃性付与成分の無駄使いとなる。基層における難燃性付与成分の更に好ましい含有量は0.05〜5重量部であり、表面層における発泡剤と他の難燃性付与成分の更に好ましい含有量は、0〜5重量部と0.05〜5重量部である。
【0075】
もう一つの複層構造の成形体A7 は、その基層が、58%未満の塩素化度を有する塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた層であり、該基層の少なくとも片面に積層一体化した表面層が、58%以上の塩素化度を有する塩化ビニル系樹脂の層からなるものである。この成形体A7 の基層や表面層にも、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0076】
基層の塩化ビニル系樹脂としては、前述した塩素化度が約56%の一般の塩化ビニル樹脂が好適に使用される。そして、表面層の塩化ビニル系樹脂としては、前述した塩素化度が略58〜略73%の後塩素化塩化ビニル樹脂が好適に使用され、更にはこの後塩素化塩化ビニル樹脂に一般の塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等を混合した平均塩素化度が58%以上の混合樹脂も使用される。また、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤は、前述の成形体A2 〜A4 に用いたものと同じものが使用される。
【0077】
塩化ビニル系樹脂の塩素化度と難燃性は正の相関関係があり、塩素化度が高くなるほど難燃性は向上するため、上記のように塩素化度が58%以上と高い塩化ビニル系樹脂で表面層を形成すると、発泡剤などの難燃性付与成分を全く含有させなくても表面層の難燃性が向上する。そのため、この複層構造の成形体A7 は、基層に発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤のいずれかを含有させるだけで、全体として優れた難燃性を付与することができる。
【0078】
基層の難燃性付与成分である発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の含有量は0.0005〜10重量部とすることが必要であって、0.0005重量部より少なくなると充分な難燃性を付与することが難しくなり、一方、10重量部より多量に含有させてもそれに見合った難燃性向上効果が得られないので難燃性付与成分の無駄使いとなる。基層における難燃性付与成分の更に好ましい含有量は、0.05〜5重量部である。
【0079】
上記複層構造の成形体A6 ,A7 は、難燃性付与成分と他の添加剤を選択して配合した基層形成用の塩化ビニル系樹脂組成物と、難燃性付与成分と他の添加剤を選択して配合した表面層形成用の塩化ビニル系樹脂組成物、又は、難燃性付与成分を含まない表面層形成用の塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、これらの組成物を多層押出成形、カレンダープレス、ラミネートその他の手段によって所望の形状に積層成形して製造されるものであり、そのまま、或は、二次加工して、難燃性が要求される各種用途に使用される。
【0080】
次に、難燃性付与成分のいずれかとチタン化合物を含んだ塩化ビニル系樹脂成形体Bについて説明する。この成形体Bの主な実施形態としては、以下に述べる単層構造の成形体B1 ,B2 ,B3 ,B4 と、複層構造の成形体B5 ,B6 が挙げられる。
【0081】
成形体B1 は、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、チタン化合物を5〜50重量部、難燃性付与成分のうち発泡剤を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体B1 には、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0082】
チタン化合物としては、酸化チタンやチタン酸カリウム等が使用され、特に、0.1〜0.5μm程度の平均粒径を有する粉体が好ましく使用される。このような平均粒径を有する酸化チタンやチタン酸カリウムの粉体は、塩化ビニル系樹脂との混練性が良く、均一な分散状態で含有させることができる。また、表面をアルミナで被覆した酸化チタンは、燃焼時に酸化チタンとアルミナの相乗作用によって塩化ビニル系樹脂の炭化が更に促進されると共に、アルミナによって煙やガスが吸着される利点を有するので、極めて好ましく使用される。
【0083】
尚、塩化ビニル系樹脂や発泡剤は、前述の成形体A1 で用いたものと同じものが使用される。
【0084】
この成形体B1 のようにチタン化合物と発泡剤が含有されていると、有機物である塩化ビニル系樹脂の量が相対的に減少し、既述したように、燃焼に至る過程においてチタン化合物により熱遮断作用と炭化促進作用が発揮されると共に、発泡剤によっても熱遮断作用やガス捕獲作用が発揮されるため、成形体B1 の難燃性が向上し、発煙量や腐食性ガスの発生量が減少する。また、発泡剤として成形加工温度より高い200℃以上の温度で発泡を開始するものを用いると、成形時に発泡せず硬質の成形体を得ることができ、曲げ等の二次加工時にも発泡する心配がない。
【0085】
チタン化合物の含有量は、塩化ビニル樹脂100重量部に対して5〜50重量部とする必要があり、発泡剤の含有量は0.0005〜10重量部とする必要がある。チタン化合物の含有量が50重量部を越え、発泡剤の含有量が10重量部を越えると、難燃性は顕著に向上するが、成形体B1 の耐薬品性、強度、曲げ加工性などが低下する。一方、チタン化合物の含有量が5重量部を下回り、発泡剤の含有量が0.0005重量部を下回ると、熱遮断作用や炭化促進作用が不充分となって、難燃性を向上させることが困難となる。チタン化合物の更に好ましい含有量は8〜30重量部、発泡剤の更に好ましい含有量は0.05〜10重量部である。
【0086】
次に、成形体B2 は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン化合物を5〜50重量部、分解促進剤を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体B2 にも、成形に必要な鉛系又は錫系安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0087】
チタン化合物は上述の成形体B1 に用いたものと同じものが使用され、また、塩化ビニル系樹脂や分解促進剤は、前述の成形体A1 ,A2 に用いたものと同じものが使用される。
【0088】
この成形体B2 のようにチタン化合物と分解促進剤が含有されていると、チタン化合物の熱遮断作用と炭化促進作用により難燃性が向上することに加えて、燃焼時に分解促進剤により塩化ビニル系樹脂の分解が促進されて炭化が更に早められるため、優れた難燃性が発揮される。また、分解促進剤として200℃以上の高温で作用するものを使用すると、成形時や曲げ等の二次加工時に分解促進剤による塩化ビニル系樹脂の分解が生じず、強度のある成形体や曲げ加工体が得られる。
【0089】
チタン化合物の含有量は、前記成形体B1 の場合と同様、塩化ビニル樹脂100重量部に対して5〜50重量部とする必要があり、分解促進剤の含有量も同様に0.0005〜10重量部とする必要がある。その理由は前記成形体B1 の場合と同様であるので説明を省略する。尚、チタン化合物の更に好ましい含有量は8〜30重量部、分解促進剤の更に好ましい含有量は0.0005〜5重量部である。
【0090】
次に、成形体B3 は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン化合物を5〜50重量部、ラジカル発生剤を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体B3 にも、成形に必要な鉛系又は錫系安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0091】
