JP4471573B2 - フタロシアニン化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は着色剤化合物に関する。より詳細には、本発明は、ホットメルトインク又は相変化インクでの使用に特に適したフタロシアニン着色剤化合物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
公知の組成物及び処理はそれらの意図される目的には適しているが、改良された着色剤組成物が依然として必要である。また、改良されたフタロシアニン組成物が必要である。更に、相変化インクでの使用に適した着色剤が必要である。また、良好乃至優れた耐光性を可能にする着色剤が必要である。また、減法混色の原色による画像形成のための、改良されたシアンカラーを有する改良された着色剤が必要である。更に、高い着色力又はスペクトル強度を有する改良された着色剤が必要である。また、140℃を越える温度で大気に数週間晒されたインク組成物において熱的安定性が非常に高い、改良されたシアン相変化インク着色剤が必要である。更に、他の着色剤を含むインクに滲出しない、拡散特性の低い相変化インク着色剤が必要である。良好乃至優れた耐光性を備え、相変化インクのビヒクルに対して相溶性のある着色剤も必要である。更に、プリンタ内でのインクの寿命にわたって色の変化がないか殆どない相変化インクでの使用に適した着色剤が必要である。また、基体上に像様に付着した後、色の変化がないか殆どない相変化インクでの使用に適した着色剤が必要である。また、発ガン性又は変異原性のない着色剤が必要である。また、相変化インクのキャリヤ中に溶解した際、濾過効率を低下させる可能性のある物質の残留物を残さない着色剤が必要である。
【0003】
本願に関連する関連技術がある(例えば、特許文献1乃至特許文献4、並びに非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第6,174,937号明細書
【特許文献2】
米国特許第5,782,966号明細書
【特許文献3】
米国特許第6,309,453号明細書
【特許文献4】
米国特許第5,919,839号明細書
【非特許文献1】
エヌ.ビー.マケーオン(N.B. McKeown)、「フタロシアニン材料(Phthalocyanine Materials)」、(英国)、ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレス (Cambridge University Press)、1998年、第1章、表1.1
【非特許文献2】
「測色(Colorimetry)」、CIE15.2、(オーストリア)、第2版、セントラル・ビューロー・ドゥ・ラ・CIE (Central Bureau de la CIE)、1986年
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式の化合物に関するものである。
【0006】
【化2】
【0007】
式中、Mはフタロシアニン分子の中心キャビティに結合することのできる原子又は原子団であり、必要に応じて軸方向配位子をMに結合させることができる。例えば、エヌ.ビー.マケーオン、「フタロシアニン材料」(ケンブリッジ・ユニバーシティ・プレス、1998年、第1章、表1.1)に記載のように、フタロシアニン分子の中心キャビティに結合するものとして、約70の原子又は基が知られている。これらの原子又は基は、2つの水素、リチウム、ナトリウム又はカリウム原子;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、錫、鉛、及びカドミウムなどの2価金属原子;クロロ鉄(III)、クロロチタン(III)、クロロクロム(III)、クロロアルミニウム、クロロガリウム、クロロインジウム、クロロリン(III)、ジクロロチタン(IV)、ジクロロ珪素、ジクロロゲルマニウム、及びジクロロ錫などの2価ハロメタル基又はハロメタロイド基、並びに対応する弗化物、臭化物及び沃化物;ヒドロキシアルミニウム、ヒドロキシガリウム、ジヒドロキシ珪素、ジヒドロキシゲルマニウム、及びジヒドロキシ錫などの2価ヒドロキシ金属基;オキソ−モリブデン(IV)、オキソ−バナジウム(IV)、及びオキソ−チタン(IV)などの2価オキソ金属基;アルコキシアルミニウム、アルコキシガリウム、ジアルコキシ珪素、及びジアリールオキシゲルマニウムなどの2価の金属−オキシ炭化水素基又はメタロイダル−オキシ炭化水素基であって、オキシ炭化水素基がオキシアルキル基、アキシアリール基、オキシアルキルアリール基、オキシアリールアルキル基、オキシヘテロ環基、又はその混合物であり、(必ずではないが)一般に1乃至約20の炭素原子を含む、2価の金属−オキシ炭化水素基又はメタロイダル−オキシ炭化水素基;並びにこれらの混合物を含むが、これらに限定されない。
【0008】
殆どの場合、本発明の着色剤分子は下記のような4つの異性体の混合物として得られると考えられる。この混合物において、C4h、D2h、C2v、及びCs異性体はそれぞれ約1:1:2:4の近似比で存在する。
【0009】
【化3】
【化4】
【化5】
【0010】
ある実施態様について、本発明の着色剤分子が示すスペクトル強度は、後述する実施例の前の部分において説明する如く測定される。1つの実施態様では少なくとも約1×105A*ml/g(milliliters absorbance per gram)、別の実施態様では少なくとも約1.15×105A*ml/gのスペクトル強度を示し、1つの実施態様では約1.5×105A*ml/g以下、別の実施態様では少なくとも約1.3×105A*ml/g以下のスペクトル強度を示すが、スペクトル強度はこれらの範囲外でもよい。
