JP4385613B2 - 無段変速機の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ベルトやパワーローラあるいはこれらに付随するトラクションオイルなどのトルクの伝達を媒介する部材を、プーリやディスクなどの回転部材の間に挟み込み、その状態で入力側の回転部材から出力側の回転部材に動力を伝達し、かつこれらの回転部材の回転速度比(変速比)を連続的に変化させるように構成された無段変速機に関し、特にその制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
無段変速機は、ベルトやパワーローラなどのトルクの伝達を媒介する部材とプーリやディスクとの接触位置あるいはトルク伝達位置を連続的に変化させて、変速比を無段階に変更するように構成されている。そのトルクの伝達は、摩擦力あるいはトラクションオイルのせん断力を利用しておこなわれる。したがって、トルクを伝達する部材とプーリあるいはディスクとの接触圧あるいはトルクを伝達する部材を挟み付ける圧力(すなわち挟圧力)と、摩擦係数あるいはトラクションオイルのせん断力とに基づいて定まるトルク容量を超えてトルクが作用すると、ベルトやパワーローラの滑りが生じる。
【0003】
ベルトやパワーローラの滑りが過剰に生じると、プーリやディスクに摩耗が生じ、その結果、その摩耗部分でのトルクの伝達ができなくなって無段変速機としての機能を果たさなくなる。そのため、例えば特開平6−11022号公報に記載された発明では、実変速比の変化率と理論変速比の変化率とを比較して、無段変速機におけるベルトの滑りの有無を検出し、ベルトの滑りが検出された場合には、ライン圧を増加させるように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように無段変速機におけるトルクの伝達は、ベルトとプーリとの間の摩擦力やトラクションオイルのせん断応力によっておこなわれる。したがって無段変速機の伝達トルク(あるいはトルク容量)は、挟圧力とこれら摩擦力あるいはせん断力との両方で決まる。その伝達トルクが、無段変速機に作用するトルクより小さくなると滑りが生じるが、上記の公報に記載された発明は、その伝達トルクを決める要因のうち、挟圧力のみに着目し、滑りの発生によって、伝達トルクを増大させるべく挟圧力を高くしている。
【0005】
しかしながら、ベルトやパワーローラあるいはこれに付随するトラクションオイルなどの動力の伝達を媒介する部材は不可避的に劣化し、それに伴って伝達される動力もしくはトルクが低下する。そのような劣化が生じた状態で挟圧力を高くすれば、伝達トルクを増大させることができるが、伝動部材の劣化に相当する分、挟圧力を高くする必要がある。その結果、挟圧力を高くするためにライン圧を昇圧すれば、油圧ポンプを駆動するために消費する動力が増加するから、燃費の悪化要因が増えることになる。
【0006】
また、伝動部材の劣化が進行して滑りが生じているにも関わらず、単に挟圧力を高くしたのであれば、極端な場合、無段変速機での滑りを有効に防止することができなくなる。いずれにしても、従来では、伝動部材の劣化やその対応などに着目した技術がなく、無段変速機の安定的な制御をおこなう点で新たな技術を開発する必要があった。
【0007】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、無段変速機の経時的な変化に応じた制御をおこなうことを可能にする制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、入力部材と出力部材との間にトルクの伝達を媒介する伝動部材を介在させた無段変速機の制御装置において、前記入力部材もしくは出力部材と前記伝動部材との間の微少滑りを含む滑り速度と伝達駆動力との関係を示す特性線の所定の滑り速度での勾配である動力伝達勾配を求める動力伝達関係検出手段と、その動力伝達関係検出手段で求められた前記動力伝達勾配に基づいて前記伝動部材の劣化の程度を検出する劣化検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0011】
したがって請求項1の発明では、入力部材と出力部材との少なくともいずれか一方と伝動部材との相対的な滑りとそれらの間で伝達される動力との相互関係である動力伝達勾配が求められ、その動力伝達勾配に基づいて伝動部材の劣化の程度が検出される。そのため、伝動部材の劣化の程度に対応した制御を採ることが可能になるうえに、伝動部材の劣化の程度が適切に検出される。
【0012】
さらに、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記無段変速機での滑りを検出する滑り検出手段を更に備え、前記劣化検出手段は、前記滑り検出手段で前記無段変速機での滑りが検出される前の前記動力伝達勾配に対する、滑りが検出された後の前記動力伝達勾配の低下量に基づいて前記伝動部材の劣化の程度を検出するように構成されていることを特徴とする制御装置である。
【0013】
したがって請求項2の発明では、無段変速機での滑りが検出された場合、その滑りが生じる以前の前記動力伝達勾配と、滑りが生じた後の前記動力伝達勾配とが比較される。そして、滑りの発生前後で動力伝達勾配が低下していることにより伝動部材の劣化の程度が検出される。そのため、請求項1の発明と同様に、伝動部材の劣化の程度に対応した制御を採ることが可能になるうえに、伝動部材の劣化の程度が適切に検出される。
【0014】
そして、請求項3の発明は、入力部材と出力部材との間にトルクの伝達を媒介する伝動部材を介在させた無段変速機の制御装置において、前記無段変速機での滑りに起因する発熱量もしくは発熱率である熱負荷を検出する熱負荷検出手段と、その熱負荷検出手段で検出された熱負荷に基づいて前記伝動部材の劣化の程度を検出する劣化検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0015】