そして、チタン化合物は前述の成形体B1 に用いたものと同じものが使用され、また、塩化ビニル系樹脂やラジカル発生剤は、前述の成形体A1 ,A3 に用いたものと同じものが使用される。
【0092】
この成形体B3 のようにチタン化合物とラジカル発生剤を含有させると、チタン化合物の熱遮断作用と炭化促進作用により難燃性が向上することに加えて、燃焼時にラジカル発生剤によってラジカルが発生し、塩化ビニル系樹脂の分解が促進されて炭化が更に早められるため、優れた難燃性が発揮される。また、ラジカル発生剤として200℃以上の高温で作用するものを用いると、成形時や二次加工時にラジカルを発生させることがないので、成形時や二次加工時における塩化ビニル系樹脂の劣化がなく、強度のある成形品や二次成形品を得ることができる。
【0093】
チタン化合物の含有量は、前記成形体B1 の場合と同様、塩化ビニル樹脂100重量部に対して5〜50重量部とする必要があり、ラジカル発生剤の含有量も同様に0.0005〜10重量部とする必要がある。その理由は前記成形体B1 の場合と同様であるので説明を省略する。尚、チタン化合物の更に好ましい含有量は8〜30重量部、ラジカル発生剤の更に好ましい含有量は0.0005〜5重量部である。
【0094】
次に、成形体B4 は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン化合物を5〜50重量部、架橋剤を0.0005〜10重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体B4 にも、成形に必要な鉛系又は錫系安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0095】
そして、チタン化合物は前述の成形体B1 に用いたものと同じものが使用され、また、塩化ビニル系樹脂や架橋剤は、前述の成形体A1 ,A4 に用いたものと同じものが使用される。
【0096】
この成形体B4 のようにチタン化合物と架橋剤を含有させると、チタン化合物の熱遮断作用と炭化促進作用により難燃性が向上することに加えて、外部からの熱と架橋剤の作用により樹脂が高分子量化され、耐熱性が高められると共にガス化し難くなるため、優れた難燃性が発揮される。また、架橋剤として200℃以上の高温で作用するものを用いると、成形時には架橋反応を生じないため、得られる成形体は従来と同様の良好な成形性を有し、種々の形状に二次加工できる。
【0097】
チタン化合物の含有量は、前記成形体B1 の場合と同様、塩化ビニル樹脂100重量部に対して5〜50重量部とする必要があり、架橋剤の含有量も同様に0.0005〜10重量部とする必要がある。その理由は前記成形体Aの場合と同様であるので説明を省略する。尚、チタン化合物の更に好ましい含有量は8〜30重量部、架橋剤の更に好ましい含有量は0.05〜5重量部である。
【0098】
以上の成形体B1 ,B2 ,B3 ,B4 においては、更に、塩素捕獲化合物又は無機質助剤の少なくともいずれか一種を2〜30重量部含有させてもよい。塩素捕獲化合物を含有させると、燃焼時に塩素が塩素捕獲化合物によって捕獲されるため、塩素ガスや塩化水素ガスなどの腐食性ガスの発生量が更に減少し、また、無機質助剤を含有させると、チタン化合物と無機質助剤が相乗して塩化ビニル系樹脂の炭化を一層促進するため、発煙量が更に減少して難燃性が一層向上する。
【0099】
塩素捕獲化合物としては、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩が好適であり、特に、平均粒径が0.5μm以下、好ましくは0.1μm以下の炭酸塩の粉体は、比表面積が大きく塩素と反応しやすいので極めて好適に使用される。その他、錫化合物、ゼオライト、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ナトリウム化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、リチウム化合物なども使用される。
【0100】
また、無機質助剤としては、シリカ、アルミナ、珪酸アルミニウム、タルクなどが単独で又は二種以上混合して使用される。
【0101】
塩素捕獲化合物や無機質助剤の含有量は2〜30重量部とする必要があり、2重量部より少ない場合は、腐食性ガスや煙の発生量があまり減少せず、難燃性の更なる向上も難しくなる。一方、含有量が30重量部を越える場合は、成形体の耐薬品性、強度、曲げ加工性、成形性などが低下する。塩素捕獲化合物の更に好ましい含有量は7〜20重量部であり、無機質助剤の更に好ましい含有量は2〜15重量部である。
【0102】
尚、上記の塩素捕獲化合物又は無機質助剤を前述した単層構造の成形体A1 〜A5 に同様に2〜30重量部含有させて難燃性を更に向上させるようにしてもよく、また、前述した複層構造の成形体A6 ,A7 の基層に含有させてもよい。
【0103】
以上説明した単層構造の成形体B1 ,B2 ,B3 ,B4 や、これらに塩素捕獲化合物又は無機質助剤を更に含有させた成形体は、チタン化合物、発泡剤、架橋剤、ラジカル発生剤、分解促進剤、塩素捕獲化合物、無機質助剤、その他の添加剤等を選択して配合した塩化ビニル系樹脂組成物を、押出成形、カレンダープレス、射出成形、その他の公知の成形技術によって、平板その他の所望の形状に成形して得られるものである。このような成形体は、そのまま、或は、更に二次加工して容器等を製作し、各種用途、特に半導体製造装置などに好適に用いられる。
【0104】
次に、複層構造の成形体B5 は、その基層が塩化ビニル系樹脂100重量部に対してチタン化合物を5〜50重量部含有せしめた層であり、該基層の少なくとも片面に積層一体化した表面層が、塩化ビニル系樹脂100重量部に対してチタン化合物を0〜30重量部、発泡剤を0.0005〜10重量部含有せしめた層よりなるものである。表面層のチタン化合物の含有量は、基層のそれより少なく含有させることが好ましい。
【0105】
塩化ビニル系樹脂、チタン化合物、発泡剤は、前記成形体B1 で用いたものと同じものが使用され、また、基層と表面層には、成形に必要な鉛系又は錫系安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。
【0106】
上記の表面層は、成形体B5 の表面の物性、特に耐薬品性や耐蝕性の低下を抑えるためのものであるから、基層の両面に形成することが望ましいが、基層の片面にのみ形成されていてもよく、その厚みは0.4〜1.1mm程度あれば充分である。
【0107】
このような複層構造の成形体B5 は、表面層のチタン化合物の含有量が30重量部以下と少ないので、成形体B5 の表面が塩化ビニル系樹脂本来の良好な耐薬品性及び耐蝕性を有し、表面層は脆弱化することがない。しかも、この成形体の基層には、熱遮断作用及び炭化促進作用を発揮するチタン化合物が5〜50重量部含有され、表面層には熱遮断作用及びガス捕獲作用を発揮する発泡剤が0.0005〜10重量部含有されているため、この成形体B5 は全体として優れた難燃性を有している。
【0108】
表面層のチタン化合物の含有量が30重量部を越えると、表面層の難燃性は向上するが、表面層の塩化ビニル系樹脂量が少なくなりすぎて、塩化ビニル系樹脂本来の良好な耐薬品性、耐蝕性を維持できなくなり、また、表面層の強度も低下するので、上記のようにチタン化合物の含有量は30重量部以下とする必要がある。チタン化合物の含有量は零とすることも可能であるが、このときは表面層の厚みを薄くし且つ基層の酸化チタンの含有量を多くすればよい。
【0109】
更に、表面層の発泡剤の含有量が0.0005重量部より少なくなると、発泡による熱遮断作用やガス捕獲作用が不充分となり、逆に10重量部より多くなると、表面層の耐薬品性や耐蝕性が低下すると共に強度も低下するため、上記のように表面層の発泡剤の含有量は0.0005〜10重量部とする必要がある。なお、表面層のチタン化合物の更に好ましい含有量は3〜15重量部であり、発泡剤の更に好ましい含有量は0.05〜10重量部である。