【0011】
本発明の着色剤分子は、あらゆる所望の又は有効な方法によって調製することができる。ある実施態様では、方法は2つのステップで行われ、第1のステップは、以下に示すフタロニトリル(4−(3−n−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル)のアルキルアリールエーテル付加物の合成である。
【0012】
【化6】
【0013】
所望のC15フェノール(3−n−ペンタデシルフェノール)を塩基の存在下で4−ニトロフタロニトリルと反応させることにより、この処理を行うことができる。反応物を溶解することのできる任意の溶媒中に、反応物を溶解する。一般に、C15フェノール及び塩基を溶媒に添加し、次いでこの反応混合物を加熱する。この後、4−ニトロフタロニトリルを反応混合物に添加し、反応混合物を加熱する。この後に反応混合物を冷却し、次いで沈殿溶媒中で急冷し、これによってアルキルアリールオキシフタロニトリル中間生成物を沈殿させる。この中間生成物は、濾過によって単離することができる。
【0014】
この実施態様において、本発明の着色剤分子の合成の第2のステップは、下記のような、アルキルアリールエーテルフタロニトリル付加物のフタロシアニンへの変換を含む。
【0015】
【化7】
【0016】
アルキルアリールエーテルフタロニトリル付加物を金属化合物と反応させることにより、この処理を行うことができる。好適な金属化合物の例としては、式MXn・yH2Oの無水塩及び水和塩又は錯体が挙げられ、式中、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、ゲルマニウム、錫、及び鉛などの金属であり、Xはホルメート、アセテート、アセトアセテート、プロピオネート、ブチレート、及びベンゾエートなどのカルボキシレート含有部分(moiety)、メトキシド、エトキシド、又はイソプロポキシドなどのアルコキシド、アセチルアセトナート、フルオリド、クロリド、ブロミド、又はイオジドなどのハロゲン化物原子、スルフェート、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、ニトレート、ニトリット、及びホスフェートなどのようなアニオンであり、nは金属の原子価を表す数、そしてyは0乃至10の整数である。具体例としては、(これらに限定されないが)無水塩化銅、水和塩化銅、無水酢酸銅、水和酢酸銅、無水硫酸銅、水和硫酸銅、無水硝酸銅、水和硝酸銅、無水臭化銅、水和臭化銅など、及びこれらの混合物が挙げられる。アルキルアリールエーテルフタロニトリル付加物、金属化合物、及び溶媒を組み合わせて反応混合物を形成する。この反応混合物を加熱還流し、その後、反応混合物を冷却し、濾過し、溶媒で洗浄する。
【0017】
前述の処理に従って調製された、二リチウム、二ナトリウム、二カリウム、ベリリウム、マグネシウム、又はカルシウムフタロシアニンなどのアルカリ金属フタロシアニンを、希釈した水性又はアルコール性の酸で処理することにより、無金属フタロシアニンを調製することができる。
【0018】
核磁気共鳴スペクトロスコピー(NMR)及び高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)のような標準の分析手順を用いて、合成した染料生成物の純度を決定した。更に、下記のようにして決定されたスペクトル強度(SS)の測定値を用いて最終フタロシアニン染料の試料の純度を決定した。50mg±2mgの質量の染料を0.1mgの精度で量り、250mlのメスフラスコに定量的に移した。分光級トルエン約175mlをフラスコに加え、染料を完全に溶解させた。この溶液を標線までトルエンで希釈し、混合した。次いで、染料溶液5.00mlを第2の250mlメスフラスコにピペットで移し、この溶液を標線までトルエンで希釈してよく混合した。希釈した染料溶液のUV/可視吸収スペクトルを以下のように測定した。HP8452A UV/Vis分光計又はその同等物、及び標準の1cm光路長石英セルを用いた。トルエンからなる基準ブランクによりブランクテストを行った。希釈染料溶液の吸光度を、一般には680nmである最大吸収波長λmaxにおいて決定した。680nmにおける希釈染料溶液の吸光度を希釈染料溶液の濃度(g/ml)で割ることにより、スペクトル強度を計算した。銅染料に関しては、1.1×105乃至1.3×105A*ml/gのスペクトル強度の値が相変化インク配合物に対して許容可能であると判断した。達成される最大の値、即ち1.3×105A*ml/gは、純度約100%の染料を示すものとみなされる。
【0019】
【実施例】
実施例I
磁気攪拌機を備える500mlの一口丸底フラスコに、CARDOLITE(登録商標)NC510(主に下記式のメタC15アルキルフェノールであり、カシューナット蒸留から得られ、少量の自然発生異性体を含有する)45.3g、炭酸カリウム9.3g、及び1−メチル−2−ピロリジノン260gを添加した。
【化8】
