JP4454186B2 - 走査光学系 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーレーザープリンターやカラーレーザーコピーに利用される走査光学系に、関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピューター出力用やコピー装置に組み込まれて使用されるカラープリンターにおいては、一般に、高速にカラー印刷したいとの要望があることから、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(B)の各色成分毎に感光ドラムや帯電器や現像器を備えたタイプのカラーレーザープリンターが主流となっている。その各感光ドラムの感光面上に静電潜像を形成するための走査光学系としては、各感光ドラムに回転多面鏡と結像光学系とを1組ずつ備えたものもあるが、回転多面鏡と結像光学系とを4組用意するのはコスト的に問題がある。そのため、近年では、1つの回転多面鏡を共通に利用することにより複数本のレーザー光束を同時に偏向するとともに、それ以後において各レーザー光束をこれらに個々に対応する結像光学系に夫々入射させて各感光ドラムに導く走査光学系が、提案されている。
【0003】
最近では、このように1つの回転多面鏡を用いて複数のレーザー光束を一度に偏向する場合に、副走査方向に分離して配置された各結像光学系に向けてレーザー光束を夫々入射させるために、各レーザー光束を、回転多面鏡の中心軸に直交する平面に対して傾けた状態で、回転多面鏡の偏向反射面に入射させる走査光学系が、知られている。
【0004】
このような走査光学系の場合、偏向されたレーザー光束により感光ドラム上に描かれる軌跡である走査線は、ドラムの周方向へ湾曲する。しかし、結像光学系を構成するレンズのうち、副走査方向に収束パワーを有するレンズであって他のレンズよりも感光ドラムの近くに配置されているレンズを、工夫することにより、感光面上の走査線の湾曲をある程度抑えることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなレンズは、広い有効範囲を持つように製造されねばならず、然も、収差補正のためには対称性の低い面形状が好ましいために、その加工は極めて難しかった。また、加工が難しいレンズを4組用意せねばならないので、この走査光学系全体の製造コストが高くなってしまうという問題がある。
【0006】
その一方で、製造者の間には、ある程度の精度を保持できるならば、できるだけレンズ形状を共通させることによって走査光学系全体のコストを抑えたいとの要望もある。
【0007】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、回転多面鏡に入射される複数本のレーザー光束が回転多面鏡の中心軸に直交する平面に対して傾けられている構成を採りながら、その平面を挟んで配置されるレンズ群に低コストなレンズ群を利用可能な走査光学系を、提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために構成された本発明は、少なくとも1対のレーザー光束を同時に偏向する回転多面鏡と、前記回転多面鏡により偏向された複数のレーザー光束をスポット光として収束させる結像光学系とを有し、各レーザー光束に個々に対応する走査対象面上においてスポット光を主走査方向に沿って走査して走査線を形成する走査光学系であって、前記1対のレーザー光束は、前記回転多面鏡の中心軸に直交する平面の両側から、その平面に対して互いに等角度となる角度にて前記回転多面鏡の偏向反射面に入射するとともに、前記走査対象面上において主走査方向に直交する副走査方向において、前記回転多面鏡の偏向反射面の近傍にて交差し、前記結像光学系は、副走査方向に収束パワーを有するとともに前記回転多面鏡により偏向された前記1対のレーザー光束が個々に透過する1対のレンズを有し、前記1対のレンズは、光学面の基準軸を含んで前記回転多面鏡の中心軸に平行な仮想平面を対称面として面対称となるレンズ形状に形成されているとともに、互いに同じレンズ形状を有し、且つ、二次元の多項式で表現されるアナモフィック非球面を有し、該アナモフィック非球面は副走査方向に関する傾きの変化を持ち、前記平面を挟んで対称な位置において、前記1対のレンズのうちの一方のレンズが他方のレンズの状態から光学面の基準軸周りに180度回転した状態で、配置されていること、若しくは、少なくとも1対のレーザー光束を同時に偏向する回転多面鏡と、前記回転多面鏡により偏向された複数のレーザー光束をスポット光として収束させる結像光学系とを有し、各レーザー光束に個々に対応する走査対象面上においてスポット光を主走査方向に沿って走査して走査線を形成する走査光学系であって、前記1対のレーザー光束は、前記回転多面鏡の中心軸に直交する平面の両側から、その平面に対して互いに等角度となる角度にて前記回転多面鏡の偏向反射面に入射するとともに、前記回転多面鏡の偏向反射面の近傍における前記平面内の1点にて交差し、前記結像光学系は、前記走査対象面上において主走査方向に直交する副走査方向に収束パワーを有するとともに前記回転多面鏡により偏向された前記1対のレーザー光束が個々に透過する1対のレンズを有し、前記1対のレンズは、光学面の基準軸を含んで前記回転多面鏡の中心軸に平行な仮想平面を対称面として面対称となるレンズ形状に形成されているとともに、互いに同じレンズ形状を有し、且つ、二次元の多項式で表現されるアナモフィック非球面を有し、該アナモフィック非球面は副走査方向に関する傾きの変化を持ち、前記平面を挟んで対称な位置において、前記1対のレンズのうちの一方のレンズが他方のレンズの状態から光学面の基準軸周りに180度回転した状態で、配置されていることを、特徴とする。
【0009】
