JP3558915B2 - 難燃性塩化ビニル系樹脂成形体 - Google Patents

難燃性塩化ビニル系樹脂成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、FM規格(ファクトリー・ミューチアル・リサーチ・コーポレーションの定める難燃性の評価基準)を満足する難燃性塩化ビニル系樹脂成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル樹脂は成形性が良く、機械的強度が高く、安価であって、耐薬品性が良好であるため、工業用材料、特に耐食工業用材料として半導体製造装置をはじめ、あらゆる分野に広く利用されている。
【0003】
しかし、塩化ビニル樹脂は塩素を多量に含むので、難燃性を有する反面、耐熱性が悪く、そのため、塩化ビニル樹脂の成形体を半導体製造装置等に用いると、火災が発生したときに該樹脂が高熱により分解して煙や腐食性ガスを出し、製造施設内の空気清浄度が低下して、製造装置類、機器類、半導体部品などが汚染されたり侵されたりする恐れがあった。
【0004】
かかる事情から、一般に難燃性を有すると言われている塩化ビニル樹脂であっても、近年、火災時の難燃性と発煙の抑制と腐食性ガス発生の抑制が要求されるようになり、この要求は保険組織で特に強く、北米を根拠地とする産業相互保険組織であるファクトリー・ミューチアル・システムを構成している、ファクトリー・ミューチアル・リサーチ・コーポレーション(Factory Mutual Research Corporation)の定める評価基準が有効に利用されている。
【0005】
この評価基準は、Class Number 4910として挙げられているクリーンルーム材料の難燃性テスト(FMRC Clean Room Materials Flammability Test Protocol)(以下、FM規格という)に基づく難燃性を示す難燃指数FPIが6以下、発煙性を示す発煙指数SDIが0.4以下、腐食性ガス発生を示す腐食指数CDIが1.1以下というものであり、これらを同時に満足することが要求されている。
【0006】
本発明者らは、上記のFM規格によるFPI、SDI、CDIの各基準を同時に満足する難燃性塩化ビニル樹脂成形体を開発すべく研究を重ねた結果、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、炭酸カルシウムとタルクと無機質の塩素捕獲化合物を、その合計量が26〜60重量部の範囲内となるように特定の割合で含有させた塩化ビニル樹脂成形体は、上記の各基準を同時に満足する優れた難燃性を備えていることを見出し、この難燃性塩化ビニル樹脂成形体を既に出願した。
【0007】
また、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、酸化チタンを5〜50重量部の範囲内で含有させた塩化ビニル樹脂成形体も、上記の各基準を同時に満足する優れた難燃性を備えていることを見出し、この成形体も既に出願した。
【0008】
これらの塩化ビニル樹脂成形体は、いずれも優れた難燃性を有するものであるが、その反面、次のような問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、前者の難燃性塩化ビニル樹脂成形体は、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、炭酸カルシウム、タルク、塩素捕獲化合物などの無機フィラーを26〜60重量部と多量に含有させるため、実用に耐える強度を有するとは言うものの強度が十分でなく、特に、炭酸カルシウムは無機フィラーの中では薬品に弱いので、成形体の耐薬品性もあまり良くないという問題があった。
【0010】
一方、後者の難燃性塩化ビニル樹脂成形体は、含有させる酸化チタンの量をある程度以上にしないと、安定してFM規格を満足する成形体を得ることが難しいという問題があり、また、酸化チタンの量をできるだけ少なくして塩化ビニル樹脂本来の耐薬品性や物性を得ることがさらに要求された。
【0011】
そこで、本発明者らは、FM規格を満足するだけでなく、十分な強度、耐薬品性、曲げ変形性などを兼ね備えた難燃性塩化ビニル系樹脂成形体の開発を目的として更に研究を重ねた結果、酸化チタンと特定の難燃助剤を併用して塩化ビニル系樹脂に含有させる場合には、上記の目的を達成できるという事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として錫酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめたことを特徴とし、
請求項2に係る半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを5〜25重量部、難燃助剤としてモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめたことを特徴とするものである。
これらの成形体において、塩化ビニル系樹脂としては、塩素化度が56.8%の塩化ビニル樹脂、或いは塩素化度が58〜73%の後塩素化塩化ビル樹脂が好適に使用される。
【0013】
酸化チタンは、白色度が高く、1200〜1300℃まで分解しない無機粒子であり、これを上記の難燃助剤と共に塩化ビニル系樹脂に含有させると、何故に難燃性が向上し発煙量やガス発生量が減少するのか、その理由(作用)については明らかでないが、一応次のように考えられる。
【0014】
