JP4415492B2 - 制動状態検出装置及びこれを用いたアンチスキッド制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輪のスリップを回避し、十分な制動力が得られるように制御を行うアンチスキッド制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、制動時の制御として、例えばアンチスキッド制御(ABS制御)が知られている。このアンチスキッド制御は、図1(a)に示す様に、車輪のスリップ率Sが増加すると摩擦係数μの勾配が所定のスリップ率Sm(例えば10%)をピークとして大きく変化する(μピークを有する)という特性に着目して、車輪の制動力を制御するものである。具体的には、図1(b)に示すように車輪速度Vwと車輪加速度Vw’とからブレーキの増減圧のタイミングを計算し、ホイール毎のブレーキ油圧の制御を行う。
【0003】
ここで、各車輪毎の車輪加速度Vw**′は、数1の関係を有している。但し、「**」は各車輪を示す添え字であり、右前輪に関する場合は「FR」、左前輪に関係する場合は「FL」、右後輪に関する場合は「RR」、左後輪に関する場合は「RL」を意味する。以下の説明において記載する「**」も同様の意味である。
【0004】
【数1】
I/rVw**′=Fmax−Kpad・Pb**
但し、Iは車輪の慣性モーメント、rはタイヤ半径、Vw**′は車輪加速度、Fmaxは最大摩擦力、Kpadは定数、Pb**は現在のホイールシリンダ圧を示すものとする。
【0005】
この式の右辺第2項に示されるKpad・Pb**はブレーキ力を表している。数1からわかるように、スリップ率が小さい領域(図1(a)中の領域1)ではブレーキ力が増えると摩擦力も増加するため加速度Vw**′に大きな変化はないが、ブレーキ力が最大摩擦力Fmaxを超える(図1(a)中の領域2)と車輪加速度Vw**′に直接反映することになる。
【0006】
一方、車体速度VBは4輪の最大車輪速度などから求められ、車体速度VBに対する車輪速度Vw**の速度差によって算出されるスリップ率が、通常、制動力ピークに位置する目標スリップ率(例えば10%)となるようにブレーキの増減圧が制御される。例えば、車体速度VBと車輪速度Vw**との速度差が大きな場合には、ブレーキの減圧が行われる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
車体停止時の減速度の最大値は路面により異なり、アスファルトなどの摩擦の高い路面で最大で1.0G近くになる。従って、摩擦力のピークを超えたことを判断するためには1.0G以上の高い減速度が発生するまで待つ必要がある。しかしながら、このような状態まで待つと車輪速度が落ち込み、スリップが深くなる原因となっていた。
【0008】
また、4輪から正確に車体速度を求めるのは難しく、また、摩擦力がピークとなるスリップ率も路面により異なるため、正確に制動力が最大となるスリップ率に対応する速度、すなわち目標速度が計算できない。従って、目標速度の不正確さから制御遅れが発生し、このことも車輪速度が落ち込み、スリップが深くなる原因となっていた。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて成され、従来のように車体速度と車輪速度というパラメータを用いてスリップ状態を推定するのではなく、制動トルクと車輪状態変化の位相という全く新規なパラメータを用いて的確に制動状態を検出してアンチスキッド制御に適用したアンチスキッド制御装置を提供することを目的とする。また、車両の制動状態の検出が正確に行える車両用制動状態検出装置を提供することも目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、本発明者らは以下の検討を行った。
【0011】
まず、アンチスキッド制御の増圧タイミング時における制動力、車輪速度、スリップ率−μ特性の変化について検討を行った。アンチスキッド制御においては、増圧タイミング時にホイールシリンダ油圧(以下、W/C圧という)をステップ状に増圧させるパルス増圧が成される。この時の制動力、車輪速度、スリップ率−μ特性の変化を調べたところ、図2(a)〜(c)に示す結果がそれぞれ得られた。
【0012】
この結果を見てみると分かるように、制動力がピークとなる付近、つまり図中領域2では、車輪速度が急激に落ち込んでいる。これは、ブレーキトルクを路面摩擦力で支えられなくなり、タイヤトレッドのゴムブロック全体が滑り始めるからである。これに対し、制動力がピークまで達せずスリップ率も低いところ、つまり図中領域1においても、急激にではないが車輪速度が落ち込んでいることが確認された。
【0013】
これら領域1、2におけるW/C圧Pbのステップ状の変化に対する車輪速度Vwと車輪加速度Vw′の変化を図3にモデル的に示す。
【0014】
領域1においては、路面の摩擦力、すなわち路面からタイヤへの反力がスリップ率の変化に応じて変わる。このため、図3に示すように、増加したブレーキトルクに対して釣合う摩擦力が発生するスリップ率となるまで車輪速度Vwが低下する。つまり、車輪速度VwがW/C圧Pbに追随するようにステップ状に低下する。
【0015】
一方、領域2においては、路面の摩擦力が上限にあるため、加えられたブレーキトルクを支えるには上記数1に示すように車輪加速度Vw′による慣性力で吸収するしかない。このため、車輪速度VwはW/C圧に追随せず、その勾配(すなわち車輪加速度Vw′)のみが変化する。
【0016】
つまり、ステップ的な油圧変化を加えた場合に、スリップ率の低い領域1では車輪速度Vwが変化し、スリップ率の高い領域2では車輪加速度Vw′が変化する。換言すれば、車輪速度Vwは油圧変化に対して、領域1においては1次遅れで位相がずれ、領域2においては2次遅れで位相がずれる関係となる。
【0017】
従って、W/C圧をステップ状に増加させることにより制動力をステップ状に増加させた場合の車輪速度変化は、図4に示すようなモデル図で表される。つまり、制動力TBをΔTBだけ上げた時のスリップ速度Vsの変化ΔVsと、タイヤの硬さ(スティフネス)を示すばね要素Ctと、スリップ速度Vsに対するタイヤゴム接地面での摩擦力の勾配Ckを車輪速度Vwで割った値によって示されるダンパ要素との釣り合いでモデル化できる。
【0018】
なお、スリップ速度Vsは、地面とタイヤトレッドとの速度差(Vs1)とタイヤゴム部の伸びによる速度の差(Vs2)との和、すなわちVs=Vs1+Vs2と仮定でき、この場合、スリップ速度Vsとは、車体速度VBと車輪速度Vwとの速度差に相当するものとなる。よって、この場合、スリップ速度Vsの変化の位相と車輪速度Vwの変化の位相は一致する。なお、図4の説明では釣合いモデルを説明するため、スリップ速度Vs、スリップ速度の変化ΔVsというディメンジョンを用いているが、図4のスリップ速度の軸は通常スリップ率で表しても同等の意味となる。
【0019】
また、図中右側に示した特性図は、領域1と領域2におけるそれぞれのスリップ速度Vsと制動力TBとの関係を示したものであり、この図の縦軸及び横軸に沿って描いた波形は、制動力TBをΔTBだけステップ状に上昇させた時におけるスリップ速度ΔVの変化を示したものである。
【0020】
また、ばね要素Ctは、下記の数2に示されるように、トレッドブロックが路面に引張られて変形する時の係数Ccx、タイヤサイドが進行方向において軸がずれるように歪む場合のタイヤサイドの進行方向の係数Cb、タイヤサイドが回転方向にねじれる場合の係数Cbθによって表されるタイヤ各部のねじれや歪の合計に相当する。このため、数2の右辺の各項に摩擦力をかけた値はそのままタイヤ各部で発生する距離(スリップ距離)となる。
【0021】
【数2】
1/Ct=1/Ccx+1/Cb+1/Cbθ
まず、領域1のように制動力TBを増加させ始めた際には、ダンパ要素の変位がほとんどない(Ck≒∞)ため、車輪の慣性力の影響が無視できると考えると、ΔTBの変化と同期して、スリップ速度Vsの変化がΔVs=ΔTB/Ctで表される値だけステップ状に変化する(図4の領域1における特性図の縦軸及び横軸に沿って描いた波形参照)。すなわち、油圧変化に対して車輪速度Vwの位相が1次遅れでずれる関係としてモデル化される。