したがって請求項3の発明では、動力を伝達している状態での無段変速機の熱負荷が検出され、その検出された熱負荷に基づいて伝動部材の劣化の程度が検出される。そのため、請求項1の発明と同様に、伝動部材の劣化に対応した制御を採ることが可能になるうえに、伝動部材の劣化が適切に検出される。
【0018】
そしてさらに、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記劣化検出手段で検出された前記伝動部材の劣化の程度に基づいて前記無段変速機を制御する制御手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0019】
したがって請求項4の発明では、伝動部材の劣化の程度が検出されると、その劣化の程度に応じた無段変速機の制御が実行される。そのため、無段変速機の制御の内容が、伝動部材の劣化の程度に対応したものとなり、無段変速機の制御が適正化される。
【0020】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記伝動部材はベルトを含み、前記ベルトが前記入力部材もしくは出力部材に対して滑っている状態で、前記ベルトの所定箇所が前記滑りを生じている入力部材もしくは出力部材に掛かっている期間である滑り期間を求める滑り期間検出手段を更に備え、前記熱負荷検出手段はこの滑り期間に基づいて前記熱負荷を求めるように構成されていることを特徴とする無段変速機の制御装置である。
【0021】
したがって請求項5の発明では、前記熱負荷が、ベルトと前記入力部材および出力部材のいずれか一方との滑り期間に基づいて検出される。そのため、請求項4の発明と同様に、伝動部材の劣化に対応した制御を採ることが可能になるうえに、伝動部材の劣化検出精度が更に向上する。
【0022】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする車両の駆動機構およびその制御系統について説明すると、図11は、ベルト式無段変速機1を変速機として含む駆動機構を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
【0023】
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成され、要は、走行のための動力を発生する駆動部材である。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナーと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナーに供給することよりタービンランナーを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
【0024】
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナーとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナーなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。なお、このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。
【0025】
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図11に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
【0026】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ13と従動プーリ14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリ13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。したがって駆動プーリ13がこの発明の入力部材に相当し、また従動プーリ14がこの発明の出力部材に相当し、さらにベルト17がこの発明の伝動部材に相当している。
【0027】
なお、従動プーリ14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリ13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。これに対して駆動プーリ13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径)に設定するようになっている。なお、従動プーリ14の油圧アクチュエータ16には、その油圧を検出する油圧センサー28が付設されている。
【0028】
上記の従動プーリ14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、ロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
【0029】
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリ13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリ14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23、駆動輪20の回転数を検出して信号を出力する車輪速センサー24が設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
【0030】
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
【0031】
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数Ninの信号、無段変速機1の出力回転数No の信号が、それぞれに対応するセンサ(図示せず)から入力されている。また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。さらに、上記の無段変速機1は、パーキングやリバース、ニュートラル、ドライブなどの走行ポジションをシフト装置27によって選択するように構成されており、そのシフト装置27によって選択されたポジションの信号が、変速機用電子制御装置25に入力されている。
