JP4171284B2 - 走査光学系 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光源から射出されたレーザー光束を、一定方向に回転する反射面を有する偏向器の当該反射面にて反射させることによって動的に偏向させ、結像光学系を透過させることによって走査対象面上に収束させて、走査対象面上に走査線を形成する走査光学系に、関する。
【0002】
【従来の技術】
走査光学系は、例えば、電子写真方式によるレーザービームプリンタや、デジタルコピー機や、レーザーファックスや、レーザープロッタにおいて、走査対象面である感光体(感光ドラム等)の表面を変調ビームによって走査するために、用いられる。
【0003】
具体的には、走査光学系は、画像情報に従ってオンオフ変調されたレーザービームをポリゴンミラーによって動的に偏向するとともに、動的に偏向されたレーザービームを結像光学系によって走査対象面上にスポット光として収束させる。これにより、走査光学系は、オンオフ変調されたスポット光を走査対象面上で主走査方向に沿って等速度で走査させ、複数のドットからなる二次元状の画像を走査対象面上に形成する。
【0004】
ところで、走査光学系においては、各光学素子の表面における不要な反射に因るゴーストを如何に除去するかが、設計上の重要事項である。このような不要な反射は、例えば、結像光学系を構成する各レンズの各レンズ面において、生じ得る。そして、何れかのレンズ面に入射したレーザー光束の一部が反射することによって生じた反射光(ゴースト光)は、当該レーザー光束のビーム軸方向及びレンズ面に対する入射角に依って定まる方向へ戻る。そして、ゴースト光が戻された方向にポリゴンミラーの各反射面が存在する場合には、ゴースト光がこの反射面によって再度反射されてしまう。
【0005】
このとき、レーザー光束を反射・偏向している反射面にゴースト光が入射したのであれば、このゴースト光はこのレーザー光束が入射してきた方向に近い方向へ反射されるので、結像光学系に再入射することはない。
【0006】
これに対して、レーザー光束を反射・偏向している反射面と隣接する反射面にゴースト光が入射した場合には、このゴースト光は結像光学系に再入射して、走査対象面である感光体に入射して、感光体を部分的に露光させてしまう可能性がある。このようなゴースト光に因る露光のムラ(ゴースト)は、走査光学系全体としての描画性能を劣化させる問題を生じる。
【0007】
図9は、後述する主走査断面における結像光学系によるゴースト発生の説明図であり、図10は、その副走査方向における説明図である。例えば、図9及び図10に示すように、結像光学系であるfθレンズ45を構成する各レンズ41,42のうち、レンズ面42aにおいてレーザー光束の一部が反射されるとする。このとき、レンズ面42aにおいて反射された反射光の一部(ゴースト光)は、レンズ41を透過して、ポリゴンミラー40のレーザー光束を反射・偏向している反射面と隣接する反射面に入射する。そして、このゴースト光は、ポリゴンミラー40によって再度反射・偏向され、fθレンズ45に再入射して走査対象面に入射し、感光体を露光させる。
【0008】
このようなゴーストを除去するには、各レンズ面での反射率をゼロにすることが本質的であるが、各レンズ面に施すコーティングの層数は、反射率をゼロに近づけようとすればするほど多くなってしまうので、コスト高騰を招いてしまう一方、コーティングによって反射率を完全にゼロにすることは不可能である。
【0009】
一方、ゴースト光を除去するために、ゴースト光を反射させるレンズ面を有するレンズを以下に述べる副走査断面内で所定角度だけ傾ける方法 (例えば、特許文献1参照)がある。また、一つのレンズのレンズ面を偏心させることによってゴースト光を除去すると同時に、当該レンズ面の偏心によって生じるBow(走査線湾曲)を別のレンズのレンズ面を偏心させることによって補正する方法(例えば、特許文献2参照)がある。
【0010】
