JP4085641B2 - 無段変速機を含む駆動機構の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ベルトやパワーローラなどのトルクの伝達を媒介するトルク伝達部材を、プーリーやディスクなどの回転部材に直接もしくは間接的に接触させ、接触圧力に応じてトルク容量が変化する無段変速機を含む駆動機構の制御装置に関し、特に無段変速機の過剰な滑りを防止するための制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の無段変速機では、回転部材とトルク伝達部材との間のトルク伝達位置を連続的に変化させることができるようにするために、その回転部材の表面を滑らかな曲面としている。その曲面とトルク伝達部材との間で必要十分なトルクが伝達されるようにするために、ベルト式の無段変速機においては、固定シーブと可動シーブとからなるプーリーによってベルトを挟み付け、伝達するべきトルクに応じた摩擦力をプーリーとベルトとの間に生じさせるように挟圧力を設定している。また、パワーローラを使用したトロイダル型(トラクション式)の無段変速機では、入力ディスクおよび出力ディスクとパワーローラとの間に介在する油膜のせん断力が、伝達するべきトルクに応じたせん断力となるように、各ディスクによるパワーローラの挟圧力を設定している。
【0003】
無段変速機においてトルク伝達部材を挟み付ける挟圧力は、要は、伝達するべきトルクに基づいて決まる圧力以上であればよい。しかしながら、挟圧力が必要以上に高いと、無段変速機での動力の伝達効率が低下するうえに、無段変速機の耐久性が低下する。さらには、挟圧力を油圧によって設定するように構成してあれば、油圧ポンプでの動力損失が増大し、結局は、無段変速機を搭載している車両の燃費が悪化する。したがって、無段変速機における最も好ましい挟圧力は、回転部材とトルク伝達部材との間で滑りが生じる直前の状態を設定する圧力である。
【0004】
上記の挟圧力は、車両が定速で走行している定常状態あるいは滑らかな加減速を伴って走行している準定常状態での挟圧力である。これに対して車両の走行状態あるいは動作状態は路面の状況や走行環境によって急激に変化することがあり、そのような場合には、無段変速機に作用するトルクが急激に増大する。
【0005】
このような一時的なトルクの増大が生じても無段変速機に滑りが生じないようにするために、無段変速機と直列に配置したクラッチのトルク容量の滑りが生じるトルク容量に対する余裕を、無段変速機のトルク容量の滑りが生じるトルク容量に対する余裕より低く設定しておき、無段変速機に先行してそのクラッチに滑りが生じるようにしている。その一例が、特開平10−2390号公報に記載されている。すなわちこの公報に記載された発明では、クラッチの入力回転数と出力回転数との差が生じることによりクラッチのスリップを検出し、そのスリップが検出された場合には、クラッチの締結力および無段変速機のベルト押圧力を増大させ、またクラッチのスリップが検出されない場合には、クラッチの締結力および無段変速機のベルト押圧力を減少制御するように構成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の公報に記載された発明で対象としているクラッチは、エンジンと無段変速機との間に介在させたクラッチであり、したがってこのクラッチには、エンジンからトルクが入力されることに加え、駆動輪のロックなどによるいわゆる出力側からのトルクが入力される。そのためエンジントルクが一時的に増大した場合と、出力側の負トルクが増大した場合とのいずれの場合であってもクラッチに滑りが生じる可能性がある。
【0007】
クラッチの滑りがこれらのいずれによる場合であっても、上記の発明では、クラッチの締結力およびベルト押圧力を増大させることとしているので、無段変速機での動力の伝達効率が低下して燃費が悪化する可能性があった。すなわち、エンジンと無段変速機との間に介在されるクラッチとして、トルクコンバータに並列に配置したロックアップクラッチを使用した場合、そのロックアップクラッチに滑りが生じることによりロックアップクラッチにおける速度比(ポンプインペラーの回転速度とタービンランナーの回転速度との比)が小さくなってトルク比が増大する。すなわちトルクコンバータにおけるトルク容量が増大する。
【0008】
上記従来の発明では、無段変速機におけるベルト押圧力を増大させるので、無段変速機での滑りが防止される。しかしながら、そのクラッチの滑りがエンジントルクの一時的な増大が原因で生じたものであった場合、エンジンの制御によってそのようにトルクの増大を抑制できるが、無段変速機のベルト押圧力を増大させると、一時的なクラッチの滑り以降の定常的な走行時においても、無段変速機でのベルト押圧力を増大させることになるので、無段変速機での動力の伝達効率が低下し、その結果、燃費が悪化し、もしくは無段変速機を使用することによる燃費の向上効果が損なわれるなどの不都合がある。
【0009】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、無段変速機に対して直列に配列されたクラッチの滑りに適切に対処することを可能にする駆動機構の制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、無段変速機に対してトルクの伝達方向で直列に配置されたクラッチの滑りが検出された場合に、その要因を判定する手段を設けたことを特徴とするものである。より具体的には、請求項1の発明は、回転部材とトルク伝達部材とをトルク伝達可能に直接もしくは間接的に接触させ、その接触圧力に応じてトルク容量が変化する無段変速機が動力源の出力側に配置され、摩擦力によってトルクを伝達するクラッチがその無段変速機に対してトルクの伝達方向で直列に配置された無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記クラッチの滑りを検出する滑り検出手段と、その滑り検出手段によって前記クラッチの滑りが検出された場合に、その滑りが前記動力源のトルクの変化に起因する滑りか、あるいは前記クラッチの出力側のトルクの変化に起因する滑りかを判定する滑り要因判定手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0011】
