JP4050542B2 - 積層型ガスセンサ素子及びその製造方法並びにガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層型ガスセンサ素子及び積層型ガスセンサ素子の製造方法並びにガスセンサに関する。更に詳しくは、熱的強度及び機械的強度に優れる積層型ガスセンサ素子及びこのような積層型ガスセンサ素子の製造方法並びにこのような積層型ガスセンサ素子を備えるガスセンサに関する。本発明の積層型ガスセンサ素子及びガスセンサは、自動車等に用いられる各種内燃機関の排気ガス中のガス成分の検知及び測定に使用されるガスセンサ素子及びガスセンサとして好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ガスセンサ素子の最外層に形成される電極(例えば、検知電極等)を保護する目的等から、この電極の表面を覆うように多孔質部が設けられることが一般的である(特開平11−223616号公報等)。このような多孔質部は種々の方法で形成することができる。例えば、電極表面にスピネルを溶射して形成することができる(特開平9−203717号公報等)。また、未焼成ガスセンサ素子の所望部を焼成により多孔質化されるペースト中に浸漬して、このペーストを塗布した後、焼成して形成することができる(特開平9−170999号公報)。これらに対して、製造工程上簡便であること等から、焼失する成分を含有する未焼成シートを所望の位置に張り付け、その後、焼成して多孔質部を形成することもできる(特開2001−281207号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような未焼成シートを張り付けた後、焼成して得られる多孔質部161は、通常、図26や図27に示されるような概形となる。しかし、多孔質部は非多孔質な部分に比べると熱的強度及び機械的強度に劣り、特にその端部は可能であれば保護することが好ましい。
本発明は上記現状に鑑みてなされたものであり、多孔質部の端部における強度の低下を防止し、素子全体として熱的強度及び機械的強度に優れる積層型ガスセンサ素子を提供することを目的とする。更に、このような積層型ガスセンサ素子を確実に安定して得ることができる製造方法を提供することを目的とする。また、このような積層型ガスセンサ素子を備えるガスセンサを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の積層型ガスセンサ素子は、第1絶縁性基部と、固体電解質体及び該固体電解質体の表面に形成された一対の電極を有する酸素イオン導電部と、該第1絶縁性基部に対向する第2絶縁性基部と、がこの順に積層されて備えられ、
該第2絶縁性基部は、少なくとも側面方向に通気できるように多孔質部を備え、更に、該多孔質部は4つの周側面と2つの上下面とを備える板状六面体形状をなし、該4つの周側面のうちの2面又は3面を覆う非多孔質部を備え、且つ、該一対の電極のうちのいずれか一方のみが該多孔質部を介して被測定雰囲気と接するように配置されていることを特徴とする。また、上記非多孔質部は、上記多孔質部の上記第1絶縁性基部と対向しない側の面である上記上面の少なくとも端縁を覆っているものとすることができる。更に、上記第2絶縁性基部の上記第1絶縁性基部に対向しない側に凹部を備え、該凹部及び上記多孔質部を通じて該第2絶縁性基部の表裏方向に通気されるものとすることができる。また、上記多孔質部の側面を囲む上記非多孔質部からなる枠部の幅は0.2mm以上であるものとすることができる。更に、上記多孔質部の気孔率は5〜80%であるものとすることができる。
【0005】
他の本発明の積層型ガスセンサ素子は、第1絶縁性基部と、固体電解質体及び該固体電解質体の表面に形成された一対の電極を有する酸素イオン導電部と、該第1絶縁性基部に対向する第2絶縁性基部と、がこの順に積層されて備えられ、
該第2絶縁性基部は、少なくとも表裏方向に通気できる多孔質部を備え、該多孔質部の側面の一部又は側面の全部は非多孔質部により囲まれ、且つ、該一対の電極のうちのいずれか一方のみが該多孔質部を介して被測定雰囲気と接するように配置され、
該第1絶縁性基部と該酸素イオン導電部との間に参照ガス導入室又は検知室となる空洞を備え、
本積層型ガスセンサ素子の該第2絶縁性基部側から視た場合に、幅方向において、該空洞の該第2絶縁性基部に対向する側の外周線は、該多孔質部と該非多孔質部との境界線の内側に位置することを特徴とする。また、上記第2絶縁性基部の上記第1絶縁性基部に対向しない側に凹部を備え、該凹部及び上記多孔質部を通じて該第2絶縁性基部の表裏方向に通気されるものとすることができる。更に、上記多孔質部の側面の全部が上記非多孔質部により囲まれ、且つ、該多孔質部の側面を囲む該非多孔質部からなる枠部の幅は0.2mm以上であるものとすることができる。また、上記多孔質部の気孔率は5〜80%であるものとすることができる。
【0007】
本発明の積層型ガスセンサ素子の製造方法は、上記第1絶縁性基部となる未焼成第1シートを備える第1積層体と、上記第2絶縁性基部となる未焼成第2シート及び上記酸素イオン導電部となる未焼成イオン導電部を備える第2積層体と、を積層した後、焼成する工程を備え、該未焼成第2シートは、焼成されて上記非多孔質部となる未焼成非多孔質部と、焼成されて上記多孔質部となる未焼成多孔質部とを備え、且つ、該未焼成非多孔質部の焼成収縮率は該未焼成多孔質部の焼成収縮率と同じか又は大きいことを特徴とする。
また、本発明のガスセンサは、本発明及び他の本発明の積層型ガスセンサ素子を備えることを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
本発明の積層型ガスセンサ素子によると、多孔質部の強度を効果的に補うことができ、素子全体として優れた熱的強度及び機械的強度を有することとなる。また、多孔質部の側面の全部が幅0.2mm以上の非多孔質の枠により囲まれることで、特に熱的強度及び機械的強度に優れたものとすることができる。更に、第2絶縁性基部に凹部を備え、凹部通じて通気されるものとすることにより、多孔質部の強度を効果的に補うことができ、素子全体として優れた熱的強度及び機械的強度を有することとなる。
他の本発明の積層型ガスセンサ素子によると、多孔質部の強度を効果的に補うことができ、素子全体として優れた熱的強度及び機械的強度を有することとなる。
【0009】
これら本発明の積層型ガスセンサ素子においては、多孔質部の気孔率が所定のものであることにより、更に優れた熱的強度及び機械的強度が発揮される。また、第1絶縁性基部と上記固体電解質体との間に空洞を備え、積層型ガスセンサ素子の第2絶縁性基部側から視た場合に、幅方向において、空洞の第2絶縁性基部に対向する側の外周線は、多孔質部と非多孔質部との境界線の内側に位置すること、換言すれば、この空洞の外周線の投影像が多孔質部の外周線の投影像の内側に位置すること、即ち、他部に比べて応力が集中し易い多孔質部と非多孔質部との境界が空洞上に配置されない態様とすることにより、クラックや割れに対する耐久性が向上し、更に、素子全体としても機械的強度も向上させることができる。また、第2絶縁性基部と酸素イオン導電部(以下、単に「イオン導電部」ともいう)との間に他のイオン導電部を備え、且つ、イオン導電部と他のイオン導電部との間に空洞を備え、この空洞の外周線の投影像が多孔質部の外周線の投影像と重なるか又は内側に位置すること、即ち、他部に比べて応力が集中し易い多孔質部と非多孔質部との境界が空洞上に配置されない態様とすることにより、クラックや割れに対する耐久性が向上し、更に、素子全体としても機械的強度も向上させることができる。
【0010】
本発明の積層型ガスセンサ素子の製造方法によると、安定して確実に本発明及び他の本発明の積層型ガスセンサ素子を得ることができる。また、これらの積層型ガスセンサ素子のような構造であることにより、従来は第1絶縁性基部となる未焼成シート上に他部を積層して形成された素子を、第2絶縁性基部となる未焼成シート上に他部を積層して形成することが可能となり、素子設計の自由度が大幅に広がる。また、本発明のガスセンサによると、高い耐久性を発揮させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
[1]本発明の素子及び他の本発明の素子を構成する部分
本発明の積層型ガスセンサ素子及び他の本発明の積層型ガスセンサ素子は、第1絶縁性基部と、イオン導電部と、第2絶縁性基部と、の少なくとも3つの部分を備える。以下、これらの部分、及び、その他、素子の備えることができる部分について説明する。
【0012】
(1)第1絶縁性基部
上記「第1絶縁性基部」は、積層型ガスセンサ素子(以下、単に「素子」ともいう)全体の強度を後述する第2絶縁性基部と共に保障する部分である。
