JP4227334B2 - 走査光学系 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、レーザープリンター等の走査光学装置に用いられる走査光学系に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザープリンター等に用いられる走査光学系は、半導体レーザー等の光源から発したレーザー光をポリゴンミラーにより偏向、走査させ、結像光学系を介して感光体ドラム等の被走査面上にスポットとして結像させる。被走査面上のスポットは、ポリゴンミラーの回転に伴って走査し、この際レーザー光をオンオフ変調することにより被走査面上に静電潜像を形成する。なお、この明細書では、被走査面上でスポットが走査する方向を主走査方向、これに直交する方向を副走査方向と定義し、各光学素子の形状、パワーの方向性は、被走査面上での方向を基準に説明することとする。
【0003】
走査光学系には、単一の光束を用いる基本的な構成の他にも、同一の感光体ドラム上に一度に複数の走査線を形成するマルチビーム方式の構成、あるいは、複数の感光体ドラムに一度に走査線を形成するタンデム方式の構成等が知られている。マルチビーム方式、あるいはタンデム方式において、単一のポリゴンミラーにより複数の光束を走査させる場合には、各光束の副走査方向の断面内でのポリゴンミラーへの入射角度をそれぞれ異ならせることがある。このような配置により、複数の光束をポリゴンミラーの反射面上でほぼ同一の位置に入射させることができ、ポリゴンミラーを薄くし、そのコストを抑えることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように光束の副走査方向の断面内での入射角度が異なる場合、ポリゴンミラーの回転軸に対して垂直な平面に対して斜めにポリゴンミラーに入射する光束については、被走査面上ではビームスポットの軌跡である走査線が湾曲するという問題が生じる。走査線の湾曲はボウ(Bow)と呼ばれる。また、光源部から発した光束が、主走査方向においてポリゴンミラーによる光束の走査範囲外からポリゴンミラーに入射するよう配置されている場合には、ポリゴンミラーの回転中心が走査レンズの光軸上に位置しないため、反射面と入射光束との交点(偏向点)がポリゴンミラーの回転に伴って光軸に対して非対称に変化し、走査線が傾くという問題がある。この2つの問題が組み合わさると、走査線の湾曲が左右非対称になる。走査線の傾きの大きさは、ポリゴンミラーへの副走査方向の入射角度により異なるため、入射角度が異なる光束により形成される走査線を一定方向に揃えることが困難であり、これがカラープリンターにおいては色ズレの原因となり、印刷品質を悪化させる。
【0005】
この発明は、上記の従来技術の問題点に鑑み、偏向点変化が非対称である場合にも、走査線の傾きと走査線湾曲によって現れる走査線湾曲の左右非対称性を補正することができる走査光学系を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる走査光学系は、上記の目的を達成させるため、ポリゴンミラーの近傍に設けられた走査レンズの一面を、副走査方向のパワーの主走査方向における分布を光軸に対して非対称なアナモフィック面としたことを特徴とする。
【0007】
すなわち、この発明にかかる走査光学系は、光束を発生する光源部と、複数の反射面を有し、回転駆動されることにより光源部から発して入射する光束を反射、偏向させるポリゴンミラーと、このポリゴンミラーにより反射された光束を被走査面上で主走査方向に走査するスポットとして収束させる結像光学系とを備え、結像光学系は、単数または複数の単レンズから構成される走査レンズと、走査レンズより被走査面側に配置された像面湾曲補正用の補正レンズとを備え、光源部は、主走査方向においては、ポリゴンミラーによる光束の走査範囲外から、副走査方向においては、ポリゴンミラーの回転軸に対して垂直な平面に対して斜めに、ポリゴンミラーに光束を入射させるよう配置され、走査レンズの少なくとも1面が上記のようなアナモフィック面であり、このアナモフィック面は、主走査方向の断面形状が走査レンズの光軸からの主走査方向の距離の関数として定義され、副走査方向の断面形状が円弧であって、その曲率半径が光軸からの主走査方向の距離の関数として主走査方向の断面形状とは独立して定義されるアナモフィック非球面であり、このアナモフィック面上における主走査方向の位置を光軸を基準として光源部側を−方向、逆側を+方向、光軸からの距離をYとして表し、当該位置における副走査方向の曲率半径をRz ( Y ) として、
