JP4145005B2 - 光走査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はデジタル複写機、及びレーザプリンタ等の書込系に用いられ、マイクロマシニング技術を応用した微小光学系を有する光走査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術において、光走査装置はパッケージングされた半導体レーザとカップリングレンズとの配置を調整組立した光源部、精密機械加工によるポリゴンミラーやガルバノミラー等の偏向器、複数枚で構成される走査レンズからなり、光学ハウジングの所定の取付部にこれらの位置関係を高精度に管理しながら組付が行われるが、手作業に頼っているため小型化に限界があり、組付に多大なコストがかかるという欠点がある。
【0003】
従来技術における光走査装置の構成例を図1、図2を用いて説明する。まず、図1はポリゴンミラーを用いた例を示す。同図において、半導体レーザ(LD)101は保持部材102の裏側に形成した嵌合穴に圧入され、カップリングレンズ103が保持部材の貫通穴出口部に形成した円筒面の一部を切り出した形状の突起にUV接着される。また、LD駆動基板106にはLDを変調起動する回路が実装されLDのリードをその回路にハンダ接合して光源ユニットをなす。光源ユニットからはカップリングレンズの配置調節により略平行光束が射出される。シリンダレンズ104は副走査方向にのみ曲率を有しポリゴンミラー107の反射面上にて主走査方向に線状となるよう集束し、面倒れ補正光学系の一部を構成する。ポリゴンミラー107はモータ108により一定方向に回転されビームを走査する。走査されたビームは結像レンズ110により、ミラー111を介して被走査面114(感光体面)にスポット状に結像される。ミラー113は走査開始側でビームを折り返し、センサ基板109上に実装されたフォトセンサ108に入射させ、この検出時刻を基準に画像記録のタイミングをとる。
【0004】
これら光源ユニット、モータ、結像レンズ、ミラー、センサ基板は光学ベース112に高精度に位置決めされ一体的に支持される。
【0005】
図2はガルバノミラー115を用いた例であり、ガルバノミラーを使用すること以外は図1と同様の構成である。図1においてポリゴンミラーが一定方向にビームを走査するのに対し、図2におけるガルバノミラー115は矢印方向に往復回転してビームを双方向に走査する。
【0006】
上記のような構成に対し、近年シリコンマイクロマシニング技術を利用した光走査デバイスの研究が進められており、特許2722630号、特許2668725号や特開平4−96014に開示されるように半導体レーザチップ、軸受一体の偏向器を単一のシリコン基板上に集積した光走査装置の提案がなされている。
【0007】
半導体製造プロセスを用いるためきわめて高い位置精度が確保でき、人手を介さず複数個同時に製造できるという利点がある。
【0008】
一方、半導体製造プロセスを用いた偏向器として、特許2722314号にはシリコン基板上に一体的にガルバノミラーを形成した偏向器が、また、特開平5−142405には表面に回折格子を形成した偏向器が開示されている。
【0009】
ところで、ミラーを揺動させる機構として、上記特許2722314号に示すような電磁力を用いるものの他、IBM J.Res.Develop Vol.24 (1980)に掲載されている光走査装置のように、同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板を、ミラー基板に対向する位置に設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸として往復振動させるものがある。マイクロマシニング技術で形成されるこの光走査装置は、従来のモーターを使ったポリゴンミラーの回転による光走査装置と比較して、構造が簡単で半導体プロセスでの一括形成が可能なため、小型化が容易で製造コストも低く、また単一の反斜面であるため複数面による精度のばらつきがなく、さらに往復走査であるため高速化にも対応できる等の効果が期待できる。
【0010】
このような静電駆動のねじり振動型光走査装置としては、特許第2924200号に開示される、梁をS字型として剛性を下げ、小さな駆動力で大きな振れ角が得られるようにしたもの、特開平7−92409に開示される、梁の厚さをミラー基板、フレーム基板よりも薄くしたもの、特許第3011144号、あるいは The 13th Annual International Workshop on MEMS2000 (2000) 473-478 に開示される、固定電極をミラー部の振動方向に重ならない位置に配置したもの、また、The 13th Annual International Workshop on MEMS2000 (2000) 645-650 にも記載されるように、対向電極をミラーの振れの中心位置から傾斜させて設置することで、ミラーの振れ角を変えずに駆動電圧を下げたものがある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
シリコンマイクロマシニング技術を利用した光走査装置においては、単一のシリコン基板上に光走査に関わるすべての機能を作り込むには製造プロセス上制限があり、単純に従来と同じレイアウトで一次元的に配置するだけでは基板サイズ的にも無駄が多い。
【0012】
また、薄膜形成とエッチングによるトリミングの繰り返しのため、ある程度厚みが必要な機能に対しては非常に効率が悪いという欠点がある。
【0013】
一方、半導体レーザや偏向器においては各々外部からの電源供給や制御信号のやり取りが必要であるが、光走査装置が小型化されることで電気配線の扱いがかえって厄介になるという問題がある。
【0014】
また、光学性能の劣化や短絡の要因となる塵やほこりへの対策も当然必要になり、シリコン基板のままでは画像形成装置等への組み込みはできない。
【0015】
以上のように画像形成装置に用いる光走査装置として小型にまとめるには多くの課題がある。
【0016】
また、2本の梁でミラー基板を両側がら保持し、この梁をねじり回転軸としてミラー基板を静電引力により往復振動させる偏向器では、ミラー基板を一方の共通電極として、ねじり回転軸の両側にある駆動のための他方の2つの電極を、ミラー基板の平面側に対向させるものとミラー基板の端面側に対向させるものがある。
【0017】
一般的に静電引力は印加電圧を一定とした場合、電極間距離の2乗に反比例し、電極面積に比例する。従って、ミラー基板のミラー面と反対側の平面に対向して電極を設けた場合、電極面積を広くとることにより静電引力を大きくすることができる。しかし、より大きな静電引力を得るために電極間距離を短くすると、電極がミラー基板の振動方向に近接するため変位の妨げになり、ミラー部の振れ角が電極に接触しない範囲に制限されてしまう。一方、電極をミラー基板の端面側に設けた場合、電極間距離を短くすることにより静電引力を大きくすることができる。この場合、電極どうしが接触しない位置にあるため、ミラー基板の変位を妨げることはないが、共通電極であるミラー基板の端面の厚さは数10um程度しかないため電極面積を大きくとることができない。対向する電極どうしを櫛歯状に折り曲げたとしても高周波数で振動する基板の強度上その面積には限界がある。このように、静電駆動のねじり振動ミラーでは、大きな静電引力すなわち近接した大面積の駆動電極と、大きなミラー基板の振れ角を両立させることが難しい。
【0018】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、シリコンマイクロマシニング技術を利用した光走査装置における上記の欠点を改善し、光走査装置として小型モジュール化を実現するとともに、製作工程を簡素化することにより生産効率を向上させること目的とする。また、偏向器の可動部を小型、軽量化し、負荷を低減することで消費電力の低減をはかる。更に、振れ角が大きく安定した振動が得られる静電駆動のねじり振動型の偏向器を有する光走査装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、光源からの光束を偏向させて走査する光走査装置モジュールであって、光束を偏向させる偏向面を有する偏向手段と、偏向手段を回転軸支して保持する偏向部基板とを配備し、前記偏向面と対向して前記偏向部基板と一体的に反射面を設け、該反射面と前記偏向面との間で複数回光束を反射させて走査する光走査装置モジュールであり、前記偏向面へ入射する光束の光束径を規制するアパーチャを、前記反射面と一体的に設けたことを特徴とする光走査装置モジュールである。
【0020】
請求項2に記載の発明は、光源からの光束を偏向させて走査する光走査装置モジュールであって、光源を実装する光源部基板と、光束を偏向させる偏向面を有する偏向手段を保持した偏向部基板とを積み重ねて配備し、前記偏向面と対向して反射面を設け、該反射面と前記偏向面との間で複数回光束を反射させて走査する光走査装置モジュールであり、前記偏向面へ入射する光束の光束径を規制するアパーチャを、前記反射面と一体的に設けたことを特徴とする光走査装置モジュールである。
【0021】
上記の発明によれば、偏向器の少ない回転角でより大きな走査角が得られ、偏向器速度を低減できるので、可動部を薄型化でき加工時間が短縮されて組立効率を向上することができる。また、光源部基板を積み重ねて配備することで偏向面へ光ビームを精度良く入射させることができる。また、騒音や振動を低減することができる。
また、本発明によれば、光ビームの偏向面への入射位置精度および反射面との配置精度を厄介な調整作業を行なわなくても積層により確保できるので、組立効率を向上することができる。
【0022】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の記載において、前記反射面と前記偏向面との間隔をg、該偏向面への副走査方向での光束入射角度をβ、入射する光束の副走査光束径を2ω とするとき、
g・tanβ>ω
で表される関係を満たし、該偏向面での反射点を副走査方向に順次移動して走査するようにしたものである。
【0023】
本発明によれば、主走査方向での必要幅を最小限とすることができるので、可動部が小型化でき、加工時間が短縮されて組立効率を向上することができる。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のうちいずれか1項の記載において、前記反射面と前記偏向面との間隔について、光束の入射側の間隔より射出側の間隔を広くしたものである。
【0025】
本発明によれば、射出側における光ビームの副走査方向角度を拡大し前記反射面エッジとのマージンを広げることができるので、入射角度の誤差があっても確実に光ビームを射出できる上、反射面の設置精度を緩和でき組立効率を向上することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のうちいずれか1項の記載において、前記光源を実装する光源部基板を、偏向部基板と積み重ねて配備し、前記反射面を前記光源部基板に設けるようにする。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のうちいずれか1項の記載において、前記反射面は前記光源部基板と一体的に設けたものである。
【0028】
上記発明によれば、厄介な調整作業を行なわなくても積層により反射面と偏向面の配置精度が確保できるので、組立効率を向上することができる。すなわち、図1、2で示したような多数の部品を平面上で精度良く組み立てる多大な労力を無くすことが可能となる。
【0031】
請求項7に記載の発明は、請求項1又は2の記載において、前記偏向手段は、同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板と、ミラー基板に対向して設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸としてミラー基板を往復振動させる手段とを有し、ミラー基板におけるミラー面の反対側の面に対向する基板面と、ミラー基板端面に対向するフレーム端面とに電極を設けるようにする。