一般に、塩化ビニル系樹脂成形体に外部から過度の熱が加わると、塩化ビニル系樹脂中の塩素が熱により離脱して難燃作用を発揮すると共に、塩素の離脱した樹脂が熱分解して燃焼に至る。この過程において酸化チタンが存在すると、該酸化チタンは1200〜1300℃の高温まで分解することなく、その高い白色度によって外部からの熱を遮断する働き(熱遮断作用)をすると共に、塩素離脱後の樹脂の熱分解及び燃焼の段階では高い熱伝導率によって該樹脂をより速く炭化させる働き(炭化促進作用)をするため、塩化ビニル系樹脂成形体の難燃性が向上すると考えられる。この酸化チタンの炭化促進作用は上記の難燃助剤の併用によって相乗的に高められるため、酸化チタンの含有割合を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して4〜30重量部と少なくしても、FM規格のFPI、SDI、CDIを全て満足する難燃性に優れた塩化ビニル系樹脂成形体を得ることができる。このように少量の酸化チタンを僅かな難燃助剤と併用して含有させた難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、耐薬品性、強度、曲げ加工性などが良好である。なお、上記の難燃助剤のうちリン酸エステルなどのリン化合物は、それ自体で難燃剤としても使用されるものであり、酸化チタンと併用するとFM規格のCDIを減少させるのに特に有効である。
【0015】
酸化チタンの含有割合は、難燃助剤を併用すると、上記の如く塩化ビニル系樹脂100重量部に対して4〜30重量部と少なくすることができ、併用する難燃助剤の含有割合も1〜10重量部と僅かにすることができる。酸化チタンを30重量部より多量に含有させ、難燃助剤を10重量部より多量に含有させると、難燃性は顕著に向上するが、成形体の耐薬品性、強度、曲げ加工性などが低下する。一方、酸化チタンを4重量部より少なく含有させ、難燃助剤を1重量部より少なく含有させると、外部からの熱遮断作用や炭化促進作用が不充分になって、FM規格の各基準を全て満足する難燃性塩化ビニル系樹脂成形体を得ることが困難となる。
【0016】
尚、上記請求項1又は請求項2の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、単層構造の成形体のみならず積層構造の成形体まで含むものであり、例えば、積層構造の成形体において、酸化チタンや難燃助剤の含有割合が上記の範囲外にある塩化ビニル系樹脂層が含まれているような場合でも、成形体全体として、酸化チタンや難燃助剤の含有割合が上記の範囲内にあれば、請求項1又は請求項2の発明に包含されることになる。
【0017】
次に、本発明の請求項5に係る半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩素化度が58%以上、73%以下である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として錫酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめた厚みが2〜12mmの層であり、表面層は、酸化チタンの含有割合及び難燃助剤の含有割合が基層のそれらより少なくなるように、塩素化度が50%以上、58%未満である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを0〜20重量部(0重量部を含む)、難燃助剤として錫酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を0〜8重量部(0重量部を含む)含有せしめた厚みが0.2〜1.6mmの層であることを特徴とするものである。
【0018】
この難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、表面層の酸化チタン及び難燃助剤の含有割合が基層のそれらよりも少ないので、成形体表面(表面層)が塩化ビニル系樹脂本来の優れた耐薬品性及び耐食性と殆ど変わらない耐薬品性及び耐食性を有している。しかも、基層は前述した請求項1の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体と同じ組成の層であり、上記のように表面層にも酸化チタンや難燃助剤が含まれているので、この成形体は全体としてFM規格の各基準を全て満足する難燃性と優れた耐薬品性及び耐食性を有し、強度や曲げ加工性なども良好である。
【0019】
表面層の酸化チタンの含有割合は上記のように塩化ビニル系樹脂100重量部に対して20重量部以下、難燃助剤の含有割合は8重量部以下とすることが必要であり、酸化チタンや難燃助剤の含有割合がそれぞれの上限を越えると、表面層の優れた耐薬品性や耐食性の低下を招き、実用的でなくなる。
【0020】
次に、本発明の請求項6に係る半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩素化度が58%以上、73%以下である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを5〜50重量部含有せしめた厚みが2〜12mmの層であり、表面層は、塩素化度が50%以上、58%未満である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として錫酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめた厚みが0.2〜1.6mmの層であることを特徴とするものである。
【0021】