【0022】
続いて、領域2のように制動力が十分増加した後は、ダンパ要素の変位が大きくなるため、ダンパ要素の変位に吸収されてタイヤばねが全く伸びず、車輪の慣性力のみが作用する。このため、車輪の慣性力をJとすると、J・ΔVs′=ΔTBの関係が成立し、ΔVsは一定勾配で低下する(図4の領域2における特性図の縦軸及び横軸に沿って描いた波形参照)。すなわち、油圧変化に対して車輪速度Vwの位相が2次遅れでずれる関係としてモデル化される。
【0023】
そして、領域1から領域2への移行中においては、制動力TBをステップ状に増加させた場合における車輪速度Vwの位相のずれが、1次遅れから2次遅れに徐々に変化していく。
【0024】
図5(a)、(b)に、スリップ速度Vsと力との釣合いモデルの詳細を示し、この図を用いて上記領域1と領域2とにおけるスリップ速度Vsの変化を具体的に説明する。
【0025】
この図において、TBは制動力(ブレーキトルク)、Jはタイヤの慣性モーメント、Ctはタイヤの各種のばね要素の接合値(スティフネス)、Vsはスリップ速度を示している。また、Vs1はスリップ速度のうちタイヤのばね要素の伸びに置き換えられる成分、Vs2はスリップ速度のうち接地面の滑り量、つまりダンパ要素の変位に置き換えられる成分に相当する。
【0026】
この図に示すモデルから、以下の釣合いの式が導出される。
【0027】
【数3】
J・Vw′=TB−Ct・Vs1
【0028】
【数4】
Ct・Vs1=C/Vw・Vs2
【0029】
【数5】
Vs=Vs1+Vs2(=Vw−VB)
すなわち、数3はタイヤ回転方向における力の釣合い式、数4はタイヤバネ部分と接地面部分との力の釣合い式、数5はスリップ速度がタイヤのばね要素の伸びと接地面の滑り量との和に相当することを示す式である。
【0030】
これらの式に基づいて、制動力TBがΔTBだけ増えた場合を想定し、スリップ速度Vsの変化ΔVsを求めると、数6が導出される。但し、この数式の変形にあたり、車体速度VBの変化がスリップ速度Vsの変化ΔVsと比べて無視できる程度に小さものと仮定している。
【0031】
【数6】
Figure 0004415492
【0032】
また、数6及び上記数3〜数5に基づいて、スリップ速度Vsのうちタイヤのばね要素の伸びに置き換えられる成分の変化ΔVs1、ダンパ要素の変位に置き換えられる成分の変化ΔVs2を求めると、それぞれ数7、数8のように導出される。
【0033】
【数7】
Figure 0004415492
【0034】
【数8】
Figure 0004415492
【0035】
これらの式より、制動力TBの変化ΔTBに対して、タイヤのばね要素の伸びに置き換えられる成分の変化ΔVs1は1次遅れで位相がずれ、ダンパ要素の変位に置き換えられる成分の変化ΔVs2は2次遅れで位相がずれることが分かる。
【0036】
つまり、上記領域1のようにダンパ要素の変位がほとんどないときには、スリップ速度Vsはタイヤのばね要素の伸びに置き換えられる成分Vs1で表され、その変化ΔVs1は1次遅れで位相がずれ、上記領域2のようにダンパ要素の変位が大きくなるときには、スリップ速度Vsがダンパ要素の変位に置き換えられる成分Vs2で表され、その変化ΔVs2は2次遅れで位相がずれる。
【0037】
従って、スリップ速度Vsとほぼ変化の位相が一致する車輪速度Vwの変化に関しても、スリップ速度Vsと同様の位相遅れが発生すると言える。
【0038】
参考として、タイヤバネの定数を一定とし、接地面のすべり要素(ダンパ要素C)を小さくしていった場合におけるタイヤバネ変形による速度変化ΔVs1と、これに接地面すべり量ΔVs2を加えたスリップ速度ΔVsの変化を調べたシミュレーション結果を図6に示す。また、W/C圧Pbをステップ状に変化させた場合におけるスリップ速度変化ΔVsを調べたシミュレーション結果を図7に示す。
【0039】
これらの図からも、すべり要素(C)が高い時にはタイヤバネのみが伸びてΔVsが変化しており、すべり要素(C)が小さくなるにつれてタイヤバネの変化が減り、接地面のすべり量が増加していることが分かる。
【0040】
そこで、本発明者らは、このような制動力の変化ΔTBに対するスリップ速度の変化ΔVsの位相遅れに着目し、この位相遅れに基づいて車輪速度Vwの落ち込みを検出し、アンチスキッド制御の減圧タイミングを求めることを見出した。
【0041】
図8に、ステップ状にW/C圧Pbを変化させた場合において、所定の差分時間ΔTを設定し、その差分時間ΔTにおけるW/C圧Pbの油圧差ΔPb、車輪速度Vw、車輪速度Vwの速度差ΔVw、速度差ΔVwの差分ΔΔVwの変化を示す。
【0042】
この図に示されるように、領域1と領域2とを比較すると、W/C圧Pbや油圧差ΔPbに対して、車輪速度Vw、速度差ΔVw、速度差ΔVwの差分ΔΔVwの波形が崩れ、これらの位相が遅れていることが確認できる。
【0043】
従って、領域1から領域2への移行中に車輪速度Vw、速度差ΔVw、速度差ΔVwの差分ΔΔVwの位相がずれていくということを利用して、車輪速度Vwの落ち込みを検出することが可能であると言える。例えば、車輪速度Vwの位相をW/C圧Pbの位相と比較し、車輪速度Vwの位相遅れが所定のしきい値よりも大きくなった時に、車輪速度Vwが落ち込んだということを検出することができる。
【0044】
但し、W/C圧Pbの位相と車輪速度Vwの位相とを比較する場合、これらの零点が一致していないことから、比較することが難しい。このため、W/C圧Pbの油圧差ΔPb、車輪速度Vwの速度差ΔVwを求め、零点をほぼ一致させるようにすれば、位相の比較を容易に行うことができる。従って、油圧差ΔPbの位相と速度差ΔVwの位相とを比較することにより、速度差ΔVwの位相遅れに基づいて車輪速度Vwの落ち込みを検出することができる。
【0045】
なお、速度差ΔVwには、車体速度の減速度勾配分のオフセットが入っているため、速度差ΔVwは正確には零点を基準として表されない。このため、速度差ΔVwの差分ΔΔVwを取るようにすれば、車体速度の勾配分のオフセットを取り除くことが可能となり、油圧差ΔPbの位相と速度差ΔVwの差分ΔΔVwの位相とを比較し、差分ΔΔVwの位相遅れに基づいてより正確に車輪速度Vwの落ち込みを検出することができる。
【0046】
次に、上記検討に基づき、W/C圧Pbの油圧差ΔPbの位相と車輪速度Vwの速度差ΔVw若しくはその差分ΔΔVwの位相との比較によって、車輪速度Vwの落ち込み度合いの検出を行うパターンについての検討を行った。
【0047】
上述したように、W/C圧Pbのステップ状の変化に基づいて車輪速度Vwの位相遅れの検出が行われることから、アンチスキッド制御における増圧パターン、つまりW/C圧Pbを増圧させる際にW/C圧Pbをステップ状に変化させ、車輪速度Vwの位相遅れを検出することになる。そして、この位相遅れに基づいて車輪速度Vwの落ち込みを検出し、車輪速度Vwの落ち込み度合いが大きくなる前、すなわち上記領域2に入る前にW/C圧Pbの増圧を止め、W/C圧Pbを保持するという制御を行うことになる。これにより、μピーク近傍の制動力が得られる。
【0048】
しかしながら、車両走行中に路面が変化する可能性があり、W/C圧Pbを保持しつつも路面変化に敏感に対応する必要がある。例えば、路面変化に応じて大きくW/C圧Pbを増加させる必要がある。従って、W/C圧Pbの保持中に路面変化による車輪速度Vwの落ち込み度合いの変化を検出することも非常に重要な役割となる。このため、アンチスキッド制御における増圧パターン、保持パターン共に車輪速度Vwの変化が検出できるようにパターンの選択を行うのが好ましい。
【0049】
そこで、本発明者らは、図9に示す増圧パターンと、図10に示す保持パターンとを考え出した。これらの図では、W/C圧Pbの変化パターンの他、そのようなパターンでW/C圧Pbを変化させた場合における油圧差ΔPb、車輪速度Vw、車輪速度Vwの速度差ΔVw、速度差ΔVwの差分ΔΔVwの変化を示してある。以下、図9、図10に基づいてアンチスキッド制御における増圧パターンと保持パターンの詳細を説明する。
【0050】