【0032】
本発明によれば、上記の効果に加え、偏向手段においてミラー基板端面とそれに対向するフレーム内枠表面に形成された電極が近接しているため低い電圧でミラー基板を励振させることができる。さらに共振周波数で駆動させたときにはミラー基板の振れ幅が大きくなり、ミラー基板端部がより面積の大きなミラー面の反対側に対向する電極面にも近接するため、ミラー基板端面とミラー基板平面に対向した電極の駆動により振動維持をより安定化することができる。
【0033】
請求項8に記載の発明は、ミラー基板のミラー面の反対側の面に対向する基板面における前記電極を、前記ねじり回転軸を中心に傾斜させた請求項7に記載の光走査装置モジュールである。
請求項9に記載の発明は、請求項7の記載において、前記ミラー基板のミラー面側にフレームを設け、該フレームには、ミラー基板に入射する光束が通過する開口部と、ミラー基板で偏向した光束が通過する開口部と、ミラー面に対向する反射面とを設けるようにする。
【0034】
本発明によれば、反射基板の開口部を通って斜め方向から入射し、往復振動するミラー基板表面のミラー面で偏向走査された光が、対向して設けられた反射基板のミラー面との間で複数回往復した後、反射基板の開口部を通って出射されるので、非平行なミラー間の多重反射により反射ごとに光の反射角度が広がり、同じミラー基板の振れ角でビームの走査角をより大きくすることができる。したがって高周波数での広範囲の光走査が可能となる。
【0035】
請求項10に記載の発明は、請求項1又は2の記載において、前記偏向手段は、同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板と、ミラー基板に対向して設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸としてミラー基板を往復振動させる手段とを有し、ミラー基板のミラー面側にフレームを設け、該フレームには、ミラー基板に入射する光束が通過する開口部と、ミラー基板で偏向した光束が通過する開口部と、ミラー面に対向する反射面と、ミラー面に対向する電極とを設け、ミラー基板端面に対向する位置に電極を設けるようにする。
【0036】
本発明によれば、電極が反射基板上に設けられているので、電極基板を別途設ける必要がなく、構造が簡単で低コストに製造でき、上記と同様の効果を得ることが可能となる。
【0037】
請求項11に記載の発明は、ミラー基板端面に対向する前記電極を、該ミラー基板端面と重ならない部位に形成する請求項7乃至10のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュールである。また、請求項12に記載の発明は、ミラー基板端面とそれに対向する前記電極とを、互いに櫛歯状にした請求項7乃至10のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュールである。また、請求項13に記載の発明は、請求項7乃至12のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュールを、光を透過させ、電極を取り出すことが可能な減圧容器内に設けたことを特徴とする光走査装置モジュールである。
請求項14に記載の発明は、請求項1乃至13のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュールと、走査開始側及び終端側で光束を検出する同期検知センサと、走査レンズとを有することを特徴とする光走査装置である。
【0038】
請求項15に記載の発明は、像担持体と、像担持体の主走査方向に並置された請求項1乃至13のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュールとを有することを特徴とする光走査装置である。
【0039】
請求項16に記載の発明は、請求項14又は15に記載の光走査装置を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0040】
本発明によれば、組立効率を向上を向上させた精度の高い光走査装置を用いた画像形成装置を提供することが可能となる。
【0041】
なお、本願明細書に記載された発明として、同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板と、ミラー基板に対向して設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸としてミラー基板を往復振動させる光走査装置モジュールであって、ミラー基板におけるミラー面の反対側の面に対向する基板面と、ミラー基板端面に対向するフレーム端面とに電極を有する光走査装置モジュールが提供される。
【0042】
本発明によれば、ミラー基板端面とそれに対向するフレーム内枠表面に形成された電極が近接しているため低い電圧でミラー基板を励振させることができる。さらに共振周波数で駆動させたときにはミラー基板の振れ幅が大きくなり、ミラー基板端部がより面積の大きなミラー面の反対側に対向する電極面にも近接するため、ミラー基板端面とミラー基板平面に対向した電極の駆動により振動維持をより安定化することができる。
【0043】
上記光走査装置モジュールにおいて、ミラー基板のミラー面の反対側の面に対向する基板面における前記電極を、前記ねじり回転軸を中心に傾斜させるようにしてもよい。
【0044】
本発明によれば、ミラー面の反対側に対向する電極面がミラー基板の変位にならう方向に傾斜して形成されているため、ミラー基板が傾いたときに端部を含めてミラー基板全体が電極面に近接するため、請求項14で記述した効果よりもさらにミラー基板の振動維持を安定化することができる。
【0045】
上記光走査装置モジュールにおいて、ミラー基板のミラー面側にフレームを設け、該フレームには、ミラー基板に入射する光束が通過する開口部と、ミラー基板で偏向した光束が通過する開口部と、ミラー面に対向する反射面とを設けるようにしてもよい。
【0046】
本発明によれば、反射基板の開口部を通って斜め方向から入射し、往復振動するミラー基板表面のミラー面で偏向走査された光が、対向して設けられた反射基板のミラー面との間で複数回往復した後、反射基板の開口部を通って出射されるので、非平行なミラー間の多重反射により反射ごとに光の反射角度が広がり、同じミラー基板の振れ角でビームの走査角をより大きくすることができる。したがって高周波数での広範囲の光走査が可能となる。
【0047】
また、本願明細書に記載された発明として、同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板と、ミラー基板に対向して設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸としてミラー基板を往復振動させる光走査装置モジュールであって、ミラー基板のミラー面側にフレームを設け、該フレームには、ミラー基板に入射する光束が通過する開口部と、ミラー基板で偏向した光束が通過する開口部と、ミラー面に対向する反射面と、ミラー面に対向する電極とを設け、ミラー基板端面に対向する位置に電極を設けた光走査装置モジュールが提供される。
【0048】
本発明によれば、上記の効果が得られると共に、電極が反射基板上に設けられているので、電極基板を別途設ける必要がなく、構造が簡単で低コストに製造できる。
【0049】
上記光走査装置モジュールにおいて、ミラー基板端面に対向する前記電極を、該ミラー基板端面と重ならない部位に形成するようにしてもよい。
【0050】
本発明によれば、電極がミラー端面と重なっている部位がないため、そこで生じるミラー基板の変位を妨げる静電引力がなく、より低電圧でのミラー基板の励振が可能である。
【0051】
上記光走査装置モジュールにおいて、ミラー基板端面とそれに対向する前記電極とを、互いに櫛歯状にしてもよい。
【0052】
本発明によれば、対向電極の面積が大きくなるため、より低い電圧でミラー基板を励振させることができる。
【0053】
上記光走査装置モジュールにおいて、ミラー基板端面に対向するように設けた電極と、ミラー面の反対側に対向する面に設けた電極又はミラー面に対向する面に設けた電極とを導通させず、各々の電極への電圧の印加タイミングをずらして駆動してもよい。
【0054】
本発明によれば、各々の電圧の印加タイミングをミラー基板の振動による変位と合わせることができるので、ミラー基板のより安定した駆動ができる。
【0055】
上記光走査装置モジュールにおいて、ミラー基板のミラー面に対向する面と、ミラー面の反対側に対向する面と、ミラー基板端面に対向する面とにそれぞれ電極を設け、各々の電極を導通させず、各々の電極への電圧の印加タイミングをずらして駆動するようにしてもよい。
【0056】
本発明によれば、各々の電圧の印加タイミングをミラー基板の振動による変位と合わせることができ、さらに上下の電極での静電引力を利用できるので、ミラー基板のより安定した駆動が、より低い電圧で可能となる。
【0057】
上記光走査装置モジュールを、光を透過させ、電極を取り出すことが可能な減圧容器内に設けてもよい。
【0058】
本発明によれば、ミラー基板の振動の際の空気抵抗がなくなるため、より高周波数での駆動が可能となる。
【0059】
また、本願明細書に記載された発明として、光束を偏向面で反射させ走査する偏向手段が設けられた第1の基板と、該偏向面に対向した位置に反射面が設けられた第2の基板と、該偏向面と該反射面との距離を規定する第3の基板とを設け、レーザー光を偏向面と反射面との間で複数回反射させて走査することを特徴とする光走査装置モジュールが提供される。
【0060】
本発明によれば、第1の基板の偏向面と第2の基板の反射面をそれぞれの基板表面に形成したうえで、両者間の距離は別基板で規定しているため、偏向面と反射面としてミラー研磨された基板表面を利用できる。
【0061】
また、本願明細書に記載された発明によれば、上述した光走査装置モジュールと、走査開始側及び終端側で光束を検出する同期検知センサと、走査レンズとを有する光走査装置を構成することができる。
【0062】
また、本願明細書に記載された発明によれば、像担持体と、像担持体の主走査方向に並置された上記光走査装置モジュールとを有する光走査装置を構成することができる。
【0063】
また、本願明細書に記載された発明によれば、上記光走査装置を有する画像形成装置を提供することができる。
【0064】
また、本願明細書に記載された発明として、光源を実装する光源部基板と、光束を偏向させる偏向面を有する偏向手段を保持した偏向部基板とを積み重ねて配備し、前記偏向面と対向して反射面を設け、該反射面と前記偏向面との間で複数回光束を反射させて走査する光走査装置モジュールにおける偏向手段の制御方法であって、ミラー基板の端面に対向する第1の電極に電圧を印加し、引き続きミラー面に対向する第1の電極又はミラー面の反対側に対向する第1の電極に電圧を印加し、その電圧を解除した後、ミラー基板の端面に対向する第2の電極に電圧を印加し、引き続きミラー面に対向する第2の電極又はミラー面の反対側に対向する第2の電極に電圧を印加する制御方法が提供される。本発明によれば、光走査装置モジュールの動作を確実に制御することができる。
【0065】
また、本願明細書に記載された発明として、同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板と、ミラー基板に対向して設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸としてミラー基板を往復振動させる光走査装置モジュールにおける制御方法であって、ミラー基板の端面に対向する第1の電極に電圧を印加し、引き続きミラー面に対向する第1の電極又はミラー面の反対側に対向する第1の電極に電圧を印加し、その電圧を解除した後、ミラー基板の端面に対向する第2の電極に電圧を印加し、引き続きミラー面に対向する第2の電極又はミラー面の反対側に対向する第2の電極に電圧を印加する制御方法が提供される。本発明によれば、光走査装置モジュールの動作を確実に制御することができる。
