JP4441947B2 - 転がり軸受 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受に係わり、特に金属バリなどの異物や泥水が混入し潤滑条件が劣化やすい環境下、例えば自動車、農業機械、建設機械および鉄鋼機械等のトランスミッションや無段変速機用(トロイダルCVT、ベルトCVT)エンジン補機用( オルタネータ、コンブレッサー、水ポンプ等)に使用される転がり軸受に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、転がり軸受に使用される材料として、JISに規定された高炭素クロム軸受鋼、とくにSUJ2が一般的に用いられ、焼入れ・焼戻し処理を行い、表面硬さHRC(ロックウェル硬さ)を約62、残留オ一ステナイト量を約10wt%として使用されている。
【0003】
しかしながら、この従来転がり軸受は、軸受潤滑油中に異物が混入すると、転がり寿命がクリーン潤滑下と比較して著しく低下する。この潤滑油中には金属の切粉、削り屑、バリ、磨耗粉及び泥水などが混入している。このような異物が混入した転がり軸受の使用環境下では、この異物が、転がり軸受の軌道輪及び転動体の軌道面に圧痕( 損傷) や錆びを生じさせ、これを起点としてフレーキングが発生し、転がり軸受の寿命を著しく低下させているのが現状である。
【0004】
これらの実験的研究として、「異物混入条件と転がり疲れ寿命」(NSKテクニカルジャーナルNO.655、p17〜24、1993年)に示されるように、異物の量、異物の硬さ、異物の大きさにより、クリーン潤滑下と比較して約1/8まで転がり軸受の寿命が低下するということが挙げられる。これは、自動車の変速機用歯車などに観られるピッチングのように、軸受の軌道面が異物の侵入及び転がり疲れの影響により軌道面に数十から百μm以上の微小圧痕を生じさせ、この圧痕を起点としてフレーキングへ進展し、転がり疲れを低下させる現象を再現してしまうのである。
【0005】
この異物が混入した際の寿命延長対策として、軸受表面硬さを向上させることが考えれられる。
その対策として、例えば、酸化物形成元素を加え、炭化物を数多く析出させた析出硬化型の工具鋼(SKH、SKD)を用いて軸受を製造する従来例( 金属便覧、日本金属学会編、改定3 版p780〜797)が存在する。(以下、この従来例を先願技術1と称する。)
また、他の寿命延長対策として、特公平6−11899号公報(以下、先願技術2と称する。)の技術、特開平3−173747号公報(以下、先願技術3と称する。)の技術、特公平7−110988号公報(以下、先願技術4と称する。)の技術がある。
【0006】
先願技術2は、C=0.4〜0.8wt%、Cr=4.0〜8.0wt%、Si=0.3〜1.2wt%、Mn=1.0wt%以下、残りがFe及び不可避な不純物成分からなり、浸炭または浸炭窒化処理する技術であり、異物混入した環境下でも長寿命となり、転がり疲労寿命特性に優れた高クロム系軸受鋼となるようにしている。
【0007】
また、先願技術3は、少なくとも固定輪をマルテンサイト系ステンレス鋼とし、Cr=13〜18wt%を含む高炭素ステンレス鋼からなるグリース封入軸受が開示されている。
さらに、先願技術4は、軌道輪と転動体との少なくとも一つが、C=0.3〜0.6wt%、Cr=3.0〜14wt%を少なくとも含む合金鋼であり、且つ、浸炭またはは浸炭窒化、さらに硬化熱処理を施してなる表面層部を有しており、軌道輪と転動体との少なくとも一つの表面層部に存在する微細炭化物量が20〜50vol%であり、その表面層部内の残留オーステアイト量が10〜25vol%である転がり軸受が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先願技術1では、転走表面硬さが高くなり潤滑油中の異物による圧痕が付きにくくなるという利点がある反面、炭化物を形成する合金元素の含有量の如何によっては、析出する炭化物が粗大となるため、炭化物の回りにおいて応力集中が起こり、その部分を起点としてフレーキングが生じて寿命が低下するおそれがある。
【0009】
