JP2011220357A - 遊星歯車装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】遊星軸4と遊星歯車3と複数本のニードル5、5との組み合わせにより構成されるラジアルニードル軸受12のうち、これら各ニードル5、5の性状を適正に規制する。そして、上記遊星軸4として一般的な性状のものを使用しても、上記ラジアルニードル軸受12全体としての耐久性を十分に確保できる遊星歯車装置を実現する。
【解決手段】上記各ニードル5、5は、浸炭窒化処理されたもので、表面層部分の窒素濃度が0.2質量%以上であり、表面層に、Si・Mn系窒化物が、1%以上10%未満の面積率で存在する。又、平均粒径が0.05μm以上で1μm以下のSi・Mn系窒化物が、100μm2 当たり100個以上存在する。且つ、上記各ニードル5、5の表面層部分の残留オーステナイト量が、5〜15容量%である。
【選択図】図2
【解決手段】上記各ニードル5、5は、浸炭窒化処理されたもので、表面層部分の窒素濃度が0.2質量%以上であり、表面層に、Si・Mn系窒化物が、1%以上10%未満の面積率で存在する。又、平均粒径が0.05μm以上で1μm以下のSi・Mn系窒化物が、100μm2 当たり100個以上存在する。且つ、上記各ニードル5、5の表面層部分の残留オーステナイト量が、5〜15容量%である。
【選択図】図2
Description
本発明は、例えば自動車用自動変速機やトランスアスクルを構成する遊星歯車装置の改良に関する。具体的には、遊星軸の外周面である内輪軌道、及び、この内輪軌道と遊星歯車の内周面である外輪軌道との間に設けた各ニードルの転動面の転がり疲れ寿命を向上させる事により、優れた耐久性を得られる遊星歯車装置の実現を意図して発明したものである。
自動車用自動変速機を構成する遊星歯車装置として従来から、図1〜2に示す様な構造が広く知られている。この従来から知られた遊星歯車装置は、外周面に歯1aを形成した太陽歯車1と、この太陽歯車1と同心に配置され、内周面に歯2aを形成したリング歯車2との間に、複数個(一般的には3〜4個)の遊星歯車3、3を、円周方向に関して等間隔に配置している。そして、これら複数個の遊星歯車3、3の外周面に形成した歯3aを、上記両歯1a、2aに噛合させている。
上記複数個の遊星歯車3、3は、それぞれ遊星軸4の周囲に、それぞれ複数本のニードル5、5を介して回転自在に支持している。これら各遊星軸4の基端部(図2の左端部)は、上記太陽歯車1を中心として回転自在なキャリア6に支持固定している。図示の例では、この太陽歯車1を円筒状に形成すると共に、このキャリア6を断面L字形で全体を円環状に形成している。そして、このキャリア6の径方向内端部を構成する円筒部7を、回転軸8の外周面にスプライン係合させている。上記太陽歯車1は、この回転軸8の周囲に、この回転軸8に対する回転自在に支持している。又、上記リング歯車2は、上記太陽歯車1及びキャリア6及び回転軸8の周囲に、これら各部材1、6、8に対する回転自在に支持している。
又、上記各遊星軸4の先端部(図2の右端部)は、円輪状に形成された連結板9に結合固定する事により、これら各遊星軸4の先端部同士を連結している。又、図2に示した構造の場合、遊星軸4の外周面で、上記キャリア6と上記連結板9との間部分には、複列の(実際には軸方向に連続した)内輪軌道10、10を形成している。一方、遊星歯車3の内周面には、複列の(実際には軸方向に連続した)外輪軌道11、11を形成している。そして、これら各外輪軌道11、11と上記各内輪軌道10、10との間に、それぞれ前記各ニードル5、5から成るラジアルニードル軸受12、12を設けて、上記遊星歯車3を、上記遊星軸4の中間部周囲で連結板9とキャリア6との間部分に、回転自在に支持している。但し、上記各外輪軌道11、11と上記各内輪軌道10、10との間に軸方向寸法が長いニードルを配置して、上記各遊星軸4の周囲に上記各遊星歯車3を、単列のラジアルニードル軸受により回転自在に支持する場合もある。何れにしても、上記各遊星軸4の外周面と上記各遊星歯車3の内周面との間に設けたラジアルニードル軸受12には、この遊星軸4の内部に設けた潤滑油供給孔を通じて、潤滑油(オートマチックフルード等)を供給する様にしている。
上述の様な遊星歯車装置の運転時で、上記キャリア6が回転する場合には、上記各遊星歯車3は、自転しながら公転する。この公転運動に伴って、これら各遊星歯車3、及び、上記潤滑油供給孔を通じて上記各ラジアルニードル軸受12に供給される潤滑油に遠心力が作用する。そして、この遠心力に基づいて、このラジアルニードル軸受12に作用するラジアル荷重が、(特に大きくなるのは、動力伝達方向に対応した円周方向片側であるにしても)上記キャリア6の径方向内側で大きくなる傾向になるのに対して、上記潤滑油はこのキャリア6の径方向外側に集中する傾向になる。この為、上記ラジアルニードル軸受12に、加わるラジアル荷重に応じて(加わるラジアル荷重が大きい部分に供給量が多くなる様に)、適正量の潤滑油を供給する事は困難である。しかも、上記各遊星歯車3は、上記遠心力に基づくラジアル荷重と、上記動力伝達に基づくラジアル荷重との合力となる、大きなラジアル荷重を受けつつ、高速で回転する。この為、上記ラジアルニードル軸受12の運転条件は、非常に厳しくなる。
又、上記各遊星軸4の端部の、上記キャリア6及び上記連結板9に対する固定構造としては、図2に示す様に、上記各遊星軸4の端部に形成した受孔に固定用のピン13を挿入する構造がある。但し、この構造の場合には、上記キャリア6及び上記連結板9に上記ピン13を挿通する通孔を形成する必要上、これらキャリア6及び連結板9の板厚が増大し、重量が嵩むだけでなく、上記各孔の形成作業や上記各ピン13の加工作業並びに挿通作業が必要になる。この為、コスト低減の面、更には、自動車の低燃費化の為に重量を軽減する面から不利である。
