JP3777449B2 - 難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性に優れた透明な塩化ビニル樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル樹脂は成形性が良く、機械的強度が高く、安価であって、耐薬品性も良好であるため、工業用材料、特に耐食工業用材料として、半導体製造装置を初めあらゆる分野に広く利用されている。
【0003】
かかる塩化ビニル樹脂は塩素を含むので、ある程度の難燃性を有しているが、火災が発生すると熱分解して煙や腐食性ガスを多量に出すため、この塩化ビニル樹脂の成形体を半導体製造装置等に用いると、火災時に発生する煙や腐食性ガスによって製造施設内の空気が汚れ、製造装置類、機器類、半導体部品などが汚染されたり侵されたりする恐れがあった。このような事情から、更に高い難燃性を有する塩化ビニル樹脂成形体が要求されるようになり、この要求を満足する塩化ビニル樹脂成形体の研究が行われている。
【0004】
塩化ビニル樹脂形成体の難燃性を高めるには、従来から、多量の無機フィラーを含有させたり、ハロゲン系の難燃剤を含有させるなどの手段が主に採用されているが、これらの手段を採用すると、以下に述べるような問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、無機フィラーを多量に含有させる場合は、塩化ビニル樹脂成形体が脆弱化し、透明な成形体を得ることができない上に、成形体の耐薬品性、耐食性、二次加工性等も低下するという問題があった。
【0006】
一方、ハロゲン系の難燃剤を含有させる場合は、塩化ビニル樹脂成形体の難燃性を向上させることはできるが、火災時にハロゲンを含んだ腐食性ガスを多量に発生するという問題があり、しかも、透明な成形体にハロゲン系難燃剤を含有させると、透明性が大幅に低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決し得る難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、表面層は、塩素化度が略56.8%の塩化ビニル樹脂と塩素化度が60〜66%の後塩素化塩化ビニル樹脂とを混合した平均塩素化度が58〜60%の混合樹脂に錫系安定剤を配合した層であり、基層は、表面層の混合樹脂の平均塩素化度よりも高い60〜66%の塩素化度を有する後塩素化塩化ビニル樹脂に錫系安定剤を配合した層であり、成形体のヘイズ値が20%以下であって、700℃の電気炉に3分間入れても着火しないことを特徴とするものである。
そして、請求項2に係る難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体は、基層の両面に表面層を積層一体化した三層構造の板であることを特徴とするものである。
【0009】
一般に、塩化ビニル樹脂の塩素化度と難燃性は正の相関関係があり、塩素化度が高くなるほど難燃性は向上する。従って、請求項1の成形体のように、塩素化度が略56.8%の一般の塩化ビニル樹脂とこれより塩素化度の高い後塩素化塩化ビニル樹脂との混合樹脂で表面層が形成されていると、該混合樹脂の平均塩素化度が一般の塩化ビニル樹脂より高くなるため、表面層の難燃性は向上する。しかも、この成形体の基層は、該混合樹脂よりも更に塩素化度が高い後塩素化塩化ビニル樹脂で形成されているため、基層の難燃性は表面層より優れている。それ故、この成形体は全体として優れた難燃性を有する。
【0010】
一方、塩化ビニル樹脂の塩素化度と耐薬品性は一般に負の相関関係があり、塩素化度が高くなるほど耐薬品性は低下する。従って、請求項1の成形体のように表面層が基層よりも低い平均塩素化度の混合樹脂で形成されていると、表面層の耐薬品性の低下が少なく、一般の塩化ビニル樹脂本来の優れた耐薬品性とあまり変わらない耐薬品性を備えた成形体となる。
【0011】
また、請求項1の成形体は、透明性を阻害する向きフィラーやハロゲン系難燃剤が基層にも表面層にも含まれてなく、且つ、安定剤として透明性を阻害しない錫系安定剤を含有させているため、透明性が良好である。特に、この成形体のように、塩素化度が略56.8%の塩化ビニル樹脂とこれより塩素化度の高い後塩素化塩化ビニル樹脂との混合樹脂で表面層を形成すると、該混合樹脂の平均塩素化度と同じ塩素化度を有する後塩素化塩化ビニル樹脂単独で表面層を形成する場合に比べて、表面層の全光線透過率が高くなり、ヘイズ値が20%以下に減少すると共に黄変度も減少して、透明性や透視性が向上する。そして、表面層の耐薬品性も向上する。その理由は定かでないが、塩化ビニル樹脂と後塩素化塩化ビニル樹脂が充分に相溶して相乗的に両樹脂の長所が発揮され、透明性や耐薬品性に優れた塩化ビニル樹脂が表面層の透明性や耐薬品性の向上に大きく寄与するためと推測される。