したがって請求項1の発明では、クラッチの滑りが検出されると、その滑りが、動力源のトルクの変化を要因とするものか、あるいは出力側のトルクの変化を要因とするものかが判定される。すなわち無段変速機に対して動力源側に配置されたクラッチに滑りが生じると、その滑りの要因が明らかになるので、無段変速機でのトルク容量もしくはクラッチのトルク容量を増大させ、あるいは動力源の出力トルクを制御するなど、適切な対応制御を採ることが可能になる。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1における前記滑り要因判定手段が、前記クラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量との少なくともいずれか一方に基づいて前記クラッチの滑りの要因を判定するように構成されていることを特徴とする制御装置である。
【0013】
したがって請求項2の発明では、クラッチの滑りが判定された場合、その際のクラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量とのいずれかもしくは両方に基づいて、クラッチの滑りの要因が判定される。例えば入力側の回転数の時間変化量が大きい場合には、動力源のトルクの変化が要因であることが判定され、また反対に出力側の回転数の時間変化量が大きい場合には、クラッチの出力側に連結されている部材のトルクの変化がクラッチの滑りの要因であることが判定される。
【0014】
これに対して、請求項3の発明は、請求項1における前記滑り要因判定手段が、前記クラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量との比率に基づいて前記クラッチの滑りの要因を判定するように構成されていることを特徴とする制御装置である。
【0015】
したがって請求項3の発明では、クラッチに滑りが生じると、その入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量との比率が求められる。その比率は、滑りが生じない場合の値に対して滑りが生じることにより変化するから、その比率を所定の基準値と比較するなどのことにより、いずれの回転数が変化したかを知ることができる。すなわちトルクの変化が入力側と出力側とのいずれに生じたかを知ることができるので、クラッチの滑りの要因を確実に判定することができる。
【0016】
またさらに、請求項4の発明は、請求項1における前記滑り要因判定手段が、前記クラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量との少なくともいずれか一方と、所定のしきい値との比較結果に基づいて前記クラッチの滑りの要因を判定するように構成されていることを特徴とする制御装置である。
【0017】
したがって請求項4の発明では、クラッチの滑りが判定されると、クラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量とのいずれかが所定のしきい値と比較され、その比較の結果に基づいてクラッチの滑りの要因が判定される。すなわちクラッチに滑りが生じれば、その入力側と出力側とのいずれかの回転数が変化する。その変化は、トルクの変化に起因するから、例えば入力側の回転数の時間変化量がしきい値より小さければ、出力側の回転数の時間変化量が大きいことになり、出力側のトルクの変化が要因でクラッチの滑りの生じたことが判定される。反対に入力側の回転数の時間変化量がしきい値より大きければ、入力側の回転数の時間変化量が大きいことになり、入力側のトルクの変化が要因でクラッチの滑りの生じたことが判定される。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1の発明における前記滑り要因判定手段が、前記クラッチの入力側の回転数と出力側の回転数との少なくともいずれか一方の実回転数と、そのいずれか一方の回転数をローパスフィルタ処理した値との比較結果に基づいて前記クラッチの滑りの要因を判定するように構成されていることを特徴とする制御装置である。
【0019】
したがって請求項5の発明では、入力側もしくは出力側の実回転数とその回転数をローパスフィルタ処理した値とが比較される。その実回転数はクラッチの滑りにより変化し、あるいは変化しない値であり、これに対してローパスフィルタ処理した値は、クラッチの滑りが生じない場合に達成される回転数を反映した値である。そのため、上記の実回転数とローパスフィルタ処理値との比較結果は、クラッチの滑りによってその入力側あるいは出力側の回転数が変化したことを示すことになり、そのため、駆動機構の全体としての回転数が変化している場合であっても、クラッチの滑りの要因となったトルクの変化およびそれに伴う回転数の変化を判定することができる。
【0020】
さらにまた、請求項6の発明は、請求項1ないし5の発明において、前記クラッチが前記無段変速機よりも先に滑りを生じるように制御されるとともに、前記滑り要因判定手段による判定結果に基づいて、前記クラッチと無段変速機とのいずれか一方のトルク伝達容量を変更するトルク伝達容量制御手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0021】
したがって請求項6の発明では、クラッチの滑りが判定され、またそのクラッチの滑りの要因が判定されると、無段変速機に対してクラッチが先に滑りを生じるように、かつクラッチの滑りの要因に応じて、クラッチもしくは無段変速機のトルク容量が制御される。すなわち、無段変速機に滑りが生じないように、また無段変速機での動力伝達効率が低下しないように、クラッチの滑りの要因に応じた適切な対応制御が採られる。
【0022】
そして、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記クラッチが、トルクコンバータに対して並列に配置されたロックアップクラッチであることを特徴とする制御装置である。
【0023】
