JP2004309559A - 走査光学系 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリゴンミラーの反射面に対し複数の光束を副走査方向において夫々異なる角度で入射させる走査光学系であり、各光束毎に設けられる長尺レンズの面形状を同一とすることができる走査光学系を、提供する。
【解決手段】ポリゴンミラー20により動的に偏向された各レーザー光束は、結像光学系10を透過し、走査対象面上に収束する。結像光学系10は、外側、及び内側のレーザー光束毎に対応して個別の面形状を持つ走査レンズ11と、互いに同じ面形状を持つ長尺レンズ12とからなる。走査レンズ11の少なくとも一組の面と長尺レンズ12の一のレンズ面は、式
で表される二次元多項式非球面で、長尺レンズ12の光軸は、走査レンズ11の光軸に対し副走査方向に偏心している。
【選択図】 図6
【解決手段】ポリゴンミラー20により動的に偏向された各レーザー光束は、結像光学系10を透過し、走査対象面上に収束する。結像光学系10は、外側、及び内側のレーザー光束毎に対応して個別の面形状を持つ走査レンズ11と、互いに同じ面形状を持つ長尺レンズ12とからなる。走査レンズ11の少なくとも一組の面と長尺レンズ12の一のレンズ面は、式
で表される二次元多項式非球面で、長尺レンズ12の光軸は、走査レンズ11の光軸に対し副走査方向に偏心している。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラープリンターやカラーコピー機などの印刷装置に組み込まれる走査光学系に、関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、走査光学系は、画像情報に従ってオンオフ変調されたレーザービームをポリゴンミラーによって動的に偏向するとともに、動的に偏向されたレーザービームを結像光学系によって走査対象面上にスポット光として収束させる。これにより、走査光学系は、オンオフ変調されたスポット光を走査対象面上で主走査方向に沿って等速度で走査させ、複数のドットからなる画像(静電潜像)を走査対象面上に形成する。
【0003】
ところで、カラーレーザープリンタ等に使用される走査光学系の一つの形態に、所謂1ポリゴンタンデム走査光学系がある。この1ポリゴンタンデム走査光学系は、複数の発光点から発した各色に対応する複数の光束を、一個のポリゴンミラーの反射面にて同時に反射して、各光束毎に備えられた結像光学系に夫々入射させて各走査対象面上に導くことで各色に対応した静電潜像(各色成分毎の静電潜像)を形成する。
【0004】
このように1個のポリゴンミラーを用いて複数のレーザー光束を一度に偏向する場合、主走査方向に直交する副走査方向に分離して配置された各結像光学系に向けてレーザー光束を夫々入射させるために、各レーザー光束を、副走査方向に離間させて平行に並べた状態でポリゴンミラーの反射面に入射させる方法(例えば、特許文献1参照)が、提案されている。
【0005】
しかしながら、副走査方向に離間させて平行に並べた各レーザー光束をポリゴンミラーの反射面に互いの光束が平行な状態で入射させようとすると、レーザー光源の機械的制約により各レーザー光束同士の間隔をある程度以上狭くすることができないので、ポリゴンミラーの副走査方向における幅(即ち、厚さ)を大きくせねばならなかった。このようにポリゴンミラーを大型化すると、それを高速回転させるモーターもパワーの強いものを用意せねばならないために、走査光学系全体の製造コストが高くなってしまうという問題が生じてしまう。
【0006】
上記の問題を解決したものとして、本出願人は、各色に対応した複数の光束をポリゴンミラーの反射面上の同一点に向けて副走査方向において互いに異なる角度で斜めに入射させる走査光学系を、特願2001−351847において提案した。図29は、この走査光学系を副走査方向から見た図である。図29に示されるように、この走査光学系によると、ポリゴンミラー90の反射面の同一点上で反射された各光束は、副走査方向において互いに徐々に離れながら、結像光学系を構成する走査レンズ9aを透過し、続いて、光束毎に配置された反射ミラー群900によって夫々に対応する長尺レンズ9y、9m、9c、9kに向かって反射される。そして、これら各光束は、夫々、各長尺レンズ9y、9m、9c、9kを個別に透過し、所定の間隔を空けて平行に並べられた感光ドラム9Y、9M、9C、9Kへ、個別に入射する。このように構成されていると、ポリゴンミラー90の反射面上の同一点において各光束が反射されるため、ポリゴンミラー90の厚みを薄くすることができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−133131号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複数の光束をポリゴンミラーの反射面上の同一点に対して副走査方向において互いに異なる角度で斜めに入射させると、各光束に対して収差(走査線湾曲や波面のねじれ等)が発生し、その程度はポリゴンミラーへの副走査方向における入射角度の大きさに依って変化するため、以下のような問題点があった。
【0009】
即ち、上述の走査光学系においては、ポリゴンミラーの反射面へ各光束が斜めに入射することに因って発生する収差を、各光束毎に個別に設けられた長尺レンズによって補正すべく、各光束毎に、その光束のポリゴンミラーへの副走査方向における入射角度の絶対値(換言すると、発生する収差の程度)に応じた固有の面形状を持つ長尺レンズが夫々用意される必要がある。
【0010】
より具体的に説明するならば、図29のように、ポリゴンミラー90の中心軸90aに直交し走査レンズ9aの光軸を含む対称面に対して2本ずつ鏡面対称となるように、ポリゴンミラー90の反射面に対して4本の光束を入射させる場合には、対称面から遠い側を進行する光束同士はポリゴンミラー90の反射面への副走査方向における入射角度の絶対値が等しいため、これらの光束が入射する長尺レンズ9y、9kとしては、同一の面形状を持つレンズを使用することができる。また、同様に、対称面から近い側を進行する光束同士はポリゴンミラー90の反射面への副走査方向における入射角度の絶対値が等しいことから、これらの光束が入射する長尺レンズ9m、9cとしては、同一の面形状を持つレンズを使用することができる。しかしながら、対称軸から遠い側を進行する光束に対して用いられるレンズ(9y、9k)を、対称軸から近い側を進行する光束に対して用いられるレンズ(9m、9c)として、或いは、対称軸から近い側を進行する光束に対して用いられるレンズを、対称軸から遠い側を進行する光束に対して用いられるレンズとして使用することは、できない。そのため、面形状が互いに異なる長尺レンズを、少なくとも2種類は用意しなくてはいけなかった。
【0011】
なお、長尺レンズを成形するために用いられる金型も、その長尺レンズのレンズ面形状の種類に応じた数だけ用意する必要があり、それに因っても、走査光学系全体の製造コストが高くなってしまう。
【0012】
さらに、長尺レンズ同士において面形状の設計値が互いに異なれば、実際に成形された長尺レンズのレンズ面における面形状誤差も互いに異なることが多い。そのため、残存する(長尺レンズの面形状誤差に因り、補正しきれない)収差の程度が各長尺レンズを透過した光束毎に異なってしまうので、走査対象面S上に収束するスポット同士のズレ(色ずれ)の原因となり得る。
【0013】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、ポリゴンミラーの反射面に対して、複数の光束を副走査方向においてそれぞれ異なる角度で入射させる走査光学系でありながら、各光束毎に設けられる長尺レンズの面形状を同一のものとすることができる走査光学系を、提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明による走査光学系は、以下のような構成を採用した。
【0015】
即ち、本発明による走査光学系は、複数の光源から発された複数のレーザー光束を主走査方向に動的に偏向し、夫々の光束に対応する走査対象面上に収束させる走査光学系であり、主走査方向に直交する副走査方向においてそれぞれ異なった角度でその反射面に入射した各レーザー光束を主走査方向へ動的に偏向する偏向器と、この偏向器によって偏向された各レーザー光束を夫々に対応した走査対象面上に収束させるための結像光学系とを備えている。また、前記結像光学系は、前記偏向器によって偏向された各レーザー光束が共に入射して副走査方向に対して異なる領域を通過し、当該領域のうち少なくとも1つの領域における光学面形状は主走査方向、副走査方向夫々の光学面基準軸からの距離に関する多項式で表現される二次元多項式非球面として形成されている走査レンズ群と、当該走査レンズ群を透過した各光束毎に配置され、互いに同じ光学面形状を持つとともに、少なくともその一面が主走査方向、副走査方向夫々の距離に関する多項式で表現される二次元多項式非球面である複数の長尺レンズとからなる。そして、前記複数の長尺レンズのうち少なくとも一つの長尺レンズの光学面基準軸は、前記走査レンズ群の光学面基準軸に対して副走査方向面内において非平行となるように配置されており、前記走査レンズ群、及び、前記長尺レンズにおける二次元多項式非球面は、夫々の光学面基準軸を含み副走査方向に平行な平面である副走査断面からの距離によって、副走査断面に平行な断面における当該二次元多項式非球面の形状が、変化するように設計されていることを特徴としている。
【0016】
このように構成されると、偏向器の反射面に対して、複数の光束を副走査方向においてそれぞれ異なる角度で入射させる走査光学系において、各光束毎に設けられる長尺レンズの面形状を同一のものとすることができる。また、夫々の長尺レンズに同一面形状を持つレンズ面を用いたことで発生し得る収差を、長尺レンズをティルトさせることによって、また、走査レンズ群における少なくとも一面の一つの領域に二次元多項式非球面を用いることによって、抑えることができるため、走査光学系に要求される基本的な走査性能を満たしつつ、走査線湾曲を補正でき、しかも、波面のねじれを小さく抑えることができる。したがって、偏向器の厚みを厚くすること無く、長尺レンズのレンズ面を同一形状とすることができる。
【0017】
なお、走査レンズ群は、一枚のレンズから構成されていても良いし、複数枚のレンズから構成されていても良い。
【0018】
【発明の実施の形態】
本実施形態による走査光学系は、所謂1ポリゴンタンデム走査光学系であり、印刷用紙を一回搬送する間にイエロー、マゼンダ、シアン、黒の色成分のトナー像をその印刷用紙に順次転写してカラー画像を高速に印刷するタイプのカラーレーザープリンターに組み込まれて使用されるものである。以下、本発明に係る走査光学系の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態による走査光学系では、その全体像を概略的に示す斜視図である図1に示されるように、ポリゴンミラーによって偏向された4本のレーザー光束の光路が、折り返しミラーによって折り曲げられている。これは、上述したようなカラーレーザープリンターに本実施形態の走査光学系が組み込まれた際に、所望の間隔で並べられた感光ドラムに各光束を導くためである。
【0019】
