JP4570091B2 - 積層型ガスセンサ素子及びガスセンサ - Google Patents
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このように、素子本体の先端部の幅寸法と、先端部の両側面を被覆する多孔質層の厚みとを合計した寸法を、素子本体の残余の部位における最大の幅寸法以下となるように、先端部の幅寸法と多孔質層の厚みを適宜調整して積層型ガスセンサ素子を構成することで、発熱抵抗体(セラミックヒータ)によって先端部(即ち、検出部)を速やかに加熱させることができ、検出部の早期活性化を良好に促すことが可能となる。
素子本体の先端部の幅寸法を基準にして、発熱抵抗体の先端部に位置する部位の最大の幅寸法を上記関係を満たすように形成することで、発熱抵抗体からの発熱によって先端部(即ち、検出部)に速やかに加熱させることができ、検出部の早期活性化を良好に促すことが可能となる。
まず、本発明の実施例に係るガスセンサ5を、図10を参照して説明する。本実施例のガスセンサ5は、図10に示すように、積層型ガスセンサ素子1が組み込まれたガスセンサであり、内燃機関の排気管に取り付けられ、排気ガス中の酸素濃度測定に使用される。このガスセンサ5では、筒状のハウジング52の内側に、検出部を突き出させた状態で積層型ガスセンサ素子1が挿通されている。なお、積層型ガスセンサ素子1は、ハウジング52内でガラスシールされることによって、ハウジング52の所定の位置に保持されている。ハウジング52の先端部外周には、積層型ガスセンサ素子1の検出部を含む先端側を覆うように二重構造のプロテクタ53が固着されている。また、このプロテクタ53には、その先端及び側周面に排気管内を流通する排気ガスを内部に導くための通気孔531が形成されている。このように、積層型ガスセンサ素子1のうちハウジング52の先端から突出する検出部を先端側が、被検知ガス(排気ガス)に晒される部分となる。なお、積層型ガスセンサ素子5の検出部を含む先端部101の両側面及び先端面には、それらの面を覆うように後述する多孔質保護層13が形成されている。
積層型ガスセンサ素子1の構造について、図1〜図3を用いて説明する。なお、図3は積層型ガスセンサ素子1の分解斜視図であり、この積層型ガスセンサ素子1は、検出素子11とセラミックヒータ12とが積層されて構成されている。この図3では、多孔質保護層13の図示を省略している。
ついで、本実施例に係る積層型ガスセンサ素子1の製造について説明する。
この積層型ガスセンサ素子1は、未焼成シート積層体を作製した後、貫通孔形成工程、充填工程、切出工程及び焼成工程を、この順に行うことにより製造される。また、焼成工程の後、被覆工程を行うことにより第2多孔質層132が形成される。
イットリアを固溶させた部分安定化ジルコニア粉末60質量%とアルミナ粉末40質量%とを、有機バインダ及び有機溶剤等とともに湿式混合してなるスラリーを用いて、固体電解質層111となる未焼成シートを作製した。この未焼成シートは32個の未焼成ガスセンサ素子を切り出すことができる大きさであり、その所定位置に素子32個分のスルーホールを形成した。なお、未焼成シートは、上記のように32個の未焼成ガスセンサ素子を切り出すことができる大きさに形成されるものであるが、個片同士は所定の間隔(捨て代)を隔てて設けられている。その後、未焼成シートの表面と裏面の所定個所に、白金を主成分とする導電ペーストを所定のパターンに印刷し、乾燥させて、検知電極112、基準電極113、それぞれのリード部1121、1131となる電極パターン、及びスルーホール導体1111となる未焼成導体を形成した。
アルミナ粉末を、有機バインダ及び有機溶剤等とともに湿式混合してなるペーストを用いて、第1アルミナ層122となる未焼成アルミナシートを形成し、素子32個分のスルーホールを形成した。その後、第1アルミナ層122となる未焼成アルミナシートの一面の所定個所に、上記(1)と同様の導電ペーストを所定のパターンに印刷し、乾燥して、発熱抵抗体121及びそれに延設されたリード部1211となる発熱抵抗体パターン、並びにスルーホール導体1221、1222となる未焼成導体を形成した。また、第1アルミナ層122となる未焼成アルミナシートの他面の所定個所に、(1)と同様の導電ペーストを用いてヒータ通電用端子パッド1241、1242となる所定の端子パターンを印刷し、乾燥した。次いで、第2アルミナ層123となる未焼成アルミナシートを第1アルミナ層122の場合と同様の方法で作製し、乾燥した後に、この第2アルミナ層123となる未焼成アルミナシートの一面を、第1アルミナ層122となる未焼成アルミナシートの発熱抵抗体パターンが形成された面に積層し、減圧圧着させた。このようにして、未焼成ヒータを作製した。なお、各未焼成アルミナシートについても、32個の第1アルミナ層122、第2アルミナ層123が切り出せる大きさを有しており、個片同士は所定の間隔(捨て代)を隔てて設けられている。