したがって請求項7の発明では、クラッチに滑りが生じることによりトルクコンバータでのトルク容量が増大し、結局、無段変速機の入力側に直列に配列された動力伝達機構のトルク容量が増大して無段変速機に滑りが生じやすい状態が生じるが、クラッチの滑りの要因が知られることにより適切な対応制御を採ることが可能になるので、無段変速機の滑りを未然に回避することが可能になる。
【0024】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構について説明すると、この発明は、車両に搭載される駆動機構を対象とすることができ、その駆動機構に含まれる無段変速機は、ベルトをトルク伝達部材としたベルト式の無段変速機や、パワーローラをトルク伝達部材とするとともにオイル(トラクション油)の剪断力を利用してトルクを伝達するトロイダル型(トラクション式)無段変速機である。図10には、ベルト式無段変速機1を含む車両用駆動機構の一例を模式的に示しており、この無段変速機1は、前後進切換機構2およびトルクコンバータ3を介して、動力源4に連結されている。
【0025】
その動力源4は、一般の車両に搭載されている動力源と同様のものであって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどの内燃機関や、電動機、あるいは内燃機関と電動機とを組み合わせた機構などを採用することができる。なお、以下の説明では、動力源4をエンジン4と記す。
【0026】
エンジン4の出力軸に連結されたトルクコンバータ3は、従来一般の車両で採用しているトルクコンバータと同様の構造であって、エンジン4の出力軸が連結されたフロントカバー5にポンプインペラー6が一体化されており、そのポンプインペラー6に対向するタービンランナー7が、フロントカバー5の内面に隣接して配置されている。これらのポンプインペラー6とタービンランナー7とには、多数のブレード(図示せず)が設けられており、ポンプインペラー6が回転することによりフルードの螺旋流を生じさせ、その螺旋流をタービンランナー7に送ることによりタービンランナー7にトルクを与えて回転させるようになっている。
【0027】
また、ポンプインペラー6とタービンランナー7との内周側の部分には、タービンランナー7から送り出されたフルードの流動方向を選択的に変化させてポンプインペラー6に流入させるステータ8が配置されている。このステータ8は、一方向クラッチ9を介して所定の固定部10に連結されている。
【0028】
このトルクコンバータ3は、この発明におけるクラッチに相当するロックアップクラッチ11を備えている。ロックアップクラッチ11は、ポンプインペラー6とタービンランナー7とステータ8とからなる実質的なトルクコンバータに対して並列に配置されたものであって、フロントカバー5の内面に対向した状態で前記タービンランナー7に保持されており、油圧によってフロントカバー5の内面に押し付けられることにより、入力部材であるフロントカバー5から出力部材であるタービンランナー7に直接、トルクを伝達するようになっている。なお、その油圧を制御することによりロックアップクラッチ11のトルク容量を制御できる。
【0029】
前後進切換機構2は、エンジン4の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図10に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。
【0030】
すなわち、サンギヤ12と同心円上にリングギヤ13が配置され、これらのサンギヤ12とリングギヤ13との間に、サンギヤ12に噛合したピニオンギヤ14とそのピニオンギヤ14およびリングギヤ13に噛合した他のピニオンギヤ15とが配置され、これらのピニオンギヤ14,15がキャリヤ16によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ12とキャリヤ16と)を一体的に連結する前進用クラッチ17が設けられ、またリングギヤ13を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ18が設けられている。
【0031】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリー19と従動プーリー20とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ21,22によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリー19,20の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリー19,20に巻掛けたベルト23の巻掛け半径(プーリー19,20の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリー19が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ16に連結されている。
【0032】
なお、従動プーリー20における油圧アクチュエータ22には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリー20における各シーブがベルト23を挟み付けることにより、ベルト23に張力が付与され、各プーリー19,20とベルト15との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。言い換えれば、挟圧力に応じたトルク容量が設定される。これに対して駆動プーリー19における油圧アクチュエータ21には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径)に設定するようになっている。
【0033】
無段変速機1の出力部材である従動プーリー20がギヤ対24およびディファレンシャル25に連結され、さらにそのディファレンシャル25が左右の駆動輪26に連結されている。
【0034】