なお、以下の説明を容易にするために、ポリゴンミラー5の中心軸5aに直交する面と平行な方向が「主走査方向」であると定義し、中心軸5aと平行な方向が「副走査方向」であると定義する。
【0020】
図2は、本実施形態による走査光学系の主要部の主走査方向における光学構成を示す展開図であり、図3は、本実施形態による走査光学系の主要部の副走査方向における光学構成を示す展開図である。
【0021】
本実施形態の走査光学系は、4つの感光ドラムの夫々に対して一本のレーザービームを走査する光学系である。この走査光学系は、図1乃至図3に示されるように、光源ユニット1と、シリンドリカルレンズ2と、レーザー光束を偏向する回転多面鏡であるポリゴンミラー5と、このポリゴンミラー5により偏向されたレーザー光束を結像させる結像光学系10(走査レンズ11及び長尺レンズ12)と、その表面が走査対象面Sとして機能する感光ドラム20とを、備えている。そして、図3に示されるように、四つの感光ドラムは、イエロー用の感光ドラム20Y、マゼンダ用の感光ドラム20M、シアン用の感光ドラム20C、及び、黒用の感光ドラム20Kからなる。各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kは、上記の順で、所定の間隔を開けて互いに平行に並べられており、図1の紙面上において上側から下側へ向かう方向(印刷用紙の搬送方向)に沿って一列に配置されている。
【0022】
光源ユニット1は、4つのレーザーダイオードもしくは4つのレーザーダイオードを一体化したチップ、及び、各レーザーダイオードから発散光束として発振されるレーザービームをそれぞれ平行光束に変換するコリメートレンズを、備える。この光源ユニット1からは、互いに平行となって等間隔に一列に並ぶ四本のレーザービームが、出力される。なお、各レーザービームが並ぶ方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0023】
シリンドリカルレンズ2は、シリンドリカル面及び平面を入射側及び射出側に有するレンズであり、光源ユニット1から出力される4本のレーザービームを、それぞれ副走査方向において収束させると共に、一点に収束させる。
【0024】
ポリゴンミラー5は、扁平な正多角柱状に形成されており、その各側面は反射面として構成されている。また、ポリゴンミラー5は、その中心軸5a周りに等角速度で回転駆動されるようになっている。そして、ポリゴンミラー5は、その各側面がシリンドリカルレンズ2によって4本のレーザービームが収束される一点の近傍に一側面が存在する位置に、配置されており、その中心軸5aは、上記搬送方向と平行な方向に向けられている。従って、このポリゴンミラー5は、シリンドリカルレンズ2を透過した後の4本のレーザービームを、その各側面によって結像光学系10に向けて同時に反射する。この時、ポリゴンミラー5が回転駆動されていれば、4本のレーザービームは、その回転に伴って動的に偏向される。このように、ポリゴンミラー5は、偏向器として機能する。
【0025】
なお、4本のレーザービームが収束する一点を含んでポリゴンミラー5の中心軸5aに直交する平面(仮想平面)を「主走査断面」と定義する。この主走査断面は、図3において一点鎖線で示すように、内側の一対の感光ドラム20M、20Cの中間位置に存在している。また、ポリゴンミラー5に入射する4本のレーザービームのうち、内側の2本は、主走査断面を挟む両側における互いに対称な位置をそれぞれ進行する。このため、内側の2本について、主走査断面に対する傾き角度の絶対値が互いに同じになっており、外側の2本についても、内側のそれらと同様に、主走査断面に対する傾き角度の絶対値が同じになっている。
【0026】
結像光学系10は、走査速度補正機能付きのレンズ群であり、ポリゴンミラー5に近い側にある走査レンズ11(走査レンズ群に相当)と、各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kに近い側にある長尺レンズ12y、12m、12c、12kとから、構成されている。なお、これら各レンズ11、12y、12m、12c、12kにおける光学面は、後述するように、非回転対称な形状に形成されており、回転対称な光学面での対称軸に相当する軸を持たない。そこで、光学面の形状を式によって表現する時に設定される原点を通る軸を「光学面基準軸」と言うことにし、この光学面基準軸を、回転対称な光学面での対称軸、すなわち、光軸に相当するものとして取り扱うことにする。
【0027】
走査レンズ11は、ポリゴンミラー5によって動的に偏向されたレーザービームを主に主走査方向に収束させるパワーを有する。この走査レンズ11は、その光学面基準軸Axが主走査断面内に含まれるように、配置されている。図4はこの走査レンズ11を、主走査方向に視線を向けて見た図である。走査レンズ11の前面(ポリゴンミラー5側の面)11aは、回転対称な連続面として形成されており、その対称軸は、光学面基準軸Axに一致している。一方、後面(走査対象面S側の面)は、各レーザービーム(L1、L2、L3、L4)に対して異なる作用を及ぼせるように、各レーザービームが透過する領域11y、11m、11c、11k毎に異なる面形状を有するように形成されている。但し、後面の各領域11y、11m、11c、11kの面形状の光学面基準軸は、それぞれ上記光学面基準軸Axに一致している。そして、走査レンズ11の光学面基準軸Axは、レーザー光源1から発して、ポリゴンミラー5の反射面の中心において反射されたレーザー光束のビーム軸と主走査方向においてほぼ重なっている。
【0028】
また、本実施形態では、外側の2本のレーザービームは主走査断面を挟む両側における互いに対称な位置をそれぞれ進行するので、後面における外側のレーザービームに作用する2つの領域11y、11kは、主走査断面を対称面として互いに鏡面対称な面形状に形成されている。また、後面における内側のレーザービームに作用する2つの領域11m、11cも、外側の二領域と同様に、主走査断面を対称面として互いに鏡面対称な面形状に形成されている。従って、この走査レンズ11は、全体的には、主走査断面を対称面としてこの対称面を挟む両側が対称となる形状に、形成されている。なお、この走査レンズ11の後面における夫々対称な面形状を持つ領域の組み合わせ(11yと11k、11mと11c)のうち、少なくとも一組の領域におけるレンズ面形状は、主走査方向、副走査方向それぞれの距離に関する多項式で表現される二次元多項式非球面である。また、走査レンズ11の後面における二次元多項式非球面は、光学面基準軸Axから主走査方向に離れるにしたがって副走査方向の傾き(本明細書では、非球面の面設計時に設定される原点に立てた法線と副走査方向とに平行な平面と、非球面との交線の当該平面内での傾きをいうものとする)が大きくなる(ポリゴンミラー側へ傾く)ように設計されている。図5は、この走査レンズ11の後面の一領域に適用される二次元多項式非球面を示す図である。図5において、左下側が長尺レンズ12側であり、右上側がポリゴンミラー5側である。光学面基準軸Axから主走査方向に離れるにしたがって、非球面がポリゴンミラー側へと傾いていることがわかる。また、走査レンズ11は、副走査断面を対称面として、非対称な形状をとっている。
【0029】
一方、走査レンズ11の後面において、二次元多項式非球面の形状をとらない領域には、主走査断面は光軸からの主走査方向の関数、副走査断面は曲率が光軸からの主走査方向の距離の関数として、独立に定義される非球面であるアナモフィック非球面が採用されている。このアナモフィック非球面は副走査方向の断面形状が円弧であり、その副走査方向の曲率は、光学面基準軸Axからの主走査方向の距離によって、光学面基準軸Axを対称軸として非対称に変化している。また、このアナモフィック非球面の形状は、主走査方向においては光学面基準軸Axを対称軸として対称である。また、このアナモフィック非球面は光学面基準軸Axから主走査方向に離れるにしたがって副走査断面パワーが大きくなる。
【0030】
長尺レンズ12は、ポリゴンミラー5によって動的に偏向されたレーザービームを主に副走査方向に収束させるパワーを有し、副走査方向の像面湾曲を補正する機能をも負担するレンズである。
【0031】
また、各長尺レンズ12y、12m、12c、12kの光学面基準軸Ax´は、主走査方向において、走査レンズ11の光学面基準軸Axと同軸(互いに平行)となっている。但し、各長尺レンズ12y、12m、12c、12kは、その光学面基準軸Ax´が走査レンズ11の光学面基準軸Axに対して副走査方向へティルトする(換言すると、長尺レンズ12の光学面基準軸Ax´が、走査レンズ11の光学面基準軸Axに対して副走査断面内で非平行となる)ことによって、偏心している(図3参照)。
【0032】
なお、これら各長尺レンズ12y、12m、12c、12kは、すべて同一の面形状を持ち、図3において主走査断面Pよりも上側を進行する2本のレーザービーム(L1、L2)用の長尺レンズ12y、12mと、主走査断面Pよりも下側を進行する2本のレーザービーム(L3、L4)用の長尺レンズ12c、12kとは、主走査断面を挟む両側における対称な位置において、主走査断面を対称面として鏡面対称となるように、夫々配置されている。またこれら長尺レンズ12の前面は二次元多項式非球面である。この二次元多項式非球面は、主走査方向においては、光学面基準軸Ax´を対称軸として対称な面形状を持ち、副走査方向においては、光学面基準軸Ax´を対称軸として非対称な面形状を持つ。また、副走査方向の断面内での傾きが主走査方向における光学面基準軸Ax´からの距離によって変化している。
【0033】
なお、図7は、主走査断面に近い側を進行する2本のレーザービーム用の長尺レンズ12m、12c(以下、「内側の光学系」という)を副走査方向から見た時の主要部の光学構成図であり、図8は、主走査断面から遠い側を進行する2本のレーザービーム用の長尺レンズ12y、12k(以下「外側の光学系」という)を副走査方向から見た時の主要部の光学構成図である。なお、図7では、走査レンズ11の後面における内側のレーザービームが透過する領域11m(11c)のみならず、その領域11m(11c)を含む面形状全体が示されており、外側のレーザービームが透過する領域11y、11kについては図示を省略されている。図8では、図7とは逆に、領域11y(11k)を含む面形状全体が示されており、領域11m、11cの図示が省略されている。
【0034】
光源ユニット1から平行光として発せられた4本のレーザー光束は、シリンドリカルレンズ2を透過した後、中心軸5a周りに等角速度にて回転駆動されるポリゴンミラー5により夫々偏向される。ポリゴンミラー5により偏向された各レーザー光束は、夫々に対応した面形状の領域を持つ走査レンズ11、及び夫々に対応した長尺レンズ12y、12m、12c、12kからなる結像光学系10を透過することにより、夫々に対応した感光ドラム20Y、20M、20C、20Kの走査対象面S上にスポット光として収束される。これらスポット光は、ポリゴンミラー5の回転に伴って、各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面上を主走査方向(図1において矢印が示す方向)に沿って等速度に走査する。なお、各感光ドラム20Y、20M、20C、20K上で繰り返し走査される4本のレーザービームは、画像情報に従ってオンオフ変調されるので、各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kがともに等角速度で回転していれば、各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面には、複数のドットからなる二次元状の画像が静電潜像として形成される。この時、結像光学系10によってポリゴンミラー5の各側面と走査対象面Sとが副走査方向において共役関係となっているために、走査対象面Sでは、ポリゴンミラー5の各側面の僅かな傾き(いわゆる「面倒れ」)による副走査方向における走査位置のズレが、補正される。このため、レーザー光束は、ポリゴンミラー5のどの面によって反射されても、走査対象面Sにおける同一線上を走査する。