モノクロプリンター用走査光学系の場合、1つの光束しか使用されないので、上述したような手段が有効であるといえる。例えば、図9及び図10に示されるように、ポリゴンミラー40に近接して配置されて主として主走査方向にパワーを有するレンズ41(以下「走査レンズ」という)と、このレンズよりも走査対象面寄りに配置されており、像面湾曲やfθ特性誤差などを補正する機能を持つレンズ42(以下「長尺レンズ」という)とから構成されるfθレンズ45において、長尺レンズ42の何れかの面で反射された光束がゴースト光となる場合は、ゴースト発生面を有する当該長尺レンズ42を偏心させるとともに、その際に発生するBowを補正するために走査レンズ41を偏心させることでBowを小さくすることができる。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−346553号公報
【特許文献2】
特開平7−230051号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図11の斜視図に示すような、カラープリンタ等に使用される所謂1ポリゴンタンデム走査光学系(即ち、複数の発光点から発した光束を一個のポリゴンミラーの反射面にて同時に反射させ、各光束毎に備えられた走査対象面上に収束させる走査光学系)の場合には、問題がある。図11に示されるように、このような1ポリゴンタンデム走査光学系においては、カラー画像の各色(イエロー,マゼン,シアン,ブラック)に対応した複数の光束が、ポリゴンミラー50の各反射面におけるほぼ一点にて反射され、反射後は副走査方向に拡がりながら進行するので、同じ走査レンズ51に対して副走査方向において異なる角度で入射する。その後、走査レンズ51を透過した複数の光束は、夫々に対応して備えられた折り返しミラー53,54によって反射され、夫々に対応した長尺レンズ52を透過し、夫々に対応した感光ドラム上に潜像(各色成分毎の潜像)を形成する。そのため、何れかの光束に対応して配置された長尺レンズ52の何れかのレンズ面にてゴースト光が発生する場合において、当該長尺レンズ52全体又はそのレンズ面を偏心させることによって除去し、その際に生じるBowを補正するために走査レンズ51を偏心させようとすると、当該走査レンズ51には他に複数の光束が入射しているため、ゴースト光を発生させていないその他の光束にも影響を与えてしまい、結果として走査光学系全体の性能を劣化させてしまうのである。
【0013】
また、あるレンズ面の偏心で生じたBowを補正するためにそれ以外のレンズ面を偏心させる場合、偏心させるレンズ面の形状に依存して必要な偏心量が定まるので、場合によっては、必要な偏心量が大きすぎてレンズ面の加工が困難になってしまうこともあり、更には、あるレンズ面の偏心で生じたBowがそれ以外のレンズ面を偏心させるだけでは充分に補正されないこともあった。
【0014】
そこで、本発明は、走査光学系における結像レンズのレンズ面でのレーザー光束の反射に因るゴースト光を除去しつつ、それによって生じたBowを他の面を偏心させずに軽減できる走査光学系の提供を、課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために案出された本発明による走査光学系は、複数の光源から発された複数のレーザー光束を同時に主走査方向に動的に偏向し、夫々の光束に対応する走査対象面上に収束させる走査光学系において、主走査方向に直交する副走査方向においてそれぞれ異なった角度でその反射面に入射した各レーザー光束を同時に主走査方向へ動的に偏向する偏向器と、この偏向器によって同時に偏向された各レーザー光束を夫々に対応した走査対象面上に収束させるための結像光学系とを備え、前記結像光学系は、前記偏向器によって同時に偏向された各レーザー光束が共に入射する第1レンズ群と、当該第1レンズ群を透過した各光束毎に、その光束が夫々入射する位置に配置され少なくともゴースト光を反射させるレンズ面の光学面基準軸が、前記第1レンズ群の光軸に対して副走査断面内で非平行となり、当該ゴースト光を前記第1レンズ外へ向かわせるようにチルトしているとともに、少なくとも一のレンズ面が前記チルトに因って生じたボウを補正するために主走査方向、副走査方向それぞれ、光学面基準軸からの高さに関する多項式で表現される非球面である二次元多項式非球面として形成されている第2レンズ群とからなる。
【0016】