これに対して、上記各遊星軸4の端部を径方向外方に塑性変形させて、これら各遊星軸4の端部外周面を、上記キャリア6及び上記連結板9に形成した支持孔の内周面に押し付ける、所謂かしめ付けにより上記各遊星軸4の両端部を上記キャリア6及び上記連結板9に固定すれば、コスト低減並びに重量軽減の面から、上記ピン13を使用する構造に比べて有利になる。そして、上記各遊星軸4の両端部をかしめ付けにより固定する構造を採用した場合、これら各遊星軸4を、SK5の如き炭素工具鋼(JIS G 4401)等で造り、軸方向中間部で前記各ニードル5、5が転がり接触する内輪軌道10部分に、高周波焼き入れを施して、必要な硬さ(Hv650以上)を付与する。或いは、潤滑不良等による剥離寿命が問題となる場合には、上記各遊星軸4を、SUJ2の如き高炭素クロム軸受鋼(JIS G 4805)等で造り、浸炭窒化処理等により上記内輪軌道10部分を硬化させて、この内輪軌道10部分の転がり疲れ寿命を確保していた。
但し、近年に於ける、自動車用変速機に対する性能向上の要求の高まりにより、上述の様な対策では、必ずしも十分な耐久性を確保できなくなっている。この点に就いて、以下に説明する。
先ず、近年に於いては、自動車用エンジンの出力向上と同時に、低燃費化の要求の高まりにより、自動変速機の小型化や高効率化が進められている。この為、上記各遊星軸4の回転(公転)速度が高くなり、これら各遊星軸4に加わる荷重が増大すると同時に、これら各遊星軸4を支持するラジアルニードル軸受12の温度が上昇する。しかも、ポンプロス低減の為に、このラジアルニードル軸受12に供給する潤滑油の量を削減したり、或いは、この潤滑油を低粘度化する傾向がある。この様な厳しい条件の下で、上記ラジアルニードル軸受12の耐久性確保が難しくなっている。
先ず、近年に於いては、自動車用エンジンの出力向上と同時に、低燃費化の要求の高まりにより、自動変速機の小型化や高効率化が進められている。この為、上記各遊星軸4の回転(公転)速度が高くなり、これら各遊星軸4に加わる荷重が増大すると同時に、これら各遊星軸4を支持するラジアルニードル軸受12の温度が上昇する。しかも、ポンプロス低減の為に、このラジアルニードル軸受12に供給する潤滑油の量を削減したり、或いは、この潤滑油を低粘度化する傾向がある。この様な厳しい条件の下で、上記ラジアルニードル軸受12の耐久性確保が難しくなっている。
更に、上述の様に荷重の増大と共に温度も上昇する傾向にある為、上記各遊星軸4に塑性変形が生じ易くなり、変形が生じた場合には、前記各ニードル5、5の転動面と、上記各遊星軸4の外周面である上記内輪軌道10との間で滑りが増大する。そして、この滑りに基づいて、この内輪軌道10及び上記各ニードル5、5の転動面に、摩耗や面荒れ等に基づく早期剥離が発生し易い状態となって、この面からも、上記ラジアルニードル軸受12の耐久性確保が難しくなっている。尚、転がり疲れ寿命確保の面から、前記各遊星歯車3の内周面である前記外輪軌道11は、上記内輪軌道10よりも十分な余裕がある。この理由は、この内輪軌道10が、常に同じ位置で前記荷重を支承するのに対して、上記外輪軌道11の場合には、上記各遊星歯車3の自転に伴って、上記荷重を支承する位置が常に変化する為である。又、上記各ニードル5、5の転動面との接触面圧の面からも、上記外輪軌道11は上記内輪軌道10よりも、耐久性確保の面から有利である(外輪軌道11側の面圧が低い)。
ところで、上記各遊星軸4の塑性変形は、負荷される荷重が弾性変形の範囲の荷重であっても、荷重が加わった状態で高温に曝された場合には発生する。この様な弾性域で高温環境下での塑性変形は、弾性変形に伴って上記各遊星軸4に作用している応力を緩和する方向に、これら各遊星軸4の形状が近づいて行く現象と考えられている。そして、この様な弾性域で高温環境下での塑性変形は、残留オーステナイト量が多い程著しくなる(塑性変形量が多くなる)傾向がある。従って、上記塑性変形を抑制する為には、残留オーステナイト量を極力少なくする事が効果がある。但し、上記各遊星軸4の中間部外周面である、上記内輪軌道10部分の残留オーステナイト量が少なくなると、この内輪軌道10に関して、転がり疲れ寿命特性が低下し、上記ラジアルニードル軸受12全体として、必要な耐久性を得られなくなる。
この様な事情に対応して従来は、例えば特許文献1に記載されている様に、上記各遊星軸4の塑性変形を防止する為に、これら各遊星軸4に、浸炭窒化処理を行った後に調質処理を行い、更に、上記内輪軌道10を含む表面層のみを高周波焼き入れしていた。そして、この内輪軌道10部分の残留オーステナイト量及び硬度を高くして転がり疲れ寿命特性を向上させていた。一方で、上記各遊星軸4の芯部の残留オーステナイト量を0容量%として、上述の様な、弾性域で高温環境下での塑性変形を防止する事を意図していた。
一方、自動変速機の高速回転化や潤滑油の低粘度化に伴う、前記各ニードル5、5の転動面の疲労剥離を抑える為の対策として、例えば特許文献2に記載された技術が知られている。この特許文献2に記載された従来技術の場合には、上記各ニードル5、5を構成する鋼材中のSi及びMnの含有量を高くして、この鋼材に浸炭窒化処理、焼き入れ・焼き戻し処理を行い、上記各ニードル5、5の表面部分の残留オーステナイト量を20〜40容量%とする。
