JP4421756B2 - 積層型ガスセンサ素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車エンジン等の内燃機関から排出される排ガスといった測定対象ガス中の特定成分を検出するためのガスセンサに用いられる積層型ガスセンサ素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、酸素センサ、HCセンサ、NOxセンサ等のガスセンサに使用され、固体電解質特性を有する層(以下、単に「固体電解質層」ともいう)等の長手方向に形成された層(セラミックシート)を複数積層してなる積層型ガスセンサ素子(以下、単に「素子」という)が知られている。
【0003】
そして、このような素子の一例として実公平7−54852号公報に示されているものが挙げられる。この公報技術では、検知電極及び基準電極が設けられた固体電解質層や、その他表裏面に発熱抵抗体及び発熱抵抗体通電端子が設けられた固体電解質層を積層した構造の素子が示されている。ここで、固体電解質層の表裏面に設けられる上記電極や発熱抵抗体といった各導電部については、固体電解質層の表裏面を貫通するように形成されたスルーホールを介して電気的な接続を図っている。なお、表裏面に設けられる導電部の電気的な接続を図るためのスルーホールは、上記公報技術にもみられるように、素子のうちで測定対象となるガスに曝される前方側とは反対側(即ち、後方側)に形成されることが通常である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、積層型ガスセンサ素子にあっては、上記公報技術のように、スルーホールを介して表裏面に設けられる導電部の電気的な接続を図ってなる層(セラミックシート)の当該表裏面に固体電解質層が積層される構造を呈することがある。通常、ジルコニアを主体に構成される固体電解質層は、特定の温度域(200℃近辺)以下の温度では十分な絶縁性を有するものであるが、固体電解質層の温度が特定の温度域を越えると固体電解質の絶縁性が低下するものである。したがって、スルーホールを介して表裏面に設けられる導電部の電気的な接続を図ってなる層に対して固体電解質層が積層されて素子が構成される場合には、素子全体が高温域に曝されると、固体電解質の絶縁性が低下し、導電部への電圧印加に起因して、この固体電解質層にリーク電流が流れ出すことが考えられる。そして、固体電解質層内に大きなリーク電流が流れることがあると、その電荷の移動に際して固体電解質(ジルコニア)の酸素が放出され、固体電解質層内で酸素の供給がされ難い部位では黒化が生じ、素子自体の耐久性を悪化させる原因となる。そのため、スルーホールを介して表裏面に設けられる導電部の導通を図った層に対して固体電解質層を積層する場合には、絶縁層を介した上で両者を積層している。
【0005】
但し、これまでの素子では、内燃機関の排気管内に位置する最前方側(測定対象となるガスに曝される最前方側)の前端から、後方側に形成されるスルーホールの該前端に最も近い位置までの長手方向の寸法が45mmより大きく形成されるものであった。そのため、スルーホールを介して表裏面に設けられる導電を図った層(セラミックシート)に積層される固体電解質層のうち、スルーホール上近傍に位置することになる部位については、熱引きにより温度上昇が抑えられ、絶縁性を固体電解質層自体により保持することができた。
【0006】
しかしながら、近年排ガス規制の強化等により、排気量の小さい内燃機関、例えば二輪自動車においてもガスセンサを設置する必要性が生じ、それに伴いガスセンサの設置場所が限られるためにガスセンサ自身、ひいてはガスセンサ素子の小型化が要求され、具体的には素子の最前端から、スルーホールの該最前端に最も近い位置までの長手方向の寸法が40mm以下素子が要求されている。一方、素子は小型化されるに従い、実使用環境下において全体が高温域に曝され易くなることから、素子を構成する固体電解質層全体が活性化されることになる。このために、スルーホールを介して表裏面に設けられる導電部の電気的な接続を図った層(セラミックシート)に積層される固体電解質層のうち、該スルーホール上近傍に位置することになる部位までの絶縁性が確保されなければ、固体電解質層にリーク電流が流れ易いという問題が生ずる。
【0007】