この成形体の基層は、酸化チタンの含有量が5〜50重量部と多いため、難燃助剤が含有されてなくとも優れた難燃性を有しており、しかも、表面層は前述した請求項1の成形体と同じ組成を有する難燃性に優れた層で、耐薬品性や曲げ加工性などの良好な層であるから、この成形体は全体としてFM規格の各基準を全て満足する難燃性を有し、耐薬品性や耐食性が良好で、曲げや溶接などの二次加工性が良好である。
【0022】
基層の酸化チタンの含有割合は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜50重量部とすることが必要で、5重量部より少なくなると、基層の難燃性が低下するため、FM規格の各基準を全て満足する成形体を得ることが困難となり、50重量部より多くなると、基層の成形性、曲げ加工性、強度などが低下するため、工業用材料として実用し難い成形体になる。
【0023】
次に、本発明の請求項7に係る半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩素化度が58%以上、73%以下である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを8〜30重量部含有せしめた厚みが2〜12mmの層であり、表面層は、塩素化度が50%以上、58%未満である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤としてモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめた厚みが0.2〜1.6mmの層であることを特徴とするものである。
【0024】
酸化チタンによる炭化促進作用は塩化ビニル系樹脂の塩素化度が高くなるほど強くなり、一方、耐薬品性は塩化ビニル系樹脂の塩素化度が高くなるほど低下する。従って、上記の成形体のように、基層の塩化ビニル系樹脂の塩素化度が58%以上、73%以下と高く、表面層の塩化ビニル系樹脂の塩素化度が50%以上、58%未満と高くないものは、基層が優れた難燃性を発揮し、表面層が良好な耐薬品性を発揮するので、難燃性と耐薬品性のバランスがとれた成形体となる。
【0025】
基層の塩化ビニル系樹脂の塩素化度が73%より高くなると、基層の難燃性は更に向上するけれども、製造が困難になり、また、熱安定性、成形性、曲げ加工性などが低下するようになる。一方、58%より低くなると、基層の難燃性が顕著でなくなる。また、表面層の塩化ビニル系樹脂の塩素化度が50%より低くなると、表面層の難燃性が低下し、58%より高くなると、表面層の耐薬品性、耐食性等が顕著でなくなる。
請求項1ないし請求項4において、さらに鉛系安定剤を含むことが好ましく、また請求項5ないし請求項7において基層及び表面層にさらに鉛系安定剤を含むことが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0027】
本発明の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、全体が同じ組成の単層構造の成形体と、組成が層ごとに異なる積層構造の成形体とに大別される。
【0028】
第一の実施形態に係る単層構造の塩化ビニル系樹脂成形体Aは、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として亜鉛化合物、モリブデン化合物、リン化合物のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめたものであり、この成形体Aには、成形に必要な鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などが適量配合される。
【0029】
塩化ビニル系樹脂としては、(a)塩素化度が約56%の一般の塩化ビニル樹脂、(b)塩素化度が58〜73%の後塩素化塩化ビニル樹脂、(c)これらの塩化ビニル樹脂を混合した樹脂、(d)これらの塩化ビニル樹脂に酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂等を混合した樹脂、(e)塩化ビニルと酢酸ビニルやエチレン等との共重合樹脂などが使用される。
【0030】
(a)の一般の塩化ビニル樹脂は、耐薬品性に優れた成形体Aを得る場合に特に有効であり、(b)の後塩素化塩化ビニル樹脂は、炭化促進作用が大きいので難燃性に優れた成形体Aを得る場合に特に有効であり、(c)の混合樹脂は、耐薬品性と難燃性のバランスが良い成形体Aを得る場合に特に有効であり、(d)の混合樹脂や(e)の共重合樹脂は、成形性や曲げ加工性(伸び)などの物性を改善した成形体Aを得る場合に特に有効である。(c)や(d)や(e)の樹脂は、その平均塩素化度を50〜73%となるように混合したり、共重合したりして、難燃性を保つようにしておくことが好ましい。
【0031】
一方、酸化チタンとしては、0.1〜0.5μm程度の平均粒径を有する粉体が好ましく使用される。このような酸化チタンの粉体は、塩化ビニル系樹脂との混練性が良く、均一な分散状態で含有させることができるからである。特に、表面をアルミナで被覆した酸化チタンの粉体は好適であり、このような被覆粉体を含有させると、燃焼時に酸化チタンとアルミナの相乗作用によって塩化ビニル系樹脂の炭化が更に促進されると共に、アルミナによって煙やガス等が吸着されるため、燃焼指数FPI、発煙指数SDI、腐食指数CDIの全ての数値が小さい成形体Aを得ることが可能となる。
【0032】