以上のように構成されるので、少なくとも1対のレーザー光束は、回転多面鏡の中心軸に直交する平面を挟む両側における対称位置を夫々進行するとき、同じレンズ形状に形成されるとともに基準軸方向から見て一方が他方に対して180度回転した状態で配置された1対のレンズ群における互いに等価な箇所を、夫々通過する。このとき、1対のレンズが、1対のレーザー光束のうちの一方のレーザー光束による走査線に対して諸収差を適正に補正するレンズ形状を有していれば、他方のレーザー光束に対しても、やはり、そのレーザー光束に対して生ずる諸収差を適正に補正することができる。
【0010】
このように、当該平面を挟む両側における対称位置に1対のレーザー光束を進行させる構成とすることにより、少なくとも1対のレーザー光束に対しては、1対のレンズのレンズ形状を共通させることができるので、走査光学系全体においては、互いにレンズ形状の異なるレンズ群を複数のレーザー光束毎に用意するよりも、製造コストを低く抑えることができる。
【0011】
本発明の走査光学系では、回転多面鏡に入射する複数のレーザー光束が、副走査方向において、回転多面鏡の偏向反射面の近傍にて交差していても良い。この場合、回転多面鏡の中心軸方向の幅を極めて小さくできるので、回転多面鏡を小型化することができ、強いパワーを有するモーターを用いなくても良くなる。
【0012】
また、結像光学系は、1対のレンズよりも前に配置される前側レンズ群を更に備えていても良い。この場合、全てのレーザー光束が前側レンズ群に入射する構成とすることもできる。これにより、複数組みの前側レンズ群を用意しなくても良くなり、各組の前側レンズ群の取り付け位置を各々独立して調整する必要がない。
【0013】
さらに、前側レンズ群は、その光軸が、回転多面鏡の中心軸に直交する方向と平行な状態で、複数のレーザー光束の交差点を貫く位置に、配置されるとともに、その光軸を含んで前記回転多面鏡の中心軸に直交する主走査平面を挟んでその両側が面対称となるレンズ形状に、形成されていても良い。
【0014】
また、1対のレンズは、夫々、自己の基準軸を含んで回転多面鏡の中心軸と平行な仮想平面を対称面としてその両側が面対称となるレンズ形状に、形成されていても良い。さらに、1対のレンズは、同じ金型を用いて成型することにより、簡単に製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本実施形態の走査光学系は、複数のレーザー光束を同時に偏向することによりレーザー光束と同数の走査対象に対して一度に走査を行えるものであり、特に、印刷用紙を1回搬送する間にイエローY,マゼンダM,シアンC,ブラックBの色成分のトナー像を順次転写してカラー画像を高速に印刷するタイプのカラーレーザープリンターに組み込まれて使用されるものである。以下、本実施形態の走査光学系について、図面を参照しながら説明する。なお、上述したようなカラーレーザープリンターにこの走査光学系が組み込まれた際に、そのプリンターができるだけ小型化されるようにするために、本実施形態の走査光学系では、ポリゴンミラーによって偏向された4本のレーザー光束の光路が、折返しミラーによって折り曲げられている(図3参照)。そこで、先ず、直線状に展開した状態の走査光学系を、図1及び図2の光学構成図を用いて説明し、その後、その光路が折り曲げられている状態の走査光学系を、図3の光学構成図を用いて説明する。
【0016】
本実施形態の走査光学系は、図1の展開図に示されるように、レーザー光源1と、コリメートレンズ2と、シリンドリカルレンズ3と、レーザー光束を偏向する回転多面鏡であるポリゴンミラー5と、このポリゴンミラー5により偏向されたレーザー光束を結像させる結像光学系10とを、備えている。結像光学系10は、前側レンズ群11と後側レンズ群12とを含む。なお、この明細書では、走査対象面上をスポットが走査する方向を主走査方向、これに直交する方向を副走査方向とし、走査光学系中の各構成要素での方向は走査対象面上の方向を基準に説明する。また、回転多面鏡の回転軸と直交し、かつ前側レンズ群の光軸を含む面を主走査平面、前群レンズの光軸を含み主走査平面と直交する平面を副走査平面と定義する。
【0017】
レーザー光源1から発せられたレーザー光束は、コリメータレンズ2において平行光束に変換され、シリンドリカルレンズ3を透過した後、中心軸5a周りに等角速度にて回転駆動されるポリゴンミラー5により偏向される。ポリゴンミラー5により偏向されたレーザー光束は、結像光学系10を透過することにより、主走査方向(図1の紙面内における上下方向)に沿って等速度に走査対象面S上を走査するスポット光として形成される。
【0018】
なお、コリメートレンズ2において平行光束に変換されたレーザー光束は、主走査方向においては、平行光束のままポリゴンミラー5で反射され、結像光学系10の収束パワーによって走査対象面S上に収束される。一方、副走査方向(図1の紙面に対して直交する方向)においては、当該レーザー光束は、シリンドリカルレンズ3によりポリゴンミラー5の偏向反射面近傍で一旦収束され、発散光として結像光学系10に入射し、結像光学系10の収束パワーによって走査対象面S上にて再び収束される。このとき、結像光学系10によってポリゴンミラー5の偏向反射面と走査対象面Sとが共役関係となっているために、走査対象面Sでは、ポリゴンミラー5の各偏向反射面の僅かな傾き(いわゆる「面倒れ」)による副走査方向における走査位置のズレが、補正される。このため、レーザー光束は、ポリゴンミラー5のどの偏向反射面によって反射されても、走査対象面Sにおける同一線上を走査する。
【0019】