【0066】
【発明の実施の形態】
図3に本発明の第1の実施例における光走査モジュールの斜視図を示す。なお、本明細書において、図3に示すように各部が一体となった構成を光走査モジュール又は光走査装置モジュール、もしくは光走査装置という。また、後述する図7に示すような装置は光走査装置という。また、ミラーを偏向させる部分の構成は、偏向器又は光走査装置、もしくは光走査装置モジュールという。
【0067】
図3に示すように、本発明の第1の実施例における光走査モジュールは、各基板を積み重ねて構成される。図4には積み重ねた状態での断面図を示す。以下、図3及び図4を参照して第1の実施例における光走査モジュールについて説明する。
【0068】
セラミック成形による電極基板201にはリード端子202が一体的に形成され、一対のマグネット203を配備してなる。第1のシリコン基板204には2本のねじり梁205により軸支されたミラー部206を異方性エッチングにより形成する。ミラー部206の周縁には金属被膜を蒸着することでコイル部が形成されており、同コイルに電流を流すことでその外側に配備された前記マグネット203との電磁力によりねじり梁205を回転軸として振幅する。中央部は同金属被膜により反射面となっている。尚、ミラー部206において偏向速度を共振周波数と一致するようにねじり梁205の太さを設定すればより低負荷でミラー部206を振幅させることができる。
【0069】
第2のシリコン基板207には金属被膜を蒸着することで図示しない配線パターンが形成され、前記したリード端子202とワイヤーボンディング等により接続がなされる。
【0070】
半導体レーザチップ208はシリコン基板上にエピタキシャル技術を用い直接AlGaAs層を堆積させ、半導体レーザを構成するクラッド層、活性層を実装面に平行に形成できるが、本実施例ではファーフィールドパターンの狭い側を副走査方向とするため別体で製造した複数の発光源を有する半導体レーザアレイチップを実装面に垂直に発光源が配列するようにサブマウントを介して実装している。一方、半導体レーザの背面光を検出するモニタ用のフォトダイオード209はシリコン基板上に直接GaAs層を堆積させて形成している。
【0071】
カップリングレンズ210は実装面に平行な方向と垂直な方向とで曲率が異なる円筒状のアナモフィックレンズであり、シリコン基板上に形成したV溝211に円周部の一部を当接して設置する。尚、V溝はカップリングレンズ210の中心軸と半導体レーザの放射中心とが一致するように形成されている。
【0072】
半導体レーザは2個の発光源が14μmの間隔で形成され、被走査面上では各ビームスポットが実装面と垂直な方向(副走査方向)に所定の間隔で配列して2ラインを同時に走査する。
【0073】
フレーム212は単結晶Si基板を用い異方性エッチングによりカップリングレンズ210から射出した光ビームを前記基板上に形成したアパーチャ213を通して前記ミラー部206へと導く反射部214および半導体レーザの背面光をフォトダイオード209へと導く反射部215が形成される。
【0074】
ミラー部206で偏向走査された光ビームは図4に示すように第2のシリコン基板207の裏側に数100μm(g)の間隔をもって対向して設けた反射部216との間で実施例ではN=4回往復して反射させて、開口217を通過して射出される。本実施例の場合、ミラー部206の回転角(振れ角)は約3°であり4回の反射により走査角を3°×2N=24°まで拡大させている。
【0075】
ここで、副走査方向に順次移動して射出するには、反射部215とミラー部206との間隔をg、ミラー部206への光ビームの副走査方向入射角度をβ、入射する副走査方向での光束径を2ω(実施例ではアパーチャ213の径)とすると少なくとも g・tanβ>ω なる関係とすることで回転軸に対称に走査角が得られるようにしている。
【0076】
また、実施例では略平行に対向したが、光ビームの入射側(g0)よりも射出側(g1)の間隔を僅かに広く(g0≦g1)設定することにより射出側での光ビームの反射部216のエッジ部との干渉に対するマージンを広げることができる。
【0077】
一般に記録速度を上げるには走査周波数を大きくするため共振点を高める必要があるが、それに伴ってねじり梁も太くなるので回転角は小さくなる。従って、この回転角の縮小分を補うよう反射回数を増やすことで走査レンズの画角を変えずに対応できる。記録速度を下げる場合はその逆である。
【0078】
封止板218は透明部材よりなり光ビームを被走査面上に結像する走査レンズの一部を構成するレンズの機能、例えばミラー部206への斜入射に伴う走査線曲がりの補正機能をその射出窓219に持たせている。実施例ではガラス基板の表面を濃度変化をもたせたフォトリソグラフィにより非球面形状の開口部を形成しているが、回折格子や分布屈折率レンズであっても、また、レンズ部のみを貼り合せてもよい。当然、封止板218をレンズ機能をもたない平板ガラスとし走査レンズを別途配備してもよい。
【0079】
図中、220、221は各々半導体レーザ208、コイル部への電流供給を制御する回路で、各基板上に直接形成している。
【0080】
上記した電極基板201、第1のシリコン基板204、第2のシリコン基板207、フレーム212、封止板218を順次積層して接合することで光走査モジュールを構成する。
【0081】
第1の実施例における偏向器は、電磁力を利用してミラー部を振動させる方式であるが、静電力を利用してミラー部を振動させる構成とすることもできる。その場合、マグネット203は不要である。また、静電力を利用した偏向器の構成については、後述する第3〜第10の実施例において詳細に説明する。
【0082】
次に、光走査モジュールの第2の実施例について説明する。
【0083】
図5、図6に第2の実施例における光走査モジュールの斜視図、及び断面図を示す。
【0084】
セラミック成形による電極基板301にはリード端子302が一体的に形成される。第1のシリコン基板303には図6に示すように基板上に堆積させた多結晶Si層から偏向ディスク部304をエッチングにより切り出しステータ部322と分離した後に軸受のクリアランス部だけに酸化膜を形成し、さらに多結晶Siを堆積して軸部323を形成するという工程をへて軸支部を一体的に形成している。
【0085】
前記ステータ部322には金属被膜を蒸着することで固定子となる複数の電極306が放射状に形成され、偏向ディスク304の円周にもそれと対向して電極307が形成されており、固定子への電流の印加を順次切り換えることにより電極間の静電力によって駆動する。
【0086】
偏向ディスク304には前記エッチングにより周方向に向けて凹凸を形成して回折格子305とし、前記金属被膜で同時にコートされる。入射した光ビームはディスクの回転につれて変化する格子の角度に応じてその約1.5倍の走査角で走査できるが、第1の実施例と同様、ディスク面と対向して後述する基板308の下面に反射面を設けN=2回反射させることで走査角を拡大している。
【0087】
回折格子305表面は円周方向に複数領域に等角度に分割され、本実施例では1回転で6面分の走査を行う。一般に記録速度を上げるには面数を増やせば良いが、1面あたりの回転角が縮小してしまう。従って、第1の実施例と同様、これを補うよう反射回数を増やすことで走査レンズの画角を変えずに対応できる。
【0088】
第2のシリコン基板308には同様に金属被膜を蒸着することで図示しない配線パターンが形成され、前記したリード端子とワイヤーボンディング等により接続がなされる。
【0089】
半導体レーザチップ309は第1の実施例と同様、別体で製造した複数の発光源を有する半導体レーザアレイチップを用いるが、実装面に垂直に発光源が配列するようサブマウント325を介して実装してなる。
【0090】
半導体レーザの背面光を検出するモニタ用のフォトダイオード310はシリコン基板上に直接形成している。カップリングレンズ311は実装面に平行な方向と垂直な方向とで曲率が異なる円筒状のアナモフィックレンズとし、シリコン基板上に形成したV溝312に円周部の一部を当接して設置する。尚、V溝はカップリングレンズ311の中心軸と半導体レーザの放射中心とが一致するように形成されている。
【0091】
半導体レーザは2個の発光源が14μmの間隔で形成され、被走査面上では各ビームスポットが実装面と垂直な方向(副走査方向)に所定の間隔で配列して2ラインを同時に走査する。
【0092】
フレーム313には、カップリングレンズ311から射出した光ビームを前記基板上に形成したアパーチャ316を通して偏向器である偏向ディスク304へと導く反射部314および半導体レーザの背面光をフォトダイオード310へと導く反射部315が形成される。本実施例では第1の実施例と同様、単結晶Si基板を用い異方性エッチングにより反射部を形成した。アパーチャ316では光ビームの光束径を整形し、外乱光を遮断する。
【0093】
偏向ディスク304で偏向走査された光ビームは基板に設けた開口317を通過して射出される。
【0094】
封止板318は透明部材よりなり光ビームを被走査面上に結像する走査レンズの一部を構成するレンズの機能をその射出窓319に持たせている。
【0095】
図中、320、321は各々半導体レーザ309、固定子電極306への電流供給を制御する回路で、各基板上に直接形成している。
【0096】
上記した電極基板301、第1のシリコン基板303、第2のシリコン基板304、フレーム313、封止板318を順次積層して接合することで光走査モジュールを構成する。
【0097】
次に、上記の第1、第2の実施例で説明した光走査モジュールを使用した光走査装置の例について説明する。図7に示す光走査装置においては、光走査モジュールは、主走査を複数領域に分割し各領域に対して各々光走査モジュールを割り当てるよう一つの電装基板402上に複数個配列される。電装基板には各走査開始側および終端側で光ビームを検出する同期検知センサ403および前記制御回路220、221の周辺回路等が形成されており、各光走査モジュール間の走査線の角度、走査位置を合わせて位置決めされハンダ付け固定される。
【0098】
各光走査モジュールから射出した光ビームは走査レンズ404を介して被走査面上に結像する。走査レンズは各々のレンズ部が一体的に樹脂成形されており前記同期検知センサ403へは光走査モジュールから射出した光ビームを走査レンズ近傍に配備されたミラー405で戻して入射させる。
【0099】
尚、本実施例では主走査を複数に分割し2本のビームで走査したが、全走査幅を1つの光走査モジュールで走査しても、また、1ビームの半導体レーザを用いても構成は同様である。
【0100】
図7に示したような光走査装置は、例えば、図8〜図10に示す画像形成装置に用いられる。図8はデジタル複写機、図9はレーザプリンタ、図10は普通紙ファクシミリの構成を示す。
【0101】
各図において500は画像形成装置本体、501は図7に示したような光走査装置、502は用紙を収容するカセット、504はカセットから用紙を1枚ずつ取り出す給紙ローラ、506は搬送タイミングをコントロールするレジストローラ、508は転写帯電器、510はプロセスカートリッジで感光体ドラム512、現像ローラ513、帯電ローラ514等が一体化されている。また、516はハロゲンヒータが内蔵された定着ローラ、518は加圧ローラで定着器を構成する。さらに、520は搬送ローラ、522は排紙ローラである。
【0102】
光走査装置501は画像信号に応じて半導体レーザが変調され、帯電ローラ514によって一様に帯電された感光体ドラム512上に潜像を形成し、現像ローラ513から供給されるトナーによって顕像化される。一方、給紙ローラ504によって取り出された用紙はレジストローラ506によって光走査装置501の画像書き出しのタイミングに合わせて搬送されトナー像が転写される。転写された画像は定着ローラ516により定者されて排紙される。