この混合物を、90℃の油浴内で1時間加熱した。反応混合物は焦茶色になった。この後、4−ニトロフタロニトリル25gを反応混合物に添加し、この混合物を更に4時間90℃に保った。そして、反応混合物を約25℃に冷却し、脱イオン水600ml中で急冷した。沈殿した固体を濾過によって分離し、脱イオン水約600mlを用いて再びスラリーにし、再度濾過した。固体生成物の洗浄に使用した水のpHが中性になるまでこの処理を繰り返した。次に固体を自然乾燥させ、25℃でイソプロパノール約350gと組み合わせた。生じた懸濁液を、氷浴内で冷却することによって再結晶化させた。結晶を濾過して自然乾燥させ、4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル54.4gを得た。HPLCによって測定したこの物質の純度は約97%であった。
【0020】
実施例II
機械攪拌機を備える500mlの一口丸底フラスコに、3−ペンタデシルフェノール50.25g、無水炭酸カリウム20.0g、4−ニトロフタロニトリル25.0g、及びジメチルホルムアミド250gを添加した。加熱マントルを用いてこの混合物を2時間90℃まで加熱した。反応混合物は焦茶色になった。この反応混合物を約60℃に冷却し、その後脱イオン水1L中へゆっくりと注ぐことによって急冷した。沈殿したベージュ色の固体を濾過によって分離した後、固体生成物の洗浄に使用した水のpHが中性になるまで1回あたり約600mlの脱イオン水を用いて再びスラリーにし、濾過することを繰り返した。次いで、生成物をメタノール600ml中で2度再びスラリーにし、濾過して40℃で真空乾燥させ、4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル42.6gを得た。HPLCによって測定したこの物質の純度は約98%であった。
【0021】
実施例III
機械攪拌機を備える5Lの一口丸底フラスコに、3−ペンタデシルフェノール502.5g、炭酸カリウム200g、及び1−メチル−2−ピロリジノン(無水)2000gを添加した。加熱マントルを用いてこの混合物を2時間90℃まで加熱した。反応混合物は焦茶色になった。この後、4−ニトロフタロニトリル250.0gを添加し、この混合物を更に2時間90℃に保った。高温の反応混合物を、脱イオン水3L中へ注ぐことによって急冷した。沈殿したベージュ色の懸濁液を攪拌して室温になるまで冷却し、次いで濾過した。次に、固体生成物の洗浄に使用した水のpHが中性になるまで1回あたり約6Lの脱イオン水を用いて固体を再びスラリーにし、濾過することを繰り返した。次いで、この固体をメタノール4L中で2度再びスラリーにし、濾過して40℃で真空乾燥させ、4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル519.8gを得た。HPLCによって測定したこの物質の純度は89%を越えていた。
【0022】
実施例IV
機械攪拌機を備える5Lの一口丸底フラスコに、3−ペンタデシルフェノール502.5g、無水炭酸カリウム200g、4−ニトロフタロニトリル250.0g、及びジメチルスルホキシド2000gを添加した。加熱マントルを用いてこの混合物を3時間90℃まで加熱した。反応混合物は焦茶色になった。次に反応混合物を80℃に冷却し、脱イオン水3Lをゆっくりとフラスコに注ぐことによって反応混合物を急冷した。沈殿したベージュ色の固体を攪拌により懸濁してその懸濁液を室温になるまで冷却し、濾過によって分離した。1回あたり6Lの脱イオン水を用いて固体を2度スラリーにし、濾過した。少量の不溶性金属炭酸塩汚染物質を溶解するよう機能する2%塩酸水溶液6L中で湿潤ケークを1時間攪拌し、濾過した。固体をスラリーにして濾過し、固体生成物の洗浄に使用した水のpHが中性になるまで1回あたり6Lの脱イオン水で固体を再びスラリーにした。次に固体をメタノール4L中で2度スラリーにし、濾過して40℃で真空乾燥させ、4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル558.4gを得た。HPLCによって測定したこの物質の純度は98%を越えていた。
【0023】
実施例V
機械攪拌機、温度調節器、及び凝縮器を備える1Lのケトルにおいて、(実施例Iの説明の通りに調製した)4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリルの乾燥固体結晶52g、無水塩化銅(II)4.1g、及び(無水)ヘキサノール600gの混合物を攪拌し、加熱した。還流が生じるまで加熱(約160℃)したところ、反応混合物は最終的に青色になった。反応混合物を還流させ、3時間攪拌した。この後、反応混合物をメタノール1200ml中で急冷した。このようにして得られた、沈殿した青色固体を濾過した後、アセトン150mlを用いてスラリーにした。固体を再度濾過し、乾燥させた。下記式の混合異性体であると思われる生成物の収量は24.1gであった。UV/Vis(トルエン)は683nmであった。
【0024】
【化9】
【0025】
実施例VI
4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル(4.74g、実施例IIIの通りに調製したもの)を酢酸銅(II)一水和物0.50gを含有するNMP25ml中に溶かした溶液を攪拌し、150℃まで加熱した。15分後、深緑色が生じた。この混合物を150℃で3時間攪拌し、室温に冷却して濾過した。得られた生成物をアセトン40mlで洗浄し、24時間自然乾燥させて、紺青色で蝋状の球状塊である銅フタロシアニン染料2.49gを得た。
【0026】
実施例VII