【0110】
また、基層のチタン化合物の含有量が5重量部より少なくなると難燃性を向上させることが難しくなり、50重量部より多量に含有させると基層の強度、曲げ加工性などが低下するため、上記のように基層におけるチタン化合物の含有量は5〜50重量部とする必要がある。
【0111】
この成形体B5 においては、特に表面層のチタン化合物の含有量を基層のそれより少なくすることで、チタン化合物の耐薬品性への影響を極力抑え、基層で難燃性を向上させることが好ましい。そのため、表面層にチタン化合物を3〜15重量部、基層に15〜35重量部含有させるのが好ましく採用される。
【0112】
次に、複層構造の成形体B6 は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン化合物を5〜50重量部、ラジカル発生剤、分解促進剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめた層であり、表面層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対してチタン化合物を0〜30重量部、発泡剤を0.0005〜10重量部含有せしめた層よりなるものである。
【0113】
塩化ビニル系樹脂、チタン化合物、発泡剤、ラジカル発生剤、分解促進剤は、前記成形体B1 ,B2 ,B3 で用いたものと同じものが使用され、基層と表面層には必要な鉛系又は錫系安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。また、表面層の厚みは、前記成形体B5 の表面層の厚みと同様である。
【0114】
この成形体B6 は、表面層が前記成形体B5 の表面層と同じ組成であるから、表面が良好な耐薬品性及び耐蝕性を有している。しかも、基層には前記成形体B2 ,B3 と同様に分解促進剤、ラジカル発生剤が含まれ、表面層には発泡剤が含まれるので、基層の塩化ビニル系樹脂の早期の分解で生じた腐食性ガスや煙が、表面層の発泡剤で生成された気泡により捕獲されて、炭化促進とガス捕獲がバランス良く行われる。従って、この成形体B6 は全体として優れた難燃性を有している。
【0115】
尚、これらの複層構造の成形体B5 ,B6 においても、前述の塩素捕獲化合物や無機質助剤を基層に2〜30重量部含有させることが可能であり、その場合は難燃性が更に向上し、発煙量や耐食性ガス発生量が減少する。
【0116】
これらの複層構造の成形体B5 ,B6 は、チタン化合物、ラジカル発生剤、分解促進剤、塩素捕獲化合物、無機質助剤、その他の添加剤等を選択して配合した基層成形用の塩化ビニル系樹脂組成物と、チタン化合物、発泡剤、その他の添加剤等を配合した表面層成形用の塩化ビニル樹脂組成物を調製し、これらの組成物を多層押出成形、カレンダープレス、ラミネートその他の手段によって、所望の形状に積層成形して製造されるものであり、優れた難燃性に加えて表面の耐薬品性、耐蝕性が良好であるため、表面の耐薬品性等が要求される用途、例えば半導体製造装置の一部である洗浄槽などの材料として好適に用いられる。
【0117】
尚、上記複層構造の難燃性塩化ビニル樹脂成形体B5 ,B6 は、表面層にチタン化合物と発泡剤を含有させたものであるが、発泡剤に代えて他の難燃性付与成分である分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤のいずれかを含有させてもよい。
【0118】
次に、チタン化合物を含み、難燃性付与成分を含まない成形体Cについて説明する。
【0119】
この成形体Cは、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、チタン酸カリウムを5〜50重量部含有せしめた単層構造の成形体であり、この成形体Cにも、成形に必要な鉛系又は錫系安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などの各種添加剤が適量配合される。塩化ビニル系樹脂としては前述の各成形体に用いたもの同じものが使用される。
【0120】
この成形体Cのように、チタン化合物であるチタン酸カリウムを5〜50重量部含有させると、火災時にチタン酸カリウムが熱遮断作用と炭化促進作用を発揮するため、難燃性が向上し、煙や腐食性ガスの発生量が減少する。
【0121】
チタン酸カリウムは、粒状のものや繊維状のもの等、どのような形状のものでも使用されるが、平均粒径が0.1〜0.5μmの粒状のものは混練性が良く、また、繊維径が0.1〜1μmで長さが5〜30μmの繊維状のものは高強度で高剛性の成形体を得ることができる。
【0122】
チタン酸カリウムの含有量は5〜50重量部とすることが必要であって、5重量部未満では難燃性を向上させることが難しくなり、50重量部より多量に含有させると、成形体Cの耐薬品性、強度、曲げ加工性などが低下する。チタン酸カリウムの更に好ましい含有量は8〜30重量部である。
【0123】
このような単層構造の成形体Cは、チタン酸カリウム、その他の添加剤等を選択して配合した塩化ビニル系樹脂組成物を、押出成形、カレンダープレス、射出成形、その他の公知の成形技術によって、平板その他の所望の形状に成形して得られるものであり、そのまま、或は、更に二次加工して、耐熱性が要求される各種用途に使用される。
【0124】
次に、リン系難燃剤又は亜鉛化合物と、好ましくは難燃性付与成分のいずれかを含む透明な成形体Dについて説明する。この成形体Dの主な実施形態としては、塩素化度の高い塩化ビニル系樹脂を使用する単層構造の成形体D1 、D2 、塩素化度が普通の塩化ビニル系樹脂を使用する単層構造の成形体D3 、塩素化度の高い塩化ビニル系樹脂と塩素化度が普通の塩化ビニル系樹脂のいずれか一方又は双方を使用する積層構造の成形体D4 ,D5 ,D6 ,D7 などを挙げることができる。
【0125】
まず、塩素化度が略58〜略73%と高い塩化ビニル系樹脂を用いる透明な成形体D1 は、該塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、リン系難燃剤を0.5〜15重量部、塩素化ポリエチレンを0.5〜20重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有させたものを基本組成とし、所望する場合には、更に難燃性付与成分である発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくとも一種を0.0005〜10重量部含有させたものである。
【0126】
塩素化度が略58〜略73%の塩化ビニル系樹脂としては、前述の成形体A7 の表面層に用いたものと同じもの、即ち、塩素化度が略58〜略73%の後塩素化塩化ビニル樹脂や、この後塩素化塩化ビニル樹脂に一般の塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等を混合した平均塩素化度が略58〜略73%の混合樹脂などが使用される。このうち、後塩素化塩化ビニル樹脂のものが好ましく使用される。
【0127】
塩素化度が略58〜略73%と高い上記の塩化ビニル系樹脂は、塩素化度が略56%の一般の塩化ビニル樹脂に比べると、熱分解により多量の塩素ガスを発生して燃焼を遅らせるため、難燃性に優れた成形体を得るのに有利な材料樹脂である。難燃性の観点からは塩素化度が高い樹脂ほど有利であが、塩素化度が略73%より高い塩化ビニル系樹脂は製造が困難であり、熱安定性、成形性、曲げ加工性、耐薬品性、耐食性なども悪いので、原料樹脂として不適当である。
【0128】
塩化ビニル系樹脂に含有させる上記のリン系難燃剤としては、含ハロゲンリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、非ハロゲンリン酸エステル、非ハロゲン縮合リン酸エステル、正リン酸エステル等の有機リン系のものが適しており、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が好ましく使用される。
【0129】