この第1絶縁性基部の形状及び大きさ等は特に限定されないが、通常、その厚さは0.1mm以上(好ましくは0.2〜1.5mm、更に好ましくは0.5〜1.0mm、通常2.0mm以下)である。この厚さが0.1mm未満であると素子強度の保障を十分に行うことが困難となることや、製造時に第1絶縁性基部上に他の部分となる未焼成層を積層する工程を行う場合には、この積層が困難となる場合がある。また、第1絶縁性基部は単層体であっても複層体であってもよい。
【0013】
また、第1絶縁性基部は絶縁性セラミックスにより構成されて十分な絶縁性を発揮できる。この絶縁性の程度は使用環境や素子の大きさ等により異なるため特に限定されないが、例えば、温度800℃において後述するイオン導電部が備える一対の電極間の電気抵抗値が1MΩ(好ましくは10MΩ)以上となる絶縁性を発揮できることが好ましい。このような絶縁性を発揮させることができる絶縁性セラミックスとしては、アルミナ、ムライト、スピネル、ステアタイト及び窒化アルミニウム等のうちの1種又は2種以上を主成分とするもの等を挙げることができる。これらの中でもアルミナ又はアルミナを主成分とする絶縁性セラミックスは安価であり、加工が比較的容易であるため好ましい。
【0014】
絶縁性セラミックスとして、アルミナ又はアルミナを主成分とするものを用いる場合には十分な絶縁性及び耐熱性(耐熱衝撃性等)が発揮されるように、その全体に対してアルミナを70質量%以上(より好ましくは80質量%以上、更に好ましく90質量%以上、100質量%であってもよい)含有することが好ましい。一方、その残部は、絶縁性セラミック部に直接接して積層される部位(例えば、固体電解質体等)を構成する成分を1〜20質量%含有することができる。残部に絶縁性セラミック部に直接接して積層される部位を構成する成分が含有されることにより、第1絶縁性基部と第1絶縁性基部に直接接して積層される部位との間の熱膨張差が緩和される。
【0015】
しかし、絶縁性セラミック部が特に高い絶縁性を発揮できることを要する場合は、その全体に対してアルミナを90質量%以上(より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは99.99質量%以上)含有し、且つシリカを10000ppm以下(より好ましくは1000ppm以下、更に好ましくは50ppm以下)であるか又はシリカを含有しない(測定限界以下)ものであることが好ましい。このような絶縁性セラミックスであることにより、例えば、基部の表面又は内部にヒータを備える場合であっても、ヒータから電極への電流のリークを確実に防止できる。
【0016】
(2)イオン導電部
上記「イオン導電部」は、固体電解質体と一対の電極とを備え、所定のイオン又は気体を一方の電極の側から他方の電極の側へ移動させることができる部分である。このイオン導電部は、例えば、被測定ガスの濃度を電位差として出力できる濃淡電池部や、一対の電極へ電圧を印加することにより一方の電極の側から他方の電極の側へ所定のイオン又は気体等を移動させることができるポンプセル部等として機能させることができる。このイオン導電部は、固体電解質体と一対の電極のみからなっていてもよいが、その他にも例えば、固体電解質体の内部抵抗を測定するための電極等の他の部分を備えることができる。また、このイオン導電部は、素子内に1つだけを備えていてもよいが、素子内に2つ以上を備えていてもよい。
尚、被測定ガスは、被測定雰囲気を構成するガスであって、本発明の素子又は他の本発明の素子による測定目的ガスであり、1種又は2種以上の成分からなるものである。
【0017】
(2−1)固体電解質体
上記「固体電解質体」は、イオン導電性を有するものであれば特に限定されることなく用いることができる。この固体電解質体としては、例えば、ジルコニア系焼結体(イットリア等の安定化剤を含有できる)及びLaGaO3系焼結体等を挙げることができる。これらの中でも、酸素イオンを導電させる場合には、酸素イオン導電性に特に優れたジルコニア系焼結体(イットリア等を安定化剤として含有)を用いることが好ましい。
この固体電解質体(複数のイオン導電部を備える場合には、後述の第1イオン導電部に備えられた固体電解質体を意味する)は、第1絶縁性基部及び/又は第2絶縁性基部に直接接して積層されていてもよく、電極やその他の部材を介して間接的に積層されていてもよい。
【0018】
また、固体電解質体の形状及び大きさは特に限定されない。更に、その厚さも特に限定されないが300μm以下(更に200μm以下、特に150μm以下、とりわけ50μm以下、通常20μm以上)にすることができる。特に、固体電解質体を150μm以下と薄くした場合には、素子を小型化でき、また熱伝導率がアルミナ等に比べて小さいのが通常である固体電解質体の体積を小さくでき、素子内の熱伝導性が向上し、ヒータの熱がイオン導電部に伝わり易くなるため素子の更なる早期始動が可能となる。更に、消費電力もより少なく抑えることが可能となる等、種々の優れた効果を発揮させることができる。
この固体電解質体は300μmを超えて厚い場合であっても素子としての機能は失われないが上記の優れた効果は得られ難くなる。一方、20μmより薄い場合には作製が困難となると共にイオン導電性が十分に得られ難くなる傾向にある。
【0019】
(2−2)一対の電極
上記「一対の電極」は、固体電解質体の表面に形成された電極である。この一対の電極のうちの一方のみは、後述する第2絶縁性基部の備える多孔質部を介して被測定雰囲気と接することができる電極(複数のイオン導電部を備える場合には、後述の第1イオン導電部が備える電極のうちの一方を意味する)である。また、一対の電極のうちの他方は、大気雰囲気や一定圧力の参照ガスと接し、被測定雰囲気とは接しない電極(複数のイオン導電部を備える場合には、後述の第1イオン導電部が備える電極のうちの一方を意味する)である。また、一対の電極は、各々固体電解質体の一面と他面に形成されることで対向して配置されていてもよく、また、固体電解質体の一面側に両方の電極が相互に接触しないように配置されていてもよい。
【0020】
これら一対の電極の各々の形状は特に限定されないが、例えば、幅広に形成された電極部と、幅細に形成された電極リード部とから構成することができる。また、これらの電極の大きさも特に限定されない。更に、これら一対の電極を構成する材質は特に限定されないが、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ルテニウム及びロジウムのうちの少なくとも1種を主成分(通常、各電極全体の70質量%以上)にすることができ、通常、白金を主成分とすることが好ましい。また、固体電解質体を構成する主成分を含有していてもよい。これら一対の電極の一方の電極と他方の電極とは異なる材質からなるものであっても、同じ材質からなるものであってもよい。
【0021】
(3)第2絶縁性基部
上記「第2絶縁性基部」は、多孔質部と非多孔質部とからなる絶縁性セラミックスからなる部分を備え、イオン導電部(複数のイオン導電部を備える場合には、後述の第1イオン導電部を意味する)を直接又は他部材を介して間接的に支持する部分であり、素子全体の強度を第1絶縁性基部と共に保障する部分である。この第2絶縁性基部の形状及び大きさ等は特に限定されないが、通常、その厚さは0.1mm以上(好ましくは0.2〜1.5mm、更に好ましくは0.5〜1.0mm、通常2.0mm以下)である。この厚さが0.1mm未満であると素子強度の保障を十分に行うことが困難となる場合がある。また、第1絶縁性基部と同様に製造時の積層が困難となる場合がある。また、この第2絶縁性基部は単層であってもよく、複層であってもよい。
【0022】
第2絶縁性基部を構成する多孔質部及び非多孔質部は、第1絶縁性基部を構成する絶縁性セラミックスと同様な絶縁性及び耐熱性を十分に発揮できる絶縁性セラミックスから形成されているものであることが好ましい。但し、第1絶縁性基部を形成する絶縁性セラミックスと、第2絶縁性基部を形成する絶縁性セラミックスとは、同じ組成であっても、異なる組成であってもよい。
【0023】
(3−1)第2絶縁性基部の多孔質部
上記「多孔質部」は、第2絶縁性基部の一部であって、イオン導電部(複数のイオン導電部を備える場合には、後述の第1イオン導電部を意味する)を構成する一対の電極のうちの一方と素子外の被測定雰囲気とを接触させるための部分である。この多孔質部は、電極を構成する金属がリン、鉛及びケイ素等により被毒されることを防止する作用や、素子外における被測定ガスの流速に関わらず電極に接触する時点での被測定ガスの流速を略一定にする律速作用等を発揮することができる。この多孔質部はこれらの作用を十分に発揮できるために、気孔率5%以上(より好ましくは20%以上、更に好ましくは40%以上、通常80%以下)であることが好ましい。気孔率が5%未満であると、十分な気孔率の多孔質部を備える素子に比べると応答性が十分に向上しない傾向にある。