4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル(25.8g)、酢酸銅(II)二水和物(3.0g)、及び酢酸アンモニウム(9.2g)の混合物をNMP100ml中で攪拌し、120℃まで加熱した。ゆっくりとしたガス発生がみられ、5分後に深い紺青色が生じた。30分後、120℃の反応混合物を180℃まで1時間加熱した。次にNMP(50ml)を加え、混合物を攪拌して180℃まで再び加熱した後、攪拌しながら室温に冷却した。得られた生成物を濾過し、濾過用漏斗において固体をDMF100ml×2で洗浄した。この固体をアセトン200ml中で50℃で攪拌し、次いで濾過した。このアセトン処理を繰り返し、固体を60℃で一晩乾燥させて、粗い粉末の生成物(19.9g)を得た。この物質のスペクトル強度は1.27×105A*ml/gであり、これは高い(即ち、約98%の)純度を示している。
【0027】
実施例VIII
窒素雰囲気下に保ち、機械攪拌機を取り付けた500mlのフラスコにおいて、4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル60.8gのNMP195ml溶液を、酢酸銅(II)一水和物6.24g及び2−ジメチルアミノエタノール6.24gで処理した。この混合物を180℃で6時間攪拌して加熱し、次いで80℃に冷却した。混合物を濾過し、フィルタ内で固体をNMP120mlで洗浄した。次に、固体を1回あたり120mlのメチルエチルケトンで3回スラリーにして洗浄し、濾過した。真空下、30℃で48時間乾燥したところ、紺青色の粗い粉末の生成物(44g)を得た。この染料のスペクトル強度は1.28×105A*ml/gであり、これは98%を越える純度を示している。
【0028】
実施例IX
無水炭酸カリウム(7.6g)を含有するNMP90mlに3−ペンタデシルフェノール(16.75g)を溶かした溶液を攪拌し、100℃まで加熱した。10分後、4−ニトリフタロニトリル(8.65g)を添加し、この混合物を100℃で更に40分間加熱した。酢酸銅(II)一水和物(2.50g)及び酢酸アンモニウム(3.9g)を添加し、この混合物を30分間135℃まで加熱し、次いで170℃まで加熱した。次にDMAE(10ml)を添加し、この混合物を170℃で2.25時間攪拌した。混合物を室温に冷却し、濾過用漏斗において生成物をDMF50mlで洗浄し、次いでメタノール50mlで洗浄した。次に生成物をメタノール100ml中でスラリーにし、濾過して60℃で乾燥させ、青みがかった黒色の微細な固体である染料9.2gを得た。
【0029】
実施例X
2000mlの三角フラスコにおいて、3−ペンタデシルフェノール(182.7g)及び無水炭酸カリウム(91g)の混合物をNMP650ml中で攪拌し、90℃まで加熱した。4−ニトロフタロニトリル(104g)を添加し、この混合物を100℃で1時間加熱した。得られた懸濁液を50℃に冷却して濾過した。固体をNMP50ml×4で洗浄した。(漏斗において固体をアセトン50ml×4で更に洗浄し、60℃で乾燥させ、白色の吸湿性固体91gを得た。この固体は二炭化カリウム及び亜硝酸カリウムの混合物と思われるが、この結論は確証されていない。)濾液及びNMP洗浄溶媒の組み合わせを2000mlの三角フラスコ内で攪拌し、酢酸銅(II)一水和物(30.0g)、酢酸アンモニウム(24g)、及びDMAE(60ml)で処理した。この混合物を15分間120℃まで加熱し、次いで180℃で3時間加熱した。(反応温度が約165℃に達した際に紺青色が生じた。)反応混合物を70℃に冷却し、次いで濾過した。濾過用漏斗において固体をNMP200ml×2で洗浄し、次いでアセトン200mlで洗浄した。固体をアセトン700ml中で50℃で1時間攪拌し、濾過して60℃で乾燥させ、紺青色の微細な粉末である染料178.5gを得た。この生成物のスペクトル強度は、約86%の純度を示す1.11×105A*ml/gであった。
【0030】
実施例XI
4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル(9.50g)、酢酸亜鉛二水和物(1.10g)、及びDMAE(5ml)をNMP(45ml)中で攪拌し、175℃まで加熱した。得られた深い青緑色の溶液を175℃で3時間加熱し、室温に冷却した。この溶液にメタノールを添加して粘性のある固体の沈殿を生じ、この固体をデカンテーションによって分離した。フラスコ内で固体をアセトン25ml×2で洗浄して乾燥させ、粘性のある青色の固体である下記式の亜鉛染料5.0gを得た。UV/Vis(トルエン)は682nmであった。
【0031】
【化10】
【0032】
実施例XII
4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル(34g)の2−ジメチルアミノエタノール50ml溶液に、酢酸アンモニウム(7.7g)を添加した。この混合物を攪拌し、15分間120℃まで加熱し、次いで還流させながら(140℃)6時間加熱した。この後、濃い青緑色の溶液をDMF100mlで希釈し、80℃に冷却した。粘性のある生成物の塊をデカントすることによって分離し、DMF25ml×4で洗浄した。アセトン20mlを用いて粉砕し、次いでアセトン100ml中で攪拌し、(デカントによって)分離し、60℃で乾燥させて、紺青色でゴム状の固体の塊である無金属染料(8.0g)を得た。UV/Vis(トルエン)は702nm及び667nmであった(この二重のピークは、無金属フタロシアニンの特徴を示している)。
【0033】
実施例XIII
