JP4409811B2 - 光走査装置、光書込装置、画像形成装置、振動ミラーチップ及び光走査モジュール - Google Patents

光走査装置、光書込装置、画像形成装置、振動ミラーチップ及び光走査モジュール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2本の梁で支持された微小なミラーを、梁をねじり回転軸として往復振動させる構成の光走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロマシニング技術を応用したこの種の光走査装置は、デジタル複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置の光書込系や、バーコードリーダー、スキャナー等の読み取り装置の読取系への応用が有望視されている。
【0003】
IBM J.Res.Develop Vol.24(1980)に掲載されている光走査装置では、同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板を、ミラー基板に対向する位置に設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸として往復振動させている。マイクロマシニング技術で形成されるこの光走査装置は、従来のモーターを使ったポリゴンミラーの回転による光走査装置と比較して、構造が簡単で半導体プロセスでの一括形成が可能なため、小型化が容易で製造コストも低く、また単一の反斜面であるため複数面による精度のばらつきがなく、さらに往復走査であるため高速化にも対応できる等の効果が期待できる。
【0004】
また、The 13th Annual International Workshop on MEMS2000(2000)473-478、及び、MEMS1999 333-338には、ミラー基板の振れ角を大きくするため、その振動領域に電極が重ならないようミラー基板の端面に対向電極を設ける静電駆動のねじり振動型光走査装置が提案されている。これらの光走査装置は、板厚20μmのシリコンからなる可動電極としてのミラー基板と、ミラー基板端面に微小なギャップを隔てて対向する固定電極の間の静電引力で駆動するもので、両電極は同一部位に形成されている。The 13th Annual International Workshop on MEMS2000(2000)473-478に記載の光走査装置では、ミラー基板を起動させるためのねじり回転軸に対する初期モーメントをあたえるのに、形成プロセスで生じる構造体の微小な非対称性を利用している。一方、MEMS1999 333-338に記載の光走査装置では、駆動電極に直交する面上に起動のための金属電極薄膜を配備している。
【0005】
また、ミラー基板を駆動するための電圧を下げるため、ミラー基板の端部と固定電極とを櫛歯状の形状として両者の対向面積を増加させた光走査装置も提案されている(特許第2924200号、特許第3011144号)。
【0006】
さらに、Optical MEMS 2000において、薄膜ミラーを使用する振動ミラーチップが試作されており、円形の枠体に引張応力のポリシリコンを形成し、枠体の外側のねじり梁に平行して伸ばした位置に櫛歯状電極を形成し、上下に配置された電極でねじり梁をねじり振動させる機構を備えている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
マイクロマシニング技術を用いて作製されるねじり振動型の光走査装置のミラー基板は、一般にシリコン基板のドライエッチングにより貫通させる方法で形成され、ミラー基板の厚さとしては数10μmである。たとえば、The 13th Annual International Workshop on MEMS2000(2000)473-478に記載の光走査装置では、板厚30μmで最大1.5mm□のミラー基板を形成しており、また、MEMS1999 333-338 に記載された光走査装置では、板厚20μmで最大3mm□のミラー基板を形成している。
【0008】
このように板厚の薄いミラー基板においても、光源からの光の広がり、あるいは実使用部分での必要ビーム径によっては、ミラー基板の一辺を数mmの大きさにしなければならない場合がある。
【0009】
ここで、ミラーの慣性モーメントをI、駆動トルクをTrq、角速度をω、ミラー振動空間の粘性抵抗をδとすると、ミラーの振れ角θは次式であらわすことができる。
θ=Trq×K(ω、δ)/I
ただし、K(ω,δ)は振動係数である。
【0010】
ミラーの重量をM、密度をρ、ミラーの幅、長さ、厚さをそれぞれb、a、tとすると、ミラーの慣性モーメントIは次式であらわすことができる。
I=M(a^2+b^2)/12
=ρ t a b(a^2+b^2)/12
【0011】
これより振れ角を大きくするための構造としては、ミラーを軽くして慣性モーメントを小さくすればよいことがわかる。
【0012】
一方、梁のねじり弾性係数をk、ミラーの慣性モーメントをIとすると、ミラーの共振周波数fは、次式であらわすことができる。
f=1/2π√(k/I)
ここで、梁の幅をc、高さをt、長さをLとすると、ねじり弾性係数kは次式であらわすことができる。
k=β t c^3 E/L(1+ν)
ただし、βは断面形状係数、Eはヤング率、νはポアソン比である。
【0013】
これにより、ミラーの共振周波数を高くするためには、梁の断面積を大きくするか長さを短くするかして、ねじり弾性係数を大きくするか、あるいは、ミラーを軽くして慣性モーメントを小さくすればよいことがわかる。
【0014】
さて、ミラーを軽くして慣性モーメントを小さくすることは、振れ角を大きくするためにも高速動作させるためにも有効であり、特に、振れ角を大きくするための構造的な手段としてミラーの軽量化が不可欠である。しかし、ミラー基板として必要な大きさを維持しつつ軽量化のためにミラーの板厚を薄くすると、高速駆動が要求される場合に、振動時にミラー基板が変形しミラー表面形状を一定に維持することが困難となり、ビーム形状や焦点位置が変動するといった不具合が生じるという問題があった。また、製造工程で板厚を高精度に制御することが難しく、板厚のばらつきによって共振周波数がばらついてしまうという問題もあった。
【0015】
またOptical MEMS 2000の報告において、ミラーを薄膜で作製し周囲を枠体で支持した光スキャナーが試作されているが、現状では大きさが1mm以下であり、これをそのまま大型のミラーに対応させて使用する場合には、高周波数での動作時にミラーが変形したり、又はミラーを支持している周囲の枠体が薄膜のミラーの引張応力によって変形するといった問題があった。
【0016】
本発明は以上に述べたような問題点に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、大型のミラー基板を大きな振れ角で高速動作させた場合でもミラー面の変形が小さく安定な光走査が可能な光走査装置もしくは振動ミラーチップ、並びに、それらを用いた光走査モジュール、光書込装置及び画像形成装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明による光走査装置は、請求項1に記載のように、二つのねじり梁により支持され前記ねじり梁を回転軸として往復振動するミラー基板を有し、単一の基板をエッチング加工して、前記ねじり梁、前記ミラー基板、及び前記ねじり梁を結合してミラー基板を支持する枠体が一体形成された光走査装置において、前記ミラー基板は、前記ねじり梁と厚さを同一としたリブの領域と、前記ねじり梁の厚さよりも薄い肉抜き領域とを有し、前記リブは、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切るリブと、前記ミラー基板を縁どりするリブとを有し、前記リブの交差部位の角が曲線状になっていることを特徴とする。
【0018】
このような構成の光走査装置は、支持部から可動部にかけて一体形成されているため、強度が高く耐久性に優れ、また、リブ構造によりミラー基板を軽量化しつつ剛性を維持できるので、その平板部は静止時にだけでなく振動時にもひずむことなく平坦性を維持できるので、常に安定したビーム形状での光走査が可能となる。そして、振動時においてミラーを縁取りするリブによって、ねじり梁に直交する方向及び平行な方向の変形を低減することができ、さらに、ねじり梁の間を直線状に結ぶミラー基板を横切るリブによって、振動の中心軸の位置精度を向上させる効果があることから、安定した走査ビーム形状を得ることができる。また、リブの交差部位の角が曲線状であることにあり、その部位での振動時の応力集中が緩和され、そこからの亀裂の発生が減るため、耐久性が向上する。
【0019】
本発明による光走査装置のもう1つの特徴は、請求項2に記載のように、二つのねじり梁により支持され前記ねじり梁を回転軸として往復振動するミラー基板を有し、単一の基板をエッチング加工して、前記ねじり梁、前記ミラー基板、及び前記ねじり梁を結合してミラー基板を支持する枠体とが一体形成された光走査装置において、前記ミラー基板は、前記ねじり梁と厚さを同一としたリブの領域と、前記ねじり梁の厚さよりも薄い肉抜き領域とを有し、前記リブは、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切るリブと、前記ミラー基板を縁どりするリブとを有し、前記ねじり梁と、前記ミラー基板を縁どりする前記リブとが交差する部位の角が曲線状になっていることを特徴とする。ねじり梁と、ミラー基板を縁どりするリブとが交差する部位の角が曲線状であることにあり、その部位での振動時の応力集中が緩和され、そこからの亀裂の発生が減るため、耐久性が向上する。
【0020】
本発明による光走査装置のもう1つの特徴は、請求項3に記載のように、ミラー基板は、ねじり梁の間を直線上に結ぶ前記ミラー基板を横切るリブと交差して、ミラー基板を縁どりする前記リブを架橋するリブを有することにある。このように、ミラー基板を縁どりするリブを架橋するリブは、振動時に慣性力が大きくきいてくる方向のリブでるため、ミラー基板の変形を効果的に低減することができ、安定した走査ビーム形状を得ることができる。
【0021】
本発明による光走査装置のもう1つの特徴は、請求項4に記載のように、ミラー基板を縁どりする前記リブを架橋するリブが、ねじり梁の間を直線上に結ぶミラー基板を横切るリブと直交する方向に通ることにある。すなわち、慣性力が大きくきいてくる方向にリブが最短の長さで配置されることになるため、ミラー基板の変形を効果的に低減することができ、安定した走査ビーム形状を得ることができると同時に、同リブによるミラー基板の重量増加を最小限に抑え、振れ角の減少を最小にすることができる。
【0022】
本発明による光走査装置のもう1つの特徴は、請求項5に記載のように、ミラー基板は、前記リブ領域及び前記肉抜き領域のある面と反対側の面にミラー面を有することにある。このような構成によれば、ミラー面全面が使用できるので、使用できるビーム形状の自由度が大きく汎用性が向上する。
【0023】
本発明による光走査装置のもう1つの特徴は、請求項6に記載のように、ミラー基板とねじり梁とは、ミラー面とねじり梁の厚さ方向の中心とが一致する位置関係にあることにある。このような位置関係とすることにより、ミラー面に照射されるビームのねじり回転時の位置ずれがなくなり、反射ビームの走査位置精度を向上させることができる。
【0024】
本発明による光走査装置のもう1つの特徴は、請求項7に記載のように、二つのねじり梁により支持され前記ねじり梁を回転軸として往復振動するミラー基板を有し、単一の基板をエッチング加工して、前記ねじり梁、前記ミラー基板、及び前記ねじり梁を結合してミラー基板を支持する枠体が一体形成された光走査装置において、前記ミラー基板は、前記ねじり梁と厚さを同一としたリブの領域と、前記ねじり梁の厚さよりも薄い肉抜き領域とを有し、前記リブは、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切るリブと、前記ミラー基板を縁どりするリブとを有し、前記ミラー基板を縁取りする前記リブの、前記ねじり梁と平行な部分に可動電極が設けられ、この可動電極と対向して前記枠体に固定電極が設けられ、前記ミラー基板を縁取りする前記リブの、前記ねじり梁と平行な部分の長さが、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切る前記リブの長さよりも長いことを特徴とする。
【0025】
このように、ミラー基板を縁取りするリブの、ねじり梁と平行な部分に可動電極が設けられ、この可動電極と対向して枠体に固定電極が設けられることにより、電極の板厚方向の長さを大きくとれるため、電極面積を増加させ、駆動電圧を上げることなく大きな静電トルクを得て振れ角を増加させることができる。さらに、ミラー基板を縁取りするリブの、ねじり梁と平行な部分の長さが、ねじり梁の間を直線状に結ぶミラー基板を横切る前記リブの長さよりも長くすることにより、可動電極の長さを大きくとれるため、電極面積をさらなる増加が可能であり、したがって、駆動電圧を上げることなく静電トルクをさらに増加させさせ、より大きな振れ角でミラー基板を振動させることが可能になる。
【0026】