|Rz ( 0 ) |<|Rz(−Y)|<|Rz(Y)|
を満たし、補正レンズは、副走査方向のパワーの主走査方向における分布が面中心に対して対称な面のみで構成されることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、偏向点変化の非対称性に起因する走査線の傾きを走査レンズのアナモフィック面により補正することができ、ポリゴンミラーに対して副走査方向において異なる角度で入射する複数の光束を利用する場合にも、それぞれの走査線の傾きを一致させることができる。なお、面中心は、面設計時に設定される原点であり、主走査方向については、被走査面上で走査範囲の中心に達する光束が非球面と交差する位置である。
【0009】
走査レンズのアナモフィック面は、副走査方向に対して垂直で光軸を含む平面に関して対称な形状を有し、補正レンズは、副走査方向に対して垂直で面中心を含む平面に関して非対称な形状のアナモフィック面を含むことが望ましい。走査レンズのうち、少なくともアナモフィック面を含むレンズ素子はプラスチックレンズであることが望ましい。
【0012】
一方、補正レンズの1つの面は、副走査方向の断面の傾きが主走査方向の位置により変化し、副走査方向に対して垂直で面中心を含む平面に関して非対称な形状を有する非球面であることが望ましく、この非球面は、面中心を原点として含んで走査レンズの光軸と直交する基準平面からのサグ量が主走査方向・副走査方向それぞれの面中心からの距離に関する二次元多項式で表現される二次元多項式非球面とすることができる。この場合には、副走査方向において、ポリゴンミラーの回転軸に対して垂直な平面に対して斜めに、ポリゴンミラーに対して光束を入射させることに起因する走査線の湾曲を補正することができる。
【0013】
光源部が複数の光束を発する場合には、光源部からポリゴンミラーに入射する複数の光束の副走査方向の断面内での入射角度をそれぞれ異ならせることにより、ポリゴンミラーの副走査方向の高さを小さく抑えることができる。このような場合には、ポリゴンミラーに近い位置に走査レンズを、複数の光束に対して共通に1つだけ配置し、被走査面に近い位置に補正レンズを、ほぼ同一の角度でポリゴンミラーに入射する光束毎に複数配置することが望ましい。
【0014】
光源部は、光源部から発する複数の光束がポリゴンミラーに対して副走査方向の断面内で絶対値が等しく符号が異なる入射角度で入射するように設定されることが望ましい。この場合、複数の補正レンズは、ポリンゴンミラーから各感光体ドラムまでの反射面を展開して考えた場合、走査レンズ系の光軸の延長線に対して対称に配置することができる。すなわち、同一設計の補正レンズを、走査レンズ系の光軸の延長線に対して等距離の位置に、180°回転させて配置することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかる走査光学系の実施形態を説明する。図1は、実施形態にかかる走査光学系を利用したタンデム走査光学系を示す説明図であり、(A)はポリゴンミラーより光源部側の副走査方向の断面内での説明図、(B)はポリゴンミラーより被走査面である感光体ドラム側の副走査方向の断面内での説明図である。
【0016】
図1(A)に示すタンデム走査光学系の光源部10は、4個の半導体レーザー11、11…と、これらの半導体レーザーから発する発散光を平行光にする4個のコリメートレンズ12、12…とを備えている。半導体レーザー11は、図中の縦方向となる副走査方向に4段並んで配置されている。
【0017】
コリメートレンズ12により平行光とされた4本のレーザー光L1〜L4は、副走査方向にのみパワーを持つ単一のシリンドリカルレンズ13の作用により副走査方向に関して収束光となり、かつ、シリンドリカルレンズ13が持つプリズム作用により偏向されてポリゴンミラー20の近傍でほぼ同一位置に線像を形成する。すなわち、光源部10から発する4本の光束は、副走査方向の断面内での入射角度がそれぞれ異なり、ポリゴンミラー20の反射面上で交差する。これにより、ポリゴンミラー20の副走査方向の高さを小さく抑えることができる。内側の2本の光束L2,L3のポリゴンミラーに対する入射角度は±βin、外側の2本の光束L1,L4の入射角度は±βoutである。すなわち、対をなす2本ずつの光束が、ポリゴンミラー20に対して副走査方向の断面内で絶対値が等しく符号が異なる入射角度で入射するように設定されている。