また、先願技術2では、浸炭又は浸炭窒化処理のように高価な熱処理が必要なのでコスト高となり、また、Crが4.0〜8.0wt%の範囲しか含有されていないので、泥水が混入した際にレース表面に数μm程度の不動態被膜しか形成されない。このため、異物圧痕により不動態被膜が破断したり、錆びが発生してピッチングを引起こす場合が考えられ、十分な効果が期待できない。
【0010】
また、先願技術3では、マルテンサイト系ステンレス鋼が焼戻しマルテンサィトの組織を有する13Cr−0.7%C鋼のSUS440A、18Cr−1%C鋼のSUS440Cや、13Cr−0.3%C鋼のSUS420J2を使用することにより、不動態被膜により耐水素脆性に対する杭性を高めるようにしているが、SUS420J2は転がり疲れに対して表面硬さHRCが52と十分でなかったり、SUS440AやSUS420J2は、微細な炭化物を形成させるVやMoが添加されておらず、必然的に転がり表面に10μmを超える粗大な共晶炭化物が析出しやすくなる。また、表面起点型の剥離を生じる問題だけではなく、不動態被膜が被断しやすくなるため耐食性が低下し、さらには、軸受生産における加工性も劣化させるといった問題がある。
【0011】
さらに、先願技術4では、浸炭や浸炭窒化といった高価な熱処理が必要となるため、更なる改良が望まれている。
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、軌道輪に強固な不動態被膜を形成し、異物や泥水が混入する潤滑状態が良好でない環境下においても早期剥離を良好に防止し、軸受寿命の大幅な延長を可能にすることができる転がり軸受を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の転がり軸受は、軌道輪と転動体とを備えた転がり軸受において、少なくとも前記軌道輪が、C=0.60〜0.95wt%、Cr=10.0〜13.0wt%、Si=0.2〜1.5wt%、Mn=0.2〜1.0wt%を含有し、且つ、Mo=0.5〜2.0wt%及びV=0.5〜2.0wt%のうち少なくとも一種を添加して50〜300nmのMo系またはV系の微細な炭化物を分散析出させ、残部がFeや不可避不純物よりなる鋼であり、熱処理において前記軌道輪への10μmを超える共晶炭化物の発生を抑制し、5〜100nmの不動態被膜を形成したことを特徴としている。
【0013】
本願発明者等は、応力が加わった状態における耐異物、耐水、長寿命の転がり軸受について種々の検討を行った結果、各元素の含有量と、軌道輪の表面硬さ、耐腐食性、焼戻し軟化抵抗性及び不動態被膜との関係について、種々の知見を得るに至り、この知見に基づき上述した特許請求の範囲に記載のような発明に到達したのである。
【0014】
本発明に用いられる含有元素の作用及び含有量の臨界的意義等について説明する。
C(炭素)は、転がり軸受として要求される表面硬さを付与する元素であり、表面硬さHRC=58以上得るためには、C=0.6wt%以上が必要である。一方、0.95wt%を超えると、マトリックスをマルテンサイト化することにより焼入れ・ 焼戻し後の硬さを向上させるが、耐食性の観点からはCは少ないほど良好である。これは、Cを多量に添加すると、製鋼時にCrが粗大な共晶炭化物を形成するため、マトリックス中のCr濃度が不足して、十分な耐食性が得られなくなるとともに、転がり寿命や靭性が低下する。特に、C=0.60〜0.95wt%であることが好ましい。
【0015】
Cr(クロム)は、鋼に耐食性を与える最も有効な元素であり、Cr=10.0wt%以上であれば良好な耐食性が得られ、5nm以上の不動態被膜を形成する。一方、Cr=13wt%を超えると耐食性がさらに向上するが、必要以上に添加するとδフェライトが生成して脆化しやすくなり、靭性を低下させたり、さらに加工性が著しく低下する。5〜100nmの強固な不動態被膜を形成するには、その上限が13wt%として十分であるため、Cr=10.0〜13.0wt%であることが好ましい。
【0016】