上記の無段変速機1およびエンジン4を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、エンジン4の回転数(ロックアップクラッチ11の入力回転数)を検出して信号を出力するエンジン回転数センサー27、タービンランナー7の回転数(ロックアップクラッチ11の出力回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー28、駆動プーリー19の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー29、従動プーリー20の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー30などが設けられている。
【0035】
上記の前進用クラッチ17および後進用ブレーキ18の係合・解放の制御、および前記ベルト23の挟圧力の制御、ならびにロックアップクラッチ11の係合・解放を含むトルク容量の制御、さらには変速比の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)31が設けられている。この電子制御装置31は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定などの制御を実行するように構成されている。また、エンジン4を制御するエンジン用電子制御装置(E−ECU)32が設けられ、これらの電子制御装置31,32の間で相互にデータを通信するようになっている。
【0036】
つぎに上記の無段変速機1を含む駆動機構を対象としてこの発明の制御装置で実行される制御例を説明する。図1は、この発明におけるクラッチに相当するロックアップクラッチ11の入力側の回転数と出力側の回転数とに基づいてクラッチの滑りを検出し、その場合に入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量とに基づいて、滑りの要因を判定する制御例を示している。ここで、入力側の回転数は、具体的にはエンジン4の回転数Ne であり、また出力側の回転数は、具体的にはタービンランナー7の回転数Nt であり、これらは前述した各センサー27,28によって検出することができる。
【0037】
図1に示す制御例では、先ず、これらの回転数Ne ,Nt が計測される(ステップS1)。ついで、これらの回転数Ne ,Nt に基づいてクラッチの滑り判定がおこなわれる(ステップS2)。すなわち入力側のエンジン回転数Ne と出力側のタービン回転数Nt との差の絶対値が、予め定めた滑り判定の基準値(しきい値)Nslp_max 以上か否かが判断される。この基準値Nslp_max は、ゼロに近い小さい値でよいが、ロックアップクラッチ11はスリップ制御されることもあるので、スリップ制御が実行されている場合には、そのスリップ回転数(エンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との目標回転数差)より大きい値であってもよい。
【0038】
このステップS2で否定的に判断された場合には、通常の制御が実行される(ステップS3)。この通常制御とは、ロックアップクラッチ11の過剰な滑り、あるいは想定しない滑りなどのいわゆる滑りが検出されない場合には、ロックアップクラッチ11の係合圧やベルト挟圧力に余裕があると考えられるので、その余裕を低減させる制御である。具体的には、ロックアップクラッチ11の係合圧が所定圧力、低下させられ、それに伴って、ベルト挟圧力が所定値、低下させられる。その場合、ベルト23に先行してロックアップクラッチ11に滑りが生じるように、各圧力が設定される。言い換えれば、ロックアップクラッチ11のトルク容量が、無段変速機1でのトルク容量より小さくなるように制御される。
【0039】
こうすることにより、発生させるべき油圧が低く、油圧ポンプ(図示せず)で吐出させる油量が少なくなるので、油圧を発生させるために消費する動力が削減される。また無段変速機1でのベルト挟圧力が低くなることによって動力の伝達効率が向上する。その結果、車両全体としての動力損失が抑制されて燃費が向上する。
【0040】
一方、ステップS2で肯定的に判断された場合、すなわちエンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との差の絶対値が基準値Nslp_max 以上であれば、ロックアップクラッチ11で滑りが生じていることになる。この場合は、エンジン回転数Ne の時間変化量(すなわち時間微分値)ΔNe とタービン回転数Nt の時間変化量(すなわち時間微分値)ΔNt との比の絶対値が、予め定めた判定値ΔNslp 以上か否かが判断される(ステップS4)。
【0041】
車両が走行している状態でのロックアップクラッチ11の滑りの形態としては、エンジントルクが急激に増大してエンジン回転数Ne が増大することによる滑りと、駆動輪26がロックしたり、あるいはスリップ後にグリップ力を回復して回転数が急激に低下し、その結果、出力側の負トルクが増大してタービン回転数Nt が低下することによる滑りとがある。前者のエンジントルクが増大することにより滑りが生じてエンジン回転数Ne が増大すれば、その時間変化量ΔNe が、タービン回転数Nt の時間変化量ΔNt より大きくなるので、その比の絶対値が小さくなる。これとは反対に後者の出力側の負トルクが増大して滑りが生じてタービン回転数Nt が低下すれば、その時間変化量ΔNt が、エンジン回転数Ne の時間変化量ΔNe より大きくなるので、その比の絶対値が大きくなる。
【0042】
したがって上記の比率の絶対値が判定値ΔNslp より小さいことによりステップS4で否定的に判断されれば、エンジントルクが要因となってロックアップクラッチ11の滑りが生じたことの判定が成立する(ステップS5)。これに対して、上記の比率の絶対値が判定値ΔNslp 以上であることによりステップS4で肯定的に判断されれば、外乱による出力側の負トルク(外乱トルク)が要因となってロックアップクラッチ11の滑りが生じたことの判定が成立する(ステップS6)。
【0043】