ところが、上述した特許文献1〜2に記載された様な従来技術では、運転条件が厳しくなると、必ずしも上記ラジアルニードル軸受12全体として、必要な耐久性を得られない。先ず、上記特許文献1に記載された従来技術の場合には、自動変速機の小型化に伴って、上記各遊星軸4が一層細くなると、残留オーステナイト量が高い表面層(内輪軌道10及びその直下層部分)が上記各遊星軸4全体に占める割合が多くなる。この結果、これら各遊星軸4全体での平均残留オーステナイト量が高くなって、塑性変形を抑制する効果が低下する可能性がある。これに対して、上記特許文献2に記載された従来技術では、上記各ニードル5、5の寿命を延長する効果は得られても、上記各遊星軸4の寿命を延長する効果は得られない為、上記ラジアルニードル軸受12全体として、必要な耐久性を得られない。
尚、特許文献3には、上記各遊星軸4の内輪軌道10部分の残留オーステナイト量と、上記各ニードル5、5の表面部分の残留オーステナイト量とを規制する技術が記載されている。但し、上記特許文献3に記載された従来技術の場合には、上記各ニードル5、5の転動面に、表面起点型の剥離が発生する事を防止する面で、未だ改良の余地がある。
尚、特許文献3には、上記各遊星軸4の内輪軌道10部分の残留オーステナイト量と、上記各ニードル5、5の表面部分の残留オーステナイト量とを規制する技術が記載されている。但し、上記特許文献3に記載された従来技術の場合には、上記各ニードル5、5の転動面に、表面起点型の剥離が発生する事を防止する面で、未だ改良の余地がある。
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、遊星軸と遊星歯車と複数本のニードルとの組み合わせにより構成されるラジアルニードル軸受のうち、これら各ニードルの性状を適正に規制する事により、上記遊星軸として一般的な性状のものを使用しても、上記ラジアルニードル軸受全体としての耐久性を十分に確保できる遊星歯車装置を実現すべく発明したものである。
本発明の遊星歯車装置は、前述した従来から知られている遊星歯車装置と同様に、キャリアに設けた遊星軸の外周面である内輪軌道とこの遊星軸の周囲に配置した遊星歯車の内周面である外輪軌道との間に、それぞれが鋼製である複数本のニードルを配置する事により、上記遊星軸の周囲に上記遊星歯車を回転自在に支持して成る。
又、この遊星軸を、JIS G 4805に規定されている、高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)製としている。即ち、上記遊星軸を、C(炭素)を0.95〜1.10質量%、Si(珪素)を0.15〜0.35質量%、Mn(マンガン)を0.50質量%以下、P(燐)を0.025質量%以下、S(硫黄)を0.025質量%以下、Cr(クロム)を1.30〜1.60質量%含み、残部をFe(鉄)と不可避不純物とした高炭素クロム軸受鋼製としている。そして、上記内輪軌道の表面層部分の残留オーステナイト量を5〜25容量%としている。尚、この様な遊星軸の性状は一般的なものである。
又、この遊星軸を、JIS G 4805に規定されている、高炭素クロム軸受鋼2種(SUJ2)製としている。即ち、上記遊星軸を、C(炭素)を0.95〜1.10質量%、Si(珪素)を0.15〜0.35質量%、Mn(マンガン)を0.50質量%以下、P(燐)を0.025質量%以下、S(硫黄)を0.025質量%以下、Cr(クロム)を1.30〜1.60質量%含み、残部をFe(鉄)と不可避不純物とした高炭素クロム軸受鋼製としている。そして、上記内輪軌道の表面層部分の残留オーステナイト量を5〜25容量%としている。尚、この様な遊星軸の性状は一般的なものである。
特に、本発明の遊星歯車装置に於いては、上記各ニードルを、浸炭窒化処理されたものとしている。そして、これら各ニードルの表面層部分の窒素濃度を0.2質量%以上とすると共に、これら各ニードルの表面層に、Si及びMnを含有した窒化物であるSi・Mn系窒化物を、1%以上10%未満の面積率で存在させている。又、平均粒径が0.05μm以上で1μm以下のSi・Mn系窒化物を、100μm2 当たり(好ましくは50μm2 当たり)100個以上存在させている。更に、上記各ニードルの表面層部分の残留オーステナイト量を、5〜15容量%としている。
上述の様な本発明の遊星歯車装置を実施する場合に、好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、上記各ニードルを、Siを0.3〜2.2質量%、Mnを0.3〜2.0質量%含み、且つ、Siの含有量とMnの含有量との比Si/Mnが5以下である鋼に、浸炭窒化焼き入れ、及び、焼き戻し処理を施す事により造る。
更に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、上記各ニードルを、Cを0.3〜1.2質量%、Crを0.5〜2.0質量%含む鋼製とする。
更に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、上記各ニードルを、Cを0.3〜1.2質量%、Crを0.5〜2.0質量%含む鋼製とする。
上述の様に構成する本発明によれば、例えば自動車用自動変速機の小型・軽量化の推進により、遊星軸と遊星歯車と複数本のニードルとの組み合わせにより構成されるラジアルニードル軸受の使用条件が、高速化及び高温化により厳しくなっても、このラジアルニードル軸受を含む遊星歯車装置の耐久性を十分に確保できる。即ち、本発明の場合には、上記各ニードルの転動面を、Si・Mn系窒化物を析出させる事により強化する事で、これら各ニードルの転動面に、表面起点型の剥離が発生する事を抑えられる。更に、上記各ニードルの転動面の残留オーステナイト量を、上記遊星軸の外周面である内輪軌道部分の残留オーステナイト量に対応して、適正値に規制している為、上記ラジアルニードル軸受全体として、十分な耐久性を確保できる。
