JP3783095B2 - 難燃性ポリオレフィン成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリオレフィン成形体に関し、特に、火災時の熱分解に伴う煙の発生を抑制した難燃性のポリオレフィン成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン、特にポリプロピレンは、熱成形性が良く、機械的強度が大きい樹脂であり、安価に入手でき、耐薬品性が良好で、分解時に腐食性のハロゲンガスを発生することもないため、近年は、工業用、特に半導体製造装置の液槽、容器、配管部材その他の材料として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレンは燃え易く、燃焼時に熱分解して煙やガスを発生するため、ポリプロピレン成形体を半導体製造装置に使用すると、万一の火災時には、発生する煙等によって空気清浄度が低下し、各種の機器類、装置類、半導体部品などが汚染されるという問題がある。そのため、ポリプロピレン成形体に難燃性を付与して万一の火災時にも燃え難くすると共に、煙の発生量を低減させることが望まれている。
【0004】
この難燃性の評価には、北米を根拠地とする産業相互保険機構であるファクトリー・ミューチアル・システムを構成しているファクトリー・ミューチアル・リサーチ・コーポレーション(Factory Mutual Resarch Coporation)の定める評価基準が有効に利用されている。この評価基準は、Class Nomber 4910として挙げられているクリーンルーム材料の難燃性テスト(FMRC Clean Room Material Flammability Test Protocol)(以下FM規格という)に基づく難燃性を示す難燃指数FPIが6以下、発煙性を示す発煙指数SDIが0.4以下、腐食性ガス発生を示す腐食指数CDIが1.1以下であることを要求するものである。
【0005】
参考までに、難燃指数FPI、発煙指数SDI、腐食指数CDIを求める式を以下に示す。
【0006】
FPI=(0.4QCH)1/3/TRP (1)
但し、QCH=△HCO2・GCO2+△HCO・GCO (Chemical release rate)
TRP=△Tig・(κ・ρ・CP)1/2 (Thermal response parameter)
ここに、△Tig;発火温度、κ;伝熱係数、ρ;比重、及びCP;比熱であり、また、△HCO2と△HCOとはそれぞれCO2完全燃焼時とCO完全燃焼時の発生熱量を、GCO2とGCOとはそれぞれCO2とCOとの発生ガス比率を、それぞれ表す。
【0007】
SDI=FPI・ys (2)
但し、ys=G/m (煙の発生量)
G=(l.1・V・D・χ)/(7/A) (煙の発生比率)
ここに、V;煙の流量比、D;光学比重、χ;光源波長、A;燃焼面積、m;質量減少比である。
【0008】
CDI=FPI・CI (3)
但し、CI=(δ/△te)/(W/VT・△tTEST) (腐食指数)
ここで、δ;銅の厚み、△te;試験時間;W;気体の通過速度、VT;空気に対する気体発生流量比、△tTEST;気体発生時間である。
【0009】
上記の要求に対し、ポリオレフィンはポリマー自体にハロゲンを含まず、燃焼により塩素ガス等の腐食性ガスを発生することは少ないので、腐食指数CDIを評価基準以下にすることは容易である。けれども、ポリプロピレンは燃え易く、燃焼時に煙やガスを多量に発生する樹脂であるため、難燃指数FPIと発煙指数SDIを評価基準以下にすることは困難であった。
【0010】