尚、この気孔率は、見掛け体積(気孔体積を含む)Vと、空気中における質量m1と、水中に浸して気孔に十分に水を含有させた含水質量m2とを用いて、下記式▲1▼より算出される。
{(m2−m1)/V}×100(%) ・・・・ ▲1▼
【0024】
また、本発明の積層型ガスセンサ素子では、この多孔質部は、その側面の一部又は全部が第2絶縁性基部を構成する非多孔質部により囲まれている。ここでいう「側面の一部が取り囲まれる」とは、例えば、図1に示すように多孔質部161が多角形板状体(角部が丸みを帯びていてもよい)からなる場合に、その側面が素子における三方から非多孔質部162により囲まれている態様を挙げることができる。また、図2に示すように側面の一部が曲形である曲形板状体からなる場合に、その側面が素子における三方から非多孔質部162により囲まれている態様を挙げることができる。
【0025】
更に、図3に示すように多孔質部161が多角形板状体からなる場合に、その側面が素子における対向する二方向から非多孔質部162により挟み込むように囲まれている態様を挙げることができる。また、図4に示すように多孔質部161が曲形板状体からなる場合に、その側面を素子における対向する二方向から非多孔質部162により挟み込むように囲まれている態様を挙げることができる。これら図1〜4にも示されているように様に、素子の各角部(一面と他面とが交わる部位)の頂部(3つの辺が交わる部位)は非多孔質部により形成されていることが好ましく、更には、各角部も非多孔質部により形成されていることが好ましい。この頂部や角部は素子の使用時に最も激しい冷熱間サイクルに晒される部位の一つであるからである。頂部や角部が非多孔質部により形成されていることで、素子全体の熱的強度及び機械的強度を効果的に向上させることができる。
【0026】
また、多孔質部の側面の全部が非多孔質部により囲まれるとは、例えば、図5に示すように多孔質部161が多角形板状体からなる場合に、その側面の全面が非多孔質部162により囲まれている態様を挙げることができる。また、例えば、図6に示すように多孔質部161が円形板状体からなる場合に、その側面の全面が非多孔質部162により囲まれている態様を挙げることができる。この場合にも、上記と同様に素子の角部が非多孔質部により形成されていることによって、素子全体の熱的強度及び機械的強度が効果的に向上させることができる。
【0027】
このような多孔質部の側面の一部又は全面を取り囲む枠部(図1〜図6における168等)の幅は0.2mm以上であることが好ましい(素子の幅が2〜7mm程度において)。この枠部の最狭部における幅が0.2mm未満となると、焼成時や使用時の冷熱間サイクルや衝撃等に対する耐久性が十分に得られ難くなる傾向にある。また、製造時における未焼成体の取り扱いも難しくなる場合がある。
また、この多孔質部は、第1絶縁性基部には対向していない側の面に開口する凹部を備えることができる(図7における169)。この凹部を形成する枠部の(図7における168)の幅も同様な理由から0.2mm以上であることが好ましい(素子の幅が2〜7mm程度において)。
【0028】
請求項6に係る発明における第2絶縁性基部は、少なくとも側面方向に通気できるように多孔質部を備え、更に、多孔質部の第1絶縁性基部と対向しない側の面の少なくとも端縁を覆う非多孔質部を備える。ここでいう「側面方向に通気できる」とは、例えば、図8〜13に示すように多孔質部が素子の側面に露出するように形成されていることを表す。但し、素子の側面の1方向のみに露出していてもよく(例えば、図8)、2方向に露出していてもよく(例えば、図9)、更には3方向に露出していてもよい(例えば、図10)。
【0029】
また、多孔質部の一面側は第1絶縁性基部に対向しているが、他面側は第1絶縁性基部には対向していない。この他面側における多孔質部の端縁が上記「多孔質部の第1絶縁性基部に対向しない側の面」の「端縁」である。この端縁の幅は、多孔質部を第1絶縁性基部側へ押さえ込むための非多孔質部が形成できる幅であれば特に限定されないが、0.2mm以上であることが好ましい(素子の幅が2〜7mm程度において)。更に、少なくともこの端縁が非多孔質部により覆われたものとすることができる(例えば、図8〜13等)、また、多孔質部の第1絶縁性基部に対向しない側の面の全面が非多孔質部により覆われていてもよい(例えば、図8〜10等)。
【0030】
更に、この多孔質部は、第1絶縁性基部には対向していない側の面に開口する凹部を備えることができる(図11〜13における169)。この凹部を備えることにより、素子側面からだけでなく、素子の積層方向の一面側からも被測定ガスを導入することができ、被測定ガスが素子側面のみから律速導入される場合に比べると素子の応答性を向上させることができる。このような態様の素子としては、例えば、図11〜13を例示することができる。この凹部を形成する枠部(図11〜13における168)の幅も上記と同様な理由から0.2mm以上であることが好ましい(素子の幅が2〜7mm程度において)。
【0031】
(4)その他の部分
本発明の素子及び他の本発明の素子は、前述の第1絶縁性基部、イオン導電部及び第2絶縁性基部以外にもその他の部分を備えることができる。これらその他の部分としては、例えば、ヒータ、空洞、層間調節層及び律速導入部等を挙げることができる。以下、これらその他の部分について説明する。
【0032】
(4−1)ヒータ
本発明の素子及び他の本発明の素子を構成するイオン導電部は、通常、加熱により活性化されてイオン導電性を発揮できる。このイオン導電部を加熱する方法は特に限定されず、素子の設置される環境において自然に加熱(例えば、内燃機関の排気管においては排気ガスにより加熱される)されてもよく、また、別途素子内に加熱手段としてヒータを備えることもできる。ヒータを備える場合には、例えば、第1絶縁性基部及び第2絶縁性基部の少なくとも一方の基部の表面又は内部に備えることができる。また、ヒータは発熱部とヒータリード部とから構成することができ、発熱部は電力の供給により実際に昇温する部位であり、ヒータリード部は外部回路からの電力を発熱部まで導く部位である。これらの形状は特に限定されないが、例えば、発熱部はヒータリード部と比較して幅細に形成することができる。
【0033】
(4−2)空洞
また、本発明の素子及び他の本発明の素子は空洞を備えることができる。この空洞は検知室や参照ガス導入室等として機能させることができる。この空洞の形状及び大きさは特に限定されないが、積層方向の高さは1.0mm以下(より好ましくは0.5mm以下、更に好ましくは0.1mm以下、通常0.02mm以上)であることが好ましい。また、素子内において空洞を備える位置は特に限定されないが、例えば、第1絶縁性基部とイオン導電部(複数のイオン導電部を備える場合には、後述の第1イオン導電部を意味する)との間に備え、参照ガス導入室又は検知室として機能させることができる。空洞は全方向に閉じていてもよく、また、少なくとも一方向で素子外に開放されていてもよい。更に、この空洞は1つだけを備えていてもよいが、複数備えていてもよい(例えば、複数のイオン導電部を備える場合に、一のイオン導電部と他のイオン導電部とに挟まれるように備えていてもよい)。
【0034】
(4−3)層間調節層
更に、層間の高さ等を調節する層間調節層を備えることもできる。例えば、図19においては、第1イオン導電部12と第2イオン導電部13との間の一部に形成された空洞15と他部の高さをあわせるために層間調節層152及び154を備えている。
(4−4)律速導入部
また、前述のように素子が空洞を備える場合には、この空洞内に被測定雰囲気を構成する被測定ガスを律速させて導入することができる律速導入部を備えことができる。この律速導入部はどのように形成されていてもよく、例えば、被測定ガスを律速させて導入できる程度の通気性を有する律速導入用多孔質部(図17における151及び152)や、被測定ガスを律速させて導入できる程度に小さな貫通孔(図22及び図23における157)等により形成することができる。この様な律速導入用多孔質部としては、気孔率が5〜40%(より好ましくは5〜30%、更に好ましくは10〜20%)であるものが挙げられる。一方、被測定雰囲気を構成する被測定ガスを律速させて導入できる程度に小さな貫通孔としては、素子外表面における開口面積が0.5mm2以下の貫通孔を挙げることができる。
【0035】
[2]各構成部分の位置及び大きさの相関
これまでに述べたように、本発明の素子及び他の本発明の素子は、上述の各部を備えることができるが、以下では、これらの各部の素子内での位置及び各部分の大きさの相関を説明する。尚、以下において述べる各部分の投影像は、各部分の大きさと位置を反映するものである。従って、各部分の投影像を比較することにより、各部分同士の位置の相関及び大きさの相関を同時に比較することができる。
【0036】
(1)電極と多孔質部との相関