また、難燃助剤としては、上記の酸化チタンと相乗して炭化促進作用を高めることができる亜鉛化合物、モリブデン化合物、リン化合物が選択使用され、これらは単独で又は二種以上混合して塩化ビニル系樹脂に含有される。亜鉛化合物としては、錫酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛やラウリン酸亜鉛等の亜鉛石鹸である有機系亜鉛などが用いられる。また、モリブデン化合物としては、酸化モリブデン、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛、オクタモリブデン酸アンモンなどが用いられ、リン化合物としては、リン酸エステル、含ハロゲンリン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リンなどが用いられる。これらの各化合物のうち、錫酸亜鉛は耐熱性、耐薬品性が他より優れ、モリブデン酸カルシウム亜鉛やモリブデン酸亜鉛は耐薬品性、取り扱い性が他より優れていて有用である。また、リン酸エステルは、既述したように成形体Aの腐食指数CDIを低下させるのに有効である。
【0033】
上記の酸化チタンと難燃助剤を併用して含有させた塩化ビニル系樹脂成形体Aは、既述したように燃焼時に酸化チタンが熱遮断作用と炭化促進作用を発揮し、難燃助剤が相乗的に炭化促進作用を高める働きをするので、酸化チタンや難燃助剤の含有割合が少なくても難燃性が顕著に向上する。そのため、酸化チタンの含有割合を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して4〜30重量部と少なくし、難燃助剤の含有割合を1〜10重量部と僅かにしても、FM規格のFPI、SDI、CDIを全て満足する難燃性に優れた塩化ビニル系樹脂成形体Aとなる。このような成形体Aは、酸化チタンや難燃助剤の含有割合が少ないので、耐薬品性、強度、曲げ加工性などが良好である。
【0034】
酸化チタンの含有割合を塩化ビニル系樹脂100重量部に対して4〜30重量部の範囲内とした臨界的意義、及び、難燃助剤の含有割合を1〜10重量部の範囲内とした臨界的意義は、既に説明した通りであるので再度の説明は省略する。尚、酸化チタンの好ましい含有割合は5〜25重量部であり、更に好ましい含有割合は7〜15重量部である。また、難燃助剤の好ましい含有割合は3〜7重量部である。
【0035】
この成形体Aの厚さは用途などを考慮して適宜決定すればよいが、通常、3〜15mm程度の厚さにすると、十分な実用強度を付与することができる。
【0036】
以上のような単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体Aは、酸化チタンと難燃助剤と他の添加剤(安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤等)を配合した塩化ビニル系樹脂組成物を、溶融押出成形、カレンダープレス、射出成形、その他の公知の成形手段によって、平板やパイプや丸棒や溶接棒やアングル等の異形品など所望の単層形状に成形したものであり、そのまま、或は、二次加工して、各種の用途、特に半導体製造装置などに好適に使用される。
【0037】
次に、本発明の積層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、その基層に酸化チタンと難燃助剤を併用して含有させた第二の実施形態に係る成形体Bと、その基層に酸化チタンのみを含有させた第三の実施形態に係る成形体Cに分かれる。
【0038】
即ち、第二の実施形態に係る塩化ビニル系樹脂成形体Bは、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として前述した亜鉛化合物、モリブデン化合物、リン化合物のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめた層からなり、表面層は、酸化チタンの含有割合及び難燃助剤の含有割合が基層のそれらより少なくなるように、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、酸化チタンを0〜20重量部、難燃助剤として前述した亜鉛化合物、モリブデン化合物、リン化合物のいずれか一種又は二種以上を0〜8重量部含有せしめた層からなるものである。そして、これらの基層や表面層には、鉛系又は錫系の安定剤、滑剤、加工助剤、着色剤などが適量配合される。
【0039】
この成形体Bの基層は、前述した塩化ビニル系樹脂成形体Aと同じ組成の難燃性に優れた層であり、しかも、表面層は酸化チタンや難燃助剤の含有割合が基層よりも少なく、塩化ビニル系樹脂本来の優れた耐薬品性及び耐食性が酸化チタン等によって殆ど低下することのない層であるから、この成形体Bは全体としてFM規格の各基準を全て満足する難燃性と優れた耐薬品性及び耐食性を併せ持ち、強度や曲げ加工性なども良好である。
【0040】
このような積層構造の成形体Bにおいては、基層の塩化ビニル系樹脂として、塩素化度が58%以上、73%以下のものを使用することが好ましく、表面層の塩化ビニル系樹脂として、塩素化度が50%以上、58%未満のものを使用することが好ましい。酸化チタンによる炭化促進作用は塩化ビニル系樹脂の塩素化度が高くなるほど強くなり、一方、耐薬品性は塩化ビニル系樹脂の塩素化度が高くなるほど低下するので、この成形体Bのように、基層の塩化ビニル系樹脂の塩素化度が高く、表面層の塩化ビニル系樹脂の塩素化度が高くないものは、基層が更に優れた難燃性を具備し、表面層が更に良好な耐薬品性を具備することになる。
【0041】