そこで、本出願人は、ポリオレフィンに多量の無機質充填材を添加することによって、FPI、SDI、CDIの評価基準を全て満足する難燃性ポリオレフィン成形体を開発し、既に出願した(特願平9−178098号)。しかしながら、この難燃性ポリオレフィン成形体には、まだ次のような改良すべき点が残されていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、上記の成形体のようにポリオレフィンに多量の無機質充填材を添加すると、ポリオレフィンの占める割合が大幅に減少するため、ポリオレフィン本来の良好な耐薬品性や耐食性を維持することが困難となり、また、耐薬品性に劣る無機質充填材が成形体表面にも高密度で露出するため、ポリオレフィン成形体の耐薬品性や耐食性が低下するという問題があった。従って、このポリオレフィン成形体を、耐薬品性等が要求される半導体製造装置の液槽、容器、配管部材その他の工業用材料として使用するには、該成形体の耐薬品性及び耐食性を改善する必要があった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、FM規格の評価基準を全て満足する耐薬品性及び耐食性の良好な難燃性ポリオレフィン成形体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成する本発明の請求項1に係る半導体製造装置用材料の難燃性ポリオレフィン成形体は、ポリオレフィン100重量部に対して無機材を100〜200重量部含有させた厚さ2〜30mmの基材層と、この基材層の少なくとも片面に形成された厚さ0.3〜2.0mmのポリオレフィンの表面層とからなるものである。
【0014】
この成形体のように無機材を含んだ基材層をポリオレフィンの表面層で被覆すると、無機材が表面に露出せず、しかも、表面層がポリオレフィン本来の良好な耐薬品性及び耐食性を有するため、成形体表面の耐薬品性及び耐食性が向上する。また、基材層は無機材を100〜200重量部と多量に含み、ポリオレフィンの量が少ないため、表面層が形成されていても、この成形体は全体として充分な難燃性を示す。そして、発煙量等も大幅に減少するため、後述の実験データに示すように、難燃指数FPI、発煙指数SDI、腐食指数CDIの全てを満足した成形体となる。基材層が2mmより薄くなると、半導体製造装置などの工業用材料としての成形体の強度が不足し、一方、基材層が30mmより厚い成形体は、その用途が少ないので量産する必要性に欠けている。また、表面層が0.3mmより薄い成形体は薬品等によって侵される恐れがあり、逆に、表面層が2mmより厚い成形体は、表面層のポリオレフィン量が多いため難燃性の低下や発煙量の増加等を招き、FPIやSDIの評価基準を低く抑え難くなる。
【0015】
次に、本発明の請求項2に係る半導体製造装置用材料の難燃性ポリオレフィン成形体は、ポリオレフィン100重量部に対して無機材を100〜200重量部含有させた基材層と、この基材層の片面に形成されたポリオレフィンの表面層と、この基材層の他面に形成された制電層とからなるものである。
【0017】
基材層に含有させる無機材としては、請求項3の成形体のように、金属水酸化物とタルクとを組み合わせたものが好適に使用される。
【0018】
本発明における表面層は、実質的に無機材を含まない層としてもよいし、また、請求項4の成形体の表面層のようにポリオレフィン100重量部に対して耐薬品性の良好な無機材としてチタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、タルクのいずれか一つ又は二つ以上を組合わせて100重量部以下の範囲で含有させた層としてもよい。
【0019】
無機材を含まない表面層を形成した成形体は、表面層がポリオレフィン本来の良好な耐薬品性及び耐食性を有するので、成形体の耐薬品性及び耐食性が顕著に向上する。一方、請求項4のように耐薬品性の良好な無機材を多量に含む表面層を形成した成形体は、無機材の配合によって表面層のポリオレフィン量が減少するため表面層自体の難燃性が向上し、しかも無機材が耐薬品性の良好なものであるから、表面層の耐薬品性や耐食性の低下をほとんど招くことがない。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0023】
本発明の難燃性ポリオレフィン成形体は、基材層の少なくとも片面に表面層を形成したもので、▲1▼基材層の片面のみに表面層を形成した二層構造の成形体と、▲2▼基材層の両面に表面層を形成した三層構造の成形体と、▲3▼基材層の片面に表面層を形成し他面に種々の機能性層(例えば制電層など)を形成した三層構造の成形体とがある。そして、これら▲1▼〜▲3▼の成形体は、基材層と表面層の組成によって次の4種類の成形体A,B,C,Dにそれぞれ分けられる。