このように構成された本発明による走査光学系では、何れかの光束に対応して設けられた第2レンズ群の何れかのレンズ面においてゴースト光となり得る反射光が生じる場合には、そのレンズ面のみ,又は、そのレンズ面を有するレンズ全体を副走査方向に偏心させて、その反射光を副走査方向に偏向させることによって、その反射光が走査レンズを通って偏向器に再入射することが防止される。一方、このようにしてレンズ面が副走査方向に偏心されることによって生じるBow(走査線湾曲)は、第2レンズ群に含まれる二次元多項式非球面(主走査方向、副走査方向それぞれ、光学面基準軸からの高さに関する多項式で表現される非球面)によって打ち消される。即ち、二次元多項式非球面は、副走査方向及び主走査方向において独立した自由度を有しているので、第2レンズ群に本来求められる像面湾曲やfθ特性誤差の補正機能を維持したまま、Bowを補正することができる。
【0017】
なお、第2レンズ群は、各光束毎に単レンズから構成されても良いし、複数枚のレンズから構成されても良い。後者の場合には、ゴースト光の偏向器への再入射を防止するために偏心されるレンズ面と二次元多項式非球面とは、同じレンズのレンズ面であっても良いが、別のレンズのレンズ面であっても良い。偏心されるレンズ面と二次元多項式非球面とが同一のレンズに形成される場合、同一のレンズの一方のレンズ面が偏心されて他方のレンズ面が二次元多項式非球面として形成されても良いし、同一のレンズ面が偏心されるとともに二次元多項式非球面として形成されても良い。
【0018】
ゴースト光となり得る反射光を生じるレンズ面を走査レンズの光学面基準軸(光軸)に対して偏心させるためにそのレンズ面を有するレンズ全体が偏心される場合には、レンズ外枠形状(コバ)の中心軸に対してレンズ面の光学面基準軸(光軸)が偏心するようにコバ取りがなされても良いし、レンズ外枠形状の中心軸とレンズ面の光学面基準(光軸)とが同軸となっているがこのレンズを走査光学系のフレームに取り付ける際にその光軸が走査レンズの光学面基準軸(光軸)に対して偏心するように取り付けられても良い。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る走査光学系の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態による走査光学系の基本構成を展開した状態を示す説明図である。本実施形態による走査光学系は、所謂1ポリゴンタンデム走査光学系であり、後述するように、同一のカラー画像信号から生成されたシアン,マゼンタ,イエロー及び黒の各色成分毎の画像信号に基づいて夫々変調された4系統のレーザー光束を同一のポリゴミラーによって同時に動的に偏向して、夫々に対応した計4個の走査対象面上を走査する光学装置である。図1は、このような機能を備えた本実施形態による走査光学系を構成する各構成要素のうち、一の色成分に関する構成のみを取り出して、光軸が一直線状となるように展開して示すものである。
【0020】
図1に示すように、この走査光学系10は、レーザー光を発するレーザー光源11,このレーザー光源11から発したレーザー光を収束するシリンドリカルレンズ12,その各側面がレーザー光を反射する反射面として形成された多角柱形状を有するとともにその中心軸13aを中心に回転するポリゴンミラー13,及び、ポリゴンミラー13により偏向された光束を収束させる結像光学系としてのfθレンズ20を、備えている。なお、以下の説明の理解を容易にするために、ポリゴンミラー13の中心軸13aに直交する面と平行な方向を「主走査方向」と定義し、中心軸13aと平行な方向を「副走査方向」と定義する。
【0021】
レーザー光源11から発したレーザー光束は、当該レーザー光源11とシリンドリカルレンズ12との間にある不図示のコリメートレンズによって平行光束とされ、シリンドリカルレンズ12によって副走査方向にのみ収束されることにより、主走査方向に延びた線像を形成する。
【0022】