Mo(モリブデン)は、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗性を著しく増加させる効果があり、また転がり疲労によって生じる組織変化を遅延させる効果を有し、更に耐孔食性を改善する元素であるが、0.5wt%未満ではその効果は十分ではない。また、50〜300nmのMo系炭化物を微細に分散させるためには、0.5wt%以上必要であるが、過剰に添加すると靭性・ 加工性を低下させるので、上限を2.0wt%としてMo=0.5〜2.0wt%であることが好ましい。
【0017】
V(バナジウム)は、微細な炭化物・窒化物生成元素であり、Cr炭化物、窒化物の形成を抑制するとともに、400〜550℃での焼戻し過程において、2 次析出による硬さ向上の効果があるため、著しく強度を高める作用がある。また、10μm以上の巨大炭化物の発生を抑制するため、50〜300nmのV系炭化物を微細分散析出させるためには、0.5wt%以上必要であるが、コスト面および加工性を考慮すると上限を2.0wt%として、V=0.5〜2.0wt%であることが好ましい。
【0018】
また、Si(珪素)は、組織変化の遅延、及び焼入れ性、焼戻し軟化抵抗性を向上させる元素であるが、0.2wt%未満ではその効果は十分ではなく、1.5wt%を超えると加工性が著しく低下するため、特に、Si=0.2〜1.5wt%であることが好ましい。
Mn(マンガン)は、製鋼時の脱酸剤として必要な元素で、0.2wt%以上必要であり、多量に添加すると鍛造性や被削性を低下されるだけではなく、S、Pなどの不純物と共存して耐食性を低下させるため、その上限を1.0wt%としてMn=0.2〜1.0wt%であることが好ましい。
【0019】
さらに、O(酸素)に関しては、転がり寿命を低下させる酸化物系介在物の生成を低下されるために10ppm 以下が好ましい。S(硫黄)、P(リン)に関しても、同様に0.02wt%以下が好ましい。
ここで、例えば1000〜1200℃に加熱焼入れした後、高温焼戻し(400〜550℃)を行うと、微細なMo・V系炭化物が軌道輪に析出し、大きな共晶炭化物の発生が抑制されて強固な不動態被膜が形成されるが、若し、低温焼戻し(180〜220℃)を行っても、さほど大きな共晶炭化物が発生せず、強固な不動態被膜が形成される。
【0020】
また、軌道輪に10μm以上の粗大な共晶炭化物を生成すると、不動態被膜が形成される箇所と、不動態被膜が形成されない箇所が発生してしまい、腐食ピッチング起因の剥離や、共晶炭化物起因の剥離が発生しやすい。しかし、本発明のように、熱処理において軌道輪に10μmを超える共晶炭化物の発生を抑制すると、軌道輪に不動態被膜が均一に形成されて長寿命化が図られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
表1及び表2に、実施形態例及び比較例に用いた供試体の化学成分を示す。
【0022】
【表1】
なお、表1中の各化学成分の値は、wt%である。また、供1〜6は、本実施形態の供試体ナンバーである。
【0023】
【表2】
なお、表2中の各化学成分の値は、wt%である。また、供1〜8は、比較例の供試体ナンバーである。
【0024】
そして、実施形態及び比較例の寿命試験に際し、表1、表2で示した材料からなる内輪、外輪を有する複数種類の転がり軸受を製作した。各転がり軸受の軌道輪は、通常熱処理(1000〜1200℃で加熱焼入れ後、サブゼロ処理の実施、またはサブゼロ処理無しに所定の温度にて焼戻し) し、表面硬さをHRC55〜65、残留オーステナイト量は0.5〜15wt%、表面粗さを0.01〜0.04μmRaとした。また、各転がり軸受の転動体には、実施形態及び比較例とも同じSUJ2を用い、熱処理後の表面硬さはHRC61〜63、残留オーステナイト量は10wt%、表面粗さを0.0003〜0.010μmRaとした。
【0025】
次に、実施形態例の転がり軸受と比較例の転がり軸受との寿命試験結果について表3、表4に示す。
この寿命試験結果では、図1に示す試験機( 片持ち型寿命試験装置) 1を用いており、試験用転がり軸受としては、内輪2、外輪3、複数個の転動体4を備えた深溝玉軸受(6206タイプ) 5を採用した。そして、荷重負荷装置6による試験荷重はFr=900kgf であり、回転装置7による深溝玉軸受5の試験回転数は3900rpm であり、潤滑油としてはタービン油VG68を使用した。