【0024】
まず、難燃性ポリオレフィン成形体Aは、基材層がポリオレフィン100重量部に対して無機材を100〜200重量部含有させた層であり、表面層が実質的に無機材を含まないポリオレフィンの層からなるものである。
【0025】
材料のポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が使用される。このなかでも、ポリプロピレンは熱変形温度が高く、耐薬品性が良好であり、機械的強度も大きいので好ましく用いられる。尚、ポリオレフィンには、通常添加される顔料、染料、紫外線吸収剤、抗酸化剤等が添加される。
【0026】
基材層に含有させる無機材としては、アルカリ土類の金属酸化物や金属水酸化物や金属炭酸塩、タルク、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、ゼオライトなど種々の無機材が使用されるが、この中でも特に金属水酸化物、金属炭酸塩、タルク、硫酸バリウム、チタン酸カリウムが好適であり、金属水酸化物、金属炭酸塩の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムが用いられる。これらの無機材は、単独で又は二種以上組合わせて使用される。
【0027】
水酸化アルミニウム(含水アルミナを含む)、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物の粉末は、基材層のポリオレフィンの量を少なくして燃焼速度を低下させると共に、熱分解により水を放出してポリオレフィンの熱分解を遅らせ、発煙を抑える作用があるので、特に難燃指数FPIや発煙指数SDIを低下させるのに有効である。この金属水酸化物は、基材層のポリオレフィン100重量部に対して30〜200重量部含有させるのが好ましい。
【0028】
また、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩の粉末は、基材層のポリオレフィンの量を少なくして燃焼速度を低下させるだけでなく、後述するハロゲン系難燃剤を併用した場合に、燃焼により発生するハロゲンと反応して腐食性ガス(塩素ガスや塩化水素ガスなど)の発生を抑制する作用があるため、特に腐食指数CDIを低下させるのに有効である。この金属炭酸塩は、基材層のポリオレフィン100重量部に対して20〜100重量部含有させるのが好ましい。
【0029】
また、タルクの粉末は、基材層のポリプロピレンの量を少なくして燃焼速度を低下させるだけでなく、白色度が95前後と高く、硬度が1前後と柔らかくて成形体の加工性を損なわないという特性を有するため好適に使用される。このタルクは、基材層のポリオレフィン100重量部に対して10〜100重量部含有させるのが好ましい。
【0030】
また、硫酸バリウムやチタン酸カリウムは、基材層のポリオレフィンの量を少なくして燃焼速度を低下させるだけでなく、耐薬品性をそれほど低下させないので、端面が露出する場合の成形体に好ましく含有される。
【0031】
これらの無機材は、その総量が基材層のポリオレフィン100重量部に対して100〜200重量部となるように、一種又は二種以上を組合わせて含有させることが必要である。無機材の含有量が100重量部より少なくなると、基材層に充分な難燃性を付与できないため、難燃指数FPI、発煙指数SDI、腐食指数CDIの評価基準を全て満足する成形体を得ることが困難になり、逆に、200重量部より多くなると、基材層が脆弱化するため、実用的な強度を有する成形体を得ることが困難になる。
【0032】
一方、表面層は実質的に無機材を含まないポリオレフィンの層であり、耐薬品性及び耐食性を向上させるために基材層の片面又は両面に形成するものである。この表面層は、基材層のポリオレフィンと同じポリオレフィンで形成することが好ましい。
【0033】