【0018】
光源部10から発した4本の光束L1〜L4は、回転軸20a回りに回転するポリゴンミラー20により同時に偏向される。なお、光源部10は、主走査方向において、ポリゴンミラー20による光束の走査範囲外からポリゴンミラー20に光束を入射させるよう配置されている。偏向された4本の光束L1〜L4は、副走査方向に関しては所定の角度で異なる方向に進み、第1レンズ31と第2レンズ32とから構成される走査レンズ30に入射する。走査レンズ30から射出した光束は、2本ずつそれぞれ一対のミラー40,41により反射され、各光束毎の光路に配置された像面湾曲補正用の補正レンズ51〜54を介して、それぞれ異なる感光体ドラム61〜64上に収束して各ドラム上にビームスポットを形成する。ポリゴンミラー20を回転軸20a回りに回転させることにより、4本の感光体ドラム61〜64上にそれぞれ1本の走査線を同時に形成することができる。
【0019】
なお、シリンドリカルレンズ13は、光源部から発する光束を副走査方向に収束させるアナモフィック光学素子としての機能を有しており、走査レンズ30及び補正レンズ51〜54は、ポリゴンミラー20により反射された光束を被走査面上で主走査方向に走査するスポットとして収束させる結像光学系としての機能を有している。
【0020】
結像光学系を構成する走査レンズ30の一面(第1レンズ31の被走査面側の面、あるいは、第2レンズ32の被走査面側の面)には、副走査方向のパワーの主走査方向における分布が光軸に対して非対称なアナモフィック非球面が採用されている。副走査方向のパワーに非対称性を持たせることにより、偏向点が非対称に変化することに起因する走査線の傾きを補正することができる。
【0021】
また、走査レンズ30のアナモフィック非球面は、副走査方向に対して垂直で光軸Axを含む平面に関しては対称であり、その主走査方向の断面形状は、光軸Axからの主走査方向の距離の関数として定義され、副走査方向の断面形状は、円弧であって、その曲率半径が光軸Axからの主走査方向の距離の関数として定義される。
【0022】
走査レンズ30のアナモフィック非球面は、当該面上における主走査方向の位置を光軸を基準として光源部10側を−方向、逆側を+方向、光軸Axからの距離をYとして表し、当該位置における副走査方向の曲率半径をRz(Y)として、
|Rz(0)|<|Rz(−Y)|<|Rz(Y)|
を満たすよう設計されている。すなわち、光軸から離れるのに従って曲率半径が大きくなる。つまり中心のパワーが最も大きく中心から離れるのに従ってパワーが小さくなる。同時に光源部10側の曲率半径が、反対側より小さくなるように、したがって、光源部10側のパワーが反対側より大きくなるように設定されている。
【0023】
補正レンズ51〜54は、副走査方向のパワーの主走査方向における分布が面中心に対して対称な面のみで構成される。また、補正レンズ51〜54の一面は、副走査方向の断面の傾きが主走査方向の位置により変化し、副走査方向に対して垂直で面中心を含む平面に関して非対称な形状を有するアナモフィック非球面である。この非球面は、面中心を原点として含んで走査レンズの光軸と直交する基準平面からのサグ量が主走査方向・副走査方向それぞれの面中心からの距離に関する二次元多項式で表現される二次元多項式非球面であり、その形状は、面中心を通る副走査方向の境界線を境に対称である。二次元多項式非球面の副走査方向の断面の傾きは、面中心からの主走査方向の距離が大きくなるにしたがって増加するよう設定されている。
【0024】
外側の光束L1,L4が入射する補正レンズ51,54は、同一設計のレンズであり、これを光軸(反射面を展開して考えたときの走査レンズ30の光軸)に対して対称に、すなわち、光軸を中心に180°回転させて配置している。また、内側の光束L2,L3が入射する補正レンズ52,53も、同一設計のレンズであり、これを光軸を中心に180°回転させて配置している。ただし、外側の光束と内側の光束とでは光軸に対する角度が異なるため、補正レンズ51,54と補正レンズ52,53とは異なる設計である。すなわち、補正レンズとしては、2種類のレンズを2個ずつ用意すればよい。なお、補正レンズの設計が異なるのは二次元多項式非球面のみであり、他方の面は4つの補正レンズでいずれも共通である。