【0103】
特に図8において511は読取装置本体であり、原稿台に固定された原稿の読み取り部523における画像を結像レンズ524を介してCCD等の光電変換素子525上に結像させ、ミラー群522を移動して順次、電子データに変換する。また、第2の用紙カセット504‘を備えている。
【0104】
また、図10において527は原稿の読み取り装置で、原稿台515から給紙ローラ529によって送り出された原稿の画像は搬送ローラ対526、528により搬送されながら順次電子データに変換する。
【0105】
さて、前述したように、第1の実施例における偏向器は、静電力を利用した機構でもよい。ここで、振れ角が大きく安定した振動が得られる静電駆動の偏向器(以下、光走査装置という)について、第3〜第10の実施例として説明する。これらは全て第1の実施例に示す光走査モジュールにおける一部として使用可能である。また、それに限らず、他の構成の中でも使用可能である。
【0106】
本発明の第3の実施例における光走査装置の構成を図11に示す。aは光走査装置全体の正面図、bは駆動電極を含んだ光走査装置中央の断面図である。
【0107】
ミラー基板601は同一直線上に設けられた2本のねじり梁602、603でその中央部分を支持されている。2本のねじり梁602、603は、ミラー基板が必要とする振れ角が得られるような剛性となるように、断面寸法、形状、長さが設定され、ミラー部の外側に設けられた共通のフレーム内枠604に固定されている。ミラー基板601のねじり梁に支持されていない両側の端面606は、ミラー部の外側に設けられたフレーム内枠604に近接対向して形成されている。
【0108】
フレームは一体構造をなすフレーム内枠604と外枠605からなり、内枠はその端面の一部が電極となっており、外枠は内枠よりも厚くその下側を電極基板612に接合されている。フレームは絶縁材料607で被覆されており、ミラー基板端面606に近接対向した位置にあるフレーム内枠端面の絶縁材料上には、それぞれ電極608、609が形成されている。フレーム内枠604はミラー基板よりも厚くなっているため、ミラー基板端面に近接対向して設けられた電極608、609は、端面の厚さ方向にミラー基板端面と重ならない部分にまで引き出されている。フレーム外枠605のミラー面側の一部には絶縁材料で被覆されておらずフレームが露出した部分が設けられ、その部分には電極引き出し用のパット610が形成されている。ミラー基板601上には使用する光に対して十分な反射率をもつミラー611が形成されている。
【0109】
フレーム外枠605の下は電極基板612に接合されており、電極基板612上には絶縁材料613が形成されており、その上のミラー基板601のミラー面の反対側に対向する面には、ミラーの振れの中心位置の両側に2つの電極614、615が形成されており、2つの電極はそれぞれフレーム外側まで引き出され、フレーム外側では電極取り出しの端子616、617となっている。フレームと電極基板の接合位置では導電性材料618を介して電極基板上の電極とフレーム端面の電極が導通している。
【0110】
次に、本発明の第3の実施例における光走査装置の製造方法を図12を用いて説明する。
【0111】
ミラー基板、ねじり梁、フレームには高精度の微細加工が容易で、基板自体を共通の導電性材料として使用できる低抵抗のシリコン基板を用いる。
【0112】
厚さ200umの両面研磨された2枚のシリコン基板701、702の両面にそれぞれ厚さ1umのSiO2膜を熱酸化によって形成し、そのうちの一方のシリコン基板701のSiO2膜を片面だけふっ酸でエッチング除去する。この際、SiO2を残しておく面はレジストで保護しておく。そして、両シリコン基板を硫酸と過酸化水素水の混合液等を用いて十分な洗浄を行った後、シリコン基板701のシリコン表面とシリコン基板702のSiO2膜表面をSiO2膜703を介して接触させ、500℃の減圧雰囲気下で仮接合したあと、窒素雰囲気中1100℃で直接接合する(a)。次に、接合された2枚のうちのシリコン基板702の表面のSiO2膜をふっ酸でエッチング除去し、厚さ80umまでCMP(Chemical Mechanical Polishing)で高精度に研磨する。ここで得られたシリコン基板の厚さがミラー基板の厚さとなる。その後、研磨面のシリコンを熱酸化し、再び表面に厚さ1umのSiO2膜704を形成する(b)。
【0113】
次に、シリコン基板701上のSiO2膜705を、レジストをマスクとしてふっ酸でエッチングすることにより、フレーム外枠形状にパターニングする(c)。次に、フレーム外枠形状にパターニングしたSiO2膜705をマスクとして、シリコン基板701を100umの深さまで85℃、30%のKOH水溶液で異方性エッチングする(d)。ここでは異方性エッチング液としてKOH溶液を用いたが、シリコンとSiO2のエッチング選択比が十分大きい他の異方性エッチング液、例えばTMAH、ヒドラジン等を使用してもよい。また、ここではSiO2を異方性エッチング時のマスク材料として使用しているが、シリコンのエッチング液にエッチングされない他の薄膜材料、例えばSiN膜、SiN/SiO2二層膜等を使用してもよい。次に異方性エッチングによって一段低くなったシリコン基板701の表面を熱酸化し、厚さ1umのSiO2膜706を形成する(e)。
【0114】
次に、異方性エッチングによって一段低くなったシリコン基板701上のSiO2膜706を、レジストをマスクとしてふっ酸でエッチングすることにより、フレーム内枠形状にパターニングする(f)。そして、SiO2が除去されたシリコン基板の内側の部分を、フレーム内枠形状にパターニングしたSiO2膜707をマスクとして、ICP−RIE等のエッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチングで接合面のSiO2膜703が現れるまでエッチング除去する。ここで形成したシリコン基板701の端面708は、一部をフレーム側の電極形成面として用いる(g)。次にドライエッチングで得られたシリコン基板701の端面708を熱酸化し、表面に厚さ1umのSiO2膜709を形成する(h)。
【0115】
次に、シリコン基板701側の面の熱酸化膜上に、Ti薄膜300Åをスパッタ法で成膜したあと、Pt薄膜1200Åをスパッタ法で成膜する。なお、Ti薄膜は酸化膜上でのPt薄膜の密着性を向上させるためのものである。また、ここではPt薄膜710は電極材料として用いているが、他に導電性の高い薄膜であれば、Au、Ti、Al等の他の材料を使用してもよい。成膜方法としてここではスパッタ法を用いているが、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の他の方法で成膜してもよい。成膜の際、電極以外の領域には金属薄膜が形成されないように、金属性のステンシルマスクで遮蔽する。(i)
次に、シリコン基板702側に形成されているSiO2膜704をレジストをマスクとしてふっ酸でエッチングすることにより、フレーム内枠、ミラー基板、梁形状にパターニングする(j)。次に、SiO2膜704をマスクとしてシリコン基板702を、ICP−RIE等のエッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチングで接合面のSiO2膜703が現れるまでエッチング除去し、続いて接合面のSiO2膜703、金属薄膜710もドライエッチングで除去することにより、フレーム、ミラー基板、梁を貫通形成する。(k,l)
次に、シリコン基板702のSiO2膜704を介した表面に、ミラー面となる金属薄膜711を成膜する(m)。ここでは金属薄膜としてAlをスパッタ法により成膜したが、使用するレーザー光に対し必要十分な反射率が得られる金属薄膜ならばAu等の他の材料も選択可能であり、成膜法もスパッタ法に限らず真空蒸着法等も利用できる。
【0116】
このようにして作製した、ねじり梁で支持されたミラー基板が固定されているフレームと、電極基板を導電性接着剤716で接着する(n)。このとき、フレームと基板は接着層を介さないで直接接触するように、接着剤はフレームに形成された凹部に設ける。電極基板712は絶縁材料として表面に熱酸化によるSiO2膜713を形成したシリコン基板を用いる。なお、表面が絶縁性であれば他にガラス基板等を利用してもよい。この基板表面に、電極714、715となる金属薄膜を成膜して作製する。この際、電極以外の領域には金属薄膜が成膜されないように、金属性のステンシルマスクで遮蔽する。
【0117】
本発明の第3の実施例における光走査装置の動作を図11を用いて次に説明する。2本のねじり梁で支持されたミラー基板601を共通の電極として、電極引出しパット610と、電極基板上に設けられた一方の電極614から引き出された電極引出しパット616の間に30Vの電圧を印加する。
【0118】
このとき、電極614はフレーム内枠端面の電極608と導通しているため、フレーム内枠端面の電極608とそれに近接対向して設けられたミラー基板端面606との間に静電引力が働く。電極基板上に設けられた電極614とミラー基板601の間にも静電引力が発生するが、電極間の距離が端面の電極間と比べて大きいためその力は端面電極間の静電引力よりも小さく、ミラー基板を励振動作させるのは主として端面電極間の静電引力である。このとき、フレーム内枠端面の電極608は、それに近接対向して設けられたミラー基板端面606よりもミラーの振動方向に広く形成されているため、フレーム内枠端面の電極が広くなっている下側方向にミラー基板端面は引き寄せられ、ねじり梁602、603を軸としてミラー基板601が回転する。電圧印加をやめると、電極基板601は2本の梁602、603のねじり剛性によって静電引力で引き寄せられた方向と反対方向にもどされ、水平位置に達したあと慣性力でその位置をこえてそれよりも上方に回転する。
【0119】
ここで、電極基板が水平に位置したとき、電極引出しパット610と、電極基板上に設けられた他方の電極615から引き出された電極引出しパット617の間に30Vの電圧を印加する。このとき、電極615はフレーム内枠端面の電極609と導通しているため、フレーム内枠端面の電極609とそれに近接対向して設けられたミラー基板端面606との間に静電引力が働く。このとき、フレーム内枠端面の電極609は、それに近接対向して設けられたミラー基板端面606よりもミラーの振動方向に広く形成されているため、フレーム内枠端面の電極が広くなっている下側方向にミラー基板端面は引き寄せられ、ねじり梁602、603を軸としてミラー基板601が前述の電極608に電圧を印加したときと反対方向に回転する。この反対方向への回転のための静電引力が、前述の電極608への電圧印加をやめたときに、他端がねじり剛性と慣性力で水平位置よりも上方へ回転する力と重畳されることになる。
【0120】
このようにして電極パット610を共通電極として、引き出し電極616、617への電圧印加を交互に行うことで、ねじり梁を軸としてミラー基板を往復振動させることができる。この往復振動の駆動周波数をミラー基板の共振周波数に設定すると、ミラー基板の振れ幅は大きくなり、電極基板上の電極614、615に近接する位置までミラー基板端部を変位させることができる。電極614、615は面積がフレーム内枠端面の電極608、609と比較して面積が大きいため、同じ距離まで近接させることができればより静電引力は大きい。ミラー基板端部が共振で電極614、615と近接位置に達することで、電極614、615もミラー基板の駆動に寄与し、端部と平面部の両電極により振動維持をより安定させることができる。
【0121】
次に、本発明の第4の実施例における光走査装置を説明する。本実施例における光走査装置の構成は電極基板の傾斜部を除いては第3の実施例の構成と同じである。したがって、電極基板の傾斜部の構成のみを駆動電極を含んだ中央の断面図13を用いて説明する。
【0122】