【0035】
なお、上述したように、実際の本実施形態による走査光学系は、走査された4本のレーザービームの光路が反射ミラー13、14によって折り曲げられている光学構成を有している。具体的には、図1及び図6に示されるように、走査レンズ11を透過した各レーザービーム(L1、L2、L3、L4)は、夫々に対応した2枚一組の反射ミラー(13yと14y、13mと14m、13cと14c、13kと14k)によって、夫々反射され、夫々に対応した長尺レンズ(12y、12m、12c、12k)へと入射し、夫々に対応した感光ドラム上に収束する。
【0036】
以下、本実施形態における走査光学系の具体的な実施例を3例挙げて説明する。なお、以下の実施例は、反射ミラー13y、13m、13c、13k及び14y、14m、14c、14kを省略し、光路を展開した状態で説明する。
【0037】
【実施例1】
次に、本実施形態による走査光学系の第1の実施例における具体的な数値構成について、説明する。以下の表1及び表2には、本実施例の走査光学系における内側及び外側の光学系の具体的な数値構成が、示されている。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
これら表1及び表2において、記号NOは、シリンドリカルレンズ2の入射側の面を1番としてこのレンズ面より射出側に向かって昇順に各光学面に付された面番号を示す。具体的には、第1面及び第2面はシリンドリカルレンズ2を、第3面はポリゴンミラー5の反射面を、第4面は走査レンズ11の前面を、それぞれ示す。また、第5面は、表1においては走査レンズ11の内側の領域11m、11cを、表2においては走査レンズ11の外側の領域11y、11kを、それぞれ示し、第6面及び第7面は、表1においては内側の光学系12m、12cを、表2においては外側の光学系12y、12kを、それぞれ示し、第8面は走査対象面Sを示す。また、記号Ryは、光学面基準軸上での光学面の主走査方向の曲率半径(単位は[mm])であり、記号Rzは、光学面基準軸上での光学面の副走査方向の曲率半径(単位は[mm])であり、記号dは、次の光学面までの光学面基準軸上での距離(単位は[mm])であり、記号nは、設計波長780nmでの各レンズの屈折率である。また、記号DECZは、各長尺レンズ12y、12m、12c、12kについては、それらのティルトしていない状態における光学面基準軸Ax´´(図6及び図7参照)の上記光学面基準軸Axからの副走査方向へのシフト量(単位は[mm])であり、走査対象面(第8面)Sについては、レーザービームの入射地点の上記光学面基準軸Ax´´からの副走査方向へのシフト量(単位は[mm])である。さらに、TILT−βは、各光学系(長尺レンズ)のティルト量を示す。このTILT−βにおける記号が−の時は、主走査断面から離れるに従って副走査断面内において走査対象面S側に傾くことによって、偏心していることを示す。また、このティルト量が+の時は、主走査断面から離れるに従って副走査断面内においてポリゴンミラー5側に傾くことによって、偏心していることを示す。なお、この走査光学系全体の焦点距離は235mmであり、走査対象面S上での有効走査幅は216mmである。
【0040】
さらに、上記光学面基準軸Axを含んで主走査断面と直交する仮想平面を「副走査断面」と定義すると、本実施形態では、ポリゴンミラー5へ入射するレーザービームの光路を副走査断面に投影した場合、外側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、2.9°であり、内側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、0.9°である。また、ポリゴンミラー5へ入射するレーザービームの光路を主走査断面内に投影した場合、当該レーザービームは、光学面基準軸Axに対して75.0°傾けられている。
【0041】
なお、本第1実施例では、走査レンズ11の前面(第4面)11aは、凹の球面として形成されており、その後面(第5面)11y、11m、11c、11kは、夫々二次元多項式非球面として形成されている。また、内側及び外側の長尺レンズ12y、12m、12c、12kの前面(第6面)も、二次元多項式非球面として形成されており、それらの後面(第7面)は、凸の球面として形成されている。
【0042】
二次元多項式非球面は、仮想的な基準平面からのサグ量が基準平面内で主走査方向(y方向)及び副走査方向(z方向)の二次元座標を変数とする多項式によって定義される光学曲面である。なお、この二次元座標では、基準平面に直交する単一の基準軸とこの基準平面との交点が、原点として定義されている。この二次元多項式非球面の形状は、基準平面上での点(y,z)における基準軸での接平面からのサグ量(y,z)として、下記式(1)により表される。
【0043】
式(1)において、Ryは表1に挙げられた主走査方向における近軸曲率半径、κは円錐係数、Bmnは主走査方向における次数がm次であって副走査方向における次数がn次である非球面係数である。実施例1において走査レンズ11の後側の面(第5面)11y、11m、11c、11kの具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表3及び表4に示す。なお、表3は、内側の光学系(11m、11c)のものであり、表4は、外側の光学系(11y、11k)のものである。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
また、実施例1において長尺レンズ12の前面(第6面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表5に示す。なお、本発明において長尺レンズ12の前面(第6面)は、内側の光学系と外側の光学系とで同一の面形状を持つ。
【0046】
【表5】
図9は、本実施例の走査レンズ11の二次元多項式非球面の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを、横軸に面上の主走査方向の座標をとって示したグラフである。グラフ内の破線は内側の光学系(領域11m、11c)における二次元多項式非球面の値、実線は外側の光学系(領域11y、11k)における二次元多項式非球面の値を示している。
【0047】
図10は、本実施例の長尺レンズ12の二次元多項式非球面の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。この図10に示されるように、長尺レンズ12の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面設計時に設定される原点(即ち、光学面基準軸が通る原点)である面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0048】
この走査光学系における光学系の光学性能を図11乃至図14に示す。ここで、図11は、fθ誤差(走査対象面S上でのスポット光の理想位置からの主走査方向へのずれ)を示し、図12は、主走査方向(破線)及び副走査方向(実線)の像面湾曲(結像位置の理想平面からの光軸方向へのずれ)を示し、図13は、走査線湾曲(ボウ)を示し、図14は、波面収差を示す。何れのグラフとも縦軸Yは主走査方向の走査位置を示し、横軸は収差量を示す。また、何れのグラフとも縦軸の単位は[mm]であり、図11乃至図13の横軸の単位も[mm]であるが、図14の横軸の単位は波長(RMS値)である。なお、図11乃至図14において、符号(a)は、内側の光学系の光学性能を、符号(b)は、外側の光学系の光学性能を、夫々示す。
【0049】
これら図11乃至図14に示されるように、本第1の実施例の走査光学系は、fθ特性、像面湾曲などの走査光学系に要求される基本的な走査性能を満たしつつ、ボウが良好に補正されており、しかも、波面のねじれが小さく抑えられている。
【0050】
【実施例2】
次に、本実施形態による走査光学系の第2の実施例における具体的な数値構成について、説明する。以下の表6及び表7には、本実施例の走査光学系における内側及び外側の光学系の具体的な数値構成が、示されている。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
これら表6及び表7における各欄の意味は、上述した表1及び表2のものと同じである。なお、表6において、第5面は走査レンズ11の内側の領域11m、11cを、第6面及び第7面は内側の光学系12m、12cを、それぞれ示し、表7において、第5面は走査レンズ11の外側の領域11y、11kを、それぞれ示し、第6面及び第7面は外側の光学系12y、12kを、それぞれ示す。この走査光学系全体の焦点距離は235mmであり、走査対象面S上での有効走査幅は216mmである。さらに、外側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、2.9°であり、内側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、0.9°である。また、当該レーザービームは、光学面基準軸Axに対して75.0°傾けられている。
【0053】
なお、本第2実施例では、走査レンズ11の前面(第4面)11aは、凹の球面として形成されており、その後面(第5面)のうち、内側の光学系(領域)11m、11cはアナモフィック非球面として、また、外側の光学系(領域)11y、11kは二次元多項式非球面として、夫々形成されている。また、内側及び外側の長尺レンズ12y、12m、12c、12kの前面(第6面)は、二次元多項式非球面として形成されており、その後面(第7面)は、凸の球面として形成されている。
【0054】
アナモフィック非球面の主走査断面における形状は、光軸からの距離(y)の点における基準軸での接平面からのサグ量X(y)として、下記式(2)により表され、主走査方向の各距離(y)での副走査方向における形状は、円弧形状をとる。また、その曲率1/[Rz(y)]は、下記式(3)により表される。
これら式(2)、(3)において、Ryは表6及び表7に挙げられた主走査方向における近軸曲率半径であり、Rzは表6及び表7に挙げられた副走査方向における近軸曲率半径であり、κは円錐係数、AM1、AM2、AM3、AM4、AM5、AM6、AM7、AM8…は夫々主走査方向に関する1次、2次、3次、4次、5次、6次、7次、8次…の非球面係数であり、AS1、AS2、AS3、AS4、AS5、AS6、AS7、AS8…は夫々副走査方向に関する1次、2次、3次、4次、5次、6次、7次、8次…の非球面係数である。実施例2の内側の光学系において走査レンズ11の後側の面(第5面)の具体的形状を特定するためにこれら各式(2)、(3)に適用される各係数を、表8に示す。