このような判定のおこなわれる状況を図に示すと、図2および図3のとおりである。図2はエンジントルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じ、かつその判定がおこなわれる状況を示しており、車両が走行している状態の所定時点t1 にエンジントルクがロックアップクラッチ11のトルク容量に対して相対的に増大し、それに伴ってエンジン回転数Ne が増大し始めると、タービン回転数Nt との回転数差が次第に増大する。同時にエンジン回転数Ne の時間変化量ΔNe とタービン回転数Nt の時間変化量ΔNt との比率の絶対値が小さくなる。なお、図2は、ロックアップクラッチ11が完全に係合してその入出力回転数に差がない状態で滑りが生じた例を示している。したがって上記の比率の絶対値は、“1”より小さくなる。
【0044】
そして、エンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との回転数差の絶対値が前記基準値Nslp_max 以上になると、その時点t2 にクラッチの滑りが検出される。それに伴って各回転数Ne ,Nt の時間変化量ΔNe ,ΔNt の比率およびその絶対値に基づいてロックアップクラッチ11の滑り要因の判定がおこなわれる。図2に示す例では、上記の比率の絶対値が小さくなったことにより、エンジントルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じたことが判定される。
【0045】
これに対して図3に示す例は、出力側の外乱トルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じ、かつその判定がおこなわれる状況を示しており、車両が走行している状態の所定時点t11に出力側の負トルクがロックアップクラッチ11のトルク容量に対して相対的に増大し、それに伴ってタービン回転数Nt が低下し始めると、エンジン回転数Ne との回転数差が次第に増大する。同時にエンジン回転数Ne の時間変化量ΔNe とタービン回転数Nt の時間変化量ΔNt との比率の絶対値が大きくなる。なお、図3は、ロックアップクラッチ11が完全に係合してその入出力回転数に差がない状態で滑りが生じた例を示している。したがって上記の比率の絶対値は、“1”より大きくなる。
【0046】
そして、エンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との回転数差の絶対値が前記基準値Nslp_max 以上になると、その時点t12にクラッチの滑りが検出される。それに伴って各回転数Ne ,Nt の時間変化量ΔNe ,ΔNt の比率およびその絶対値に基づいてロックアップクラッチ11の滑り要因の判定がおこなわれる。図3に示す例では、上記の比率の絶対値が大きくなったことにより、出力側の外乱トルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じたことが判定される。
【0047】
上記のようにしてクラッチの滑りおよびその要因が判定されると、その判定結果に応じた制御が実行される。例えばステップS5においてエンジントルクが要因で滑りが生じたことが判定されると、それに対応した制御(例えばロックアップクラッチ11の油圧(L/U油圧)の昇圧制御)が実行される(ステップS7)。そして、所定時間が経過し、あるいはロックアップクラッチ11の係合圧が目的とする圧力になるなどの終了条件が成立するまで(ステップS8で肯定的に判断されるまで)、ステップS7の対応制御が継続され、終了条件が成立してステップS8で肯定的に判断されることにより、図1のルーチンが終了する。
【0048】
また、ステップS6において外乱トルクが要因で滑りが生じたことが判定されると、それに対応した制御(例えばベルト挟圧力の昇圧制御)が実行される(ステップS9)。そして、所定時間が経過し、あるいはベルト挟圧力が目的とする圧力になるなどの終了条件が成立するまで(ステップS10で肯定的に判断されるまで)、ステップS9の対応制御が継続され、終了条件が成立してステップS10で肯定的に判断されることにより、図1のルーチンが終了する。
【0049】
この発明に係る上記の制御装置によれば、図1ないし図3に示すように、無段変速機1に対してその入力側に直列に配置されたクラッチの滑りと、その滑りの要因とを検出し、あるいは判定することができる。その結果、クラッチの係合圧の昇圧や無段変速機1での挟圧力の増大など、滑りの要因に適した制御を採ることが可能になる。特に、無段変速機1に対して直列に配列したクラッチを、無段変速機1での滑りに先行して滑らせるように制御する場合、クラッチの係合圧や無段変速機1の挟圧力の余裕代(あるいは安全率)を小さくすることができるので、車両全体としての燃費を向上させることができる。その場合であっても、無段変速機1の外乱トルクによる滑りを可及的確実に防止することができる。
【0050】
つぎにこの発明の制御装置による他の制御例について説明する。前述したように、無段変速機1に対して直列に配列されているクラッチを、無段変速機1に先行して滑らせる制御を実行する場合、そのクラッチの滑りの要因となったトルクの変化は、そのトルクを受ける部材の回転数の変化として現れる。そこで上記の具体例では、入力側と出力側とのいずれの回転数が変化したかを判定するために、各回転数Ne ,Nt の時間変化量ΔNe ,ΔNt の比率の絶対値を使用することとした。これに替えて、図4に示す例は、各時間変化量ΔNe ,ΔNt のいずれか一方を使用し、これを基準値(しきい値)と比較する例である。
【0051】
具体的に説明すると、ステップS2で肯定的に判断された場合、すなわちロックアップクラッチ11の滑りが検出された場合、エンジン回転数Ne の時間変化量ΔNe が、予め定めた基準値ΔNe_slp 以下か否かが判断される(ステップS41)。このステップS41は図1に示すステップS4に替わる判断ステップであり、このステップS41で肯定的に判断された場合には、エンジントルクの変化を要因とするロックアップクラッチ11の滑りであることが判定される(ステップS5)。これとは反対にステップS41で肯定的に判断された場合には、外乱トルクによるロックアップクラッチ11の滑りであることが判定される(ステップS6)。
【0052】