電極基板812はフレーム外枠の下に接合されており、電極基板はミラーの振れの中心位置の下を尾根の頂上としてミラーの振れ方向に傾斜している。電極基板上には絶縁材料813が形成されており、その上のミラー基板のミラー面の反対側に対向する面には、ミラーの振れの中心位置の両側に2つの電極814、815が形成されており、2つの電極はそれぞれフレーム外側まで引き出され、フレーム外側では電極取り出しの端子816、817となっている。フレームと電極基板の接合位置では導電性材料818を介して電極基板上の電極とフレーム端面の電極が導通している。
【0123】
本発明の第4の実施例における光走査装置の製造方法は電極基板の傾斜部を除いては第1の実施例の製造方法と同一である。したがって、電極基板の傾斜部の製造方法のみを図14を用いて説明する。
【0124】
まず、厚さ525umのシリコン基板901上に厚さ100umのドライフィルムレジスト902を形成する(a)。次に、開口率に分布をもたせたフォトマスクを使用することにより、ドライフィルムレジストの露光深さに分布をもたせる。分布形状は、電極形状が傾斜するように設計する。このドライフィルムレジストを現像することで、電極形状を反映したドライフィルムレジスト形状903を形成する(b)。このドライフィルムレジストをマスクとしてシリコン基板901をドライエッチングすることで、レジストとシリコンのエッチング選択比に応じて、ドライフィルムレジスト形状がシリコン基板に転写される(c)。
【0125】
次に、シリコン基板表面に絶縁材料として熱酸化によるSiO2膜904を形成する(d)。この基板表面に、電極905、906となる金属薄膜を成膜して作製する(e)。この際、電極以外の領域には金属薄膜が成膜されないように、金属性のステンシルマスクで遮蔽する。
【0126】
本発明の第4の実施例における光走査装置の動作を図13を用いて次に説明する。
【0127】
本実施例における光走査装置の動作は、第3の実施例における光走査装置の動作と基本的には同じである。電極パットを共通電極として、引き出し電極816、817への30Vの電圧印加を交互に行うことで、ねじり梁を軸としてミラー基板は往復振動し、この往復振動の駆動周波数をミラー基板の共振周波数に設定すると、ミラー基板の振れ幅は大きくなり、電極基板上の電極814、815に近接する位置までミラー基板端面を変位させることができる。電極814、815は面積がフレーム内枠端面の電極808、809と比較して面積が大きくかつ、ミラー基板の変位にならうように傾斜して形成されており、第3の実施例の電極よりもミラー基板が傾いたときに近接する電極面積が大きいためより静電引力は大きく、ミラー基板をより安定して振動維持することができる。
【0128】
次に、本発明の第5の実施例における光走査装置を説明する。
【0129】
本実施例における光走査装置の構成は、ミラー基板の上に反射基板が設けられていることを除いては第3の実施例の構成と同じである。したがって、ミラー基板上の反射基板の構成のみを駆動電極を含んだ中央の断面図である図15を用いて説明する。
【0130】
フレーム外枠の上にはミラー基板と反射基板の間のスペーサとして厚さ200umのシリコン基板1001が接合されている。スペーサであるシリコン基板1001の上には厚さ525umのシリコン基板から異方性エッチングによって形成された反射基板のフレーム1002が接合されている。反射基板のフレームの内側は異方性エッチングによって形成した厚さ200umのダイアフラム1003となっており、ダイアフラムには異方性エッチングによって形成したミラー基板に入射するビームが通過する開口部1004と、ミラー基板で偏向したビームが通過する開口部1005と、ミラー基板のミラー面に対向した位置にスパッタ法によってAlを成膜した反射基板のミラー面1006が設けられている。
【0131】
ここで異方性エッチングはSiO2膜をマスクとして85℃、30%のKOH水溶液で行った。なお、シリコンとSiO2のエッチング選択比が十分大きい他の異方性エッチング液、例えばTMAH、ヒドラジン等を使用してもよい。また、ここではSiO2を異方性エッチング時のマスク材料として使用しているが、シリコンのエッチング液にエッチングされない他の薄膜材料、例えばSiN膜、SiN/SiO2二層膜等を使用してもよい。また、ここでは金属薄膜としてAlをスパッタ法により成膜したが、使用するレーザー光に対し必要十分な反射率が得られる金属薄膜ならばAu等の他の材料も選択可能であり、成膜法もスパッタ法に限らず真空蒸着法等も利用できる。
【0132】
本実施例における光走査装置のミラー部の動作は、第3の実施例における光走査装置の動作と同じであるが、ミラー部と反射基板による光の挙動が異なる。反射基板の開口部1004を通って15°斜め方向から入射し、往復振動するミラー部表面のミラー面で偏向走査された光は、200μm厚のスペーサを介して対向して設けられた反射基板のミラー面との間で4回往復した後、反射基板の開口部1005を通って出射される。その際、非平行なミラー間の4回の多重反射により反射ごとに光の反射角度が広がり、ミラー基板の駆動周波数を5kHz、振れ角を3°としたとき、ビームの走査角24°を得ることができる。
【0133】
続いて、本発明の第6の実施例における光走査装置の構成を図16に示す。aは光走査装置全体の正面図、bは駆動電極を含んだ光走査装置中央の断面図である。
【0134】
ミラー基板1101は同一直線上に設けられた2本のねじり梁(図示せず)でその中央部分を支持されている。2本のねじり梁は、ミラー部の外側に設けられた共通のフレーム内枠1104に固定されている。ミラー基板1101のねじり梁に支持されていない両側の端面1106は、ミラー部の外側に設けられたフレーム内枠1104に近接対向して形成されている。
【0135】
フレームは2枚のシリコン基板1102、1103を酸化膜1110を介して張合わせて形成されており、一体構造をなすフレーム内枠1104と外枠1105からなる。内枠はその端面の一部が電極となっており、外枠は内枠よりも厚くなっている。フレームは絶縁材料1107で被覆されており、ミラー基板端面1106に近接対向した位置にあるフレーム内枠端面の絶縁材料上には、それぞれ電極1108、1109が形成されている。フレーム内枠はミラー基板よりも厚くなっているため、ミラー基板端面に近接対向して設けられた電極は、端面の厚さ方向にミラー基板端面と重ならない部分にまで引き出されている。フレーム外枠のミラー面と反対側の一部は絶縁材料で被覆されておらずフレームが露出した部分が設けられ、その部分には電極引き出し用のパット(図示せず)が形成されている。ミラー基板1101上には使用する光に対して十分な反射率をもつミラー1111が形成されている。
【0136】
フレーム外枠の上には厚さ525umのシリコン基板から異方性エッチングによって形成された反射基板のフレーム1112が接合されている。反射基板のフレームの内側は異方性エッチングによって形成した厚さ200umのダイアフラム1113となっており、ダイアフラムには異方性エッチングによって形成したミラー基板に入射するビームが通過する開口部1114と、ミラー基板で偏向したビームが通過する開口部1115と、ミラー基板のミラー面に対向した位置にスパッタ法によってAlを成膜した反射基板のミラー面1116が設けられている。
【0137】
反射基板上には絶縁材料1117が形成されており、その上のミラー基板のミラー面側に対向する面には、両側に2つの電極1118、1119が形成されており、2つの電極はそれぞれミラー基板のフレーム外枠の外側まで引き出され、フレーム外側では電極取り出しの端子1120、1121となっている。フレームと電極基板の接合位置では導電性材料1122を介して電極基板上の電極とフレーム端面の電極が導通している。
【0138】
本発明の第6の実施例における光走査装置の製造方法を図17を用いて説明する。
【0139】
ミラー基板、ねじり梁、フレームには高精度の微細加工が容易で、基板自体を共通の導電性材料として使用できる低抵抗のシリコン基板を用いている。
【0140】
厚さ200umの両面研磨されたシリコン基板1201と厚さ525umの両面研磨されたシリコン基板1202の両面にそれぞれ厚さ1umのSiO2膜を熱酸化によって形成する。そのうちの一方のシリコン基板1201のSiO2膜を片面だけふっ酸でエッチング除去する。この際、SiO2を残しておく面はレジストで保護しておく。そして、両シリコン基板を硫酸と過酸化水素水の混合液等を用いて十分な洗浄を行った後、シリコン基板1201のシリコン表面とシリコン基板1202のSiO2膜表面をSiO2膜1203を介して接触させ、500℃の減圧雰囲気下で仮接合したあと、窒素雰囲気中1100℃で直接接合する(a)。
【0141】
次に、シリコン基板1202上のSiO2膜1205を、レジストをマスクとしてふっ酸でエッチングすることにより、フレーム外枠形状にパターニングし(b)、次に、フレーム外枠形状にパターニングしたSiO2膜1205をマスクとして、シリコン基板1202を145umの深さまで85℃、30%のKOH水溶液で異方性エッチングする(c)。ここでは異方性エッチング液としてKOH溶液を用いたが、シリコンとSiO2のエッチング選択比が十分大きい他の異方性エッチング液、例えばTMAH、ヒドラジン等を使用してもよい。また、ここではSiO2を異方性エッチング時のマスク材料として使用しているが、シリコンのエッチング液にエッチングされない他の薄膜材料、例えばSiN膜、SiN/SiO2二層膜等を使用してもよい。次に異方性エッチングによって一段低くなったシリコン基板1202の表面を熱酸化し、厚さ1umのSiO2膜1206を形成する(d)。
【0142】
次に、シリコン基板1201上のSiO2膜1207を、レジストをマスクとしてふっ酸でエッチングすることにより、フレーム外枠形状にパターニングする(e)。次に、フレーム外枠形状にパターニングしたSiO2膜1207をマスクとして、シリコン基板1201を100umの深さまで85℃、30%のKOH水溶液で異方性エッチングする(f)。ここでは異方性エッチング液としてKOH溶液を用いたが、シリコンとSiO2のエッチング選択比が十分大きい他の異方性エッチング液、例えばTMAH、ヒドラジン等を使用してもよい。また、ここではSiO2を異方性エッチング時のマスク材料として使用しているが、シリコンのエッチング液にエッチングされない他の薄膜材料、例えばSiN膜、SiN/SiO2二層膜等を使用してもよい。次に異方性エッチングによって一段低くなったシリコン基板1201の表面を熱酸化し、厚さ1umのSiO2膜1208を形成する(g)。
【0143】
次に、異方性エッチングによって一段低くなったシリコン基板1201上のSiO2膜1208を、レジストをマスクとしてふっ酸でエッチングすることにより、フレーム内枠形状にパターニングし(h)、SiO2が除去されたシリコン基板の内側の部分を、フレーム内枠形状にパターニングしたSiO2膜1209をマスクとして、ICP−RIE等のエッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチングで接合面のSiO2膜1203が現れるまでエッチング除去する。ここで形成したシリコン基板1201の端面1210は、一部をフレーム側の電極形成面として用いる(i)。次に、ドライエッチングで得られたシリコン基板1201の端面1210を熱酸化し、表面に厚さ1umのSiO2膜1211を形成する(j)。
【0144】
次に、シリコン基板1201側の面の熱酸化膜上に、Ti薄膜300Åをスパッタ法で成膜したあと、Pt薄膜1200Åをスパッタ法で成膜する。なお、Ti薄膜は酸化膜上でのPt薄膜の密着性を向上させるためのものである。また、ここではPt薄膜1212は電極材料として用いているが、他に導電性の高い薄膜であれば、Au、Ti、Al等の他の材料を使用してもよい。成膜方法としてここではスパッタ法を用いているが、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の他の方法で成膜してもよい。成膜の際、電極以外の領域には金属薄膜が形成されないように、金属性のステンシルマスクで遮蔽する。(k)