【0026】
実験は、初期段階として、大きさが10〜20μmのステンレス粉を、VG68の潤滑油1000cc中に0.005g拡散させて、例えば外輪3の軌道輪表面に初期圧痕を設けておく。その後、軸受5を洗浄し内輪2及び転動体4のみを新品の軸受鋼に交換し、圧痕の付いた外輪2と新品の内輪2及び転動体4を組み込む。そして、潤滑油供給ライン8により潤滑油を所定量供給しながら10個毎の各供試体に対して耐久試験を行った。なお、潤滑油供給ライン6は、異物混入無しのVG68の潤滑油を溜めた油浴槽9中に水道水を5cc/hrずつ滴下させ、ポンプ10により油浴槽9から吸い上げた潤滑油をフィルタ11、12を通過させた後に深溝玉軸受5に供給するようにしている。
【0027】
なお、試験の終了の判定は、初期振動値の5倍となった時点にて試験を中断し、フレーキングを確認した。この時の軸受の計算寿命は45時間であり、したがって、試験打ち切り時間を計算寿命の約3倍の150時間とした。
【0028】
【表3】
γR→残留オーステナイト量 150→ … 150hrを超える寿命
○→剥離無し
【0029】
【表4】
【0030】
これら表3、表4の寿命試験結果から明らかなように、実施形態1〜3では、軸受表面硬さが、それぞれHRC60、63、31と高く、また、残留オーステナイト量γRが12、10、15wt%と高いため、異物圧痕による表面損傷度が緩和されて表面の不動態被膜の破断を抑制している。そして、微細なMo・V系炭化物が平均粒径300、215、180nmと折出しているので、5μmを超える共晶炭化物の発生が抑制されて強固な不動態被膜が5、30、15nmと均一に形成されており、試験終了後に軌道面の観察を行ったが状態は良好であり、150時間に至っても外輪剥離が生じなかった。
【0031】
実施形態4、5、6に関しては、400℃以上の高温にて焼き戻してあるため、2 次析出効果により、Mo・V系の微細炭化物がそれぞれ130、50、100nm析出し、残留オーステナイト量γRが0.5、2.0、1.0%と小さくても、軌道輪表面にシビアな初期圧痕の形成を抑制したため不動態被膜の破断を抑制している。そして、不動態被膜が100、55、70nmと均一に形成されており、試験終了後に軌道面の観察を行ったが、状態は良好であり、各試験において150 時間に至っても外輪剥離が生じなかった。
【0032】
一方、比較例1は、通常のSUJ2を用いた試験であり、残留オーステナイト量γR=7%、表面硬さHRC=62であったが、Cr量が1.5%のため不動態被膜が1nmと薄くなり、水が溜りやすい外輪負荷圏に、10/10個に腐食ピッチング起因の剥離と圧痕起点型の剥離が混在し、L10寿命が12hrと計算寿命(45hr)より短時間となった。
【0033】
比較例2、4は、Cr量がそれぞれ16.5wt%、18wt%と高いため、軸受軌道面に15μm以上の粗大な共晶炭化物が多量に生成する。そのため、不動態被膜が均一に形成しておらず、5 μm以上の不動態被膜がある箇所と、不動態被膜がない箇所が混在するため、不動態被膜の平均厚さは3nm、2nmとなる。したがって、10/10個の外輪全てに、腐食ピッチング起因の剥離と共晶炭化物起因の表面起点型剥離が発生し、L10寿命が13hr、15hrとなった。
【0034】
比較例3に関しては、Cr量が14.5wt%と高いため、10μm以上の共晶炭化物が存在しているため、平均不動態被膜厚さが100nmであったが、局部的には脆く、不動態被膜が被断しやすくなり、試験後の軌道輪には不動態被膜が残っておらず、10/10個の外輪全てに、腐食ピッチング起因の剥離が発生し、L10寿命が35hrとなった。
【0035】
比較例5に関しては、共晶炭化物径を5μm以下とし、不動態被膜厚さを55nmとしたが、Cが0.45wt%のため熱処理後の軸受表面硬さがHRC=56と低くなり、転がり疲労による塑性変形が促進され、10/10個の内外輪に剥離が生じ、L10寿命が9hrと最も短寿命となった。
比較例6に関しては、Mo・V系の205nm径とした微細炭化物が析出しているため、2μm以下の共晶炭化物となったが、Cr量が8wt%と低いため、不動態被膜が3nmと低くなり、10/10個の外輪に腐食ピッチング起因の剥離が生じ、L10寿命は29hrとなった。