【0055】
【表8】
実施例2の外側の光学系において走査レンズ11の後側の面(第5面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表9に示す。
【0056】
【表9】
また、実施例2において長尺レンズ12の前側の面(第6面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表10に示す。
【0057】
【表10】
図15は、本実施例の走査レンズ11の二次元多項式非球面(領域11y、11k)の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。走査レンズ11の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0058】
図16は、本実施例の走査レンズ11のアナモフィック非球面(領域11m、11c)の副走査方向におけるパワー(屈折力)を横軸に面上の主走査方向の座標をとって示したグラフである。このグラフに示されているように、面中心から主走査方向に離れるにしたがって、副走査方向におけるパワーが大きくなっている。
【0059】
図17は、本実施例の長尺レンズ12の二次元多項式非球面の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。この図17に示されるように、長尺レンズ12の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0060】
この走査光学系における光学系の光学性能を図18乃至図21に示す。ここで、図18は、fθ誤差を示し、図19は、像面湾曲を示し、図20は、走査線湾曲を示し、図21は、波面収差を示す。なお、図18乃至図21において、符号(a)は、内側の光学系の光学性能を、符号(b)は、外側の光学系の光学性能を、夫々示す。
【0061】
これら図18乃至図21に示されるように、本第2の実施例の走査光学系は、fθ特性、像面湾曲などの走査光学系に要求される基本的な走査性能を満たしつつ、ボウが良好に補正されており、しかも、波面のねじれが小さく抑えられている。
【0062】
【実施例3】
次に、本実施形態の走査光学系の第3の実施例における具体的な数値構成について、説明する。以下の表11及び表12には、本実施例の走査光学系における内側及び外側の光学系の具体的な数値構成が、示されている。
【0063】
【表11】
【0064】
【表12】
これら表11及び表12における各欄の意味は、上述した表1及び表2のものと同じである。なお、表11において、第5面は走査レンズ11の内側の領域11m、11cを、第6面及び第7面は、内側の光学系12m、12cを、それぞれ示し、表12において、第5面は走査レンズ11の外側の領域11y、11kを、第6面及び第7面は外側の光学系12y、12kを、それぞれ示す。この走査光学系全体の焦点距離は235mmであり、走査対象面S上での有効走査幅は216mmである。さらに、外側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、2.9°であり、内側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、0.9°である。また、当該レーザービームは、光学面基準軸Axに対して75.0°傾けられている。
【0065】
なお、本第3実施例では、走査レンズ11の前面(第4面)11aは、凹の球面として形成されており、その後面(第5面)のうち、内側の光学系(領域)11m、11cは二次元多項式非球面として、また、外側の光学系(領域)11y、11kはアナモフィック非球面として、夫々形成されている。また、内側及び外側の長尺レンズ12y、12m、12c、12kの前面(第6面)は、二次元多項式非球面として形成されており、その後面(第7面)は、凸の球面として形成されている。
【0066】
実施例3の表11(内側の光学系)において走査レンズ11の後側の面(第5面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を、表13に示す。
【0067】
【表13】
実施例3の外側の光学系において走査レンズ11の後側の面(第5面)の具体的形状を特定するために各式(2)、(3)に適用される各係数を表14に示す。
【0068】
【表14】
また、実施例3において長尺レンズ12の前側の面(第6面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表15に示す。
【0069】
【表15】
図22は、本実施例の走査レンズ11の二次元多項式非球面(領域11m、11c)の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。走査レンズ11の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0070】
図23は、本実施例の走査レンズ11のアナモフィック非球面(領域11y、11k)の副走査方向におけるパワーを横軸に面上の主走査方向の座標をとって示したグラフである。このグラフに示されているように、面中心から主走査方向に離れるにしたがって、副走査方向におけるパワーが大きくなっている。
【0071】
図24は、本実施例の長尺レンズ12の二次元多項式非球面の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。この図24に示されるように、長尺レンズ12の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0072】
この走査光学系における光学系の光学性能を図25乃至図28に示す。ここで、図25は、fθ誤差を示し、図26は、像面湾曲を示し、図27は、走査線湾曲を示し、図28は、波面収差を示す。なお、図25乃至図28において、符号(a)は、内側の光学系の光学性能を、符号(b)は、外側の光学系の光学性能を、夫々示す。
【0073】
これら図25乃至図28に示されるように、本第2の実施例の走査光学系は、fθ特性、像面湾曲などの走査光学系に要求される基本的な走査性能を満たしつつ、ボウが良好に補正されており、しかも、波面のねじれが小さく抑えられている。
【0074】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、ポリゴンミラーの反射面に対して、複数の光束を副走査方向においてそれぞれ異なる角度で入射させる走査光学系でありながら、各光束毎に設けられる長尺レンズの面形状を同一のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である走査光学系の光学構成を概略的に示す斜視図
【図2】走査光学系の主要部を副走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図3】走査光学系の主要部を主走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図4】走査レンズを模式的に示す図
【図5】走査レンズにおける二次元多項式非球面を示す図
【図6】走査光学系を主走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図7】内側の走査光学系を主走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図8】外側の走査光学系を主走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図9】実施例1における走査レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図10】実施例1における長尺レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図11】実施例1の走査光学系のfθ誤差を示すグラフ
【図12】実施例1の走査光学系の像面湾曲を示すグラフ
【図13】実施例1の走査光学系の走査線湾曲を示すグラフ
【図14】実施例1の走査光学系の波面収差を示すグラフ
【図15】実施例2における走査レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図16】実施例2における走査レンズの副走査断面パワーを示すグラフ
【図17】実施例2における長尺レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図18】実施例2の走査光学系のfθ誤差を示すグラフ
【図19】実施例2の走査光学系の像面湾曲を示すグラフ
【図20】実施例2の走査光学系の走査線湾曲を示すグラフ
【図21】実施例2の走査光学系の波面収差を示すグラフ
【図22】実施例3における走査レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図23】実施例3における走査レンズの副走査断面パワーを示すグラフ
【図24】実施例3における長尺レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図25】実施例3の走査光学系のfθ誤差を示すグラフ
【図26】実施例3の走査光学系の像面湾曲を示すグラフ
【図27】実施例3の走査光学系の走査線湾曲を示すグラフ
【図28】実施例3の走査光学系の波面収差を示すグラフ
【図29】従来の走査光学系を副走査方向から見た図
【符号の説明】
1 光源ユニット
2 シリンドリカルレンズ
5 ポリゴンミラー
5a 中心軸
10 結像光学系
11 走査レンズ
12y 長尺レンズ
12m 長尺レンズ
12c 長尺レンズ
12k 長尺レンズ
Ax 光学面基準軸
Ax´ 光学面基準軸
20Y イエロー用感光ドラム
20M マゼンダ用感光ドラム
20C シアン用感光ドラム
20K 黒用感光ドラム
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラープリンターやカラーコピー機などの印刷装置に組み込まれる走査光学系に、関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、走査光学系は、画像情報に従ってオンオフ変調されたレーザービームをポリゴンミラーによって動的に偏向するとともに、動的に偏向されたレーザービームを結像光学系によって走査対象面上にスポット光として収束させる。これにより、走査光学系は、オンオフ変調されたスポット光を走査対象面上で主走査方向に沿って等速度で走査させ、複数のドットからなる画像(静電潜像)を走査対象面上に形成する。
【0003】
ところで、カラーレーザープリンタ等に使用される走査光学系の一つの形態に、所謂1ポリゴンタンデム走査光学系がある。この1ポリゴンタンデム走査光学系は、複数の発光点から発した各色に対応する複数の光束を、一個のポリゴンミラーの反射面にて同時に反射して、各光束毎に備えられた結像光学系に夫々入射させて各走査対象面上に導くことで各色に対応した静電潜像(各色成分毎の静電潜像)を形成する。
【0004】