ポリゴンミラー13は、その中心軸13aを中心として回転することによって、各反射面をシリンドリカルレンズ12による線像形成位置近傍に順次挿入する。従って、レーザー光束は、回転に伴ってその方向を主走査方向に振る各反射面によって反射されることにより、図1に示すように、主走査方向において動的に偏向(走査)される。このようにして動的に偏向されたレーザー光束は、fθレンズ20を透過することによって走査対象面S上に収束され、走査対象面上を主走査方向に沿ってほぼ等速度に走査される。
【0023】
なお、レーザー光源11から発せられたレーザー光束は、主走査方向においては、平行光束のままポリゴンミラー13の各反射面によって反射され、fθレンズ20によって走査対象面S上に収束されるが、副走査方向においては、副走査方向にパワーを持ったシリンドリカルレンズ12によりポリゴンミラー13の各反射面近傍で一旦収束された後に、発散光としてfθレンズ20に入射し、fθレンズ20によって走査対象面S上に再び収束される。このように、副走査方向においては、fθレンズ20によってポリゴンミラー13の各反射面と走査対象面Sとがほぼ共役関係となっているために、レーザー光束は、ポリゴンミラー13のどの反射面によって反射されても、各反射面のわずかな傾き(いわゆる「面倒れ」)の有無に拘わらず、走査対象面Sにおける同一線上を走査する。
【0024】
fθレンズ20は、第1レンズ群である一枚の走査レンズ21と、各レーザー光束に対応した第2レンズ群である長尺レンズ22とから、構成される。このうち、走査レンズ21は、主に主走査方向にレーザー光束を収束させるパワーを有するレンズであり、長尺レンズ22は、主に副走査方向にレーザー光束を収束させるパワーを有するとともに、副走査像面湾曲を補正する機能をも負担するレンズである。これらfθレンズ20を構成する各レンズ21,22の光軸は、主走査方向において同軸となっている。そして、走査レンズ21の光軸は、レーザー光源11から発して、ポリゴンミラー13の反射面の中心において反射されたレーザー光束のビーム軸とほぼ重なっている。これに対して、長尺レンズ22の第2面は、ゴースト光となり得る反射光を反射するレンズ面(即ち、副走査パワーの小さい面)であるので、そのような反射光を副走査方向に偏向して走査レンズ21外へ向かわせるために、その光学面基準軸が走査レンズ21の光軸に対して副走査方向へティルトする(換言すると、長尺レンズ22の光学面基準軸が、走査レンズ21の光軸に対して後述する副走査断面内で非平行となる)ことによって、偏心している。レーザー光束が各反射面の中央に入射する時に当該反射面の中央が存在する位置は、レーザー光束の反射点の平均位置であり、レーザー光束の動的な偏向の中心とみなすことができるので、以下、「偏向点」という。
【0025】
なお、fθレンズ20を構成する各レンズ21,22のレンズ面は、回転対称非球面でない場合もあるが、そのような形状を持つレンズ面には本来の意味での光軸を、定義することができない。そのため、以下、「光軸」との文言は、各レンズ面の面形状を式によって表現する時に設定される原点を通る軸(光学面基準軸)との意味で、用いられるものとする。
また、走査レンズ21の光軸を含みポリゴンミラー13の中心軸13aに直交する面を「主走査断面」と定義し、走査レンズ21の光軸を含み前記主走査断面に直交する面を「副走査断面」と定義する。
【0026】
走査対象面Sは、具体的には、回転ドラムの感光面(外周面)であり、この回転ドラムは、fθレンズ20の光軸に直交して主走査方向を向いた回転軸を中心として、回転する。
【0027】
以上に説明した走査光学系10の基本構成のうち、シリンドリカルレンズ12,ポリゴンミラー13及び走査レンズ21以外(即ち、レーザー光源11,長尺レンズ22,走査対象面S)は、カラー印刷のための各トナーの色,即ち、イエロー,マゼン,シアン,ブラックの各色成分毎に、備えられている。
【0028】