【0032】
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
【0033】
そのような燃費向上の利点を損なわないために、無段変速機1における動力の伝達効率が良好な状態に制御される。具体的には、無段変速機1のトルク容量すなわちベルト挟圧力が、エンジントルクに基づいて決まる目標トルクを伝達でき、かつベルト17の滑りが生じない範囲で可及的に低いベルト挟圧力に制御される。
【0034】
このような制御は、要は、無段変速機1における伝達トルクに所定の余裕を与えるための挟圧力の制御であるが、無段変速機1の伝達トルクは、挟圧力のみによって決まらないのであり、ベルト17などの伝動部材の特性によっても影響を受ける。すなわちベルト17の劣化によって摩擦係数が低下していれば、無段変速機1で設定される伝達トルクが低くなり、挟圧力を相対的に高くしなければならなくなる。そこでこの発明の制御装置は、伝動部材の劣化の程度を検出し、その伝動部材の劣化の程度に応じた制御を実行するように構成されている。
【0035】
図1はその制御例を示すフローチャートであって、先ず、所定トリップが経過したか否かが判断される(ステップS1)。これは、例えばトリップ用のカウンターを設けておき、エンジン5を始動する都度、このトリップ用カウンターをインクリメントし、そのカウント値が所定値に達したか否かによって判断することができる。
【0036】
このステップS1で肯定的に判断された場合には、後述する動力伝達勾配の変化量が所定値を超えた回数を計数するカウンターCをゼロリセット(ステップS2)した後、ステップS3に進む。これに対してステップS1で否定的に判断された場合、すなわち所定トリップに達していない場合には、ステップS2を飛ばして直ちにステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、ベルト17の滑り(いわゆるマクロスリップ)がチェックされる。これは、例えば無段変速機1の入力回転数と出力回転数ないしは変速比とに基づいて判断することができ、あるいは入力回転数もしくは出力回転数の単位時間内での変化量に基づいて判断することもできる。
【0038】
ベルト17の滑りが検出されたことによりステップS3で肯定的に判断された場合には、無段変速機1での滑りに対応した制御が実行される(ステップS4)。この対応制御は、一例として前記従動プーリ14の油圧アクチュエータ16には供給する油圧を高くしてベルト挟圧力を増大させる制御であり、あるいはこれに替えて、もしくはこれと併せて実行される、エンジン5での点火時の遅角制御もしくはスロットル開度の減少などによってエンジントルクを低下させる制御である。その後、フラグFが“1”にセット(ステップS5)されてリターンする。
【0039】
一方、ベルト17の滑りが生じていないことによりステップS3で否定的に判断された場合には、挟圧力を復帰させる制御が実行される(ステップS6)。すなわちベルト17の滑りが生じた場合には、前記ステップS4で滑り対応制御が実行されて挟圧力が昇圧されていることがある。ステップS6では、そのような昇圧を解除して元の挟圧力に戻す制御が実行される。したがって挟圧力の昇圧が事前に実行されていない場合には、このステップS6では特に制御は実行されない。
【0040】
その後、車両の走行状態が定常状態か否かが判断される(ステップS7)。ここで、定常走行状態とは、車速の変化量、アクセル開度などの出力要求量ないしはエンジン負荷の変化量、変速比の変化量のいずれもが所定値以内であること、もしくはそれらのうちのいずれかが所定値以内であることの条件が成立する走行状態である。定常走行状態でないことによりこのステップS7で否定的に判断された場合には、特に制御をおこなうことなくリターンする。
【0041】
すなわちここで説明している制御例では、ベルト17の滑りが生じると、挟圧力が増加させられるが、その後にベルト滑りがなくなれば、挟圧力が低下させられる。
【0042】
また、上記のステップS7で肯定的に判断された場合には、動力伝達勾配が演算によって求められる(ステップS8)。この動力伝達勾配は、駆動プーリ13と従動プーリ14とのいずれについて求めてもよいが、定常走行状態では変速比が最小値に近い値になっていて、従動プーリ14でのベルト17の巻き掛け半径が小さくなっている。そのため、従動プーリ14側でベルト17の滑りが生じやすいので、従動プーリ14について動力伝達勾配を演算して求めることとしてもよい。
【0043】
ここで、動力伝達勾配とは、無段変速機1における微少滑りを含む滑り速度と伝達駆動力との関係を示す特性線の所定の滑り速度での勾配(接線の勾配)として表される値である。これを、図2に模式的に示してある。
【0044】
より詳しくは特願2001−208123号の願書に添付した明細書に記載されているとおりであり、これを簡略化して説明すれば、上記の無段変速機1における駆動プーリ13および従動プーリ14ならびにベルト17の運動方程式から(1)式が得られる。
【式1】
Figure 0004385613
【0045】
ここで、
【式2】
Figure 0004385613
である。なお、
τ:サンプリング周期、M:ベルトの等価慣性、R1 ,R2 :各プーリへの巻き掛け半径、J1 ,J2 :各プーリの慣性、F2 :各プーリの伝達トルクと定数とからなる項、K2 :従動プーリでの動力伝達勾配である。
【0046】
上記のY2 とξとは、検出した回転速度ωと定数とからなるので、最小二乗法などにより、θ(動力伝達勾配とトルク項)のセットが求められる。こうして、動力伝達勾配を演算することができる。したがってこの動力伝達勾配がこの発明における「相互関係」に相当する。
【0047】