結像光学系10は、ポリゴンミラー5に近い側にある前側レンズ群11と、走査対象面Sに近い側にある後側レンズ群12とから、構成されている。このうちの前側レンズ群11は、主に主走査方向にレーザー光束を収束させるパワーを有するものであり、後側レンズ群12は、主に副走査方向にレーザー光束を収束させるパワーを有するとともに、主走査方向の像面湾曲やfθ特性誤差などの収差を補正する機能をも負担するレンズである。
【0020】
本実施形態の走査光学系は、図1に示される光学構成を副走査方向に4組重ねることにより、イエローY,マゼンダM,シアンC,ブラックBの各色成分毎に備えられる感光ドラム20y,20m,20c,20bの感光面(走査対象面S)に対し、一度に書き込みを行えるようにしたものである。但し、この走査光学系は、図2の副走査方向の展開図に示されるように、1個のポリゴンミラー5と一つの前側レンズ群11を4本のレーザー光束L1〜L4に対して共通に利用している。従って、ポリゴンミラー5の一つの偏向反射面による一回の偏向によって、4個の感光ドラム20y,20m,20c,20bに対して同時に走査を行うことができる。
【0021】
なお、ポリゴンミラー5に入射する前の4本のレーザー光束L1〜L4は、主走査平面内では前側レンズ群の光軸に対し等しい角度をもって進行するとともに、副走査平面内では偏向反射面近傍の1点にて交差し、その交差点Cは前側レンズ群の光軸上にある。より具体的には、ポリゴンミラー5に入射する4本のレーザー光束L1〜L4は、主走査平面P1の一方側において、互いに異なる入射角度にて交差点Cに入射する2本のレーザー光束L1,L2と,主走査平面P1を挟んでこの2本のレーザー光束L1,L2とは反対側において、互いに異なる入射角度にて交差点Cに入射する2本のレーザー光束L3,L4とからなる。そのうち、主走査平面P1に近い側を通る2本のレーザー光束L2,L3は、主走査平面P1に対してなす角度の絶対値がが互いに等しく、主走査平面P1から離れた側を通る2本のレーザー光束L1,L4も、主走査平面P1に対してなす角度の絶対値がが互いに等しくなるように交差点Cに入射する。これにより、4本のレーザー光束L1〜L4は、ポリゴンミラー5によって偏向された後は、主走査平面P1から徐々に離れる方向に進行する。
【0022】
結像光学系10の前側レンズ群11は、4本のレーザー光束L1〜L4に対して共通に利用されるため、図2に示されるように、ポリゴンミラー5によって偏向される4本のレーザー光束L1〜L4が全て透過可能な副走査方向における幅を、有している。
【0023】
結像光学系10の後側レンズ群12は、4本のレーザー光束L1〜L4と4個の感光ドラム20y,20m,20c,20bに対応して第1〜第4の後側レンズ群12y,12m,12c,12bの4組存在し、これら後側レンズ群は、夫々、基準軸が前側レンズ群11の光軸から副走査方向へ平行にシフトされた状態で、配置されている。そのシフト量(偏心量)は、主走査平面P1から徐々に離れるように進行するレーザー光束L1〜L4が、夫々各後側レンズ群12y,12m,12c,12bの基準軸から副走査方向に所定量ずれた位置に入射するように決定されている。
【0024】
各後側レンズ群12y,12m,12c,12bの基準軸のレーザー光束対するずらし方向は、各レーザー光束L1〜L4が前側レンズ群11の軸外を透過することによって生じる走査線の副走査方向への湾曲が、各感光ドラム20y,20m,20c,20bの感光面(走査対象面S)上において打ち消される方向であり、図2に示されるように、後側レンズ群12y,12m,12c,12bの基準軸が主走査平面P1に近寄る方向である。また、そのずらし量は、感光面上で走査線がほぼ直線となる距離であり、前後側レンズ群11,12の光学特性,交差点Cと前側レンズ群11との距離,及び、主走査平面P1における前側レンズ群11と後側レンズ群12との距離が定まっているのであれば、交差点Cにおいてレーザー光束L1〜L4が主走査平面P1に対して傾く角度によって決まる。なお、実施形態において後群レンズ群の基準軸とは、後群レンズ群の面形状を表式で表した場合の原点を通る軸である。
【0025】
なお、前側レンズ群11が、主走査平面P1を対称面としてその両側が対称であるレンズ面形状に形成されている場合、主走査平面P1に対し互いに等しい角度で前側レンズ群11に入射するレーザー光束による走査線に生じる湾曲の度合いは互いに等しくなる。そのため、後側レンズ群12yと12bのずらし量は互いに等しく、後側レンズ群12mと12cのずらし量も互いに等しくなるように調整される。
【0026】
さらに、レーザー光束L1,L4の主走査平面P1に対する角度はレーザー光束L2,L3の主走査平面P1に対する角度より大きいので、レーザー光束L1,L4による走査線の湾曲の度合いが、レーザー光束L2,L3による走査線の湾曲の度合いよりも大きい。これに対応して、第1及び第4の後側レンズ群12y,12bのずらし量は、第2及び第3の後側レンズ群12m,12cのずらし量よりも大きいものとなっている。
【0027】
第1乃至第4の後側レンズ群12y,12m,12c,12bのレンズ形状は、それぞれの後群レンズ群に入射するレーザー光束が前側レンズ光軸とのなす角度に応じた適切な収差補正効果が得られるように、別個に定められている。本実施形態では、第1,第4の後側レンズ群12y,12bに入射するレーザー光束L1,L4、および第2,第3の後側レンズ12m,12cに入射するレーザー光束L2,L3の前側レンズ11の光軸に対する角度の絶対値はそれぞれ等しい。そこで、第1,第4の後側レンズ群12y,12bと第2,第3の後側レンズ群12m,12cとを、それぞれ主走査方向の形状が副走査平面に対し対称な同一形状のレンズから構成し、主走査平面P1を挟んでその両側に対称に配置している。なお、第1乃至第4の後側レンズ12y,12m,12c,12bの副走査方向の形状は非対称である。
【0028】