塩素化度が73%より高い塩化ビニル系樹脂は、製造が困難であり、また、熱安定性、成形性、曲げ加工性なども悪いので、基層の樹脂として不適当である。一方、塩素化度が58%より低い塩化ビニル系樹脂は、酸化チタンと難燃助剤による難燃性の向上がそれほど顕著ではないので、基層の樹脂としてあまり好ましくない。また、塩素化度が58%以上の塩化ビニル系樹脂は、耐薬品性や伸びがあまり良くなく、曲げ加工がし辛いので、表面層の樹脂としては好ましくなく、塩素化度が50%より低い塩化ビニル系の樹脂は、酸化チタンと難燃助剤の含有割合を多くしなければ難燃性が向上しないので、表面層の樹脂としてやはり好ましくない。
【0042】
塩素化度が58%以上、73%以下の塩化ビニル系樹脂としては、既述した塩素化度が58〜73%の後塩素化塩化ビニル樹脂や、この後塩素化塩化ビニル樹脂に塩素化度が約56%の一般の塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合樹脂などを平均の塩素化度が58〜73%の範囲内となるように混合した樹脂が使用される。
【0043】
一方、塩素化度が50%以上、58%未満の塩化ビニル系樹脂としては、塩素化度が約56%の一般の塩化ビニル樹脂、塩素化度が50〜56%の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化度が50〜56%の塩化ビニル−エチレン共重合樹脂などが単独で又は二種以上混合して好適に使用される。このうち、耐薬品性が最も良好な一般の塩化ビニル樹脂が最も好ましく用いられる。
【0044】
尚、基層の塩化ビニル系樹脂として、塩素化度が約56%の一般の塩化ビニル樹脂や、この一般の塩化ビニル樹脂に酢酸ビル樹脂、アクリル樹脂、上記の共重合樹脂などを混合した樹脂を使用しても良いことは勿論であり、その場合でも酸化チタンと難燃助剤を前記の割合で含有させることによって、FM規格の全ての基準を満足する難燃性を備えた成形体Bが得られることは言うまでもない。
【0045】
上記のように、表面層は成形体Bの耐薬品性や耐食性を更に改善するためのものであるから、基層の両面に形成することが望ましいが、基層の片面にのみ形成してもよい。その場合、基層の厚みは、実用強度が得られるように2〜12mm程度に設定することが好ましく、表面層の厚みは0.2〜1.6mmに設定するのが好ましい。表面層を0.2mmより薄く形成すると、初期の耐薬品性や耐食性は良好であるが、長期になると薬品が表面層を侵して基層にまで達するので好ましくなく、逆に1.6mmより厚く形成すると、成形体B全体に対する表面層の体積比率が増加し、その分だけ基層の体積比率が減少して難燃性が低下するため、FM規格の各基準を安定して満足する成形体を得ることが難しくなる。表面層の更に好ましい厚さは0.4〜1.1mmである。
【0046】
表面層の酸化チタンの含有割合は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して最大でも20重量部以下、難燃助剤の含有割合は最大でも8重量部以下とする必要がある。このように上限を定めた臨界的意義は既に説明した通りであるので、再度の説明は省略する。尚、表面層の酸化チタンの好ましい含有割合は塩化ビニル系樹脂100重量部に対して3〜15重量部の範囲内、難燃助剤の好ましい含有割合は2〜7重量部の範囲内である。
【0047】
以上のような積層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体Bは、酸化チタンや難燃助剤や他の添加剤を配合した基層成形用の塩化ビニル系樹脂組成物(好ましくは塩素化度58%以上、73%以下の塩化ビニル系樹脂組成物)と、この組成物よりも酸化チタンや難燃助剤の配合量が少ない表面層成形用の塩化ビニル系樹脂組成物(好ましくは塩素化度50%以上、58%未満の塩化ビニル系樹脂組成物)を調製し、これらの組成物を多層押出成形、カレンダープレス、ラミネート、射出成形その他の手段により、所望の形状に積層成形して製造されるものであり、かかる成形体BはFM規格のFPI、SDI、CDIの各基準を満足することに加えて、表面の耐薬品性及び耐食性が良好であるため、耐薬品性等が要求される用途、例えば半導体製造装置の一部である洗浄槽などの材料として好適に用いられる。
【0048】
また、第三の実施形態に係る積層構造の塩化ビニル系樹脂成形体Cは、基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、酸化チタンを5〜50重量部含有せしめた層からなり、表面層は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として前述した亜鉛化合物、モリブデン化合物、リン化合物のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめた層からなるものである。
【0049】
この成形体Cの基層には難燃助剤が含有されてなく、酸化チタンのみが含有されているので、基層の酸化チタンの含有割合は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜50重量部と多くする必要があり、酸化チタンが5重量部より少なくなると、基層の難燃性が低下してFM規格の各基準を全て満足する成形体を得ることが困難となる。一方、50重量部より多くなると、基層の成形性、曲げ加工性、強度などが低下するため、工業用材料として実用し難い成形体になる。なお、基層の酸化チタンの好ましい含有割合は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して8〜30重量部である。
【0050】