4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル(34g)のNMP200ml溶液に、酢酸ニッケル(II)四水和物(6.22g)及び酢酸アンモニウム(7.7g)を添加した。この混合物を120℃で20分間攪拌して加熱し、次いで170℃で2時間加熱した。反応混合物の温度が150℃に達した際に紺青色が形成された。混合物を100℃に冷却し、次いで濾過し、漏斗において固体をDMF50ml×3で洗浄した。生成物をアセトン200ml中で14時間スラリーにし、次にデカンテーションによって分離した。単離した生成物は、粘性のある球状固体(22.0g)であった。UV/Vis(トルエン)は673nmであった。
【0034】
実施例XIV
250mlの三角フラスコにおいて、コバルト塩化物(3.25g)、4−(3−ペンタデシル)フェノキシフタロニトリル(34g)、及びDMAE(10ml)の混合物をNMP100ml中で攪拌し、180℃まで加熱した。140℃で濃い青緑色がみられた。この混合物を180℃で2時間攪拌した後、DMF100mlを添加した。室温に冷却すると、生成物は粘性のある球として分離した。この球をデカントすることによって分離し、初めはDMF25ml×3で、次にアセトン25mlで洗浄した。この生成物をアセトン100ml中で50℃で1時間攪拌し、次いで分離して自然乾燥させ、紺青色の球である生成物(15.0g)を得た。UV/Vis(トルエン)は673nmであった。
【0035】
比較例A
4−n−ドデシルフェノール(14.4g)のNMP90ml溶液に、無水炭酸カリウム7.6gを添加した。この混合物を攪拌し、100℃まで加熱した。10分後、4−ニトロフタロニトリル(8.65g)を添加した。100℃で更に40分経過後、酢酸銅(II)一水和物(2.50g)及び酢酸アンモニウム(3.9g)を添加し、この混合物を170℃まで加熱した。更に10分経過後、2−ジメチルアミノエタノール(10ml)を添加したところ、濃い緑がかった青色が瞬時に形成された。この混合物を170℃で2.25時間加熱し、次いで室温に冷却した。混合物を濾過し、濾過用漏斗において生成物をジメチルホルムアミド50ml×2で洗浄した。生成物をメタノール100ml中でスラリーにし、次に濾過して60℃で乾燥させ、以下に示すテトラキス(4−n−ドデシル)フェノキシフタロシアニンの4つの可能な異性体の混合物と思われる青色の粉末6.5gを得た。
【0036】
【化11】
【0037】
相変化インクのビヒクルを以下のように調製した。ステンレススチールのビーカー内で、ポリエチレンワックス(式CH3(CH2)50CH3からなるPE655)140g、ステアリルステアラミドワックス(KEMAMIDE(登録商標)S−180)32g、米国特許第6,174,937号の実施例1に記載のように調製し、ダイマー酸1当量とエチレンジアミン2当量及びUNICID(登録商標)700(長鎖アルコールのカルボキシル酸誘導体)との反応から得たテトラアミド樹脂約40g、米国特許第5,782,966号の実施例1に記載のように調製し、ABITOL(登録商標)Eヒドロアビエチルアルコール2当量及びイソホロンジイソシアネート1当量の反応から得たウレタン樹脂30g、米国特許第6,309,453号の実施例4に記載のように調製したステアリルイソシアネート3当量とグリセロール系アルコールとの付加物であるウレタン樹脂12g、並びにNAUGUARD(登録商標)445酸化防止剤0.5gを組み合わせた。これらの物質を、オーブンにおいて約140℃の温度で一緒に溶融させ、温度調節マントルにおいて約135℃で約0.5時間攪拌することによって混合した。
【0038】
表面温度150℃まで加熱したホットプレート攪拌機上の直径2.5インチのアルミニウム秤量皿において、実施例Xに記載のように調製した銅染料の0.5g試料を前述のインク基剤9.5g中で攪拌した。磁気攪拌機を用いてこの混合物を30分間攪拌した。10ミクロンのギャップを有するドクターブレードを用いて、この溶融インクの試料をハンマーミルレーザプリント(Hammermill Laserprint、登録商標)用紙上に広げた。生じた見本(swatch)は、約1.2の光学濃度を有する均一な青色であった。
【0039】
本比較例から得た4−ドデシルフェノキシ銅フタロシアニン染料0.5gを用いて前述のテストを繰り返した。得られたインク見本は色が均一ではなく、低い色強度(約0.64の光学濃度)及びインク中の溶解していない染料の塊によって生じた濃い縞によって証明されるように染料の溶解性は不良であった。
【0040】
比較例B
金属ナトリウム(0.10g)をn−アミルアルコール200ml中に溶解した。この溶液に、4−t−ブチルフタロニトリル1.84gを添加した。この溶液を還流させながら(約138℃)4.25時間加熱した。次に、この混合物を室温に冷却し、メタノール(70ml)及び水(5ml)で処理し、これにより中間二ナトリウムフタロシアニンを無金属の形に変換させた。この生成物を濾過し、メタノール50ml及び水50mlで洗浄し、次いで自然乾燥させ、テトラ(t−ブチル)無金属フタロシアニンの混合異性体1.28gを得た。UV/Vis(トルエン)は700nm及び662nmであった。
【0041】
本比較例の染料0.25gを用いて、比較例Aに記載の方法により、この染料のテストインクを配合した(注:この染料の分子量は実施例Xの染料の分子量の約半分である)。得られたインク見本は、インク中の溶解していない染料の塊によって生じた濃い縞によって証明されるように、テスト染料の不良な溶解性を示した。