本発明の素子及び他の本発明の素子では、イオン導電部(複数のイオン導電部を備える場合には、前述の第1イオン導電部を意味する)を構成する一対の電極のうちのいずれか一方のみが多孔質部を介して被測定雰囲気と接するように配置されている。素子がイオン導電部を複数備える場合には、少なくともいずれかのイオン導電部の備える一対の電極のうちのいずれか一方の電極のみが多孔質部を介して被測定雰囲気と接するように配置されている。即ち、一対の電極のうちの一方の電極の外周線の投影像が多孔質部の外周線の投影像と少なくとも一部で重なることを意味する。この重なりは、電極の見かけ面積(多孔質を形成している凹凸を含まない面積)の30%以上(より好ましくは60%以上、更に好ましくは全面)であることが好ましい。
【0037】
上記の多孔質部と電極との相関以外、本発明の素子及び他の本発明の素子が各々備える各部の相関は特に限定されないが、各部の相関をより好ましいものとすることにより、素子の性能を大幅に向上させることも可能である。
(2)発熱部と電極との相関
例えば、ヒータの発熱部とイオン導電部が有する各電極との相関においては、発熱部からの熱をイオン導電部に効率よく伝導させることができる位置であることが好ましい。即ち、イオン導電部の備える一対の電極の各々のうち実際にイオン導電部の一部として機能しうる領域を実電極領域とした場合に、一対の電極のうちの少なく一方の実電極領域を投影した投影像は第1絶縁性基部の備えるヒータの発熱部を投影した投影像と少なくとも一部で重なることが好ましい。更に、この実電極領域の投影像が発熱部の投影像の外形線内(ヒータは複雑な形状を呈することもあるため外周線内には含まれない場合がある)にすべて含まれることが好ましく、特に、一対の電極の両方の電極の実電極領域の投影像が発熱部の投影像の外周縁内にすべて含まれることが好ましい。
【0038】
上記の実電極領域に関してより具体的に例示すると、イオン導電部が備える電極において、例えば、一面側で固体電解質体と接触していない領域は実電極領域に含まれない。また、例えば、図24に示すように2つのイオン導電部を備える態様の素子を空燃比センサ素子として使用する場合、濃淡電池として機能するイオン導電部13が備える電極のうち検知電極として機能する電極132においては、一面側で固体電解質体131と接触していても他面側が空洞(検知室)15に面してない部分は実電極領域に含まれない。また、酸素ポンプとして機能するイオン導電部12が備える電極のうちの一方の電極123においては、一面側が固体電解質体121と接触していても他面側が多孔質部161に面していない領域は実電極領域ではない。
【0039】
(3)電極と固体電解質体との相関
また、イオン導電部が備える一対の電極は、固体電解質体の一面側に両方の電極が形成されていてもよく、固体電解質体の表裏面に各々の電極が対向するように形成されていてもよい。
(4)固体電解質体と各絶縁性基部との相関
更に、固体電解質体と第1絶縁性基部又は第2絶縁性基部との相関も特に限定されず、素子の長手方向及び幅方向の各々の方向において固体電解質体は、各々の絶縁性基部と同じであってもよく、固体電解質体の方が小さくてもよい(通常、固体電解質体の方がこれら絶縁性基部よりも大きいことはない)。
【0040】
(5)固体電解質体と多孔質部との相関
また、固体電解質体と多孔質部との大きさの相関も特に限定されず、素子の長手方向及び幅方向の各々の方向において固体電解質体は、多孔質部に比べて大きくてもよく、同じであってもよく、小さくてもよいが、固体電解質体は多孔質部と同じ大きさであるか又は多孔質部よりも小さいことが好ましい。
更に、固体電解質体と多孔質部との位置の相関も特に限定されないが、素子を構成する各部分の外周線は他部に比べてクラックや割れの起点となる確率が高い部分であるため、各部分の外周線は相互に接触しないように相互に位置していることが好ましい。これにより、クラックや割れの起点となる可能性のある部位を素子内で分散させることとなり、素子のクラックや割れが効果的に防止される。従って、大きさの相関及び位置の相関から、固体電解質体の外周線の投影像は多孔質部の外周線の投影像と一部で重なるか又は重ならないように多孔質部の投影像の内部に位置することが特に好ましい。
【0041】
(6)空洞と多孔質部との相関
更に、前述の図15、16及び19等に例示されるような空洞を備える素子における空洞と多孔質部との相関も特に限定されず、素子の長手方向及び幅方向の各々の方向において空洞は、多孔質部に比べて大きくてもよく、同じであってもよく、小さくてもよい。しかし、空洞は過度に大きい必要はなく、むしろ、素子の強度を低下させる傾向にあるため、空洞は小さい方が好ましい。従って、空洞は、多孔質部に比べて素子の長手方向及び幅方向の各々の方向で同じであるか、又は小さいことが好ましい。即ち、例えば、空洞の外周線の投影像は多孔質部の外周線の投影像と一部で重なるか又は重ならないように多孔質部の投影像の内部に位置する態様を挙げることができる。更に、上記固体電解質体と多孔質部との相関におけると同様にクラックや割れの起点となる可能性のある部位が素子内で分散されることから、空洞の外周線の投影像は多孔質部の投影像と重ならないようにその内部に位置することが更に好ましい。
【0042】
[3]本発明及び他の本発明の素子の具体的構成
本発明及び他の本発明の素子は、上記[1]において説明した各部分を備え、更にこれらの各部分は上記[2]において説明したように配置される。このような素子の具体的構成は特に限定されないが、例えば、以下のような、イオン導電部を1つ備える素子、イオン導電部を2つ備える素子及びイオン導電部を3つ備える素子等を挙げることができる。
【0043】
(1)イオン導電部を1つ備える素子
図15(幅方向断面図)及び図16(分解斜視図)に例示されるように、第1絶縁性基部11、1つの空洞15、第1イオン導電部12及び第2絶縁性基部16の各々がこの順に積層されてなる、イオン導電部を1つのみ備える素子である。
この素子は、更に、例えば、第1イオン導電部を構成する第1イオン導電部用固体電解質体として酸素イオン導電性を有するものを用いて、この第1イオン導電部を酸素濃淡電池として機能させ、空洞を参照ガス導入室として用いることで、酸素センサや空燃比センサ等として用いることができる。尚、この素子でいう参照ガス導入室は、測定に際して基準となるガスを導入するための室である。この基準となるガスとしては、大気や一定濃度に保たれた各種の気体等を用いることができる。
【0044】
このような素子は、例えば、第1絶縁性基部11は、第1絶縁性基部下部111と第1絶縁性基部上部112との間に発熱部114及びヒータリード部115を備え、スルーホール116を介してヒータ取出パッド117から外部と導通されるヒータ113を備えるものとすることができる。また、第1空洞15は層間調節層153により形成することができる。更に、第1イオン導電部12は、第1イオン導電部用固体電解質体121と、この第1イオン導電部用固体電解質体の表面に形成された一対の第1イオン導電部用電極122及び123と、層間調節層124とを備えるものとすることができる。
【0045】
これらの第1イオン導電部用電極のうちの一方の電極123は、層間調節層124の端部に形成されたスルーホール125を介し、中間層非多孔質部172に形成されたスルーホール174を介し、後述する第2絶縁性基部の非多孔質部162の端部に形成されたスルーホール163を介して電極取出パッド165に接続されて、外部回路へと導出することができる。一方、電極122は、後述する中間層非多孔質部172の端部に形成されたスルーホール173を介し、後述する第2絶縁性基部非多孔質部162の端部に形成されたスルーホール163を介して電極取出パッド164に接続されて、外部回路へと導出することができる。
【0046】
また、多孔質材から形成された中間層多孔質部171及び非多孔質材から形成された中間層非多孔部172を備える中間層を備えることができる。更に、多孔質材から形成された第2絶縁性基部多孔質部161及び非多孔質材から形成された第2絶縁性基部非多孔部162を有する第2絶縁性基部を備えることができる。尚、中間層17は、第2絶縁性基部の境界167が第1イオン導電部用電極のうちの一方の電極のリード部1222と直接接しない構成とするための層である。
尚、上記にいう中間層とは、電極122と、第2絶縁性基部の多孔質部161及び非多孔質部162との境界167とが接することを防止するために設けられる層であり、電極の細りや断線を防止するものである。
【0047】
(2)イオン導電部を2つ備える素子
図17(幅方向断面図)、図18(長手方向断面図)及び図19(分解斜視図)に例示されるように、第1絶縁性基部11、第2イオン導電部13、1つの空洞15、第1イオン導電部12及び第2絶縁性基部16の各々をこの順に積層して備える素子である。尚、図18は図17のA−A’における模式的な断面図であり、図17は図18のB−B’における模式的な断面図である。