このように1個のポリゴンミラーを用いて複数のレーザー光束を一度に偏向する場合、主走査方向に直交する副走査方向に分離して配置された各結像光学系に向けてレーザー光束を夫々入射させるために、各レーザー光束を、副走査方向に離間させて平行に並べた状態でポリゴンミラーの反射面に入射させる方法(例えば、特許文献1参照)が、提案されている。
【0005】
しかしながら、副走査方向に離間させて平行に並べた各レーザー光束をポリゴンミラーの反射面に互いの光束が平行な状態で入射させようとすると、レーザー光源の機械的制約により各レーザー光束同士の間隔をある程度以上狭くすることができないので、ポリゴンミラーの副走査方向における幅(即ち、厚さ)を大きくせねばならなかった。このようにポリゴンミラーを大型化すると、それを高速回転させるモーターもパワーの強いものを用意せねばならないために、走査光学系全体の製造コストが高くなってしまうという問題が生じてしまう。
【0006】
上記の問題を解決したものとして、本出願人は、各色に対応した複数の光束をポリゴンミラーの反射面上の同一点に向けて副走査方向において互いに異なる角度で斜めに入射させる走査光学系を、特願2001−351847において提案した。図29は、この走査光学系を副走査方向から見た図である。図29に示されるように、この走査光学系によると、ポリゴンミラー90の反射面の同一点上で反射された各光束は、副走査方向において互いに徐々に離れながら、結像光学系を構成する走査レンズ9aを透過し、続いて、光束毎に配置された反射ミラー群900によって夫々に対応する長尺レンズ9y、9m、9c、9kに向かって反射される。そして、これら各光束は、夫々、各長尺レンズ9y、9m、9c、9kを個別に透過し、所定の間隔を空けて平行に並べられた感光ドラム9Y、9M、9C、9Kへ、個別に入射する。このように構成されていると、ポリゴンミラー90の反射面上の同一点において各光束が反射されるため、ポリゴンミラー90の厚みを薄くすることができる。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−133131号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、複数の光束をポリゴンミラーの反射面上の同一点に対して副走査方向において互いに異なる角度で斜めに入射させると、各光束に対して収差(走査線湾曲や波面のねじれ等)が発生し、その程度はポリゴンミラーへの副走査方向における入射角度の大きさに依って変化するため、以下のような問題点があった。
【0009】
即ち、上述の走査光学系においては、ポリゴンミラーの反射面へ各光束が斜めに入射することに因って発生する収差を、各光束毎に個別に設けられた長尺レンズによって補正すべく、各光束毎に、その光束のポリゴンミラーへの副走査方向における入射角度の絶対値(換言すると、発生する収差の程度)に応じた固有の面形状を持つ長尺レンズが夫々用意される必要がある。
【0010】
より具体的に説明するならば、図29のように、ポリゴンミラー90の中心軸90aに直交し走査レンズ9aの光軸を含む対称面に対して2本ずつ鏡面対称となるように、ポリゴンミラー90の反射面に対して4本の光束を入射させる場合には、対称面から遠い側を進行する光束同士はポリゴンミラー90の反射面への副走査方向における入射角度の絶対値が等しいため、これらの光束が入射する長尺レンズ9y、9kとしては、同一の面形状を持つレンズを使用することができる。また、同様に、対称面から近い側を進行する光束同士はポリゴンミラー90の反射面への副走査方向における入射角度の絶対値が等しいことから、これらの光束が入射する長尺レンズ9m、9cとしては、同一の面形状を持つレンズを使用することができる。しかしながら、対称軸から遠い側を進行する光束に対して用いられるレンズ(9y、9k)を、対称軸から近い側を進行する光束に対して用いられるレンズ(9m、9c)として、或いは、対称軸から近い側を進行する光束に対して用いられるレンズを、対称軸から遠い側を進行する光束に対して用いられるレンズとして使用することは、できない。そのため、面形状が互いに異なる長尺レンズを、少なくとも2種類は用意しなくてはいけなかった。
【0011】
なお、長尺レンズを成形するために用いられる金型も、その長尺レンズのレンズ面形状の種類に応じた数だけ用意する必要があり、それに因っても、走査光学系全体の製造コストが高くなってしまう。
【0012】
さらに、長尺レンズ同士において面形状の設計値が互いに異なれば、実際に成形された長尺レンズのレンズ面における面形状誤差も互いに異なることが多い。そのため、残存する(長尺レンズの面形状誤差に因り、補正しきれない)収差の程度が各長尺レンズを透過した光束毎に異なってしまうので、走査対象面S上に収束するスポット同士のズレ(色ずれ)の原因となり得る。
【0013】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、ポリゴンミラーの反射面に対して、複数の光束を副走査方向においてそれぞれ異なる角度で入射させる走査光学系でありながら、各光束毎に設けられる長尺レンズの面形状を同一のものとすることができる走査光学系を、提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明による走査光学系は、以下のような構成を採用した。
【0015】
即ち、本発明による走査光学系は、複数の光源から発された複数のレーザー光束を主走査方向に動的に偏向し、夫々の光束に対応する走査対象面上に収束させる走査光学系であり、主走査方向に直交する副走査方向においてそれぞれ異なった角度でその反射面に入射した各レーザー光束を主走査方向へ動的に偏向する偏向器と、この偏向器によって偏向された各レーザー光束を夫々に対応した走査対象面上に収束させるための結像光学系とを備えている。また、前記結像光学系は、前記偏向器によって偏向された各レーザー光束が共に入射して副走査方向に対して異なる領域を通過し、当該領域のうち少なくとも1つの領域における光学面形状は主走査方向、副走査方向夫々の光学面基準軸からの距離に関する多項式で表現される二次元多項式非球面として形成されている走査レンズ群と、当該走査レンズ群を透過した各光束毎に配置され、互いに同じ光学面形状を持つとともに、少なくともその一面が主走査方向、副走査方向夫々の距離に関する多項式で表現される二次元多項式非球面である複数の長尺レンズとからなる。そして、前記複数の長尺レンズのうち少なくとも一つの長尺レンズの光学面基準軸は、前記走査レンズ群の光学面基準軸に対して副走査方向面内において非平行となるように配置されており、前記走査レンズ群、及び、前記長尺レンズにおける二次元多項式非球面は、夫々の光学面基準軸を含み副走査方向に平行な平面である副走査断面からの距離によって、副走査断面に平行な断面における当該二次元多項式非球面の形状が、変化するように設計されていることを特徴としている。
【0016】
このように構成されると、偏向器の反射面に対して、複数の光束を副走査方向においてそれぞれ異なる角度で入射させる走査光学系において、各光束毎に設けられる長尺レンズの面形状を同一のものとすることができる。また、夫々の長尺レンズに同一面形状を持つレンズ面を用いたことで発生し得る収差を、長尺レンズをティルトさせることによって、また、走査レンズ群における少なくとも一面の一つの領域に二次元多項式非球面を用いることによって、抑えることができるため、走査光学系に要求される基本的な走査性能を満たしつつ、走査線湾曲を補正でき、しかも、波面のねじれを小さく抑えることができる。したがって、偏向器の厚みを厚くすること無く、長尺レンズのレンズ面を同一形状とすることができる。
【0017】
なお、走査レンズ群は、一枚のレンズから構成されていても良いし、複数枚のレンズから構成されていても良い。
【0018】
【発明の実施の形態】
本実施形態による走査光学系は、所謂1ポリゴンタンデム走査光学系であり、印刷用紙を一回搬送する間にイエロー、マゼンダ、シアン、黒の色成分のトナー像をその印刷用紙に順次転写してカラー画像を高速に印刷するタイプのカラーレーザープリンターに組み込まれて使用されるものである。以下、本発明に係る走査光学系の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態による走査光学系では、その全体像を概略的に示す斜視図である図1に示されるように、ポリゴンミラーによって偏向された4本のレーザー光束の光路が、折り返しミラーによって折り曲げられている。これは、上述したようなカラーレーザープリンターに本実施形態の走査光学系が組み込まれた際に、所望の間隔で並べられた感光ドラムに各光束を導くためである。
【0019】
なお、以下の説明を容易にするために、ポリゴンミラー5の中心軸5aに直交する面と平行な方向が「主走査方向」であると定義し、中心軸5aと平行な方向が「副走査方向」であると定義する。
【0020】
図2は、本実施形態による走査光学系の主要部の主走査方向における光学構成を示す展開図であり、図3は、本実施形態による走査光学系の主要部の副走査方向における光学構成を示す展開図である。
【0021】
本実施形態の走査光学系は、4つの感光ドラムの夫々に対して一本のレーザービームを走査する光学系である。この走査光学系は、図1乃至図3に示されるように、光源ユニット1と、シリンドリカルレンズ2と、レーザー光束を偏向する回転多面鏡であるポリゴンミラー5と、このポリゴンミラー5により偏向されたレーザー光束を結像させる結像光学系10(走査レンズ11及び長尺レンズ12)と、その表面が走査対象面Sとして機能する感光ドラム20とを、備えている。そして、図3に示されるように、四つの感光ドラムは、イエロー用の感光ドラム20Y、マゼンダ用の感光ドラム20M、シアン用の感光ドラム20C、及び、黒用の感光ドラム20Kからなる。各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kは、上記の順で、所定の間隔を開けて互いに平行に並べられており、図1の紙面上において上側から下側へ向かう方向(印刷用紙の搬送方向)に沿って一列に配置されている。
【0022】
光源ユニット1は、4つのレーザーダイオードもしくは4つのレーザーダイオードを一体化したチップ、及び、各レーザーダイオードから発散光束として発振されるレーザービームをそれぞれ平行光束に変換するコリメートレンズを、備える。この光源ユニット1からは、互いに平行となって等間隔に一列に並ぶ四本のレーザービームが、出力される。なお、各レーザービームが並ぶ方向は、副走査方向と平行な方向である。
【0023】
シリンドリカルレンズ2は、シリンドリカル面及び平面を入射側及び射出側に有するレンズであり、光源ユニット1から出力される4本のレーザービームを、それぞれ副走査方向において収束させると共に、一点に収束させる。
【0024】
ポリゴンミラー5は、扁平な正多角柱状に形成されており、その各側面は反射面として構成されている。また、ポリゴンミラー5は、その中心軸5a周りに等角速度で回転駆動されるようになっている。そして、ポリゴンミラー5は、その各側面がシリンドリカルレンズ2によって4本のレーザービームが収束される一点の近傍に一側面が存在する位置に、配置されており、その中心軸5aは、上記搬送方向と平行な方向に向けられている。従って、このポリゴンミラー5は、シリンドリカルレンズ2を透過した後の4本のレーザービームを、その各側面によって結像光学系10に向けて同時に反射する。この時、ポリゴンミラー5が回転駆動されていれば、4本のレーザービームは、その回転に伴って動的に偏向される。このように、ポリゴンミラー5は、偏向器として機能する。