このような有機リン系難燃剤は、ハロゲン系難燃剤や酸化アンチモン等の難燃剤に比べて透明性に優れるため、透明な成形体D1 を得るのに有利であり、しかも、燃焼時には、この有機リン系難燃剤が熱分解してリン酸を生成し、該リン酸が塩化ビニル系樹脂の表面に残留して酸素移動を妨げると共に、表面の炭化を促進して燃焼を抑制するため、成形体D1 の難燃性を向上させることができる。また、この有機リン酸エステルは、内部滑剤或は外部滑剤としても作用するので、他の高級脂肪酸等の難燃性を付与しない滑剤を使用しなくてもよい利点がある。
【0130】
なお、赤リンなどの無機リン系難燃剤も、透明性を損なわない範囲で使用可能である。
【0131】
塩化ビニル系樹脂に含有させる上記の塩素化ポリエチレンは補強剤としても作用するもので、機械的強度を向上させ、成形体D1 に必要な実用強度を付与する。該塩素化ポリエチレンは、その塩素化度が25〜45%のものが好適に使用される。かかる塩素化ポリエチレンを含有させると、熱分解により発生する塩素ガスが樹脂の燃焼を遅らせるため、成形体D1 の難燃性を向上させることができる。塩素化度が25%未満の塩素化ポリエチレンは、塩素ガスの発生量が少ないので難燃性の向上には不利であり、塩素化度が45%以上の塩素化ポリエチレンは、補強効果があまり向上しないという不都合があるので好ましくない。なお、補強剤としてアクリル系やMBS系のものも考えられるが、これらは難燃作用がないので好ましくない。
【0132】
前記のリン系難燃剤は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.5〜15重量部含有させる必要があり、塩素化ポリエチレンは0.5〜20重量部含有させる必要がある。リン系難燃剤と塩素化ポリエチレンの含有量がいずれも0.5重量部未満の場合は、成形体D1 の難燃性を充分に向上させることが困難となる。一方、リン系難燃剤の含有量が15重量部より多くなると、透明性の低下を招くようになり、また、塩素化ポリエチレンの含有量が20重量部より多くなると、透明性が低下し、必要な全光線透過率が得られない。リン系難燃剤の好ましい含有量は2〜10重量部、塩素化ポリエチレンのそれは3〜15重量部である。
【0133】
可塑剤や滑剤の配合は難燃性を弱め透明性を低下させるので、できるだけ配合しないようにすることが望ましく、できれば配合しないことが望ましい。しかし、熱安定剤である錫系安定剤は配合しなければならない。錫系安定剤としては、ジブチル錫マレート系、ジブチル錫ラウレート系などの従来公知のものが全て使用可能であり、その含有量は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して0.5〜7重量部とする必要がある。0.5重量部未満では成形時の熱安定性が低下し、一方、7重量部より多く配合してもそれに見合った熱安定効果が得られないので無駄になる。尚、鉛系の安定剤は、透明な塩化ビニル系樹脂の成形体を得る場合には不適当である。
【0134】
上記のような基本組成の透明な難燃性塩化ビニル系樹脂成形体D1 には、前述した難燃性付与成分である発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を含有させて難燃性を一層高めたり、紫外線吸収剤を含有させて耐候性を高めてもよい。
【0135】
上記の難燃性付与成分は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し0.0005〜10重量部の割合で含有させることが必要であって、含有量が0.0005重量部より少なくなると、成形体D1 の難燃性を更に向上させることが難しくなり、一方、含有量を10重量部より多くしても、それに見合った難燃性向上効果が得られないので無駄となる。難燃性付与成分の個々の好ましい含有量は、発泡剤では0.05〜10重量部、分解促進剤では0.0005〜5重量部、ラジカル発生剤では0.0005〜5重量部、架橋剤では0.005〜5重量部である。
【0136】
なお、上記組成物に顔料、染料等の着色剤や紫外線吸収剤等を、難燃性を阻害しない範囲で適量配合してもよい。
【0137】
上述した基本組成の成形体D1 は、その厚さが5mmのときに、全光線透過率が50%以上、ヘイズ値が60%以下の透明な成形体となり、採光性や透視性が良好である。上記全光線透過率とヘイズ値の好ましい値は、それぞれ70%以上、30%以下である。そして、この基本組成の成形体D1 は、塩化ビニル系樹脂の塩素化度が高い上に、リン系難燃剤と塩素化ポリエチレンによって難燃性が高められるため、燃え難く発煙量も少ない。また、難燃性付与成分を更に含有させた成形体は難燃性が一層向上する。
【0138】
塩素化度が略58〜略73%と高い塩化ビニル系樹脂を用いるもう一つの透明な成形体D2 は、該塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、リン系難燃剤又は塩素化ポリエチレンのいずれかを0.5〜15重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部、難燃性付与成分である発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくとも一種を0.0005〜10重量部含有させたものである。
【0139】
塩素化度が略58〜略73%の塩化ビニル系樹脂、リン系難燃剤、塩素化ポリエチレン、錫系安定剤としては、前述の成形体D1 に用いたものと同じものが使用され、また、難燃性付与成分としては既述したものが使用される。また、その好ましい含有量も成形体D1 と同じである。
【0140】
かかる成形体D2 は、厚さが5mmのときに、全光線透過率が40%以上、ヘイズ値が60%以下となり、採光性や透視性が良好なものであるが、好ましくは、全光線透過率が60%以上、ヘイズ値が30%以下となるように、各成分の含有量を上記の含有量の範囲内で調整するのがよい。
【0141】
この成形体D2 のように、難燃性付与成分である発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくとも一種を必須成分として配合する場合は、該難燃性付与成分によって成形体D2 の難燃性が高められるので、前述の成形体D1 のようにリン系難燃剤と塩素化ポリエチレンの双方を含有させる必要がなくなり、リン系難燃剤又は塩素化ポリエチレンのどちらか一方を含有させるだけで、成形体D2 に優れた難燃性を付与することが可能となる。
【0142】
リン系難燃剤又は塩素化ポリエチレンのいずれかの含有量を0.5重量部より少なくし、且つ、難燃性付与成分の含有量を0.0005重量部より少なくすると、成形体D2 の透明性は向上するけれども、成形体D2 の難燃性を顕著に向上させることは難しくなる。一方、リン系難燃剤又は塩素化ポリエチレンのいずれかの含有量を15重量部より多くし、且つ、難燃性付与成分の含有量を10重量部より多くしても、それに見合った難燃性向上効果が得られず、却って成形体D2 の透明性の大幅な低下を招くことになる。
【0143】
尚、この成形体D2 においても、顔料、染料等の着色剤や紫外線吸収剤等を、難燃性を阻害しない範囲で適量配合することが可能である。
【0144】
上記のような透明の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体D1 ,D2 は、塩素化度が略58〜略73%の塩化ビニル系樹脂にリン系難燃剤及び塩素化ポリエチレンの双方と錫系安定剤とを配合した樹脂組成物、或は、塩素化度が略58〜略73%の塩化ビニル系樹脂にリン系難燃剤又は塩素化ポリエチレンのいずれか一方と錫系安定剤と難燃性付与成分の少なくとも一種を配合した樹脂組成物を調製し、これらの樹脂組成物を溶融押出成形、カレンダープレス成形、射出成形、その他の公知の成形手段で、平板、パイプ、丸棒、溶接棒、アングル等の異形品など、所望の形状に成形することによって製造されるものであり、そのまま、或は、二次加工して各種の用途に使用される。尚、成形体D1 ,D2 の厚さについては制限がなく、用途などを考慮して適宜決定すればよいが、通常、3〜15mm程度の厚さにすると充分な実用強度を付与することができる。