本発明による光走査装置のもう1つの特徴は、請求項8に記載のように、可動電極及び固定電極は櫛歯状であることにある。このように櫛歯状の電極構造は、平面的な電極構造に比べ電極面積を大きくすることができるので、同一電圧での静電トルクをより大きくしてより振れ角を大きくすることができる。
【0027】
本発明による光走査装置のもう1つの特徴は、請求項9に記載のように、ミラー基板及びねじり梁が単結晶シリコンで形成されていることにあり、構造材料に欠陥が少ないため信頼性が高く、耐久性も優れ、かつ、加工が容易であるためコスト的にも有利である。
【0028】
本発明による光書込装置の特徴は、請求項10記載のように、請求項1乃至9のいずれか1項記載の光走査装置と、記録信号によって変調された光ビームを前記光走査装置のミラー基板のミラー面へ入射させるための手段と、前記ミラー面で反射された光ビームを被走査面に結像させるための手段とを有することにある。このような構成の光書込装置は、光走査装置を低電圧で駆動できるため消費電力が小さく、ミラー基板の往復振動時の風切り音が小さいので静粛性の面でも優れる。また、光走査装置のミラー基板として大きく精度の高いものを使用できるため、使用できるビーム形状の自由度が大きく汎用性の面でも優れる。
【0029】
本発明による画像形成装置の特徴は、請求項11に記載のように、請求項1乃至9のいずれか1項記載の光走査装置と、静電潜像担持体と、前記光走査装置のミラー基板のミラー面へ記録信号によって変調された光ビームを入射させるための手段と、前記ミラー面で反射された光ビームを前記静電潜像担持体に結像させるための手段とを有し、前記記録信号にしたがった静電潜像が前記静電潜像担持体上に形成されることにある。安定した光ビーム形状で静電潜像担持体を光走査して画像形成を行うことが可能であるとともに、消費電力及び静粛性の面で優れる。
【0030】
請求項12記載の発明は、二つのねじり梁で支持され光ビームを偏向するミラー基板と、前記ねじり梁を回転軸として前記ミラー基板をねじり振動させるミラー駆動手段とを有する振動ミラーチップにおいて、前記ミラー基板は、薄膜状に形成されたミラー部分と、前記ミラー部分に結合する枠体とを有し、前記枠体は、前記ねじり梁の延長上に、前記枠体の内側を架橋する補強梁を有し、前記枠体の内側のかど、前記枠体及び前記補強梁が交わる部位のかど、並びに前記補強梁同志が互いに交わる部位のかどの少なくとも1つは、曲面に形成されていることを特徴とする。
【0031】
請求項12記載の発明によれば、ミラー基板は、薄膜状に形成されたミラー部分と、ミラー部分に結合する枠体と、を有するので、ミラー基板が大型かつ軽量で振れ角が大きく、また動作時におけるミラー基板の変形が低減され、安定したビーム形状を得ることができる振動ミラーチップを提供することができる。また、枠体は、ねじり梁の延長上に、前記枠体の内側を架橋する補強梁を有するので、動作時にねじり梁を通る回転軸が安定して、動作時における枠体のねじり梁方向の変形を低減し、不要な振動モードを抑えて、安定したビーム形状を得ることができる。そして、枠体の内側のかど、枠体及び補強梁が交わる部位のかど、並びに前記補強梁同志が互いに交わる部位のかどの少なくとも1つは、曲面に形成されるので、かどの部分への応力集中を緩和することができ、動作時又は取り扱い時のミラー基板の破損を低減させることができる。
【0032】
請求項13記載の発明は、二つのねじり梁で支持され光ビームを偏向するミラー基板と、前記ねじり梁を回転軸として前記ミラー基板をねじり振動させるミラー駆動手段と、を有する振動ミラーチップにおいて、前記ミラー基板は、薄膜状に形成されたミラー部分と、前記ミラー部分に結合する枠体とを有し、前記枠体は、前記ねじり梁の延長上に、前記枠体の内側を架橋する補強梁を有し、前記補強梁は、前記ミラー部分と離隔することを特徴とする。
【0033】
請求項13記載の発明によれば、補強梁は、ミラー部分と離隔するので、枠体は補強梁によりその剛性を十分に維持し、かつミラー部分は歪みがほとんど無く、平坦性の高い面精度を得ることができる。
【0034】
請求項14記載の発明は、請求項12又は13記載の振動ミラーチップにおいて、回転軸に対して線対称であり、前記回転軸の中心を通り前記回転軸と直交する軸に対して線対称である、補強梁を有することを特徴とする。この構成によれば、動作時にミラー部分全体に亘って均等に変形を低減できるので、安定したビーム形状を得ることができる。
【0035】
請求項15記載の発明は、請求項12乃至14のいずれか1項記載の振動ミラーチップにおいて、枠体及び補強梁の少なくとも一方は、ねじり梁と同一の厚さであることを特徴とする。この構成によれば、ねじり梁、枠体、及び補強梁の同時形成が可能となり、低コストで振動ミラーチップを形成できる。
【0036】
請求項16記載の発明は、請求項12乃至15のいずれか1項記載の振動ミラーチップにおいて、ミラー部分は、枠体が結合される側と反対側にミラー面を有することを特徴とする。この構成によれば、ミラー面の全面を有効に利用することができ、ビームの損失がない。
【0037】
請求項17記載の発明は、請求項12乃至16のいずれか1項記載の振動ミラーチップにおいて、ミラー部分は、前記ねじり梁の中心軸が前記ミラー部分を通ることを特徴とする。これによれば、ミラー部分に振動の中心軸が通ることとなり、光学設計が容易となる。
【0038】
請求項18記載の発明は、請求項12乃至17のいずれか1項記載の振動ミラーチップにおいて、ミラー部分は、多層膜により形成されることを特徴とする。ミラー部分が、多層膜により形成されるので、複数の様々な機能を有する薄膜を活用してミラー部分を設計することができ、構造及工程における設計の自由度が高く、高性能な振動ミラーチップを低コストで作製することができる。
【0039】
請求項19記載の発明は、請求項12乃至18のいずれか1項記載の振動ミラーチップにおいて、ミラー駆動手段は、枠体に設けられた可動電極と、可動電極と対向する位置に設置される固定電極と、を有することを特徴とする。これによれば、電極構造が簡単であり製造コストが安く、効率よくミラー基板を駆動することができる。
【0040】
請求項20記載の発明は、請求項19記載の振動ミラーチップにおいて、可動電極は、櫛歯状であることを特徴とする。可動電極は、櫛歯状であるので、電極面積が大きく、従って駆動トルクを大きくすることができ、ミラー基板の振れ角を大きくすることができる。
【0041】
請求項21記載の発明は、光走査モジュールにおいて、請求項12乃至20のいずれか1項記載の振動ミラーチップと、該振動ミラーチップで偏向した光ビームの透過部分と、前記振動ミラーチップの前記ミラー駆動手段に結線する端子部とを容器内に備えることを特徴とする。これにより、ミラー基板が大型かつ軽量で振れ角が大きく、また動作時におけるミラー基板の変形が低減され、安定したビーム形状を得ることができる振動ミラーチップを備える光走査モジュールを提供することができる。
【0042】
請求項22記載の発明は、請求項21記載の光走査モジュールにおいて、振動ミラーチップのミラー基板上で前記光ビームを多重反射させる反射光学系を更に備えることを特徴とする。これにより、ミラー基板の振れ角が小さくても、光走査モジュールからの光ビームの射出角を大きくすることができる。
【0043】
請求項23記載の発明は、光走査装置において、光ビームを発生させる光源手段と、該光ビームを走査する請求項21又は22記載の光走査モジュールと、該光走査モジュールによって走査された前記光ビームを結像させる光学系とを備えることを特徴とする。これにより、ミラー基板が大型かつ軽量で振れ角が大きく、また動作時におけるミラー基板の変形が低減され、安定したビーム形状を得ることができる振動ミラーチップを備える光走査装置を提供することができ、振動ミラーチップが小さいので光走査装置を小型化かでき、一又は複数の光走査装置を配列することができる。
【0044】
請求項24記載の発明は、請求項23記載の光走査装置において、振動ミラーチップは、ミラー部分が前記枠体の結合される側と反対側にミラー面を有し、枠体及び該枠体の内側を架橋する補強梁が前記ミラー部分と結合していない前記ミラー面の部分で、光ビームが反射することを特徴とする。これによれば、ミラー面の歪みが無く平坦性の高い部分で光ビームを反射し、安定したビーム形状を得ることができる。
【0045】
請求項25記載の発明は、画像形成装置において、請求項23又は24記載の光走査装置と、該光走査装置によって静電潜像を形成する感光体と、前記静電潜像をトナーで顕像化する現像手段と、該現像手段によって顕像化されたトナー像を記録紙に転写する転写手段と、を備えることを特徴とする。これによれば、ミラー基板が大型かつ軽量で振れ角が大きく、また動作時におけるミラー基板の変形が低減され、安定したビーム形状を得ることができる振動ミラーチップを備える画像形成装置を提供し、振動ミラーチップが小型である為、画像形成装置を小型化することができ、さらに、光走査装置の騒音、振動を小さくすることができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0047】
本発明の第1の実施例による光走査装置の構成を図1に示す。図1の(a)は光走査装置の概略中央断面図、(b)は光走査装置の概略裏面図である。
【0048】
図1において、101はミラー基板であり、その対向した2つの端部109,110の中央部で、一直線上に設けられた2本のねじり梁102、103によって支持されている。ミラー基板101は、略正方形の平板部の表面(図1(a)では上面)に使用光に対し十分な反射率をもつ金属薄膜115がミラー面として形成され、その平板部の裏面に補強部として、ねじり梁102,103と直交する方向に延びる補強用凸状121(以下、リブと記す)が複数本並べて形成された構造である。ミラー基板101の裏面において、リブ121の領域の厚さはねじり梁102,103の厚さと同一となっている。つまり、このリブ領域以外の領域は、ねじり梁102,103より薄い肉抜き領域となっている。ねじり梁102、103は、光走査装置として必要な共振周波数が得られるようなねじり剛性を持つ寸法を有し、内フレーム(枠体)104に固定されている。この内フレーム104は、それより板厚の大きい外フレーム(枠体)120で周囲を固定されている。
【0049】
この光走査装置は、静電力を利用して、ミラー基板101を梁102,103をねじり回転軸として往復振動させるためのミラー駆動手段を有する。このミラー駆動手段は、具体的には以下に説明するように、駆動用の固定電極と可動電極、起動用の固定電極と可動電極からなり、これら可動電極としてはミラー基板101の端部が利用される。
【0050】
ミラー基板101の梁102,103に支持されていない端部105,106は櫛歯形状をなしており、同一部位の内フレーム104に設けられた同じく櫛歯形状の駆動用の固定電極107、108に、微小ギャップをへだてて噛み合うかたちで対向している。この櫛歯状端部105,106が駆動用可動電極として作用する。また、ミラー基板101の梁102,103に支持されている端部109,110は直線形状をなしており、それと基板厚さ方向にずらして外フレーム120に設けられた、同じく直線形状の起動用の固定電極111,112と、微小ギャップをへだてて対向している。この固定電極111,112と対向するミラー基板端部109,110の部分は起動用可動電極として作用する。
【0051】
内フレーム104と外フレーム120は導電性材料からなる一体構造であり、その表面には絶縁材料113が形成されている。外フレーム120の内側端面の絶縁材料上には、ミラー基板101の端部109、110に近接対向する位置に前記起動用固定電極111、112がそれぞれ形成されている。この部位において、外フレーム120はミラー基板101よりも厚くなっており、ミラー基板端部109、110と固定電極111、112とは基板厚さ方向にずらされ、相互に重ならない位置関係とされている。
【0052】
また、外フレーム120の一部には絶縁材料113が除かれて導電性材料が露出した部分が形成され、その部分に電極引き出し用のパッド114が形成されている。内フレーム104の櫛歯形状端面に形成された駆動用固定電極107、108と、外フレーム120の内側端面に形成された起動用固定電極111、112は、外フレーム120の表面に形成されたパッド116,117と裏面に形成されたパット118,119まで引き出されている。
【0053】
このような構成の光走査装置の動作を図2を参照して説明する。2本の梁102,1031で支持されたミラー基板101は、外フレーム120上に形成された電極引き出し用パッド114を介して接地される。起動用の固定電極111,112に例えば50Vの電圧を印加すると、例えば5μmのギャップを隔てて互いに重ならないように基板厚さ方向にずらして設けられている起動用固定電極111,112とミラー基板101の端部109,110との間に静電引力が働くため、ミラー基板101は梁102,103はねじり回転軸として図中反時計回り方向に駆動され、最終的に、図2(a)に丸Aで囲って示すように、ミラー基板端部109,110が起動用固定電極111,112と一部が重なる位置までミラー基板101が振られることにより、駆動用固定電極107,108とミラー基板101の端部105,106との間に振動開始に必要な大きさの段差が生じる。なお、本発明の光走査装置の構造では、起動用固定電極111,112を段差方向に広く形成することが容易であり、そうするによって梁102,103のねじり剛性が大きい場合にも起動に必要な段差を生じさせることができる。