以上に示した走査光学系の構成は、直線状に展開したものであるが、上述したように、本実施形態の走査光学系は、走査された4本のレーザー光束L1〜L4の光路が、折返しミラーによって折り曲げられている。具体的には、図3に示されるように、4組の後側レンズ群12が、前側レンズ群11の光軸から図3の下方へ平行にオフセットした仮想直線上において、所定の間隔(具体的には、各々を透過後のレーザー光束L1〜L4のビーム軸が等間隔となるような間隔)に配置されている。
【0029】
また、前側レンズ群11と各後側レンズ群12y,12m,12c,12bとの間の光路には、前側レンズ群11を透過した4本のレーザー光束L1〜L4をそれらに個々に対応する後側レンズ群12へ向けて反射させるための2枚一組の折返しミラー(第1及び第2折返しミラー6,7)が、介在している。具体的には、前側レンズ群11を透過した4本のレーザー光束L1〜L4のビーム軸上には、夫々、そのビーム軸を一旦、対応する後側レンズ群12から離れる側へ折り曲げる第1折返しミラー6が、配置されている。そして、これら第1折返しミラー6によって折り曲げられたビーム軸上には、このビーム軸を後側レンズ群12に入射させるように更に折り曲げる第2折返しミラー7が、配置されている。従って、第2折返しミラー7によって折り曲げられたビーム軸は、第1折返しミラー6によって折り曲げられる前のビーム軸に交差する。
【0030】
各後側レンズ群12y,12m,12c,12bの光束射出側における各後側レンズ群12y,12m,12c,12bからほぼ等距離の位置には、夫々、対応する感光ドラム20y,20m,20c,20bが配置されている。各感光ドラム20y,20m,20c,20bは、互いに同じ大きさの円柱形状の外形を有するように形成され、その中心軸を主走査方向と平行な方向へ向けた状態で、前側レンズ群11の光軸と平行な方向に等間隔に並べられているとともに、その中心軸周りに回転可能に設置されている。
【0031】
次に、本実施形態の走査光学系の具体的な実施例を説明する。なお、以下の実施例は、レーザー光束L2に対して適正に収差補正できるようにそのレンズ形状が形成されている後側レンズ群を2個製造し、一方を後側レンズ群12mとしてレーザー光束L2に対して用いるとともに、他方を主走査平面P1を挟んで反対側に対向配置して後側レンズ群12cとしてレーザー光束L3に対して用いた例であり、また、レーザー光束L1に対して適正に収差補正できるようにそのレンズ形状が形成されている後側レンズ群を2個製造し、一方を後側レンズ群12yとしてレーザー光束L1に対して用いるとともに、他方を主走査平面P1を挟んで反対側に対向配置して後側レンズ群12bとしてレーザー光束L4に対して用いた例である。
【0032】
<実施例1>
図4乃至図7は、第1の実施例による走査光学系を示す主走査方向及び副走査方向における説明図であり、図4及び図5は、シリンドリカルレンズ3から走査対象面(感光ドラム20m,20cの感光面)Sまでにおけるレーザー光束L2,L3に対する光路を示し、図6及び図7は、シリンドリカルレンズ3から走査対象面(感光ドラム20y,20bの感光面)Sまでにおけるレーザー光束L1,L4に対する光路を示している。なお、これらの図では、第1及び第2折返しミラー6,7を省略し、前側レンズ群11と後側レンズ群12y,12m,12c,12bとの間の光路を直線状に展開して示している。また、レーザー光束L2,L3に関する光路は、主走査平面P1を挟んで対称な位置にあるので、図4及び図5においては一方の光路を代表させて示している。さらに、レーザー光束L1,L4に関する光路についても同様に、図6及び図7においては一方の光路を代表させて示している。
【0033】
この第1の実施例の結像光学系10の前側レンズ群11は、前後のレンズ面が共に回転対称非球面として形成された第1レンズ11aと,入射側のレンズ面が平面に形成されるとともに射出側のレンズ面が球面として形成された第2レンズ11bとから、構成されている。また、その後側レンズ群12y,12m,12c,12bは、入射側のレンズ面が回転非対称非球面として形成されるとともに射出側のレンズ面が球面として形成された1個のレンズから、構成されている。また、後側レンズ群12y,12m,12c,12bの入射側のレンズ面は、副走査方向に関して非対称な非球面となっている。なお、後側レンズ群12y,12m,12c,12bのことを、以下単に「後側レンズ」という。さらに、後側レンズ群12y,12m,12c,12bは、各々に対応するレーザー光束L1〜L4の傾きに応じて前側レンズ群11の光軸上から副走査方向へシフト(偏心)されている。
【0034】
また、第2及び第3の後側レンズ群12m,12cは、互いに、前側レンズ群11の光軸を対称軸とする対称な位置に対向配置され、また、第1及び第4の後側レンズ群12y,12bも、互いに、前側レンズ群11の光軸を対称軸とする対称な位置に対向配置されており、さらに、前側レンズ群11の光軸方向から見たときに、主走査平面P1を挟む両側のうちの一方側の後側レンズ12y,12mが、他方側の後側レンズ12c,12bに対して180°反転した状態となっている。
【0035】
図4及び図5に示される走査光学系の近軸における具体的な数値構成を表1に、図6及び図7に示される走査光学系の近軸における具体的な数値構成を表2に示す。
【0036】
この表1及び表2において、記号NOは、前側レンズ群11の第1レンズ11aの入射側のレンズ面を1番としてこのレンズ面より射出側に向かって昇順にレンズ面に付された面番号であり、記号Rは、レンズ面の近軸曲率半径(非回転対称面の場合には基準軸上での主走査方向の曲率半径、単位は[mm])であり、記号Rzは、副走査方向の曲率半径(回転対称面の場合には省略、単位は[mm])であり、記号Dは、直後のレンズ面との間における前側レンズ群11の光軸上での距離(単位は[mm])であり、記号N(780nm)は、設計波長780nmでの各レンズの屈折率であり、記号DECZは、前側レンズ群11の光軸に対する後側レンズ12y,12m,12c,12bの基準軸副走査方向への偏心量(単位は[mm])である。なお、全系の焦点距離fは、200mmであり、走査対象面S上での有効走査幅Wは216mmである。