次に、シリコン基板1202側に形成されているSiO2膜1206をレジストをマスクとしてふっ酸でエッチングすることにより、フレーム内枠、ミラー基板、梁形状にパターニングする(l)。次に、SiO2膜1206をマスクとしてシリコン基板1202を、ICP−RIE等のエッチング速度が大きく異方性の高いドライエッチングで接合面のSiO2膜1203が現れるまでエッチング除去し、続いて接合面のSiO2膜1203、金属薄膜1212もドライエッチングで除去することにより、フレーム、ミラー基板、梁を貫通形成する。(m,n)
このようにして作製した、ねじり梁で支持されたミラー基板が固定されているフレーム外枠と、反射基板を導電性接着剤1213で接着する(o)。このとき、フレームと基板は接着層を介さないで直接接触するように、接着剤はフレームに形成された凹部に設ける。
【0145】
反射基板のフレームの内側の厚さ200umのダイアフラム1214は異方性エッチングによって形成する。また、ダイアフラムに形成されているミラー基板に入射するビームが通過する開口部1215と、ミラー基板で偏向したビームが通過する開口部(図示せず)は、同じく異方性エッチングによって形成する。ミラー基板のミラー面に対向した位置に設けられた反射基板のミラー面(図示せず)と反射基板の電極1216、1217はスパッタ法によってAlを成膜する。この際、ミラーと電極以外の領域には金属薄膜が成膜されないように、金属性のステンシルマスクで遮蔽する。ここで異方性エッチングはSiO2膜をマスクとして85℃、30%のKOH水溶液で行う。なお、シリコンとSiO2のエッチング選択比が十分大きい他の異方性エッチング液、例えばTMAH、ヒドラジン等を使用してもよい。また、ここではSiO2を異方性エッチング時のマスク材料として使用しているが、シリコンのエッチング液にエッチングされない他の薄膜材料、例えばSiN膜、SiN/SiO2二層膜等を使用してもよい。また、ここでは金属薄膜としてAlをスパッタ法により成膜したが、使用するレーザー光に対し必要十分な反射率が得られる金属薄膜ならばAu等の他の材料も選択可能であり、成膜法もスパッタ法に限らず真空蒸着法等も利用できる。
【0146】
本実施例における光走査装置のミラー部の動作は、第1の実施例における光走査装置の動作と同じであり、ミラー部と反射基板による光の挙動は第3の実施例と同じであるため説明は省略する。第6の実施例では、電極が反射基板上に設けられているので、電極基板を別途設ける必要がなく、構造が簡単で低コストに製造できる。
【0147】
次に、本発明の第7の実施例について説明する。第7の実施例おける光走査装置の駆動電極を含んだ中央の断面図構成を図18に示す。本実施例における光走査装置の構造は、第6の実施例における光走査装置の構造とフレーム内枠端面の電極形状を除いて同じであるので、ここでは構造の異なる部分のみ図示した。第7の実施例では、フレーム内枠端面の絶縁材料上、端面の厚さ方向にミラー基板端面と重ならない部分に、それぞれ電極1301、1302が形成されている。第7の実施例によれば、電極がミラー端面と重なっている部位がないため、そこで生じるミラー基板の変位を妨げる静電引力がなく、より低電圧でのミラー基板の励振が可能である。
【0148】
次に、本発明の第8の実施例について説明する。本発明の第8の実施例における光走査装置の駆動電極を含んだ中央の断面図構成を図19に示す。
【0149】
本実施例における光走査装置の構造は、第6の実施例における光走査装置の構造と反射基板に設けられている電極形状を除いて同じであるので、ここでは構造の異なる部分のみ図示した。第8の実施例においては、反射基板上の電極1403、1404はフレーム内枠端面の電極1401、1402と導通しておらず、それぞれに独立して電圧を印加することができる。
【0150】
続いて、本発明の第9の実施例について説明する。本発明の第9の実施例における光走査装置の駆動電極を含んだ中央の断面図構成を図20に示す。
【0151】
本実施例における光走査装置の構造は、第5の実施例における光走査装置の構造と反射基板に電極が設けられていることを除いて同じであるので、ここでは構造の異なる部分のみ図示した。第9の実施例では、反射基板上の電極1503、1504はフレーム内枠端面の電極1501、1502と導通しておらず、それぞれに独立して電圧を印加することができる。
【0152】
次に、本発明の第10の実施例について説明する。第10の実施例における光走査装置の駆動電極を含んだ中央の断面図構成を図21に示す。
【0153】
本実施例における光走査装置の構造は、第3の実施例における光走査装置の構造とは、ミラー基板端面とそれに対向するフレーム内枠端面の電極形状を除いて同じであるので、ここでは構造の異なる部分のみ図示した。ミラー基板端面1601は櫛歯状に折れ曲がって加工されており、フレーム内枠1602の端面の絶縁材料上には、ミラー基板端面に対向して櫛歯状に折れ曲がった電極1603、1604が形成されている。櫛歯状にすることによって、対向電極の面積が大きくなるため、より低い電圧でミラー基板を励振させることができる。
【0154】
次に、本発明の第3〜第10の実施例の光走査装置の動作を制御する書込制御部とミラーを揺動させる電極との接続構成を図22に示す。図22では、上記の第6の実施例に近い構成を例にとっているが、他の実施例においても原理は同様である。この書込制御部は、例えば、図3における221として具備することができる。
【0155】
図23に、各電極に電圧をかけるタイミングを示すタイミングチャートを示す。ここでは、このタイミングチャートを参照して動作を説明する。
【0156】
揺動ミラーの支持基板には回転軸をはさんで対称に端面に対向する電極1a、1bとミラー面に対向する電極2a、2bが設けられる。ミラーは定常状態では水平(θ=0)で、まず、電極1aに電圧をかけることにより静電引力でミラーを支持する梁をねじってミラーは右回転に傾き、引き続き電極2aに電圧をかけることにより、梁の復元力と静電引力とが釣り合う角度(−θ)まで回転する。この時点で電圧を解除するとミラーは定常状態に戻ろうとするが、さらに電極1bに電圧をかけると水平を越えて左回転し引き続き電極2bに電圧をかけることにより、梁の復元力と静電引力とが釣り合う角度(+θ)まで回転する。この動作を繰り返すことによりミラーは往復振動する。
【0157】
上記角度−θを起点として+θに達するまでを一走査とし、電圧が解除された時点からLD1701を点灯させセンサ1703にてビームを検出して同期信号を発生し画像記録が行われる。
【0158】
さて、本発明の第1、第2の実施例では、ミラー部(偏向面という)と、偏向面に対向した位置に配置される反射面との間でレーザー光を2回以上反射させたうえで走査するようにしているが、ここで反射回数を規定するためには、偏向面、反射面の間の距離と反射面の寸法を正確に規定する必要がある。そこで、偏向面あるいは反射面を設ける基板に、その深さで距離が規定できるように凹型形状を形成した場合、エッチングあるいは研磨等によって形成する凹型形状の底面は荒れているため、そのままでは底面を偏向面あるいは反射面として使用できず、研磨による平坦化も難しい。
【0159】
このような問題を解決した対向ミラーを設けた光走査装置の実施例について第11〜第12の実施例として次に説明する。第11〜第12の実施例は、第1、第2の実施例における光走査モジュールにおけるミラー部と反射面とを構成するための部分に使用するが、その他の構成においても使用できる。
【0160】
図24に本発明の第11の実施例における光走査装置の正面図と断面図を示す。
【0161】
本発明の光走査装置の偏向手段であるところの第1のシリコン基板1801にはシリコンフレーム1802と一体成形された2本のねじり梁1803とそれにより支持されたミラー部1804が形成されており、ミラー部表面は偏向面1805として金属薄膜が成膜されている。第1のシリコン基板1801において、その駆動手段に関係する部分は、図中には示していない。なお、前述したように、ミラー部の駆動手段としては電磁力あるいは静電引力を利用することができ、前者の場合、2本の梁で支持されたミラー部を磁界中に設置し、ミラー部に形成されたコイルに電流を流すことで発生する電磁力でミラー部を往復振動させる。また、後者の場合、2本の梁で支持されたミラー部背面の対向する位置にギャップを隔てて2つの電極を設け、ミラー部と対向電極間に電圧を印加することで発生する静電引力でミラー部を往復振動させる。このとき、駆動周波数がミラー部の共振周波数となるようにねじり梁とミラーの構造、寸法を設計することにより、ミラーの振れ幅を大きくすることができる。
【0162】
第11の実施例における光走査装置の第2のシリコン基板1806には、金属薄膜が成膜された多重反射のための反射面1807が設けられている。さらに、第2のシリコン基板1806には、図24の光走査装置の正面図にも示したように、第1のシリコン基板1801の偏向面1805へのレーザー光入射のための開口部1808と、多重反射した後の偏向面からのレーザー光出射のための開口部1809が形成されている。入射開口部1808はレーザー光を入射できるだけの広さがあればよいが、出射開口部1809はレーザー光が偏向面の振動により広域にわたって走査されて出射されるので、レーザー光を妨げることがないように、特にレーザー光の走査方向側(レーザー光の進行方向とほぼ直交方向)には十分広くとる必要がある。レーザー光の進行方向側にはレーザー光の広がりの幅を考慮した広さがあればよい。
【0163】
偏向面1804の設けられた第1のシリコン基板1801と反射面1807の設けられた第2のシリコン基板1806の間には、偏向面1804と反射面1807の距離を規定する第3のガラス基板1810が設けられている。この厚さ100umのガラス基板は、第1のシリコン基板1801のフレーム1802上に接合されており、フレーム内側の可動部すなわち2本のねじり梁1803とそれにより支持されたミラー部1804は貫通されている。したがって、この第3のガラス基板の厚さ100umがそのまま偏向面1804と反射面1807の距離を規定している。
【0164】
第2のシリコン基板1806の開口部1808を通って入射し、第1のシリコン基板1801に形成された往復振動するミラー部表面1805で偏向走査されたレーザー光は、図24中の破線に示すように100μmの間隔をもって対向して設けた第2のシリコン基板の反射面との間で4回往復した後、第2のシリコン基板の開口部1809を通って出射される。その際、入射開口部から出射開口部までに設けられた反射面の寸法と、反射面から偏向ミラー部表面までの距離が正確に規定されているため、ミラー部の回転角(振れ角)を3°としたとき4回の反射が得られ、走査角は24°まで拡大される。
【0165】
本発明の光走査装置の製造方法を図25を用いて説明する。まず、厚さ525umの両面研磨されたシリコンウエハ1901の両面に、シリコンのエッチングマスクとして厚さ1.5umのSiO2膜1902を熱酸化法で形成する(a)。ここではSiO2をマスク材料として使用しているが、シリコンのエッチング液にエッチングされない他の薄膜材料、例えばSiN膜、SiN/SiO2二層膜等を使用してもよい。このSiO2膜の片面側を、入射開口部、出射開口部が形成されるようにレジストをマスクとしてフッ酸の緩衝溶液でエッチングすることによりパターニングする(b)。次に、このSiO2膜をエッチングマスクとして、異方性エッチング液でシリコンウエハを裏面のSiO2膜に達するまでエッチングする(c)。異方性エッチング液として、ここではKOH溶液を用いたが、シリコンとSiO2のエッチング選択比が十分大きい他の異方性エッチング液、例えばTMAH、ヒドラジン等を使用してもよい。次に、エッチングマスクとして使用したSiO2膜を両面ともフッ酸でエッチング除去する(d)。
【0166】