【0013】
そして、請求項1の成形体のように、表面層の混合樹脂の平均塩素化度が
58〜60%であると、耐薬品性をあまり低下させることなく、表面層の難燃性を向上させることが可能となる。平均塩素化度が58%より低くなると、耐薬品性は良いけれども表面層の難燃性が低下するという不都合を生じ、逆に、60%より高くなると、表面層の難燃性は向上するけれども耐薬品性が低下するという不都合を生じる。
【0015】
また、この成形体は、基層の後塩素化塩化ビニル樹脂の塩素化度が60〜66%と高く難燃性に優れているため、成形体全体として優れた難燃性を有し、700℃の電気炉に3分間入れても着火しないので、火災の初期に着火しにくく、熱分解せずに煙や腐食性ガスの放出を抑えることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体の断面図である。
【0020】
この難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体は、基層1の両面に表面層2,2を積層一体化した三層構造の板状の成形体とされている。表面層2は必ずしも基層1の両面に積層する必要がなく、基層1の片面に表面層2を積層一体化して二層構造の成形体としてもよい。
【0021】
この成形体の表面層2,2は、塩素化度が略56.8%の塩化ビニル樹脂と、これより塩素化度が高い後塩素化塩化ビニル樹脂との混合樹脂に、錫系安定剤を配合した層であり、基層1は、表面層2の混合樹脂の平均塩素化度よりも高い塩素化度を有する後塩素化塩化ビニル樹脂に錫系安定剤を配合した層である。
【0022】
更に具体的に説明すると、表面層2,2は、塩素化度が略56.8%で重合度が700〜1300程度の一般の塩化ビニル樹脂と、塩素化度が60〜66%で塩素化前の重合度が500〜1000程度の後塩素化塩化ビニル樹脂とを混合した、平均塩素化度が58〜60%の混合樹脂を用いて形成することが好ましく、なかでも塩素化度が略56.8%の上記の塩化ビニル樹脂と塩素化度が略65%の上記の後塩素化塩化ビニル樹脂とを8.5〜6.5〜1.5〜3.5の重量比で混合して、平均塩素化度を58〜60%にした混合樹脂は、市販されている塩化ビニル樹脂および後塩素化塩化ビニル樹脂を用いるものであるから容易に混合、調製することができて特に好ましい。また、基層1は、塩素化度が60〜66%で塩素化前の重合度が500〜1000程度の上記の後塩素化塩化ビニル樹脂を用いて形成することが好ましい。
【0023】
平均塩素化度が58〜60%の混合樹脂によって表面層2,2を形成すると、既述したように耐薬品性をあまり低下させないで表面層の難燃性を向上させることができ、更に、塩素化度が60〜66%の後塩素化塩化ビニル樹脂によって基層1を形成すると、基層1は後塩素化塩化ビニル樹脂本来の優れた難燃性を発揮する。従って、この成形体は、全体として優れた難燃性を有する。
【0024】
表面層3,3の混合樹脂の平均塩素化度が58%より低くなると、耐薬品性は更に向上するけれども表面層3,3の難燃性が低下するといった不都合を生じ、逆に、60%より高くなると、表面層3,3の難燃性は向上するけれども耐薬品性が低下するといった不都合を生じるので、いずれの場合も好ましくない。一方、基層1の後塩素化塩化ビニル樹脂の塩素化度が60%より低くなると、成形体の難燃性が低下し、逆に、66%より高くなると、成形性や二次加工性等が低下するといった不都合を生じるので、いずれの場合も好ましくない。
【0025】
また、平均塩素化度が58〜60%の混合樹脂で表面層2,2を形成すると、既述したように、表面層2,2の耐薬品性の低下が少なく、一般の塩化ビニル樹脂本来の耐薬品性とあまり変わらない優れた耐薬品性を備えた成形体となり、塩素化度が58〜60%の後塩素化塩化ビニル樹脂で表面層2,2を形成する場合に比べて、表面層2,2の透明性や透視性も向上する。
【0026】
上記の基層1や表面層2,2に配合される錫系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト系、ジブチル錫マレート系やジブチル錫ラウレート系の安定剤が好適であり、これらの安定剤は、基層1や表面層2,2の樹脂分100重量部に対して1〜8重量部、好ましくは2〜6重量部の割合で配合される。透明な成形体を得るためには錫系安定剤を配合することが必須であり、錫系安定剤に代えて鉛系安定剤を配合しても透明な成形体を得ることはできない。