【0036】
比較例7、8に関しては、C量が0.65wt%、0.75wt%と高いため、熱処理後の表面硬さがHRC=61、62と十分であり、且つCr量が12.5wt%、10.5wt%であるが、微細なMo・V系の炭化物の析出が認められず425nm、500nmと大きかったため、共晶炭化物として10μmを超えるものが確認された。そのため、不動態被膜が均一に形成しておらず、5μm以上の不動態被膜がある箇所と、不動態被膜がない箇所が混在するため、不動態被膜の平均厚さは3nmとなった。したがって、10/10個の外輪に、腐食ピッチング起因の剥離が発生し、L10寿命はそれぞれ23hr、21hrとなった。
【0037】
以上の結果より、少なくとも固定輪が、C量を0.60〜0.95wt%、Cr量を10.0〜13.0wt%含有し、0.5〜2.0wt%のMo量、又は0.5〜2.0wt%のV量のうちの少なくとも一種を添加し、50〜300nmのMo系又はV系の微細な炭化物を分散析出させ、残部がFeや不可避成分を含有し、熱処理後の表面硬さHRCを58以上とし、軌道輪に10μm以上の共晶炭化物を無くしたことにより、軌道表面に強固な5〜100nmの不動態被膜を形成し、5ppm 程度の異物の混入があっても、不動態被膜の破断を抑制するため、腐食ピッチンク・起因による剥離を防止し、長寿命軸受を提供できる。
【0038】
また、微細炭化物を分散析出させるためには、Mo、V以外に、Al、Nb、Tiなどの合金元素を添加し、鋼中に溶体化させることにより、50〜300nmの炭化物を析出させても同様の長寿効果を有する。
さらに、鋼中の水素の脱ガスを目的としてベーキングしたり、真空炉にて加熱焼入れすると、鋼中の拡散性水素量が0.1ppm 以下となるので、剥離から割れに至る要因を抑制する効果を有する。
【0039】
なお、異物の混入が多い環境下では、不動態被膜の破断を抑制するために、残留オーステナイト量γRを10〜15%にすることが好ましい。
また、異物の混入が5ppm 以下で雰囲気温度が高くなる環境下では、寸法安定性が問題となるため、残留オーステナイト量γRを2%以下にすることが好ましい。
【0040】
さらに、今回の試験において、内外輪を本発明請求範囲内の材料にて試作したが、コストの面を考えると剥離の多発する外輪のみを製作し、内輪および転動体に関しては通常の軸受用鋼を使用してもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に関わる転がり軸受によれば、軌道輪の表面硬さHRCを58以上に設定することができ、微細なMo・V系炭化物が析出して大きく共晶炭化物の発生が抑制されるので、腐食ピッチングによる早期剥離を防止し、耐磨耗性に優れた強固な不動態被膜を形成するので従来と比較して大幅に転がり寿命を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用した型持ち型寿命試験器の概要を示す図である。
【符号の説明】
1 試験機( 片持ち型寿命試験装置)
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 深溝玉軸受(転がり軸受)
6 荷重負荷装置
7 回転装置
8 潤滑油供給ライン
9 油浴槽
10 ポンプ
11、12 フィルタ
Claims (1)
- 軌道輪と転動体とを備えた転がり軸受において、少なくとも前記軌道輪が、C=0.60〜0.95wt%、Cr=10.0〜13.0wt%、Si=0.2〜1.5wt%、Mn=0.2〜1.0wt%を含有し、且つ、Mo=0.5〜2.0wt%及びV=0.5〜2.0wt%のうち少なくとも一種を添加して50〜300nmのMo系またはV系の微細な炭化物を分散析出させ、残部がFeや不可避不純物よりなる鋼であり、熱処理において前記軌道輪への10μmを超える共晶炭化物の発生を抑制し、5〜100nmの不動態被膜を形成したことを特徴とする転がり軸受。
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