動力伝達勾配が演算された後に、フラグFについて判断される(ステップS9)。前述したようにこのフラグFは、ベルト17の滑りが検出された場合に“1”にセットされるフラグであり、したがってフラグFが“0”であれば、ベルト17の滑りが直前に発生したことがなく、かつ定常走行状態での動力伝達勾配が求められていることになるので、その動力伝達勾配が運転条件に対応させてマップに記憶され(ステップS10)、その後にリターンする。
【0048】
ここで運転条件とは、車速もしくは無段変速機1に対する入力回転数と、変速比と、アクセル開度もしくはエンジン負荷となどによって定まる車両の状態である。なお、これらの条件の組み合わせは多数存在するので、運転条件を複数の領域に分け、それらの領域毎に動力伝達勾配を記憶するのが一般的である。このようにステップS10で動力伝達勾配をマップに記憶することにより、運転条件に対応して動力伝達勾配の最新値が更新されることになる。
【0049】
一方、フラグFが“1”に設定されていることがステップS9で判断された場合には、動力伝達勾配の低下量(低下幅)が予め定めた所定値以上か否かが判断される(ステップS11)。フラグFが“1”の場合、この判断ステップに到る前にベルト17の滑りが生じているので、その要因としてトルクが一時的に増大したことや挟圧力が何らかの原因で一時的に低下したことに加え、ベルト17の劣化による摩擦係数の低下が考えられる。
【0050】
動力伝達勾配は、図2に示すように、無段変速機1における駆動プーリ13もしくは従動プーリ14とベルト17との相対滑り速度と動力の伝達量とを示す特性曲線上での所定の相対滑り速度における勾配(接線の勾配)である。したがってこれを所定の出力回転数および変速比について、滑り速度と伝達トルクとをパラメータとして書き直せば、図3のとおりである。この図3に示すように、動力伝達勾配が低下すると、所定の伝達トルクT0 に対する滑り速度が増大し、許容できる滑りの限界に近づく。これは、ベルト17の摩擦係数の低下として現れる劣化の程度を示している。
【0051】
そこで、ベルト17の劣化の程度の判定もしくは検出のために、動力伝達勾配の低下量を判断することとしたのである。この判断は、具体的には、既に記憶している値と上記のステップS8で求められた値とを比較することによりおこなうことができる。
【0052】
したがって動力伝達勾配の低下量が所定値以上であることによりステップS11で肯定的に判断された場合には、ベルト17の劣化が進行していることになるので、前述したカウンターCがインクリメントされる(ステップS12)。そして、このカウンターCの積算値が予め定めた所定値C0 以上になったか否かが判断される(ステップS13)。この所定値C0 は、“1”であってもよく、あるいは“2”以上の数値であってもよい。例えば上記の動力伝達勾配の低下量を判断するしきい値を相対的に大きい値に設定した場合には、ステップS11で肯定的に判断された場合に直ちにベルト17の劣化の程度が大きいと判断するために、前記所定値C0 は“1”に設定する。
【0053】
このステップS13で肯定的に判断された場合には、ベルト17の劣化が進行していることになり、無段変速機1での滑り速度が増大し、あるいは過大な滑り(マクロスリップ)に到るまでの伝達トルクの余裕が少なくなっていることになるので、挟圧力が高くなるように補正される(ステップS14)。その昇圧量は、マップなどの形式で予め定めた量であってよい。したがってベルト17の劣化の程度に応じた挟圧力の昇圧制御が実行され、無段変速機1での伝達トルクが従前とほぼ同じに維持される。
【0054】
こうして挟圧力を昇圧した後、フラグFを“0”にセットし、かつカウンターCをゼロリセットした後(ステップS15)、リターンする。なお、上記のステップS11で否定的に判断された場合、すなわち動力伝達勾配の低下量が所定値より小さい場合、およびカウンターCの積算値が所定値C0 に達していないことによりステップS13で否定的に判断された場合には、フラグFを“0”にセットした後(ステップS16)、リターンする。
【0055】
上記のように図1に示す制御を実行するこの発明の制御装置によれば、動力伝達勾配の変化に基づいてベルト17の劣化の程度を検出することができる。そのため、ベルト17の劣化の程度に応じた制御を実行することが可能になる。上記の例では、挟圧力を昇圧してベルト17の過大な滑り(マクロスリップ)が生じることを未然に回避することができる。言い換えれば、ベルト17などの伝動部材の劣化の程度に応じた適正な制御を採ることができる。特に上記の例では、無段変速機1の状態を反映している動力伝達勾配を劣化の判定もしくは検出に採用し、さらにはベルト17の滑りの前後での動力伝達勾配を比較して劣化の程度を判定もしくは検出するので、その劣化の程度をより適切に判定もしくは検出することができる。
【0056】
なお、ベルト17の劣化の程度の判定に伴う挟圧力の昇圧の回数あるいはその昇圧値が所定回数もしくは所定圧力に達した場合には、ベルト17の耐用限界に達したこと、もしくは耐用限界に近づいたことの告知をおこようこととしてもよい。また、ステップS11で動力伝達勾配の低下量を判定することに替えて、動力伝達勾配の増大を含む変化量を判定することとしてもよい。このように構成した場合には、ベルト17や各プーリ13,14の摩擦面(トルク伝達面)が粗くなって動力伝達勾配が一時的に増大する事態をも検出することができる。
【0057】
上記の例は、動力伝達勾配を使用する例であるが、この発明では、これに替えてベルト17の滑りに伴う熱量を使用してベルト17の劣化の程度を判定もしくは検出するように構成することもできる。つぎにその例を説明する。
【0058】
図4は、上記の図1に示すステップS8およびステップS11を、それぞれステップS81およびステップS111に変更し、これらのステップS81,S111でベルト17の滑りに伴う熱量もしくは発熱率を算出あるいは判定するように構成した例である。したがって他の制御ステップは図1に示す制御例と同様なので、図4に図1と同一の符号を付してその説明を省略する。なお、図4に示す制御例では、図1に示すステップS7に相当する判断ステップおよびステップS10に相当する制御ステップは設けられていない。動力伝達勾配のような無段変速機1の特性を示すデータを検出していないからである。
【0059】