【0025】
なお、4本のレーザービームが収束する一点を含んでポリゴンミラー5の中心軸5aに直交する平面(仮想平面)を「主走査断面」と定義する。この主走査断面は、図3において一点鎖線で示すように、内側の一対の感光ドラム20M、20Cの中間位置に存在している。また、ポリゴンミラー5に入射する4本のレーザービームのうち、内側の2本は、主走査断面を挟む両側における互いに対称な位置をそれぞれ進行する。このため、内側の2本について、主走査断面に対する傾き角度の絶対値が互いに同じになっており、外側の2本についても、内側のそれらと同様に、主走査断面に対する傾き角度の絶対値が同じになっている。
【0026】
結像光学系10は、走査速度補正機能付きのレンズ群であり、ポリゴンミラー5に近い側にある走査レンズ11(走査レンズ群に相当)と、各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kに近い側にある長尺レンズ12y、12m、12c、12kとから、構成されている。なお、これら各レンズ11、12y、12m、12c、12kにおける光学面は、後述するように、非回転対称な形状に形成されており、回転対称な光学面での対称軸に相当する軸を持たない。そこで、光学面の形状を式によって表現する時に設定される原点を通る軸を「光学面基準軸」と言うことにし、この光学面基準軸を、回転対称な光学面での対称軸、すなわち、光軸に相当するものとして取り扱うことにする。
【0027】
走査レンズ11は、ポリゴンミラー5によって動的に偏向されたレーザービームを主に主走査方向に収束させるパワーを有する。この走査レンズ11は、その光学面基準軸Axが主走査断面内に含まれるように、配置されている。図4はこの走査レンズ11を、主走査方向に視線を向けて見た図である。走査レンズ11の前面(ポリゴンミラー5側の面)11aは、回転対称な連続面として形成されており、その対称軸は、光学面基準軸Axに一致している。一方、後面(走査対象面S側の面)は、各レーザービーム(L1、L2、L3、L4)に対して異なる作用を及ぼせるように、各レーザービームが透過する領域11y、11m、11c、11k毎に異なる面形状を有するように形成されている。但し、後面の各領域11y、11m、11c、11kの面形状の光学面基準軸は、それぞれ上記光学面基準軸Axに一致している。そして、走査レンズ11の光学面基準軸Axは、レーザー光源1から発して、ポリゴンミラー5の反射面の中心において反射されたレーザー光束のビーム軸と主走査方向においてほぼ重なっている。
【0028】
また、本実施形態では、外側の2本のレーザービームは主走査断面を挟む両側における互いに対称な位置をそれぞれ進行するので、後面における外側のレーザービームに作用する2つの領域11y、11kは、主走査断面を対称面として互いに鏡面対称な面形状に形成されている。また、後面における内側のレーザービームに作用する2つの領域11m、11cも、外側の二領域と同様に、主走査断面を対称面として互いに鏡面対称な面形状に形成されている。従って、この走査レンズ11は、全体的には、主走査断面を対称面としてこの対称面を挟む両側が対称となる形状に、形成されている。なお、この走査レンズ11の後面における夫々対称な面形状を持つ領域の組み合わせ(11yと11k、11mと11c)のうち、少なくとも一組の領域におけるレンズ面形状は、主走査方向、副走査方向それぞれの距離に関する多項式で表現される二次元多項式非球面である。また、走査レンズ11の後面における二次元多項式非球面は、光学面基準軸Axから主走査方向に離れるにしたがって副走査方向の傾き(本明細書では、非球面の面設計時に設定される原点に立てた法線と副走査方向とに平行な平面と、非球面との交線の当該平面内での傾きをいうものとする)が大きくなる(ポリゴンミラー側へ傾く)ように設計されている。図5は、この走査レンズ11の後面の一領域に適用される二次元多項式非球面を示す図である。図5において、左下側が長尺レンズ12側であり、右上側がポリゴンミラー5側である。光学面基準軸Axから主走査方向に離れるにしたがって、非球面がポリゴンミラー側へと傾いていることがわかる。また、走査レンズ11は、副走査断面を対称面として、非対称な形状をとっている。
【0029】
一方、走査レンズ11の後面において、二次元多項式非球面の形状をとらない領域には、主走査断面は光軸からの主走査方向の関数、副走査断面は曲率が光軸からの主走査方向の距離の関数として、独立に定義される非球面であるアナモフィック非球面が採用されている。このアナモフィック非球面は副走査方向の断面形状が円弧であり、その副走査方向の曲率は、光学面基準軸Axからの主走査方向の距離によって、光学面基準軸Axを対称軸として非対称に変化している。また、このアナモフィック非球面の形状は、主走査方向においては光学面基準軸Axを対称軸として対称である。また、このアナモフィック非球面は光学面基準軸Axから主走査方向に離れるにしたがって副走査断面パワーが大きくなる。
【0030】
長尺レンズ12は、ポリゴンミラー5によって動的に偏向されたレーザービームを主に副走査方向に収束させるパワーを有し、副走査方向の像面湾曲を補正する機能をも負担するレンズである。
【0031】
また、各長尺レンズ12y、12m、12c、12kの光学面基準軸Ax´は、主走査方向において、走査レンズ11の光学面基準軸Axと同軸(互いに平行)となっている。但し、各長尺レンズ12y、12m、12c、12kは、その光学面基準軸Ax´が走査レンズ11の光学面基準軸Axに対して副走査方向へティルトする(換言すると、長尺レンズ12の光学面基準軸Ax´が、走査レンズ11の光学面基準軸Axに対して副走査断面内で非平行となる)ことによって、偏心している(図3参照)。
【0032】
なお、これら各長尺レンズ12y、12m、12c、12kは、すべて同一の面形状を持ち、図3において主走査断面Pよりも上側を進行する2本のレーザービーム(L1、L2)用の長尺レンズ12y、12mと、主走査断面Pよりも下側を進行する2本のレーザービーム(L3、L4)用の長尺レンズ12c、12kとは、主走査断面を挟む両側における対称な位置において、主走査断面を対称面として鏡面対称となるように、夫々配置されている。またこれら長尺レンズ12の前面は二次元多項式非球面である。この二次元多項式非球面は、主走査方向においては、光学面基準軸Ax´を対称軸として対称な面形状を持ち、副走査方向においては、光学面基準軸Ax´を対称軸として非対称な面形状を持つ。また、副走査方向の断面内での傾きが主走査方向における光学面基準軸Ax´からの距離によって変化している。
【0033】
なお、図7は、主走査断面に近い側を進行する2本のレーザービーム用の長尺レンズ12m、12c(以下、「内側の光学系」という)を副走査方向から見た時の主要部の光学構成図であり、図8は、主走査断面から遠い側を進行する2本のレーザービーム用の長尺レンズ12y、12k(以下「外側の光学系」という)を副走査方向から見た時の主要部の光学構成図である。なお、図7では、走査レンズ11の後面における内側のレーザービームが透過する領域11m(11c)のみならず、その領域11m(11c)を含む面形状全体が示されており、外側のレーザービームが透過する領域11y、11kについては図示を省略されている。図8では、図7とは逆に、領域11y(11k)を含む面形状全体が示されており、領域11m、11cの図示が省略されている。
【0034】
光源ユニット1から平行光として発せられた4本のレーザー光束は、シリンドリカルレンズ2を透過した後、中心軸5a周りに等角速度にて回転駆動されるポリゴンミラー5により夫々偏向される。ポリゴンミラー5により偏向された各レーザー光束は、夫々に対応した面形状の領域を持つ走査レンズ11、及び夫々に対応した長尺レンズ12y、12m、12c、12kからなる結像光学系10を透過することにより、夫々に対応した感光ドラム20Y、20M、20C、20Kの走査対象面S上にスポット光として収束される。これらスポット光は、ポリゴンミラー5の回転に伴って、各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面上を主走査方向(図1において矢印が示す方向)に沿って等速度に走査する。なお、各感光ドラム20Y、20M、20C、20K上で繰り返し走査される4本のレーザービームは、画像情報に従ってオンオフ変調されるので、各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kがともに等角速度で回転していれば、各感光ドラム20Y、20M、20C、20Kの表面には、複数のドットからなる二次元状の画像が静電潜像として形成される。この時、結像光学系10によってポリゴンミラー5の各側面と走査対象面Sとが副走査方向において共役関係となっているために、走査対象面Sでは、ポリゴンミラー5の各側面の僅かな傾き(いわゆる「面倒れ」)による副走査方向における走査位置のズレが、補正される。このため、レーザー光束は、ポリゴンミラー5のどの面によって反射されても、走査対象面Sにおける同一線上を走査する。
【0035】
なお、上述したように、実際の本実施形態による走査光学系は、走査された4本のレーザービームの光路が反射ミラー13、14によって折り曲げられている光学構成を有している。具体的には、図1及び図6に示されるように、走査レンズ11を透過した各レーザービーム(L1、L2、L3、L4)は、夫々に対応した2枚一組の反射ミラー(13yと14y、13mと14m、13cと14c、13kと14k)によって、夫々反射され、夫々に対応した長尺レンズ(12y、12m、12c、12k)へと入射し、夫々に対応した感光ドラム上に収束する。
【0036】
以下、本実施形態における走査光学系の具体的な実施例を3例挙げて説明する。なお、以下の実施例は、反射ミラー13y、13m、13c、13k及び14y、14m、14c、14kを省略し、光路を展開した状態で説明する。
【0037】
【実施例1】
次に、本実施形態による走査光学系の第1の実施例における具体的な数値構成について、説明する。以下の表1及び表2には、本実施例の走査光学系における内側及び外側の光学系の具体的な数値構成が、示されている。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
これら表1及び表2において、記号NOは、シリンドリカルレンズ2の入射側の面を1番としてこのレンズ面より射出側に向かって昇順に各光学面に付された面番号を示す。具体的には、第1面及び第2面はシリンドリカルレンズ2を、第3面はポリゴンミラー5の反射面を、第4面は走査レンズ11の前面を、それぞれ示す。また、第5面は、表1においては走査レンズ11の内側の領域11m、11cを、表2においては走査レンズ11の外側の領域11y、11kを、それぞれ示し、第6面及び第7面は、表1においては内側の光学系12m、12cを、表2においては外側の光学系12y、12kを、それぞれ示し、第8面は走査対象面Sを示す。また、記号Ryは、光学面基準軸上での光学面の主走査方向の曲率半径(単位は[mm])であり、記号Rzは、光学面基準軸上での光学面の副走査方向の曲率半径(単位は[mm])であり、記号dは、次の光学面までの光学面基準軸上での距離(単位は[mm])であり、記号nは、設計波長780nmでの各レンズの屈折率である。また、記号DECZは、各長尺レンズ12y、12m、12c、12kについては、それらのティルトしていない状態における光学面基準軸Ax´´(図6及び図7参照)の上記光学面基準軸Axからの副走査方向へのシフト量(単位は[mm])であり、走査対象面(第8面)Sについては、レーザービームの入射地点の上記光学面基準軸Ax´´からの副走査方向へのシフト量(単位は[mm])である。さらに、TILT−βは、各光学系(長尺レンズ)のティルト量を示す。このTILT−βにおける記号が−の時は、主走査断面から離れるに従って副走査断面内において走査対象面S側に傾くことによって、偏心していることを示す。また、このティルト量が+の時は、主走査断面から離れるに従って副走査断面内においてポリゴンミラー5側に傾くことによって、偏心していることを示す。なお、この走査光学系全体の焦点距離は235mmであり、走査対象面S上での有効走査幅は216mmである。