【0054】
次に、起動用固定電極111,112への電圧印加を断つと同時に駆動用固定電極107,108に例えば50Vの電圧を印加すると、同電極とミラー基板101の端部105,106との間に働く静電引力と梁102,103のねじり剛性によって、ミラー基板101は時計回り方向に振れる。図2(b)に示すようにミラー基板101が水平位置に到達した時点で駆動用固定電極107,108への電圧印加を断つと、ミラー基板101は慣性モーメントにより時計回り方向にさらに振れ、最終的に図2(c)に示すように慣性モーメントと梁102,103のねじり剛性とがつりあう位置まで振れる。その直後に駆動用固定電極107,108に再び電圧を印加すると、静電引力と梁102,103のねじり剛性とによりミラー基板101は反時計回り方向に振れる。そして、図2(d)のようにミラー基板101が再び水平位置に達した時点で駆動用固定電極107,108への電圧印加を断つと、ミラー基板101は慣性モーメントと梁102,103のねじり剛性とがつりあう位置までさらに振れる。
【0055】
このような駆動用固定電極107,108によるミラー基板101の駆動周波数をミラー基板101の共振周波数に設定することにより、起動用固定電極111,112による起動時の変位よりも大きな振れ角でミラー基板101を往復振動(揺動)させることができる。
【0056】
このような駆動方法における、ミラー走査角と駆動パルスのタイミングを図3に示す。図示のように、走査角が最大となる時間からのパルス印加開始の遅れをδとして、走査角が0となる画像中央にむけてミラーが移動する時間Tだけ駆動パルスを印加する。つまり、1周期の間に2回のパルス駆動することになる。
【0057】
本実施例の光走査装置においては、ミラー基板101の面積を大きくしたうえで所定の慣性モーメントとなるようにミラー基板101の平板部の板厚を薄くしても、ミラー基板101の平板部の裏面に設けた補強用リブ121によって、静止時及び振動時におけるミラー基板101の変形を効果的に抑えることができる。よって、高周波数での振動時にもミラー面の平坦性が維持されるため、安定したビーム形状での光走査が可能である。なお、リブ121は、ミラー基板101の慣性モーメントの増加をできるかぎり抑えつつ十分な補強効果を発揮させるのに好適な形状である。また、ミラー基板101の変形は梁102,103から離れた部分で生じやすいが、本実施例のように梁102,103と直交する方向に延びるリブ121によれば、そのような部分での変形を効果的に抑制することができる。また、ミラー基板101の平板部の裏面(ミラー面と反対側の面)に補強用リブ121が設けられるため、平板部表面全体をミラー面として利用でき、したがって、本実施例の光走査装置は使用できるビーム形状の自由度が大きく汎用性が高い。さらに、ミラー基板101の裏面に設けられるリブ121は、図4(d)及び図5(e)に関連して説明するように、シリコン基板を凹状にエッチング加工する際に凸部として残す方法により容易に形成することができるため、光走査装置の製造プロセスの複雑化を招かない。
【0058】
次に、以上に説明したような構成の本発明の光走査装置の製造方法の一例について、図4乃至図6を参照して説明する。以下に述べる製造プロセスは、後記の第2実施例、第3実施例及び第4実施例の光走査装置にも同様に適用し得ることは明らかである。
【0059】
光走査装置のミラー基板、ねじり梁、フレームの材料としては、高精度の微細加工が容易であることと、それぞれの部材全体を共通の電極として使用できるようになることから、高濃度の不純物が含まれた低抵抗のシリコン基板が用いられる。
【0060】
まず、両面研磨された例えば厚さ200μmのシリコン基板201の片面に、シリコンを深くエッチングするためのマスクとして高粘度耐熱レジスト202を例えば100μmの厚さで塗布する(図4(a))。ここで使用されるマスク材としては、シリコンとの密着性がよく、エッチング時の選択比が100μmのシリコンエッチング時にもマスクとして残る程度に大きく、かつエッチング後には容易に除去できるような材料であればよく、また、Niメッキ膜等を利用してもよい。
【0061】
次に、このレジストを露光、現像することで内フレーム形状にパターニングする(図4(b))。
【0062】
このレジストをマスクとして、エッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチング装置(ICP-RIE)を用いて、シリコン基板を内フレーム形状に例えば100μmの深さまでエッチング除去する(図4(c))。ここで形成されたエッチング端面の段差部分に、後工程で起動用の固定電極111,112が形成される。
【0063】
レジスト202を溶解、除去した後、段差の形成された基板に再び高粘度耐熱レジスト203を例えば100μmの厚さで塗布し、露光、現像することで補強用凸状121の形状にパターニングする(図4(d))。
【0064】
そして、このレジストをマスクとして、100μmまで薄くした部分のシリコン基板をドライエッチング装置(ICP-RIE)を用いて補強用リブ121の形状に例えば50μmの深さまでエッチング除去する(図5(e))。
【0065】
次に、内フレーム104の形状にエッチングした面と反対側のシリコン基板面に、高粘度耐熱レジスト204を例えば100μmの厚さで塗布し、フレーム内側のシリコン基板が薄くなった領域の裏面を、ミラー基板101及び梁102,103の形状にパターニングする(図5(f))。
【0066】
このレジストをマスクとして、エッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチング装置(ICP-RIE)を用いて、シリコン基板を貫通するまでドライエッチングすることでミラー基板101及び梁102,103を形成する(図5(g))。このように、図4(d)及び図5(e)に関連して説明したように、シリコン基板を凹状にエッチング可能し残った凸部を補強用リブ121として形成する方法であるため、半導体プロセスを用いて容易にミラー基板101を一体形成することができる。
【0067】
次に、前工程でマスクとして利用したレジストを溶解、除去した後、基板全体を熱酸化し、基板との絶縁材料として表面に例えば厚さ1μmのSiO2膜205を形成する(図5(h))。
【0068】
次にフレーム内側端面のSiO2 膜上に、起動用固定電極111,112及び駆動用固定電極107,108とそれらの引き出し用パッド116,117,118,119となる金属薄膜206,207として、例えば300Å厚さのTi薄膜をスパッタ法で成膜した後に例えば1200Å厚さのPt薄膜をスパッタ法で成膜し、さらに、ミラー基板表面のミラー面となる金属薄膜115としてAl薄膜208を形成する(図6(i))。なお、これらの成膜の際に、電極以外の領域に金属薄膜が形成されないように、金属性のステンシルマスクで遮蔽し、また、同一部位で近接した駆動用の固定電極については、ミラー基板をジグを用いて傾斜させた状態で斜め方向から成膜した。ここで、Ti薄膜はSiO2膜上でのPt薄膜の密着性を向上させるためのものである。なお、ここではPt薄膜を電極材料として用いているが、導電性が高くSiO2との密着性が確保できれば、AuやTi、その他の材料を使用してもよい。また、ミラー面用の金属薄膜としてAl薄膜208を成膜したが、光走査装置で使用されるレーザー光に対し必要十分な反射率が得られる金属薄膜ならばAu、その他の材料も選択可能である。また、ここでは成膜方法としてスパッタ法を用いたが、真空蒸着、イオンプレーティング法等の他の方法で成膜してもよい。
【0069】
次に、フレーム裏面の一部のSiO2膜をメタルマスクを使ってエッチング除去し、コンタクトホール209を形成する(図6(j))。このシリコンが露出したコンタクトホール209に、ミラー基板に電圧を印加するためのパッド114としてのAl薄膜210をメタルマスクを使って成膜し、それと基板との間の電気抵抗を下げるため400℃の熱処理を行う(図6(k))。
【0070】
本発明の第2の実施例における光走査装置について図7を参照して説明する。図7(a)はミラー基板の裏面図、同図(b)は同図(a)のA−A’断面図である。
【0071】
本実施例の光走査装置においては、例えば厚さが30μm、大きさが4mm□のミラー基板101の平板部の裏面に、前記第1実施例と同様な梁102,103と直交する方向に延びた補強用リブ121が設けられるが、前記第1実施例と異なり、梁102,103が結合した端部に沿った位置にも補強用リブ121a,121bが設けらる。それぞれの補強用リブの高さは例えば30μmであり、ミラー基板101の梁102,103との結合端部の厚さは梁102,103の厚さと同一の60μmとなっている。したがって、補強用リブ121a,121bが無い場合に比べ、梁102,103とミラー基板101との結合強度が増大し、光走査装置の信頼性が向上する。これ以外の構成は前記第1実施例と同様であるので説明を省略する。
【0072】
本発明の第3の実施例における光走査装置について図8を参照して説明する。図8(a)はミラー基板の裏面図、同図(b)は同図(a)のB−B’断面図である。
【0073】
本実施例の光走査装置においては、例えば厚さが30μm、大きさが4mm□のミラー基板101の平板部の裏面に例えば30μmの高さの補強用リブ121が設けられるが、前記各実施例と異なって、補強用リブ121は梁102,103と直交する方向及び平行方向に延びて全体として格子状とされる。また、ミラー基板平板部の梁121,122と結合される端部及び駆動用電極と対向する端部に沿った位置にも補強用リブ121が設けられる。これ以外の構成は前記第1の実施例と同様であるので説明を省略する。
【0074】
本実施例の光走査装置においては、前述のような格子状の補強用リブ121によってミラー基板101が全面的に補強され、ミラー基板101のねじれ変形も効果的に抑制されるため、さらに安定したビーム形状での光走査が可能となる。また、前記第2の実施例と同様に、ミラー基板101の梁102,103と結合する端部は梁102,103と同じ60μmの厚さとなって、ミラー基板101と梁102,103との結合強度が前記第1の実施例より増加する。また、駆動用固定電極と対向するミラー基板端部は可動電極として作用するが、この端部の厚さも補強用リブ121の分だけ増加し60μmとなるため、前記各実施例よりも可動電極の面積が増加し、その結果、ミラー基板101をより低い電圧で駆動可能となる。
【0075】
本発明の第4の実施例における光走査装置について図9を参照して説明する。図9はミラー基板101の裏面図である。同図に示すように、本実施例においては、ミラー基板101は、梁102,103をはさんだ両端部分、つまり駆動用固定電極と対向する側の端部の部分で最も広くなるような略H型の平面形状を有する。このような平面形状は、ミラー基板101の慣性モーメントの減少と、それによる駆動電圧の低電圧化に効果的である。また、補強用リブ121は、前記第3の実施例と同様に格子状に形成され、また、梁102,103と結合される端部及び可動電極として作用する端部に沿う位置にも形成される。したがって、ミラー基板101の梁102,103との結合強度を向上させることができ、また、可動電極の面積を増大させて駆動電圧の低電圧化を図ることができる。
【0076】
本発明の第5の実施例における光走査装置について図10を参照して説明する。図10の(a)は光走査装置の概略中央断面図、(b)は光走査装置の概略裏面図である。
【0077】
ミラー基板101の裏面側に前記各実施例と同様に補強用リブ121が設けられるが、本実施例においては、補強用リブ121として、ねじり梁102,103を延長してミラー基板101を横切るリブ121dと、ミラー基板101の外周を縁どりするリブ122eが設けられている。これらリブ121の領域はその厚さがねじり梁102,103と同一となっており、それ以外の領域はねじり梁102,103の厚さよりも薄い肉抜き領域となっている。
【0078】
本実施例のような補強リブを設けない、シリコンからなるミラー基板の板厚を20μm、大きさを4mm×4mmとし、2.5kHzで±5°の振れ角で振動した場合のミラー基板101の変形の最大値の計算結果を図11に示す。このように、補強リブのないミラー基板の場合、ねじり梁を中心としたミラーの両側の中心位置での変形が最も大きく、その変形量は約1μmにもなることがわかる。
【0079】
本実施例のミラー基板101では、それを縁取りするリブ121eがこの変形を低減すると同時に、それと直行方向の変形も低減でき、さらに、ねじり梁102,103を延長してミラー基板101を横切るリブ121dは振動の中心軸の位置精度を向上させる効果があることから、安定した走査ビーム形状を得ることができる。
【0080】
以上説明した第5の実施例の光走査装置の製造方法の一例について、図12乃至図14を参照して説明する。
【0081】
ミラー基板、ねじり梁、フレームの材料として、高精度の微細加工が容易なシリコン基板を用いた。
【0082】