【0025】
補正レンズ51〜54は、入射角度の異なる各光束について専用の設計にすることもできるが、上記のように2つずつ同一のレンズを180度回転させて利用できた方が部品の種類を削減できるために望ましい。ただし、このように同一構成の補正レンズを対称に配置して用いるためには、主走査方向に関して非対称性を持たせることができず、補正レンズにより走査線の湾曲を補正したとしても、傾きが残存する。そこで、実施形態の走査光学系は、走査レンズ30に主走査方向に非対称なパワー配分を有する面を設けてボウの非対称性を補正している。
【0026】
次に、図1に示したタンデム走査光学系の具体的な実施例を4例説明する。なお、以下の実施例では、ミラー40,41を省略し、光路を展開して説明する。
【0027】
【実施例1】
図2〜図4は、実施例1の走査光学系を示し、図2は主走査方向の説明図、図3は外側の光束L1の光路を示す副走査方向の説明図、図4は内側の光束L2の光路を示す副走査方向の説明図である。実施例1の走査光学系は、走査レンズ30が第1レンズ31と第2レンズ32との2枚構成であり、第1レンズ31がプラスチック、第2レンズ32がガラス、そして、補正レンズ51〜54がプラスチックにより形成されている。
【0028】
表1は、実施例1の走査光学系におけるシリンドリカルレンズ13より感光体ドラム61〜64側の構成を示す。表中の記号ryは主走査方向の曲率半径(単位:mm)、rzは副走査方向の曲率半径(回転対称面の場合には省略、単位:mm)、dは面間の光軸上の距離(単位:mm)、nは設計波長780nmでの屈折率、DECZは反射面を展開して考えたときの走査レンズ30の光軸を基準にした各面の副走査方向への偏心(単位:mm)である。入射角度は、各光束の中心軸がポリゴンミラー20に入射する際に反射面の法線に対してなす副走査方向の角度(主走査方向に対して垂直な平面に投影した際の角度)である。
【0029】
【表1】
【0030】
第1面はシリンドリカル面、第2面、第3面は平面、第4面は回転対称非球面、第5面はアナモフィック非球面、第6面は平面、第7面は球面、第8面、第11面は二次元多項式非球面、第9面、第12面は球面である。
【0031】
回転対称非球面は、光軸からの距離がhとなる非球面上の座標点の非球面の光軸上での接平面からの距離(サグ量)をX(h)、非球面の光軸上での曲率(1/r)をC、円錐係数をκ、4次、6次の非球面係数をA4,A6として、以下の式で表される。表1における回転対称非球面の曲率半径は、光軸上の曲率半径であり、円錐係数、非球面係数は表2に示される。
【0032】
【数1】
【0033】
【表2】
【0034】
アナモフィック非球面は、面上で光軸を通る主走査方向の曲線を想定した際に、光軸からの主走査方向の距離がyとなる上記曲線上の座標点での光軸上の接線からの距離(サグ量)をX(y)、当該座標点でこの曲線に接する副走査方向の円弧の曲率をCz(y)として、以下の式で定義される。
【0035】
【数2】
【0036】
式中、Cは主走査方向の曲率、κは円錐係数、AMmは主走査方向の曲率を定義するm 次の非球面係数、Cz0は光軸上での副走査方向の曲率(=1/rz)、ASnは副走査方向の曲率を定義するn次の非球面係数である。第5面を定義する各係数の値は、表3に示されている。
【0037】
【表3】
【0038】
二次元多項式非球面は、面中心で接する平面上での主走査方向の距離y、副走査方向の距離zの点(y,z)におけるサグ量X(y,z)として、以下の二次元多項式により表される。ここで、Cは面中心における主走査方向の曲率(1/ry)、κは円錐係数、hは面中心からの距離(=(y2+z2)1/2)、Bmnは係数(mは主走査方向,nは副走査方向に関する次数)である。この二次元多項式は、回転非対称な光学曲面を表す一般式である。Bmnのnが奇数の場合の値を0以外の値にすると、面形状は副走査方向に対して垂直で面中心を含む平面に関して非対称となる。
【0039】
【数3】
【0040】
外側光束用の補正レンズ51に形成された二次元多項式非球面を定義する係数の値を表4、内側光束用の補正レンズ52に形成された二次元多項式非球面を定義する係数の値を表5に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