この素子は、更に例えば、第1イオン導電部及び第2イオン導電部の各々を構成する固体電解質体として酸素イオン導電性を有するものを用い、第1イオン導電部を酸素濃淡電池として機能させ、第2イオン導電部を酸素ポンプとして機能させ、空洞を参照ガス導入室として用いることで、空燃比センサ等として用いることができる。尚、この素子でいう検知室は、被測定雰囲気中に含有される酸素を第2イオン導電部の酸素ポンプ作用により導入及び導出でき、また、第1イオン導電部の濃淡電池作用により、室内の酸素濃度を測定することができる室である。
【0048】
(3)イオン導電部を3つ備える素子
図20(一部の分解斜視図)及び図21(他部の分解斜視図)に例示されるように、第1絶縁性基部11、第3イオン導電部14、第2空洞181及び第3空洞182、第2イオン導電部13、第1空洞15、第1イオン導電部12及び第2絶縁性基部16の各々がこの順に積層されてなる、イオン導電部を3つ備える素子である。尚、図20と図21は、この2つの図面で一つの素子を表すものであり、図20の最下層として示されている第1空洞15、律速導入部151及び層間調節層154の各部分は、図21の仮想的な最上層として点線で示されている位置に配置されるものである。
【0049】
この素子は、第1イオン導電部、第2イオン導電部及び第3イオン導電部の各々を構成する固体電解質体として酸素イオン導電性を有するものを用い、第1イオン導電部及び第3イオン導電部を酸素ポンプセルとして機能させ、第2イオン導電部を酸素濃淡電池として機能させ、第1空洞を検知室として用い、第2空洞を第1空洞に連通する一酸化窒素分解室とし、第3空洞を参照ガス室として用いることで、窒素酸化物センサ素子として用いることができる。
【0050】
このような素子は、例えば、第1絶縁性基部11は、第1絶縁性基部下部111と第1絶縁性基部上部112との間に発熱部114及びヒータリード部115を備え、ヒータ取出線118により外部と導通されるヒータ113を備えるものとすることができる。また、第3イオン導電部14は、第3イオン導電部用固体電解質体141と、この第3イオン導電部用固体電解質層体の表面に形成された一対の第3イオン導電部用電極142及び143と、これら一対の電極を外部回路へ各々導出する電極取出線1461及び1462と、これら一対の電極間を絶縁する絶縁層145と、層間調節層144とを備えるものとすることができる。
【0051】
更に、第2空洞及び第3空洞は層間調節層183により形成することができる。また、第2イオン導電部は、第2イオン導電部用固体電解質体131と、この第2イオン導電部用固体電解質体の表面に形成された一対の第2イオン導電部用電極132及び133と、これら一対の電極を外部回路へ各々導出する電極取出線1361及び1362と、層間調節層134とを備えるものとすることができる。更に、第1空洞から第2空洞へ被測定ガスを導入するための経路であり、多孔質材から形成された第1第2空洞連通路136を備えることができる。
【0052】
また、第1空洞15は層間調節層154により形成することができる。この第1空洞には被測定ガスを律速させて導入できる律速導部151を備えることができる。更に、第1イオン導電部12は、第1イオン導電部用固体電解質体121と、この第1イオン導電部用固体電解質体の表面に形成された一対の第1イオン導電部用電極122及び123と、これら一対の電極を外部回路へ各々導出する電極取出線1281及び1282と、層間調節層124とを備えるものとすることができる。また、多孔質材から形成された中間層多孔質部171及び非多孔質材から形成された中間層非多孔部172を有する中間層を備えることができる。更に、多孔質材から形成された第2絶縁性基部多孔質部161及び非多孔質材から形成された第2絶縁性基部非多孔部162を有する第2絶縁性基部を備えることができる。尚、中間層17は、第2絶縁性基部の境界167が第1イオン導電部用電極のうちの一方の電極のリード部1222と直接接しない構成とするための層である。
【0053】
[4]本発明及び他の本発明の素子の製造方法
以下では、本発明の素子及び他の本発明の素子の製造方法について説明する。本発明の素子及び他の本発明の素子を得る方法は特に限定されず、例えば、第1絶縁性基部となる未焼成第1シート又は第2絶縁性基部となる未焼成第2シートの一面側に、焼成されて各部となる未焼成部分(未焼成イオン導電部や、未焼成第2シート又は未焼成第1シート等)を順次積層し、得られる未焼成素子を焼成して得ることができる。
【0054】
また、本発明の製造方法のように第1積層体と第2積層体とに分けて積層する工程を経る製造方法により得ることもでき、この製造方法においては更に第1シート及び第2シートを除く他の部分となる未焼成部分は、第1積層体及び第2積層体のいずれの積層体中に形成されていてもよい。以下で説明する第1積層体と第2積層体とに分けて積層する工程を備え、且つ、第2積層体側に未焼成イオン導電部を形成する工程を備える製造方法は、特にイオン導電部を2つ以上備える素子の製造に適している。
【0055】
上記「未焼成第1シート」は、焼成されて第1絶縁性基部となるものであり、焼成されて絶縁性セラミック部となる未焼成絶縁性セラミック部を備える。この未焼成絶縁性セラミック部は、焼成されて十分な絶縁性を発揮できるものであれば特に限定されない。その形成方法も特に限定されないが、例えば、セラミック原料粉末(例えば、アルミナ、ムライト、スピネル、ステアタイト及び窒化アルミニウム等の1種又は2種以上からなる粉末、又は、これらの1種又は2種以上を主成分とする粉末)、バインダ及び可塑剤等から調合されたペーストをドクターブレード法等により、シート状に成形した後、乾燥させて、得られるグリーンシートを所望の大きさに切り出すことにより得られる素シートとして、又は、この素シートを複数枚積層したものとして得ることができる。
【0056】
この未焼成第1シートには、焼成されてヒータとなる未焼成ヒータを表面又は内部に形成することができる。この未焼成ヒータは、焼成後に通電により発熱する導電層であればよく、その形成方法は特に限定はされないが、例えば、貴金属、モリブデン及びレニウムの少なくとも1種の金属を含有する原料粉末、バインダ及び可塑剤等から調合されたペーストをスクリーン印刷法等により、素シートの表面に所望の形状に薄く塗布した後、乾燥させて得ることができる。
表面にヒータを備える第1絶縁性基部を得るためには、1枚の素シート又は複数枚の素シートが積層された複層素シートの表面に未焼成ヒータを形成することにより得ることができる。更に、内部にヒータを備える第1絶縁性基部を得るためには、素シート又は複層素シートの一面に未焼成ヒータを形成し、次いで、この未焼成ヒータを覆うように、更に他の素シート又は複層素シートを積層圧着し、乾燥させて得ることができる。
【0057】
上記「第1積層体」は、未焼成第1シートのみからなるか、又は、未焼成第1シートとその他の未焼成部分を備えるものである。このその他の未焼成部分とは、焼成されて第2絶縁性基部となる未焼成第2シート及びイオン導電部となる未焼成イオン導電部(前述のようにイオン導電部を複数備える素子においては第1イオン導電部)を除く他の部分である。この他の未焼成部分としては、例えば、焼成されて層間調節層となる未焼成層間調節層や、複数のイオン導電部を備えることとなる未焼成素子を形成する場合には、焼成されて第2イオン導電部や第3イオン導電部となる未焼成イオン導電部等を挙げることができる。
【0058】
上記「未焼成第2シート」は、焼成されて第2絶縁性基部となるものであり、焼成されて多孔質部となる未焼成多孔質部と焼成されて非多孔質部となる未焼成非多孔質部とからなる。これら未焼成多孔質部及び未焼成非多孔質部は、各々未焼成第1シートを構成する未焼成絶縁性セラミック部と同様な材質から形成することができる。但し、未焼成多孔質部及び未焼成非多孔質部は未焼成第1シートと同じ材質からなっていても、異なる材質からなっていてもよい。また、未焼成第2シートは、未焼成第1シートと形状及び大きさ等が異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0059】
未焼成第2シートを構成する未焼成多孔質部は、焼成されて十分な通気性を発揮できるものであれば特に限定されず、その形成方法も特に限定されない。例えば、セラミック原料粉末(例えば、アルミナ、ムライト、スピネル、ステアタイト及び窒化アルミニウム等のうちの1種又は2種以上からなる粉末、又は、これらのうちの1種又は2種以上を主成分とする粉末)、焼成されて焼失する粉末(例えば、カーボン粉末、テオブロミン等のキサンチン誘導体等からなる粉末又はこれらを主成分とする粉末)、バインダ及び可塑剤等から調合されたペーストをドクターブレード法等により、シート状に成形した後、乾燥させて、得られるグリーンシートを所望の大きさに切り出すことにより得られる素シートとして、又は、この素シートを複数枚積層したものとして得ることができる。