前記の基材層は2〜30mmの厚みに形成することが好ましく、また、上記の表面層は0.3〜2.0mmの厚みに形成することが好ましい。基材層が2mmより薄くなると、工業用材料としての成形体の強度が不足するようになり、逆に基材層が30mmより厚い成形体は、用途が少なく、量産する必要性に乏しい。また、表面層が0.3mmより薄い成形体は薬品等で侵される恐れがあり、逆に表面層が2mmより厚い成形体は、表面層のポリオレフィン量が多いため、難燃性の低下や発煙量の増加を招き、FPIやSDIの評価基準を満足し難くなる。特に、0.4〜0.8mmの厚みの表面層は好ましい。
【0034】
以上のように無機材を含んだ基材層の少なくとも片面に、無機材を含まないポリオレフィンの表面層を形成した成形体Aは、基材層が表面層で覆われるので無機材が露出せず、しかも、表面層がポリオレフィン本来の良好な耐薬品性及び耐食性を有するため、表面層のない基材層のみの成形体に比べると、耐薬品性及び耐食性が顕著に向上する。そして、基材層は無機材を100〜200重量部と多量に含み、ポリオレフィンの量が少ないため、この成形体Aは、表面層が形成されていても、全体として充分な難燃性を示し、発煙量が大幅に減少する。従って、この成形体Aは、難燃指数FPIや発煙指数SDIが評価基準以下であり、また、腐食性ガスを生じさせる塩素等のハロゲンを含まないので腐食指数CDIも評価基準以下である。
【0035】
次に、難燃性ポリオレフィン成形体Bは、基材層がポリオレフィン100重量部に対して無機材を50〜150重量部、ハロゲン系もしくはリン系の難燃剤を5〜50重量部含有させた層であり、表面層が実質的に無機材を含まないポリオレフィンの層からなるものである。基材層は、前述した成形体Aの基材層と同様に2〜30mmの厚みに形成するのが好ましく、表面層も、前述した成形体Aの表面層と同様に0.3〜2.0mmの厚みに形成するのが好ましい。
【0036】
この成形体Bのように、無機材と共に難燃剤を基材層に含有させると、無機材の含有量を50〜150重量部と減らすことができるので、無機材の多量含有による基材層の機械的強度の低下や耐薬品性の低下を抑えることができる。
【0037】
ハロゲン系の難燃剤としては、デカブロモジフェニレンエーテル、臭素化エポキシ化合物などの臭素系難燃剤や、塩素化ポリエチレンなどの塩素系難燃剤が使用される。臭素系難燃剤は、熱分解により難燃性の臭素ガスを発生して燃焼を遅らせる作用があり、塩素系難燃剤は、含有塩素によって燃焼中の可燃性ガスと酸素の連鎖反応を停止させて燃焼を遅らせる作用がある。
【0038】
また、リン系の難燃剤としては、赤リンや、有機のリン酸エステル系、含ハロゲン酸エステル系、ポリリン酸塩系などの化合物が用いられる。リン系難燃剤は燃焼時に酸化ないし熱分解により隣酸を生成し、ポリオレフィンの表面に残留して酸素移動を抑制し、表面の炭化を促して燃焼を抑制する作用がある。特に、赤リンは他のリン系難燃材よりもリン含有量が多く、少量添加するだけで難燃性を発現するので好ましく使用される。また、有機のリン系難燃剤の中では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート等の有機リン酸エステルが好ましく使用される。
【0039】
上記のハロゲン系又はリン系の難燃剤は、基材層のポリオレフィン100重量部に対して5〜50重量部の範囲内で含有させることが必要であり、5重量部未満では、添加による難燃効果が期待できない。一方、50重量部を越えると、ハロゲン系難燃剤の場合は、燃焼時に腐食性ガスを多量に発生するため、腐食指数CDIを満足する成形体を得ることが難しくなり、リン系難燃剤の場合は、赤く着色したりポリオレフィンとの相溶性が悪くなるなどの弊害を生じる。尚、赤リンの場合は、含有量を5〜20重量部に減らし、酸化チタンなどの白色の無機材を併用して、基材層が赤く着色するのを防止することが好ましい。
【0040】
ハロゲン系難燃剤を含有させる場合には、これらの難燃剤より発生する塩素、臭素、塩化水素、臭化水素等の腐食性ガスを捕捉する捕捉剤を同時に添加することによって、腐食指数CDIを低下させることが好ましい。このハロゲン捕捉剤としては、既述した無機材として配合される金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム)や金属炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、炭酸カルシウム)、或は、金属酸化物(例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム)、ゼオライトなど、ハロゲンと反応してハロゲンを捕捉したり、ハロゲンを吸着して捕捉する無機物質が使用される。