ところで、ロックアップクラッチ11の滑りが生じれば、入力側のエンジン回転数Ne と出力側のタービン回転数Nt とのいずれか一方が必ず大きく変化するから、一方の回転数Ne ,Nt の時間変化量ΔNe ,ΔNt の大小を判断すれば、他方の回転数の時間変化量ΔNe ,ΔNt をも併せて判断したのと同じ結果になる。したがって図4に示すステップS41で、タービン回転数Nt の時間変化量ΔNt について判断してもよく、その場合は、“イエス”、“ノー”の判断結果による判定の内容が図4に示すのとは反対になる。
【0053】
なお、図4における他のステップの内容は、図1に示す例と同様であり、したがって図4に図1と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図4に示す制御例によってロックアップクラッチ11の滑り検出およびその滑りの要因の判定をおこなった場合の状況を図5および図6に示してある。図5はエンジントルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じ、かつその判定がおこなわれる状況を示しており、車両が走行している状態の所定時点t21にエンジントルクがロックアップクラッチ11のトルク容量に対して相対的に増大し、それに伴ってエンジン回転数Ne が増大し始めると、タービン回転数Nt との回転数差が次第に増大する。同時にエンジン回転数Ne の時間変化量ΔNe が大きくなる。なお、図5は、ロックアップクラッチ11が完全に係合してその入出力回転数に差がない状態で滑りが生じた例を示している。
【0055】
そして、エンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との回転数差の絶対値が前記基準値Nslp_max 以上になると、その時点t22にクラッチの滑りが検出される。それに伴ってエンジン回転数Ne の時間変化量ΔNe に基づいてロックアップクラッチ11の滑り要因の判定がおこなわれる。図5に示す例では、エンジン回転数Ne の時間変化量ΔNe が基準値ΔNe_slp 以上になったことにより、エンジントルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じたことが判定される。
【0056】
これに対して図6に示す例は、出力側の外乱トルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じ、かつその判定がおこなわれる状況を示しており、車両が走行している状態の所定時点t31に出力側の負トルクがロックアップクラッチ11のトルク容量に対して相対的に増大し、それに伴ってタービン回転数Nt が低下し始めると、エンジン回転数Ne との回転数差が次第に増大する。同時にタービン回転数Nt の時間変化量ΔNt が低下する。なお、図6は、ロックアップクラッチ11が完全に係合してその入出力回転数に差がない状態で滑りが生じた例を示している。
【0057】
そして、エンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との回転数差の絶対値が前記基準値Nslp_max 以上になると、その時点t32にクラッチの滑りが検出される。それに伴ってタービン回転数Nt の時間変化量ΔNt に基づいてロックアップクラッチ11の滑り要因の判定がおこなわれる。図6に示す例では、タービン回転数Nt の時間変化量ΔNt が基準値ΔNe_slp より小さくなったことにより、出力側の外乱トルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じたことが判定される。
【0058】
ところで、車両の走行状態は様々であってエンジン回転数Ne やタービン回転数Nt が時々刻々変化することがあり、またその変化の態様も一定ではない。したがってこれらの車両の走行状態を反映した制御をおこなって滑りの要因の誤判定を防止するために、上記の判定の基準値ΔNe_slp を車両の加減速度やアクセル開度(図示しないアクセルペダルの踏み込み量)などに応じて変化する値としてもよい。あるいはクラッチの滑りが生じなかったと仮定した場合の車両の状態を推定して得られる値もしくはクラッチの滑りが生じなかった場合の車両の状態を反映した値をもってクラッチの滑りの要因を判定するように構成することもできる。その例を図7に示してある。
【0059】
図7はロックアップクラッチ11の滑りが検出された場合に、エンジン4の実回転数Ne とそのエンジン回転数Ne をローパスフィルタ処理した値とを比較して滑りの要因を判定するように構成した例である。すなわち、各回転数Ne ,Nt が計測(ステップS1)された後、エンジン回転数Ne をローパスフィルタ処理した値Ne_f (=F_lo(Ne ))が求められる(ステップS11)。ついでロックアップクラッチ11の滑りが判断され(ステップS2)、ロックアップクラッチ11の滑りが検出された場合(ステップS2で肯定的に判断された場合)、実際のエンジン回転数Ne がローパスフィルタ処理値Ne_f 以下か否かが判断される(ステップS42)。
【0060】
前述したようにロックアップクラッチ11の滑りが生じれば、エンジン回転数Ne とタービン回転数Nt とのいずれか一方の回転数が大きく変化する。より具体的には、無段変速機1に対してロックアップクラッチ11が先に滑るように制御して走行している状態では、そのロックアップクラッチ11に滑りが生じた場合、エンジン回転数Ne が大きく増大するか、タービン回転数Nt が大きく低下するかのいずれかの挙動変化が生じる。
【0061】
そして、前者の場合にはエンジン回転数Ne の増大につられてタービン回転数Nt がわずか上昇し、また後者の場合にはタービン回転数Nt の低下につられてエンジン回転数Ne がわずか低下する。結局、ロックアップクラッチ11のスリップ時における回転数Ne ,Nt の上昇は、エンジントルクが要因となり、反対に回転数Ne ,Nt の低下は、出力側の外乱トルクが要因となる。これに対してエンジン回転数Ne のローパスフィルタ処理値Ne_f は、ロックアップクラッチ11の滑りが生じない場合のエンジン回転数Ne もしくはこれに近似する回転数に相当する値となる。
【0062】