【0060】
また、未焼成多孔質部と未焼成非多孔質部との焼成収縮率は、特に限定されず、同じであってもよく、異なっていてもよいが、未焼成多孔質部の焼成収縮率は、未焼成非多孔質部の焼成収縮率よりも小さい(より好ましくは0.3〜1.5%小さく、更に好ましくは0.3〜1.1%小さく、特に好ましくは0.3〜0.7%小さく)することが好ましい。未焼成多孔質部の焼成収縮率が未焼成非多孔質部の焼成収縮率よりも小さいことにより、焼成時に未焼成非多孔質部の方が未焼成多孔質部よりも大きく収縮するため、多孔質部と非多孔質部とがより強固に接合され、得られる素子全体の熱的強度及び機械的強度を他の場合に比べて向上させることができる。
【0061】
尚、上記にいう焼成収縮率(%)とは、未焼成体の所定位置の長さをL1とし、温度1300〜1600℃において焼成して得られた焼成体の同じ位置の長さをL2とした場合に、下記式▲2▼から算出される割合X(%)をいうものとする。
X(%)={(L1−L2)/L1)}×100 ・・・ ▲2▼
上記にいう一方の未焼成多孔質部の焼成収縮率が未焼成非多孔質部の焼成収縮率よりもX3%小さいとは、未焼成多孔質部の焼成収縮率をX1%とし、未焼成非多孔質部の焼成収縮率をX2%とした場合に、X3=X2−X1であることをいうものとする。
【0062】
上記「未焼成イオン導電部」は、焼成されて固体電解質体となる未焼成固体電解質体と、焼成されて一対の電極となる一対の未焼成電極とを備える。このうち、未焼成固体電解質体は、焼成されてイオン導電性を発揮できるものであれば特に限定されない。その形成方法も特に限定されないが、例えば、セラミック原料粉末(例えば、ジルコニア粉末及びイットリア粉末等からなる粉末又はこれらを主成分とする粉末)、バインダ及び可塑剤等から調合されたペーストをドクターブレード法により成形した後、乾燥させて得られるグリーンシートを所定の大きさに切り出して得ることができる。また、同様なペーストをスクリーン印刷法により成形した後、乾燥させて得ることができる。
【0063】
一方、未焼成電極は、焼成されて導電性を発揮できるものであれば特に限定されない。その形成方法も特に限定されないが、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ルテニウム及びロジウムのうちの少なくとも1種の金属を含有する原料粉末、バインダ及び可塑剤等から調合されたペーストをスクリーン印刷法等により、未焼成固体電解質体の表面に、所望の形状に薄く塗布した後、乾燥させて得ることができる。
また、この未焼成電極を、未焼成固体電解質体の表面に上記の形成方法等により形成することで未焼成イオン導電部を得ることができる。
【0064】
上記「第2積層体」は、未焼成第2シート及び未焼成イオン導電部のみからなるか、又は、未焼成第2シート及び未焼成イオン導電部とその他の未焼成部分を備えるものである。このその他の未焼成部分とは、焼成されて第1絶縁性基部となる未焼成第1シートを除く他の部分の未焼成体であれば特に限定されないが、例えば、焼成されて層間調節層となる未焼成層間調節層や、複数のイオン導電部を備えることとなる未焼成素子を形成する場合には、焼成されて第2イオン導電部や第3イオン導電部となる未焼成イオン導電部等を挙げることができる。
【0065】
また、検知室や参照ガス導入室等となる空洞を備える素子を得る場合に、この空洞の形成方法は特に限定されないが、例えば、空洞となる積層面にスペーサを介して接合することで、焼成後に空洞を得ることができる。また、焼成により焼失するペーストを充填したり、このようなペーストから得られる未焼成シートを積層することにより、焼成後に空洞を得ることができる。
【0066】
[5]本発明のガスセンサ
本発明のガスセンサは、本発明の素子又は他の本発明の素子を備える。本発明のガスセンサは、これら以外についての構成は特に限定されないが、例えば、以下のようなものとすることができる。
即ち、素子1は、ホルダ211、タルク粉末等からなる緩衝材212及びスリーブ213(素子1とスリーブ213との間に、素子1と後述するリード線26とを電気的に接続するリードフレーム25を介する)等の熱による膨張収縮を緩和できる治具類に固定され、更に、これら全体が主体金具22に固定された構造とすることができる。また、主体金具22の一端側には被測定ガスを導入できる複数の孔を有し、且つ素子1の検知部(図25においては発熱部、濃淡電池用固体電解質体及びポンプセル用固体電解質体等を備える一端側部)近傍を覆ってガスセンサ2の一端側を保護するプロテクタ23を配設し、主体金具22の他端側にはガスセンサ2の他端側を保護する外筒24を配設することができる。更に、外筒24の一端側からは、素子1を外部回路へと接続するためのリード線26を分岐挿通する貫通孔が設けられたセパレータ27及びガスセンサ2内への水等の侵入を防止するグロメット28を備えることができる。
【0067】
このようなガスセンサ2を用いて内燃機関から排出される排気ガスを測定しようとする場合には、例えば、主体金具22の側面に螺子形状などの取付部221を設けることにより排気ガスの流通する排気管に素子1の検知部が突出するように取り付け、素子1の検知部を被測定ガスに曝して測定を行うことができる。
【0068】
【実施例】
以下、本発明を図17〜図19を用いて更に詳しく説明する。
尚、以下では解かり易さのために各部の符号を焼成前後で同じにした。
[1]積層型ガスセンサ素子の製造(図17及び図18に示される模式的な断面構造を有する素子)
〈1〉第1積層体の作製(第1積層体形成工程)
(1)未焼成第1シート11の作製
▲1▼ 素シート111及び112の作製
アルミナ粉末、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いてスラリーを得た。その後、このスラリーをドクターブレード法により厚さ0.5mmのグリーンシート2枚に成形した。次いで、一方のグリーンシートはそのまま未焼成第1シートの一部である素シート112とした。他方のグリーンシートには、その一端側の所定位置に2つのスルーホール116を設けて素シート111とした。
【0069】
▲2▼ 未焼成ヒータ113の形成
白金粉末とアルミナ粉末とを配合した混合粉末、ブチラール樹脂及びブチルカルビトールを用いてスラリーを得た。このスラリーを素シート111の一面に所定の形状にスクリーン印刷し、発熱部114となる幅細の未焼成発熱部114及びヒータリード部115となる幅広の未焼成ヒータリード部115を備える未焼成ヒータ113を形成した。
【0070】
▲3▼ 未焼成ヒータ取出パッド117の形成及び未焼成ヒータ113との接続
上記▲2▼と同様にスラリーを得た。このスラリーを未焼成ヒータ113が形成された素シート111の一面とは反対の他面側に、スルーホール116上を通過するようにスクリーン印刷し、未焼成ヒータ取出パッド117を形成した。
次いで、同様なスラリーをスルーホール116内に流し込むようにして、未焼成ヒータリード部115と未焼成ヒータ取出パッド117とを焼成後に導通できるように接続した。
【0071】
▲4▼ 素シート111及び112の張り合わせ
上記▲3▼までに得られた一方の素シート111の未焼成ヒータ113が形成された一面に、上記▲1▼で得られた他方の素シート112をその一面に第2ブタノールとブチルカルビトールとの混合液を塗布した後、積層し、圧着して未焼成ヒータ113を内部に備える未焼成第1シート11を得た。
【0072】
(2)未焼成第2イオン導電部(未焼成濃淡電池部)13の形成
▲1▼ 未焼成電極(第2イオン導電部参照電極用)133の形成
白金粉末とジルコニア粉末とを配合した混合粉末、ブチラール樹脂及びブチルカルビトールを用いてスラリーを得た。このスラリーを上記(1)で得られた積層体の素シート112の表面にスクリーン印刷し、焼成されて電極部となる幅広の未焼成電極部と、焼成されて電極リード部となる幅細の未焼成電極リード部とを備える未焼成電極133を形成した。
【0073】
▲2▼ 未焼成固体電解質体(第2イオン導電部用)131の形成
ジルコニア粉末とアルミナ粉末とを配合した混合粉末、分散剤、ブチルカルビトール、ジブチルフタレート及びアセトンを用いてスラリーを得た。このスラリーを上記(2)▲1▼で形成された未焼成電極部上に30μmの厚さにスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成固体電解質体131を得た。
【0074】
▲3▼ 未焼成層間調節層(第2イオン導電部用)134の形成