【0040】
さらに、上記光学面基準軸Axを含んで主走査断面と直交する仮想平面を「副走査断面」と定義すると、本実施形態では、ポリゴンミラー5へ入射するレーザービームの光路を副走査断面に投影した場合、外側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、2.9°であり、内側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、0.9°である。また、ポリゴンミラー5へ入射するレーザービームの光路を主走査断面内に投影した場合、当該レーザービームは、光学面基準軸Axに対して75.0°傾けられている。
【0041】
なお、本第1実施例では、走査レンズ11の前面(第4面)11aは、凹の球面として形成されており、その後面(第5面)11y、11m、11c、11kは、夫々二次元多項式非球面として形成されている。また、内側及び外側の長尺レンズ12y、12m、12c、12kの前面(第6面)も、二次元多項式非球面として形成されており、それらの後面(第7面)は、凸の球面として形成されている。
【0042】
二次元多項式非球面は、仮想的な基準平面からのサグ量が基準平面内で主走査方向(y方向)及び副走査方向(z方向)の二次元座標を変数とする多項式によって定義される光学曲面である。なお、この二次元座標では、基準平面に直交する単一の基準軸とこの基準平面との交点が、原点として定義されている。この二次元多項式非球面の形状は、基準平面上での点(y,z)における基準軸での接平面からのサグ量(y,z)として、下記式(1)により表される。
【0043】
式(1)において、Ryは表1に挙げられた主走査方向における近軸曲率半径、κは円錐係数、Bmnは主走査方向における次数がm次であって副走査方向における次数がn次である非球面係数である。実施例1において走査レンズ11の後側の面(第5面)11y、11m、11c、11kの具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表3及び表4に示す。なお、表3は、内側の光学系(11m、11c)のものであり、表4は、外側の光学系(11y、11k)のものである。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
また、実施例1において長尺レンズ12の前面(第6面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表5に示す。なお、本発明において長尺レンズ12の前面(第6面)は、内側の光学系と外側の光学系とで同一の面形状を持つ。
【0046】
【表5】
図9は、本実施例の走査レンズ11の二次元多項式非球面の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを、横軸に面上の主走査方向の座標をとって示したグラフである。グラフ内の破線は内側の光学系(領域11m、11c)における二次元多項式非球面の値、実線は外側の光学系(領域11y、11k)における二次元多項式非球面の値を示している。
【0047】
図10は、本実施例の長尺レンズ12の二次元多項式非球面の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。この図10に示されるように、長尺レンズ12の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面設計時に設定される原点(即ち、光学面基準軸が通る原点)である面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0048】
この走査光学系における光学系の光学性能を図11乃至図14に示す。ここで、図11は、fθ誤差(走査対象面S上でのスポット光の理想位置からの主走査方向へのずれ)を示し、図12は、主走査方向(破線)及び副走査方向(実線)の像面湾曲(結像位置の理想平面からの光軸方向へのずれ)を示し、図13は、走査線湾曲(ボウ)を示し、図14は、波面収差を示す。何れのグラフとも縦軸Yは主走査方向の走査位置を示し、横軸は収差量を示す。また、何れのグラフとも縦軸の単位は[mm]であり、図11乃至図13の横軸の単位も[mm]であるが、図14の横軸の単位は波長(RMS値)である。なお、図11乃至図14において、符号(a)は、内側の光学系の光学性能を、符号(b)は、外側の光学系の光学性能を、夫々示す。
【0049】
これら図11乃至図14に示されるように、本第1の実施例の走査光学系は、fθ特性、像面湾曲などの走査光学系に要求される基本的な走査性能を満たしつつ、ボウが良好に補正されており、しかも、波面のねじれが小さく抑えられている。
【0050】
【実施例2】
次に、本実施形態による走査光学系の第2の実施例における具体的な数値構成について、説明する。以下の表6及び表7には、本実施例の走査光学系における内側及び外側の光学系の具体的な数値構成が、示されている。
【0051】
【表6】
【0052】
【表7】
これら表6及び表7における各欄の意味は、上述した表1及び表2のものと同じである。なお、表6において、第5面は走査レンズ11の内側の領域11m、11cを、第6面及び第7面は内側の光学系12m、12cを、それぞれ示し、表7において、第5面は走査レンズ11の外側の領域11y、11kを、それぞれ示し、第6面及び第7面は外側の光学系12y、12kを、それぞれ示す。この走査光学系全体の焦点距離は235mmであり、走査対象面S上での有効走査幅は216mmである。さらに、外側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、2.9°であり、内側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、0.9°である。また、当該レーザービームは、光学面基準軸Axに対して75.0°傾けられている。
【0053】
なお、本第2実施例では、走査レンズ11の前面(第4面)11aは、凹の球面として形成されており、その後面(第5面)のうち、内側の光学系(領域)11m、11cはアナモフィック非球面として、また、外側の光学系(領域)11y、11kは二次元多項式非球面として、夫々形成されている。また、内側及び外側の長尺レンズ12y、12m、12c、12kの前面(第6面)は、二次元多項式非球面として形成されており、その後面(第7面)は、凸の球面として形成されている。
【0054】
アナモフィック非球面の主走査断面における形状は、光軸からの距離(y)の点における基準軸での接平面からのサグ量X(y)として、下記式(2)により表され、主走査方向の各距離(y)での副走査方向における形状は、円弧形状をとる。また、その曲率1/[Rz(y)]は、下記式(3)により表される。
これら式(2)、(3)において、Ryは表6及び表7に挙げられた主走査方向における近軸曲率半径であり、Rzは表6及び表7に挙げられた副走査方向における近軸曲率半径であり、κは円錐係数、AM1、AM2、AM3、AM4、AM5、AM6、AM7、AM8…は夫々主走査方向に関する1次、2次、3次、4次、5次、6次、7次、8次…の非球面係数であり、AS1、AS2、AS3、AS4、AS5、AS6、AS7、AS8…は夫々副走査方向に関する1次、2次、3次、4次、5次、6次、7次、8次…の非球面係数である。実施例2の内側の光学系において走査レンズ11の後側の面(第5面)の具体的形状を特定するためにこれら各式(2)、(3)に適用される各係数を、表8に示す。
【0055】
【表8】
実施例2の外側の光学系において走査レンズ11の後側の面(第5面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表9に示す。
【0056】
【表9】
また、実施例2において長尺レンズ12の前側の面(第6面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表10に示す。
【0057】
【表10】
図15は、本実施例の走査レンズ11の二次元多項式非球面(領域11y、11k)の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。走査レンズ11の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0058】
図16は、本実施例の走査レンズ11のアナモフィック非球面(領域11m、11c)の副走査方向におけるパワー(屈折力)を横軸に面上の主走査方向の座標をとって示したグラフである。このグラフに示されているように、面中心から主走査方向に離れるにしたがって、副走査方向におけるパワーが大きくなっている。
【0059】
図17は、本実施例の長尺レンズ12の二次元多項式非球面の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。この図17に示されるように、長尺レンズ12の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0060】
この走査光学系における光学系の光学性能を図18乃至図21に示す。ここで、図18は、fθ誤差を示し、図19は、像面湾曲を示し、図20は、走査線湾曲を示し、図21は、波面収差を示す。なお、図18乃至図21において、符号(a)は、内側の光学系の光学性能を、符号(b)は、外側の光学系の光学性能を、夫々示す。
【0061】
これら図18乃至図21に示されるように、本第2の実施例の走査光学系は、fθ特性、像面湾曲などの走査光学系に要求される基本的な走査性能を満たしつつ、ボウが良好に補正されており、しかも、波面のねじれが小さく抑えられている。
【0062】
【実施例3】
次に、本実施形態の走査光学系の第3の実施例における具体的な数値構成について、説明する。以下の表11及び表12には、本実施例の走査光学系における内側及び外側の光学系の具体的な数値構成が、示されている。
【0063】
【表11】
【0064】
【表12】
これら表11及び表12における各欄の意味は、上述した表1及び表2のものと同じである。なお、表11において、第5面は走査レンズ11の内側の領域11m、11cを、第6面及び第7面は、内側の光学系12m、12cを、それぞれ示し、表12において、第5面は走査レンズ11の外側の領域11y、11kを、第6面及び第7面は外側の光学系12y、12kを、それぞれ示す。この走査光学系全体の焦点距離は235mmであり、走査対象面S上での有効走査幅は216mmである。さらに、外側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、2.9°であり、内側のレーザービームのポリゴンミラー5への入射角度は、0.9°である。また、当該レーザービームは、光学面基準軸Axに対して75.0°傾けられている。