このようにして作製した第2のシリコン基板を、次に偏向面と反射面の距離を規定する第3の基板となる厚さ1mmガラス基板1903と接合する(e)。このとき、ガラス基板としてほう珪酸ガラスを使用し、接合方法は陽極接合とすることができる。陽極接合はガラス基板とシリコン基板を400〜500℃に加熱しながら数100Vの電圧を両基板間に印加することで直接接合する方法である。本方法は接着剤等の介在物なしに両基板を接合できるため、光偏向装置組み立て後の偏向面と反射面の距離を正確に規定することができる。
【0167】
次に、ガラス基板をCMP(Chemical Mechanical Polishing)で高精度に研磨することにより厚さを100umとする(f)。このときの厚さが偏向面と反射面の距離となる。
【0168】
次に、ガラス基板1903にメッキの電極としてのAu1904をスパッタ成膜し(g)、レジスト1905のパターニングにより領域を限定たのち(h)、ガラス基板1903に厚さ1umのNi膜1906を電解めっきで形成する(i)。なお、ここでは電解めっきで1umの厚いNiを形成しているが、厚いマスク材料を効率よく形成することができる方法ならば他の方法でもよい。次に、レジスト1905を除去した後(j)、Niをマスクとしてドライエッチングによりガラス基板を反射面となるシリコン基板に達する直前までエッチングし、最後に残したガラス層はフッ酸によりエッチング除去する(k)。シリコン基板に達する際のエッチングをウェットエッチングとしたのは、よりシリコンとのエッチング選択比をとることで反射面の平坦性を確保するためである。次にマスクとして使用したNiとAuをそれぞれ専用のエッチング液でエッチング除去する(l)。このようにして形成されたシリコン平坦面にレーザーの反射材料としてAl1907をマスクスパッタ法で形成する(m)。ここでは金属薄膜としてAlをスパッタ法により成膜したが、使用するレーザー光に対し必要十分な反射率が得られる金属薄膜ならばAu等の他の材料も選択可能であり、成膜法もスパッタ法に限らず真空蒸着法等も利用できる。以上の工程で、偏向面と反射面の距離を規定する第3のガラス基板が接合され、入射開口部、出射開口部、及び反射面が形成された第2のシリコン基板が完成した。
【0169】
本実施例では、第1のシリコン基板1908のレーザー光を繰り返し走査する偏向手段としては、2本の梁で支持されそのねじりで往復振動するミラーを使用する。本ミラーはシリコン基板の一部を異方性エッチング薄板化し、その部分をドライエッチングで所望の形状で貫通することで形成することができる。駆動方法は電磁力でも静電引力でもよく、前者の場合、2本の梁で支持されたミラー部を磁界中に設置し、ミラー部裏面に形成されたコイルに電流を流すことで発生する電磁力でミラー部を往復振動させる。また、後者の場合、2本の梁で支持されたミラー部背面の対向する位置にギャップを隔てて2つの電極を設け、ミラー部と対向電極間に電圧を印加することで発生する静電引力でミラー部を往復振動させる。いずれも、偏向面はシリコン基板の研磨された平坦面側に形成されており、2本の梁を固定するフレームの表面も平坦でミラー面と同一面内にある。この第1のシリコン基板の製造工程は既存の技術に従うものであり、本発明の主要な部分ではないため詳細な説明は省略する。
【0170】
このねじり振動するミラー、すなわち偏向面が設けられた第1のシリコン基板に、反射面が設けられた第2のシリコン基板を、第3のガラス基板を介して陽極接合する(n)。ここでも接着剤等の介在物なしに両基板を接合するため、光偏向装置組み立て後の偏向面と反射面の距離をガラス基板の厚さによって正確に規定することができる。
【0171】
図26に本発明の第12の実施例における光走査装置の断面図を示す。
【0172】
本発明の光走査装置の偏向手段であるところの第1のシリコン基板2001にはシリコンフレーム2002と一体成形された2本のねじり梁2003とそれにより支持されたミラー部2004が形成されており、ミラー部表面は偏向面2005として金属薄膜が成膜されている。第1のシリコン基板において、その駆動手段に関係する部分は、図中には示していない。
【0173】
第11の実施例と同様、ミラー部の駆動手段としては電磁力あるいは静電引力を利用することができ、前者の場合、2本の梁で支持されたミラー部を磁界中に設置し、ミラー部に形成されたコイルに電流を流すことで発生する電磁力でミラー部を往復振動させる。また、後者の場合、2本の梁で支持されたミラー部背面の対向する位置にギャップを隔てて2つの電極を設け、ミラー部と対向電極間に電圧を印加することで発生する静電引力でミラー部を往復振動させる。このとき、駆動周波数がミラー部の共振周波数となるようにねじり梁とミラーの構造、寸法を設計することにより、ミラーの振れ幅を大きくすることができる。
【0174】
第12の実施例における光走査装置の第2のシリコン基板2006には、金属薄膜が成膜された多重反射のための反射面2007が設けられている。さらに、第2のシリコン基板2006には、図24の光走査装置の正面図にも示したように、第1のシリコン基板2001の偏向面2005へのレーザー光入射のための開口部2008と、多重反射した後の偏向面からのレーザー光出射のための開口部2009が形成されている。入射開口部2008はレーザー光を入射できるだけの広さがあればよいが、出射開口部2009はレーザー光が偏向面の振動により広域にわたって走査されて出射されるので、レーザー光を妨げることがないように、特にレーザー光の走査方向側(レーザー光の進行方向とほぼ直交方向)には十分広くとる必要がある。レーザー光の進行方向側にはレーザー光の広がりの幅を考慮した広さがあればよい。
【0175】
偏向面2005の設けられた第1のシリコン基板2001と反射面2007の設けられた第2のシリコン基板2006は、第1のシリコン基板の外側に設けられた第3のシリコン基板2010によってその偏向面2005と反射面2007の距離を規定されている。この厚さ300umのシリコン基板2010は、第1のシリコン基板2001と同一のガラス支持基板2011上に接合されている。したがって、偏向面2005と反射面2007の距離はこの第3のガラス基板2010の厚さ300umと第1のシリコン基板の厚さによって規定されている。
【0176】
第2のシリコン基板2006の開口部2008を通って入射し、第1のシリコン基板2001に形成された往復振動するミラー部表面2005で偏向走査されたレーザー光は、図26中に示すように100μmの間隔をもって対向して設けられた第2のシリコン基板の反射面との間で4回往復した後、第2のシリコン基板の開口部2009を通って出射される。その際、入射開口部から出射開口部までに設けられた反射面の寸法と、反射面から偏向ミラー部表面までの距離が正確に規定されているため、ミラー部の回転角(振れ角)を3°としたとき4回の反射が得られ、走査角は24°まで拡大される。
【0177】
第12の実施例の光走査装置の製造方法を図27を用いて説明する。まず、厚さ525umの両面研磨されたシリコンウエハ2101の両面に、シリコンのエッチングマスクとして厚さ1.5umのSiO2膜2102を熱酸化法で形成する(a)。ここではSiO2をマスク材料として使用しているが、シリコンのエッチング液にエッチングされない他の薄膜材料、例えばSiN膜、SiN/SiO2二層膜等を使用してもよい。このSiO2膜の片面側を、入射開口部、出射開口部が形成されるようにレジストをマスクとしてフッ酸の緩衝溶液でエッチングすることによりパターニングする(b)。次にこのSiO2膜をエッチングマスクとして異方性エッチング液でシリコンウエハを裏面のSiO2膜に達するまでエッチングする(c)。異方性エッチング液として、ここではKOH溶液を用いたが、シリコンとSiO2のエッチング選択比が十分大きい他の異方性エッチング液、例えばTMAH、ヒドラジン等を使用してもよい。次に、エッチングマスクとして使用したSiO2膜を両面ともフッ酸でエッチング除去する(d)。
【0178】
このようにして作製した第2のシリコン基板を、次に、偏向面と反射面の距離を規定する第3の基板となる厚さ525umの熱酸化膜付きシリコン基板2103と接合する(e)。このときの接合方法は直接接合とした。直接接合は表面を清浄化したシリコン基板どうしを900 〜1100℃に加熱することで直接接合する方法である。本方法は接着剤等の介在物なしに両基板を接合できるため、光偏向装置組み立て後の偏向面と反射面の距離を正確に規定することができる。次に、シリコン基板をCMP(Chemical Mechanical Polishing)で高精度に研磨することにより厚さを300umとする(f)。このときの厚さと、第1のシリコン基板の厚さの差が偏向面と反射面の距離となる。
【0179】
次に、接合された基板全体に熱酸化法でSiO2膜2104を形成し(g)、第3のシリコン基板のSiO2膜を、第2のシリコン基板が収納されるような開口部が形成されるようにレジストをマスクとしてフッ酸の緩衝溶液でエッチングすることによりパターニングする(h)。次に、このSiO2膜をエッチングマスクとして異方性エッチング液でシリコンウエハを接合界面のSiO2膜に達するまでエッチングする(i)。異方性エッチング液として、ここではKOH溶液を用いたが、シリコンとSiO2のエッチング選択比が十分大きい他の異方性エッチング液、例えばTMAH、ヒドラジン等を使用してもよい。
【0180】
次に、エッチングマスクとして使用したSiO2膜を両面ともフッ酸でエッチング除去する(j)。このようにして形成された第2基板のシリコン平坦面にレーザーの反射材料としてAlをマスクスパッタ法で形成した(k)。ここでは金属薄膜としてAlをスパッタ法により成膜したが、使用するレーザー光に対し必要十分な反射率が得られる金属薄膜ならばAu等の他の材料も選択可能であり、成膜法もスパッタ法に限らず真空蒸着法等も利用できる。以上の工程で、偏向面と反射面の距離を規定する第3のシリコン基板が接合された、入射開口部、出射開口部、及び反射面が形成された第2のシリコン基板が完成した。
【0181】
第1のシリコン基板のレーザー光を繰り返し走査する偏向手段としては、2本の梁で支持されそのねじりで往復振動するミラーを使用した。本ミラーはシリコン基板の一部を異方性エッチング薄板化し、その部分をドライエッチングで所望の形状で貫通することで形成することができる。駆動方法は電磁力でも静電引力でもよく、前者の場合、2本の梁で支持されたミラー部を磁界中に設置し、ミラー部裏面に形成されたコイルに電流を流すことで発生する電磁力でミラー部を往復振動させる。また、後者の場合、2本の梁で支持されたミラー部背面の対向する位置にギャップを隔てて2つの電極を設け、ミラー部と対向電極間に電圧を印加することで発生する静電引力でミラー部を往復振動させる。いずれも、偏向面はシリコン基板の研磨された平坦面側に形成されており、2本の梁を固定するフレームの表面も平坦でミラー面と同一面内にある。この第1のシリコン基板の製造工程は既存の技術に従うものであり、本発明の主要な部分ではないため詳細な説明は省略する。
【0182】
このねじり振動するミラー、すなわち偏向面が設けられた第1のシリコン基板2106を、基準面となるガラス基板2107に陽極接合し(l)、つづけて第2のシリコン基板を第3のシリコン基板を介して同じ基準面となるガラス基板に陽極接合する(m)。いずれも接着剤等の介在物なしに基板を接合するため、光偏向装置組み立て後の偏向面と反射面の距離を第1のシリコン基板と第3のシリコン基板の厚さの差よって正確に規定することができる。
【0183】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【0184】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、光走査装置として小型モジュール化を実現するとともに、製作工程を簡素化することにより生産効率を向上させることが可能となる。また、偏向器の可動部を小型、軽量化し、負荷を低減することで消費電力の低減を図ることができ、振れ角が大きく安定した振動が得られる静電駆動のねじり振動型の偏向器を有する光走査装置を提供することが可能となる。
【0185】