アルミナ粉末、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いてスラリーを得た。このスラリーを上記(2)▲3▼で形成された未焼成固体電解質体131を除く、素シート112及び未焼成電極133の未焼成電極リード部上に、未焼成固体電解質体131の表面と高さが合うようにスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成層間調節層134を得た。但し、後に未焼成電極133の未焼成電極リード部と未焼成電極取出パッド166とを接続するためのスルーホール135が形成されるように印刷を行った。
【0075】
▲4▼ 未焼成電極(第2イオン導電部用)132の形成
上記(2)▲1▼と同様にスラリーを得た。このスラリーを未焼成固体電解質体131及び未焼成層間調節層134の表面に印刷し、乾燥させて、焼成されて電極部となる幅広の未焼成電極部(この未焼成電極部は未焼成固体電解質体131の表面に形成した)と、焼成されて電極リード部となる幅細の未焼成電極リード部(この未焼成電極リード部は未焼成層間調節層134の表面に形成した)を備える未焼成電極132を形成した。
このようにして未焼成第2イオン導電部13を、未焼成第1シート11上に積層し、上記(1)及び上記(2)により第1積層体を得た。
【0076】
〈2〉空洞(検知室)15及び未焼成律速導入用多孔質部151及び152の形成
(1)未焼成層間調節層(空洞形成用)153及び154の形成
上記〈1〉(2)▲3▼と同様にスラリーを得た。このスラリーを上記〈1〉(2)までに形成された第1積層体の未焼成電極132と未焼成層間調節層134上にスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成層間調節層153及び154を得た。但し、後に未焼成電極132の未焼成電極リード部と未焼成電極取出パッド165と接続するためのスルーホール155が形成され、また、未焼成参照電極133の未焼成電極リード部と未焼成電極取出パッド166と接続するためのスルーホール156が形成されるように印刷を行った。更に、焼成後に空洞15が形成されるように未焼成層間調節層を153と154との2つの部位に分け、その間に空間が形成されるように印刷を行った。
【0077】
(2)未焼成律速導入用多孔質部151及び152の形成
アルミナ粉末(焼成後に空隙を残存させることができる粒径)、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いてスラリーを得た。このスラリーを第1積層体の未焼成層間調節層134上であって、未焼成層間調節層153及び154の形成されていない部分に図19に示すような形状にスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成律速導入用多孔質部151及び152を得た。尚、未焼成層間調節層153及び154並びに未焼成律速導入用多孔質部151及び152に囲まれた図19中の空洞15は検知室となる。
【0078】
〈3〉第2積層体の作製
(1)未焼成第2シート16の作製
アルミナ粉末、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いて非多孔質部用スラリーを得た。このスラリーをドクターブレード法により厚さ500μmの非多孔質部用のグリーンシートに成形した。
一方、アルミナ粉末、カーボン粉末、ブチラール樹脂、ジブチルフタレート、トルエン及びメチルエチルケトンを用いて多孔質部用スラリーを得た。このスラリーをドクターブレード法により厚さ500μmの多孔質部用のグリーンシートに成形した。
これら2種のグリーンシートから図19に示すような非多孔質部となる未焼成非多孔質部162となるシートの一端側に多孔質部161となる未焼成多孔質部161を備えるシートを形成した。次いで、スルーホール153となる孔を3つ設けて未焼成第2シート16を得た。
【0079】
(2)未焼成中間層17の形成
上記〈3〉(1)と同様の多孔質部用及び非多孔質部用の2種のスラリーを得た。このうち多孔質部用のスラリーを、上記〈3〉(1)で得られた未焼成第2シート16の備える未焼成多孔質部161を覆うようにスクリーン印刷し、乾燥させて中間層17の多孔質部171となる未焼成中間層多孔質部171を形成した。次いで、非多孔質部用のスラリーを未焼成第2シート16上であって、未焼成中間層多孔質部171が形成されていない表面にスクリーン印刷し、乾燥させて中間層17の非多孔質部172となる未焼成中間層非多孔質部172を形成した。但し、後に未焼成電極133と未焼成電極取出パッド166とを接続するためのスルーホール175が形成され、また、未焼成電極132及び未焼成第電極123と未焼成電極取出パッド165とを接続するためのスルーホール174が形成され、更に、未焼成電極122と未焼成電極取出パッド164とを接続するためのスルーホール173が形成されるように印刷を行った。
この未焼成中間層17からなる中間層17は、電極122と、第2絶縁性基部の多孔質部161及び非多孔質部162との境界167とが接することを防止するために設けられる層であり、電極の細りや断線を防止するものである。
【0080】
(3)未焼成第1イオン導電部(未焼成ポンプセル)12の形成
▲1▼ 未焼成電極122の形成
上記〈1〉(2)▲1▼と同様にスラリーを得た。このスラリーを上記で得られた未焼成中間層17の表面にスクリーン印刷し、焼成されて電極部となる幅広の未焼成電極部と、焼成されて電極リード部となる幅細の未焼成電極リード部を備える未焼成電極122を形成した。
【0081】
▲2▼ 未焼成固体電解質体(第1イオン導電部用)121の形成
上記〈1〉(2)▲2▼と同様にスラリーを得た。このスラリーを上記で得られた未焼成電極122の未焼成電極部上に30μmの厚さにスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成固体電解質体121を得た。
【0082】
▲3▼ 未焼成層間調節層124の形成
上記〈1〉(2)▲3▼と同様にスラリーを得た。このスラリーを上記で得られた未焼成固体電解質体121を除く、未焼成中間層17及び未焼成電極122の未焼成電極リード部上に、未焼成固体電解質体121の表面と高さが合うようにスクリーン印刷し、乾燥させて未焼成層間調節層124を得た。但し、後に未焼成電極133と未焼成電極取出パッド166とを接続するためのスルーホール126が形成され、また、未焼成電極132及び未焼成電極123(この時点では未形成)と未焼成電極取出パッド165とを接続するためのスルーホール125が形成されるように印刷を行った。
【0083】
▲4▼ 未焼成電極123の形成
上記〈1〉(2)▲1▼と同様にスラリーを得た。このスラリーを未焼成固体電解質体121及び未焼成層間調節層124の表面に印刷し、乾燥させて、焼成されて電極部となる幅広の未焼成電極部(この未焼成電極部は未焼成固体電解質体121の表面に形成した)と、焼成されて電極リード部となる幅細の未焼成電極リード部(この未焼成電極リード部は未焼成層間調節層124の表面に形成した)を備える未焼成電極123を形成した。
このようにして、上記(1)〜(3)により第2積層体を得た。
【0084】
〈4〉第1積層体と第2積層体との接合
一面側に空洞15と未焼成律速導入用多孔質部151及び152等が形成された第1積層体のこの面と、第2積層体の未焼成電極132が形成された面とに、第2ブタノールとブチルカルビトールとの混合液を塗布した後、接合し、圧着して未焼成素子1を得た。
〈5〉脱脂及び焼成
上記〈4〉までに得られた未焼成素子1を、大気雰囲気において、脱脂処理を行った。その後、大気雰囲気において1300〜1600℃で焼成し積層型ガスセンサ素子1を得た。
【0085】
〈6〉ガスセンサの製造
上記〈5〉までに得られた素子1を用いて図25に示すガスセンサ2を製造した。
このガスセンサ2において、素子1は主体金具22内に収められたセラミックホルダ211、タルク粉末212及びセラミックスリーブ213(センサ素子1とセラミックスリーブ213との間にはリードフレーム25を介し、センサ素子1の上端はセラミックスリーブ213内に位置する)に支持されて固定されている。この主体金具22の下部には、センサ素子1の下部を覆う複数の孔を有する2重構造の金属製のプロテクタ23が取設され、主体金具22の上部には外筒213が取設されている。また、外筒24の上部には、センサ素子1を外部回路と接続するためのリード線26を分岐挿通する貫通孔が設けられたセラミックセパレータ27及びグロメット28を備える。
【図面の簡単な説明】