したがってステップS42で否定的に判断されたこと、すなわち実エンジン回転数Ne がローパスフィルタ処理値Ne_f より大きくなっていることは、エンジントルクの増大によってエンジン回転数Ne が上昇したこと意味している。そのため、この場合には、ステップS5に進んでエンジントルクが要因となって滑りが生じたことが判定される。これとは反対にステップS42で肯定的に判断されたこと、すなわち実エンジン回転数Ne がローパスフィルタ処理値Ne_f 以下に低下していることは、ロックアップクラッチ11の出力側の外乱トルクの増大によってタービン回転数Nt が低下し、それにつられてエンジン回転数Ne が低下したこと意味している。そのため、この場合には、ステップS6に進んで外乱トルクが要因となって滑りが生じたことが判定される。
【0063】
このような滑りの要因の判定の状況を図8および図9に示してある。図8はエンジントルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じ、かつその判定がおこなわれる状況を示しており、車両が走行している状態の所定時点t41にエンジントルクがロックアップクラッチ11のトルク容量に対して相対的に増大し、それに伴ってエンジン回転数Ne が増大し始めると、タービン回転数Nt も増大するものの両者の回転数差が次第に増大する。なお、図8は、ロックアップクラッチ11が完全に係合してその入出力回転数に差がない状態で滑りが生じた例を示している。
【0064】
そして、エンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との回転数差の絶対値が前記基準値Nslp_max 以上になると、その時点t42にクラッチの滑りが検出される。これと同時にエンジン回転数Ne に基づいてロックアップクラッチ11の滑り要因の判定がおこなわれる。図8に示す例では、エンジン回転数Ne がそのローパスフィルタ処理値Ne_f より大きいことにより、エンジントルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じたことが判定される。
【0065】
これに対して図9に示す例は、出力側の外乱トルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じ、かつその判定がおこなわれる状況を示しており、車両が走行している状態の所定時点t51に出力側の負トルクがロックアップクラッチ11のトルク容量に対して相対的に増大し、それに伴ってタービン回転数Nt が低下し始めると、それに伴ってエンジン回転数Ne も低下するものの両者の回転数差が次第に増大する。なお、図9は、ロックアップクラッチ11が完全に係合してその入出力回転数に差がない状態で滑りが生じた例を示している。
【0066】
そして、エンジン回転数Ne とタービン回転数Nt との回転数差の絶対値が前記基準値Nslp_max 以上になると、その時点t52にクラッチの滑りが検出される。これと同時にエンジン回転数Ne に基づいてロックアップクラッチ11の滑り要因の判定がおこなわれる。図9に示す例では、エンジン回転数Ne がそのローパスフィルタ処理値Ne_f より小さいことにより、出力側の外乱トルクが要因でロックアップクラッチ11の滑りが生じたことが判定される。
【0067】
なお、図7に示す他のステップでの制御の内容は、図1あるいは図4に示すものと同様であるから、図7に同様の符号を付してその説明を省略する。
【0068】
したがって図7に示す制御を実行するように構成した場合であっても、ロックアップクラッチ11の滑りの要因を判定することができるので、クラッチの係合圧の昇圧や無段変速機1での挟圧力の増大など、滑りの要因に適した制御を採ることが可能になる。特に、無段変速機1に対して直列に配列したクラッチを、無段変速機1での滑りに先行して滑らせるように制御する場合、クラッチの係合圧や無段変速機1の挟圧力の余裕代(あるいは安全率)を小さくすることができるので、車両全体としての燃費を向上させることができる。その場合であっても、無段変速機1の外乱トルクによる滑りを可及的確実に防止することができる。
【0069】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、上述したステップS2の機能的手段が、この発明の滑り検出手段に相当し、またステップS4,S41,S41,S5,S6の機能的手段が、この発明の滑り要因判定手段に相当する。さらに上述したステップS3,S7,S9の機能的手段が、この発明のトルク伝達容量制御手段に相当する。
【0070】
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、この発明におけるクラッチは、上記のロックアップクラッチ11以外のクラッチであってよく、要は、無段変速機に対して直列に配列され、無段変速機に先行して滑りが生じるように制御されるクラッチであればよい。また、この発明における入力側の回転数は、クラッチに対する入力側の回転数であればよいのであって、上記のエンジン回転数に限定されない。同様に、出力側の回転数も、要は、クラッチの出力側の回転数であればよいのであって、タービン回転数に限定されない。さらに、この発明における回転数の時間変化量は、回転数の微分値以外に差分値であっもよく、要は、所定の単位時間内での変化量であればよい。そして、この発明におけるローパスフィルタ処理値は、いわゆるなまし処理を施した値と同義である。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、無段変速機に対して直列に配置されたクラッチに滑りが生じると、その滑りの要因が明らかになるので、無段変速機での伝達トルク容量を増大させ、あるいは動力源の出力トルクを制御するなど、適切な対応制御を採ることが可能になり、ひいては車両の燃費を悪化させることなく、無段変速機での滑りやそれに起因する損傷を未然に防止することができる。
【0072】
また、請求項2の発明によれば、クラッチの滑りが判定された場合、その際のクラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量とのいずれかもしくは両方に基づいて、クラッチの滑りの要因が判定されるので、クラッチの滑りの要因の判定が正確なものとなり、その結果、請求項1の発明と同様に、クラッチの滑りに対する適切な対応制御を採ることが可能になり、ひいては車両の燃費を悪化させることなく、無段変速機での滑りやそれに起因する損傷を未然に防止することができる。