図2は、本実施形態の走査光学系全体(但し、レーザー光源11及びシリンドリカルレンズ12を除く)の副走査断面における構成を、上述した展開を行うことなく、実際の配置通りに示す光学構成図である。ポリゴンミラー13の各反射面に対して、4個のレーザー光源11から夫々発した各色成分に対応した4系統のレーザー光束は、互いに平行な平行光束として同一のシリンドリカルレンズ12を透過することにより、副走査方向において、互いに異なる方向から、同一の偏向点へ向かって進行する。その結果、図2に示されるように、この偏向点近傍に存在するポリゴンミラー13の各反射面によって各色成分に対応した4系統のレーザー光束は、同時に反射される。このようにして反射された各レーザー光束は、走査レンズ21の光軸P1に対して夫々別個の角度をなして拡がりながら進行し、共通の走査レンズ21に入射した後に、夫々に対応した長尺レンズ22を透過して、夫々に対応した感光ドラム60に照射される。従って、ポリゴンミラー13の一つの反射面による一回の偏向によって、4つの感光ドラム60上において同時に走査が行われる。
【0029】
なお、走査光学系10のユニットサイズをできるだけ小型化するために、図2に示すように、ポリゴンミラー13によって偏向された4本のレーザー光束の光路が、夫々、折り返しミラー23,24によって折り曲げられている。この際、各fθレンズ20を透過するレーザー光束の波長は同一であるので、各折り返しミラー23,24の位置は、各fθレンズ20の走査レンズ21から長尺レンズ22までの光路長が互いに等しくなって各fθレンズ20が互いに同一の光学特性を奏することができるよう、夫々配置されている。
【0030】
各感光ドラム60は、互いに同じ大きさの円柱形状の外形を有するように形成されており、各長尺レンズ22の光束射出側において、各長尺レンズ22から等距離の位置に、夫々配置されている。
【0031】
以上のように構成される走査光学系10が内部に組み込まれている装置,例えばカラーレーザープリンターは、各感光ドラム60を所定の回転角速度で回転させるとともに、入力される画像情報に従ってオンオフ変調した各色成分毎のレーザー光束を、走査対象面Sである各感光ドラム60の外周面(感光面)上で繰り返し走査させることにより、複数の線状のレーザースポットの軌跡(走査線)からなる二次元状の静電潜像を各走査対象面S上に描画する。そして、カラーレーザープリンターは、各感光ドラム60上に描画された静電潜像に帯電トナーを静電的に吸着させてトナー像を形成し、そのトナー像を印刷用紙に転写させる。このとき、カラーレーザープリンターは、各感光ドラム60上の対応する走査線が印刷用紙の同一線上に重なるように印刷用紙を搬送するので、画像情報に基づくカラー画像を印刷用紙に印刷することができる。
【0032】
次に、本実施形態の走査光学系10において、走査光学系における個々の色成分に対応する長尺レンズ22の第2面でのレーザー光束の反射に因るゴースト光を除去しつつ、それによって生じたBowを他の面を偏心させずに軽減するための具体的構成を、実施例を2つ挙げて説明する。
【0033】
なお、本実施形態の各実施例において長尺レンズ22の両レンズ面は、レンズ外枠形状(コバ)に対しては偏心していない。組立作業者が、一連の組立作業において、長尺レンズ22を図示せぬフレームに取り付ける時に、当該長尺レンズ22の両レンズ面が走査レンズ21の光軸に対して偏心した状態になるようにフレームに取り付けるのである。
【0034】
【実施例1】
図3及び図4は、本実施形態の第1の実施例の副走査方向における展開図である。但し、これら図3及び図4において、一点鎖線A1は走査レンズ21における光学面基準軸を示し、一点鎖線A2はA1を所定量平行移動(シフト)させた軸を示す。また、図が煩雑となるのを避けるために、レーザー光源11、からポリゴンミラー13までの間におけるレーザー光束及び長尺レンズ22を透過した正規光束については省略している。
【0035】
実施例1において、長尺レンズ22の第2面は、回転対称面であり、その光学面基準軸が走査レンズ21の光軸に対して副走査方向へティルト(ティルト量は−10°)することによって、偏心している。なお、ティルト量は、図3及び図4の紙面上において走査レンズ21の光学面基準軸A1に対して時計方向に傾いている時に負,反時計方向に傾いている時に正の符号をとる角度である。その結果、長尺レンズ22の第2面で反射した光束は、副走査方向において走査レンズ21の外側を通過するようになるので、ポリゴンミラー13には入射しない。
【0036】