【0145】
次に、塩化ビニル系樹脂を用いる成形体D3 は、該塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、亜鉛化合物を金属亜鉛の量に換算して0.005〜5重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有せしめたものであり、その全光線透過率が40%以上、ヘイズ値が60%以下の透明な成形体である。かかる成形体D3 は、亜鉛化合物により塩化ビニル系樹脂の分解が促進されて炭化が早められるので、優れた難燃性を有する。全光線透過率とヘイズ値の好ましい範囲は、それぞれ60%以上、30%以下であり、このような全光線透過率とヘイズ値が得られるように亜鉛化合物や錫系安定剤の含有量を上記の範囲内で調整することが望ましい。
【0146】
塩化ビニル系樹脂としては、塩素化度が56.4%の一般の塩化ビニル樹脂や、塩素化度が57〜73%の後塩素化塩化ビニル樹脂や、これらの樹脂を混合して塩素化度を好みのものにした樹脂や、これらの塩化ビニル樹脂に酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の一種又は二種を混合した樹脂が使用される。これらの樹脂のうち、塩素化度が略58〜73%の塩化ビニル系樹脂を用いると、難燃性に優れた成形耐を得るのに好ましい。また、塩素化度が56.4%の塩化ビニル樹脂を用いると、塩素化度が58〜73%の樹脂より耐薬品性に優れた成形体とすることができ、しかも、亜鉛化合物により炭化が早められ難燃性を付与できるので好ましく用いられる。
【0147】
亜鉛化合物としては、前述の分解促進剤として使用されるステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛等が好適であり、このような亜鉛化合物を含有させると、燃焼時に亜鉛化合物の樹脂分解促進作用や金属亜鉛の良好な熱伝導性によって塩化ビニル系樹脂の炭化が促進されるため、難燃性に優れた成形体となる。亜鉛化合物の含有量が金属亜鉛の量に換算して0.005重量部より少なくなると、成形体に充分な難燃性を付与することが困難となり、一方、5重量部より多くなると、透明性が悪くなる。各亜鉛化合物の亜鉛含有率は、ステアリン酸亜鉛で10.5%、ラウリン酸亜鉛で14.0%、パラターシャリーブチル安息香酸亜鉛で14.5%であるので、金属亜鉛の量が上記範囲となるように各亜鉛化合物を含有させる。尚、亜鉛化合物は滑剤としても作用するので、他の不透明にしたり燃え易くする滑剤を減らしたり、使用しなくても済むようになる。
【0148】
また、錫系安定剤としては、前述のジブチル錫マレート系、ジブチル錫ラウレート系などの従来公知のものが使用され、その含有量は前述の成形体D1 ,D2 の場合と同様である。
【0149】
尚、この成形体D3 には、上記の亜鉛化合物と錫系安定剤の他に、可塑剤や滑剤や加工助剤や着色剤や紫外線吸収剤などが適量配合される。
【0150】
上記のような組成の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体D3 には、難燃性付与成分である前述の発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を更に含有させて、難燃性を一層向上させてもよい。難燃性付与成分の含有量は、前述の成形体D1 ,D2 の場合と同様である。
【0151】
このような成形体D3 は、亜鉛化合物と錫系安定剤の他に、可塑剤、滑剤、加工助剤、必要に応じて難燃性付与成分などを適量配合した塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、前述の成形体D1 ,D2 の場合と同様に溶融押出成形、カレンダープレス成形、射出成形、その他の公知の成形手段で所望の形状に成形することによって製造されるものであり、そのまま、或は、二次加工して各種の用途に使用される。
【0152】
以上説明した成形体D1 ,D2 ,D3 はいずれも単層構造のものであるが、例えば、基層の両面又は片面に表面層を形成した以下のような積層構造の成形体D4 ,D5 ,D6 ,D7 としてもよい。
【0153】
即ち,成形体D4 は、塩素化度が略58〜略73%の塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、リン系難燃剤を0.5〜15重量部、塩素化ポリエチレンを0.5〜20重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有させると共に、必要に応じて難燃性付与成分の少なくとも一種を更に含有させたもので厚さ2〜14mmの基層を形成し、表面層は、塩素化度が略56%の塩化ビニル系樹脂100重量部対し、亜鉛化合物を金属亜鉛の量に換算して0.005〜5重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有させると共に、可塑剤や滑剤や加工助剤等と、必要に応じて難燃性付与成分の少なくとも一種を適量配合したもので厚さ0.4〜2mmの層に形成したものである。
【0154】
このような積層構造の成形体D4 は、表面層が耐薬品性、耐食性に優れるだけでなく、成形時の熱安定性が良好であり、しかも、厚み方向の熱分解差がなくなるため難燃性に優れたものとなる。
【0155】
また、成形体D5 は、塩素化度が略58〜略73%の透明な塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、リン系難燃剤を0.5〜15重量部、塩素化ポリエチレンを0.5〜20重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有させた基本組成に、更に前記の分解促進剤を0.0005〜10重量部含有させたもので厚さ2〜14mmの基層を形成し、該基本組成に更に発泡剤を0.0005〜10重量部含有させたもので厚さ0.4〜2mmの表面層を形成した成形体である。
【0156】
このような成形体D5 は、発泡剤の成形体中に占める含有総量が少ないので透明性が良好であり、しかも、燃焼時には基層で分解して生じる煙や塩化水素ガスが表面層の発泡により生じた気泡に取り込まれるため、揮散するガス量が少なく優れた難燃性を発揮する。この場合、表面層の樹脂として、基層のものより塩素化度の低い樹脂、或は一般塩化ビニル樹脂を加えて見掛けの塩素化度を低下させた樹脂を使用することで、耐薬品性を向上させることができる。
【0157】
また、成形体D6 は、塩素化度が略56%の一般の塩化ビニル系樹100重量部に対して、亜鉛化合物を金属亜鉛の量に換算して0.005〜5重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有させたもので厚さ2〜14mmの基層を形成し、表面層は、前記の塩素化度が略56%の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有させると共に、発泡剤を0.0005〜10重量部含有させたもので厚さ0.4〜2mmの層に形成した成形体である。
【0158】
このような成形体D6 の場合も、基層で生じるガスを表面層に生じる気泡で取り込むことによりガス発生量を減少させることができるので、優れた難燃性を発揮する。なお、基層や表面層には、可塑剤や加工助剤や紫外線吸収剤を適量配合してもよい。
【0159】
また、成形体D7 は、塩素化度が略56%の一般の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、錫系安定剤を0.5〜7重量部、発泡剤、分解促進剤、ラジカル発生剤、架橋剤の少なくともいずれか一種を0.0005〜10重量部含有せしめたもので厚さ2〜14mmの基層を形成し、表面層は、塩素化度が58〜73%の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、リン系難燃剤及び/又は塩素化ポリエチレンを0.5〜20重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部含有せしめたもので厚さ0.4〜2.0mmの層に形成した成形体である。