上記の実施例1の走査光学系において、ポリゴンミラー20の回転に伴う偏向点変化は、図5に示すとおりであり、主走査方向について光軸に関して非対称となる。また、光束がポリゴンミラー20の回転軸に対して垂直な平面に対して斜めにポリゴンミラー20に入射することにより生じる走査線の湾曲は、偏向点変化の非対称性の影響を受けて、走査レンズ30の第1レンズ31のポリゴンミラー20側のレンズ面上では図6に示すように光軸に対して非対称に変化する。なお、図6は外側の光束L1の軌跡を示している。
【0044】
実施例1では、走査レンズ30の第1レンズ31の感光体ドラム側の面、すなわち第5面の副走査方向のパワーの主走査方向における分布を、図7に示すように光軸に対して非対称に設定することにより、走査線の湾曲の非対称性を補正しており、その結果、感光体ドラム面上での走査線湾曲(ボウ)は、図8に示すように低く抑えられる。図8(A)は外側の光学系の光束L1に対する走査線、図8(B)は内側の光学系の光束L2に対する走査線をそれぞれ示している。図8の各グラフの縦軸は主走査方向の走査位置、横軸は収差量を示し、単位はいずれもmmである。
【0045】
図9は、走査レンズ30に非対称成分を導入しない比較例の走査線を示し、図9(A)は外側の光学系の光束L1に対する走査線、図9(B)は内側の光学系の光束L2に対する走査線をそれぞれ示している。比較例は、実施例1の走査レンズ30の第1レンズ31の感光体ドラム側の面、すなわち第5面の副走査方向のパワーの主走査方向における分布を光軸に対して対称に設定したものである。すなわち、アナモフィック非球面を表す副走査方向の係数ASの奇数次項AS1, AS3, AS5を全て0にして定義される面を用いている。他の構成は実施例1と同一である。図9に示されるように、走査レンズ30に非対称成分を導入しないと、走査線の湾曲はある程度補正できても、傾きを補正することができない。
【0046】
図10〜図13は、実施例1の走査光学系の他の収差を示す。図10はfθ特性、図11は像面湾曲(M:主走査方向、S:副走査方向)、図12はFナンバーの変化(M:主走査方向、S:副走査方向)、図13は波面収差を示し、各図とも(A)は外側の光束L1が通る光学系の収差、(B)は内側の光束L2が通る光学系の収差を示す。各グラフとも縦軸は主走査方向の走査位置(単位:mm)、横軸は収差量を示し、図10〜図11の横軸の単位はmm、図12の横軸の単位は%、図13の横軸の単位は波長である。
【0047】
【実施例2】
図14〜図16は、実施例2の走査光学系を示し、図14は主走査方向の説明図、図15は外側の光束L1の光路を示す副走査方向の説明図、図16は内側の光束L2の光路を示す副走査方向の説明図である。実施例2の走査光学系は、走査レンズ30が第1レンズ31と第2レンズ32との2枚構成であり、第1レンズ31、第2レンズ32、そして、補正レンズ51〜54の全てがプラスチックにより形成されている。表6は、実施例2の走査光学系におけるシリンドリカルレンズ13より感光体ドラム61〜64側の構成を示す。
【0048】
【表6】
【0049】
第1面はシリンドリカル面、第2面、第3面は平面、第4面は回転対称非球面、第5面は球面、第6面は平面、第7面はアナモフィック非球面、第8面、第11面は二次元多項式非球面、第9面、第12面は球面である。第4面の係数は表7、第7面の係数は表8、第8面の係数は表9、第11面の係数は表10にそれぞれ示される。
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
【表9】
【0053】
【表10】
【0054】
実施例2では、走査レンズ30の第2レンズ32の感光体ドラム側の面、すなわち第7面の副走査方向のパワーの主走査方向における分布を、図17に示すように光軸に対して非対称に設定することにより、走査線の湾曲の非対称性を補正しており、その結果、感光体ドラム面上での走査線湾曲(ボウ)は、図18に示すように低く抑えられる。図18(A)は外側の光学系の光束L1に対する走査線、図18(B)は内側の光学系の光束L2に対する走査線をそれぞれ示している。
【0055】
図19〜図22は、実施例2の走査光学系の他の収差を示す。図19はfθ特性、図20は像面湾曲(M:主走査方向、S:副走査方向)、図21はFナンバーの変化(M:主走査方向、S:副走査方向)、図22は波面収差を示し、各図とも(A)は外側の光束L1が通る光学系の収差、(B)は内側の光束L2が通る光学系の収差を示す。
【0056】
【実施例3】