【0027】
また、上記の基層1や表面層2,2には、上記の錫系安定剤の他に、滑剤(例えば高級脂肪酸や低分子量ポリエチレン等)、補強剤(例えばMBS系補強剤やMBS系加工改質樹脂等)、加工助剤(例えばアクリル系加工助剤等)などの各種添加剤が必要に応じて適量配合される。また、場合によっては、成形性や二次加工性を高める目的で、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−エチレン共重合樹脂などの改質樹脂を適量配合することも可能である。ただし、透明性を阻害する無機フィラーや、透明性を大幅に低下させるハロゲン系難燃剤を配合してはならない。
【0028】
基層1や表面層2,2の厚さについては特に限定されないが、表面層2,2は耐薬品性等の表面特性を向上させることを主目的とするものであるから、表面層2,2の厚みは0.1〜2mm程度あればよく、また、基層1の厚みは、成形体の用途や実用強度を考慮して1〜15mm程度の範囲内に設定すればよい。
【0029】
以上のような難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体は、平均塩素化度が58〜60%の混合樹脂に錫系安定剤や他の添加剤を配合した表面層形成用の樹脂組成物を調製すると共に、塩素化度が60〜66%の後塩素化塩化ビニル樹脂に錫系安定剤や他の添加剤を配合した基層形成用の樹脂組成物を調製し、これらの樹脂組成物を多層押出成形、カレンダープレス、ラミネートその他の公知の手段によって板状その他の所望の形状に積層成形して製造される。そして、製造された成形体は、そのまま、或は、二次加工して、難燃性及び透明性が要求される各種用途に使用される。
【0030】
尚、本発明の難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体における「透明」とは、成形体を通して向こう側が透視できる状態を意味し、数値で表せばヘーズ値が好ましくは20%以下のものをいう。
【0031】
次に、本発明の更に具体的な実施例を説明する。
【0032】
[実施例1]
塩素化度が略65%の後塩素化塩化ビニル樹脂(重合度800)100重量部に、ジブチル錫メルカプト系の安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して、基層形成用組成物を調製した。
【0033】
一方、塩素化度が略56.8%の一般の塩化ビニル樹脂(重合度1000)65重量部と、塩素化度が略65%の後塩素化塩化ビニル樹脂(重合度800)35重量部を均一に混合した、平均塩素化度が略59.7%の混合樹脂100重量部に対し、ジブチル錫メルカプト系の安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して、表面層形成用組成物を調製した。
【0034】
これらの組成物を用いて基層用カレンダーシートと表面層用カレンダーシートをそれぞれ作製し、重ね合わせてプレスすることにより、厚さ4.0;mmの基層の両面に厚さ0.5mmの表面層を有する三層構造の難燃性透明塩化ビニル樹脂板(全体の厚さ5mm)を得た。
【0035】
この樹脂板を50×50×5mmの大きさに切断して試験片を作製し、この試験片を700℃に加熱した電気炉に3分間入れて、着火の有無、着火するまでの時間を調べて難燃性テストを行った。その結果を下記の表1に示す。
【0036】
また、この樹脂板の試験片について耐薬品性を調べ、その結果を下記の表1に示した。この耐薬品性は、試験片に200kgf/cm2 の応力を負荷させて、35%硫酸、28%アンモニア水、10%水酸化カリウム水の各薬液に60℃で14日間浸漬した後の外観を観察し、○を外観変化なし、△を微細なヒビ割れ(クレーズ)発生、×を大きなクラック発生、として示したものである。
【0037】
更に、この樹脂板の試験片について、JIS K−7105に基づいて全光線透過率とヘイズ値を測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0038】
[実施例2]
表面層形成用組成物として、塩素化度が略56.8%の一般の塩化ビニル樹脂(重合度1000)70重量部と、塩素化度が略65%の後塩素化塩化ビニル樹脂(重合度800)30重量部を均一に混合した、平均塩素化度が略59.3%の混合樹脂100重量部に対し、ジブチル錫メルカプト系の安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して調製した組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして難燃性透明塩化ビニル樹脂板を作製した。