【0160】
このような成形体D7 の場合は、基層は発泡剤等により、表面層はリン系難燃剤等により、それぞれ難燃化されており、優れた難燃性を発揮する。
【0161】
次に、本発明の更に具体的な実施例を説明する。
【0162】
[実施例1〜4]
市販の塩素化度が略56%の塩化ビニル樹脂(U−PVC)100重量部に対して、鉛安定剤4重量部、滑剤2重量部、加工助剤4重量部を添加し、均一に混合して基本配合組成物(U−PVC使用)を調製した。この基本組成物110重量部に対し、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを、架橋剤としてトリアジンチオールを、ラジカル発生剤としてジアミルパーオキサイドを、分解促進剤としてラウリン酸亜鉛を、表1に示す割合で選択的に混合して4種類の樹脂組成物を調製し、これらの樹脂組成物でカレンダーシートを作製した後、プレスすることによって、組成が異なる4種類の単層構造の難燃性塩化ビニル樹脂板(厚さ5mm)を得た。
【0163】
そして、800℃に加熱した電気炉に上記4種類の樹脂板(50×50×5mm)を入れ、着火の有無、着火するまでの時間を調べて難燃性テストを行った。その結果を下記の表1に示す。
【0164】
また、上記の各樹脂板について、その機械的強度と耐薬品性を調べ、その結果を表1に併せて示した。この機械的強度はJIS K6745に基づいてアイゾット衝撃強さ、引張り強度、伸び率を測定したものであり、耐薬品性は97%硫酸、35%硫酸、28%アンモニア水の各薬液に23℃で7日間浸漬した後の外観変色を観察し、◎を変色なし、○を僅かに変色あり、△を変色あり、×を著しい変色あり、として表示したものである。
【0165】
[実施例5]
塩素化度が略64%の後塩素化塩化ビニル樹脂(C−PVC)100重量部に対して、鉛安定剤4重量部、滑剤2重量部、加工助剤4重量部を添加し、均一に混合して基本配合組成物(C−PVC使用)を調製した。この基本配合組成物110重量部に対し、分解促進剤としてラウリン酸亜鉛を0.5重量部混合して樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物を用いてカレンダーシートを作製した後、プレスすることによって単層構造の難燃性塩化ビニル樹脂板(厚さ5mm)を得た。
【0166】
そして、この樹脂板について、実施例1〜4と同様に難燃性テストを行うと共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を下記の表1に示す。
【0167】
[実施例6]
実施例1〜4で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)110重量部に対し、ラジカル発生剤としてジアミルパーオキサイドを0.5重量部配合して基層用組成物を調製すると共に、実施例1〜4で調製した基本配合組成物110重量部に対し、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを0.5重量部配合して表面層用組成物を調製した。
【0168】
そして、これらの基層用組成物及び表面層用組成物のカレンダーシートをそれぞれ作製し、重ね合わせてプレスすることにより、厚さ4mmの基層の両面に厚さ0.5mmの表面層を有する三層構造の難燃性塩化ビニル樹脂板(全体の厚さ5mm)を得た。
【0169】
この樹脂板について、実施例1〜5と同様に難燃性テストを行うと共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を表1に示す。
【0170】
[実施例7]
実施例1〜4で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)110重量部に対し、分解促進剤としてラウリン酸亜鉛を0.5重量部配合して基層用組成物を調製すると共に、実施例1〜4で調製した基本配合組成物110重量部に対し、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを0.3重量部、分解促進剤としてラウリン酸亜鉛を0.2重量部配合して表面層用組成物を調製した。
【0171】
そして、これらの基層用組成物及び表面層用組成物のカレンダーシートをそれぞれ作製し、重ね合わせてプレスすることにより、厚さ4mmの基層の両面に厚さ0.5mmの表面層を有する三層構造の難燃性塩化ビニル樹脂板(全体の厚さ5mm)を得た。
【0172】
この樹脂板について、実施例1〜5と同様に難燃性テストを行うと共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を表1に示す。
【0173】
【表1】
Figure 0004488578
【0174】
この表1を見れば、難燃性付与成分の少なくとも一種を含有させた実施例1〜7の難燃性塩化ビニル樹脂板はいずれも着火せず、良好な難燃性を有することが分かる。そして、塩素化度が略56%の塩化ビニル樹脂(U−PVC)を使用した実施例1,2,3,4,6,7の樹脂板は、衝撃強さ、引張り強度、伸びなども充分である。これに対し、塩素化度が略64%の後塩素化塩化ビニル樹脂(C−PVC)を使用した実施例5の樹脂板は、衝撃強さ、引張り強度、伸び等が他の実施例の樹脂板に比べるとやや劣っているが、それでも充分なレベルにあり、また、耐薬品性に弱い高塩素化度の後塩素化塩化ビニル樹脂を使用しているにも拘らず、分解促進剤としてのラウリン酸亜鉛を0.5重量部と少量含有させることによって優れた耐薬品性を具備している。また、難燃性付与成分の含有量が0.5重量部と少ない実施例6,7の三層構造の樹脂板も、優れた耐薬品性を有している。
【0175】
[実施例8〜12]
実施例1〜4で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)110重量部に対し、チタン化合物として、実施例8〜11では表面がアルミナで被覆された酸化チタン(平均粒径:略0.2μm以下)、実施例12では繊維状のチタン酸カリウムを、また、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを、架橋剤としてトリアジンチオールを、ラジカル発生剤としてジアミルパーオキサイドを、分解促進剤としてラウリン酸亜鉛を、それぞれ下記の表2に示す割合で選択的に混合して5種類の樹脂組成物を調製した。そして、これらの樹脂組成物でカレンダーシートを作製した後、プレスすることによって、組成が異なる5種類の単層構造の難燃性塩化ビニル樹脂板(厚さ5mm)を得た。
【0176】
これらの樹脂板について、実施例1〜4と同様に難燃性テストを行うと共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0177】
[実施例13]
実施例1〜4で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)110重量部に対し、チタン化合物として酸化チタンを30重量部配合して基層用組成物を調製した。また、実施例1〜4で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)110重量部に対し、チタン化合物として酸化チタンを5重量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを0.5重量部配合して、表面層用組成物を調製した。
【0178】
そして、これらの基層用組成物及び表面層用組成物のカレンダーシートをそれぞれ作製し、重ね合わせてプレスすることにより、厚さ4mmの基層の両面に厚さ0.5mmの表面層を有する三層構造の難燃性塩化ビニル樹脂板(全体の厚さ5mm)を得た。
【0179】