次に、本発明に関して、上述の様な構成を採用した理由に就いて説明する。
次に、本発明に関して、上述の様な構成を採用した理由に就いて説明する。
[各ニードルの表面層部分の窒素濃度を0.2質量%以上とし、Si・Mn系窒化物の面積率を1〜10%にする理由に就いて]
Si及びMnを含有したSi・Mn系窒化物は、熱的に安定であり、この窒化物中でのSiとMnとの比率が約5:1である。この様なSi・Mn系窒化物のうちで平均粒径が0.05〜1μmのものが、基地組織中に均一に分散すると、硬度を向上させて、転がり疲れ寿命の延長、耐摩耗及び耐焼き付き性の向上(性能向上)を図れる。この点に就いて、以下に述べる実験により、金属材料の表面層部分に於ける、窒素濃度(窒素量)とSi・Mn系窒化物の析出量及び上記性能向上との関係を明らかにした。
この実験では、下記の表1に示した2種類の材料(鋼種1、鋼種2)に就いて、以下の熱処理を施した。この表1中の鋼種1はJIS G 4805に規定したSUJ3に、鋼種2は同じくSUJ2に、それぞれ相当する。
Si及びMnを含有したSi・Mn系窒化物は、熱的に安定であり、この窒化物中でのSiとMnとの比率が約5:1である。この様なSi・Mn系窒化物のうちで平均粒径が0.05〜1μmのものが、基地組織中に均一に分散すると、硬度を向上させて、転がり疲れ寿命の延長、耐摩耗及び耐焼き付き性の向上(性能向上)を図れる。この点に就いて、以下に述べる実験により、金属材料の表面層部分に於ける、窒素濃度(窒素量)とSi・Mn系窒化物の析出量及び上記性能向上との関係を明らかにした。
この実験では、下記の表1に示した2種類の材料(鋼種1、鋼種2)に就いて、以下の熱処理を施した。この表1中の鋼種1はJIS G 4805に規定したSUJ3に、鋼種2は同じくSUJ2に、それぞれ相当する。
上記表1の材料を、直径65mm、厚さ6mmの円板に旋削加工した後、820〜900℃で2〜10時間、RXガス、プロパンガス及びアンモニアの混合ガス中で浸炭窒化処理後、油焼き入れを施し、次いで、160〜270℃で2時間の焼き戻し処理を施した。処理温度、処理時間、アンモニアガス流量を変化させて、表面層部分の窒素濃度が互いに異なる、本発明の技術的範囲に属するもの9種類と、本発明の技術的範囲から外れるもの5種類との、合計14種類の試験片を作製した。各試験片に就いて、熱処理後、表面を研摩・ラッピングにより鏡面に仕上げた。
表面に析出した、上記Si・Mn系窒化物の面積率の測定に就いては、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を使用し、加速電圧10kVで試験片表面の観察を行った。上記Si・Mn系窒化物の面積率に関しては、倍率5000倍で最低3視野以上写真を撮影し、写真を2値化してから画像解析装置を使用して、上記面積率を計算した。
一方、上記各試験片の表面の窒素濃度の測定は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を使用し、加速電圧15kVで行った。
表面に析出した、上記Si・Mn系窒化物の面積率の測定に就いては、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を使用し、加速電圧10kVで試験片表面の観察を行った。上記Si・Mn系窒化物の面積率に関しては、倍率5000倍で最低3視野以上写真を撮影し、写真を2値化してから画像解析装置を使用して、上記面積率を計算した。
一方、上記各試験片の表面の窒素濃度の測定は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を使用し、加速電圧15kVで行った。
上述の様にして得た、上記各試験片に就いて、スラスト型寿命試験により、異物混入潤滑下での寿命試験を施した。試験条件は次の通りである。
試験荷重 : 5880N(600kgf)
回転速度 : 1000min-1
潤滑油 : VG68
異物の硬度 : Hv870
異物サイズ(平均粒径) : 74〜147μm
異物混入量 : 200ppm
試験荷重 : 5880N(600kgf)
回転速度 : 1000min-1
潤滑油 : VG68
異物の硬度 : Hv870
異物サイズ(平均粒径) : 74〜147μm
異物混入量 : 200ppm
上述の様な条件で行った上記寿命試験の結果に就いて、各試験片の窒素濃度、及び、上記Si・Mn系窒化物の面積率と共に、次の表2及び図3、4に記載した。この表2中、上記寿命試験の結果を示す寿命比とは、比較例1のL10寿命を1とした場合の比率である。
上記表2、及び、窒素濃度とSi・Mn系窒化物の面積率との関係を示す図3から分かる様に、このSi・Mn系窒化物の析出量(面積率)は、窒素濃度に比例して増大する。この窒素濃度を0.2質量%以上確保しないと、次述する、Si・Mn系窒化物の面積率1%以上を確保する事が難しい。そこで、上記窒素濃度の下限値を0.2質量%とした。尚、後述する様に、Si及びMn添加量の多い鋼程、同一窒素量で比較した場合に、Si・Mn系窒化物の析出量が多くなる。
又、上記表2、及び、Si・Mn系窒化物の面積率と寿命との関係を示す図4から分かる様に、Si・Mn系窒化物の面積率が1%以上になると、寿命が著しく向上する。そこで、この面積率の下限値を1%以上とし、窒素濃度の下限値を、上述の様に0.2質量%とした。但し、上記Si・Mn系窒化物の面積率が10%を越えると効果が飽和し、コストが嵩むだけでなく、各ニードルの表面が硬くなり過ぎて、研削性や靭性が低下するので、上記Si・Mn系窒化物の面積率の上限値を10%とし、上記窒素濃度の上限値を2.0質量%とした。