とりわけ、スルーホールを介して表裏面の導通を図ってなる層(セラミックシート)における当該スルーホールの形状は、従来より開口端縁がエッジ状に形成されることが多い。そのために、スルーホールを介して表裏面に設けられる導電部の導通を図った層に対して固体電解電解質層を積層するにあたり、絶縁層を介在させたとしても、スルーホールの開口端縁にて絶縁層が途切れ易く、若しくは薄くなりがちであり、上記固体電解質層のうち、スルーホール上近傍に位置することになる部位における絶縁性を確保することが困難となる。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためのものであり、スルーホールを介して表裏面に設けられる導電部を図った層(セラミックシート)に積層される固体電解質層のうち、該スルーホール上近傍に位置することになる部位までの絶縁性が確保され、小型化に対応できる積層型ガスセンサ素子を効率良く製造できる積層型ガスセンサ素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
第1発明の積層型ガスセンサ素子の製造方法は、表裏面を貫通するスルーホールを備え、該スルーホールを介して前記表裏面間を電気的に導通させる未焼成導電パターンを有する未焼成セラミックシートを作り、焼成されて固体電解質特性を呈することとなる未焼成固体電解質層を、上記未焼成セラミックシートにおける表裏面の少なくとも一方に、絶縁層となる未焼成絶縁層を介して積層する工程を備え、上記未焼成固体電解質層において、上記未焼成セラミックシートに積層されたときに上記スルーホールの開口と向かい合うこととなる面に、該スルーホールの開口端縁を跨る形態の未焼成部分絶縁パターンを形成し、その後上記積層して未焼成積層体とし、この未焼成積層体を焼成する積層型ガスセンサ素子の製造方法であって、
上記スルーホールを備える上記未焼成セラミックシートは、固体電解質から構成されており、
上記未焼成絶縁層を、上記スルーホールの内壁面及び開口端縁まで被覆されるように形成することを特徴とする。
【0010】
上記「未焼成セラミックシート」は、自身の表裏面を貫通する「スルーホール」と、焼成されて基体となる未焼成基体と、この未焼成基体の表裏面に形成される「未焼成導電パターン」とを備えるものである。なお、上記「スルーホール」は、未焼成基体の表裏面に形成される未焼成導電パターンの電気的接続を図る目的で形成されたものである。
【0011】
上記「未焼成セラミックシート」は、固体電解質から構成されている。
【0012】
更に、未焼成セラミックシートとしては、ジルコニアを主体とする酸素イオン伝導性の固体電解質により構成されていてもよい。
【0013】
上記「未焼成固体電解質層」は、ジルコニアを主体とする酸素イオン伝導性の固体電解質により構成されていてもよい。なお、この未焼成固体電解質層の焼成後に発揮されることになる固体電解質特性は、本発明の積層型ガスセンサ素子として利用しても利用しなくともよい。例えば、酸素濃淡電池素子として固体電解質特性を利用してもよく、またセラミックヒータを構成する支持体として用い固体電解質特性を利用しなくてもよい。
【0014】
上記「未焼成絶縁層」は、焼成されて絶縁性を発揮する層である。その絶縁性は固体電解質層に対して温度900℃において100倍以上であることが好ましい。このような未焼成絶縁層を構成する材質は特に限定されないが、例えば、アルミナ、ムライト、スピネル等の絶縁性に優れた材料を主体とする組成により構成することができる。なお、ここでいう「主体」とは、最も質量含有率の高いことを意味するものであって、必ずしも50質量%以上を占めることを意味するものではない。ここでいうこの未焼成絶縁層は、上記の絶縁性に優れた材料の少なくとも1種以上からなる粉末、バインダ樹脂及び溶剤等を混合して得られるペーストを用いて、スクリーン印刷等により、上記未焼成セラミックシート上の目的とする部位に形成することができる。
【0015】
この未焼成絶縁層の厚さとしては、これを構成する材質の焼成収縮率により異なるが、焼成後における絶縁層の厚さとしては、5〜30μm(より好ましくは5〜25μm)となるように調整することが好ましい。焼成後における絶縁層の厚さが5μm未満であると、固体電解質層のうちでスルーホール近傍に位置することになる部位に対する絶縁性を確保することができなくなるおそれがある。一方、この厚さが30μmを超えると素子自体の大きさが必要以上に大きくなるため、小型化の観点から好ましくない。なお、未焼成絶縁層がアルミナを主成分として構成される場合は、未焼成絶縁層としての厚さを6〜35μm(より好ましくは6〜30μm)とすることが好ましく、これにより焼成後において上記好ましい厚さを有することとなる。