まず、両面研磨された厚さ200μmのシリコン基板1201の片面に、シリコンを深くエッチングするためのマスクとして高粘度耐熱レジスト1202を100μmの厚さで塗布する(図12(a))。ここで使用するマスク材としては、シリコンとの密着性がよく、エッチング時の選択比が100μmのシリコンエッチング時にもマスクとして残る程度に大きく、かつ、エッチング後には容易に除去できるような材料であればよく、また、Niメッキ膜等を利用してもよい。
【0083】
次に、このレジストを露光、現像することで内フレーム形状にパターニングする(図12(b))。
【0084】
このレジストをマスクとして、エッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチング装置(ICP-RIE)を用いて、シリコン基板を内フレーム形状に100μmの深さまでエッチング除去する(図12(c))。ここで形成されたエッチング端面の段差部分に、後工程で起動用の固定電極が形成される。
【0085】
レジスト1202を溶解、除去した後、段差の形成された基板に再び高粘度耐熱レジスト1203を100μmの厚さで塗布し、露光、現像することで補強リブの形状にパターニングする(図12(d))。
【0086】
そして、このレジストをマスクとして、100μmまで薄くした部分のシリコン基板をドライエッチング装置(ICP-RIE)を用いて50μmの深さまでエッチング除去することによって肉抜きし、リブの形状を形成する(図13(e))。
【0087】
次に、シリコンを内フレーム形状にエッチングした面と反対側の面に、高粘度耐熱レジスト1204を100μmの厚さで塗布し、枠体内側のシリコン基板が薄くなった領域の裏面を、ミラー基板及び梁形状にパターニングする(図13(f))。
【0088】
このレジストをマスクとして、エッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチング装置(ICP-RIE)を用いて、シリコン基板を貫通するまでドライエッチングすることでミラー基板、梁を形成する(図13(g))。
【0089】
レジストを溶解、除去した後、基板全体を熱酸化し、基板との絶縁材料として表面に厚さ1μmのSiO2膜1205を形成する(図13(h))。
【0090】
次に、フレーム内側の端面のSiO2膜上に、それぞれ起動用固定電極と駆動用固定電極として、Ti薄膜300Åをスパッタ法で成膜したあとに1200Å厚さのPt薄膜1206,1207をスパッタ法で成膜する。さらに、ミラー基板表面にミラー面としてAl薄膜1208を形成する(図14(i))。なお、成膜の際に、電極以外の領域には金属薄膜が形成されないように、金属性のステンシルマスクで遮蔽し、また、同一部位で近接した駆動用固定電極としてのPt薄膜1207は、ミラー基板をジグを用いて傾斜させた状態で斜め方向から成膜した。ここで、Ti薄膜はSiO2膜上でのPt薄膜の密着性を向上させるためのものである。なお、ここではPt薄膜を電極材料として用いているが、他に導電性が高く、SiO2との密着性が確保できれば、Au,Ti,等他の材料を使用してもよい。また、ここでは成膜方法としてスパッタ法を用いたが、真空蒸着、イオンプレーティング法等の他の方法で成膜してもよい。また、ミラー面としての金属薄膜1208としてAlを成膜したが、使用するレーザー光に対し必要十分な反射率が得られる金属薄膜ならば、Au等の他の材料も選択可能であり、その成膜方法もスパッタ法、イオンプレーティング法等の他の方法を用いてもよい。
【0091】
次に、フレーム裏面の一部のSiO2膜をメタルマスクを使ってエッチング除去し、コンタクトホール1209を形成する(図14(j))。このシリコンが露出したコンタクトホールに、ミラー基板に電圧を印加するための電極1210をメタルマスクを使って成膜し、電極と基板との抵抗を下げるための400℃の熱処理を行う(図14(k))。
【0092】
なお、以上説明した製造方法は、後記の第6乃至第11の実施例の光走査装置にも同様に適用し得ることは明らかである。
【0093】
《製造方法その2》
前記第5の実施例の光走査装置の製造方法の別の例についして、図15及び図16を参照して説明する。
【0094】
ここで説明する方法においては、ミラー基板、ねじり梁、フレームの材料として、高精度の微細加工が容易で、かつ、電極分離構造を容易に形成できるSOI基板を用いる。ここでは、ミラー基板、ねじり梁を形成する側の基板を、絶縁分離した各部位をそのまま電極として使用できるように、高濃度の不純物が含まれた0.1Ω・cm以下の低抵抗の厚さ100μmのシリコン基板とし、フレームを形成する側の基板を厚さ525μmの数Ω・cmから数十Ω・cmの中抵抗のシリコン基板とし、それらを厚さ1μmの酸化膜からなる絶縁膜で分離したSOI基板を用いるものとして説明する。
【0095】
まず、両面研磨された厚さ626μmのSOI基板2001のフレーム形成側の面に、シリコンを深くエッチングするためのマスクとして高粘度耐熱レジスト2002を100μmの厚さで塗布する(図15(a))。ここで使用するマスク材としては、シリコンとの密着性がよく、エッチング時の選択比が100μmのシリコンエッチング時にもマスクとして残る程度に大きく、かつエッチング後に容易に除去できるような材料であればよく、Niメッキ膜等を利用してもよい。
【0096】
次に、このレジストを露光、現像することで内フレーム形状にパターニングする(図15(b))。
【0097】
このレジストをマスクとして、エッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチング装置(ICP-RIE)を用いて、シリコン基板を内フレーム形状に酸化膜が露出する525μmの深さまでエッチング除去する(図15(c))。ここで、酸化膜はエッチングレートがシリコンと比較して著しく小さいため、エッチング停止層として機能する。なお、ここで形成されるエッチング端面の段差部分に、後の工程で起動用の固定電極が形成される。
【0098】
次に、レジスト2002を溶解、除去した後、ミラー基板を形成する側の基板に再び高粘度耐熱レジスト2003を100μmの厚さで塗布し、露光、現像することでリブ形状にパターニングする(図15(d))。
【0099】
そして、このレジストをマスクとして、ドライエッチング装置(ICP-RIE)を用い、100μmまで薄くした部分のシリコン基板を50μmの深さまでエッチング除去することで肉抜きし、リブ形状を形成する(図16(e))。
【0100】
次に、リブを形成した面に、レジスト2004を1.5μmの厚さで塗布し、ミラー基板及び梁形状にパターニングする(図16(f))。このとき、レジストは、リブの段差部分も含めて塗布をする必要があることから、スプレー状にして塗布する。
【0101】
このレジストをマスクとして、エッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチング装置(ICP-RIE)を用いて、シリコン基板を貫通するまでドライエッチングすることでミラー基板、梁を形成する(図16(g))。
【0102】
次に、フレームの一部に、駆動用固定電極となるAl薄膜2005をメタルマスクを使って真空蒸着法により成膜し、それと基板との抵抗を下げるために400℃の熱処理を行う(図16(h))。ここではAl薄膜2005は、Au等の他の材料の薄膜とすることも可能であり、その成膜方法もスパッタ法、イオンプレーティング法等の他の方法を用いることも可能である。
【0103】
このようなSOI基板を用いる製造方法によれば、ミラー基板を形成してから後の絶縁のための酸化膜形成と、その酸化膜上のミラー基板端面位置への金属電極の形成工程、および、酸化膜の一部除去によるコンタクト部の形成工程が不要となり、製造工程を短縮できる。なお、この製造方法は後記の第6乃至第11の実施例の光走査装置にも同様に適用し得ることは明らかである。
【0104】
本発明の第6の実施例における光走査装置について図17を参照して説明する。図17の(a)はミラー基板の裏面図であり、(b)はそのA−A’線断面図である。
【0105】
本実施例の光走査装置の全体的構成は前記第5の実施例と同様であるので図示及び説明を省略し、本実施例の特徴であるミラー基板101の補強用リブ121に関する構成についてのみ説明する。4mm□の大きさのミラー基板101の裏面には補強用リブ121が設けられるが、本実施例では、ねじり梁102,103を延長してミラー基板101を横切るリブ121dと、ミラー基板外周を縁どりするリブ121eに加えて、リブ121dの中央で直交しリブ121eを架橋するリブ121fが設けられている。リブ領域の厚さはねじり梁102,103と同一の60μmとなっており、それ以外の肉抜き領域はねじり梁よりも30μmだけ薄くなっている。
【0106】
振動時のミラー基板101の微小領域における慣性力は、微小領域の質量とねじり梁102,103からの距離の2乗の積に比例することから、ねじり梁102,103と平行な方向では微小領域の質量による慣性力の違いだけで、位置による慣性力の違いはないため変形が小さいが、ねじり梁と直行する方向では位置による慣性力の違いが大きくきいてくるため変形が大きい。そこで、本実施例においては、リブ121fを設けて、ねじり梁と直行する方向の剛性を高めることにより、振動による変形を効果的に抑制する。
【0107】
本発明の第7の実施例における光走査装置について図18を参照して説明する。図18の(a)はミラー基板の裏面図であり、(b)はそのB−B’線断面図である。
【0108】
本実施例の光走査装置の全体的構成は前記第5の実施例と同様であるので図示及び説明を省略し、本実施例の特徴であるミラー基板101の補強用リブ121に関する構成についてのみ説明する。
【0109】
4mm□の大きさのミラー基板101の裏面には補強用リブ121が設けられるが、本実施例では、ねじり梁102,103を延長してミラー基板101を横切るリブ121dと、ミラー基板外周を縁どりするリブ121eに加えて、リブ121dと平行及び垂直な複数のリブ121gが格子状に設けられている。格子状のリブ121gは、ミラー基板101の重心位置(G)がリブ121dの中心にくるように、リブ121dの中心に対して対称に配置されている。リブ領域の厚さはねじり梁102,103と同一の60μmとなっており、それ以外の肉抜き領域はねじり梁よりも30μmだけ薄くなっている。
【0110】
このように格子状のリブ121gを追加することにより、ねじり梁102,103に直行方向及び平行方向のミラー基板変形を、前記第6の実施例より以上に減少させることができる。ただし、ミラー基板の重量増加は振れ角は減少させるように作用するため、その分をおぎなうためにはより大きな駆動トルク、すなわち、より高い駆動電圧が必要となる。
【0111】
本発明の第8の実施例における光走査装置について図19を参照して説明する。図19はミラー基板の裏面図である。
【0112】
本実施例の光走査装置の全体的構成は前記第5の実施例と同様であるので図示及び説明を省略し、本実施例の特徴であるミラー基板101の補強用リブ121に関する構成についてのみ説明する。
【0113】
本実施例においても、前記第7の実施例の場合と同様に、ミラー基板101の裏面に補強用リブ121として、ねじり梁102,103を延長してミラー基板101を横切るリブ121d、ミラー基板外周を縁どりするリブ121d、及び、リブ121dと平行及び垂直な格子状のリブ121gが設けられる。ミラー基板外周を縁取りするリブ121dのミラー基板自由端側部分121dsは、リブ121dの長さより長く、ミラー基板101のねじり梁102,103と結合された端部より外側に張り出している。このリブの部分121dsは櫛歯形状とされ、同様の櫛歯形状とされたフレーム側の駆動用固定電極107,108(図10)と狭ギャップを隔てて対向して駆動用可動電極として働くが、可動電極側の長さが増加した分、固定電極107,108の長さも増加させられている。リブ領域の厚さはねじり梁102,103と同一の60μmとなっており、それ以外の肉抜き領域はねじり梁よりも30μmだけ薄くなっている。
【0114】
格子状のリブ121gを設けると、ねじり梁102,103に直交する方向及び平行な方向のミラー基板変形を効果的に抑制できるが、ミラー基板重量が増加するため、必要な振れ角を得るために必要な駆動トルク(静電力)も増加する。そこで、本実施例においては、可動電極として作用するリブ部分121eの長さを延長して駆動電極面積を増加させることにより、駆動トルクの増大を図っている。
【0115】
本発明の第9の実施例における光走査装置について図20を参照して説明する。図20の(a)はミラー基板の裏面図であり、(b)はそのB−B’線断面図である。
【0116】
本実施例の光走査装置の全体的構成は前記第5の実施例と同様であるので図示及び説明を省略し、本実施例の特徴であるミラー基板101の補強用リブ121に関する構成についてのみ説明する。
【0117】
本実施例においても、前記第6の実施例の場合と同様に、4mm□の大きさのミラー基板101の裏面に補強用リブ121として、ねじり梁102,103を延長してミラー基板101を横切るリブ121dと、ミラー基板外周を縁どりするリブ121eとが設けられるが、図20(a)に見られるように、リブ121eの各コーナー部、及び、リブ121dとリブ121eとの交差部分に、曲率が付けられている。この曲率を付加した部位は振動時のミラー基板の変形による応力が集中しやすい部分であるため、曲率を付加することによって応力集中が緩和され、その部位からの亀裂の発生が起きにくくなる。なお、リブ領域の厚さはねじり梁102,103と同一の60μmとなっており、それ以外の肉抜き領域はねじり梁よりも30μmだけ薄くなっている。