(1)で作製した検出素子用未焼成シートと、(2)で作製した未焼成ヒータとを、(1)で作製した検出素子用未焼成シートの、基準電極113及びリード部1131となる電極パターンが形成された面と、(2)で作製した未焼成ヒータの第2アルミナ層123となる未焼成アルミナシートの他面とを向かい合わせて積層した。このようにして、未焼成シート積層体を作製した。
(3)で形成した未焼成シート積層体の検出部を含む先端部のうちで未焼成ヒータの裏面(即ち、第1アルミナ層122となる未焼成アルミナシートの発熱抵抗体パターンが形成された面とは反対側の面)に対して、第1多孔質層131の一部となる未焼成第1多孔質層を形成するための第1多孔質層用ペーストをスクリーン印刷し、厚さ約30μmの塗膜を形成した。その後、塗膜を95℃で2分間乾燥させた。また、印刷に用いた第1多孔質層用ペーストは、アルミナ粉末を100質量部、有機バインダとしてポリビニルブチラールを15.5質量部、有機溶剤としてブチルカルビトールを42質量部、及び気孔化剤として粒径5〜20μmのカーボン粉末を65質量部それぞれ配合したものである。
未焼成シート積層体に、図4及び図5に示すように、略コの字状の平面形状を有し、幅寸法が500μmの貫通孔2を形成した。これにより、未焼成シート積層体のうちで検出部の形成が予定される部位を含む先端部101の両側面及び先端面の三面に対して貫通孔2が同時に形成される。つまり、未焼成シート積層体の積層方向に沿って貫通孔2を形成することによって、この貫通孔2が形成された箇所が、幅狭の先端部101を構成することになる。なお、1枚の未焼成シート積層体に対して、打ち抜き法により素子32個分の貫通孔2を形成した。また、幅が500μmの貫通孔2は、図4に示すように、未焼成シート積層体における複数の個片同士間に形成される捨て代に一部が跨るように形成した(図4において、破線で囲んだ部位が後述の工程において切り出される各未焼成素子の大きさを示す。)。
図6及び図7のように、未焼成シート積層体の下面に離型剤3を配し、また、上面にマスク4を載置した状態で、未焼成第1多孔質層131’を形成するための第1多孔質層用ペーストをスキージによって貫通孔2に充填した。その後、充填したペーストを60℃で180分間乾燥させた。充填に用いた第1多孔質層用ペーストは、上記した(4)印刷工程で用いたペーストと同じものであり、貫通孔2に充填することが容易であり、且つ充填後は垂れ流れることがない程度の粘度とした。なお、離型剤3としては、図8に示すように、表面に凹部と凸部との差が約10μmである凹凸を有し、防水加工を施した紙からなるものを用いた。また、マスク4としては、金属製であり、厚さが120μmであり、マスク孔41の幅が貫通孔2の幅500μmより400μm幅広の幅900μmのものを使用した。これにより、未焼成第1多孔質層131’が充填された未焼成シート積層体を作製した。
所定のアルミナ粉末とカーボン粉末、バインダ及び有機溶剤等を湿式混合してなるスラリーを用いて、電極保護層116となる保護層用未焼成シートを形成した。次いで、第1及び第2アルミナ層122、123となる未焼成アルミナシートと同じ組成の未焼成アルミナシートを用いて、保護絶縁層115となる保護絶縁層用未焼成シートを形成した。その後、この保護絶縁層用未焼成シートに、スルーホール導体1151、1152となる未焼成導体、及び信号取出用端子パッド1141、1142となる端子パターンを形成した。そして、上記(6)の充填工程後の未焼成シート積層体の検知電極112となる電極パターンが形成された側に、保護層用未焼成シートと保護絶縁層用未焼成シートを適宜積層し、減圧圧着させた。
(6)において貫通孔2に第1多孔質層用ペーストが充填され、(7)において未焼成シート積層体に更に保護層用未焼成シート及び保護絶縁層用未焼成シートが積層された図9に示す積層体を、破線に沿って刃物で順次切断して計32個の未焼成素子を得た。なお、各未焼成素子の切断にあたっては、未焼成シート積層体の側面と第1多孔質層用ペーストからなる未焼成第1多孔質層131’の側面との間に段差が生じないように切断を行った。また、切断後の未焼成素子において、先端部の両側面、先端面からの未焼成第1多孔質層131’の厚さが180μmとなるように切断した。
(8)において得られた未焼成素子を、大気雰囲気下、脱脂炉にて室温から20℃/時間の速度で450℃まで昇温させ、450℃で1時間保持して脱脂(脱バインダ処理)した。その後、焼成炉にて200℃/時間の速度で昇温させ、最高温度1500℃で1時間焼成した。この焼成により未焼成第1多孔質層131’に含まれる気孔化剤が焼失して気孔が生成し、第1多孔質層131が形成される。
第1多孔質層131が形成された素子本体の検出部を含む先端側の周囲全体に、アルミナ粉末、バインダ(ポリビニルブチラール)、有機溶剤、気孔化剤としてのカーボン粉末を含有するペーストを、焼成後における多孔質保護層13の素子本体の角部からの厚さが250μmとなるように印刷し、乾燥させる。その後、この状態の素子本体を大気雰囲気下にて毎時10℃で昇温していき、最高温度900℃で1時間熱処理し、第2多孔質層132、ひいては多孔質保護層13を形成した。このようにして素子本体における先端部101が残余の部分よりも幅狭に構成され、且つ先端部101が多孔質保護層13によって被覆された積層型ガスセンサ素子1を得た。