この樹脂板について、実施例1〜4と同様に難燃性テストを行うと共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0180】
[実施例14]
実施例1〜4で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)110重量部に対し、チタン化合物として酸化チタンを30重量部、分解促進剤としてラウリン酸亜鉛を0.5重量部配合して基層用組成物を調製した。また、実施例1〜4で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)110重量部に対し、チタン化合物として酸化チタンを5重量部、発泡剤としてアゾジカルボンアミドを0.5重量部配合して表面層用組成物を調製した。
【0181】
そして、これらの基層用組成物及び表面層用組成物のカレンダーシートをそれぞれ作製し、重ね合わせてプレスすることにより、厚さ4mmの基層の両面に厚さ0.5mmの表面層を有する三層構造の難燃性塩化ビニル樹脂板(全体の厚さ5mm)を得た。
【0182】
この樹脂板について、実施例1〜4と同様に難燃性テストを行うと共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0183】
[比較例1〜2]
実施例1〜4で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)110重量部に対し、チタン化合物として酸化チタンを4重量部混合した樹脂組成物(比較例1)と、酸化チタンを55重量部混合した樹脂組成物(比較例2)を調製し、実施例8〜12と同様にカレンダーシートを作製した後、プレスすることによって、2種類の比較用の単層構造の難燃性塩化ビニル樹脂板(厚さ5mm)を得た。
【0184】
そして、これらの樹脂板について、実施例1〜4と同様に難燃性テストを行うと共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0185】
【表2】
Figure 0004488578
【0186】
この表2を見れば、実施例8〜14の難燃性塩化ビニル樹脂板はいずれも着火せず、良好な難燃性を有しており、衝撃強さ、引張り強度、伸びなども充分である。特に、チタン化合物の含有量が少ない表面層を備えた実施例13,14の樹脂板は、耐薬品性にも優れているし、繊維状のチタン酸カリウムを用いた実施例12の樹脂板は、含有量が少なくても機械的強度に優れていることが分かる。
【0187】
これに対し、チタン化合物の含有量が多過ぎる比較例2の樹脂板は、難燃性に優れるけれども耐薬品性に劣っており、衝撃強さや伸びも劣っている。また、チタン化合物の含有量が少なすぎる比較例1の樹脂板は、強度や耐薬品性が良いけれども、90秒で着火が見られ、難燃性に劣っていることが分かる。
【0188】
[実施例15〜18]
塩素化度が略64%の後塩素化塩化ビニル樹脂(C−PVC)100重量部に対し、ジブチル錫マレート系の熱安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して、透明成形体用の基本配合組成物(C−PVC使用)を調製した。
【0189】
そして、この基本配合組成物(C−PVC使用)112重量部に対し、分解促進剤としてステアリン酸亜鉛を、発泡剤としてヒドラジド化合物を、架橋剤としてトリアジンチオールを、ラジカル発生剤としてジアミルパーオキサイドを、下記の表3に示す割合で選択的に混合して4種類の樹脂組成物を調製し、これらの樹脂組成物を用いて厚さ0.5mmのカレンダーシートを作製した後、該カレンダーシートを10枚重ねてプレスすることにより、組成が異なる4種類の単層構造の透明な難燃性塩化ビニル樹脂板(厚さ5mm)を得た。
【0190】
これらの透明な樹脂板について、JIS K−7105に基づいて全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、実施例1〜4と同様に難燃性テストを行った。その結果を下記の表3に示す。
【0191】
[実施例19〜22]
塩素化度が略56%の一般の塩化ビニル樹脂(U−PVC)100重量部に対し、ジブチル錫マレート系の熱安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して、透明成形体用の基本配合組成物(U−PVC使用)を調製した。
【0192】
そして、この基本配合組成物(U−PVC使用)112重量部に対し、分解促進剤としてステアリン酸亜鉛を、発泡剤としてヒドラジド化合物を、架橋剤としてトリアジンチオールを、ラジカル発生剤としてジアミルパーオキサイドを、下記の表3に示す割合で選択的に混合して4種類の樹脂組成物を調製し、これらの樹脂組成物を用いて厚さ0.5mmのカレンダーシートを作製した後、該カレンダーシートを10枚重ねてプレスすることにより、組成が異なる4種類の単層構造の透明な難燃性塩化ビニル樹脂板(厚さ5mm)を得た。
【0193】
これらの透明な樹脂板について、実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表3に示す。
【0194】
[実施例23]
実施例19〜22で調製した基本配合組成物(U−PVC使用)112重量部に対し、分解促進剤としてステアリン酸亜鉛を0.7重量部配合して基層用組成物を調製した。また、実施例15〜18で調製した基本配合組成物(C−PVC使用)112重量部に対し、分解促進剤としてステアリン酸亜鉛を0.3重量部、発泡剤としてヒドラジド化合物を0.1重量部配合して表面層用組成物を調製した。
【0195】
そして、これらの基層用組成物及び表面層用組成物のカレンダーシートをそれぞれ作製し、重ね合わせてプレスすることにより、厚さ4mmの基層の両面に厚さ0.5mmの表面層を有する三層構造の透明な難燃性塩化ビニル樹脂板(全体の厚さ5mm)を得た。
【0196】
この透明な樹脂板について、実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表3に示す。
【0197】
【表3】
Figure 0004488578
【0198】
この表3を見ると、実施例15〜23の透明な樹脂板はいずれも着火せず、各樹脂板に含有される難燃性付与成分の働きによって良好な難燃性を発揮することが分かる。そして、塩素化度が略56%の通常の塩化ビニル樹脂(U−PVC)を使用した実施例19〜22の単層構造の樹脂板や、該通常の塩化ビニル樹脂(U−PVC)を基層に使用した実施例23の三層構造の樹脂板は、全光線透過率が80%以上、ヘイズ値が11%以下であり、透明性に優れていることが分かる。これに対し、本来、透明性があまり良くない高塩素化度の後塩素化塩化ビニル(C−PVC)を使用した実施例15〜18の透明な樹脂板は、通常の塩化ビニル樹脂(U−PVC)を使用した実施例19〜23の樹脂板に比べると透明性がやや劣るとは言うものの、それでも全光線透過率が72%以上、ヘーズ値が22%未満であり、良好な透明性を有することが分かる。
【0199】
[実施例24]
塩素化度が略64%の後塩素化塩化ビニル樹脂(C−PVC)100重量部に対し、リン系難燃剤としてトリクレジルホスフェートを5.0重量部、塩素化ポリエチレンを7.0重量部、ジブチル錫マレート系の熱安定剤を4.0重量部配合して樹脂組成物を調製した。そして、この樹脂組成物を用いて厚さ0.5mmのカレンダーシートを作製し、このカレンダーシートを10枚重ねてプレスすることにより、厚さ5mmの透明な難燃性塩化ビニル樹脂板を製造した。
【0200】
この透明な樹脂板について、実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表4に示す。
【0201】
[実施例25]
実施例24で調製した樹脂組成物に、分解促進剤としてステアリン酸亜鉛を更に0.2重量部配合し、これを用いて実施例24と同様に厚さ5mmの透明な難燃性塩化ビニル樹脂板を製造した。
【0202】
そして、この透明な樹脂板について実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表4に示す。