差分時間ΔTの半分の時間(ΔT/2)をパルス幅とすると、図9に示す増圧パターンでは、パルス幅4つ分を一周期とし、一周期中にW/C圧Pbを増圧、増圧、保持、保持するという動作を行う。また、図10に示す保持パターンでは、パルス幅4つ分を一周期とし、一周期中にW/C圧Pbを増圧、減圧、保持、保持するという動作、すなわちステップ状に増圧させる落ち込み度合い検査用のパルスを発生させたのち、元のW/C圧Pbを保持するという動作を行う。
【0051】
これら増圧、保持パターンを見てみると分かるように、油圧差ΔPbや速度差ΔVw及び差分ΔΔVwのパターンが同じような波形になっている。これは、比較対象となる油圧差ΔPbや速度差ΔVw及び差分ΔΔVwを同じパターンとすることにより、増圧パターン及び保持パターン双方続けての比較を行えるようにするためである。
【0052】
従って、図9、図10に示す増圧、保持パターンを採用することにより、増圧パターン、保持パターンを連続して行っても的確に油圧差ΔPbと速度差ΔVw又は差分ΔΔVwとの比較が行え、増圧パターンの時だけでなく保持パターンに移行した後にも車輪速度Vwの変化を検出することができる。
【0053】
なお、演算処理のフィルタとして、単純な差分処理を採用すれば、極力遅れを伴わずに位相計算を実現できる。すなわち、通常フィルタ等を用いた場合には、演算結果に遅れ成分を伴うので位相演算の精度に悪影響を与えるが、差分処理を用いれば、極力悪影響を低減できる。なお、図9、図10に示した油圧のパターンは、一周期で差分の影響が完結するように設定されている。すなわち、図9、図10の油圧差ΔPbが一周期でもとの形に戻るように油圧Pbの一周期の形が設定されている。
【0054】
また、図9、図10では、アクチュエータとして3位置弁、2位置弁を用いることを前提としてステップ状の油圧変化(Pb)が示されているが、例えばリニア弁等の緩やかな油圧変化を可能とするアクチュエータを用いても良い。この場合、2位置弁を用いた際のステップ状の変化における立ち上がり、立ち上がり部で発生する高調波成分である油圧変化のノイズ周波数を除いた油圧変化の設定とすると、ノイズの悪影響をさらに低減できる。
【0055】
なお、増圧パターンにより早急にW/C圧Pbを増圧させたい場合には、図11(a)に示すように増圧パターンにおける増圧幅を変化させ、最初の一周期には増圧幅を小さく設定しておき、二周期目からは増圧幅を大きく設定することも可能である。例えば、図11(b)に示すように、保持パターンの際に位相遅れφVwの変化に基づいて路面変化が検出された場合には、路面変化に応じてW/C圧Pbを増圧させることになるが、なるべく早急にW/C圧Pbを増圧させたい場合がある。このような場合に、増圧パターンにおける増圧幅を調整することが有効である。
【0056】
本発明は上記検討に基づいて成され、請求項1に記載の発明においては、車両の各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、各車輪にかかるブレーキトルク又はホイールシリンダ圧取得するトルク取得手段と、ブレーキトルクをパルス的に変化させるトルク変化手段と、トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の変化に対する、車輪速度検出手段により検出された車輪速度の変化の位相遅れを検出する位相遅れ検出手段と、位相遅れ検出手段により検出された位相遅れが所定値以上である場合に、車両と路面との摩擦力が最大値又はその近傍値に達していることを検出する制動状態検出手段と、を備えていることを特徴としている。
【0057】
このように、ブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の変化に対する車輪速度の変化の位相遅れを検出し、この位相遅れが所定値以上である場合に、車両と路面との摩擦力が最大値又はその近傍値に達していることを検出することができる
【0058】
請求項2に記載の発明においては、トルク変化手段にて、車種によって予め定まっているサスペンション系の共振振動の周期より低い周期で、ブレーキトルクをパルス的に増加させることを特徴としている。
【0059】
このように、車種によって予め定まっているサスペンション系の共振振動の周期より低い周期で、ブレーキトルクをパルス的に増加させることによって、その時の車輪速度の変化を検出し、その時の車輪速度の変化の位相遅れに基づいて制動状態を検出することができる。
【0060】
このように、車種によって予め定まっているサスペンション系の共振振動の周期より低い周期で、ブレーキトルクをパルス的に増加させると、制動状態検出に用いる値と、車両種々で定まっているノイズとしての共振振動とが同調せず、制動状態の検出精度およびアンチスキッド制御の正確性が向上できる。なお、サスペンション系の共振同期は、通常車体上下共振で15Hz、車体前後共振で40Hz程度であるので、ホイールシリンダへのパルス増圧の同期は15Hzより小さい同期とすると良い。
【0061】
また、サスペンション系の共振現象によるノイズの影響を低減するため、15Hzよりも小さい車輪速度信号に対するフィルタ処理等による周波数解析で抽出し用いるようにすると良い。
一方、請求項に示すように、トルク変化手段では、制動状態検出手段により車両と路面との摩擦力が最大値又はその近傍値に達していることが検出されている場合に、ブレーキトルクの増加及び減少を交互に繰り返して同ブレーキトルクをパルス的に変化させ、制動状態検出手段により車両と路面との摩擦力が最大値又はその近傍値に達していることが検出されていない場合に、ブレーキトルクの増加のみを繰り返して同ブレーキトルクをパルス的に変化させることもできる。
【0062】
請求項4に記載したように、位相遅れ検出手段では、所定の差分時間前に前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値とその現在値との差である速度差ΔVwを算出し、前記差分時間前に前記トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、前記トルク差の変化に対する前記速度差ΔVwの変化の位相差を前記位相遅れとして検出することができる。
また、請求項5に記載したように、位相遅れ検出手段では、所定の差分時間前に車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値とその現在値との差である速度差ΔVwを算出し、速度差ΔVwの差分時間前から現時点までの平均値を算出し、差分時間前にトルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、トルク差の変化に対する、速度差ΔVwからその平均値を除いた値の変化の位相差を、位相遅れとして検出することもできる。
【0063】
また、請求項6に記載したように、位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値とその現在値との差である速度差ΔVwを算出し、速度差ΔVwの差分時間前から現時点までの平均値を算出し、差分時間前にトルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、トルク差の差分時間前から現時点までの平均値を算出し、トルク差からその平均値を除いた値の変化に対する、速度差ΔVwからその平均値を除いた値の変化の位相差を、位相遅れとして検出することもできる。
また、請求項7に記載したように、位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値と現在値との差である速度差ΔVwを算出し、差分時間前の速度差ΔVwとその現在値との差分ΔΔVwを算出し、差分時間前にトルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、トルク差の変化に対する差分ΔΔVwの変化の位相差を位相遅れとして検出することもできる。
【0064】
また、請求項8に記載したように、位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値と現在値との差である速度差ΔVwを算出し、差分時間前の速度差ΔVwとその現在値との差分ΔΔVwを算出し、差分ΔΔVwの差分時間前から現時点までの平均値を算出し、差分時間前にトルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、トルク差の変化に対する、差分ΔΔVwからその平均値を除いた値の変化の位相差を、位相遅れとして検出することもできる。