図4において、挟圧力の復帰制御(ステップS6)に続くステップS9でフラグFについて判断され、直前にベルト滑りが発生したことによりフラグFが“1”にセットされていた場合には、ベルト17の滑りに伴う総熱量Qもしくは単位時間当たりの熱量(発熱率)ΔQが計算される(ステップS81)。その計算の手法は後述する。
【0060】
図4に示す制御は、ベルト17の滑りに伴う摩擦の熱量によってベルト17の劣化の程度を判定もしくは検出するようにしたのである。なお、総熱量Qは単位時間当たりの熱量ΔQを時間積分したものである。
【0061】
ついで、ステップS81で求められた熱量もしくは単位時間当たりの熱量ΔQが、予め判断基準値として定めた所定値以上か否かが判断される(ステップS111)。
【0062】
このステップS111で肯定的に判断された場合には、ベルト17の劣化が進行していて、滑り量が多いことにより発熱量が多いことになるので、ステップS12以降の前述した各制御ステップに進む。そして、この熱量が所定値以上となる回数がある程度多くなると、ステップS14で挟圧力が昇圧される。すなわち、ベルト17の劣化に伴う滑りを抑制するために挟圧力が昇圧される。
【0063】
ここで、上記のステップS81で実行される熱量もしくは発熱率の計算手法について説明とすると、その手順を図5にステップS81のサブルーチンとして示してある。なお、ベルト17に滑りが生じた場合の過渡特性を図6に示してある。
【0064】
図5において、先ず、ベルト17に滑りが生じた際の基準変速比γ’と、滑り開始時の変速比γ”と、滑り時間とが確定される(ステップS8101)。ベルト17が実際に滑ったことによる回転数変化に基づいて求められ滑り指標による滑りの判定は、実際の滑りに対して不可避的に遅延する。そのためその滑り指標による滑り判定の時点Dより所定時間T前から記憶しているデータに基づいて変速比γの変化率を求め、その変化率と所定時間Tとから基準変速比γ’を求めることができる。
【0065】
また、滑り開始時変速比γ”は、図6のA時点からC時点までの経過時間と変速比の変化率ならびにA時点の変速比γとに基づいて、あるいはB時点からC時点までの経過時間と変速比の変化率ならびにB時点の変速比γとに基づいて求めることができる。さらに、滑り時間は、実測された変速比γが、前記基準変速比γ’に所定値Δγを加えたしきい値(γ’+Δγ)を超えている時間(図6のC時点からE時点まで)として求められる。
【0066】
こうして確定された滑り開始時変速比γ”に基づいて滑りの生じた部位が特定される(ステップS8102)。すなわち、変速比γの値からベルト17の各プーリ13,14に対する巻き付け半径の大小が決まるから、例えば基準変速比γ’が“1”以下であれば、従動プーリ14での巻き付け半径が小さく、滑りが従動プーリ14側で生じており、それ以外の状態であれば、駆動プーリ13での巻き付け半径が小さく、滑りが駆動プーリ13側で生じていると考えられる。なお、厳密には、滑りプーリの変化は、変速比が“1”を僅かにずれた状態で切り替わるので、そのような区別をおこなうためのしきい値は、上記のように“1”を僅かにずれた値であってもよい。
【0067】
ついで上記のように確定した滑り部位に基づいて、駆動プーリ13側で滑りが生じたか否かが判断される(ステップS8103)。これは、フロー(制御の手順)を滑りの部位に応じて変更するためである。したがってステップS8103で肯定的に判断された場合には、従動プーリ14側に設けてある油圧センサー28の検出値を利用して駆動プーリ13での推力を求めるために、記憶している油圧センサー28の検出値(Pd )を読み出す(ステップS8104)。そして、それに基づいて従動プーリ14におけるベルト17を挟み付ける推力Wout が演算される(ステップS8105)。その場合、従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16における遠心油圧やリターンスプリング(図示せず)などの力を考慮する。
【0068】
このようにして求めた従動プーリ14側の推力Wout から駆動プーリ13がベルト17を挟み付けている推力Winを確定する(ステップS8106)。これは、例えば変速比γと推力比(Wout /Win)との関係を表している推力比マップを利用しておこなうことができる。その推力比マップの一例を図7に模式的に示してある。なおその場合、ベルト17の滑りは瞬間的な現象であるから、図6に示すB時点での変速比γを採用する。
【0069】
一方、ステップS8103で否定的に判断された場合には、従動プーリ14側で滑りが生じていることになる。その場合、ステップS8107に進んで、既に記憶している油圧センサー28の検出値(Pd )を読み出す。そして、それに基づいて従動プーリ14におけるベルト17を挟み付ける推力Wout が演算される(ステップS8108)。その場合、従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16における遠心油圧やリターンスプリング(図示せず)などの力を考慮する。
【0070】
ついで、変速比γや各プーリ13,14の回転速度などの運転条件やベルト17の滑り条件からベルト17と駆動プーリ13もしくは従動プーリ14との間の摩擦係数μが計算されて確定される(ステップS8109)。これは予め用意してあるマップに基づいて求めてもよい。そのマップの例を図8に概念的に示してある。
【0071】
さらに、上記のようにして確定された各値を使用して、駆動プーリ13の負荷トルクTp あるいは従動プーリ14での負荷トルクTs が求められる(ステップS8110)。
Tp[Ts]=(2・μ・Rp[Rs]・Win[Wout])/cosα
ここで、Rp ,Rs は駆動プーリ13あるいは従動プーリ14に対するベルト17の巻掛け半径であり、滑り開始時の変速比γ”に基づいて求められる。またαはプーリ13,14によるベルト17の挟み角度である。
【0072】
そしてまた、ベルト17の相対滑り速度が計算される(ステップS8111)。これは、駆動プーリ13については、
ΔNin=No・γ−No・γ’
従動プーリ14については、
ΔNout =Nin/γ−Nin/γ’