【0118】
本発明の第10の実施例における光走査装置について図21を参照して説明する。図21の(a)はミラー基板の裏面図であり、(b)はそのB−B’線断面図である。
【0119】
本実施例の光走査装置の全体的構成は前記第5の実施例と同様であるので図示及び説明を省略し、本実施例の特徴であるミラー基板101の補強用リブ121に関する構成についてのみ説明する。
【0120】
本実施例においても、前記第6の実施例の場合と同様に、4mm□の大きさのミラー基板101の裏面に補強用リブ121として、ねじり梁102,103を延長してミラー基板101を横切るリブ121dと、ミラー基板外周を縁どりするリブ121dとが設けられるが、図21(a)に見られるように、リブ121eと捻り梁102,103との交差部分(ねじり梁102,103とミラー基板101との連結部)に曲率が付けられている。この部位は振動時のミラー基板の変形による応力が集中しやすい部分であるため、曲率を付加することによって応力集中が緩和され、その部位からの亀裂の発生が起きにくくなる。リブ領域の厚さはねじり梁102,103と同一の60μmとなっており、それ以外の肉抜き領域はねじり梁よりも30μmだけ薄くなっている。
【0121】
なお、前記第9の実施例と同様に、リブ121eの各コーナー部、及び、リブ102eとリブ102eとの交差部分にも曲率を付けてもよく、そのような態様も本発明に包含されることは当然である。
【0122】
前記各実施例の光走査装置においては、図22に模式的に示すように、ミラー基板101の表面(ミラー面115が形成される側の面)と、ねじり梁102,103の表面とが同一面とされていた。
【0123】
本発明の第11の実施例の光走査装置においては、図23に模式的に示すように、ミラー基板101の表面と、ねじり梁102,103の厚さ方向の中心とが一致するような位置関係とされる。このような位置関係とすることにより、ミラー基板のねじり回転によるミラー面上でのビーム位置のずれが生じなくなるため、反射ビームの走査位置精度が向上する。
【0124】
なお、これ以外の構成は前記各実施例と同様でよい。また、補強用リブ121のうち、ミラー基板外周を囲むリブ121eについては図示のようにミラー基板101の表側にも突出するように形成されるが、これに限定されるわけではない。
【0125】
なお、図示しないが、前記ミラー基板及び該ミラー基板を駆動する手段を、記ミラー基板で偏向された光ビームを透過される部分と、駆動手段との結線のための端子部とを具備する減圧容器内に収容した光走査装置も本発明に含まれる。
【0126】
以上に説明した本発明の光走査装置は、写真印刷方式のプリンタや複写機などの画像形成装置のための光走査装置として最適である。次に、そのような画像形成装置の一例について図24を参照して説明する。
【0127】
図24において、301は光書込装置、302は光書込装置301の被走査面を提供する感光体ドラムである。光書込装置301は、記録信号によって変調された1本又は複数本のレーザビームで感光体ドラム302の表面(被走査面)を同ドラムの軸方向に走査するものである。感光体ドラム302は、矢印303方向に回転駆動され、帯電部304で帯電された表面に光書込装置301により光走査されることによって静電潜像を形成される。つまり、広義には、感光体ドラム302は静電潜像担持体である。この静電潜像は現像部305でトナー像に顕像化され、このトナー像は転写部306で記録紙307に転写される。転写されたトナー像は定着部307によって記録紙307に定着される。感光体ドラム302の転写部306を通過した表面部分はクリーニング部309で残留トナーを除去される。なお、感光体ドラム302に代えてベルト状の感光体を用いる構成も可能であることは明らかである。また、トナー像を転写媒体に一旦転写し、この転写媒体からトナー像を記録紙に転写して定着させる構成とすることも可能である。
【0128】
光書込装置301は、記録信号によって変調された1本又は複数本のレーザビームを発する光源部320と、前記第1の実施例乃至第11に関連して説明した本発明の光走査装置321と、この光走査装置321のミラー基板のミラー面に光源部320からのレーザビームを結像させるための結像光学系322と、ミラー面で反射された1本又は複数本のレーザビームを感光体ドラム302の表面(被走査面)に結像させるための走査光学系323から構成される。光走査装置321は、その駆動のための集積回路324とともに回路基板325に実装された形で光書込装置301に組み込まれる。
【0129】
このような構成の光書込装置301は、次のような利点を有する。本発明による光走査装置321は、前述のようにレーザビーム形状の安定性、駆動電圧の低電圧化の面で有利であるほか、回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、画像形成装置の省電力化に有利である。光走査装置321のミラー基板の振動時の風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、画像形成装置の静粛性の改善に有利である。光走査装置321は回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また、光装置装置321の発熱量もわずかであるため、光書込装置301の小型化が容易であり、したがって画像形成装置の小型化に有利である。
【0130】
なお、記録紙307の搬送機構、感光体ドラム302の駆動機構、現像部305、転写部306などの制御手段、光源部320の駆動系などは、従来の画像形成装置と同様でよいため図中省略されている。
【0131】
本発明の第12の実施例における振動ミラーチップの斜視図及び断面図を図25に示す。図25の(a)は振動ミラーチップ全体の斜視図であり、(b)は振動ミラーチップの中央における梁と垂直方向の断面図である。
【0132】
本実施例における振動ミラーチップは、ミラー部分3001と枠体3002とが結合して形成されるミラー基板、補強梁3003、ねじり梁3004、支持部3005、熱酸化膜3006、フレーム3007、枠体の一部の可動電極3008及び可動電極引き出しパッド3009、固定電極3010及び固定電極引き出しパッド3011とからなる。
【0133】
ミラー基板は、窒化シリコン(SiN)薄膜及び金属薄膜3012を含む薄膜状のミラー部分3001と、ミラー部分3001と結合しミラー部分3001の外縁にシリコン単結晶で形成された枠体3002と、枠体3002と同一の高さで枠体3002の内側を架橋する補強梁3003とから成る。
【0134】
ここで、ミラー部分3001における金属薄膜3012と枠体3002とは中央の窒化シリコン薄膜を挟んで互いに反対側にある。金属薄膜3012は、光に対して十分な反射率を有し、枠体3002と反対側の面はミラー面として使用する。このように枠体と反対側にミラー面があると、ミラー面上に枠体が無いため、ミラー面の全面を光ビームの反射に有効に使用することができ、光ビームの損失を防ぐことができる。
【0135】
窒化シリコン(SiN)薄膜は、内部応力として引張応力を有しているので、枠体3002の内側において金属薄膜3012も含めたミラー部分3001、特にミラー面の平坦性を確保することができる。その結果、安定した光ビームの形状を得ることができる。ここではミラー部分3001として窒化シリコン薄膜を用いているが、内部応力として引張応力を有する他の薄膜、例えば多結晶シリコン薄膜等を用いることも可能である。
【0136】
また、本発明の特徴としてミラー部分3001は、全て薄膜で形成されているので、大型のミラー基板を形成しても軽量であり、従って慣性モーメントが小さくなり、振動ミラーチップの動作時にミラー基板は大きな振れ角を得ることができる。またミラー部分3001は、枠体3002と補強梁3003とによって保持されるので、ミラー基板としての剛性が高く、動作時におけるミラー基板の変形が少なく安定したビーム形状を得ることができる。
【0137】
ミラー基板は、枠体3002の外側の側面中央近傍で2本のねじり梁3004で支持されている。この2本のねじり梁3004は、枠体3002の外側の側面における互いに対向する位置に結合し、ミラー基板のねじり振動の回転軸を含むように略同一直線上に設けられている。振動ミラーチップの動作時は、ねじり梁3004に支持されたミラー基板が、ねじり梁3004を回転軸としてねじり振動し、ミラー基板のミラー面にビーム光源から照射される光ビームを偏向させる。
【0138】
枠体3002の内側を架橋する補強梁3003は、ねじり梁3004の延長上に配置することが好ましい。補強梁3003をねじり梁3004の延長上、すなわち同一直線上の位置に配置してねじり振動の回転軸の一部とすることで、動作時にミラー基板がねじり振動の回転軸に対して対称になる。これにより、動作時に回転軸が安定して、枠体3002のねじり梁3004方向の変形を低減し、不要な振動モードを抑えて、安定したビーム形状が得られる。2本のねじり梁3004は、ねじり振動の繰り返し動作に対して十分な耐性が得られ、かつ適度なねじり剛性が得られるように、シリコン単結晶で枠体3002と一体で形成される。さらに、ねじり梁3004の高さ、幅、及び長さが、振動子としての共振周波数が所望の値となるように、ねじり剛性に基づいて適切に設計される。
【0139】
ねじり梁によるミラー基板の共振周波数fは、ねじり弾性係数をk、ミラー基板の慣性モーメントをIとすると次式で表すことができる。
f=1/(2π)×√(k/I)
【0140】
ここで、ねじり弾性係数kは、ねじり梁の幅をc、ねじり梁の高さをt、ねじり梁の長さをLとすると次式で表すことができる。
k=βtc^3E/(L(1+ν))
なお、βは断面形状係数、Eはヤング率、νはポアソン比である。
【0141】
また、ミラー基板の慣性モーメントIは、ミラー基板の重量をM、ミラー基板の幅(ねじり梁と直行する方向)をaとすると次式で表すことができる。
I=M a^2/12
【0142】
以上の式から、大きさ1mm×4mm、板厚60μmのミラー基板を、断面50μm×60μm、長さ500μmの梁で支持することにより、ミラー基板が約3kHzで共振駆動することがわかる。
【0143】
ねじり梁3004の枠体3002に結合していない側は、それぞれ同じシリコンで一体に形成された支持部3005に結合されており、この支持部3005は、熱酸化膜3006を介してシリコンで形成されたフレーム3007に固定されている。これらミラー基板の枠体3002、補強梁3003、ねじり梁3004と支持部3005とは共通の低抵抗シリコン基板で形成されており、支持部3005の表面には可動電極引き出しパッド3009としてAl薄膜が形成されている。ここで、枠体3002、補強梁3003、ねじり梁3004は、全て同一の高さ(厚さ)とすれば、それらは同時形成が可能であり、低コストで振動ミラーチップを製作できる。
【0144】
ミラー基板の枠体には、ねじり梁による回転軸方向と直交する方向の両側面に、櫛歯形状の可動電極3008が形成されている。このように可動電極を櫛歯状にすることによって、電極面積を増やすことができ、静電力によるミラー基板の駆動トルクを大きくすることができる。その結果ミラー基板の振れ角を大きくすることができる。また櫛歯形状の可動電極3008と微小間隔を隔てて、同様の櫛歯形状である駆動用の固定電極3010が可動電極3008などと独立して設けられている。この櫛歯形状の駆動用の固定電極3010は、櫛歯形状の可動電極3008と噛み合う形で対向している。可動電極3008と固定電極3010とが対向して設置されていることで、電極構造が簡単であり製造コストを下げて、効率良くミラー基板を駆動することができる。また駆動用の固定電極3010は低抵抗シリコン基板で形成されており、熱酸化膜3006を介してシリコンで形成されたフレーム7に固定されている。さらに固定電極3010の表面には固定電極引き出しパッド3011としてAl薄膜が形成されている。
【0145】
次に、本発明の第12の実施例における振動ミラーチップの動作を、図26を用いて説明する。枠体に形成された櫛歯状の可動電極3008は、枠体、ねじり梁、支持部と共通の低抵抗シリコン基板で形成されているので、ねじり梁の支持部表面に形成された可動電極引き出しパッド(図25の3009)と同電位である。また低抵抗シリコン基板で形成された駆動用の固定電極3010は、熱酸化膜3006を介してフレーム3007に固定されおり、ここでは固定電極3010における2つの固定電極引き出しパッド3011を接地している。これら可動電極3008の表面における可動電極引き出しパッドにそれぞれ同時に電圧を印加することにより、可動電極3008と固定電極3010との間に静電力を働かせる。なお、図26と反対に、可動電極3008における2つの可動電極引き出しパッドを接地し、固定電極3010の表面における固定電極引き出しパッド3011に電圧を印加してもよい。
【0146】