また、長尺レンズ22の第1面には、第2面の偏心で生じたBowを補正するために、二次元多項式非球面(即ち、主走査方向,副走査方向それぞれの高さに関する多項式で表現される非球面)が、用いられている。そして、この第1面には、強い副走査方向のパワーが与えられているため、この第1面自体によって反射された光束も、図4に示すように副走査方向において大きく発散されるので、ゴースト光とはならない。
【0037】
以下、実施例1における具体的な設計数値をあげる。
実施例1では、fθレンズ20全体としての焦点距離は200mmであり、走査対象面S上での走査幅(レーザー光束が走査される主走査方向幅)は216mmであり、設計波長は780nmであり、主走査方向においてポリゴンミラー13に入射するレーザー光束と走査レンズ21の光軸とがなす角度(即ち、「偏向角」のことであり、主走査断面内において、走査レンズ21の光学面基準軸に対してレーザー光束が時計方向に角度をなす時に負,反時計方向に角度をなす時に正の符号をとる)は、−65.0°であり、ポリゴンミラー13の各反射面に入射するレーザー光束(即ち、ゴースト光を生じる長尺レンズ22に入射するレーザー光束)の副走査方向における入射角は−0.95°(副走査断面内において、走査レンズ21の光学面基準軸に対してレーザー光束が時計方向に角度をなす時に負,反時計方向に角度をなす時に正の符号をとる)である。
【0038】
実施例1におけるシリンドリカルレンズ12から走査対象面Sに至る光路上(即ち、走査レンズ21の光軸上)における各面の具体的数値構成を、表1に示す。但し、長尺レンズ22の光軸は走査レンズ21の光軸に対して副走査方向に偏心しているので、長尺レンズ22の各面については、その光軸に対する近軸条件が示されている。
【0039】
【表1】
Figure 0004171284
表1において、Noは面番号であり、No1及びNo2がシリンドリカルレンズ12の前面及び後面,No3がポリゴンミラー13の各反射面,No4及びNo5が走査レンズ21の第1面及び第2面,No6及びNo7が長尺レンズ22の第1面及び第2面,No8が走査対象面Sである。また、表1において、記号Ryは、主走査方向における曲率半径(単位[mm])である。同様に、記号Rzは、副走査方向における曲率半径(単位[mm])であるが、Ryと同じ場合(即ち、その面の形状が回転対称形状である場合)には省略される。また、表1において、記号Dは光軸(ビーム軸)上における次の面までの距離(単位[mm])であり、記号Nは、次の面までの間の媒質の設計波長に対する屈折率(空気については省略)である。また、表1において、記号DECZは、前の面に対する副走査方向への光学面基準軸軸位置のズレ(シフト)量(単位[mm])であり、図3及び図4の上方 (即ち、副走査方向においてレーザー光源11がある側とは逆側) へシフトしている場合に正の符号をとる。
【0040】
表1から明らかなように、シリンドリカルレンズ12の前面はシリンドリカル面であり、後面は平面である。また、走査レンズ12の第1面と長尺レンズ22の第2面は回転対称面である。
【0041】
走査レンズ21の第2面は、アナモフィック非球面(即ち、主走査断面は光軸からの主走査方向の関数,副走査断面は曲率が光軸からの主走査方向の距離の関数として、独立に定義される非球面)である。従って、その主走査方向における形状は、光軸からの高さ(y)の点における光軸での接平面からのサグ量X(y)として、下記式(1)により表され、主走査方向の各高さ(y)での副走査方向における形状は、円弧の曲率1/[Rz(y)]として、下記式(2)により表される。
Figure 0004171284
これら式(1),(2)において、Ry及びRzは夫々表1に挙げられた主走査方向及び副走査方向における近軸曲率半径、κは円錐係数、AM1,AM2,AM3,AM4,AM5,AM6,AM7,AM8…は夫々主走査方向に関する1次,2次,3次,4次,5次,6次,7次,8次…の非球面係数であり、AS1,AS2,AS3,AS4,AS5,AS6,AS7,AS8…は夫々副走査方向に関する1次,2次,3次,4次,5次,6次,7次,8次…の非球面係数である。実施例1において走査レンズ21の第2面の具体的形状を特定するためにこれら各式(1),(2)に適用される各係数を、表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0004171284