で求められる。なお、これらの値はラジアン単位に換算されて回転角速度ωとされる。
【0073】
また、ベルト17の駆動プーリ13(もしくは従動プーリ14)に対する巻掛け長さLが求められる(ステップS8112)。これは、滑り開始時変速比γ”と予め用意したマップとに基づいて求めることができる。
【0074】
滑りに起因して発生する熱量はトルクと回転角速度との積であるから、
ΔQ=Tp[Ts]・ω/L
により単位長さ当たりの熱負荷ΔQが演算される(ステップS8113)。
【0075】
こうして求められた熱負荷ΔQの最大値が保持される(ステップS8114)。すなわち、計算された熱負荷ΔQが従前のものより大きい場合には、大きい値に置換される。さらに、上記の熱負荷ΔQを順次積分して総熱負荷Qが求められる(ステップS8115)。
【0076】
ついで、変速比γが滑り判定のしきい値、すなわち基準変速比γ’に所定値Δγを加えた値以下か否かが判定される(ステップS8116)。これは、滑りが終了したか否かの判断である。このステップS8116で否定的に判断された場合には、滑りが継続していることになるので、ステップS8113に戻って上記の各制御ステップを繰り返す。これとは反対に滑りが終了してステップS8116で肯定的に判断された場合には、カウンターおよび上記の熱負荷ΔQや総熱負荷Qのラム(RAM:ランダムアクセスメモリー)がクリアーされ(ステップS8117)、その後に図4のステップS111に進む。
【0077】
上記のように滑りが生じた部位の推定やベルト17の巻掛け半径、巻掛け長さ、推力比などは、滑り開始時の変速比γ”によって決定し、推定されている変速比が、滑り部位の判定をおこなうしきい値(具体的には“1”)を横切って変化しても、滑り部位の判定は変更しない。図8に示してあるように、ベルト17が滑り始めると、摩擦係数μが低下するので、滑り部位が変化することはないからであり、このように取り扱うことにより計算操作が簡素化され、また正確な計算をおこなうことができる。
【0078】
なお、図5に示すルーチンでは、全て学習的に計算させることとしているが、滑りの検出の遅れ分だけ数値を記憶し、これを利用してリアルタイムに近い計算をおこなってもよい。また、油圧センサー28の検出値を利用することとしているが、これが故障したり、あるいはその検出値の信頼性が低下する事態が生じた場合には、挟圧力を設定する油圧指令値を採用してもよい。
【0079】
したがって図4に示す制御、あるいはこれに図5に示す制御を加えた制御を実行するように構成した場合には、ベルト17の劣化の程度に密接に関係する熱負荷もしくは総熱負荷を使用してベルト17の劣化の程度を判定もしくは検出するので、精度よくベルト17の劣化を判定もしくは検出することができる。また、図1に示す制御をおこなう場合と同様に、ベルト17の劣化の程度に対応した適正な制御をおこなうことが可能になる。
【0080】
なお、ベルト17の劣化を、熱負荷ΔQの最大値に替えて、その相対滑り速度によって簡易的に判定もしくは検出することもできる。その制御例を図9に示してある。この図9に示す制御例は、上記の図4に示すステップS81およびステップS111を、それぞれステップS82およびステップS112に変更し、これらのステップS82,S112でベルト17のプーリ13,14に対する相対滑り速度を計算し、また判定するように構成した例である。したがって他の制御ステップは図4示す制御例と同様なので、図9に図4と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図9において、フラグFが“1”にセットされていることがステップS9で判断された場合、ベルト滑りが生じているので、これに続くステップS82でベルト17の滑り速度が検出計算される。前述したように、滑りが開始した時点の変速比や巻掛け半径、各プーリ13,14の回転速度などを求めることができるので、これを使用してベルト17の相対滑り速度を演算して求めることができる。このステップS82で求められた相対滑り速度が、予め判断基準値として定めた所定値以上か否かが判断される(ステップS112)。
【0082】
このステップS112で肯定的に判断された場合には、ベルト17の劣化が進行していることになるので、ステップS12以降の前述した各制御ステップに進む。そして、この滑り速度の最大値が所定値以上となる回数がある程度多くなると、ステップS14が挟圧力が補正される。すなわち、ベルト17の劣化に伴う滑りを抑制するために挟圧力が補正される。
【0083】
したがって図9に示す制御を実行するように構成した場合には、ベルト17の劣化の程度に密接に関係する相対滑り速度を使用してベルト17の劣化の程度を判定もしくは検出するので、精度よくベルト17の劣化を判定もしくは検出することができる。また、図1や図4に示す制御をおこなう場合と同様に、ベルト17の劣化の程度に対応した適正な制御をおこなうことが可能になる。
【0084】
また、ベルト17の滑りに伴う摩擦の熱量によってベルト17の劣化の程度を更に正確に判定もしくは検出するようにした他の制御例を図10に示す。この図10に示す制御例は、上記の図5に示す制御例を変更して、ベルト17と滑り側プーリとの滑りの生じている期間に基づいて熱負荷を検出するように構成した例である。なお、ベルト17に滑りが生じた場合の過渡特性は図6と同様である。
【0085】
図10において、先ず、ベルト17の滑り判断が行われる(ステップS1001)。この滑り判断は、例えば、図1のステップS3で説明した判断方法と同様の方法で判断することができる。このステップS1001で否定的に判断されると、特に制御を行うことなくリターンする。
【0086】
ステップS1001で肯定的に判断されると、ベルト17に滑りが生じた際の基準変速比γ’と、滑り開始時の変速比γ”と、滑り時間とが確定される(ステップS1002)。このステップS1002では、図5のステップS8101と同様の処理が行われる。すなわち、基準変速比γ’と滑り開始時変速比γ”と滑り時間とが求められる。
【0087】