【0042】
比較例C
無水メタノール30ml中のテトラ−t−ブチル無金属フタロシアニン(1.48g)を、リチウムメトキシドのメタノール溶液(1.0モル溶液、5ml)で処理した。得られた二リチウムフタロシアニンの溶液をアルゴン雰囲気下で1時間攪拌し、激しく攪拌しながら無水塩化亜鉛(0.30g)を少量ずつ用いて処理した。得られた懸濁液を1時間攪拌し、次いで濾過し、固体をメタノール10ml×4で洗浄して60℃で乾燥させ、紺青色の粉末であるテトラ−t−ブチル亜鉛フタロシアニン(1.38g)を得た。C48H48N8Znの計算値(Anal. Calcd.)は、C71.86、H6.03、及びN13.97であり、測定値(Found)はC71.97、H7.65、及びN13.98であった。UV/Vis(トルエン)は677nmであった。
【0043】
本比較例の染料0.25gを用いて、比較例Aに記載の方法により、この染料のテストインクを配合した(注:この染料の分子量は実施例Xの染料の分子量の約半分である)。得られたインク見本は、インク中の溶解していない染料の塊によって生じた濃い縞によって証明されるように、テスト染料の不良な溶解性を示した。
【0044】
実施例XV
本発明の相変化インクを以下のように調製した。ステンレススチールのビーカー内で、ポリエチレンワックス(式CH3(CH2)50CH3からなるPE655)140g、ステアリルステアラミドワックス(KEMAMIDE(登録商標)S−180)32g、米国特許第6,174,937号の実施例1に記載のように調製し、ダイマー酸1当量とエチレンジアミン2当量及びUNICID(登録商標)700(長鎖アルコールのカルボキシル酸誘導体)との反応から得たテトラアミド樹脂約40g、米国特許第5,782,966号の実施例1に記載のように調製し、ABITOL(登録商標)Eヒドロアビエチルアルコール2当量及びイソホロンジイソシアネート1当量の反応から得たウレタン樹脂30g、米国特許第6,309,453号の実施例4に記載のように調製したステアリルイソシアネート3当量とグリセロール系アルコールとの付加物であるウレタン樹脂12g、並びにNAUGUARD(登録商標)445酸化防止剤0.5gを組み合わせた。これらの物質を、オーブンにおいて約140℃の温度で一緒に溶融させ、温度調節マントルにおいて約135℃で約0.5時間攪拌することによって混合した。この混合物に、実施例Iに記載のように調製した銅フタロシアニン化合物約13gを添加した。更に約3時間攪拌した後、このようにして形成したシアンインクを、#3ワットマン(Whatman)濾過紙及び約15ポンド/平方インチの圧力を用いて、加熱したMOTT(登録商標)装置に通して濾過した。濾過した相変化インクを型に注ぎ、固化させてインクスティックを形成した。
【0045】
このように調製したシアン相変化インクは、レオメトリクス(Rheometrics)円錐板粘度計による測定で約140℃で約10.6cPの粘度、デュポン(DuPont、登録商標)2100熱量計を用いた示差走査熱量測定による測定で約80℃の融点、約14℃のガラス転移温度(Tg)、及び681nmにおいて約4535A*ml/gのスペクトル強度を示した。スペクトル強度の決定については、固体インクをトルエン中に溶解し、パーキンエルマーラムダ(Perkin Elmer Lambda)2SUV/VIS光電分光光度計を用いて吸光度を測定する、溶液中の着色剤の測定に基づいた写真測光法を用いた。
【0046】
比較例D
相変化インクを以下のように調製した。ステンレススチールのビーカー内で、ポリエチレンワックス(式CH3(CH2)50CH3からなるPE655)400g、ステアリルステアラミドワックス(KEMAMIDE(登録商標)S−180)100g、米国特許第6,174,937号の実施例1に記載のように調製し、ダイマー酸1当量とエチレンジアミン2当量及びUNICID(登録商標)700(長鎖アルコールのカルボキシル酸誘導体)との反応から得たテトラアミド樹脂152g、米国特許第5,782,966号の実施例1に記載のように調製し、ABITOL(登録商標)Eヒドロアビエチルアルコール2当量及びイソホロンジイソシアネート1当量の反応から得たウレタン樹脂100g、米国特許第6,309,453号の実施例4に記載のように調製したステアリルイソシアネート3当量とグリセロール系アルコールとの付加物であるウレタン樹脂42g、並びにNAUGUARD(登録商標)445酸化防止剤0.5gを組み合わせた。これらの物質を、オーブンにおいて約140℃の温度で一緒に溶融させ、温度調節マントルにおいて約135℃で約0.5時間攪拌することによって混合した。この混合物に、市販の銅フタロシアニン染料(SAVINYL BLUE GLS)約23gを添加した。更に約3時間攪拌した後、このようにして形成したシアンインクを、#3ワットマン濾過紙及び約15ポンド/平方インチの圧力を用いて、加熱したMOTT(登録商標)装置に通して濾過した。濾過した相変化インクを型に注ぎ、固化させてインクスティックを形成した。
【0047】
このように調製したシアン相変化インクは、レオメトリクス円錐板粘度計による測定で約140℃で約10.6cPの粘度、デュポン(登録商標)2100熱量計を用いた示差走査熱量測定による測定で約80℃の融点、約14℃のガラス転移温度(Tg)、及び約670nmにおいて約1224A*ml/gのスペクトル強度を示した。スペクトル強度の決定については、固体インクをブタノール中に溶解し、パーキンエルマーラムダ2SUV/VIS光電分光光度計を用いて吸光度を測定する、溶液中の着色剤の測定に基づいた写真測光法を用いた。