【0016】
未焼成絶縁層は、スルーホールの内壁面及び開口端縁まで被覆されるように形成する。これにより、焼成後においては絶縁層がスルーホールの内壁面及び開口端縁まで被覆することとなり、未焼成セラミックシートの表裏面に形成されることになる導電部に対するスルーホール近傍の絶縁性を高めることができる。
【0017】
上記「未焼成部分絶縁パターン」(焼成後は、便宜上「部分絶縁パターン」という)は、焼成されて絶縁性を発揮するものである。それより、その絶縁性は上記未焼成絶縁層における場合と同様であることが好ましい。とりわけ、この未焼成部分絶縁パターンは、未焼成絶縁層とともに、未焼成固体電解質層と未焼成セラミックシートの間に介在しつつ、焼成後には絶縁層を構成することになることから、焼成時の両者の密着性や性状等を考慮して、両者は第3発明のように、同材質から構成されることが好ましい。
【0018】
また、未焼成部分絶縁パターンの厚さとしては、未焼成セラミックシートに形成されるスルーホールの開口端縁にて絶縁層が途切れてしまうケースを想定し、材質の焼成収縮率により異なるが、第2発明のように、焼成後における未焼成部分絶縁パターンの厚さが5μm以上(より好ましくは5〜30μm、更に好ましくは5〜25μm)となるように調整することが好ましい。焼成後における未焼成部分絶縁パターンの厚さが5μm未満であると、セラミックシートに積層される固体電解質層のうちで、スルーホール近傍に位置することになる部位に対して、絶縁性を確保するための部分絶縁パターンによる効果が得られないおそれがある。一方、この厚さが30μmを超えると素子自体の大きさが必要以上に大きくなるため、小型化の観点から好ましくない。なお、未焼成部分絶縁パターンがアルミナを主成分として構成される場合は、未焼成部分絶縁パターンとしての厚さを6〜35μm(より好ましくは6〜30μm)とすることが好ましく、これにより焼成後において上記好ましい厚さを有することとなる。
【0019】
更に、この未焼成部分絶縁パターンについては、未焼成セラミックシートに形成されるスルーホールの開口端縁にて絶縁層が途切れたり、薄くなりがちであることから、未焼成固体電解質層のうちで、未焼成セラミックシートに積層されたときにスルーホールの開口と向かい合うこととなる面上にて、該スルーホールの開口端縁を跨る形態で形成されることが重要となる。
上記「開口端縁」とは、未焼成セラミックシートを構成する未焼成基体におけるスルーホールの両開口を含む断面において、未焼成基体の表面又は裏面とスルーホール内壁面とが接する線(図2におけるP)を意味する。従って、スルーホール内壁面の開口部付近が傾斜面である場合は未焼成基体の表面又は裏面と傾斜面とが接する線が開口端縁であり、開口部付近がR形状面である場合は未焼成基体の表面又は裏面とR形状面とが接する線が開口端縁である。
【0020】
また、未焼成部分絶縁パターンの形状については、上述のようにスルーホールの開口端縁を跨る形態であれば特に限定されずに、ドーナツ形状、円形状、楕円形状及び四角形状とすることができる。なお、未焼成固体電解質層に形成される未焼成部分絶縁パターンの幅については、未焼成セラミックシートに対して若干の積層ズレを生じたとしても、確実に未焼成部分絶縁パターンがスルーホールの開口端縁を跨るように、スルーホールの開口端外径を基準として当該開口端外径よりも内・外向きに0.3mm突出するような幅を有することが好ましい。
【0021】
ここで、第1発明〜第3発明に示す積層型ガスセンサ素子の製造方法は、焼成後における素子自体の最前端(なお、前方側が測定対象ガスに曝されるものとする)から、スルーホールの該最前端に最も近い位置までの長手方向の寸法が40mm以下(更には35mm以下)である素子について用いることが特に効果的である。即ち、素子の最前端からスルーホールの該最前端に最も近い位置までの長手方向の寸法が45mmを超える素子では、セラミックシートに積層される固体電解質層のうちで、スルーホール近傍に位置することになる部位の絶縁性は比較的確保し易いが、同寸法が40mm以下の素子においては、寸法が小さくなるに従い次第に上部部分における絶縁性を確保できなくなる傾向にあるからである。
【0022】