この成形体Cの場合も、基層の塩化ビニル系樹脂として前述の塩素化度が58%以上、73%以下のものを使用し、表面層の塩化ビニル系樹脂として前述の塩素化度が50%以上、58%未満のものを使用することによって、基層の難燃性を一層向上させると共に、表面層の耐薬品性や曲げ加工性を一層向上させることが好ましい。尚、基層の塩化ビニル系樹脂として、塩素化度が約56%の一般の塩化ビニル樹脂や、この一般の塩化ビニル樹脂に酢酸ビル樹脂、アクリル樹脂、前記の共重合樹脂などを混合した樹脂を使用しても良いことは言うまでもない。
【0051】
また、基層や表面層の厚さは、前述の成形体Bの基層や表面層と同じ厚さに設定するのが好ましく、表面層は基層の片面に形成しても両面に形成してもよい。
【0052】
このような成形体Cは、基層の酸化チタンの含有割合が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜50重量部と多いため、難燃助剤が含有されてなくとも基層が優れた難燃性を有しており、しかも、表面層は前述した成形体Aと同じ組成を有する難燃性に優れた層で、耐薬品性や曲げ加工性などが良好な層であるから、この成形体は全体としてFM規格の各基準を全て満足する難燃性を有し、耐薬品性や耐食性が良好で、曲げ加工も比較的容易に行える。
【0053】
尚、この成形体Cも、成形体Bと同様に、多層押出成形、カレンダープレス、ラミネート、射出成形などの手段で容易に製造することができる。
【0054】
前述した成形体Bや上記の成形体Cはいずれも、基層の片面又は両面に表面層を積層した2層又は3層の積層構造の成形体であるが、例えば、基層と同じ組成の層と、表面層と同じ組成の層を交互に積層して多層の積層構造の成形体としてもよい。その場合は、各層の厚さを0.2〜1.5mm程度にし、成形体Cの全体の厚さが3〜15mm程度となるように積層することが好ましい。
【0055】
また、場合によっては、成形体Aや成形体Bの基層において、酸化チタン及び難燃助剤と共に、塩素捕獲化合物(例えば炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩)や無機質助剤(例えばシリカ、アルミナ、珪酸アルミニウム、タルク等)を、これらの合計含有量が塩化ビニル系樹脂100重量部に対して60重量部以下となるように含有させたり、或は、成形体Bの表面層や成形体Cの表面層において、酸化チタン及び難燃助剤と共に、塩素捕獲化合物や無機質助剤を、これらの合計含有量が塩化ビニル系樹100重量部に対して40重量部以下となるように含有させることにより、難燃性の更なる改善を図るようにしてもよい。
【0056】
次に、本発明の更に具体的な実施例と比較例を挙げる。
【0057】
[実施例1]
塩素化度65%の後塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に対し、表面がアルミナで被覆された酸化チタン(平均粒径:略0.2μm以下)を15重量部、錫酸亜鉛を5重量部、鉛安定剤を8重量部、滑剤を2重量部、加工助剤を5重量部の割合で均一に混合してカレンダーシートを作製した後、これを複数枚重ねてプレスすることにより、単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。
【0058】
この樹脂板について、FPI、SDI、CDIを測定すると共に、その機械的強度(アイゾット衝撃強さ、引張り強度、伸び率)と耐薬品性(97%硫酸、35%硫酸、28%アンモニア水)を調べ、その結果を下記の表1に示した。尚、機械的強度は夫々JIS K6745に基づいて測定したものであり、耐薬品性は各薬液に23℃で7日間浸漬後の外観変色を観察し、◎は変色なし、○は僅かに変色あり、△は変色あり、×は著しい変色あり、として表示したものである。
【0059】
[実施例2]
塩素化度65%の後塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に代えて、塩素化度56.8%の一般の塩化ビニル樹脂30重量部と塩素化度65%の後塩素化塩化ビニル樹脂70重量部をブレンドした平均塩素化度62.5%の混合樹脂100重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0060】
[実施例3]
塩素化度65%の後塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に代えて、塩素化度56.8%の一般の塩化ビニル樹脂70重量部と塩素化度65%の後塩素化塩化ビニル樹脂30重量部をブレンドした平均塩素化度59.3%の混合樹脂100重量部を使用し、酸化チタンの配合量を15重量部から10重量部に変更すると共に、鉛安定剤の配合量を8重量部から6重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0061】
[実施例4]
塩素化度65%の後塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に代えて、塩素化度56.8%の一般の塩化ビニル樹脂100重量部を使用し、酸化チタンの配合量を15重量部から10重量部に変更すると共に、鉛安定剤の配合量を8重量部から4重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして、単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0062】
[実施例5]