【0039】
そして、この樹脂板を50×50×5mmの大きさに切断した試験片について実施例1と同様に難燃性テストを行うと共に、耐薬品性、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0040】
[実施例3]
表面層形成用組成物として、塩素化度が略56.8%の一般の塩化ビニル樹脂(重合度1000)80重量部と、塩素化度が略65%の後塩素化塩化ビニル樹脂(重合度800)20重量部を均一に混合した、平均塩素化度が略58.4%の混合樹脂100重量部に対し、ジブチル錫メルカプト系の安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して調製した組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして難燃性透明塩化ビニル樹脂板を作製した。
【0041】
そして、この樹脂板を50×50×5mmの大きさに切断した試験片について実施例1と同様に難燃性テストを行うと共に、耐薬品性を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0042】
[実施例4]
表面層形成用組成物として、塩素化度が略56.8%の一般の塩化ビニル樹脂(重合度1000)50重量部と、塩素化度が略65%の後塩素化塩化ビニル樹脂(重合度800)50重量部を均一に混合した、平均塩素化度が略60.9%の混合樹脂100重量部に対し、ジブチル錫メルカプト系の安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して調製した組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして難燃性透明塩化ビニル樹脂板を作製した。
【0043】
そして、この樹脂板を50×50×5mmの大きさに切断した試験片について実施例1と同様に難燃性テストを行うと共に、耐薬品性、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0044】
[実施例5]
表面層形成用組成物として、塩素化度が略56.8%の一般の塩化ビニル樹脂(重合度1000)90重量部と、塩素化度が略65%の後塩素化塩化ビニル樹脂(重合度800)10重量部を均一に混合した、平均塩素化度が略57.6%の混合樹脂100重量部に対し、ジブチル錫メルカプト系の安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して調製した組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして難燃性透明塩化ビニル樹脂板を作製した。
【0045】
そして、この樹脂板を50×50×5mmの大きさに切断した試験片について実施例1と同様に難燃性テストを行うと共に、耐薬品性、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0046】
[比較例1]
表面層形成用組成物として、塩素化度が略56.8%の一般の塩化ビニル樹脂(重合度1000)100重量部に対し、ジブチル錫メルカプト系の安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して調製した組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして比較用の透明塩化ビニル樹脂板を作製した。
【0047】
そして、この樹脂板を50×50×5mmの大きさに切断した比較用の試験片について実施例1と同様に難燃性テストを行うと共に、耐薬品性、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0048】
[比較例2]
基層形成用組成物として、塩素化度が略56.8%の一般の塩化ビニル樹脂(重合度1000)100重量部に対し、ジブチル錫メルカプト系の安定剤を4重量部、滑剤としてステアリン酸を1重量部、加工助剤を2重量部、MBS系補強剤を5重量部混合して調製した組成物を使用した以外は、実施例2と同様にして比較用の透明塩化ビニル樹脂板を作製した。
【0049】
そして、この樹脂板を50×50×5mmの大きさに切断した比較用の試験片について実施例1と同様に難燃性テストを行うと共に、耐薬品性、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0050】