図23〜図25は、実施例3の走査光学系を示し、図23は主走査方向の説明図、図24は外側の光束L1の光路を示す副走査方向の説明図、図25は内側の光束L2の光路を示す副走査方向の説明図である。実施例3の走査光学系は、走査レンズ30が1枚構成であり、この走査レンズと補正レンズ51〜54とが共にプラスチックにより形成されている。表11は、実施例3の走査光学系におけるシリンドリカルレンズ13より感光体ドラム61〜64側の構成を示す。
【0057】
【表11】
【0058】
第1面はシリンドリカル面、第2面、第3面は平面、第4面は球面、第5面はアナモフィック非球面、第6面、第9面は二次元多項式非球面、第7面、第10面は球面である。第5面の係数は表12、第6面の係数は表13、第9面の係数は表14にそれぞれ示される。
【0059】
【表12】
【0060】
【表13】
【0061】
【表14】
【0062】
実施例3では、走査レンズ30の感光体ドラム側の面、すなわち第5面の副走査方向のパワーの主走査方向における分布を、図26に示すように光軸に対して非対称に設定することにより、走査線の湾曲の非対称性を補正しており、その結果、感光体ドラム面上での走査線湾曲(ボウ)は、図27に示すように低く抑えられる。図27(A)は外側の光学系の光束L1に対する走査線、図27(B)は内側の光学系の光束L2に対する走査線をそれぞれ示している。
【0063】
図28〜図31は、実施例3の走査光学系の他の収差を示す。図28はfθ特性、図29は像面湾曲(M:主走査方向、S:副走査方向)、図30はFナンバーの変化(M:主走査方向、S:副走査方向)、図31は波面収差を示し、各図とも(A)は外側の光束L1が通る光学系の収差、(B)は内側の光束L2が通る光学系の収差を示す。
【0064】
【実施例4】
図32〜図34は、実施例4の走査光学系を示し、図32は主走査方向の説明図、図33は外側の光束L1の光路を示す副走査方向の説明図、図34は内側の光束L2の光路を示す副走査方向の説明図である。実施例4の走査光学系は、走査レンズ30が第1レンズ31と第2レンズ32との2枚構成であり、第1レンズ31がプラスチック、第2レンズ32がガラス、そして、補正レンズ51−54がプラスチックにより形成されている。表15は、実施例4の走査光学系におけるシリンドリカルレンズ13より感光体ドラム61〜64側の構成を示す。
【0065】
【表15】
【0066】
第1面はシリンドリカル面、第2面、第3面は平面、第4面は回転対称非球面、第5面はアナモフィック非球面、第6面は平面、第7面、第8面、第11面は球面、、第9面、第12面は二次元多項式非球面である。第4面の係数は表16、第5面の係数は表17、第9面の係数は表18、第12面の係数は表19にそれぞれ示される。
【0067】
【表16】
【0068】
【表17】
【0069】
【表18】
【0070】
【表19】
【0071】
実施例4では、走査レンズ30の第1レンズ31の感光体ドラム側の面、すなわち第5面の副走査方向のパワーの主走査方向における分布を、図35に示すように光軸に対して非対称に設定することにより、走査線の湾曲の非対称性を補正しており、その結果、感光体ドラム面上での走査線湾曲(ボウ)は、図36に示すように低く抑えられる。図36(A)は外側の光学系の光束L1に対する走査線、図36(B)は内側の光学系の光束L2に対する走査線をそれぞれ示している。
【0072】
図37〜図40は、実施例4の走査光学系の他の収差を示す。図37はfθ特性、図38は像面湾曲(M:主走査方向、S:副走査方向)、図39はFナンバーの変化(M:主走査方向、S:副走査方向)、図40は波面収差を示し、各図とも(A)は外側の光束L1が通る光学系の収差、(B)は内側の光束L2が通る光学系の収差を示す。
【0073】
次に、各実施例が前述した副走査方向の曲率半径の主走査方向における分布の条件、
|Rz(0)|<|Rz(−Y)|<|Rz(Y)|
を満たしていることを説明する。以下の表20は、走査レンズ30の光軸Axを基準として光源部10からの光束が入射する−方向と、逆側である+方向とについて、光軸からの距離Y=35mmの位置での副走査方向の曲率半径Rz(−35)、Rz(35)、および光軸Ax上での副走査方向の曲率半径Rz(0)のそれぞれの絶対値を各実施例について示す。
【0074】
【表20】
【0075】