ステップS1002からステップS1015までは、図5のステップS8101からステップS8114までと同様の処理が行われる。すなわち、ステップS1015によって、熱負荷ΔQの最大値が保持された後、図6に示す所定時間Tのカウント値をt←t+Δtとしてインクリメントし、熱負荷ΔQをt+Δtで積分して総熱負荷Qが求められる(ステップS1016)。
【0088】
ついで、図10に示す例では、変速比γが滑り判定のしきい値、すなわち基準変速比γ’に所定値Δγを加えた値以下か否かが判定される(ステップS1017)。このステップS1017では、図5のステップS8116と同様の処理が行われる。このステップS1017で肯定的に判断された場合、総熱負荷Qや最大総熱負荷Qmaxが保持される(ステップS1018)。その後、カウンターおよび上記の熱負荷ΔQや総熱負荷Qのラム(RAM:ランダムアクセスメモリー)がクリアーされ(ステップS1019)、リターンする。
【0089】
一方、ステップS1017で否定的に判断された場合、所定時間Δtにおけるベルト17の滑り側プーリの円弧上の移動量、または、滑り側プーリ上のベルト17の移動角度が演算される(ステップS1020)。この演算は、例えば、従動プーリ14の回転数とベルト17との相対回転数である(ω+Δω)にベルト17の巻掛け半径を乗じ、さらに、所定時間Δtを乗じて求められる。
【0090】
つぎに、滑り側のプーリの掛かり範囲内か否かが判断される(ステップS1021)。このステップS1021では、例えば、ベルト17に相対滑り開始時の所定のベルト位置を予め決めておくことによって、滑り側のプーリの掛かり範囲内であるかどうかを判断する。ステップS1021で肯定的に判断された場合、ステップS1004に戻る。
【0091】
ステップS1021で否定的に判断された場合、所定のベルト位置が滑り側のプーリからベルトの直線部分と非滑り側のプーリとベルトの直線部分とを経由して、再び滑り側のプーリに進入するまでの時間T2が求められる(ステップS1022)。このT2は、例えば、t←t+Δtとして時間のカウント値をインクリメントしながら、前記所定のベルト位置の移動距離を演算し、発熱する滑り側プーリの巻き掛け径分をベルトの周長から減算した長さを求める。そして、前記移動距離が、前記長さに達するまでの時間をT2として求めることができる。
【0092】
さらに、t←t+Δt2として時間のカウント値がインクリメントされ(ステップS1023)、このtがT2に達したか否かが判断される(ステップS1024)。このステップS1024で肯定的に判断された場合、ステップS1004に戻る。一方、ステップS1024で否定的に判断された場合、ステップS1023に戻り、カウント値tがさらにインクリメントされる。
【0093】
したがって図10に示す制御を実行するように構成した場合には、ベルト17の劣化の程度に密接に関係する熱負荷もしくは総熱負荷を使用し、さらにベルト17上の所定の位置を取り出して熱負荷を演算することができる。その結果、ベルト17が実際に滑って発熱する部分を取り出すことができるので、ベルト17の劣化の程度をさらに精度よく判定、もしくは検出することができる。
【0094】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS11,S13,S111,S112の機能的手段が、この発明の劣化検出手段に相当し、またステップS8の機能的手段が、この発明の動力伝達関係検出手段に相当する。さらに、ステップS3,S5,S9の機能的手段がこの発明の滑り検出手段に相当し、ステップS81およびステップS1001からS1019までの機能的手段がこの発明の熱負荷検出手段に相当する。また、ステップS1020からS1023までの機能的手段がこの発明の滑り期間検出手段に相当する。そして、ステップS14の機能的手段がこの発明の制御手段に相当する。
【0095】
なお、前述したようにベルト17の劣化に伴って相対滑り速度が増大すると、挟圧力を高くして相対滑り速度の増大を抑制するので、挟圧力が高くなる。したがってこの発明では、挟圧力に基づいてベルト17などの伝動部材の劣化を判定もしくは検出することができる。その挟圧力は、センサーで求めたものであってもよく、あるいは指令値であってもよい。さらには、演算して求められたものであってもよい。このような挟圧力に基づいてベルト17の劣化の程度を判定もしくは検出する手段が、この発明の劣化検出手段に含まれる。
【0096】
なお、この発明における無段変速機は、ベルト式に限らず、トロイダル型(トラクション式)の無段変速機であってもよい。したがってその場合には、パワーローラあるいはトラクションオイルが伝動部材に相当し、これらの劣化を検出することになる。また、上記の具体例では、動力伝達勾配を用いたが、この発明では、その動力伝達勾配に相当する相互関係を利用して制御をおこなうように構成してもよい。
【0097】
さらに、この発明では、ベルトなどの伝動部材の劣化に起因して挟圧力を高くすることに加え、無段変速機と直列に配列されたいわゆるトルクヒューズとして機能するクラッチの伝達トルクの余裕を低下させる制御を実行してもよい。またこれに加えてエンジントルクを低下させてもよい。このような伝動部材の劣化に伴う制御を実行する手段が、この発明の制御手段に含まれる。
【0098】
上記の具体例として開示した発明には、以下の発明が含まれている。すなわち、伝動部材の滑りが検知された場合の滑り部位が、その滑り検知時の変速比に基づいて判定される制御装置。ベルト式無段変速機を対象とする場合には、滑り発生部位が挟圧力用油圧のセンサーのある部位であれば、そのセンサーの検出圧に基づき、そのセンサーが設けられていない部位であれば、そのセンサーによって得られた圧力と推力比とから求められた圧力に基づき、滑りに伴う熱負荷などのダメージを推定する制御装置。油圧センサーによる検出値に替えて油圧指示値を使用する制御装置。ベルト式無段変速機を対象とする場合、滑りに伴う熱負荷などのダメージを、ベルトの巻掛け長さもしくはベルトの接触面積に基づいて判定する制御装置。滑り開始時の変速比に対応する物理量を固定して、滑りに伴う熱負荷などのダメージを判定する制御装置。滑りに伴う熱負荷などのダメージを、滑り開始時の運転条件や滑り条件を逐次確定して得た摩擦係数や挟圧力関連値に基づいて判定する制御装置。ベルト式無段変速機を対象とする場合、滑りに伴う熱負荷などのダメージを、ベルトの相対的な滑り期間に基づいて判定する制御装置。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、入力部材と出力部材との少なくともいずれか一方と伝動部材との相対的な滑りとそれらの間で伝達される動力との相互関係である動力伝達勾配が求められ、その動力伝達勾配に基づいて伝動部材の劣化の程度が検出されるため、伝動部材の劣化の程度に対応した制御を採ることが可能になり、ひいては無段変速機での動力の伝達効率を向上させ、あるいは無段変速機を使用し得なくなるなどの損傷を未然に回避することができる。