[比較例4]
ジブチル錫メルカプト系の安定剤に代えて鉛系の安定剤を配合した基層形成用組成物及び表面層形成用組成物を用いた以外は、実施例2と同様にして比較用の透明塩化ビニル樹脂板を作製した。
【0051】
そして、この樹脂板を50×50×5mmの大きさに切断した比較用の試験片について実施例1と同様に難燃性テストを行うと共に、耐薬品性、全光線透過率、ヘイズ値を測定した。その結果を下記の表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
この表1から、塩素化度が略65%の後塩素化塩化ビニル樹脂で基層を形成すると共に、平均塩素化度が58%以上の混合樹脂で表面層を形成した実施例1,2,3,4の樹脂板および比較例3の樹脂板はいずれも着火せず、優れた難燃性を有している。また、実施例5の樹脂板は、表面層の混合樹脂の平均塩素化度が57.6%で、実施例1〜4の樹脂板の表面層に比べると平均塩素化度が低いため難燃性はやや低下するが、それでも着火するまでに150秒を要し、かなりの難燃性を有している。これに対し、比較例1の樹脂板は、表面層が塩素化度56.8%の一般の塩化ビニル樹脂で形成されているため、基層が塩素化度65%の後塩素化塩化ビニル樹脂で形成されているにも拘らず難燃性がかなり低下し、90秒で着火する。これらのことから、表面層を構成する混合樹脂の平均塩素化度が低下するほど難燃性は低下し、平均塩素化度を58%以上にすると、難燃性の向上効果が顕著になることが判る。
【0054】
一方、比較例2の樹脂板は、表面層の混合樹脂の平均塩素化度が59.3%で58%を越えているが、基層が略56.8%の塩素化度を有する一般の塩化ビニル樹脂で形成されているため、難燃性が大幅に低下し、わずか10秒で着火する。このことから、難燃性を向上させるためには、基層を塩素化度の高い後塩素化塩化ビニル樹脂で形成する必要のあることが判る。
【0055】
また、透明性は、基層を塩素化度が56.8%の一般の塩化ビニル樹脂で形成した比較例2の樹脂板が極めて高く、また、基層を65%の塩素化度の後塩素化塩化ビニル樹脂で形成した実施例1〜5及び比較例1,3の樹脂板では、表面層の平均塩素化度が低いものほど、全光線透過率が高くなり、ヘイズ値が低くなって、透明性が向上する。そして、耐薬品性も表面層の平均塩素化度が低いものほど向上している。特に、表面層の平均塩素化度が60%を越える実施例4の樹脂板は耐薬品性が他より良くなく、全光線透過率やヘイズ値もこれらの樹脂板の中では最も悪くなっている。このことから、透明性や耐薬品性を向上させるには、表面層の平均塩素化度を60%以下にすることが望ましいことが判る。
【0056】
また、ジブチル錫メルカプト系安定剤に代えて鉛系安定剤を配合した比較例3の樹脂板は不透明であり、このことから透明樹脂板を得るには錫系安定剤を配合する必要のあることが判る。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明及び実験結果から明らかなように、本発明の難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体は、700℃に加熱されても燃焼しない優れた難燃性を有し、耐薬品性や透明性も良好であるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体の断面図である。
【符号の説明】
1 基層
2 表面層
Claims (2)
- 基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、表面層は、塩素化度が略56.8%の塩化ビニル樹脂と塩素化度が60〜66%の後塩素化塩化ビニル樹脂とを混合した平均塩素化度が58〜60%の混合樹脂に錫系安定剤を配合した層であり、基層は、表面層の混合樹脂の平均塩素化度よりも高い60〜66%の塩素化度を有する後塩素化塩化ビニル樹脂に錫系安定剤を配合した層であり、成形体のヘイズ値が20%以下であって、700℃の電気炉に3分間入れても着火しないことを特徴とする難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体。
- 基層の両面に表面層を積層一体化した三層構造の板であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性透明塩化ビニル樹脂成形体。
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