さらに、請求項9に記載したように、位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値と現在値との差である速度差ΔVwを算出し、差分時間前の速度差ΔVwとその現在値との差分ΔΔVwを算出し、差分ΔΔVwの差分時間前から現時点までの平均値を算出し、差分時間前にトルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、トルク差の差分時間前から現時点までの平均値を算出し、トルク差からその平均値を除いた値の変化に対する、差分ΔΔVwからその平均値を除いた値の変化の位相差を、位相遅れとして検出することもできる。
【0065】
これら請求項1ないし9に記載の制動状態検出装置は、当該制動状態検出装置による制動状態の検出結果に基づいて、アンチスキッド制御を行うアンチスキッド制御装置に備えられると好適である。
【0066】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図12に、本実施形態における路面状態識別装置を適用したアンチスキッド制御装置の全体構成を示す。以下、この図に基づいてアンチスキッド制御装置の構成についての説明を行う。
【0067】
右前輪1、左前輪2、右後輪3及び左後輪4の各々に電磁式、磁気抵抗式等のの車輪速度センサ5、6、7、8が配置され、各車輪1〜4の回転に応じた周波数のパルス信号が出力される。さらに、各車輪1〜4には、各々油圧ブレーキ装置(ホイールシリンダ)11、12、13、14が配置され、各車輪1〜4に制動力を発生させるようになっている。マスタシリンダ16からの油圧(液圧)は、アクチュエータ(制御弁)21、22、23、24及び各油圧管路を介して、各ホイールシリンダ11〜14に送られる。
【0068】
ブレーキベダル25の踏み込み状態は、ストップSW26によって検出される。ブレーキベダル25が踏み込まれて車両の制動が開始されると、このストップスイッチ26からオン信号が出力され、逆に、車両の非制動時にはオフ信号が出力される。
【0069】
リザーバ28a、リザーバ28bは、アンチスキッド制御中、ホイールシリンダ圧の減圧時等に各ホイールシリンダ11〜14から排出されたブレーキ液を一時的に貯留するものである。リザーバ28a、28bに貯留されたブレーキ液は、モータ(図示せず)によって駆動される油圧ポンプ27a、27bによって吸引、吐出される。
【0070】
アクチュエータ21〜24は、電子制御回路(ECU)40によって制御され、アンチスキッド制御中にホイールシリンダ11〜14にかかるブレーキ液圧を調整し、各車輪1〜4のそれぞれに対する制動力を制御する。各アクチュエータ21〜24は、増圧モード、減圧モード、保持モードを有する電磁式3位置弁であり、アクチュエータ21に示すA位置でホイールシリンダ11のホイールシリンダ圧を増圧し、B位置でホイールシリンダ圧を保持し、C位置でホイールシリンダ11に係わっていたブレーキ液をリザーバ28aに逃がしホイールシリンダ圧を減圧する。なお、他のアクチュエータ22〜24もこれと同様の作動を行う。これらの3位置弁は非通電時に増圧モードとなり、通電時にその電流レベルにより保持または減圧モードとなる。
【0071】
電子制御回路40は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等から成るマイクロコンピュータから構成されている。この電子制御回路40は、イグニッションスイッチ41がオンされることによって、図示しない電源から電力が供給され、車輪速度センサ5〜8及びストップスイッチ26からの信号を受け、ブレーキ力制御のための演算制御等を行い、アクチュエータ21〜24に対する駆動制御信号を出力する。
【0072】
図13に、電子制御回路40の制御ブロックの一部を表した図を示す。この図に示されるように、電子制御回路40には、ピークサーチ部50とリカバリー部60、及び油圧サーボ70が備えられている。ピークサーチ部50とリカバリー部60とがスイッチ71によって選択可能に構成され、車両の状態に応じてピークサーチ部50による制御を行うか、もしくはリカバリー部60による制御を行うかが選択されたのち、ピークサーチ部50とリカバリー部60のいずれか一方からの制御信号が油圧サーボ70に伝えられるようになっている。そして、油圧サーボ70によって、電磁弁21〜24を増圧モードに切替える増圧時間、減圧モードに切替える減圧時間、保持モードに切替える保持時間が算出されると共に、増圧・減圧・保持時間からW/C圧Pbの算出値が求められ、各種電磁弁コントローラの制御が行われるようになっている。なお、スイッチ71は通常時にはピークサーチ部50側に接しており、後述するように車輪速度Vwの落ち込み量が大きくなるとリカバリー部60側に接するようになっている。
【0073】
ピークサーチ部50は、上記した図9、図10で説明した増圧、保持パターンを出力してμピークの近傍の制動力が得られるようなW/C圧制御を行う役割を果たす。このピークサーチ部50には、油圧サーボ70が算出したW/C圧Pbに基づいて油圧差ΔPbを算出する油圧差算出部51と、車輪速度センサ5〜8からの信号に基づいて車輪速度vwの速度差ΔVwを算出する速度差算出部52とが備えられていると共に、これら各部51、52による算出値に基づいて位相差を検出する位相検出部53と、検出された位相差に基づいて増圧・保持パターンの選択を行う増圧・保持パターン選択部54とが備えられている。これらの構成により、増圧・保持パターンが選択されると、油圧サーボ70によって算出されたW/C圧Pbと選択された増圧・保持パターンとが足し合わされ、実際に要求されるW/C圧Pbに対応する制御信号PNが、スイッチ71を介して油圧サーボ70に伝えられるようになっている。なお、油圧差算出部51、速度差算出部52、位相検出部53が、本発明にいうブレーキトルクに影響する値の検出手段、車輪速度の変化を検出する手段、位相差を検出する手段に相当し、油圧差算出部51および速度差算出部52では、言い換えれば、それぞれ油圧差ΔPbを算出する差分処理および速度差ΔVwを算出する差分処理が行われている。なお、位相検出部53の詳細については後述する。
【0074】
リカバリー部60は、摩擦の高い路面から低い路面に移ったり、路面μが一定でない状態(まだら状態)になっているために、μピークよりも高いW/C圧が加えられ車輪速度が落ち込んでしまった場合に、適切にその落ち込みを修復する役割を果たす。このリカバリー部60には、μピーク近傍となる最大摩擦力相当の圧力PMを推定する最大摩擦力相当圧力推定部61と、車輪速度Vwの変化に基づいて車輪速度Vwの落ち込み量WPを算出する落ち込み量算出部62とが備えれている。これら最大摩擦相当圧力PMと落ち込み量WPとから要求されるW/C圧Pbに対応する制御信号PNが求められる。そして、落ち込み量算出部62で算出された落ち込み量WPが所定のしきい値よりも大きい場合には、スイッチが駆動されてリカバリー部60側に接し、最大摩擦相当圧力PMと落ち込み量WPとから求められた制御信号PNが油圧サーボ70に伝えられるようになっている。
【0075】
ここで、位相検出部53の概略図を図14に示し、位相検出部53の詳細について説明する。位相検出部53は、W/C圧Pbの油圧差ΔPbの位相と車輪速度Vwの速度差ΔVw又はその差分ΔΔVwの位相との差を検出する。
【0076】
但し、本実施形態では、油圧差ΔPbや速度差ΔVw又は差分ΔΔVwに含まれ得るオフセットを除去し、検出ノイズを極力少なくするべく、油圧差ΔPbからは油圧差ΔPbの平均値Mean(ΔPb)、速度差ΔVwからは速度差ΔVwの平均値Mean(ΔVw)、差分ΔΔVwからは差分ΔΔVwの平均値Mean(ΔΔVw)をそれぞれ差し引いた値を位相検出部53への入力値として用いている。
【0077】