【図1】一例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図2】他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図3】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図4】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図5】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図6】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図7】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図8】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図9】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図10】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図11】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図12】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図13】更に他例の第2絶縁性基部を備える本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な斜視図である。
【図14】本発明の積層型ガスセンサ素子の一例を示す幅方向における模式的な断面図である。
【図15】本発明の積層型ガスセンサ素子の他例を示す幅方向における模式的な断面図である。
【図16】図15に示す本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な分解斜視図である。
【図17】本発明の積層型ガスセンサ素子の更に他例を示す幅方向における模式的な断面図である。
【図18】図17に示す本発明の積層型ガスセンサ素子の長手方向における模式的な断面図である。
【図19】図17及び図18に示す本発明の積層型ガスセンサ素子の模式的な分解斜視図である。
【図20】本発明の積層型ガスセンサ素子の他例の一部を示す模式的な分解斜視図である。
【図21】本発明の積層型ガスセンサ素子の他例の他部を示す模式的な分解斜視図である。
【図22】本発明の積層型ガスセンサ素子の更に他例を示す幅方向における模式的な断面図である。
【図23】本発明の積層型ガスセンサ素子の更に他例を示す幅方向における模式的な断面図である。
【図24】本発明の積層型ガスセンサ素子の更に他例を示す幅方向における模式的な断面図であって、本発明における実電極領域を説明するものである。
【図25】本発明のガスセンサの一例の模式的な断面図である。
【図26】従来の積層型ガスセンサ素子の一例を示す模式的な斜視図である。
【図27】従来の積層型ガスセンサ素子の他例を示す模式的な斜視図である。
【符号の説明】
1;積層型ガスセンサ素子、11;第1絶縁性基部、111;第1絶縁性基部下部(素シート)、112;第1絶縁性基部上部(素シート)、113;ヒータ、114;発熱部、115;ヒータリード部、117;ヒータ取出パッド、118;ヒータ取出線、12;イオン導電部(第1イオン導電部)、121;固体電解質体(第1イオン導電部用)、122、123;電極(第1ポンプ電極及び第2ポンプ電極)、1221;電極部、1222;電極リード部、124;層間調節層(第1イオン導電部用)、1271、1272;絶縁層、1281、1282;電極取出線(第1イオン導電部用)、13;イオン導電部(第2イオン導電部)、131;固体電解質体(第2イオン導電部用)、132;電極(検知電極)、133;電極(参照電極)、134;層間調節層(第2イオン導電部用)、136;第1第2内室連絡路、1371、1372;絶縁層、1381、1382;電極取出線(第2イオン導電部用)、14;イオン導電部(第3イオン導電部)、141;固体電解質体(第3イオン導電部用)、142;電極(検知電極)、143;電極(参照電極)、144;層間調節層(第3イオン導電部用)、145;絶縁層、1461、1462;電極取出線(第3イオン導電部用)、15;空洞(第1空洞)、151、152;律速導入多孔質部、153、154;層間調節層(第1空洞形成用)、157;貫通孔、16;第2絶縁性基部、161;多孔質部、162;非多孔質部、164、165、166;電極取出パッド、167;多孔質部と非多孔質部との境界、168;枠部、169;凹部、17;中間層、171;中間層多孔質部、172;中間層非多孔質部、181;空洞(第2空洞)、182;空洞(第3空洞)、183;層間調節層(第2第3空洞形成用)、2;ガスセンサ、211;ホルダ、212;緩衝材、213;スリーブ、22;主体金具、221;取付部、23;プロテクタ、24;外筒、25;リードフレーム、26;リード線、27;セパレータ、28;グロメット。
Claims (11)
- 第1絶縁性基部と、固体電解質体及び該固体電解質体の表面に形成された一対の電極を有する酸素イオン導電部と、該第1絶縁性基部に対向する第2絶縁性基部と、がこの順に積層されて備えられ、
該第2絶縁性基部は、少なくとも側面方向に通気できるように多孔質部を備え、更に、該多孔質部は4つの周側面と2つの上下面とを備える板状六面体形状をなし、該4つの周側面のうちの2面又は3面を覆う非多孔質部を備え、且つ、該一対の電極のうちのいずれか一方のみが該多孔質部を介して被測定雰囲気と接するように配置されていることを特徴とする積層型ガスセンサ素子。 - 上記非多孔質部は、上記多孔質部の上記第1絶縁性基部と対向しない側の面である上記上面の少なくとも端縁を覆っている請求項1に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記第2絶縁性基部の上記第1絶縁性基部に対向しない側に凹部を備え、該凹部及び上記多孔質部を通じて該第2絶縁性基部の表裏方向に通気される請求項1又は2に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記多孔質部の側面を囲む上記非多孔質部からなる枠部の幅は0.2mm以上である請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記多孔質部の気孔率は5〜80%である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 第1絶縁性基部と、固体電解質体及び該固体電解質体の表面に形成された一対の電極を有する酸素イオン導電部と、該第1絶縁性基部に対向する第2絶縁性基部と、がこの順に積層されて備えられ、
該第2絶縁性基部は、少なくとも表裏方向に通気できる多孔質部を備え、該多孔質部の側面の一部又は側面の全部は非多孔質部により囲まれ、且つ、該一対の電極のうちのいずれか一方のみが該多孔質部を介して被測定雰囲気と接するように配置され、
該第1絶縁性基部と該酸素イオン導電部との間に参照ガス導入室又は検知室となる空洞を備え、
本積層型ガスセンサ素子の該第2絶縁性基部側から視た場合に、幅方向において、該空洞の該第2絶縁性基部に対向する側の外周線は、該多孔質部と該非多孔質部との境界線の内側に位置することを特徴とする積層型ガスセンサ素子。 - 上記第2絶縁性基部の上記第1絶縁性基部に対向しない側に凹部を備え、該凹部及び上記多孔質部を通じて該第2絶縁性基部の表裏方向に通気される請求項6に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記多孔質部の側面の全部が上記非多孔質部により囲まれ、且つ、該多孔質部の側面を囲む該非多孔質部からなる枠部の幅は0.2mm以上である請求項6又は7に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 上記多孔質部の気孔率は5〜80%である請求項6乃至8のうちのいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子。
- 請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子の製造方法であって、上記第1絶縁性基部となる未焼成第1シートを備える第1積層体と、上記第2絶縁性基部となる未焼成第2シート及び上記酸素イオン導電部となる未焼成イオン導電部を備える第2積層体と、を積層した後、焼成する工程を備え、
該未焼成第2シートは、焼成されて上記非多孔質部となる未焼成非多孔質部と、焼成されて上記多孔質部となる未焼成多孔質部とを備え、且つ、該未焼成非多孔質部の焼成収縮率は該未焼成多孔質部の焼成収縮率と同じか又は大きいことを特徴とする積層型ガスセンサ素子の製造方法。 - 請求項1乃至9のうちのいずれか1項に記載の積層型ガスセンサ素子を備えることを特徴とするガスセンサ。
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