【0037】
また、主走査平面P1に投影した場合におけるポリゴンミラー5に入射するレーザー光束L1〜L4の結像光学系10の光軸に対する角度αは80°であり、副走査平面P2に投影した場合におけるポリゴンミラー5に入射するレーザー光束L2,L3のビーム軸の前側レンズ群11の光軸に対する角度β1は1.15°であり、副走査平面P2に投影した場合におけるポリゴンミラー5に入射するレーザー光束L1,L4のビーム軸の前側レンズ群11の光軸に対する角度β2は3.43°である。
【0038】
【表1】
Figure 0004454186
【0039】
【表2】
Figure 0004454186
【0040】
この表1及び表2において、 第1面及び第2面は前側レンズ群11の第1レンズ11aを示し、第3面及び第4面は前側レンズ群11の第2レンズ11bを示している。また、第5面及び第6面は、表1においては第2及び第3の後側レンズ12m,12cを示し、表2においては第1及び第4の後側レンズ12y,12bを示している。さらに、第7面は、走査対象面Sを示している。ところで、第0面乃至第−2面は、便宜上付したものであり、その第0面はポリゴンミラーを示し、第−1面はシリンドリカルレンズ3の射出側を示し、第−2面はシリンドリカルレンズ3の入射側を示している。なお、上述したように、前側レンズ群11である第1レンズ11aと第2レンズ11bは、レーザー光束L1〜L4に対して共通に利用されるので、表1及び表2では、同じ数値構成となっている。
【0041】
このうち、第1面及び第2面は、光軸での接平面から高さhの点までの光軸と平行な方向におけるサグ量X(h)が以下の式(1)で表される回転対称な非球面である。
【0042】
X(h)=Ch2/[1+√[1-(κ+1)C2h2]]+A4h4+A6h6+A8h8 … (1)
上式(1)中、Cは非球面の基準軸上での曲率(表1のrの逆数)、κは円錐係数、A4,A6,A8は夫々4次,6次,8次の非球面係数である。第1面及び第2面の円錐係数κと非球面係数A4,A6,A8とを、夫々表3に示す。
【0043】
【表3】
Figure 0004454186
また、第5面は、その面に接する仮想的な基準平面からのサグ量が基準平面内で主走査方向及び副走査方向の二次元座標を変数とする多項式により定義される光学曲面であり、この2次元座標は、基準平面に直交する単一の基準軸とこの基準平面との交点を原点として定義される。具体的には、第5面は、基準平面上での主走査方向の高さをY、副走査方向の高さをZの点(Y,Z)におけるサグ量X(Y,Z)が以下の式(2)で表される回転非対称非球面である。
【0044】
X(Y,Z)=(Y2+Z2)/[r[1+√〔1-(κ+1)(Y2+Z2)/r2〕]]+ΣΣB(m,n)YmZn … (2)
上式(2)中、rは原点上の曲率半径、κは円錐係数、B(m,n)は非球面係数である。後側レンズ12m,12cの非球面係数B(m,n)の値を表4に、後側レンズ12y,12bの非球面係数B(m,n)の値を表5に示す。なお、何れの後側レンズ12y,12m,12c,12bとも、第5面の円錐係数κは0.000である。
【0045】
【表4】
Figure 0004454186
【0046】
【表5】
Figure 0004454186
【0047】
主走査方向については、奇数次(m=1,3,5,…)の項の係数は0であるために、第5面は、主走査方向に関しては形状の変化が原点に対して対称となる。この表4及び表5では、mについては奇数次の項を省略している。また、副走査方向については、1次成分のみを含む項の非球面係数B(m,1)を除く奇数次(n=3,5,7,…)の項の非球面係数は0であるが、非球面係数B(m,1)が0以外である(但し、(m=0,2,4)の場合)ために、第5面は、副走査方向に関する傾きと傾きの変化とを持ち、その変化は主走査方向に関して対称である。この表4及び表5では、nについては1次成分以外の奇数次の項を省略している。
【0048】
なお、後側レンズ12y,12m,12c,12bは、以上に示される数値構成のレンズ形状を有しているが、上述したように、副走査方向においては、基準軸(光軸)から副走査方向へズレた部分しか使用されないために、レーザー光束の光束径やポリゴンミラー5の倒れに起因するレーザー光束のズレを考慮した一定幅の範囲を残して切除されている。この切除によって形成された両コバ面は、基準軸と平行な平面であって、基準軸から一定の距離だけ離間している。このときの各後側レンズ12y,12m,12c,12bは、主走査平面P1を挟んで向き合うように並べて配置される。その状態を図8の模式図に示している。図8は、折返しミラー6,7が存在しないものとした場合における第1乃至第4の後側レンズ12y,12m,12c,12bが平行に並んだ状態の入射側を示しており、各後側レンズ12y,12m,12c,12bに示される実線は、偏向されたレーザー光束L1〜L4がレンズ面上に描く軌跡を仮想的に示したものである。この図8に示されるように、各後側レンズ12y,12m,12c,12bにおける軌跡は、各々のレンズ面のほぼ中央部に形成される。但し、図8中の×印は、夫々、第1乃至第4の後側レンズ12y,12m,12c,12bにおける式(2)で示される光学面の原点を示しており、各々の基準軸は、対応する原点を通って図8の紙面に直交している。
【0049】