なお、位相検出部53に入力される油圧差ΔPbや速度差ΔVw又は差分ΔΔVwの検出タイミング、すなわち油圧差検出部51や速度差検出部52での検出タイミングが一致していないと正確な位相差を検出できないため、位相検出部53の差分時間ΔT、パルス幅ΔT/2、増圧、保持パターンの一周期を共通させており、本実施形態では、差分時間ΔT=0.1sec、パルス幅ΔT/2=0.05sec、一周期=0.2secに設定している。また、油圧差ΔPbや速度差ΔVw又は差分ΔΔVwの各平均値はパルス同期T=0.2sec毎に算出されたものを用いている。
【0078】
そして、位相検出部53では、以下の数式に基づいて位相差を検出している。これらの数式のうち、数9は1次遅れモデルを示し、数10はモデルパラメータを示し、数11は回帰ベクトルを示している。そして、数12は最小2乗法を用いてモデルのパラメータを導出する推定式を示している。なお、a、bは定数e(t)はエラー分を示す。
【0079】
【数9】
Figure 0004415492
【0080】
【数10】
Figure 0004415492
【0081】
【数11】
Figure 0004415492
【0082】
【数12】
Figure 0004415492
【0083】
そして、数12から求められたパラメータから位相遅れが算出される。これらの数式のうち、数13はfoでの伝達式を示しており、数14はfoでのゲイン計算式を示しており、数15はfoでの位相遅れの計算式を示している。なお、foは周波数である。
【0084】
【数13】
Figure 0004415492
【0085】
【数14】
Figure 0004415492
【0086】
【数15】
Figure 0004415492
【0087】
また、パラメータ推定する入出力の時間幅を広げると、以下の式で表される。これらの数式のうち数16は数9の1次遅れモデルを修正した修正モデル式であり、数17は修正モデル式における回帰ベクトルを示している。この回帰ベクトルの式を上記数12に代入することで、同様に最小2乗法を用いたパラメータを導出することができる。
【0088】
【数16】
Figure 0004415492
【0089】
【数17】
Figure 0004415492
【0090】
なお、ここでは最小2乗法を用いたパラメータによるモデル同定を利用する場合を説明しているが、この他、相関法や逐次最小2乗法、逐次相関法なども利用できる。参考として、相関法による推定式を数18、数19、数20に示す。これらの数式のうち、数18は回帰ベクトル、数19は相関ベクトル、数20はモデルの推定式を示している。
【0091】
【数18】
Figure 0004415492
【0092】
【数19】
Figure 0004415492
【0093】
【数20】
Figure 0004415492
【0094】
図14では、u(t)=ΔPb−Mean(ΔPb)、y(t)=−(ΔVw−Mean(ΔVw))又はy(t)=−(ΔΔVw−Mean(ΔΔVw))と置き換えて位相比較器53に入力しているが、サスペンションノイズ対策としてy(t)の値をローパス処理したものを入力してもよい。この場合、フィルタする周波数はサスペンション周波数を除けるように設計する。例えば、40Hzのサスペンション周波数を除くようにする。
【0095】
また、位相比較器53に入力するとき、入力ゲインの大小による位相計算の応答結果に与える影響を除くため、u(t)、y(t)のゲインを一定に保つようにすることも効果がある。
【0096】
これは、uK、yKをuK=k×u(t)+(1−k)×ukおよびyk=k×y(t)+(1−k)×yk(ただし、kは定数(例えば0.2)である)により求め、u(t)=u(t)/uk;y(t)=y(t)/ykとすることで可能である。なお、ukはu(t)のゲインであり、ykはy(t)のゲインである。
【0097】
次に、上記構成の電子制御回路40が実行するアンチスキッド制御を、図15、図16に基づいて説明する。
【0098】
図15は、アンチスキッド制御全体を示すフローチャートである。この制御は、一定の車輪速度サンプリング間隔に従って実行され、本実施形態の場合ではCPUの割り込み機能を用いてこれを実現している。割り込み間隔は例えば8msec程度に設定される。
【0099】
まず、ステップS100では推定車体速度VBを演算する。例えば、車輪速度VBの最大値に基づいて推定車体速度の演算を行っている。すなわち、後述するステップS300で演算される各車輪の車輪速度Vw**の中から最大車輪速度を選択すると共に、前回の推定車体速度演算処理によって得られた前回の推定車体速度に対して、実際の車両走行状態で取り得る車両加速度の上限値と下限値(車両減速度の上限値に相当)とを設定し、最大車輪速度が上・下限値によって規定される範囲内の速度であれば、その最大車輪速度を推定車体速度VBとし、範囲外であれば、上・下限値によって規定される制限速度を推定車体速度VBとする。
【0100】
続く、ステップS200ではアンチスキッド制御の開始、終了を判定する。例えば、ブレーキSW26がONしており4輪のうちいずれかが指定減速度を上回った時がアンチスキッド制御の開始条件としている。具体的には、フロント輪が0.8G、リア輪が0.6Gで制御開始と判定する。
【0101】
なお、μピークは、路面、速度によって異なるため、ここではアスファルト路面を想定し、速度に応じて上記制御の開始判定レベルをマップで切り替えるようにしている。
【0102】
そして、ステップS300では、各輪の車輪速度センサからの信号のパルス幅より計算した車輪速度をもとに、各輪のW/C圧Pbをコントロールすることを行っている。
【0103】
図16は、各輪制御の詳細を示したフローチャートであり、この図に基づき各輪制御について説明する。
【0104】
まず、ステップS101では、上述した位相差検出部53により、W/C圧Pbの油圧差ΔPbと車輪速度Vwの速度差ΔVw又はその差分ΔΔVwに基づいて、各輪における位相遅れφ**を演算する。続く、ステップS102では、車輪速度Vwと推定車体速度VBに基づいて、車輪速度Vwが最大摩擦力に相当するピークのスリップ率から落ち込んだ場合の処理に必要なパラメータであるWパラメータWP**を計算する。このWパラメータは、従来制御と同様にピークを超えた場合に発生する加速度をフィードバックする方法であるが、速度の偏差を以下のように微分項、定常項、積分項として各項にK1、K2、K3の重みづけし、これらを足し合わせたものである。
【0105】
【数21】
WP**=K1(ΔVw**−ΔVB)+K2(Vw**−VB)+K3Σ(Vw**−VB)
ただし、ΔVw**、ΔΔVw**、ΔVBは、以下の数式のように0.1secに相当する
期間の変化を求めている。
【0106】
【数22】
ΔVw** =Vw**(n)−Vw**(n−N)
【0107】
【数23】
ΔΔVw**=ΔVw**(n)ーΔVw**(n−N)
【0108】
【数24】
ΔVB=VB(n)−VB(n−N)
なお、N=0.1 /Ts(ただし、Tsはサンプリングサイクルを示す)である。
【0109】
続いて、ステップ103では、パラメータWP**の絶対値が所定のしきい値Krecよりも大きいか否かを判定し、制動力がμピークを超えていたり、段差等でタイヤに外力が加わった可能性があるか否かを判断する。そして、肯定判定されれば、ステップS104、S105に進んでリカバリー処理に移り、否定判定されればステップS106〜S109に進んでピークサーチ処理に移る。
【0110】
リカバリー処理では、車輪速度の急な落ち込みから適性なスリップ率に復帰させる処理が行われる。以下に、リカバリー処理について示す。
【0111】
ステップS104では、最大摩擦力を発生させる相当の油圧PM**を求める。ここでの式は以下のように導かれている。すなわち、数25に示す車輪減速度Vw**′とブレーキ圧Pb**の関係は、最終的には数26に示すような車体加速度VB′で最大摩擦力Fmaxに釣り合うブレーキ圧PM**の関係に置き換えられる。数25、数26からFmaxを除くことによりPM**を求める数27に変形できる。但し、Vw**′、VB′共に微分を必要とし、そのまま計算するとノイズが大きくなるため、微分をとりやめ、数27を一定時間積分して平均化した数28にて計算している。そして、PM**とVB′がわかればFmaxを求めることもできる。言い換えれば数27は最大摩擦力のオブザーバとなっている。