【0048】
初めにインクを中間転写部材上へ像様パターンで噴出し、次に像様パターンを中間転写部材から最終記録基体に転写する印刷方法を用いるゼロックス(XEROX、登録商標)フェーザー(PHASER)860プリンタ内に、このように調製したシアンインクを配置した。138℃のプリントヘッド温度及び64℃の中間転写ドラム温度で、ハンマーミルレーザプリント(登録商標)用紙を用いてインクをプリントした。
【0049】
比較例E
相変化インクを以下のように調製した。ステンレススチールのビーカー内で、ステアリルステアラミドワックス(KEMAMIDE(登録商標)S−180)500g、テトラアミド樹脂(UNIREZ(登録商標)2970)約150g、米国特許第5,782,966号の実施例1に記載のように調製し、ABITOL(登録商標)Eヒドロアビエチルアルコール2当量及びイソホロンジイソシアネート1当量の反応から得たウレタン樹脂100g、米国特許第6,309,453号の実施例4に記載のように調製したステアリルイソシアネート3当量とグリセロール系アルコールとの付加物であるウレタン樹脂51g、並びにNAUGUARD(登録商標)445酸化防止剤0.5gを組み合わせた。これらの物質を、オーブンにおいて約140℃の温度で一緒に溶融させ、温度調節マントルにおいて約135℃で約0.5時間攪拌することによって混合した。この混合物に、市販の銅フタロシアニン染料(SAVINYL BLUE GLS)約23gを添加した。更に約3時間攪拌した後、このようにして形成したシアンインクを、#3ワットマン濾過紙及び約15ポンド/平方インチの圧力を用いて、加熱したMOTT(登録商標)装置に通して濾過した。濾過した相変化インクを型に注ぎ、固化させてインクスティックを形成した。
【0050】
このように調製したシアン相変化インクは、レオメトリクス円錐板粘度計による測定で約140℃で約10.6cPの粘度、デュポン(登録商標)2100熱量計を用いた示差走査熱量測定による測定で約80℃の融点、約5℃のガラス転移温度(Tg)、及び約670nmにおいて約3332A*ml/gのスペクトル強度を示した。スペクトル強度の決定については、固体インクをブタノール中に溶解し、パーキンエルマーラムダ2SUV/VIS光電分光光度計を用いて吸光度を測定する、溶液中の着色剤の測定に基づいた写真測光法を用いた。
【0051】
初めにインクを中間転写部材上へ像様パターンで噴出し、次に像様パターンを中間転写部材から最終記録基体に転写する印刷方法を用いるゼロックス(登録商標)フェーザー860プリンタ内に、このように調製したシアンインクを配置した。138℃のプリントヘッド温度及び64℃の中間転写ドラム温度で、ハンマーミルレーザプリント(登録商標)用紙を用いてインクをプリントした。
【0052】
比較例D及び比較例Eのインクのスペクトル強度の値を検討してみると、各キャリヤ組成物間で、SAVINYL BLUE GLSのような従来の銅フタロシアニン染料の溶解性の差異が大きいことがはっきりとわかる。比較例D及び実施例XVのキャリヤ組成物を比較すると、キャリヤ組成物の成分比の差異はわずかであることがわかる。
【0053】
計器製造者によって供給される適切な較正規格を用いた、ASTM 1E805(材料の色又は色差の計器による測定方法の標準的実施)に規定の測定方法に従って、実施例XV、比較例D、及び比較例Eの相変化インクの透過スペクトルを市販の光電分光光度計ACS SPECTRO−SENSOR IIで評価した。これらのインクの全体的な比色性能を確認し、定量化するために、三刺激積分によって測定データを小さくし、次に、ASTM E308(CIE系を用いてオブジェクトの色を計算するための標準的な方法)により、各相変化インク試料の(CIE1976)L*(明度)、a*(赤色−緑色)、及びb*(黄色−青色)CIELAB値を計算した。また、CIELAB色質指数の値C* ab及びCIELAB色相角度指数の値を、刊行物であるCIE15.2の「測色」(第2版、セントラル・ビューロー・ドゥ・ラ・CIE、ウィーン、1986年)に従って計算した。
【0054】
実施例XV、比較例D、及び比較例Eにおいて調製したインクのプリント見本のCIE L*a*b*色座標を下記の表に列挙する。
【0055】
【表1】
【0056】
これらのデータが示すように、比較例Dのインクは実施例XVに比べて低い着色強度を示し、このインクに含まれる市販の銅フタロシアニン染料が不適切であることを示している。
【0057】
比較例F
米国特許第5,919,839号の実施例4に記載の方法に従って相変化インクを調製した。このように調製したシアン相変化インクは、レオメトリクス円錐板粘度計による測定で約140℃で約10.6cPの粘度、デュポン(登録商標)2100熱量計を用いた示差走査熱量測定による測定で約80℃の融点、約10℃のガラス転移温度(Tg)、及び約628nmにおいて約1400A*ml/gのスペクトル強度を示した。スペクトル強度の決定については、固体インクをブタノール中に溶解し、パーキンエルマーラムダ2SUV/VIS光電分光光度計を用いて吸光度を測定する、溶液中の着色剤の測定に基づいた写真測光法を用いた。
【0058】