本発明の製造方法により得られる素子はガスセンサとして用いることができる。図3は、このガスセンサであり、内燃機関の排気管に取り付けられ、排ガス中の酸素濃度の測定に使用されるλ型酸素センサと通称される酸素センサBの一例を示した断面図である。
【0023】
この酸素センサBに組み込まれる積層型酸素センサ素子Aは、その前方側が主体金具3の先端より突出するように当該主体金具3に形成された挿通孔32に挿通されるとともに、挿通孔32の内面と素子Aとの外面との間が、ガラス(例えば結晶化亜鉛シリカほう酸系ガラス)を主体に構成される封着材層41により封着されている。主体金具3の先端部外周には、素子Aの突出部分を覆う金属製の二重のプロテクタ61、62がレーザー溶接等によって固着されている。このプロテクタ61、62は、キャップ状を呈するもので、その先端や周囲に、排気管内を流れる排ガスをプロテクタ61、62内に導く通気孔61a、62aが形成されている。一方、主体金具3の後端は外筒7の先端部内側に挿入され、その重なり部分においては、周方向にレーザー溶接等の接合が施されている。なお、主体金具3の外周部には、酸素センサB(主体金具3)を排気管に螺合させるための取付けねじ部31が形成されている。
【0024】
積層型酸素センサ素子Aについては、第1コネクタ51、長手状金属薄板52、さらに第2コネクタ53及び絶縁板(図示せず)(なお、これらを総称して「外部端子」という)と、リード線9とを介して、図示しない外部回路に電気的に接続されている。また、都合4本のリード線9は、外筒7の後端側に位置する防水用のグロメット8を貫通して延びている。
【0025】
なお、素子Aの長手方向において、封着材層41の少なくとも一方の側に隣接する形態で(本実施例では封着材層41の検出部Xに近い端面側に隣接して)、多孔質無機物質(例えばタルク滑石の向き物質粉末の圧粉成形体あるいは多孔質仮焼体)で構成された緩衝層42が形成されている。この緩衝層42は、封着材層41から長手方向に突出する素子Aを外側から包囲するように支持し、過度の曲げ応力や熱応力が素子Aに加わるのを抑制する役割を果たす。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の積層型ガスセンサ素子の製造方法を実施例により詳しく説明する。
2.積層型ガスセンサ素子の製造
図1は焼成後の素子の分解斜視図であり、図2は焼成前における素子Aのスルーホール近傍の断面図である。但し、図2では便宜上、対応する符号は全て焼成後の名称で付している。
【0027】
(1)未焼成酸素濃淡電池用部(焼成後、酸素濃淡電池用部1)の作製
イットリアを固溶させたジルコニア粉末を有機バインダとともに混練した生素地を用いて酸素濃淡電池用固体電解質11となる未焼成固体電解質層を形成した。その後、得られた未焼成固体電解質層における、検知電極13a及び基準電極13bが形成されることになる部位を除く表裏面に、アルミナを主成分とする未焼成絶縁ペースト(絶縁層用ペースト)により、酸素濃淡電池部絶縁層12a及び12bとなる層を各々印刷(スクリーン印刷)・乾燥させた。
【0028】
ついで、酸素濃淡電池部絶縁層12a及び12bが形成された未焼成固体電解質層の所定部位に、自身の表裏面を貫通する酸素濃淡電池部スルーホール111を形成した。そして、酸素濃淡電池部スルーホールが形成された未焼成固体電解質層に対して、再度未焼成絶縁ペーストを準備した上で、その未焼成絶縁ペーストを印刷しようとする面と反対側の面の酸素濃淡電池部スルーホールの開口部より吸引しながら、表裏面それぞれ及び酸素濃淡電池部スルーホール内壁面に未焼成絶縁層用ペーストをそれぞれ印刷(スクリーン印刷)・乾燥させた。即ち、未焼成絶縁ペーストは酸素濃淡電池部スルーホール内壁面には1層のみ形成され、酸素濃淡電池部スルーホール開口端縁及び未焼成固体電解質層の表裏面には2層形成される形態となる。これにより、酸素濃淡電池部スルーホールの開口端縁及び内壁面は、焼成後において良好な絶縁性を得ることができる。
【0029】
更に、上記酸素濃淡電池部スルーホールが形成された未焼成固体電解層の表裏面に、白金を主成分とする導電層用ペーストを所定の形状に印刷(この導電層用ペーストについても、酸素濃淡電池部スルーホールを介して接続されるように印刷を行う)・乾燥させ、検知電極13aの電極部131a、基準電極13bの電極部131b、リード部132a、132b、信号取出し用端子14となる未焼成導電パターンを形成した。これにより、酸素濃淡電池部1となる未焼成酸素濃淡電池用部を得た。なお、リード部132aの末端については、外部端子と接続する信号用取出し用端子133aとなる。