表20に示すように、いずれの実施例も上述した条件を満たしている。このように、副走査方向の曲率半径、すなわちパワーに主走査方向に関する非対称性を持たせることにより、偏向点変化による走査線の傾きを補正することができる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、光束がポリゴンミラーに対して副走査方向において斜めに入射する走査光学系において、走査レンズの一面を副走査方向のパワーの主走査方向における分布が光軸に対して非対称なアナモフィック非球面とすることにより、光源部からの光束を主走査方向においてポリゴンミラーによる光束の走査範囲外から入射させることにより生じる偏向点変化に起因する走査線の傾きを補正することができる。したがって、複数の光束を利用するタンデム方式やマルチビーム方式の走査光学系では、ポリゴンミラーへの副走査方向の入射角度の符号が異なる各光束により形成される走査線の方向を精度よく揃えることができ、カラープリンターでの色ズレの発生を防ぐことができる。
【0077】
また、走査レンズに主走査方向の非対称性を持たせることにより、補正レンズは主走査方向に関して対称形状にすることができる。したがって、ポリゴンミラーに対して複数の光束を入射させる場合、副走査方向に関する入射角度の絶対値が等しく符号が異なる光束については、同一形状の補正レンズを180°回転させて利用することができ、それぞれの光束について別形状の補正レンズを用いるよりも部品の種類を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の走査光学系の概要を示す副走査方向の断面内の説明図である。
【図2】 実施例1の走査光学系の主走査方向の説明図である。
【図3】 実施例1の走査光学系の外側の光束の光路を示す副走査方向の説明図である。
【図4】 実施例1の走査光学系の内側の光束の光路を示す副走査方向の説明図である。
【図5】 実施例1の走査光学系の偏向点変化を示すグラフである。
【図6】 実施例1の走査光学系の走査レンズの第1面上における走査線の湾曲を示すグラフである。
【図7】 実施例1の走査光学系の走査レンズに含まれるアナモフィック非球面の副走査方向の曲率半径の分布を示すグラフである。
【図8】 実施例1の走査光学系のボウを示すグラフである。
【図9】 比較例の走査光学系のボウを示すグラフである。
【図10】 実施例1の走査光学系のfθ特性を示すグラフである。
【図11】 実施例1の走査光学系の像面湾曲を示すグラフである。
【図12】 実施例1の走査光学系のFナンバーの変化を示すグラフである。
【図13】 実施例1の走査光学系の波面収差を示すグラフである。
【図14】 実施例2の走査光学系の主走査方向の説明図である。
【図15】 実施例2の走査光学系の外側の光束の光路を示す副走査方向の説明図である。
【図16】 実施例2の走査光学系の内側の光束の光路を示す副走査方向の説明図である。
【図17】 実施例2の走査光学系の走査レンズに含まれるアナモフィック非球面の副走査方向の曲率半径の分布を示すグラフである。
【図18】 実施例2の走査光学系のボウを示すグラフである。
【図19】 実施例2の走査光学系のfθ特性を示すグラフである。
【図20】 実施例2の走査光学系の像面湾曲を示すグラフである。
【図21】 実施例2の走査光学系のFナンバーの変化を示すグラフである。
【図22】 実施例2の走査光学系の波面収差を示すグラフである。
【図23】 実施例3の走査光学系の主走査方向の説明図である。
【図24】 実施例3の走査光学系の外側の光束の光路を示す副走査方向の説明図である。
【図25】 実施例3の走査光学系の内側の光束の光路を示す副走査方向の説明図である。
【図26】 実施例3の走査光学系の走査レンズに含まれるアナモフィック非球面の副走査方向の曲率半径の分布を示すグラフである。
【図27】 実施例3の走査光学系のボウを示すグラフである。
【図28】 実施例3の走査光学系のfθ特性を示すグラフである。
【図29】 実施例3の走査光学系の像面湾曲を示すグラフである。
【図30】 実施例3の走査光学系のFナンバーの変化を示すグラフである。
【図31】 実施例3の走査光学系の波面収差を示すグラフである。
【図32】 実施例4の走査光学系の主走査方向の説明図である。
【図33】 実施例4の走査光学系の外側の光束の光路を示す副走査方向の説明図である。
【図34】 実施例4の走査光学系の内側の光束の光路を示す副走査方向の説明図である。