【0041】
これらのハロゲン捕捉剤は、無機材として金属水酸化物や金属炭酸塩を基材層に含有させる場合には併用する必要がなく、無機材としてハロゲン捕捉作用のないタルクなどを含有させる場合に併用すればよい。捕捉剤の含有量は、捕捉剤が金属水酸化物、金属炭酸塩、金属酸化物である場合には、基材層のポリオレフィン100重量部に対して10〜100重量部であり、ゼオライトの場合は0.5〜5重量部でよい。
【0042】
また、この成形体Bの基材層には、上記のハロゲン系又はリン系の難燃剤と共に難燃助剤を含有させてもよい。難燃助剤は、上記の難燃剤との相乗作用によって、難燃性の向上、発煙の抑制、腐食性ガスの抑制の働きをするものであり、例えば、ハロゲン系難燃剤との併用によって優れた燃焼禁止作用を発揮する三酸化アンチモンや、優れた発煙低減効果を発揮する錫酸亜鉛、ヒドロキシ錫酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、ヒドロキシホウ酸亜鉛、粉末状のシリコーン系ポリマーなどが好ましく使用される。これら難燃助剤の好ましい含有量は、その種類によって若干異なるが、いずれも基材層のポリオレフィン100重量部に対して1〜20重量部の範囲内である。
【0043】
尚、表面層は、前述した成形体Aの表面層と同じものであるので、説明を省略する。
【0044】
以上の成形体Bも、無機材とハロゲン系又はリン系の難燃剤を含んだ基材層が、無機材を含まないポリオレフィン本来の良好な耐薬品性及び耐食性を備えた表面層で被覆されているため、表面層のない基材層のみの成形体に比べると耐薬品性及び耐食性が顕著に向上する。そして、基材層には、無機材のほかにハロゲン系若しくはリン系の難燃剤を5〜50重量部含有させているため、表面層を形成していても、成形体全体として難燃性が向上し、FRP、SDI、CDIの全ての評価基準を充分に満足する成形体Bとなる。しかも、難燃剤の併用によって基材層の無機材の含有量を50〜150重量部まで減らしたため、基材層の脆弱化が抑制されて、充分な実用強度を備えた成形体Bを得ることができる。
【0045】
次に、難燃性ポリオレフィン成形体Cは、基材層が前述の成形体Aの基材層と同様にポリオレフィン100重量部に対して無機材を100〜200重量部含有させた層であり、表面層がポリオレフィン100重量部に対して耐薬品性の良好な無機材を100重量部以下の範囲で含有させた層よりなるものである。
【0046】
この成形体Cの基材層も、前述した成形体Aの基材層と同様に2〜30mmの厚みに形成するのが好ましく、また、表面層も、前述した成形体Aの表面層と同様に0.3〜2.0mmの厚みに形成するのが好ましい。
【0047】
表面層に含有させる耐薬品性の良好な無機材としては、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、タルク等の粉末が好適であり、これらは単独で又は二種以上組合わせて使用される。その含有量は、表面層のポリオレフィン100重量部に対して100重量部以下、好ましくは10〜70重量部の範囲内であり、100重量部を越えると、表面層が脆弱化して伸び強度が低下する。基材層への無機材の添加量が少ないときは、この成形体Cのように、表面層にも無機材を添加して難燃性を向上させる必要がある。
【0048】
上記の無機材を表面層に含有させた成形体Cは、無機材の多量配合によって表面層のポリオレフィン量が減少するため表面層自体の難燃性が向上し、しかも、無機材が耐薬品性の良好なものであるから、表面層の耐薬品性や耐食性がわずかしか低下せず、実用上何の問題も生じない。従って、この成形体Cは、良好な耐薬品性及び耐食性と、前記成形体Aと同等以上の難燃性とを併せ持ち、FRP、SDI、CDIの全ての評価基準を充分に満足することができる。
【0049】