錫酸亜鉛5重量部に代えて、モリブデン酸カルシウム亜鉛5重量部を使用した以外は、実施例4と同様にして、単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0063】
[実施例6]
塩素化度56.8%の一般の塩化ビニル樹脂100重量部に代えて、塩素化度54.0%の塩化ビニル−エチレン共重合樹脂100重量部を使用した以外は、実施例4と同様にして、単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0064】
[実施例7]
錫酸亜鉛5重量部に代えて、リン酸エステル(リン含有率:9%)5重量部を使用した以外は、実施例1と同様にして、単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0065】
[実施例8]
難燃助剤として、錫酸亜鉛5重量部とリン酸エステル(リン含有率:9%)5重量部を配合した以外は、実施例4と同様にして、単層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定すると共に、その機械的強度と耐薬品性を調べ、その結果を下記の表1に示した。
【0066】
[実施例9]
塩素化度65%の後塩素化塩化ビニル樹脂100重量部に対し、表面がアルミナで被覆された酸化チタン(平均粒径:略0.2μm以下)を15重量部、錫酸亜鉛を5重量部、鉛安定剤を8重量部、滑剤を2重量部、加工助剤を5重量部の割合で均一に混合して基層用カレンダーシートを作製した。一方、塩素化度が56.8%の一般の塩化ビニル樹脂100重量部に対し、酸化チタンを10重量部、鉛安定剤を4重量部、滑剤を2重量部、加工助剤を5重量部の割合で均一に混合して表面層用カレンダーシートを作製した。
【0067】
上記の基層用カレンダーシートと表面層用カレンダーシートを重ねてプレスすることにより、厚さ4mmの基層の両面に厚さ0.5mmの表面層を有する三層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(全体の厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定すると共に、その機械的強度と耐薬品性を調べ、その結果を下記の表1に示した。
【0068】
[実施例10]
酸化チタンを15重量部から20重量部に変更すると共に、錫酸亜鉛を省略した以外は実施例9と同様にして、基層用カレンダーシートを作製し、また、錫酸亜鉛を5重量部更に混合した以外は実施例9と同様にして、表層用カレンダーシートを作製した。これらのカレンダーシートを用いて実施例9と同様にして三層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定すると共に、その機械的強度と耐薬品性を調べ、その結果を下記の表1に示した。
【0069】
[比較例1]
錫酸亜鉛を省略した以外は、実施例4と同様にして、単層構造の塩化ビニル樹脂板(厚さ5mm)を作製した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0070】
[比較例2]
酸化チタンと錫酸亜鉛とを省略し、炭酸カルシウムを40重量部、タルクを40重量部配合した以外は実施例4と同様にして、単層構造の塩化ビニル樹脂板(厚さ5mm)を製造した。そして、この樹脂板について実施例1と同様にFPI、SDI、CDIを測定すると共に、その機械的強度と耐薬品性を調べ、その結果を下記の表1に示した。
【0071】
【表1】
Figure 0003558915
【0072】
この表1を見ると、実施例1〜10の難燃性塩化ビニル系樹脂板はいずれも、FM規格のFPIが0.4〜2.1の範囲、SDIが0.02〜0.1の範囲、CDIが0.4〜1の範囲にあり、余裕をもって各基準を満足する優れた難燃性を備えていることが判る。また、比較例1の樹脂板は、難燃助剤を含んでいないにもかかわらず、FPI,SDI,CDIの各基準を全て満足しており、このことから、酸化チタンが難燃性の付与にいかに有効であるかを知ることができる。
【0073】
しかし、この比較例1の樹脂板の組成に、更に難燃助剤として錫酸亜鉛やモリブデン酸カルシウム亜鉛を含有させた実施例4,5,8の樹脂板は、FPI,SDI,CDIの各数値が比較例1の樹脂板のそれよりも小さくなっており、このことから、難燃助剤を併用すると酸化チタンと相乗的に作用して難燃性が更に向上することが判る。
【0074】
また、比較例2の樹脂板は、酸化チタンや難燃助剤を含んでいないが、無機材料を多量に含むためFPI,SDI,CDIが低下し、難燃性を有したものになっている。しかし、強度が弱く、耐薬品性にも劣るため、実用性に乏しいことが判る。
【0075】
また、実施例1〜4の樹脂板を比較すれば、塩化ビニル系樹脂の塩素化度が低くなるほど、FPI,SDI,CDIの各数値が漸増して、難燃性が低下することが判る。
【0076】
また、実施例6の樹脂板は、塩化ビニル−エチレン共重合体を用いてもFPI,SDI,CDIが小さく、塩素を含む共重合体であっても酸化チタンと難燃助剤を併用することでFM規格を満足することが判る。
【0077】
また、実施例9の積層構造の樹脂板は、基層に難燃助剤を含ませて難燃性を向上させているので、表面層は難燃助剤を含まなくても、充分難燃性を有していることが判る。
【0078】
また、実施例10の積層構造の樹脂板は、基層に難燃助剤を含まないものであるが酸化チタンを実施例4の樹脂板よりも多量に含んでおり、しかも、表面層が実施例4の樹脂板と同じ組成であるため、実施例4の樹脂板とあまり変わらない難燃性を有することが判る。
【0079】
【発明の効果】