【0030】
(2)未焼成ヒータ下部(焼成後、ヒータ下部22)の作製
上記(1)と同様の未焼成固体電解質層(焼成後、ヒータ下部本体層221)を準備し、その表裏面にアルミナを主成分とする未焼成絶縁ペースト(絶縁層用ペースト)により、ヒータ下部第1絶縁層222a及びヒータ下部第2絶縁層22bとなる未焼成ヒータ下部第1絶縁層及び未焼成ヒータ下部第2絶縁層を各々印刷(スクリーン印刷)・乾燥させた。
【0031】
ついで、未焼成ヒータ下部第1絶縁層及び未焼成ヒータ下部第2絶縁層が形成されたヒータ下部本体層221となる未焼成固体電解質層の所定部位に、自身の表裏面を貫通する直径0.6mmであって、断面略円形状のヒータ部スルーホール221s及び221’を形成した。そして、ヒータ部スルーホールが形成された未焼成固体電解質層に対して、再度未焼成絶縁ペーストを準備した上で、その未焼成絶縁ペーストを印刷しようとする面と反対側の面のヒータ部スルーホールの開口部より吸引しながら、表裏面それぞれ及びヒータ部スルーホール内壁面に未焼成絶縁層用ペーストを印刷(スクリーン印刷)・乾燥させた。即ち、未焼成ヒータ下部第1絶縁層及び未焼成ヒータ下部第2絶縁層はヒータ部スルーホール内壁面には1層のみ形成され、ヒータ部スルーホール開口端縁及び未焼成固体電解質層の表裏面には2層形成される形態となる。これにより、ヒータ部スルーホールの開口端縁及び内壁面は、焼成後において良好な絶縁性を得ることができる。
【0032】
更に、ヒータ部スルーホールが形成された未焼成固体電解質層の表裏面に、白金を主成分とする導電層用ペーストを所定の形状に印刷(この導電層用ペーストについても、ヒータ部スルーホールを介して接続されるように印刷を行う)・乾燥させ、発熱抵抗体223、発熱抵抗体端子部223a及び223a’、発熱抵抗体通電端子部224及び224’となる未焼成導電パターンを形成した。ついで、この未焼成導電パターンが形成されたヒータ下部本体層221となる未焼成固体電解質層のうち、焼成されて発熱抵抗体223となる未焼成導電パターンが形成されている面に、ヒータ下部第3絶縁層222cとなる未焼成ヒータ下部第3絶縁層を印刷・乾燥させた。これにより、ヒータ下部22となる未焼成ヒータ下部を得た。
【0033】
(3)未焼成ヒータ上部(焼成後、ヒータ上部21)の作製
上記(1)と同様の未焼成固体電解質層(焼成後、ヒータ上部本体層211)を準備し、この未焼成固体電解質層のうちで、上述した未焼成ヒータ下部に積層されたときに、ヒータ部スルーホール221s及び221s’の開口と向かい合うこととなる面に、ヒータ部スルーホール221s及び221s’の開口端縁(図2におけるP)を跨る形態のアルミナを主成分とする未焼成部分絶縁パターン23a、23a’を印刷・乾燥させた(図2参照)。なお、この未焼成部分絶縁パターンは、未焼成ヒータ下部への積層ズレにより、ヒータ部スルーホールの開口端縁を跨ることができないことを防ぐべく、上述したようにヒータ部スルーホールの直径0.6mmに対して、直径(幅)1.2mm、厚さ10μmの円形状に形成するように調整している。これにより、ヒータ上部21となる未焼成ヒータ上部を得た。
【0034】
(4)積層(組立)及び未焼成部分絶縁パターンの形成
(2)にて得られた未焼成ヒータ下部におけるヒータ下部第3絶縁層222cとなる未焼成ヒータ下部第3絶縁層が形成された面に対して、(3)にて得られた未焼成ヒータ上部における未焼成部分絶縁パターン23a、23a’が形成された面が対向するように、未焼成ヒータ上部と未焼成ヒータ下部とを積層・減圧圧着し、未焼成ヒータ部組立体を得た。なお、減圧圧着するにあたっては、(1)と同様の未焼成固体電解質層そのものとブチルカルビドールとから構成される接着ペースト、もしくはヒマシ油とブタノールからなる混合物を介在させた上で行った。そして、この未焼成ヒータ部組立体におけるヒータ上部表面にヒータ上部絶縁層212となる未焼成ヒータ上部絶縁層を印刷し(これによりヒータ部2となる組立体が得られることになる)、(1)にて得られた未焼成酸素濃淡電池用部を積層・減圧圧着して、未焼成積層体を得た。
【0035】
(5)脱脂及び焼成
ついで、得られた未焼成積層体を大気雰囲気下、450℃で1時間保持することにより脱脂(脱バインダ処理)を行い、その後1500℃で1時間焼成することにより積層型酸素センサ素子Aを得た。