図26(A)は、可動電極引き出しパッドに電圧を印加していない初期状態を示している。ここでミラー基板は、形状や内部応力等のわずかな非対称性により、水平位置から数μm程度という微小量ではあるが初期変位を有している。この為にミラー基板に形成された可動電極8とフレーム上に熱酸化膜3006を介して形成された固定電極3010とは、互いの対向する面が平行であるように静止しているのではなく、ねじれ角の方向にわずかな変位を伴って互いに対向している。
【0147】
このような配置の可動電極3008と固定電極3010との間に、可動電極引き出しパッドに電圧を印加して静電力を働かせることにより、可動電極3008と固定電極3010の互いに対向する面が、平行に向かい合う方向、すなわち図26(B)に示すようなミラー基板が固定電極と水平になる方向、に向かってねじり梁を軸としてねじり振動させる(回転させる)ことができる。
【0148】
印加電圧を上昇させていきミラー基板が固定電極と水平になった瞬間に、電圧の印加を停止すると、図26(C)に示すように、ミラー基板の慣性により初期変位と反対側に、梁のねじり剛性とミラー基板の回転のモーメントとが釣り合う位置まで変位させることができる。ここで再び駆動用の可動電極3008に電圧を印加すると、可動電極3008及び固定電極3010の間の静電引力と梁のねじり剛性とにより、ミラー基板は逆方向に回転し、Dに示すように再び固定電極と水平な位置にまで変位する。
【0149】
この駆動用の可動電極3008の駆動周波数をミラー基板とねじり梁の共振周波数に設定することにより、ミラー基板の大きな振れ角を得ることができる。このとき、ミラー部分1の裏面に設けられた補強梁3003によりミラー基板の変形が低減される為、ミラー部分1で反射したビームは乱反射せず、安定した走査ビーム形状を得ることができる。
【0150】
次に、本発明の第13の実施例における振動ミラーチップの平面図及び断面図を図27に示す。本実施例における振動ミラーチップは、ミラー部分の構造を除いては、第12の実施例と同じ構造である。ミラー基板は、熱酸化膜3006窒化シリコン薄膜3013とで形成されたミラー部分3001と、ミラー部分3001と結合するシリコン単結晶で形成された枠体3002と、から成る。ミラー部分3001の外縁に形成された枠体3002の内側は、補強梁3003で架橋されている。またミラー部分3001の枠体3002及び補強梁3003が形成されていない側には、使用する光に対して十分な反射率をもつ金属薄膜3012がミラー面として形成されている。ミラー基板は、枠体3002の外側の側面中央近傍で2本のねじり梁3004で支持されている。この2本のねじり梁3004は、枠体3002の外側の側面における互いに対向する位置に結合し、ミラー基板のねじり振動の回転軸となるよう同一直線上に設けられている。さらに枠体3002の内側を架橋する補強梁3003も、ねじり梁3004と同一直線上の位置に配置することが好ましい。
【0151】
ねじり梁3004の枠体3002に結合していない側は、それぞれ同じくシリコンで一体に形成された支持部3005に結合されており、この支持部3005は、熱酸化膜3006を介してシリコンで形成されたフレーム3007に固定されている。支持部3005の表面には可動電極引き出しパッド3009として金属薄膜3012が形成されいる。ミラー基板の枠体3002には、ねじり梁による回転軸方向と直交する方向の両側面に、櫛歯形状の可動電極3008が形成されている。また櫛歯形状の可動電極3008と微小間隔を隔てて、同様の櫛歯形状である駆動用の固定電極3010が設けられている。この櫛歯形状の駆動用の固定電極3010は、櫛歯形状の可動電極3008と噛み合う形で対向している。また駆動用の固定電極3010は低抵抗シリコン基板で形成されており、熱酸化膜3006を介してシリコンで形成されたフレーム3007に固定されている。さらに固定電極3010の表面には固定電極引き出しパッド3011として金属薄膜3012が形成されている。
【0152】
ここで、第12の実施例においてはミラー部分3001が内部応力として引張応力を有する窒化シリコン薄膜の単層膜で形成されていたが、第13の実施例におけるミラー部分3001は、熱酸化膜3006と窒化シリコン薄膜3013の2層膜から構成されており、熱酸化膜3006がミラー基板の枠体3002及び補強梁3003のある側、窒化シリコン薄膜3013がミラー面側に成膜されている。熱酸化膜3006は、シリコンをエッチングする際には選択比が大きくエッチング停止層として好都合である。しかしながら、熱酸化膜3006は通常内部応力として圧縮応力を有している為、単層膜として用いると座屈してミラー面としての平坦性が確保できなくなる。そこで、内部応力として引張応力を有している窒化シリコン薄膜3013を熱酸化膜3006と組み合わせて成膜し、二層膜とすることで膜全体の応力が引張応力になるように調整している。このように金属薄膜3012も含めて、ミラー部分3001を多層膜として形成することにより、複数の様々な機能を有する薄膜を活用してミラー部分の設計をすることができる。また、ミラー部分1の構造や工程における設計の自由が高く、高性能な振動ミラーチップを作製することができる。ここで、エッチング停止層として熱酸化膜3006を用いる本実施例における振動ミラーチップの構造は、製法がより簡単で、コスト的にも有利であると考えられることから、次に本実施例における振動ミラーチップの製造方法を、図28及び図29を用いて説明する。
【0153】
本発明の第13の実施例における振動ミラーチップの製造には、SOI(Silicon on Insulator)ウエハを用いた。以下SOIウエハにおいて、熱酸化膜3006を介して下側の厚いウエハをベースウエハ3014、上側の薄いウエハをボンドウエハ3015と呼ぶことにする。フレームとして使用するベースウエハ3014は、厚さ525μm、中抵抗の(100)ウエハであり、枠体、補強梁、ねじり梁、支持部、可動電極、固定電極として使用するボンドウエハ3015には、厚さ60μm、低抵抗の(100)ウエハを用いた。また両ウエハの間にある熱酸化膜3006の厚さは500nmとした。なおボンドウエハの厚さは、ミラー基板及びねじり梁の共振周波数の設計値に合わせて設定した。また上述のSOIウエハは、十分に清浄化された2枚のシリコンウエハを、熱酸化膜を介して減圧雰囲気中で接触させ仮接合した後、1000℃以上の高温で熱処理、本接合し、上側ウエハを所望の厚さまで研磨することにより作製することができる。
【0154】
まず図28(a)に示すように、このSOIウエハの両面にLP−CVD(減圧気相化学析出)法により厚さ1000オングストロームの窒化シリコン薄膜3013を形成した。ここで形成する薄膜は、KOH溶液による異方性エッチングで厚さ525μmのベースウエハを全て除去する際に、エッチングマスクとして十分な耐性を有する窒化シリコン薄膜3013を用いている。一般に異方性エッチングに用いられる厚さ1μm程度の熱酸化膜3006は、エッチング速度が窒化シリコン薄膜3013と比較して大きい為、このようにシリコンを深くエッチングする際のマスクとしては適切ではない。
【0155】
次に、この窒化シリコン薄膜3013を、レジストマスクを用いたドライエッチングによりパターニングし、ミラー部分3001及びねじり梁部分を形成する領域をエッチング除去する。この際、(100)シリコンウエハは、窒化シリコン薄膜3013が形成されているエッチングマスクの面に対して54.7°の角度傾いた方向にエッチングされる。この為、最終的に残るボンドウエハの領域がマスクパターンよりも内側の領域となることを考慮した上で、エッチングマスクのパターンを設計する必要がある。
【0156】
次に図28(b)に示すように、パターニングされた窒化シリコン薄膜3013をエッチングマスクとして、85℃に昇温した30質量%のKOH溶液による異方性エッチングで、ベースウエハ3014を熱酸化膜3006に達するまでエッチング除去する。このとき熱酸化膜6は、シリコンと比較してKOH溶液に対するエッチング速度が遅いので、エッチング停止層とすることができる。これによりベースウエハ3014をフレーム3007とした厚さ60μmのボンドウエハ3015からなるシリコンダイアフラム3016が形成され、以後の工程ではこのシリコンダイアフラム3016部分にミラー基板、ねじり梁、及び櫛歯電極を形成する。
【0157】
次に図28(c)に示すように、再びLP−CVD法により厚さ1000オングストロームの窒化シリコン薄膜3013を形成し、さらにスパッタ法により1000オングストロームの厚さのAl薄膜をミラー面として形成する。熱酸化膜3006は薄膜のミラー部分3001として用いることになるが、熱酸化膜3006は一般に内部応力として圧縮応力を有する為、単層膜にすると座屈が生じてしまう。また一般にスパッタ法により成膜した金属薄膜も圧縮応力を有している。この為窒化シリコン薄膜30013を熱酸化膜3006と合わせて成膜し、窒化シリコン薄膜3013の内部応力としての引張応力により、熱酸化膜3006及び金属薄膜3012の圧縮応力を打ち消して、窒化シリコン薄膜3013、熱酸化膜3006、金属薄膜3012からなる多層膜全体としての内部応力が引張応力となるようにする。つまりここでは、窒化シリコン薄膜3013が応力調節膜として、多層膜全体の応力を容易に調節することができる。また、ここでは金属薄膜3012としてAlを成膜したが、使用するレーザ光に対し必要十分な反射率が得られる金属薄膜ならばAu等の他の材料も使用可能である。また、成膜方法としてはスパッタ法を用いたが、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の他の方法で成膜してもよい。
【0158】
次に図28(d)に示すように、ボンドウエハ3015のミラー部分3001を形成する領域にレジストをパターニングし、このレジストをマスクとしてボンドウエハ3015のミラー部分3001を形成する領域以外の窒化シリコン薄膜3013、熱酸化膜3006、Alの金属薄膜3012をドライエッチングによりエッチング除去し、窒化シリコン薄膜3013、熱酸化膜3006、Alの金属薄膜3012からなるミラー部分3001を形成する。
【0159】
次に図29(e)に示すように、ボンドウエハのミラー部分3001と反対側の窒化シリコン薄膜3013をレジストマスクで、枠体、梁、補強部、微小間隔の形状にドライエッチングでパターニングする。
【0160】
さらに図29(f)に示すように、レジスト/窒素化シリコン薄膜をマスクとして、エッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチング装置を用いて、ミラー基板とその周囲のシリコンに対して厚さ60μmの貫通エッチングを行った。このときミラー基板のエッチングは、図28(d)で形成したミラー部分における熱酸化膜3006で停止する。
【0161】
最後に2つの固定電極表面の一部を窒素化シリコン薄膜3013のマスクを使用したドライエッチングで除去し、得られたシリコン基板の表面にマスクを使ってAl薄膜をスパッタ法により成膜し、固定電極と基板との抵抗を下げるために400℃の熱処理を行って電極引き出しパッド3009、3011を形成する。ここではAl薄膜を電極材料として用いているが、他に導電性が高く、シリコンとの密着性が確保できれば、Au,Ti,等他の材料を使用してもよい。また成膜方法としてスパッタ法に限らず、真空蒸着、イオンプレーティング法等の他の方法で成膜してもよい。
【0162】
本発明の第14の実施例における振動ミラーチップの平面図及び断面図を図30に示す。本実施例における振動ミラーチップは、ミラー部分の構造を除いては、第13の実施例と同じ構造である。ミラー基板は、熱酸化膜3006と窒化シリコン薄膜3013とで形成されたミラー部分3001と、ミラー部分3001を伸張状態にしてミラー部分3001と結合するシリコン単結晶で形成された枠体及び補強梁と、から成る。ミラー部分3001の外縁に形成された枠体(図示せず)と枠体の内側を架橋する補強梁(図示せず)は同一の高さにある。またミラー部分1の表面における枠体及び補強梁の形成されていない側には、使用する光に対して十分な反射率をもつ金属薄膜3012がミラー面として形成されている。ミラー基板は、枠体の外側の側面中央近傍で2本のねじり梁3004で支持されている。この2本のねじり梁3004は、枠体の外側の側面における互いに対向する位置に結合し、ミラー基板のねじり振動の回転軸となるよう同一直線上に設けられている。さらに枠体の内側を架橋する補強梁も、ねじり梁3004と同一直線上の位置に配置することが好ましい。ねじり梁3004の枠体に結合していない側は、それぞれ同じくシリコンで一体に形成された支持部3005に結合されており、この支持部3005は、熱酸化膜3006を介してシリコンで形成されたフレーム3007に固定されている。支持部3005の表面には可動電極引き出しパッド3009として金属薄膜30122が形成されいる。ミラー基板の枠体には、ねじり梁3004による回転軸方向と直交する方向の両側面において、櫛歯形状の可動電極3008が形成されている。また櫛歯形状の可動電極3008と微小間隔を隔てて、同様の櫛歯形状である駆動用の固定電極3010が設けられている。この櫛歯形状の駆動用の固定電極3010は、櫛歯形状の可動電極3008と噛み合う形で対向している。また駆動用の固定電極3010は低抵抗シリコン基板で形成されており、熱酸化膜3006を介してシリコンで形成されたフレーム3007に固定されている。さらに固定電極3010の表面には固定電極引き出しパッド3011として金属薄膜3012が形成されている。