【0112】
【数25】
I/rVw**′=Fmax−Kpad・Pb**
【0113】
【数26】
I/rVB′=Fmax−Kpad・PM**
【0114】
【数27】
PM**=I/r/Kpad(Vw**′−VB′)+Pb**
【0115】
【数28】
Figure 0004415492
【0116】
ただし、ΔVw**、ΔVBは、以下の数式のように0.1secに相当する期間の変化を求めている。
【0117】
【数29】
ΔVw** =Vw(n)−Vw(n−N2)
【0118】
【数30】
ΔVB=VB(n)−VB(n−N2)
なお、Iは車輪の慣性モーメント、rはタイヤ半径、Vw**′は車輪加速度、Fmaxは最大摩擦力、Kpadはブレーキパッド定数、Pb**は現在のW/C圧、N2は0.1sec相当のサンプリング個数(=0.1/Ts)である。
【0119】
そして、ステップS105では、ステップS104で求めた最大摩擦力Fmaxに釣り合うブレーキ圧PM**の値と、速度差のフィードバック要素であるWP**にゲインKwpを掛けたものとを足し合わせ、必要とされるW/C圧(出力油圧)PN**を計算する。
【0120】
一方、ピークサーチ処理では、位相差検出部によって検出された位相差に基づいて、アンチスキッド制御における増圧パターン、保持パターンいずれを行うかを選択する。
【0121】
まず、ステップ106では、検出された位相差φ**が所定のしきい値φthより大きいか否かを比較する。そして、位相遅れが小さい、所定のしきい値φthよりも小さい場合(例えば図2の領域1の場合)には、ステップS107に進み増圧パターンが採用される。逆に、位相遅れが大きく、所定のしきい値φthよりも大きい場合はすでに制動力がμピーク近くにあると判断され、ステップS108に進み保持パターンが採用される。
【0122】
なお増圧パターンは図10に示す様に最初のステップは増圧幅は小さいが2ステップ以降は路面の移り変わりに早く対応するために、大きな上げ幅としてある。また、保持パターンは保持パターンに入る前に電磁弁に送られた保持出力以外の信号が増圧信号か減圧信号かによって、保持パターンを開始する信号を切り替えている。すなわち、保持以外の最後の出力が増圧であれば減圧が先行した保持パターンとなり、保持以外の最後の出力が減圧であれば増圧が先行した保持パターンとなる。
【0123】
また、このとき、増圧パターン、保持パターンともにパターン開始からの時間でΔPN出力するようにしている。すなわち増圧パターン開始後0.05sec経過したらホイールシリンダ圧を0.5MPa増加、増圧パターン開始後0.1sec経過したらさらにホイールシリンダ圧を0.5MPa増加する様にΔPNを出力する。
【0124】
同様に保持パターンの場合は保持パターン開始後0.05sec経過したら0.05MPa増加、保持パターン開始後0.1sec経過したらさらに0.05MPa減圧する様にΔPNを出力する。
【0125】
この時、ΔPNの値があまりに小さすぎると、最終的に電磁弁に送られる増圧信号TUP**や減圧信号TDW**が小さくなり、電磁弁が応答しなくなる。また、応答しても車輪速度の変化が現れないほど小さいと位相遅れが検出できない。
【0126】
従って、TUP**、TDW**ともに3msec以上となるようにΔPNを選んでいる。すなわち、TUP**を3msecのパルス幅としたときに計算される変化幅をΔPN3とすると、増圧の場合には数31のように表され、マスタシリンダ圧PM/Cが検出可能な圧力センサがある場合には数32のように表される。
【0127】
【数31】
ΔPN3=KUP・TUP**
【0128】
【数32】
ΔPN3=(PM/C−Pb**)EXP(−KUP・TUP**)
同様に減圧時の場合、TDW**を3msecのパルス幅とした時に計算される変化幅をΔPN3とすると、数33のように表される。
【0129】
【数33】
ΔPN3=Pb**(1−EXP(−KDW・TDW**))
これらの値をPb**を変数とするマップにもつ。そして、ΔPN3が希望する変動幅である0.5MPaより小さい場合は、ΔPN=ΔPN3とし、大きい場合は、電磁弁が動くだけのパルス幅が出力できるので、ΔPN=0.5MPaとする。
【0130】
このように計算されたΔPNを用いて、ステップS109では、ΔPN**をPb**と足し合わせ、必要とされるW/C圧(出力油圧)PN**として出力する。
【0131】
そして、ステップS110において、ステップ105若しくはステップS109で設定されたW/C圧PN**を実現するように、電磁弁タイマー出力値であるTUP**とTDW**を油圧サーボ70で演算する。図15に、この油圧サーボ70での演算フローチャートを示す。
【0132】
まず、ステップS401では1サイクル前で実現出力した、推定油圧である現在のW/C圧Pb**と必要とされるW/C圧PN**とを大小比較し、PN**が大きい場合はステップS402以降の増圧処理、小さい場合はステップS412以降の減圧処理に移る。
【0133】
ステップS402では、目標圧PN**と最大圧KPMAX、例えば30Mpaとを大小比較しする。そして、最大圧KMAXの方が大きい場合は、無条件にステップS405に進んで最大圧KPMAXをPMAX**に設定し、ステップS408でサンプリング間隔TsをTUP**にセットしてフルに増圧を出力すると共に、W/C圧Pb**を最大圧に設定する。逆に、目標圧PN**が最大圧KPMAXより小さい場合、ステップS403で、サンプリング間隔Ts時間だけTUP**を出力した場合の増圧量に相当するKUPを現在のW/C圧Pb**に足した圧力PMAX**を計算する。
【0134】
そして、ステップ404で、圧力PMAX**と目標圧PN**を大小比較する。目標圧PN**が圧力PMAX**より大きい場合は、ステップS408に進み、上記と同様の処理が成される。また、目標圧PN**が圧力PMAX**より小さい場合は、ステップS406で下記の数34を用いて目標圧PN**を実現できるTUP**を計算する。
【0135】
【数34】
TUP**=(PN**−Pb**)/KUP
そして、ステップS407では、S406で計算されたタイマー値TUP**を電磁弁の最小駆動時間であるKTUPMINと大小比較し、この値より小さい場合には増圧弁の開閉動作は保証されず、誤差および制御エラーの原因となる。従って、KTUPMINより小さい場合はタイマー値TUP**も出力されず、また現在のW/C圧Pb**も更新されることなく次の割り込みサイクルへ進む。逆に、KTUPMINより大きい場合はステップS409に進み、現在のW/C圧Pb**を更新する。
【0136】
このようにしてステップS408、S409での処理を終えると、ステップS410に進み、タイマー値TUP**を電磁弁駆動タイマーにセットし、処理を終了する。
【0137】
一方、減圧処理についても増圧処理と同様であり、ステップS412では、目標圧PN**と最小圧KPMIN、例えば0.2Mpaとを大小比較する。そして、目標圧PN**の方が小さい場合は、無条件にステップS415に進んで最小圧KPMINをPMIN**に設定し、ステップS418でサンプリング間隔TsをTDW**にセットしてフルに減圧を出力すると共に、現在のW/C圧Pb**を最小圧に設定する。逆に、目標圧PN**が最小圧KPMINより大きい場合、ステップS413で、サンプリング間隔Ts時間だけTDW**を出力した場合の減圧量に相当するKDWを下記の数35に代入し、圧力PMIN**を計算する。
【0138】
【数35】
PMIN**=Pb**・EXP(−KDW・Ts)
そして、ステップ414で、圧力PMIN**と目標圧PN**とを大小比較する。目標圧PN**が圧力PMIN**より小さい場合は、ステップS418に進み、上記と同様の処理が成される。また、目標圧PN**が圧力PMIN**より大きい場合には、ステップS416で下記の数36を用いて目標圧PN**を実現できるTDW**を計算する。
【0139】
【数36】
TDW**=−1/KDW・log(PN**/Pb**)