図9は、第1の実施例の走査光学系におけるレーザー光束L2に対する光学性能を示すグラフであり、(a)は、fθ誤差(スポット位置の理想位置からのズレ)を示し、(b)は、主走査方向(破線M)及び副走査方向(実線S)の像面湾曲を示し、(c)は、走査線湾曲(スポット位置の副走査方向へのズレ)を示す。何れのグラフも縦軸yは、像高、即ち、感光ドラム上で走査中心を基準にした主走査方向の距離を示し、横軸zは、各収差の発生量を示しており、単位は何れも[mm]である。
【0050】
後側レンズ12mは、主走査平面P1に近い側を通るレーザー光束L2に対して特化して設計されている。そのため、この後側レンズ12mをレーザー光束L2に対して用いた場合には、図9に示されるように、何れの収差とも良好に補正される。
【0051】
レーザー光束L2に対してこのような作用を及ぼす後側レンズ12mと同じ形状に形成された後側レンズ12cをレーザー光束L3に対して用いた時の(a)fθ誤差と(b)像面湾曲と(c)走査線湾曲のグラフを、図10に示す。この図10に示されるように、レーザー光束L2に対して適正に作用を及ぼす後側レンズ12mと同じ形状に形成された後側レンズ12cを、主走査平面P1を挟んでレーザー光束L2の対称位置を通るレーザー光束L3に対して用いた場合でも、やはり、諸収差を良好に補正する。
【0052】
同様に、後側レンズ12yは、主走査平面P1から離れた側を通るレーザー光束L1に対して特化して設計されているので、この後側レンズ12yをレーザー光束L1に対して用いた場合、図11の(a)fθ誤差と(b)像面湾曲と(c)走査線湾曲のグラフに示されるように、何れの収差とも良好に補正される。
【0053】
レーザー光束L1に対してこのような作用を及ぼす後側レンズ12yと同じ形状に形成された後側レンズ12bをレーザー光束L4に対して用いた時の(a)fθ誤差と(b)像面湾曲と(c)走査線湾曲のグラフを、図12に示す。この図12に示されるように、レーザー光束L1に対して適正に作用を及ぼす後側レンズ12yと同じ形状に形成された後側レンズ12bを、主走査平面P1を挟んでレーザー光束L1の対称位置を通るレーザー光束L4に対して用いた場合でも、やはり、諸収差を良好に補正する。
【0054】
<参考例>
図13乃至図16は、参考例による走査光学系を示す主走査方向及び副走査方向における説明図であり、図13及び図14は、シリンドリカルレンズ3から走査対象面(感光ドラム20m,20cの感光面)Sまでにおけるレーザー光束L2,L3に対する光路を示し、図15及び図16は、シリンドリカルレンズ3から走査対象面(感光ドラム20y,20bの感光面)Sまでにおけるレーザー光束L1,L4に対する光路を示している。なお、これらの図では、第1及び第2折返しミラー6,7を省略し、前側レンズ群11と後側レンズ群12y,12m,12c,12bとの間の光路を直線状に展開して示している。
【0055】
の参考例の結像光学系10の前側レンズ群11は、前後のレンズ面が共に回転対称非球面として形成された第1レンズ11aと,入射側のレンズ面が平面に形成されるとともに射出側のレンズ面が球面として形成された第2レンズ11bとから、構成されている。
【0056】
また、参考例の後側レンズ群12y,12m,12c,12bは、入射側のレンズ面が回転軸を持たない非球面として形成されるとともに射出側のレンズ面が球面として形成された1個のレンズから、構成されている。なお、より正確には、光軸方向をx、主走査方向をy、副走査方向をzとすると、入射側のレンズ面は、光軸から離れた位置でのxz平面に平行な断面の曲率半径がxy断面形状とは独立した多項式で表現される回転軸を持たないアナモフィック非球面となっている。また、後側レンズ群のことを、以下では単に「後側レンズ」という。さらに、第2の実施例においても、後側レンズ群12y,12m,12c,12bは、レーザー光束L1,L4の傾きに応じて前側レンズ群11の光軸上から副走査方向へシフト(偏心)されている。
【0057】
また、第2及び第3の後側レンズ群12m,12cは、互いに、前側レンズ群11の光軸を対称軸とする対称な位置に対向配置されているとともに、第1及び第4の後側レンズ群12y,12bも、互いに、その光軸を対称軸とする対称な位置に対向配置されており、さらに、前側レンズ群11の光軸方向から見たときに、主走査平面P1を挟む両側のうちの一方側の後側レンズ12y,12mが、他方側の後側レンズ12c,12bに対して180°反転した状態となっている。
【0058】
図13及び図14に示される走査光学系の近軸における具体的な数値構成を表6に、図15及び図16に示される走査光学系の近軸における具体的な数値構成を表7に示す。なお、記号の意味やその他の条件については、表1及び表2に示されたものと同様である。
【0059】
【表6】
Figure 0004454186
【0060】
【表7】
Figure 0004454186
【0061】
この表1及び表2において、第1面及び第2面は前側レンズ群11の第1レンズ11aを示し、第3面及び第4面は前側レンズ群11の第2レンズ11bを示している。また、第5面及び第6面は、表1においては第2及び第3の後側レンズ12m,12cを示し、表2においては第1及び第4の後側レンズ12y,12bを示している。さらに、第7面は、走査対象面Sを示している。ところで、第0面乃至第−2面は、便宜上付したものであり、その第0面はポリゴンミラー5を示し、第−1面はシリンドリカルレンズ3の射出側を示し、第−2面はシリンドリカルレンズ3の入射側を示している。なお、上述したように、前側レンズ群11である第1レンズ11aと第2レンズ11bは、レーザー光束L1〜L4に対して共通に利用されるので、表6及び表7では、同じ数値構成となっている。
【0062】
また、参考例における式(1)の円錐係数κと非球面係数A4,A6,A8は、表8に示すとおりである。
【0063】
【表8】
Figure 0004454186