[各ニードルの表面層に、平均粒径が0.05μm以上で1μm以下のSi・Mn系窒化物が、100μm2 当たり100個以上存在する理由に就いて]
各ニードルの転動面に存在する窒化物は、これら各ニードルの転動面を強化するが、平均粒径が1μmを超える程に大きな窒化物は、材料の強化にあまり寄与しない。細かい窒化物が分散して均等に存在している方が、上記各ニードルの転動面を強化する面からは効果がある。この理由は、析出強化の理論上、析出物粒子間の距離が小さい(短い)程、強化能が優れる事による。従って、上記各ニードルの転動面に析出しているSi・Mn系窒化物の面積率が同じであっても、析出粒子数が多ければ、相対的に粒子間距離が短くなり、上記各ニードルの転動面が強化される。これらの事を、製造工程と合わせて考慮すれば、Si・Mn系窒化物の面積率を前述した理由で1〜10%の範囲に規制する事を前提として、このSi・Mn系窒化物の平均粒径を、0.05〜1μmの範囲に規制して、個々のSi・Mn系窒化物を微細にして個数を増やす事が好ましい。具体的には、平均粒径が0.05μm以上で1μm以下のSi・Mn系窒化物を、100μm2 当たり(好ましくは50μm2 当たり)100個以上存在させる事が好ましい。
各ニードルの転動面に存在する窒化物は、これら各ニードルの転動面を強化するが、平均粒径が1μmを超える程に大きな窒化物は、材料の強化にあまり寄与しない。細かい窒化物が分散して均等に存在している方が、上記各ニードルの転動面を強化する面からは効果がある。この理由は、析出強化の理論上、析出物粒子間の距離が小さい(短い)程、強化能が優れる事による。従って、上記各ニードルの転動面に析出しているSi・Mn系窒化物の面積率が同じであっても、析出粒子数が多ければ、相対的に粒子間距離が短くなり、上記各ニードルの転動面が強化される。これらの事を、製造工程と合わせて考慮すれば、Si・Mn系窒化物の面積率を前述した理由で1〜10%の範囲に規制する事を前提として、このSi・Mn系窒化物の平均粒径を、0.05〜1μmの範囲に規制して、個々のSi・Mn系窒化物を微細にして個数を増やす事が好ましい。具体的には、平均粒径が0.05μm以上で1μm以下のSi・Mn系窒化物を、100μm2 当たり(好ましくは50μm2 当たり)100個以上存在させる事が好ましい。
上記Si・Mn系窒化物の好ましい数に関する臨界値を求める為に、このSi・Mn系窒化物の分散状態を異ならせた種々の試験片を、焼き入れ温度及び時間、アンモニア流量を変化させる事により造った。得られた試験片表面の、上記Si・Mn系窒化物の個数の測定は、電界放射型走査型電子顕微鏡を使い、写真を撮影して窒化物の個数を画像解析により行った。測定倍率は、5000倍以上とした。この条件で、測定面積50〜100μm2 とし、平均粒径が0.05〜1μmの上記Si・Mn系窒化物の数を測定できる。そして、この数を測定した上記各試験片に就いて、前述したスラスト型寿命試験による異物混入潤滑下での寿命試験を、前述したのと同じ条件で施した。
この様な表3及び図5の記載から分かる様に、平均粒径が0.05〜1μmの上記Si・Mn系窒化物を、面積100μm2 当たり100個以上分散させれば、基地組織が強化されて、異物混入潤滑下での転がり疲れ寿命の確保を図れる。
尚、面積100μm2 当たり、平均粒径が0.05〜1μmのSi・Mn系窒化物を100個以上析出させるには、各ニードルの素材となる鋼材に、800〜870℃で、浸炭窒化処理を施す。この浸炭窒化処理の温度が870℃を越えると、表面に析出するSi・Mn系窒化物が粗大化して、微細なSiおよびMnを含有する窒化物の個数が減少する。又、上記処理温度が870℃よりも高くなると、窒素の固溶限が大きくなる為、窒化物の量が少なくなり、所望の面積率を得られなくなる。又、上記性状を得る為には、上記処理温度を規制する事に加えて、浸炭窒化処理工程の初期から、Rxガスとエンリッチガスとアンモニアガスとの混合ガス雰囲気とし、CP値は1.2以上、アンモニアガスの流量はRxガス流量の少なくとも1/5以上にする。又、浸炭窒化後の焼き入れは、油温60〜120℃の範囲で行う。焼き入れ時の熱衝撃を抑えて歩留りを確保する為には、60℃以上での焼き入れが必要であるが、焼き入れ温度が120℃よりも高いと、十分な硬度を得られない。焼き戻しは160〜270℃の温度で行い、得られたニードルの転動面の硬度は、Hv740以上、望ましくはHv780以上とする。上記焼き戻しの温度は、この硬度を得ると共に、転動面(表面層部分)の残留オーステナイト量を確保する為に規制する。
尚、面積100μm2 当たり、平均粒径が0.05〜1μmのSi・Mn系窒化物を100個以上析出させるには、各ニードルの素材となる鋼材に、800〜870℃で、浸炭窒化処理を施す。この浸炭窒化処理の温度が870℃を越えると、表面に析出するSi・Mn系窒化物が粗大化して、微細なSiおよびMnを含有する窒化物の個数が減少する。又、上記処理温度が870℃よりも高くなると、窒素の固溶限が大きくなる為、窒化物の量が少なくなり、所望の面積率を得られなくなる。又、上記性状を得る為には、上記処理温度を規制する事に加えて、浸炭窒化処理工程の初期から、Rxガスとエンリッチガスとアンモニアガスとの混合ガス雰囲気とし、CP値は1.2以上、アンモニアガスの流量はRxガス流量の少なくとも1/5以上にする。又、浸炭窒化後の焼き入れは、油温60〜120℃の範囲で行う。焼き入れ時の熱衝撃を抑えて歩留りを確保する為には、60℃以上での焼き入れが必要であるが、焼き入れ温度が120℃よりも高いと、十分な硬度を得られない。焼き戻しは160〜270℃の温度で行い、得られたニードルの転動面の硬度は、Hv740以上、望ましくはHv780以上とする。上記焼き戻しの温度は、この硬度を得ると共に、転動面(表面層部分)の残留オーステナイト量を確保する為に規制する。