【0101】
さらに、請求項2の発明によれば、無段変速機での滑りが検出された場合、その滑りが生じる以前の前記動力伝達勾配と、滑りが生じた後の前記動力伝達勾配とを比較して動力伝達勾配が低下していることに基づいて伝動部材の劣化の程度が検出されるため、請求項1の発明と同様に、伝動部材の劣化の程度に対応した制御を採ることが可能になるうえに、伝動部材の劣化の程度を適切に検出することができる。
【0102】
そして、請求項3の発明によれば、動力を伝達している状態での無段変速機の熱負荷が検出され、その検出された熱負荷に基づいて伝動部材の劣化の程度が検出されるため、請求項1の発明と同様に、伝動部材の劣化に対応した制御を採ることが可能になるうえに、伝動部材の劣化を適切に検出することができる。
【0104】
そしてさらに、請求項4の発明によれば、伝動部材の劣化の程度が検出されると、その劣化の程度に応じた無段変速機の制御が実行されるため、無段変速機の制御の内容が、伝動部材の劣化の程度に対応したものとなり、無段変速機の制御を適正化することができる。
【0105】
またさらに、請求項5の発明によれば、前記熱負荷が、前記入力部材および出力部材のいずれか一方との滑り期間に基づいて検出される。そのため、請求項4の発明と同様に、伝動部材の劣化に対応した制御を採ることが可能になるうえに、伝動部材の劣化検出精度をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】 動力伝達勾配を概念的に示す線図である。
【図3】 その動力伝達勾配を、特定の出力回転数および変速比について、滑り速度と伝達トルクとをパラメータとして示す線図である。
【図4】 この発明の制御装置による制御の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図5】 熱負荷を計算する手法の一例を説明するためのサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】 滑りが生じた際の過渡特性を示すタイムチャートである。
【図7】 変速比と推力比との関係を概念的に示す線図である。
【図8】 相対滑り速度と摩擦係数との関係を概念的に示す線図である。
【図9】 この発明の制御装置による制御の更に他の例を説明するためのフローチャートである。
【図10】 この発明の制御装置による制御の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図11】 この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構およびその制御系統を模式的に示すブロック図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 3…トルクコンバータ、 5…エンジン(動力源)、 13…駆動プーリ、 14…従動プーリ、 17…ベルト、 25…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)。

Claims (5)

  1. 入力部材と出力部材との間にトルクの伝達を媒介する伝動部材を介在させた無段変速機の制御装置において、
    前記入力部材もしくは出力部材と前記伝動部材との間の微少滑りを含む滑り速度と伝達駆動力との関係を示す特性線の所定の滑り速度での勾配である動力伝達勾配を求める動力伝達関係検出手段と、
    その動力伝達関係検出手段で求められた前記動力伝達勾配に基づいて前記伝動部材の劣化の程度を検出する劣化検出手段と
    備えていることを特徴とする無段変速機の制御装置。
  2. 前記無段変速機での滑りを検出する滑り検出手段を更に備え、
    前記劣化検出手段は、前記滑り検出手段で前記無段変速機での滑りが検出される前の前記動力伝達勾配に対する、滑りが検出された後の前記動力伝達勾配の低下量に基づいて前記伝動部材の劣化の程度を検出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。
  3. 入力部材と出力部材との間にトルクの伝達を媒介する伝動部材を介在させた無段変速機の制御装置において、
    前記無段変速機での滑りに起因する発熱量もしくは発熱率である熱負荷を検出する熱負荷検出手段と、
    その熱負荷検出手段で検出された熱負荷に基づいて前記伝動部材の劣化の程度を検出する劣化検出手段と
    を備えていることを特徴とする無段変速機の制御装置。
  4. 前記劣化検出手段で検出された前記伝動部材の劣化の程度に基づいて前記無段変速機を制御する制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無段変速機の制御装置。
  5. 前記伝動部材はベルトを含み、
    前記ベルトが前記入力部材もしくは出力部材に対して滑っている状態で、前記ベルトの所定箇所が前記滑りを生じている入力部材もしくは出力部材に掛かっている期間である滑り期間を求める滑り期間検出手段を更に備え、
    前記熱負荷検出手段はこの滑り期間に基づいて前記熱負荷を求めるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の無段変速機の制御装置。
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