さらに、第5面は、その面上で基準軸を通る主走査方向の曲線を想定した際に、基準軸からの主走査方向の距離がYとなる上記曲線上の座標点での基準軸上の接線からのサグ量X(Y)が式(3)で表されるとともに、当該座標点でこの曲線に接する副走査方向の円弧の曲率半径rz(Y)が式(4)で表されるアナモフィック非球面である。
【0064】
X(Y)=CY2/[1+√[1-(1+κ)C2Y2]]+A4・Y4+A6・Y6+A8・Y8 … (3)
1/rz(Y)=(1/rz0)+B1・Y1+B2・Y2+B3・Y3+B4・Y4 … (4)
上式(3)中、κは円錐係数、A4,A6,A8は夫々4次,6次,8次の非球面係数である。また、上式(4)中、rz0は光軸上での副走査方向の曲率半径(表6及び表7のrz)、B1〜B4は副走査方向の曲率半径を決定する1次乃至4次の係数である。後側レンズ12m,12cの第5面の非球面係数を表9に、後側レンズ12y,12bの第5面の非球面係数を表10に示す。なお、何れの後側レンズ12y,12m,12c,12bとも、第5面の円錐係数κは0.000である。
【0065】
【表9】
Figure 0004454186
【0066】
【表10】
Figure 0004454186
【0067】
なお、参考例の後側レンズ12y,12m,12c,12bにも、第1の実施例と同様に、副走査方向における一定幅の範囲を残すように、コバ面が形成されており、図8の模式図に示されるように、主走査平面P1を挟んで向き合うように並べて配置される。
【0068】
図17は、参考例の走査光学系におけるレーザー光束L2に対する光学性能を示すグラフであり、(a)はfθ誤差を示し、(b)は主走査方向(破線M)及び副走査方向(実線S)の像面湾曲を示し、(c)は走査線湾曲を示す。何れのグラフも縦軸yは像高であり、横軸zは各収差の発生量を示し、単位は何れも[mm]である。
【0069】
後側レンズ12mは、主走査平面P1に近い側を通るレーザー光束L2に対して特化して設計されている。そのため、この後側レンズ12mをレーザー光束L2に対して用いた場合には、図17に示されるように、何れの収差とも良好に補正される。
【0070】
レーザー光束L2に対してこのような作用を及ぼす後側レンズ12mと同じ形状に形成された12cをレーザー光束L3に対して用いた時の(a)fθ誤差と(b)像面湾曲と(c)走査線湾曲のグラフを、図18に示す。この図18に示されるように、レーザー光束L2に対して適正に作用を及ぼす後側レンズ12mと同じ形状に形成された12cを、主走査平面P1を挟んでレーザー光束L2の対称位置を通るレーザー光束L3に対して用いた場合でも、やはり、諸収差を良好に補正する。
【0071】
同様に、後側レンズ12yは、主走査平面P1から離れた側を通るレーザー光束L1に対して特化して設計されているので、この後側レンズ12yをレーザー光束L1に対して用いた場合、図19の(a)fθ誤差と(b)像面湾曲と(c)走査線湾曲のグラフに示されるように、何れの収差とも良好に補正される。
【0072】
レーザー光束L1に対してこのような作用を及ぼす後側レンズ12yと同じ形状に形成された後側レンズ12bをレーザー光束L4に対して用いた時の(a)fθ誤差と(b)像面湾曲と(c)走査線湾曲のグラフを、図20に示す。この図20に示されるように、レーザー光束L1に対して適正に作用を及ぼす後側レンズ12yと同じ形状に形成された後側レンズ12bを、主走査平面P1を挟んでレーザー光束L1の対称位置を通るレーザー光束L4に対して用いた場合でも、やはり、諸収差を良好に補正する。
【0073】
以上の実施例に示されるように、本実施形態の走査光学系おいては、前側レンズ群11の両レンズ面が主走査平面P1を対称面とする面対称な形状に形成されているとともに、レーザー光束L2,L3及びレーザー光束L1,L4が主走査平面P1の両側における対称な位置を進行する。そのため、後側レンズ12m,12cと後側レンズ12y,12bとを2個ずつ用意し、一方の後側レンズ12mとその後側レンズ12mの状態から光軸周りに180°回転させた状態の他方の後側レンズ12cとをそれぞれ主走査平面P1を挟んで対称な位置に配置するとともに、一方の後側レンズ12yとこの後側レンズ12yの状態から光軸周りに180°回転させた状態の他方の後側レンズ12bとをそれぞれ主走査平面P1を挟んで対称な位置に配置し、両後側レンズ12m,12cにおける等価な箇所にレーザー光束L2,L3を透過させ、両後側レンズ12y,12bにおける等価な箇所にレーザー光束L1,L4を透過させれば、レーザー光束L1〜L4による走査線に生ずる諸収差を適正に補正することができる。これにより、後側レンズ12y,12m,12c,12bの有効範囲を広くすることなく、後側レンズ12y,12m,12c,12bを十分低廉に製造することができる。また、後側レンズ12y,12m,12c,12bを例えば金型を用いて複数成型すれば、更に低コストで製造することができる。
【0074】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の走査光学系は、回転多面鏡に入射される複数本のレーザー光束がその中心軸に直交する平面に対して傾けられている構成を採りながらも、その平面を挟んで配置されるレンズ群に低コストなレンズ群を利用することができる。これにより、走査光学系全体の製造コストを引き下げられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態による走査光学系の光学構成を示す主走査方向の展開図
【図2】 走査光学系の光学構成を示す副走査方向の展開図
【図3】 走査光学系の光学構成を示す副走査方向の説明図
【図4】 第1の実施例の走査光学系における主走査平面に近い側の光学構成を示す主走査方向の展開図