次に、難燃性ポリオレフィン成形体Dは、基材層が前述の成形体Bの基材層と同様にポリオレフィン100重量部に対して無機材を50〜150重量部、ハロゲン系もしくはリン系の難燃剤を5〜50重量部含有させた層であり、表面層が前述の成形体Cの表面層と同様にポリオレフィン100重量部に対して耐薬品性の良好な無機材を100重量部以下の範囲で含有させた層よりなるものである。
【0050】
そして、この成形体Dの基材層は、前述した成形体Bの基材層と同じ2〜30mmの厚さに形成され、表面層も、前述した成形体Cの表面層と同じ0.3〜2.0mmの厚みに形成される。また、成形体Bの基材層と同様に、この成形体Dの基材層にもハロゲン捕捉剤や難燃助剤が適宜配合される。
【0051】
このような成形体Dも、基材層と表面層の双方が良好な難燃性を有し、表面層が良好な耐薬品性及び耐食性を有するため、FRP,SDI,CDIの全ての評価基準を充分に満足でき、耐薬品性や耐食性が向上する。
【0052】
以上の構成の難燃性ポリオレフィン成形体A,B,C,Dは、ポリオレフィンに無機材、ハロゲン系もしくはリン系の難燃剤、その他の添加剤等を配合した基材層成形用のポリオレフィン組成物と、ポリオレフィン単独又は耐薬品性の良好な無機材等を配合した表面層成形用のポリオレフィン組成物を調製し、これらの組成物を多層押出し成形、カレンダープレス、ラミネートその他の手段により、所望の形状に積層成形して製造される。
【0053】
次に、本発明の更に具体的な実施例と比較例を説明する。
[実施例1〜9]
下記の表1にそれぞれ示す組成割合の板状の基材層(厚さ9mm)の両面に、無機材を含まない厚さ0.5mmのシート状のポリプロピレン表面層、又は、タルクかチタン酸カリウムを下記表1に示す割合で含む厚さ0.5mmのシート状のポリプロピレン表面層をラミネートすることにより、全体の厚さが10mmの三層構造を有する実施例1〜9の難燃性ポリオレフィン板状成形体を製造した。そして、各成形体についてFPI、SDI、CDIを測定すると共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を下記の表1に示す。
【0054】
なお、機械的強度はJIS K6745の試験方法に基づいて引張り強度、伸び率、アイゾット衝撃強さを測定したものである。また、耐薬品性は各薬液(97%硫酸、35%硫酸、28%アンモニア水)に23℃で7日間浸漬後の外観変色を観察し、○を実質的な変色なし、△を変色あり、×を著しい変色あり、として表示したものである。
【0055】
【表1】
【0056】
[比較例1〜9]
比較のため、下記の表2にそれぞれ示す組成割合の板状の基材層(厚さ9mm)の両面に、無機材を含まない厚さ0.5mmのシート状のポリプロピレン表面層、又は、タルクか水酸化マグネシウムを下記表2に示す割合で含む厚さ0.5mmのシート状のポリプロピレン表面層をラミネートすることにより、全体の厚さが10mmの三層構造を有する比較例1〜9の難燃性ポリオレフィン板状成形体(但し、比較例2の成形体は表面層がラミネートされていない厚さ10mmの基材層単独の成形体)を製造した。そして、各成形体について、前記実施例と同様にFPI、SDI、CDIを測定すると共に、その機械的強度と耐薬品性を調べた。その結果を下記の表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
前記表1と上記表2を対比すれば、本発明の実施例1〜9の成形体はいずれもFPIが5.9以下、SDIが0.3以下、CDIが0.6以下で、FM規格の評価基準を満足しており、基材層に無機材を100重量部以上含有する比較例2,3,8,9の成形体も、FPI、SDI、CDIの評価基準を全て満足している。これに対し、比較例1、比較例4、比較例5の成形体は、FPIとSDIが評価基準値を越えており、難燃性が不充分で発煙量が多くなっている。これは、比較例1の成形体では基材層に無機材が全く含まれてなく、比較例4や比較例5の成形体でも、基材層に含まれる無機材が100重量部未満と不足しているからである。このことから、FM規格を全て満足するには、基材層の無機材含有量を100重量部以上にする必要があることが判る。
【0059】