[各ニードルを構成する鋼中のSiの含有量を0.3〜2.2質量%とし、Mnの含有量を0.3〜2.0質量%とし、Siの含有量とMnの含有量との比Si/Mnを5以下にする理由]
前述の図3に示した様に、Nの含有量に応じて、Si・Mn系窒化物を十分に析出させる為には、Si及びMnを多く含有した鋼材を用いる必要がある。一般的なSUJ2(Siを0.25質量%、Mnを0.4質量%含有)では、浸炭窒化等で窒素を過剰に付加しても、Si・Mn系窒化物の析出量が不十分になる。そこで、本発明を実施する場合には、次述する様に、Si及びMnの含有量を、以下に述べる様に、上記一般的なSUJ2よりも多くする。
前述の図3に示した様に、Nの含有量に応じて、Si・Mn系窒化物を十分に析出させる為には、Si及びMnを多く含有した鋼材を用いる必要がある。一般的なSUJ2(Siを0.25質量%、Mnを0.4質量%含有)では、浸炭窒化等で窒素を過剰に付加しても、Si・Mn系窒化物の析出量が不十分になる。そこで、本発明を実施する場合には、次述する様に、Si及びMnの含有量を、以下に述べる様に、上記一般的なSUJ2よりも多くする。
[各ニードルを構成する鋼中のSiの含有量]
Siは、製鋼時に脱酸剤として作用すると共に、鋼の焼き戻し軟化抵抗性を高める作用も有する為、上記各ニードルの硬度を確保する為に必要である。この様な作用を十分に得る為には、Siの含有量を、0.15質量%以上確保する必要がある。更に、Siの含有量が多い程、軟窒化処理や浸炭処理に伴って、上記各ニードルの表層部(転動面)の窒素濃度や炭素濃度が高くなる。そして、これら各ニードルの表層部を強化する為に十分な量のSi・Mn系窒化物を析出させる為には、Siの含有量を、0.3質量%以上確保する必要がある。
但し、Siの含有量が多過ぎると、得られたニードルの靭性が低下したり、芯部への窒素の拡散が阻害されて、ニードル全体としての硬度を確保しにくくなるで、Siの含有量の上限値を2.2質量%とする。
Siは、製鋼時に脱酸剤として作用すると共に、鋼の焼き戻し軟化抵抗性を高める作用も有する為、上記各ニードルの硬度を確保する為に必要である。この様な作用を十分に得る為には、Siの含有量を、0.15質量%以上確保する必要がある。更に、Siの含有量が多い程、軟窒化処理や浸炭処理に伴って、上記各ニードルの表層部(転動面)の窒素濃度や炭素濃度が高くなる。そして、これら各ニードルの表層部を強化する為に十分な量のSi・Mn系窒化物を析出させる為には、Siの含有量を、0.3質量%以上確保する必要がある。
但し、Siの含有量が多過ぎると、得られたニードルの靭性が低下したり、芯部への窒素の拡散が阻害されて、ニードル全体としての硬度を確保しにくくなるで、Siの含有量の上限値を2.2質量%とする。
[各ニードルを構成する鋼中のMnの含有量]
Mnは、製鋼時に脱酸剤として作用すると共に、鋼の焼き入れ性を高める作用を有する。この様な作用を十分に得る為には、Mnの含有量を0.1質量%以上確保する必要がある。更に、上記各ニードルの転動面を強化する為に十分な量のSi・Mn系窒化物を析出させる為には、Mnの含有量を0.3質量%以上確保する必要がある。
但し、Mnの含有量が多過ぎると、鋼の鍛造性や切削性が低下したり、鋼中の不純物であるSやPと介在物を形成し、得られたニードルの強度を低下させる可能性がある事から、Mnの含有量の上限値を2.0質量%とする。
Mnは、製鋼時に脱酸剤として作用すると共に、鋼の焼き入れ性を高める作用を有する。この様な作用を十分に得る為には、Mnの含有量を0.1質量%以上確保する必要がある。更に、上記各ニードルの転動面を強化する為に十分な量のSi・Mn系窒化物を析出させる為には、Mnの含有量を0.3質量%以上確保する必要がある。
但し、Mnの含有量が多過ぎると、鋼の鍛造性や切削性が低下したり、鋼中の不純物であるSやPと介在物を形成し、得られたニードルの強度を低下させる可能性がある事から、Mnの含有量の上限値を2.0質量%とする。
[各ニードルを構成する鋼中のSiの含有量とMnの含有量との比Si/Mn]
Si・Mn系窒化物は、焼き戻しによる窒化物とは異なり、Mnを取り込みながらN(窒素)がSiと反応して形成される。従って、鋼中のSiの含有量に対してMnの含有量が少ないと、Nを十分に拡散させても、Si・Mn系窒化物の析出が促進されない。この為、Siの含有量が0.3〜2.2質量%、Mnの含有量が0.3〜2.0質量%である鋼に、耐摩耗性、耐焼付き性を何れも向上させる事に関して効果を有する量(面積率が1%以上10%未満)のSi・Mn系窒化物を析出させる為には、上記比Si/Mnを、5以下に抑える(Mnに対するSiの量を確保する)。
Si・Mn系窒化物は、焼き戻しによる窒化物とは異なり、Mnを取り込みながらN(窒素)がSiと反応して形成される。従って、鋼中のSiの含有量に対してMnの含有量が少ないと、Nを十分に拡散させても、Si・Mn系窒化物の析出が促進されない。この為、Siの含有量が0.3〜2.2質量%、Mnの含有量が0.3〜2.0質量%である鋼に、耐摩耗性、耐焼付き性を何れも向上させる事に関して効果を有する量(面積率が1%以上10%未満)のSi・Mn系窒化物を析出させる為には、上記比Si/Mnを、5以下に抑える(Mnに対するSiの量を確保する)。