【0065】
なお、本第3実施例では、走査レンズ11の前面(第4面)11aは、凹の球面として形成されており、その後面(第5面)のうち、内側の光学系(領域)11m、11cは二次元多項式非球面として、また、外側の光学系(領域)11y、11kはアナモフィック非球面として、夫々形成されている。また、内側及び外側の長尺レンズ12y、12m、12c、12kの前面(第6面)は、二次元多項式非球面として形成されており、その後面(第7面)は、凸の球面として形成されている。
【0066】
実施例3の表11(内側の光学系)において走査レンズ11の後側の面(第5面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を、表13に示す。
【0067】
【表13】
実施例3の外側の光学系において走査レンズ11の後側の面(第5面)の具体的形状を特定するために各式(2)、(3)に適用される各係数を表14に示す。
【0068】
【表14】
また、実施例3において長尺レンズ12の前側の面(第6面)の具体的形状を特定するために式(1)に適用される各係数を表15に示す。
【0069】
【表15】
図22は、本実施例の走査レンズ11の二次元多項式非球面(領域11m、11c)の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。走査レンズ11の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0070】
図23は、本実施例の走査レンズ11のアナモフィック非球面(領域11y、11k)の副走査方向におけるパワーを横軸に面上の主走査方向の座標をとって示したグラフである。このグラフに示されているように、面中心から主走査方向に離れるにしたがって、副走査方向におけるパワーが大きくなっている。
【0071】
図24は、本実施例の長尺レンズ12の二次元多項式非球面の主走査断面上の各点における副走査方向の傾きを示したグラフである。この図24に示されるように、長尺レンズ12の二次元多項式非球面の副走査方向の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加している。
【0072】
この走査光学系における光学系の光学性能を図25乃至図28に示す。ここで、図25は、fθ誤差を示し、図26は、像面湾曲を示し、図27は、走査線湾曲を示し、図28は、波面収差を示す。なお、図25乃至図28において、符号(a)は、内側の光学系の光学性能を、符号(b)は、外側の光学系の光学性能を、夫々示す。
【0073】
これら図25乃至図28に示されるように、本第2の実施例の走査光学系は、fθ特性、像面湾曲などの走査光学系に要求される基本的な走査性能を満たしつつ、ボウが良好に補正されており、しかも、波面のねじれが小さく抑えられている。
【0074】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、ポリゴンミラーの反射面に対して、複数の光束を副走査方向においてそれぞれ異なる角度で入射させる走査光学系でありながら、各光束毎に設けられる長尺レンズの面形状を同一のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である走査光学系の光学構成を概略的に示す斜視図
【図2】走査光学系の主要部を副走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図3】走査光学系の主要部を主走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図4】走査レンズを模式的に示す図
【図5】走査レンズにおける二次元多項式非球面を示す図
【図6】走査光学系を主走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図7】内側の走査光学系を主走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図8】外側の走査光学系を主走査方向に視線を向けて見たときの光学構成図
【図9】実施例1における走査レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図10】実施例1における長尺レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図11】実施例1の走査光学系のfθ誤差を示すグラフ
【図12】実施例1の走査光学系の像面湾曲を示すグラフ
【図13】実施例1の走査光学系の走査線湾曲を示すグラフ
【図14】実施例1の走査光学系の波面収差を示すグラフ
【図15】実施例2における走査レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図16】実施例2における走査レンズの副走査断面パワーを示すグラフ
【図17】実施例2における長尺レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図18】実施例2の走査光学系のfθ誤差を示すグラフ
【図19】実施例2の走査光学系の像面湾曲を示すグラフ
【図20】実施例2の走査光学系の走査線湾曲を示すグラフ
【図21】実施例2の走査光学系の波面収差を示すグラフ
【図22】実施例3における走査レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図23】実施例3における走査レンズの副走査断面パワーを示すグラフ
【図24】実施例3における長尺レンズの副走査断面傾きを示すグラフ
【図25】実施例3の走査光学系のfθ誤差を示すグラフ
【図26】実施例3の走査光学系の像面湾曲を示すグラフ
【図27】実施例3の走査光学系の走査線湾曲を示すグラフ
【図28】実施例3の走査光学系の波面収差を示すグラフ
【図29】従来の走査光学系を副走査方向から見た図
【符号の説明】
1 光源ユニット
2 シリンドリカルレンズ
5 ポリゴンミラー
5a 中心軸
10 結像光学系
11 走査レンズ
12y 長尺レンズ
12m 長尺レンズ
12c 長尺レンズ
12k 長尺レンズ
Ax 光学面基準軸
Ax´ 光学面基準軸
20Y イエロー用感光ドラム
20M マゼンダ用感光ドラム
20C シアン用感光ドラム
20K 黒用感光ドラム
Claims (10)
- 複数の光源から発された複数のレーザー光束を主走査方向に動的に偏向し、夫々の光束に対応する走査対象面上に収束させる走査光学系において、
主走査方向に直交する副走査方向においてそれぞれ異なった角度でその反射面に入射した各レーザー光束を主走査方向へ動的に偏向する偏向器と、
この偏向器によって偏向された各レーザー光束を夫々に対応した走査対象面上に収束させるための結像光学系とを備え、
前記結像光学系は、
前記偏向器によって偏向された各レーザー光束が共に入射して副走査方向に対して異なる領域を通過し、当該領域のうち少なくとも1つの領域における光学面形状は主走査方向、副走査方向夫々、光学面基準軸からの距離に関する多項式で表現される二次元多項式非球面として形成されている走査レンズ群と、
当該走査レンズ群を透過した各光束毎に配置され、互いに同じ光学面形状を持つとともに、少なくともその一面が主走査方向、副走査方向夫々、光学面基準軸からの距離に関する多項式で表現される二次元多項式非球面である複数の長尺レンズとからなり、
前記複数の長尺レンズのうち少なくとも一つの長尺レンズの光学面基準軸は、前記走査レンズ群の光学面基準軸に対して副走査方向面内において非平行となるように配置されており、
前記走査レンズ群、及び、前記長尺レンズにおける二次元多項式非球面は、夫々の光学面基準軸を含み副走査方向に平行な平面である副走査断面からの距離によって、副走査断面に平行な断面における当該二次元多項式非球面の形状が、変化する
ことを特徴とする走査光学系。 - 前記走査レンズ群における前記二次元多項式非球面は、前記副走査断面から離れるに従って、当該副走査断面に平行な断面内において偏向器側に傾いている
ことを特徴とする請求項1記載の走査光学系。 - 前記走査レンズ群に入射するレーザー光束は4本であり、各レーザー光束は、当該走査レンズ群の光学面基準軸を含み主走査方向に平行な平面である主走査断面に面対称な2本一組の光路を通って前記走査レンズ群に入射するように配置されており、
当該走査レンズ群の少なくとも一面は、当該主走査断面から遠い側を進行する一組のレーザー光束が透過する外側の領域と当該主走査断面から近い側を進行する一組のレーザー光束が透過する内側の領域とで互いに異なり、当該主走査断面に面対称な面形状を持ち、
当該主走査断面から遠い側に配置され前記外側の領域を透過したレーザー光束が入射する一組の長尺レンズ、及び、当該主走査断面から近い側に配置され前記内側の領域を透過したレーザー光束が入射する一組の長尺レンズのうち少なくとも一組の長尺レンズの光学面基準軸が、前記走査レンズの光学面基準軸に対して副走査断面内で非平行となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の走査光学系。 - 前記走査レンズ群における前記外側の領域、及び前記内側の領域のうち、前記二次元多項式非球面でない形状を持つ領域は、主走査断面は光学面基準軸からの主走査方向の距離の関数、副走査断面は曲率が光学面基準軸からの主走査方向の距離の関数として独立に定義されるアナモフィック非球面として形成されていることを特徴とする請求項3記載の走査光学系。
- 前記走査レンズ群における前記アナモフィック非球面は、前記副走査断面から離れるに従って副走査方向の屈折力が大きくなるとともに、副走査方向の断面の曲率が光学基準軸に対して非対称に変化する
ことを特徴とする請求項4記載の走査光学系。 - 前記走査レンズ群における前記内側領域は前記二次元多項式非球面である
ことを特徴とする請求項3記載の走査光学系。 - 前記内側領域を通過した光束が通過する長尺レンズは、前記主走査断面から離れるに従って、当該副走査断面に平行な断面内において走査対象面側に傾いている
ことを特徴とする請求項6記載の走査光学系。 - 前記走査レンズ群における前記外側領域は前記二次元多項式非球面である
ことを特徴とする請求項3または6または7のいずれか一項に記載の走査光学系。 - 前記外側領域を通過した光束が通過する長尺レンズは、前記主走査断面から離れるに従って、当該副走査断面に平行な断面内において偏向器側に傾いている
ことを特徴とする請求項8記載の走査光学系。 - 前記走査レンズ群の光学面基準軸に対して副走査方向面内において非平行となるように配置された長尺レンズの光学面基準軸はさらに、当該長尺レンズに入射する光束の主光線に対して副走査方向面内において非平行となるように配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の走査光学系。
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