【図5】 第1の実施例の走査光学系における主走査平面に近い側の光学構成を示す副走査方向の展開図
【図6】 第1の実施例の走査光学系における主走査平面から離れた側の光学構成を示す主走査方向の展開図
【図7】 第1の実施例の走査光学系における主走査平面から離れた側の光学構成を示す副走査方向の展開図
【図8】 本実施形態の後側レンズのレンズ形状を示す説明図
【図9】 第1の実施例の第2の後側レンズによる諸収差を示すグラフ
【図10】 第1の実施例の第3の後側レンズによる諸収差を示すグラフ
【図11】 第1の実施例の第1の後側レンズによる諸収差を示すグラフ
【図12】 第1の実施例の第4の後側レンズによる諸収差を示すグラフ
【図13】 参考例の走査光学系における主走査平面に近い側の光学構成を示す主走査方向の展開図
【図14】 参考例の走査光学系における主走査平面に近い側の光学構成を示す副走査方向の展開図
【図15】 参考例の走査光学系における主走査平面から離れた側の光学構成を示す主走査方向の展開図
【図16】 参考例の走査光学系における主走査平面から離れた側の光学構成を示す副走査方向の展開図
【図17】 参考例の第2の後側レンズによる諸収差を示すグラフ
【図18】 参考例の第3の後側レンズによる諸収差を示すグラフ
【図19】 参考例の第1の後側レンズによる諸収差を示すグラフ
【図20】 参考例の第4の後側レンズによる諸収差を示すグラフ
【符号の説明】
1 レーザー光源
2 コリメートレンズ
3 シリンドリカルレンズ
5 ポリゴンミラー
6 第1折返しミラー
7 第2折返しミラー
10 結像光学系
11 前側レンズ群
11a 第1レンズ
11b 第2レンズ
12 後側レンズ群
20y 感光ドラム
20m 感光ドラム
20c 感光ドラム
20b 感光ドラム

Claims (5)

  1. 少なくとも1対のレーザー光束を同時に偏向する回転多面鏡と、前記回転多面鏡により偏向された複数のレーザー光束をスポット光として収束させる結像光学系とを有し、各レーザー光束に個々に対応する走査対象面上においてスポット光を主走査方向に沿って走査して走査線を形成する走査光学系であって、
    前記1対のレーザー光束は、前記回転多面鏡の中心軸に直交する平面の両側から、その平面に対して互いに等角度となる角度にて前記回転多面鏡の偏向反射面に入射するとともに、前記走査対象面上において主走査方向に直交する副走査方向において、前記回転多面鏡の偏向反射面の近傍にて交差し、
    前記結像光学系は、副走査方向に収束パワーを有するとともに前記回転多面鏡により偏向された前記1対のレーザー光束が個々に透過する1対のレンズを有し、
    前記1対のレンズは、光学面の基準軸を含んで前記回転多面鏡の中心軸に平行な仮想平面を対称面として面対称となるレンズ形状に形成されているとともに、互いに同じレンズ形状を有し、且つ、二次元の多項式で表現されるアナモフィック非球面を有し、該アナモフィック非球面は副走査方向に関する傾きの変化を持ち、
    前記平面を挟んで対称な位置において、前記1対のレンズのうちの一方のレンズが他方のレンズの状態から光学面の基準軸周りに180度回転した状態で、配置されている
    ことを特徴とする走査光学系。
  2. 少なくとも1対のレーザー光束を同時に偏向する回転多面鏡と、前記回転多面鏡により偏向された複数のレーザー光束をスポット光として収束させる結像光学系とを有し、各レーザー光束に個々に対応する走査対象面上においてスポット光を主走査方向に沿って走査して走査線を形成する走査光学系であって、
    前記1対のレーザー光束は、前記回転多面鏡の中心軸に直交する平面の両側から、その平面に対して互いに等角度となる角度にて前記回転多面鏡の偏向反射面に入射するとともに、前記回転多面鏡の偏向反射面の近傍における前記平面内の1点にて交差し、
    前記結像光学系は、前記走査対象面上において主走査方向に直交する副走査方向に収束パワーを有するとともに前記回転多面鏡により偏向された前記1対のレーザー光束が個々に透過する1対のレンズを有し、
    前記1対のレンズは、光学面の基準軸を含んで前記回転多面鏡の中心軸に平行な仮想平面を対称面として面対称となるレンズ形状に形成されているとともに、互いに同じレンズ
    形状を有し、且つ、二次元の多項式で表現されるアナモフィック非球面を有し、該アナモフィック非球面は副走査方向に関する傾きの変化を持ち、
    前記平面を挟んで対称な位置において、前記1対のレンズのうちの一方のレンズが他方のレンズの状態から光学面の基準軸周りに180度回転した状態で、配置されている
    ことを特徴とする走査光学系。
  3. 前記結像光学系は、前記回転多面鏡により偏向された複数のレーザー光束が前記1対のレンズに入射する前においてその全てが透過する前側レンズ群を、更に備えている
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の走査光学系。
  4. 前記結像光学系は、前記回転多面鏡により偏向された複数のレーザー光束が前記1対のレンズに入射する前においてその全てが透過する前側レンズ群を、更に備え、
    前記前側レンズ群は、前記平面と平行で且つ前記複数のレーザー光束の交差点を貫く主走査平面内にその光軸が含まれるように、配置されるとともに、前記主走査平面を対称面として面対称となるレンズ形状に、形成されている
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の走査光学系。
  5. 前記1対のレンズは、同じ金型を用いて成型されている
    ことを特徴とする請求項1乃至の何れかに記載の走査光学系。
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