【図35】 実施例4の走査光学系の走査レンズに含まれるアナモフィック非球面の副走査方向の曲率半径の分布を示すグラフである。
【図36】 実施例4の走査光学系のボウを示すグラフである。
【図37】 実施例4の走査光学系のfθ特性を示すグラフである。
【図38】 実施例4の走査光学系の像面湾曲を示すグラフである。
【図39】 実施例4の走査光学系のFナンバーの変化を示すグラフである。
【図40】 実施例4の走査光学系の波面収差を示すグラフである。
【符号の説明】
10 光源部
11 半導体レーザー
12 コリメートレンズ
13 シリンドリカルレンズ
20 ポリゴンミラー
30 走査レンズ
51〜54 補正レンズ
61〜64 感光体ドラム
Claims (7)
- 光束を発生する光源部と、
複数の反射面を有し、回転駆動されることにより前記光源部から発して入射する光束を反射、偏向させるポリゴンミラーと、
該ポリゴンミラーにより反射された光束を被走査面上で主走査方向に走査するスポットとして収束させる結像光学系とを備え、
前記結像光学系は、単数または複数の単レンズから構成される走査レンズと、該走査レンズより前記被走査面側に配置された像面湾曲補正用の補正レンズとを備え、
前記光源部は、主走査方向においては、前記ポリゴンミラーによる光束の走査範囲外から、副走査方向においては、前記ポリゴンミラーの回転軸に対して垂直な平面に対して斜めに、前記ポリゴンミラーに対して光束を入射させるよう配置され、
前記走査レンズの少なくとも1面は、副走査方向のパワーの主走査方向における分布が光軸に対して非対称なアナモフィック面であり、
該アナモフィック面は、主走査方向の断面形状が当該走査レンズの光軸からの主走査方向の距離の関数として定義され、副走査方向の断面形状が円弧であって、その曲率半径が前記光軸からの主走査方向の距離の関数として主走査方向の断面形状とは独立して定義されるアナモフィック非球面であり、当該アナモフィック面上における主走査方向の位置を、前記光軸からの距離をY,前記光軸を基準として前記光源部から前記ポリゴンミラーの反射面に光束が入射する側を−方向、逆側を+方向として表し、当該位置における副走査方向の曲率半径をRz(Y)として、
|Rz(0)|<|Rz(−Y)|<|Rz(+Y)|
を満たし、
前記補正レンズは、副走査方向のパワーの主走査方向における分布が面中心に対して対称な面のみで構成されることを特徴とする走査光学系。 - 前記走査レンズのアナモフィック面は、副走査方向に対して垂直で光軸を含む平面に関して対称な形状を有し、前記補正レンズは、副走査方向に対して垂直で面中心を含む平面に関して非対称な形状のアナモフィック面を含むことを特徴とする請求項1に記載の走査光学系。
- 前記補正レンズの1つの面は、副走査方向の断面の傾きが主走査方向の位置により変化し、副走査方向に対して垂直で面中心を含む平面に関して非対称な形状を有する非球面であることを特徴とする請求項1または2に記載の走査光学系。
- 前記補正レンズの非球面は、前記面中心を原点として含んで走査レンズの光軸と直交する基準平面からのサグ量が主走査方向・副走査方向それぞれの前記面中心からの距離に関する二次元多項式で表現される二次元多項式非球面であることを特徴とする請求項3に記載の走査光学系。
- 前記走査レンズのうち、少なくとも前記アナモフィック面を含むレンズ素子がプラスチックレンズであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の走査光学系。
- 前記光源部は、複数の光束を発し、前記光源部から前記ポリゴンミラーに入射する複数の光束の副走査方向の断面内での入射角度がそれぞれ異なり、前記走査レンズは、前記複数の光束に対して共通に単数配置され、前記補正レンズは、ほぼ同一の角度で前記ポリゴンミラーに入射する光束毎に複数配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の走査光学系。
- 前記光源部は、該光源部から発する複数の光束を前記ポリゴンミラーに対して副走査方向の断面内で絶対値が等しく符号が異なる入射角度で入射させ、前記入射角度の絶対値が等しく符号が異なる光束に対しては、同一形状の前記補正レンズを前記走査レンズの光軸の延長線に対して対称に配置して用いることを特徴とする請求項6に記載の走査光学系。
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