初めにインクを中間転写部材上へ像様パターンで噴出し、次に像様パターンを中間転写部材から最終記録基体に転写する印刷方法を用いるゼロックス(登録商標)フェーザー860プリンタ内に、このように調製したシアンインクを配置した。138℃のプリントヘッド温度及び64℃の中間転写ドラム温度で、ハンマーミルレーザプリント(登録商標)用紙を用いてインクをプリントした。
【0059】
実施例XVのシアン固体インクのプリント見本及び本比較例のシアン固体インクのプリント見本をキセノンランプで100時間照射した。各々の未照射対照 (control) 見本に対する各照射試料の色差を、CIELAB値を得るための前述の方法に従って決定した。色差の決定については、ASTM D2244−89(計器によって測定した色座標から色差を計算する標準的なテスト方法)に従った。下記の表は、CIE L*a*b*色空間における試料見本の初期のプリントカラー測定値と、100時間のキセノン照射後の各々の値を示している。
【0060】
【表2】
【0061】
このデータが示すように、実施例XVのインクを用いて作成した見本のキセノンランプ照射時の色安定性は、実施例XVの小さなΔE値で示されるように、比較例Fで調製したインクよりもはるかに優れている。
【0062】
実施例XVのシアン固体インクのプリント見本及び本比較例のシアン固体インクのプリント見本をアトラスフェードメーター(Atlas Fade-ometer)内に配置し、約1800Wのランプ出力で100時間照射した。各々の未照射対照見本に対する各照射試料の色差を、CIELAB値を得るための前述の方法に従って決定した。色差の決定については、ASTM D2244−89(計器によって測定した色座標から色差を計算する標準的なテスト方法)に従った。下記の表は、CIE L*a*b*色空間における試料見本の初期のプリントカラー測定値と、アトラスフェードメーター内で100時間照射した後の各々の値を示している。
【0063】
【表3】
【0064】
このデータが示すように、実施例XVのインクを用いて作成した見本の蛍光照射時の色安定性は、実施例XVの小さなΔE値で示されるように、比較例Fで調製したインクよりもはるかに優れている。
【0065】
実施例XVI
実施例Iに記載のように調製した染料の代わりに、実施例XIに記載のように調製した本発明の亜鉛染料を用いた以外は、相変化インクを実施例XVに記載のように調製した。このように調製したインクは、レオメトリクス円錐板粘度計による測定で約140℃で約10.6cPの粘度、デュポン(登録商標)2100熱量計を用いた示差走査熱量測定による測定で約80℃の融点、及び約14℃のガラス転移温度(Tg)を示した。
【0066】
実施例XVII
実施例Iに記載のように調製した染料の代わりに、実施例XIIに記載のように調製した本発明の無金属染料を用いた以外は、相変化インクを実施例XVに記載のように調製した。このように調製したインクは、レオメトリクス円錐板粘度計による測定で約140℃で約10.6cPの粘度、デュポン(登録商標)2100熱量計を用いた示差走査熱量測定による測定で約80℃の融点、及び約14℃のガラス転移温度(Tg)を示した。
【0067】
実施例XVIII
実施例Iに記載のように調製した染料の代わりに、実施例XIIIに記載のように調製した本発明のニッケル染料を用いた以外は、相変化インクを実施例XVに記載のように調製した。このように調製したインクは、レオメトリクス円錐板粘度計による測定で約140℃で約10.6cPの粘度、デュポン(登録商標)2100熱量計を用いた示差走査熱量測定による測定で約80℃の融点、及び約14℃のガラス転移温度(Tg)を示すものと思われる。
【0068】
実施例XIX
実施例Iに記載のように調製した染料の代わりに、実施例XIIIに記載のように調製した本発明のコバルト染料を用いた以外は、相変化インクを実施例XVに記載のように調製した。このように調製したインクは、レオメトリクス円錐板粘度計による測定で約140℃で約10.6cPの粘度、デュポン(登録商標)2100熱量計を用いた示差走査熱量測定による測定で約80℃の融点、及び約14℃のガラス転移温度(Tg)を示した。
【0069】
実施例XV、実施例XVI、実施例XVII、及び実施例XIXにおいて調製したインクを、比較例Aの方法を用いてプリントした。
【0070】
実施例XV、実施例XVI、実施例XVII、及び実施例XIXのプリント試料の色特性を評価した。これらの色特性を下記の表に示す。スペクトル強度(SS)は、トルエン中でのA*ml/gの単位で示す。ラムダmax(λmax)はnm単位で示す。
【0071】
【表4】
【0072】
このデータが示すように、Mが亜鉛原子である染料(実施例XVI)を用いて製造したインクのプリント見本は、Mが銅原子である染料(実施例XV)を用いて製造したインクのプリント見本よりも緑色が多く、青色が少ない。同様に、Mがコバルト原子である染料(実施例XIX)を用いて製造したインクのプリント見本は、Mが銅原子である染料(実施例XV)を用いて製造したインクのプリント見本よりも緑色が少なく、青色が多い。更に、Mが二水素である染料(実施例XVII)を用いて製造したインクのプリント見本は、Mが銅原子である染料(実施例XV)を用いて製造したインクのプリント見本よりも緑色が多く、青色が少ない。よって、これらの相変化インクのプリント試料の視知覚を、フタロシアニン環内に異なる原子を用いることによって変えられることが明らかである。また、これらの染料の組み合わせを用いて、CIE L*a*b*色空間内で色値の幅広い選択範囲を得ることができる。
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