そして、ステップS417では、S416で計算されたタイマー値TDW**を電磁弁の最小駆動時間であるKTDWMINと大小比較し、この値より小さい場合には減圧弁の開閉動作は保証されず、誤差および制御エラーの原因となる。従って、KTDWMINより小さい場合はタイマー値TDW**も出力されず、また現在のW/C圧Pb**も更新されることなく次の割り込みサイクルへ進む。逆に、KTDWMINより大きい場合はステップS419に進み、現在のW/C圧Pb**を更新する。
【0140】
このようにしてステップS408、S409での処理を終えると、ステップ420に進み、タイマー値TDW**を電磁弁駆動タイマーにセットし、処理を終了する。なお、油圧差ΔPbは上記現在のW/C圧Pb**より、ΔPb**=Pb**(n)−Pb**(n−N)として求められる。
【0141】
このようにして、目標圧力を実現しながら、アンチスキッド制御を行った場合におけるタイミングチャートを図18に示す。この図は、速度70Km/hからのブレーキングを行った時のアンチスキッド制御波形の一部を示したものである。図18(a)には車輪速度VW、推定油圧Pb、伝達ゲイン、位相遅れφが示され、図18(b)には油圧差ΔPb、速度差ΔVwの差分ΔΔVWが示され、図18(c)には、油圧差ΔPbと差分ΔΔVWとからオフセット分を除き符合を反転させたもの、すなわち{−(ΔΔVw−Mean(ΔΔVw))}と{ΔPb−Mean(ΔPb)}が示されている。
【0142】
最終的な位相遅れφは図18(c)に示す値から演算される。図18(c)から分かるように油圧Pbが上昇して行くと、油圧Pbの変化に対して速度差ΔVwの差であるΔΔVwの変化が明らかに様子が変わり、遅れてくる所がある。この変化を検出して位相遅れφが変化している。そして、位相遅れφがしきい値φthを下回ったところで保持パターンに変化し推定油圧Pbがほぼ一定となっている。
【0143】
このように、上記のように目標圧力を実現させながらアンチスキッド処理を行うことにより、制動力ピークを超えることによる車輪速度の落ち込みを少なくでき、十分な制動力が得られるようにすることができる。
【0144】
(他の実施形態)
上記説明では、増圧パターンの一例として、図19(a)に示すようなパターンを示したが、図19(b)、(c)に示すような増圧パターンとしてもよい。
【0145】
すなわち、図19(b)にしめすように、パルス幅4つ分を一周期とし、一周期中にW/C圧Pbを増圧、増圧、保持、増圧するという動作を行っても良いし、パルス幅4つ分を一周期とし、一周期を1/3に分割し、1/3の期間に増圧、増圧、増圧という動作を行うようにしても良い。
【0146】
また、上記実施形態において、マスター油圧センサーでマスター圧PMが計測できる場合には、上記ステップS403、S406の式をそれぞれ下記の数37、数38のように変更できる。
【0147】
【数37】
PUPMAX**=Pb**+(PM−Pb**)EXP(−KUP・Ts)
【0148】
【数38】
TUP**=−1/KUP・log((PM−PN**)/(PM−Pb**))
また、上記実施形態では、ブレーキトルクに影響する値として、W/C圧Pbを用いているが、ブレーキトルクに影響を与える他のパラメータ、またはブレーキトルク自身を用いても良い。
【0149】
また、図9、図10の油圧Pbの一周期の増圧パターンおよび図19(b)、(c)に示す一周期の増圧パターンにおける各増圧パルスの単位時間あたりの出力数、すなわち増圧パルス周期あるいは/および周波数は、所定周期あるいは所定周波数に制限する方が良い。たとえば、各車輪には主にサスペンション系の共振振動が伝達されるが、このサスペンション系の共振振動とは、車体の揺れあるいはエンジンの振動とサスペンション系自身の振動との共振現象によるものであり、車種により各々異なるものであるが、多くは、約15ヘルツから40ヘルツ程度の共振周波数をもっている。たとえば15ヘルツの共振周波数は車両の上下方向の共振現象の周波数であり、40ヘルツの共振周波数とは車両の前後方向の共振現象の周波数である。よって、このような15ヘルツおよび40ヘルツの周波数あるいは/および周期を除いた増圧パルスの周波数あるいは/および周期とすれば、サスペンション系の共振周波数が油圧差ΔPb演算あるいは油圧Pb自体の演算の際に用いる信号に悪影響を与えにくくなり、ノイズの影響を低減することができる。また、増圧パルス自体すなわち増圧パルスによる油圧振動および/あるいは弁等のアクチュエータ自体の振動とサスペンション系の振動とがさらに共振する可能性も低減することができる。なお、通常、1秒間に40回以上の増圧パルスを出力することはアクチュエータ(電磁弁)の性能上困難である場合が多いため、増圧パルスの周期あるいは/および周波数は、15ヘルツより小さい値、より効果を増すために10ヘルツ以下とすることが望ましい。
【0150】
また、サスペンション系等の共振現象による悪影響を極力除去する際に、上述の如く増圧パルスの周期あるいは/および周波数を考慮するだけではなく、車輪速度Vwの信号の処理時に、バンドパスフィルタあるいはローパスフィルタ等により、サスペンション系の共振周波数を除いてもよい。この際には、15ヘルツおよび/あるいは40ヘルツを中心としたプラスマイナス5ヘルツぐらいを車輪速度Vwの信号から除去してもよいし、15ヘルツより小さい周波数成分のみ、あるいは/および40ヘルツよりも大きい周波数成分のみで車輪速度Vw演算をするようにしてもよい。この際にも、サスペンション系の共振によるノイズ信号を車輪速度信号から除去でき、演算精度を向上することができる。
【0151】
なお、車輪速度信号に対するサスペンション系の共振周波数相当の信号成分の除去は、増圧パルス側とともに採用してもよいし、各々ごとに採用してもよい。
【0152】
また、上述までの実施形態では、図12で示した3位置弁を用いたアンチスキッド制御装置に適用していたが、この3位置弁21〜24に代えて、2位置弁を用いるようにしてもよい。この際、一例としては、3位置弁21に代えて、マスタシリンダ16からホイールシリンダ11までの間の管路に増圧、保持をする増圧2位置弁と、この増圧2位置弁からリザーバの問に設けられ、減圧、保持をする減圧2位置弁とを採用するようにしてもよい。また、この増圧2位置弁に代えて、リニア弁を採用するようにしてもよい。このリニア弁は、通常状態では連通状態であり、ソレノイドヘの通電量に応じて弁体の弁座からのリフト量をリニアに可変調整することができるものである。このようなリニア弁を増圧弁として用いる場合には、図9、図10、図19に示した増圧パルスの増圧立上りに発生する高調波成分を除去するようにすると、油圧差ΔPbを演算する際のノイズの影響を抑制することができる。なお、この高調波成分とは、増圧パルスの立ちあがり時にきわめて大きい周波数である油圧変動が発生するが、この油圧変動を指す。この油圧変動は油圧差ΔPbを演算する際のノイズとなるので、リニア弁を増圧弁として用いる場合には、パルス立ちあがりから保持に入る角の部分を緩やかにするように増圧パルス波形を形成するのが望ましい。
【0153】
また、段差、悪路などの荒れた路面に対応したロジックを図20に示す。この図は、上述した実施形態の図13に対して、共振検出部80、第2増圧パターン選択部81およびスイッチ部82が備えられたものである。段差、悪路状態などサスペンションの共振が大きい時、車輪速度の変化が位相検出に影響する。従って、位相とは独立に別途サスペンション上下(約15Hz)又はサスペンション前後(約40Hz)の共振検出を共振検出部80にて行い、共振値(ゲイン)が大きい場合、すなわち段差が大きい状態あるいは路面状態が荒れている状態(悪路状態)の少なくとも一方の場合には、スイッチ部82での選択により、第2増圧パターン選択部81から通常増圧パターンより大きな増圧勾配を出力する。採用する共振数端数(例えば15Hz、40Hz)は車両により調整する。図20において、一点鎖線より下の部分は前出の実施形態(図13参照)と同等であり、一点鎖線の上部の共振検出部にてサスペンション振動のゲインを計測し共振ゲインがしきい値よりも大きな場合、より大きな増圧勾配を出力する。これにより増圧遅れが減少できる。
【0154】
なお、本発明におけるアンチスキッド制御装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよいる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、従来における車輪速度と車輪加速度を用いたアンチスキッド制御を示す特性図、(b)は、従来におけるμ特性図である。