【0163】
ここで、第13の実施例ではミラー部分3001は、ミラー基板のフレーム3007側に形成されているが、本実施例におけるミラー部分3001は、ミラー基板のフレーム3007と反対側に形成されている。基本的な製造方法は第13の実施例と同じである為、ここでは製造方法の説明は省略する。このようにミラー部分3001をフレーム3007と反対側に配置することにより、ミラー部分3001のミラー面よりも上方に配置される構造体が無くなる為、光学設計上の自由度が高くなる。
【0164】
本発明の第15の実施例における振動ミラーチップの平面図を図31に示す。本実施例における振動ミラーチップは、ミラー基板における補強梁3003の構造を除いては、第13の実施例と同じ構造である。したがってここでは補強梁3003の構造についてのみ説明する。第13の実施例では枠体の内側を架橋する補強梁3003は、ねじり梁3004とほぼ同一直線上の位置に配置されていたのに対し、本実施例における枠体3002の内側を架橋する補強梁3003は、ねじり梁3004の延長上とほぼ直交方向に、すなわちねじり振動の回転軸と直交する方向に、互いに向き合う櫛歯電極3017の形成されている枠体3002の側面の中央部近傍を架橋して配置されている。本実施例の振動ミラーチップは、補強梁3003のパターンを変更することで第13の実施例と同様に製造することが可能である。補強梁3003を本実施のように配置することにより、本発明の振動ミラーチップの動作時において、櫛歯電極3017の部分が補強梁3003によって支持され、ミラー面の回転方向の変形を低減でき、安定したビーム形状を得ることができる。
【0165】
また第16の実施例として、図32に示すように枠体3002の内側を架橋する補強梁として、ねじり梁3004とほぼ同一直線上の位置に、すなわちねじり振動の回転軸に沿った方向に、配置される補強梁3003と、ねじり梁3004とほぼ直交方向に、すなわちねじり振動の回転軸と直交する方向に、互いに向き合う櫛歯電極3017の形成されている枠体側面の中央部付近を架橋して配置される補強梁3003とを合わせ持つミラー基板も作製することができる。このように、ねじり振動の回転軸に対して線対称であり、その回転軸の中心を通り、その回転軸と直交する軸に対しても線対称である補強梁を設けることが好ましい。枠体の内側に設ける補強梁3003は、上述のような配置の対称性を満たせば、ねじり梁3004と平行な方向、又は垂直な方向だけでなく、ねじり梁3004と傾いた方向(ねじり振動の回転軸に対して傾いた方向)であってもよい。このような梁を設けると動作時にミラー部分全体に亘って均等に変形を低減できるので、安定したビーム形状を得ることができる。
【0166】
さらに第17の実施例として図33に示したように、枠体3002の内側を架橋する補強梁として、ねじり梁3004とほぼ同一直線上の位置に配置される補強梁3003と、ねじり梁3004とほぼ直交方向に、互いに向き合う櫛歯電極3017の形成されている枠体側面の中央部付近を架橋して配置される補強梁3003を併せ持っている。ここで枠体3002の内側、枠体3002と補強梁3003とが交差する部分、又は補強梁3003が互いに交差する部位のそれぞれのかどが、曲面に形成されている。このように枠体3002と補強梁3003のかどの部分が曲面になっていると、かどの部分への応力集中を緩和することができる為、振動ミラーチップの動作時又は取り扱い時にミラー基板の破損を低減させることができる。
【0167】
本発明の第18の実施例における振動ミラーチップの断面図を図34に示す。本実施例における振動ミラーチップにおいては、ミラー基板における補強梁3003の構造を除いては、第13の実施例と同じ構造である。従ってここでは補強梁3003の構造についてのみ説明する。
【0168】
第13の実施例においては、枠体の内側を架橋する補強梁3003の高さは枠体3002の高さと一致していた為、枠体3002及び補強梁3003は共にミラー部分3001の裏面に接合されているのに対して、本実施例における枠体3002の内側を架橋する補強梁3003の高さ(厚さ)は、枠体3002よりも高さ(厚さ)が低く(薄く)、ミラー部分3001と離隔している。これにより、枠体3002は補強梁3003によって剛性を十分に維持すると共に、ミラー部分3001がほぼ全面に亘って補強梁3003から独立しているので、ミラー部分はほとんど歪みが無く、ミラー面は平坦性の高い面精度が得られる。
【0169】
本発明の第19の実施例における振動ミラーチップの断面図を図35に示す。本実施例における振動ミラーチップは、ミラー部分3001が枠体3002の高さのほぼ中央位置に配置されている。したがって補強梁3003の高さは枠体3002の高さの約1/2となっている。枠体3002の高さはねじり梁3004の高さと同じである為、他の実施例ではミラー部分3001の中心が、枠体3002の高さの半分に相当する距離だけ離れた位置で振動していたのに対し、本実施例では、回転軸であるねじり梁の中心軸がミラー部分を通る配置となっている。従ってミラー部分内にあるねじり振動の回転軸まわりにミラー部分が振動することになり、光学設計が容易となる。
【0170】
図36は、本発明による光走査装置に装備される光走査モジュールの一例を示す斜視図である。ねじり振動するミラー基板3020は、厚さ60μmのシリコン基板からなり、エッチングによりミラー部分と、ミラー部分を軸支するねじり梁3004とを、それらの周囲を貫通し枠部から分離して形成する。ねじり梁3004を挟んで対向するミラー部分の両辺部分は、櫛歯状に凹凸を形成し、それらの櫛歯と噛み合うように枠部側も凹凸に形成してある。また、ミラー部分のミラー面の裏側はリブ状に梁を残してあり、ミラー面の裏側からエッチングによりミラー部分を5μmまで薄肉化し、軽量化を図っている。ミラー部分及び枠部側の凹凸部には、Au等の金属被膜が蒸着され、ミラー部分の両端の凹凸部を可動電極3008、対向する枠部側の凹凸部を固定電極3010としている。ミラー部分は、固定電極3010の一方に電圧を印加すると対向する可動電極3008との間に静電力を生じ、ねじり梁4がねじれて微小角の回転を起し、各電極に交互に電圧を印加することでねじり振動する。ここで、印加電圧の周波数をミラー部分の共振周波数に近づけると、共振により振幅を拡大することができる。本実施例では、電極間の微小間隔を4μm、ねじり梁の幅を60μm、ミラー径を4×2mmとし、2.5kHzで共振振動する。なお電極を櫛歯状とすることで、ミラー基板3020の外周長をできるだけ長くし、電極の面積を増加させている。これにより、低電圧の印加で、より大きな静電トルクが得られる。フレームは525μmのシリコン基板からなり、上述のミラー基板とは絶縁膜を介して接合されており、中央部は貫通してミラー基板3020を覗くことができる。フレーム上には、ミラー基板3020との接合面から約26°傾けた反射面を有する第1反射素子3021と、同様に約9°傾けた反射面を有する第2反射素子3022とが、光ビームの通過する微小間隔を挟んで互いに対向して接合し、屋根状の対ミラーを形成している。上述の反射素子3021,3022は、各々結晶面方位(110)及び(111)から9°スライス角度を傾けたシリコン基板からなり、エッチングにより(111)面を露出させ、その(111)面を各ミラーチップとフレームの接合面とする。支持基体は、底板部3026と中央に角穴3030を有する台座部3025とがFe等の焼結金属等で一体成形され、絶縁材料を介して複数の端子3027が貫通して保持されている。ミラー基板3020上に重ね合わせたフレーム3007は、台座部3025に接合して保持され、上述の角穴3030は、ミラー基板3020が揺動する空間となる。電極引き出しパッドはワイヤーボンディングにより各端子3027の上端と結線される。モジュールは、支持基体の底板部の底面を回路基板に突き当てて実装され、端子3027の下端を回路基板のスルーホールに挿入して、半田づけによる電気的な接続がなされると同時に、モジュールは回路基板へ固定される。また台座部3025の外縁には、光ビームの通過する窓3028が形成された箱蓋状のカバー3029が装着され、内部を不活性気体で満たして封止される。尚、振動ミラーチップを支持基体とカバーで3029で封止する際に、不活性気体として粘性抵抗の低い気体を選択する、又は内部を減圧状態とすることで、ミラー基板3020をより低負荷で振動させることができるのでミラー基板の振れ角を大きくすることができる。
【0171】
次に図37に、上述の光走査モジュールの断面図を示す。光ビームは、ミラー基板3020の回転軸を含み実装面と垂直な面内(垂直走査断面内)を、実装面の法線に対して約20°の入射角度で、窓3028及び貫通穴を通過してミラー基板3020に入射する。ミラー基板3020のミラー面で偏向された光ビームは、その後第1反射素子反射面3023で反射され、再度ミラー基板3020のミラー面に入射し、次に第2反射素子反射面3024で反射される。第2反射素子反射面3024とミラー基板3020のミラー面との間で垂直走査断面内の位置を移動しながら反射を繰り返し(本実施例の図37では3回の繰り返し)、貫通穴を通過して入射光線と約40°の角度、すなわち実装面の法線に対して入射光線と反対側に20°の角度で射出する。
【0172】
本実施例では、このようにミラー基板3020のミラー面で光ビームを多重反射させることで、ミラー基板3020のミラー面の振れ角が小さくても、光ビームは大きな走査角が得られるようにしている。つまり、ミラー基板3020のミラー面がねじれ振動によって傾くと、光ビームは回転軸と垂直方向に多重反射され、光ビームの反射角度は反射されるごとに増加していく。ここでミラー基板3020のミラー面での総反射回数をN、ミラー基板3020の振れ角をαとすると、射出する光ビームの角度である走査角θは、2Nαであり、反射する回数が多いほど大きくなる。図37に示す本実施例の場合、±5°の振れ角で、ミラー基板3020のミラー面における光ビームの総反射回数が5回なので、走査角50°が得られる。
【0173】
図38は、上述の光走査モジュールを用いた光走査装置を示す。光走査モジュール3031は、半導体レーザの駆動回路と振動ミラーチップのミラー基板の駆動回路とが形成される回路基板3032上に、レーザ光の走査方向に合わせて順次配列されている。また各光走査モジュール3031において、光ビームの走査開始側にはセンサーが回路基板3032上に配置されている。各光走査モジュール3031に対してレーザ光を走査する光学系は、半導体レーザ3033、カップリングレンズ3034、及び走査光学系を構成する第1レンズ3035、第2レンズ3036から構成されている。第1レンズ3035及び第2レンズ3036は、光走査モジュール3031のミラー基板の回転軸を含む垂直走査断面内で各々光軸が一致し、かつレーザ光が走査する面に対して各レンズの側面が平行になるように、ハウジング内に配置され固定される。半導体レーザ3033は、発光源とモニタ用フォトダイオードが組み込まれている汎用の素子を用い、そのリード端子はフレキシブルケーブルにより回路基板3032に結線されている。回路基板3032には、半導体レーザ3033の変調制御を司る回路、及び振動ミラーチップ内の固定電極に駆動パルス電圧を印加する回路等が形成されている。半導体レーザ3033から射出したレーザ光は、第1面が軸対称の非球面、第2面が垂直走査方向に曲率を有するシリンダ面であるカップリングレンズ3034によって、レーザ光の走査方向には略平行光束に、レーザ光の走査方向と垂直な方向には振動ミラーチップのミラー面で集束するような集束光束になる。レーザ光は、入射ミラーを介して光走査モジュールに入射し、振動ミラーチップによって偏向、走査されて射出される。射出されたレーザ光は、上述の走査光学系により被走査面上に結像され、画像記録がなされる。第2レンズ3036の直前には同期ミラーが配備され、走査開始側の光ビームを反射し、センサーにおいて振動ミラーチップのミラー面の角度変位を検出して、同期信号を発生する。各半導体レーザ3033は、この同期信号に基づき、時間とともに周波数が一回の走査内で変化するパルス列に、画素データを乗せた変調信号をLD駆動部により与えられオン・オフされる。
【0174】
ここで光走査モジュール内の振動ミラーチップのミラー部分が枠体の結合される側と反対側にミラー面を有しており、枠体及び枠体の内側を架橋する補強梁がミラー部分と結合していないようなミラー面の部分で、光ビームを反射させるようにすると、ミラー面の歪みが無く平坦性の高い部分で光ビームが反射するので、安定したビーム形状を得ることができ望ましい。
【0175】
図39は、上述の光走査装置を用いた画像形成装置の一例を示す。レーザ光の被走査面である感光体ドラム3041の周囲には、感光体を高圧に帯電する帯電チャージャー3042、光走査装置3040により記録された静電潜像に帯電したトナーを付着して顕像化する現像ローラ3043、現像ローラにトナーを供給するトナーカートリッジ3044、ドラムに残ったトナーを掻き取り備蓄するクリーニングケース3045が配置される。感光体ドラムへは上述のように主走査方向を分割して潜像記録が行われる。記録紙は給紙トレイ3046から給紙コロ3047により供給され、レジストローラ対3048により副走査方向の記録開始のタイミングに合わせて送り出され、感光体ドラムを通過する際に転写チャージャ49によってトナーが転写され、定着ローラ3050で定着して排紙ローラ3051により排紙トレイ3052に排出される。以上のようにして、記録紙に画素データに基づく画像を形成することができる。