ついで、上述の実施例の変形例に係る積層型ガスセンサ素子20及びそれを組み込んだガスセンサ5について、図11〜図13を参照して説明する。なお、図11は、本変形例に係る積層型ガスセンサ素子20の斜視図であり、図12は、積層型ガスセンサ素子20の平面図(図11の上側から平面視したときの図)である。
本変形例に係る積層型ガスセンサ素子20は、検出素子11とセラミックヒータ12とを積層してなる素子本体において、検出部を含む先端部101と信号取り出し用端子パッド1141、1142及びヒータ通電用端子パッド(図示省略)が形成される後端部105との間に、先端部101から後端部105に向けて徐々に幅寸法が大きくなる中間部103を設け、先端部101の両側面を加え、中間部103の積層方向に沿った側面と先端部101の側面とを繋ぐ境界部107までを多孔質保護層13にて被覆してなる点で大きく異なる。従って、変形例に係る積層型ガスセンサ素子20のうち、上記実施例の積層型ガスセンサ素子1と同様の部分については説明を省略することにする。
例えば、上記実施例等では、酸素センサ及びそれに用いる積層型ガスセンサ素子について説明しているが、酸素センサ以外のガスセンサ、例えば、一酸化炭素センサ、NOxセンサ等の各種のガスセンサ及びそれに用いる積層型ガスセンサ素子にも本発明を適用することができる。
Claims (9)
- セラミック基体の内部に発熱抵抗体を埋設したセラミックヒータと、該セラミックヒータに積層されるとともに、先端側に一対の電極を配設した検出部が形成された固体電解質層とを含む素子本体であって、長手方向に延びる板状をなす素子本体を備える積層型ガスセンサ素子において、
該素子本体は、上記検出部を含む先端部における長手方向及び積層方向に直交する向きの幅寸法が、当該素子本体のうちで前記先端部を除く残余の部位の前記幅寸法よりも小さくなっており、上記素子本体のうち少なくとも上記先端部の上記積層方向に沿った両側面が多孔質層により被覆され、
上記素子本体は、上記残余の部分として、上記一対の検知電極及び上記発熱抵抗体と電気的に接続される複数の電極端子部が外表面に露出した後端部と、上記先端部と上記後端部との間に位置し、該先端部から該後端部に向けて徐々に上記幅寸法が大きくなる中間部とを有し、上記多孔質層は、上記先端部の両側面に加え、上記中間部の上記積層方向に沿った側面と上記先端部の側面とを繋ぐ境界部までを被覆してなる
ことを特徴とする積層型ガスセンサ素子。 - 上記多孔質層のうち、上記境界部の位置における厚みが上記先端部の側面の位置における厚みよりも厚い請求項1に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記素子本体の前記先端部の前記幅寸法と、該先端部の上記両側面を被覆する上記多孔質層の厚みとを合計した寸法が、上記素子本体の上記残余の部位における最大の上記幅寸法以下である請求項1または請求項2に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記素子本体の上記先端部の上記幅寸法をA(単位:mm)、上記発熱抵抗体のうちで該先端部に位置する部位の最大の前記幅寸法をB(単位:mm)としたときに、A×0.60<B<A×0.98の関係を満たす請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記多孔質層は、上記素子本体のうち少なくとも上記先端部の両側面を被覆する第1多孔質層と、該第1多孔質層が形成された上記素子本体の上記先端部の周囲を覆う第2多孔質層とを有する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記多孔質層は、上記素子本体のうち上記先端部の両側面を含む当該先端部の周囲を覆うように形成されており、上記素子本体の角部からの上記多孔質層の厚みが20μm以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記多孔質層は、空孔率が15%〜65%の範囲内にある請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子と、
前記検出部を先端から突き出させた状態で、前記積層型ガスセンサ素子の周方向を取り囲む筒状のハウジングと、を備えることを特徴とするガスセンサ。 - 請求項1または請求項2に記載の積層型ガスセンサ素子と、
前記検出部を先端から突き出させた状態で、前記積層型ガスセンサ素子の周方向を取り囲む筒状のハウジングと、
前記積層型ガスセンサ素子と前記ハウジングとの間に配置される絶縁性セラミックホルダと、備え、
前記積層型ガスセンサ素子は、前記素子本体における前記中間部の前記両側面の後方側が前記セラミックホルダに設けたホルダ側係合部に係合されることで、該セラミックホルダの内側に位置決めされており、前記多孔質層は、前記中間部の前記両側面のうち前記ホルダ側係合部に係合する部位から離間して形成されていることを特徴とするガスセンサ。
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