【0203】
[実施例26]
実施例24で調製した樹脂組成物に、発泡剤としてヒドラジド化合物を更に0.3重量部配合し、これを用いて実施例24と同様に厚さ5mmの透明な難燃性塩化ビニル樹脂板を製造した。
【0204】
そして、この透明な樹脂板について実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表4に示す。
【0205】
[実施例27]
実施例25で調製した樹脂組成物を用いて作製したカレンダーシートを6枚重ねると共に、その上下両面に、実施例26の樹脂組成物で作製したカレンダーシートを2枚ずつ重ねてプレスすることにより、厚さ3mmの芯層の上下両面に厚さ1mmの表面層を積層一体化した三層構造の透明な難燃性塩化ビニル樹脂板(全体の厚さ5mm)を製造した。
【0206】
この透明な樹脂板について、実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表4に示す。
【0207】
[実施例28]
塩素化度が56.4%の一般の塩化ビニル樹脂(U−PVC)100重量部に対し、亜鉛化合物としてステアリン酸亜鉛を0.2重量部(金属亜鉛の量に換算すると0.02重量部)、ジブチル錫マレート系の安定剤を4.0重量部、滑剤としてステアリン酸を0.5重量部、可塑剤としてDOPを1.0重量部配合して樹脂組成物を調製した。
【0208】
そして、この樹脂組成物を用いて、厚さ0.5mmのカレンダーシートを作製し、このカレンダーシートを10枚重ねてプレスすることにより、厚さ5mmの単層構造の透明な難燃性塩化ビニル樹脂板を製造した。
【0209】
この透明な樹脂板について、実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表4に示す。
【0210】
[実施例29]
塩素化度が略64%の後塩素化塩化ビニル樹脂(C−PVC)100重量部に対し、リン系難燃剤としてトリクレジルホスフェートを7.0重量部、ジブチル錫マレート系の熱安定剤を4.0重量部、発泡剤としてヒドラジド化合物を0.3重量部配合して樹脂組成物を調製した。そして、この樹脂組成物を用いて厚さ0.5mmのカレンダーシートを作製し、このカレンダーシートを10枚重ねてプレスすることにより、厚さ5mmの透明な難燃性塩化ビニル樹脂板を製造した。
【0211】
この透明な樹脂板について、実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表4に示す。
【0212】
[比較例3]
塩素化度が略64%の後塩素化塩化ビニル樹脂(C−PVC)100重量部に対し、ジブチル錫マレート系の安定剤を4.0重量部、滑剤としてステアリン酸を0.5重量部、アクリル系加工助剤を1.5重量部、MBS系補強剤を5.5重量部配合して樹脂組成物を調製した。
【0213】
そして、この組成物を用いて実施例24と同様に厚さ5mmの透明な塩化ビニル樹脂板を製造し、その全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定すると共に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表4に示す。
【0214】
[比較例4]
ステアリン酸亜鉛を省略した以外は実施例28と同様にして樹脂組成物を調製し、厚さ5mmの透明な塩化ビニル樹脂板を製造した。
【0215】
そして、この樹脂板について実施例15〜18と同様に全光線透過率、拡散光線透過率、平行光線透過率、ヘイズ値を測定し、更に、難燃性テストを行った。その結果を下記の表4に示す。
【0216】
【表4】
Figure 0004488578
【0217】
表4の実施例24〜27と比較例3を対比すれば、実施例24〜27の樹脂板は塩素化ポリエチレン、リン系難燃剤、分解促進剤、発泡剤等の働きによって優れた難燃性を発揮し、難燃性テストにおいていずれも着火しないという結果が得られたのに対し、上記の塩素化ポリエチレン、リン系難燃剤、分解促進剤、発泡剤等を含まない比較例3の樹脂板は、実施例24〜27と同じ塩素化度の高い後塩素化塩化ビニル樹脂(C−PVC)を使用しているにも拘らず難燃性に劣っており、20秒で着火するという結果が得られた。これにより、塩素化ポリエチレン、リン系難燃剤、分解促進剤、発泡剤等が難燃性の付与に有効であることが裏付けられた。
【0218】
また、難燃性付与剤である発泡剤を配合した実施例29の樹脂板は、塩素化ポリエチレンを省略してリン系難燃剤を配合しただけでも優れた難燃性を有し、着火がみられなかった。これにより、難燃性付与剤が配合されている場合は、塩素化ポリエチレン又はリン系難燃剤のいずれか一方を省略できることが分かる。
【0219】
また、実施例28の樹脂板は、後塩素化塩化ビニル樹脂よりも難燃性が低い一般の塩化ビニル樹脂(U−PVC)を使用しているにも拘らず、亜鉛化合物としてステアリン酸亜鉛を含むため難燃性が向上し、難燃性テストに於いて着火しないという結果が得られたのに対し、比較例4の樹脂板のようにステアリン酸亜鉛を含まない一般の塩化ビニル樹脂からなる樹脂板は難燃性に劣っており、比較例3の樹脂板よりも更に短時間で着火するという結果であった。
【0220】
また、実施例24〜29の樹脂板はいずれも全光線透過率が70%以上、ヘイズ値が60%以下であって、透明性を有するものであるが、実施例26、29の樹脂板のように発泡剤を含むものはヘイズ値が上昇するので、発泡剤を使用する場合は、実施例27のように表面層に発泡剤を含有させてヘイズ値の上昇を抑えるようにする方が望ましいことが判る。
【0221】
【発明の効果】
本発明の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、単層構造のものも複層構造のものも難燃性が顕著に向上し、発煙量やガス発生量も減少するといった効果を奏し、透明な成形体は透明性が良好である。しかも、本発明の成形体は充分な実用強度を有し、耐薬品性や耐蝕性の低下が殆どなく、特に、複層構造のものは成形体表面の耐薬品性や耐蝕性が良好であり、耐薬品性及び難燃性が要求される各種の用途、なかでも半導体製造装置等の工業用材料として好適に使用できるといった効果を奏する。

Claims (2)

  1. 塩素化度が58〜73%の塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、リン系難燃剤を0.5〜15重量部、塩素化ポリエチレンを0.5〜20重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部、発泡剤、又は、分解促進剤であるラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛のいずれかの亜鉛化合物、メラミン、トリエチルアミンのいずれかのアミン化合物、水酸化鉄のいずれかを0.0005〜10重量部含有せしめた、全光線透過率が50%以上、ヘイズ値が60%以下であることを特徴とする透明な難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  2. 塩素化度が58〜73%の塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、リン系難燃剤を0.5〜15重量部、錫系安定剤を0.5〜7重量部、発泡剤、又は、分解促進剤であるラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、安息香酸亜鉛のいずれかの亜鉛化合物、メラミン、トリエチルアミンのいずれかのアミン化合物、水酸化鉄のいずれかを0.0005〜10重量部含有せしめた、全光線透過率が40%以上、ヘイズ値が60%以下であることを特徴とする透明な難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
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