[各ニードルを構成する鋼中のCの含有量]
Cは、焼き入れによってマルテンサイト組織となり、基地組織を硬化させる作用がある。この為、上記各ニードルに必要な芯部硬さを付与する為に、0.3質量%以上のCを添加する事が好ましい。更に、浸炭窒化時間を短縮する為には、Cを0.5質量%以上添加する事が好ましく、0.8質量%以上添加する事がより好ましく、0.95質量%以上添加する事が更に好ましい。但し、過剰に添加すると、セメンタイトの析出が過剰となり、浸炭窒化処理によって粗大化して、得られたニードルの靭性が低下する。この為、Cの添加量の上限値は、1.2質量%に抑える事が好ましい。
Cは、焼き入れによってマルテンサイト組織となり、基地組織を硬化させる作用がある。この為、上記各ニードルに必要な芯部硬さを付与する為に、0.3質量%以上のCを添加する事が好ましい。更に、浸炭窒化時間を短縮する為には、Cを0.5質量%以上添加する事が好ましく、0.8質量%以上添加する事がより好ましく、0.95質量%以上添加する事が更に好ましい。但し、過剰に添加すると、セメンタイトの析出が過剰となり、浸炭窒化処理によって粗大化して、得られたニードルの靭性が低下する。この為、Cの添加量の上限値は、1.2質量%に抑える事が好ましい。
[各ニードルを構成する鋼中のCrの含有量]
Crは、焼き入れ性を向上させると同時に、炭化物形成元素であり、材料を強化する炭化物の析出を促進し、更に微細化させる。Crの添加量が0.5質量%未満の場合には、焼き入れ性が低下して十分な硬度を得られなかったり、浸炭窒化時に炭化物が粗大化したりする。これに対して、添加量が2.0質量%を越えると、浸炭窒化時に表面にCr酸化膜が形成されて、炭素及び窒素の拡散を阻害する。この為、Crの含有量は、0.5〜2.0質量%とする事が好ましい。
Crは、焼き入れ性を向上させると同時に、炭化物形成元素であり、材料を強化する炭化物の析出を促進し、更に微細化させる。Crの添加量が0.5質量%未満の場合には、焼き入れ性が低下して十分な硬度を得られなかったり、浸炭窒化時に炭化物が粗大化したりする。これに対して、添加量が2.0質量%を越えると、浸炭窒化時に表面にCr酸化膜が形成されて、炭素及び窒素の拡散を阻害する。この為、Crの含有量は、0.5〜2.0質量%とする事が好ましい。
[各遊星軸の外周面である内輪軌道の表面層部分と各ニードルの表面層部分との残留オーステナイト量]
前述した通り、上記各遊星軸の表面の残留オーステナイト量は5〜25容量%とし、上記各ニードルの表面層部分の残留オーステナイト量は5〜15容量%とする。この理由は、次の通りである。
上述の様な性状を有するニードルを使用して、遊星歯車装置中のラジアルニードル軸受の耐久性を向上させる為には、上記各遊星軸側の残留オーステナイト量に応じて、上記各ニードルの残留オーステナイト量を適正化する事が好ましい。これら各ニードルの側の残留オーステナイト量を適正化する事によって、これら各ニードルの形状の経時変化を小さくできて、これら各ニードル及びこれら各ニードルと転がり接触する、上記各遊星軸の外周面である内輪軌道の耐久性を十分に確保できる。
前述した通り、上記各遊星軸の表面の残留オーステナイト量は5〜25容量%とし、上記各ニードルの表面層部分の残留オーステナイト量は5〜15容量%とする。この理由は、次の通りである。
上述の様な性状を有するニードルを使用して、遊星歯車装置中のラジアルニードル軸受の耐久性を向上させる為には、上記各遊星軸側の残留オーステナイト量に応じて、上記各ニードルの残留オーステナイト量を適正化する事が好ましい。これら各ニードルの側の残留オーステナイト量を適正化する事によって、これら各ニードルの形状の経時変化を小さくできて、これら各ニードル及びこれら各ニードルと転がり接触する、上記各遊星軸の外周面である内輪軌道の耐久性を十分に確保できる。
この様な観点で、残留オーステナイト量の影響を知る為に、前記表1の鋼種1によりニードル(転動体)を、表1の鋼種2により円盤状の試験片を、それぞれ造った。この試験片は、遊星軸に対応するものである。又、焼き入れ温度及び焼き戻し温度を変えて、これらニードル及び試験片の残留オーステナイト量を変化させ、残留オーステナイト量が異なる、14種類ずつの試料を作成した。そして、これら14種類ずつの試料を組み合わせて、異物混入寿命試験に供した。その結果を、残留オーステナイト量の値と共に、次の表4に示す。試験結果の寿命は、ニードル及び試験片の残留オーステナイト量が何れも0である、第1の組み合わせに対する比として示した。
この表4に示した、異物混入試験の結果から分かる様に、試験片に対応する遊星軸の外周面である内輪軌道の表面層部分の残留オーステナイト量を5〜25容量%とし、Si・Mn系窒化物を析出させた各ニードルの表面層部分の残留オーステナイト量を5〜15容量%とすれば、遊星歯車装置中のラジアルニードル軸受の耐久性を十分に確保できる。そこで、本発明の遊星歯車装置を構成する上記各遊星軸の外周面である内輪軌道の表面層部分の残留オーステナイト量を5〜25容量%とし、上記各ニードルの表面層部分の残留オーステナイト量を5〜15容量%とした。
本発明の特徴は、遊星軸と各ニードルとの性状を適正に規制して、この遊星歯車装置の小型化、高回転化等により使用条件が厳しくなった場合でも、優れた耐久性を確保できる遊星歯車装置を実現する点にある。
図面に表れる遊星歯車装置の構造に就いては、前述の図1〜2に示した構造を含め、従来から知られている各種遊星歯車装置と同様である。就いては、具体的構造に就いての図示並びに説明は省略する。