像面湾曲補正レンズ22の第1面は、二次元多項式非球面である。従って、その形状は、主走査方向及び副走査方向の光軸からの高さが夫々(y),(z)の点における光軸での接平面からのサグ量(y,z)として、下記式(3)により表される。
X(y,z)=1/Ry・(y2+z2)/[1+√[1−(κ+1)・
(y2+z2)/Ry2]]+Σbmnym ……(3)
式(3)において、Ryは表1に挙げられた主走査方向における近軸曲率半径、κは円錐係数、Bmnは主走査方向における次数がm次であって副走査方向における次数がn次である非球面係数である。実施例1において像面湾曲補正レンズ22の第1面の具体的形状を特定するために式(3)に適用される各係数を表3に示す。
【0043】
【表3】
Figure 0004171284
これにより、像面湾曲補正レンズ22第1面の二次元多項式非球面は主走査方向に光軸から離れるに従って面の法線と光軸とのなす角が大きくなるような形状となる。
なお、図5は、実施例1における走査線湾曲(Bow)を示すグラフ図である。図5の縦軸は主走査方向の像高Y(単位:mm)、横軸は副走査方向へのスポットの位置ズレ量(収差量(単位:mm))を示しており、一点鎖線が実際の走査線が描くラインである。図5より、走査光学系10が実施例1のように構成されると良好にBowが補正されることが分かる。
【0044】
【実施例2】
図6及び図7は、本実施形態の第2の実施例の副走査方向における展開図である。但し、これら図6及び図7においては、一点鎖線A3は走査レンズ21における光学面基準軸を示し、一点鎖線A4はA3を所定量平行移動(シフト)させた軸を示す。また、図が煩雑となるのを避けるために、レーザー光源11からポリゴンミラー13までの間におけるレーザー光束及び、長尺レンズ22を透過した正規光束については省略している。
【0045】
実施例2において、長尺レンズ22の第2面は、トーリック面であり、その光学面基準軸が走査レンズ21の光軸(又は光学基準軸)に対して副走査方向へティルト(ティルト量は−10°)することによって、偏心している。その結果、長尺レンズ22の第2面で反射した光束は、副走査方向において走査レンズ21の外側を通過するようになるので、ポリゴンミラー13には入射しない。
【0046】
また、実施例1と同様に、長尺レンズ22の第1面には、第2面の偏心で生じたBowを補正するために二次元多項式非球面が用いられている。そして、この第1面には、強い副走査パワーが与えられているため、この第1面自体によって反射された光束も、図に示すように副走査方向において大きく発散されるので、ゴースト光とはならない。なお、実施例2において、長尺レンズ22の第1面と第2面の副走査パワーは、略一致している。
【0047】
以下、実施例2における具体的な設計数値をあげる。
実施例2では、fθレンズ20全体としての焦点距離は200mmであり、走査対象面S上での走査幅(レーザー光束が走査される主走査方向幅)は216mmであり、設計波長は780nmであり、主走査方向においてポリゴンミラー13に入射するレーザー光束と走査レンズ21の光軸とがなす角度(即ち、偏向角)は、−65.0°であり、ポリゴンミラー13の各反射面に入射するレーザー光束(即ち、ゴースト光を生じる長尺レンズ22に入射するレーザー光束)の副走査方向における入射角は−0.95°である。
【0048】
実施例2におけるシリンドリカルレンズ12から走査対象面Sに至る光路上(即ち、走査レンズ21の光軸上)における各面の具体的数値構成を、表4に示す。表4における各記号の意味は、上述した表1のものと同じである。
【0049】
【表4】
Figure 0004171284
表4から明らかなように、シリンドリカルレンズ12の前面はシリンドリカル面であり、後面は平面である。また、走査レンズ21の第1面は回転対面である。長尺レンズ22の第2面はトーリック面である。
【0050】
走査レンズ21の第2面は、アナモフィック非球面である。実施例2において走査レンズ21の第2面の具体的形状を特定するために上記各式(1),(2)に適用される各係数を、表5に示す。
【0051】
【表5】