以上の説明及び実験データから明らかなように、本発明の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、酸化チタンによる難燃性付与効果が難燃助剤によって相乗的に増大されるため、少量の酸化チタンを僅かな難燃助剤と共に含有させるだけで、FM規格に基づくFPI、SDI、CDIの全てを満足する優れた難燃性を具備するものとなり、無機質フィラーを多量に含有させた難燃性塩化ビニル樹脂成形体に比べると、強度、成形性、曲げ加工性、伸び等が向上すると共に、耐薬品性や耐食性も改善されるといった効果を奏する。特に、基層の少なくとも片面に表面層を形成した積層構造の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体は、表面層によって耐薬品性や耐食性が更に改善されるといった効果を併せて奏する。

Claims (9)

  1. 塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として錫酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめたことを特徴とする半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  2. 塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを5〜25重量部、難燃助剤としてモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめたことを特徴とする半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  3. 塩化ビニル系樹脂が56.8%の塩素化度の塩化ビニル樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  4. 塩化ビニル系樹脂が58〜73%の塩素化度の後塩素化塩化ビニル樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  5. 基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩素化度が58%以上、73%以下である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として錫酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめた厚みが2〜12mmの層であり、表面層は、酸化チタンの含有割合及び難燃助剤の含有割合が基層のそれらより少なくなるように、塩素化度が50%以上、58%未満である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを0〜20重量部(0重量部を含む)、難燃助剤として錫酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を0〜8重量部(0重量部を含む)含有せしめた厚みが0.2〜1.6mmの層であることを特徴とする半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  6. 基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩素化度が58%以上、73%以下である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを5〜50重量部含有せしめた厚みが2〜12mmの層であり、表面層は、塩素化度が50%以上、58%未満である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤として錫酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめた厚みが0.2〜1.6mmの層であることを特徴とする半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  7. 基層の少なくとも片面に表面層を積層一体化した成形体であって、基層は、塩素化度が58%以上、73%以下である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを8〜30重量部含有せしめた厚みが2〜12mmの層であり、表面層は、塩素化度が50%以上、58%未満である塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、表面をアルミナで被覆した酸化チタンを4〜30重量部、難燃助剤としてモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛のいずれか一種又は二種以上を1〜10重量部含有せしめた厚みが0.2〜1.6mmの層であることを特徴とする半導体製造装置用の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  8. さらに鉛系安定剤を含む請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
  9. 基層及び表面層にさらに鉛系安定剤を含む請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の難燃性塩化ビニル系樹脂成形体。
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