図面に表れる遊星歯車装置の構造に就いては、前述の図1〜2に示した構造を含め、従来から知られている各種遊星歯車装置と同様である。就いては、具体的構造に就いての図示並びに説明は省略する。
本発明の効果を確認する為に行った耐久試験に就いて説明する。この試験では、次の表5に示した、本発明の技術的範囲に属する19種類の試験片(実施例1〜19)と、本発明の技術的範囲からは外れる9種類の試験片(比較例1〜9)との、合計28種類の試験片を用意した。そしてこれら各試験片を、図6に示した試験装置14に組み込んで、耐久試験を行った。
前記試験装置14は、遊星軸4の周囲に、遊星歯車に相当する円筒状の外輪15を、複数本のニードル5、5により回転自在に支持したものである。試験時には、上記遊星軸4を固定したまま、上記外輪15を、ラジアル荷重を負荷しながら回転させる。この遊星軸4は、SUJ2製で、浸炭窒化処理及び焼鈍を施す事によって全体の残留オーステナイトを完全に分解させた後、内輪軌道10部分を、高周波焼き入れ後に焼き戻し処理を施して、表面硬度を700〜850Hv、残留オーステナイト量を15〜28容量%に調整した。この様にして、上記遊星軸4の芯部の残留オーステナイト量を0容量%とする事により、使用に伴う、この遊星軸4の塑性変形が最も小さくなる様にした。
前記耐久試験は、上記ラジアル荷重を4kNとし、回転速度を8000min-1 とし、油温150℃の条件で、何れかの面に剥離が生じる迄の時間を寿命として評価を行った。使用したニードル5、5の外径は2mm、各遊星軸4の外径は8mmとした。尚、耐久試験の前に、予め鉄粉を300ppm混入したグリースを、上記遊星軸4と上記各ニードル5、5と上記外輪15とから成るラジアルニードル軸受12aに封入して10分間運転し、上記内輪軌道10及び上記各ニードル4、4の転動面に圧痕を形成した後、洗浄を行ってから、上記寿命試験を行う事で、表面疲労型剥離寿命の評価を行った。
この様にして行った寿命試験の結果を表す、前記表5の記載から明らかな通り、遊星軸4及び各ニードル5、5の性状が本発明の技術的範囲内にある各実施例の場合は、十分な耐久性を確保できる。これに対して、本発明の技術的範囲から外れる比較例1〜5は、各ニードル5、5の表面窒素濃度及び窒化物の面積率が小さく、十分な個数のSi・Mn系窒化物が析出していない為、各ニードル5、5の強化が不十分で、十分な耐久性を得られない。又、比較例6〜9は、遊星軸4又は各ニードル5、5の表面層部分の残留オーステナイト量が適正範囲から外れている為、やはり十分な耐久性を得られない。
本発明は、各遊星軸の両端部をキャリアに対し、かしめ付けにより固定する構造を採用した場合は勿論、ピン等、他の構造によりキャリアに対し固定する構造を採用した場合でも実施できる。又、遊星歯車装置を組み込む装置に就いても、自動車用自動変速機に限らず、各種動力伝達装置が対象となる。
1 太陽歯車
1a 歯
2 リング歯車
2a 歯
3 遊星歯車
3a 歯
4 遊星軸
5 ニードル
6 キャリア
7 円筒部
8 回転軸
9 連結板
10 内輪軌道
11 外輪軌道
12、12a ラジアルニードル軸受
13 ピン
14 試験装置
15 外輪
1a 歯
2 リング歯車
2a 歯
3 遊星歯車
3a 歯
4 遊星軸
5 ニードル
6 キャリア
7 円筒部
8 回転軸
9 連結板
10 内輪軌道
11 外輪軌道
12、12a ラジアルニードル軸受
13 ピン
14 試験装置
15 外輪
Claims (3)
- キャリアに設けた遊星軸の外周面である内輪軌道とこの遊星軸の周囲に配置した遊星歯車の内周面である外輪軌道との間に、それぞれが鋼製である複数本のニードルを配置する事により、上記遊星軸の周囲に上記遊星歯車を回転自在に支持して成り、この遊星軸が、Cを0.95〜1.10質量%、Siを0.15〜0.35質量%、Mnを0.50質量%以下、Pを0.025質量%以下、Sを0.025質量%以下、Crを1.30〜1.60質量%含み、残部をFeと不可避不純物とした高炭素クロム軸受鋼製で、上記内輪軌道の表面層部分の残留オーステナイト量が5〜25容量%である遊星歯車装置に於いて、上記各ニードルが浸炭窒化処理されたものであって、これら各ニードルの表面層部分の窒素濃度が0.2質量%以上であり、これら各ニードルの表面層に、Si及びMnを含有した窒化物であるSi・Mn系窒化物が、1%以上10%未満の面積率で存在しており、平均粒径が0.05μm以上で1μm以下のSi・Mn系窒化物が、100μm2 当たり100個以上存在し、且つ、上記各ニードルの表面層部分の残留オーステナイト量が、5〜15容量%である事を特徴とする遊星歯車装置。
- 各ニードルが、Siを0.3〜2.2質量%、Mnを0.3〜2.0質量%含み、且つ、Siの含有量とMnの含有量との比Si/Mnが5以下である鋼に、浸炭窒化焼き入れ、及び、焼き戻し処理を施す事により得られたものである、請求項1に記載した遊星歯車装置。
- 各ニードルが、Cを0.3〜1.2質量%、Crを0.5〜2.0質量%含む鋼製である、請求項2に記載した遊星歯車装置。
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- 2010-04-02 JP JP2010086379A patent/JP2011220357A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
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A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20130604 |