Figure 0004171284
像面湾曲補正レンズ22の第1面は、二次元多項式非球面である。実施例2において長尺レンズ22の第1面の具体的形状を特定するために上記式(3)に適用される各係数を、表6に示す。
【0052】
【表6】
Figure 0004171284
これにより、像面湾曲補正レンズ22第1面の二次元多項式非球面は主走査方向に光軸から離れるに従って面の法線と光軸とのなす角が大きくなるような形状となる。
なお、図8は、実施例2における走査線湾曲(Bow)を示すグラフ図である。図8の縦横両軸の意義は図5のものと同じである。走査光学系10が実施例2のように構成されると良好にBowが補正されることが分かる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、走査光学系における結像レンズのレンズ面でのレーザー光束の反射に因るゴースト光を除去しつつ、それによって生じたBowを他の面を偏心させずに軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態による走査光学系を展開した状態を示す概略光学構成図
【図2】 ポリゴンミラーから各感光ドラムまでの走査光学系の副走査方向における光学構成を示す光学構成図
【図3】 実施例1の光学構成を示す副走査方向における光学構成図
【図4】 実施例1の光学構成を示す副走査方向における光学構成図
【図5】 実施例1の走査線湾曲を示すグラフ図
【図6】 実施例2の光学構成を示す副走査方向における光学構成図
【図7】 実施例2の光学構成を示す副走査方向における光学構成図
【図8】 実施例2の走査線湾曲を示すグラフ図
【図9】 従来の走査光学系を展開した状態を示す概略光学構成図
【図10】 従来の走査光学系の光学構成を示す副走査方向における光学構成図
【図11】 1ポリゴンタンデム走査光学系を示す斜視図
【符号の説明】
10 走査光学系
11 レーザー光源
12 シリンドリカルレンズ
13 ポリゴンミラー
20 結像光学系(fθレンズ)
21 第1レンズ群(走査レンズ)
22 第2レンズ群(長尺レンズ)
S 走査対象面

Claims (4)

  1. 複数の光源から発された複数のレーザー光束を同時に主走査方向に動的に偏向し、夫々の光束に対応する走査対象面上に収束させる走査光学系において、
    主走査方向に直交する副走査方向においてそれぞれ異なった角度でその反射面に入射した各レーザー光束を同時に主走査方向へ動的に偏向する偏向器と、
    この偏向器によって同時に偏向された各レーザー光束を夫々に対応した走査対象面上に収束させるための結像光学系とを備え、
    前記結像光学系は、
    前記偏向器によって同時に偏向された各レーザー光束が共に入射する第1レンズ群と、
    当該第1レンズ群を透過した各光束毎に、その光束が夫々入射する位置に配置され少なくともゴースト光を反射させるレンズ面の光学面基準軸が、前記第1レンズ群の光軸に対して副走査断面内で非平行となり、当該ゴースト光を前記第1レンズ外へ向かわせるようにチルトしているとともに、少なくとも一のレンズ面が前記チルトに因って生じたボウを補正するために主走査方向、副走査方向それぞれ、光学面基準軸からの高さに関する多項式で表現される非球面である二次元多項式非球面として形成されている第2レンズ群と
    からなることを特徴とする走査光学系。
  2. 前記第2レンズ群を構成するレンズの前記ゴースト光を反射させるレンズ面の光学面基準軸と、当該レンズ群の他の面の光学面基準軸とは同軸であることを特徴とする請求項1記載の走査光学系。
  3. 前記第2レンズ群を構成する前記ゴースト光を反射させる面を有するレンズの前記2次元多項式非球面の副走査方向のパワーが、当該レンズの他の面の副走査方向のパワーよりも大きいことを特徴とする請求項1または2記載の走査光学系。
  4. 前記第2レンズ群を構成する前記ゴースト光を反射させる面を有するレンズの両レンズ面の副走査方向のパワーがほぼ同じであることを特徴とする請求項1または2記載の走査光学系。
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