すなわち、図3に示したように光源部基板を積み重ねて配備することで偏向面へ光ビームを精度良く入射させることができる一方、偏向器の少ない回転角でより大きな走査角が得られ、偏向器速度を低減できるので、可動部を薄型化でき加工時間が短縮されて組立効率を向上することができ、厄介な調整作業を行なわなくても積層により反射面と偏向面の配置精度が確保できるので、組立効率を向上することができる。
【0186】
また、ミラーの偏向器において、ミラー基板におけるミラー面の反対側の面に対向する基板面と、ミラー基板端面に対向するフレーム端面とに電極を設けることにより、ミラー基板端面とそれに対向するフレーム内枠表面に形成された電極が近接しているため低い電圧でミラー基板を励振させることができる。さらに共振周波数で駆動させたときにはミラー基板の振れ幅が大きくなり、ミラー基板端部がより面積の大きなミラー面の反対側に対向する電極面にも近接するため、ミラー基板端面とミラー基板平面に対向した電極の駆動により振動維持をより安定化することができる。
【0187】
更に、偏向部基板の偏向面と光源部基板の反射面をそれぞれの基板表面に形成したうえで、両者間の距離は別基板で規定することにより、偏向面と反射面として、ミラー研磨された基板表面を利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術における光走査装置の構成例である(ポリゴンミラーを用いた例)。
【図2】従来技術における光走査装置の構成例である(ガルバノミラーを用いた例)。
【図3】本発明の第1の実施例における光走査モジュールの斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施例における光走査モジュールの断面図である。
【図5】本発明の第2の実施例における光走査モジュールの斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施例における光走査モジュールの断面図である。
【図7】本発明の光走査モジュールからなる光走査装置を示す図である。
【図8】デジタル複写機の構成図である。
【図9】レーザプリンタの構成図である。
【図10】普通紙ファクシミリの構成図である。
【図11】本発明の第3の実施例における光走査装置の構成図である。
【図12】本発明の第3の実施例における光走査装置の製造方法を示す図である。
【図13】本発明の第4の実施例における光走査装置の断面図である。
【図14】本発明の第4の実施例における光走査装置の製造方法を示す図である。
【図15】 本発明の第5の実施例における光走査装置の構成を示す図である。
【図16】本発明の第6の実施例における光走査装置の構成を示す図である。
【図17】本発明の第6の実施例における光走査装置の製造方法を示す図である。
【図18】本発明の第7の実施例おける光走査装置の断面図である。
【図19】本発明の第8の実施例おける光走査装置の断面図である。
【図20】本発明の第9の実施例における光走査装置の断面図である。
【図21】本発明の第10の実施例における光走査装置の構成を示す図である。
【図22】書込制御部とミラーを揺動させる電極との接続構成を示す図である。
【図23】各電極に電圧をかけるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図24】本発明の第11の実施例における光走査装置の正面図と断面図である。
【図25】本発明の第11の実施例における光走査装置の製造方法を示す図である。
【図26】本発明の第12の実施例における光走査装置の断面図を示す図である。
【図27】本発明の第12の実施例における光走査装置の製造方法を示す図である。
【符号の説明】
101…半導体レーザ(LD)、102…保持部材、103…カップリングレンズ、107…ポリゴンミラー、110…結像レンズ、112…光学ベース、115…ガルバノミラー、201、301…電極基板、202、302…リード端子、203…マグネット、204、303…第1のシリコン基板、205…ねじり梁、206…ミラー部、207、308…第2のシリコン基板、208、309…半導体レーザチップ、209、310…フォトダイオード、210、311…カップリングレンズ、211、312…V溝、212、313…フレーム、213、316…アパーチャ、214、215、216、314、315…反射部、217、317…開口、218、318…封止板、219、319…射出窓、220、221、320、321…制御回路、304…偏向ディスク部、305…回折格子、307…電極、322…ステータ部、323…軸部、325…サブマウント、402…電装基板、403…同期検知センサ、404…走査レンズ、405…ミラー、500…画像形成装置本体、501…光走査装置、601…ミラー基板、602、603…ねじり梁、604…フレーム内枠、605…フレーム外枠、607…絶縁材料、606…ミラー基板端面、608、609、614、615、714、715…電極、611…ミラー、612、712…電極基板、613…絶縁材料、616、617…端子、618…導電性材料、701、702…シリコン基板、703〜707、709、713…SiO2膜、708…端面、710…Pt薄膜、711…金属薄膜、716…導電性接着剤、812…電極基板、813…絶縁材料、814、815、905、906…電極、816、817…端子、818…導電性材料、901…シリコン基板、902…ドライフィルムレジスト、903…ドライフィルムレジスト形状、904…SiO2膜、1001…シリコン基板、1002…フレーム、1003…ダイアフラム、1004、1005…開口部、1006…ミラー面、1101…ミラー基板、1102、1103、1201、1202…シリコン基板、1104…フレーム内枠、1105…フレーム外枠、1106…端面、1107、1117…絶縁材料、1108、1109、1118、1119、1216、1217…電極、1111…ミラー、1112…フレーム、1113…ダイアフラム、1114、1115…開口部、1116…ミラー面、1120、1121…端子、1122…導電性材料、1203、1205〜1209、1211…SiO2膜、1210…端面、1212…Pt薄膜、1213…導電性接着剤、1214…ダイアフラム、1215…開口部、1301、1302、1401〜1404、1501〜1504…電極、1601…ミラー基板端面、1602…フレーム内枠、1603、1604…電極、1701…LD、1703…センサ、1801…第1のシリコン基板、1802…シリコンフレーム、1803…ねじり梁、1804…ミラー部、1805…偏向面、1806…第2のシリコン基板、1807…反射面、1808、1809…開口部、1810…第3のガラス基板、1901…シリコンウエハ、1902…SiO2膜、1903…ガラス基板、1904…Au、1905…レジスト、1907…Al、1908…第1のシリコン基板、2001…第1のシリコン基板、2002…シリコンフレーム、2003…ねじり梁、2004…ミラー部、2005…偏向面、2006…第2のシリコン基板、2007…反射面、2008、2009…開口部、2010…第3のシリコン基板、2011…ガラス支持基板、2103…熱酸化膜付きシリコン基板、2104…SiO2、2106…第1のシリコン基板、2107…ガラス基板
Claims (16)
- 光源からの光束を偏向させて走査する光走査装置モジュールであって、
光束を偏向させる偏向面を有する偏向手段と、偏向手段を回転軸支して保持する偏向部基板とを配備し、
前記偏向面と対向して前記偏向部基板と一体的に反射面を設け、該反射面と前記偏向面との間で複数回光束を反射させて走査する光走査装置モジュールであり、
前記偏向面へ入射する光束の光束径を規制するアパーチャを、前記反射面と一体的に設けたことを特徴とする光走査装置モジュール。 - 光源からの光束を偏向させて走査する光走査装置モジュールであって、
光源を実装する光源部基板と、光束を偏向させる偏向面を有する偏向手段を保持した偏向部基板とを積み重ねて配備し、
前記偏向面と対向して反射面を設け、該反射面と前記偏向面との間で複数回光束を反射させて走査する光走査装置モジュールであり、
前記偏向面へ入射する光束の光束径を規制するアパーチャを、前記反射面と一体的に設けたことを特徴とする光走査装置モジュール。 - 前記反射面と前記偏向面との間隔をg、該偏向面への副走査方向での光束入射角度をβ、入射する光束の副走査光束径を2ωとするとき、
g・tanβ>ω
で表される関係を満たし、該偏向面での反射点を副走査方向に順次移動して走査するようにした請求項1又は2に記載の光走査装置モジュール。 - 前記反射面と前記偏向面との間隔について、光束の入射側の間隔より射出側の間隔を広くした請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュール。
- 前記光源を実装する光源部基板を、偏向部基板と積み重ねて配備し、前記反射面を前記光源部基板に設けた請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュール。
- 前記反射面は前記光源部基板と一体的に設けた請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュール。
- 前記偏向手段は、
同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板と、ミラー基板に対向して設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸としてミラー基板を往復振動させる手段とを有し、ミラー基板におけるミラー面の反対側の面に対向する基板面と、ミラー基板端面に対向するフレーム端面とに電極を設けた請求項1又は2に記載の光走査装置モジュール。 - ミラー基板のミラー面の反対側の面に対向する基板面における前記電極を、前記ねじり回転軸を中心に傾斜させた請求項7に記載の光走査装置モジュール。
- 前記ミラー基板のミラー面側にフレームを設け、該フレームには、ミラー基板に入射する光束が通過する開口部と、ミラー基板で偏向した光束が通過する開口部と、ミラー面に対向する反射面とを設けた請求項7に記載の光走査装置モジュール。
- 前記偏向手段は、
同一直線上に設けられた2本の梁で支持されたミラー基板と、ミラー基板に対向して設けた電極との間の静電引力で、2本の梁をねじり回転軸としてミラー基板を往復振動させる手段とを有し、ミラー基板のミラー面側にフレームを設け、該フレームには、ミラー基板に入射する光束が通過する開口部と、ミラー基板で偏向した光束が通過する開口部と、ミラー面に対向する反射面と、ミラー面に対向する電極とを設け、ミラー基板端面に対向する位置に電極を有する請求項1又は2に記載の光走査装置モジュール。 - ミラー基板端面に対向する前記電極を、該ミラー基板端面と重ならない部位に形成する請求項7乃至10のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュール。
- ミラー基板端面とそれに対向する前記電極とを、互いに櫛歯状にした請求項7乃至10のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュール。
- 請求項7乃至12のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュールを、光を透過させ、電極を取り出すことが可能な減圧容器内に設けたことを特徴とする光走査装置モジュール。
- 請求項1乃至13のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュールと、走査開始側及び終端側で光束を検出する同期検知センサと、走査レンズとを有することを特徴とする光走査装置。
- 像担持体と、像担持体の主走査方向に並置された請求項1乃至13のうちいずれか1項に記載の光走査装置モジュールとを有することを特徴とする光走査装置。
- 請求項14又は15に記載の光走査装置を有することを特徴とする画像形成装置。
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