【0036】
(6)得られた素子A
(1)〜(5)の工程により得られた積層型酸素センサ素子Aについては、素子自体の前端から、ヒータ部スルーホール211s、211s’の該前端に最も近い位置までの長手方向の寸法が35mmになっており、素子幅が4.5mmであった。また、焼成後にクラックの発生は認められなかった。更に、得られた素子Aを図3に示すようなガスセンサとして組立た後、得られたガスセンサを750℃の擬似排気ガス中に曝し、ヒータ部2に14Vの電圧を印加して発熱抵抗体223を通電させ、この状態で500時間放置した。500時間経過後、ガスセンサを解体し、目視により素子Aの黒化の発生を観察したが、黒化の発生はみられなかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明によると、スルーホールを介して表裏面に設けられる導電部を図ったセラミックシートに固体電解質層を積層する構造を有する積層型ガスセンサ素子を得るにあたり、積層される固体電解質層のうちで、上記スルーホール上近傍に位置することになる部位までの絶縁性が確保されることになり、黒化を生じることなく、更には小型化に対応できる積層型ガスセンサ素子を効率良く製造できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】素子の分解斜視図である。
【図2】スルーホール近傍の断面図である。
【図3】ガスセンサの断面図である。
【符号の説明】
A;酸素センサ素子、1;酸素濃淡電池部、11;酸素濃淡電池部固体電解質層、12a;酸素濃淡電池部第1絶縁層、12b;酸素濃淡電池部第2絶縁層、13a;検知電極、13b;基準電極、2;ヒータ部、21;ヒータ上部、211;ヒータ上部本体層、212;ヒータ上部絶縁層、22;ヒータ下部、221;ヒータ下部本体層(基体)、221s、221s’;ヒータ下部スルーホール、222a;ヒータ下部第1絶縁層、222b;ヒータ下部第2絶縁層、222c;ヒータ下部第3絶縁層、223;発熱抵抗体、223a、223a’;発熱抵抗体端子パターン、224、224’;発熱抵抗体通電端子、23a、23a’;部分絶縁パターン、P;開口端縁、B;ガスセンサ、3;主体金具、31;取付けねじ部、32;挿通孔、41;封着材層、42;緩衝層、51;第1コネクタ、52;長手状金属薄板、53;第2コネクタ、61、62;二重のプロテクタ、61a、62a;通気孔、7;外筒、8;グロメット、9;リード線、X;検出部。
Claims (3)
- 表裏面を貫通するスルーホールを備え、該スルーホールを介して前記表裏面間を電気的に導通させる未焼成導電パターンを有する未焼成セラミックシートを作り、焼成されて固体電解質特性を呈することとなる未焼成固体電解質層を、上記未焼成セラミックシートにおける表裏面の少なくとも一方に、絶縁層となる未焼成絶縁層を介して積層する工程を備え、上記未焼成固体電解質層において、上記未焼成セラミックシートに積層されたときに上記スルーホールの開口と向かい合うこととなる面に、該スルーホールの開口端縁を跨る形態の未焼成部分絶縁パターンを形成し、その後上記積層して未焼成積層体とし、この未焼成積層体を焼成する積層型ガスセンサ素子の製造方法であって、
上記スルーホールを備える上記未焼成セラミックシートは、固体電解質から構成されており、
上記未焼成絶縁層を、上記スルーホールの内壁面及び開口端縁まで被覆されるように形成することを特徴とする積層型ガスセンサ素子の製造方法。 - 上記未焼成部分絶縁パターンは、焼成後における厚さが5μm以上となるように、上記固体電解質層上に形成されている請求項1記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法。
- 上記未焼成絶縁層と上記未焼成部分絶縁パターンは同材質である請求項1又は2に記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法。
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JP2000301291A JP4421756B2 (ja) | 2000-09-29 | 2000-09-29 | 積層型ガスセンサ素子の製造方法 |
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