また、比較例6の成形体では、SDIとCDIが評価基準値を越えている。これはハロゲン系難燃剤が50重量部を越えて過剰に含有されているにもかかわらず、ハロゲン捕捉作用を有する無機材(炭酸カルシウム)の含有量が80重量部と多くないからである。更に、比較例7の成形体は、FPI、SDI、CDIの全てが評価基準値を越えている。これは基材層に含まれる無機材が83重量部と多くなく、しかもハロゲン系難燃剤が5重量部を下回って不足しているからである。これらのことから、無機材と難燃材を併用する場合は、基材層における難燃材の含有量を5〜50重量部の範囲にする必要があることが判る。
【0060】
次に、基材層の無機材の含有量が200重量部以下である実施例1〜9の成形体はいずれも、引張り強度が2.4〜3.2kg/mm2 の範囲内、伸び率が11〜38%の範囲内、アイゾット衝撃強さが2.8〜4.8kg・cm/cm2 の範囲内にあり、機械的な強度や物性が良好であるのに対し、基材層に無機材を200重量部を越えて多量(250重量部)に含有する比較例3の成形体は、伸び率が3%と極めて小さく、アイゾット衝撃強さも1.8kg・cm/cm2 と低下しており、脆弱化による強度や物性の低下が大きくなっている。このことから、基材層における無機材の含有量は200重量部以下とする必要があることが判る。
【0061】
一方、無機材を含まないポリプロピレンの表面層を形成した実施例1〜6の成形体は、いずれの薬液に対しても実質的な変色が見られず、優れた耐薬品性を有している。そして、耐薬品性の良好な無機材を表面層に含有させた実施例7〜9の成形体も、97%硫酸に対しては変色を生じるものの、37%硫酸や28%アンモニア水に対しては実質的な変色を生じることがなく、実用的な耐薬品性を有している。
【0062】
これに対し、表面層のない比較例2の成形体は全ての薬液に対して著しく変色し、耐薬品性に劣っていることが判る。また、耐薬品性の良好な無機材(タルク)でも表面層に200重量部と多量に含有させた比較例9の成形体や、50重量部と比較的少量でも耐薬品性に劣る無機材(水酸化マグネシウム)を含有させた比較例8の成形体は、全ての薬液に対して変色又は著しい変色が生じ、耐薬品性が大幅に低下することが判る。
【0063】
【発明の効果】
以上の説明及び実験データから明らかなように、本発明の難燃性ポリオレフィン成形体はいずれも、表面層によって耐薬品性及び耐食性が大幅に向上し、基材層が優れた難燃性を有し発煙量や腐食性ガス発生量の少ないものであるため、表面層があってもFM規格に基づく難燃指数FPI、発煙指数SDI、腐食指数CDIの全てを満足することが可能となり、また、脆弱化による強度低下も殆ど生じないため充分な実用強度を有するといった多くの顕著な効果を奏し、耐薬品性等が要求される半導体製造装置の液槽、容器、配管部材その他の工業用材料として好適に使用できるものである。
Claims (4)
- ポリオレフィン100重量部に対して無機材を100〜200重量部含有させた厚さ2〜30mmの基材層と、この基材層の少なくとも片面に形成された厚さ0.3〜2.0mmのポリオレフィンの表面層とからなる半導体製造装置用材料の難燃性ポリオレフィン成形体。
- ポリオレフィン100重量部に対して無機材を100〜200重量部含有させた基材層と、この基材層の片面に形成されたポリオレフィンの表面層と、この基材層の他面に形成された制電層とからなる半導体製造装置用材料の難燃性ポリオレフィン成形体。
- 上記無機材が金属水酸化物とタルクとを組合わせたものである請求項1又は請求項2に記載の半導体製造装置用材料の難燃性ポリオレフィン成形体。
- 上記表面層のポリオレフィン100重量部に対し、耐薬品性の良好な無機材としてチタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、タルクのいずれか一つ又は二つ以上を組合わせて100重量部以下含有させた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の半導体製造装置用材料の難燃性ポリオレフィン成形体。
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