【図2】時間に関する制動力の増圧特性と車輪速度の増圧特性、およびμーS特性を示す図である。
【図3】油圧変化に対する応答を示す図である。
【図4】ブレーキ力変化と速度変化をモデル的に示した図である。
【図5】ブレーキ力変化と速度変化をモデル的に示した図である。
【図6】接地面のダンパー要素を変化させた場合におけるタイヤバネの変形及び接地面すべり量を示した図である。
【図7】接地面のダンパー要素を変化させた場合におけるW/C圧Pbに対する車輪速度Vwの速度差ΔVwの変化を示した図である。
【図8】油圧変化に対する速度変化の応答の取り出し方を示す図である。
【図9】増圧のための油圧出力パターンを示す図である。
【図10】制動ピーク保持のための油圧出力パターンを示す図である。
【図11】増圧パターンの増圧幅について説明した図である。
【図12】本発明の一実施形態が適用されるアンチスキッド制御装置の全体構成を示した図である。
【図13】アンチスキッド制御システムを示すブロック図である。
【図14】位相差検出部の概要を示した図である。
【図15】図12に示すアンチスキッド制御装置が行うアンチスキッド制御のフローチャートである。
【図16】図15に示す各輪制御の詳細を示すフローチャートである。
【図17】図16に示す油圧サーボ70が行う油圧演算フローチャートである。
【図18】アンチスキッド制御実行時におけるタイミングチャートを示す図である。
【図19】他の実施形態で示す増圧パターンの変形例を示す図である。
【図20】他の実施形態で説明するアンチスキッド制御システムを示すブロック図である。
【符号の説明】
1〜4…車輪、5〜8…車輪速度センサ、11〜14…W/C、
21〜24…電磁弁、40…ECU。

Claims (10)

  1. 車両の各車輪の車輪速度を検出する車輪速度検出手段と、
    各車輪にかかるブレーキトルク又はホイールシリンダ圧取得するトルク取得手段と、
    ブレーキトルクをパルス的に変化させるトルク変化手段と、
    前記トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の変化に対する、前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度の変化の位相遅れを検出する位相遅れ検出手段と、
    前記位相遅れ検出手段により検出された位相遅れが所定値以上である場合に、車両と路面との摩擦力が最大値又はその近傍値に達していることを検出する制動状態検出手段と、
    を備えていることを特徴とする制動状態検出装置。
  2. 前記トルク変化手段は、車種によって予め定まっているサスペンション系の共振振動の周期より低い周期で、ブレーキトルクをパルス的に増加させることを特徴とする請求項1に記載の制動状態検出装置。
  3. 前記トルク変化手段は、前記制動状態検出手段により車両と路面との摩擦力が最大値又はその近傍値に達していることが検出されている場合に、ブレーキトルクの増加及び減少を交互に繰り返して同ブレーキトルクをパルス的に変化させ、前記制動状態検出手段により車両と路面との摩擦力が最大値又はその近傍値に達していることが検出されていない場合に、ブレーキトルクの増加のみを繰り返して同ブレーキトルクをパルス的に変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の制動状態検出装置。
  4. 前記位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値とその現在値との差である速度差ΔVwを算出し、前記差分時間前に前記トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、前記トルク差の変化に対する前記速度差ΔVwの変化の位相差を前記位相遅れとして検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の制動状態検出装置。
  5. 前記位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値とその現在値との差である速度差ΔVwを算出し、前記速度差ΔVwの前記差分時間前から現時点までの平均値を算出し、前記差分時間前に前記トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、前記トルク差の変化に対する、前記速度差ΔVwからその平均値を除いた値の変化の位相差を、前記位相遅れとして検出することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の制動状態検出装置。
  6. 前記位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値とその現在値との差である速度差ΔVwを算出し、前記速度差ΔVwの前記差分時間前から現時点までの平均値を算出し、前記差分時間前に前記トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、前記トルク差の前記差分時間前から現時点までの平均値を算出し、前記トルク差からその平均値を除いた値の変化に対する、前記速度差ΔVwからその平均値を除いた値の変化の位相差を、前記位相遅れとして検出することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の制動状態検出装置。
  7. 前記位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値と現在値との差である速度差ΔVwを算出し、前記差分時間前の速度差ΔVwとその現在値との差分ΔΔVwを算出し、前記差分時間前に前記トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、前記トルク差の変化に対する前記差分ΔΔVwの変化の位相差を前記位相遅れとして検出することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の制動状態検出装置。
  8. 前記位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値と現在値との差である速度差ΔVwを算出し、前記差分時間前の速度差ΔVwとその現在値との差分ΔΔVwを算出し、前記差分ΔΔVwの前記差分時間前から現時点までの平均値を算出し、前記差分時間前に前記トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、前記トルク差の変化に対する、前記差分ΔΔVwからその平均値を除いた値の変化の位相差を、前記位相遅れとして検出することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の制動状態検出装置。
  9. 前記位相遅れ検出手段は、所定の差分時間前に前記車輪速度検出手段により検出された車輪速度の過去値と現在値との差である速度差ΔVwを算出し、前記差分時間前の速度差ΔVwとその現在値との差分ΔΔVwを算出し、前記差分ΔΔVwの前記差分時間前から現時点までの平均値を算出し、前記差分時間前に前記トルク取得手段により取得されたブレーキトルク又はホイールシリンダ圧の過去値とその現在値との差であるトルク差を算出し、前記トルク差の前記差分時間前から現時点までの平均値を算出し、前記トルク差からその平均値を除いた値の変化に対する、前記差分ΔΔVwからその平均値を除いた値の変化の位相差を、前記位相遅れとして検出することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1つに記載の制動状態検出装置。
  10. 請求項1から9のいずれか1つに記載の制動状態検出装置を備え、
    前記制動状態検出装置による制動状態の検出結果に基づいて、アンチスキッド制御を行うことを特徴とするアンチスキッド制御装置。
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