【0176】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はそれら実施例の構成のみに限定されるものではなく、様々な変形が許されるものである。
【0177】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、大型のミラー基板を大きな振れ角で高速動作させた場合でもミラー面の変形が小さく安定な光走査が可能な光走査装置もしくは振動ミラーチップ、並びに、それらを用いた光走査モジュール、光書込装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による光走査装置の一例を説明するための断面図及び裏面図である。
【図2】 本発明による光走査装置の動作説明図である。
【図3】 ミラー走査角と駆動パルスのタイミング関係を示す図である。
【図4】 本発明による光走査装置の製造工程例を説明するための断面図である。
【図5】 本発明による光走査装置の製造工程例を説明するための断面図である。
【図6】 本発明による光走査装置の製造工程例を説明するための断面図である。
【図7】 本発明による光走査装置のミラー基板の他の一例を説明するための裏面図及び断面図である。
【図8】 本発明による光走査装置のミラー基板の他の一例を説明するための裏面図及び断面図である。
【図9】 本発明による光走査装置のミラー基板の他の一例を説明するための裏面図及び断面図である。
【図10】 本発明による光走査装置の一例を説明するための裏面図及び断面図である。
【図11】 ミラー基板の変形量の計算結果を示す図である。
【図12】 本発明による光走査装置の製造工程例を説明するための断面図である。
【図13】 本発明による光走査装置の製造工程例を説明するための断面図である。
【図14】 本発明による光走査装置の製造工程例を説明するための断面図である。
【図15】 本発明による光走査装置の製造工程例を説明するための断面図である。
【図16】 本発明による光走査装置の製造工程例を説明するための断面図である。
【図17】 本発明による光走査装置のミラー基板の一例を説明するための裏面図及び断面図である。
【図18】 本発明による光走査装置のミラー基板の他の一例を説明するための裏面図及び断面図である。
【図19】 本発明による光走査装置のミラー基板の他の一例を説明するための裏面図である。
【図20】 本発明による光走査装置のミラー基板の他の一例を説明するための裏面図及び断面図である。
【図21】 本発明による光走査装置のミラー基板の他の一例を説明するための裏面図及び断面図である。
【図22】 本発明による光走査装置のミラー基板とねじり梁との位置関係を説明するための断面図である。
【図23】 本発明による光走査装置のミラー基板とねじり梁との位置関係を説明するための断面図である。
【図24】 本発明による光走査装置を使用した光書込装置及び画像形成装置の一例を説明するための概略構成図である。
【図25】 本発明による振動ミラーチップの一例を示す斜視図及び断面図である。
【図26】 本発明による振動ミラーチップの動作説明図である。
【図27】 本発明による振動ミラーチップの一例を示す平面図及び断面図である。
【図28】 本発明による振動ミラーチップの製造方法を説明する図である。
【図29】 本発明による振動ミラーチップの製造方法を説明する図である。
【図30】 本発明による振動ミラーチップの一例を示す平面図及び断面図である。
【図31】 本発明による振動ミラーチップの一例を示す平面図である。
【図32】 本発明による振動ミラーチップの一例を示す平面図である。
【図33】 本発明による振動ミラーチップの一例を示す平面図である。
【図34】 本発明による振動ミラーチップの一例を示す断面図である。
【図35】 本発明による振動ミラーチップの一例を示す断面図である。
【図36】 本発明による光走査モジュールの一例を示す分解斜視図である。
【図37】 本発明による光走査モジュールの一例を示す断面図である。
【図38】 本発明による光走査装置の一例を示す分解斜視図及び断面図である。
【図39】 本発明による画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
101 ミラー基板
102,103 ねじり梁
107,108 駆動用固定電極
111,112 起動用固定電極
115 金属薄膜(ミラー面)
121 補強用リブ
3001 ミラー部分
3002 枠体
3003 補強梁
3004 ねじり梁

Claims (25)

  1. 二つのねじり梁により支持され前記ねじり梁を回転軸として往復振動するミラー基板を有し、単一の基板をエッチング加工して、前記ねじり梁、前記ミラー基板、及び前記ねじり梁を結合してミラー基板を支持する枠体が一体形成された光走査装置において、
    前記ミラー基板は、前記ねじり梁と厚さを同一としたリブの領域と、前記ねじり梁の厚さよりも薄い肉抜き領域とを有し、
    前記リブは、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切るリブと、前記ミラー基板を縁どりするリブとを有し、
    前記リブの交差部位の角が曲線状になっていることを特徴とする光走査装置。
  2. 二つのねじり梁により支持され前記ねじり梁を回転軸として往復振動するミラー基板を有し、単一の基板をエッチング加工して、前記ねじり梁、前記ミラー基板、及び前記ねじり梁を結合してミラー基板を支持する枠体が一体形成された光走査装置において、
    前記ミラー基板は、前記ねじり梁と厚さを同一としたリブの領域と、前記ねじり梁の厚さよりも薄い肉抜き領域とを有し、
    前記リブは、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切るリブと、前記ミラー基板を縁どりするリブとを有し、
    前記ねじり梁と、前記ミラー基板を縁どりする前記リブとが交差する部位の角が曲線状になっていることを特徴とする光走査装置。
  3. 前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切る前記リブと交差して、前記ミラー基板を縁どりする前記リブを架橋するリブを更に有することを特徴とする請求項1又は2記載の光走査装置。
  4. 前記ミラー基板を縁どりする前記リブを架橋する前記リブが、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切る前記リブと直交する方向に通ることを特徴とする請求項3記載の光走査装置。
  5. 前記ミラー基板は、前記リブ領域及び前記肉抜き領域のある面と反対側の面にミラー面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の光走査装置。
  6. 前記ミラー基板と前記ねじり梁とは、前記ミラー面と前記ねじり梁の厚さ方向の中心とが一致する位置関係にあることを特徴とする請求項5記載の光走査装置。
  7. 二つのねじり梁により支持され前記ねじり梁を回転軸として往復振動するミラー基板を有し、単一の基板をエッチング加工して、前記ねじり梁、前記ミラー基板、及び前記ねじり梁を結合してミラー基板を支持する枠体が一体形成された光走査装置において、
    前記ミラー基板は、前記ねじり梁と厚さを同一としたリブの領域と、前記ねじり梁の厚さよりも薄い肉抜き領域とを有し、
    前記リブは、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切るリブと、前記ミラー基板を縁どりするリブとを有し、
    前記ミラー基板を縁取りする前記リブの、前記ねじり梁と平行な部分に可動電極が設けられ、この可動電極と対向して前記枠体に固定電極が設けられ、
    前記ミラー基板を縁取りする前記リブの、前記ねじり梁と平行な部分の長さが、前記ねじり梁の間を直線状に結ぶ前記ミラー基板を横切る前記リブの長さよりも長いことを特徴とする光走査装置。
  8. 前記可動電極及び固定電極は櫛歯状であることを特徴とする請求項7記載の光走査装置。
  9. 前記ミラー基板及び前記ねじり梁が単結晶シリコンで形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の光走査装置。
  10. 請求項1乃至9のいずれか1項記載の光走査装置と、記録信号によって変調された光ビームを前記光走査装置のミラー基板のミラー面へ入射させるための手段と、前記ミラー面で反射された光ビームを被走査面に結像させるための手段とを有することを特徴とする光書込装置。
  11. 請求項1乃至9のいずれか1項記載の光走査装置と、静電潜像担持体と、前記光走査装置のミラー基板のミラー面へ記録信号によって変調された光ビームを入射させるための手段と、前記ミラー面で反射された光ビームを前記静電潜像担持体に結像させるための手段とを有し、前記記録信号にしたがった静電潜像が前記静電潜像担持体上に形成されることを特徴とする画像形成装置。
  12. 二つのねじり梁で支持され光ビームを偏向するミラー基板と、前記ねじり梁を回転軸として前記ミラー基板をねじり振動させるミラー駆動手段とを有する振動ミラーチップにおいて、
    前記ミラー基板は、薄膜状に形成されたミラー部分と、前記ミラー部分に結合する枠体とを有し、
    前記枠体は、前記ねじり梁の延長上に、前記枠体の内側を架橋する補強梁を有し、
    前記枠体の内側のかど、前記枠体及び前記補強梁が交わる部位のかど、並びに前記補強梁同志が互いに交わる部位のかどの少なくとも1つは、曲面に形成されていることを特徴とする振動ミラーチップ。
  13. 二つのねじり梁で支持され光ビームを偏向するミラー基板と、前記ねじり梁を回転軸として前記ミラー基板をねじり振動させるミラー駆動手段と、を有する振動ミラーチップにおいて、
    前記ミラー基板は、薄膜状に形成されたミラー部分と、前記ミラー部分に結合する枠体とを有し、
    前記枠体は、前記ねじり梁の延長上に、前記枠体の内側を架橋する補強梁を有し、
    前記補強梁は、前記ミラー部分と離隔することを特徴とする振動ミラーチップ。
  14. 前記回転軸に対して線対称であり、前記回転軸の中心を通り前記回転軸と直交する軸に対して線対称である、補強梁を有することを特徴とする請求項12又は13記載の振動ミラーチップ。
  15. 前記枠体及び前記補強梁の少なくとも一方は、前記ねじり梁と同一の厚さであることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項記載の振動ミラーチップ。
  16. 前記ミラー部分は、前記枠体が結合される側と反対側にミラー面を有することを特徴とする請求項12乃至15のいずれか1項記載の振動ミラーチップ。
  17. 前記ミラー部分は、前記ねじり梁の中心軸が前記ミラー部分を通ることを特徴とする請求項12乃至16のいずれか1項記載の振動ミラーチップ。
  18. 前記ミラー部分は、多層膜により形成されることを特徴とする請求項12乃至17のいずれか1項記載の振動ミラーチップ。
  19. 前記ミラー駆動手段は、前記枠体に設けられた可動電極と、前記可動電極と対向する位置に設置される固定電極とを有することを特徴とする請求項12乃至18のいずれか1項記載の振動ミラーチップ。
  20. 前記可動電極は、櫛歯状であることを特徴とする請求項19記載の振動ミラーチップ。
  21. 請求項12乃至20のいずれか1項記載の振動ミラーチップと、該振動ミラーチップで偏向した光ビームの透過部分と、前記振動ミラーチップの前記ミラー駆動手段に結線する端子部と、を容器内に備えることを特徴とする光走査モジュール。
  22. 前記振動ミラーチップの前記ミラー基板上で前記光ビームを多重反射させる反射光学系を更に備えることを特徴とする請求項21記載の光走査モジュール。
  23. 光ビームを発生させる光源手段と、該光ビームを走査する請求項21又は22記載の光走査モジュールと、該光走査モジュールによって走査された前記光ビームを結像させる光学系とを備えることを特徴とする光走査装置。
  24. 前記振動ミラーチップは、前記ミラー部分が前記枠体の結合される側と反対側にミラー面を有し、前記枠体及び該枠体の内側を架橋する前記補強梁が前記ミラー部分と結合していない前記ミラー面の部分で、前記光ビームが反射することを特徴とする請求項23記載の光走査装置。
  25. 請求項23又は24記載の光走査装置と、該光走査装置によって静電潜像を形成する感光体と、前記静電潜像をトナーで顕像化する現像手段と、該現像手段によって顕像化されたトナー像を記録紙に転写する転写手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
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