【0073】
これに対して、請求項3の発明によれば、クラッチの滑りの要因を確実に判定することができるので、請求項1あるいは2の発明と同様に、クラッチの滑りに対する適切な対応制御を採ることが可能になり、ひいては車両の燃費を悪化させることなく、無段変速機での滑りやそれに起因する損傷を未然に防止することができる。
【0074】
またさらに、請求項4の発明によれば、クラッチの滑りの要因を確実に判定することができるので、請求項1ないし3の発明と同様に、クラッチの滑りに対する適切な対応制御を採ることが可能になり、ひいては車両の燃費を悪化させることなく、無段変速機での滑りやそれに起因する損傷を未然に防止することができる。
【0075】
そして請求項5の発明によれば、駆動機構の全体としての回転数が変化している場合であっても、クラッチの滑りの要因となったトルクの変化およびそれに伴う回転数の変化を判定し、それに基づいて、クラッチの滑りの要因を確実に判定することができるので、請求項1ないし4の発明と同様に、クラッチの滑りに対する適切な対応制御を採ることが可能になり、ひいては車両の燃費を悪化させることなく、無段変速機での滑りやそれに起因する損傷を未然に防止することができる。
【0076】
さらにまた、請求項6の発明によれば、クラッチの滑りが判定され、またそのクラッチの滑りの要因が判定されると、無段変速機に対してクラッチが先に滑りを生じるように、かつクラッチの滑りの要因に応じて、クラッチもしくは無段変速機のトルク容量が制御されるので、無段変速機に滑りが生じないように、また無段変速機での動力伝達効率が低下しないように、クラッチの滑りの要因に応じた適切な対応制御を採ることができ、ひいては車両の燃費を悪化させることなく、無段変速機での滑りやそれに起因する損傷を未然に防止することができる。
【0077】
そして、請求項7の発明によれば、クラッチに滑りが生じることによりトルクコンバータでのトルク容量が増大し、結局、無段変速機の入力側に直列に配列された動力伝達機構のトルク容量が増大して無段変速機に滑りが生じやすい状態が生じるが、クラッチの滑りの要因が知られることにより適切な対応制御を採ることが可能になるので、無段変速機の滑りを未然に回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図2】 図1に示す制御で、エンジントルクが要因となった滑りの判定の状況を説明するためのタイムチャートである。
【図3】 図1に示す制御で、外乱トルクが要因となった滑りの判定の状況を説明するためのタイムチャートである。
【図4】 この発明の制御装置による制御の他の例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図5】 図4に示す制御で、エンジントルクが要因となった滑りの判定の状況を説明するためのタイムチャートである。
【図6】 図4に示す制御で、外乱トルクが要因となった滑りの判定の状況を説明するためのタイムチャートである。
【図7】 この発明の制御装置による制御の更に他の例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図8】 図7に示す制御で、エンジントルクが要因となった滑りの判定の状況を説明するためのタイムチャートである。
【図9】 図7に示す制御で、外乱トルクが要因となった滑りの判定の状況を説明するためのタイムチャートである。
【図10】 この発明に係る無段変速機を含む駆動機構を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 3…トルクコンバータ、 4…エンジン(動力源)、 11…ロックアップクラッチ、 19…駆動プーリー、 20…従動プーリー、 23…ベルト、 26…駆動輪、 31…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)。
Claims (7)
- 回転部材とトルク伝達部材とをトルク伝達可能に直接もしくは間接的に接触させ、その接触圧力に応じてトルク容量が変化する無段変速機が動力源の出力側に配置され、摩擦力によってトルクを伝達するクラッチがその無段変速機に対してトルクの伝達方向で直列に配置された無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、
前記クラッチの滑りを検出する滑り検出手段と、
その滑り検出手段によって前記クラッチの滑りが検出された場合に、その滑りが前記動力源のトルクの変化に起因する滑りか、あるいは前記クラッチの出力側のトルクの変化に起因する滑りかを判定する滑り要因判定手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機を含む駆動機構の制御装置。 - 前記滑り要因判定手段は、前記クラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量との少なくともいずれか一方に基づいて前記クラッチの滑りの要因を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機を含む駆動機構の制御装置。
- 前記滑り要因判定手段は、前記クラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量との比率に基づいて前記クラッチの滑りの要因を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機を含む駆動機構の制御装置。
- 前記滑り要因判定手段は、前記クラッチの入力側の回転数の時間変化量と出力側の回転数の時間変化量との少なくともいずれか一方と、所定のしきい値との比較結果に基づいて前記クラッチの滑りの要因を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機を含む駆動機構の制御装置。
- 前記滑り要因判定手段は、前記クラッチの入力側の回転数と出力側の回転数との少なくともいずれか一方の実回転数と、そのいずれか一方の回転数をローパスフィルタ処理した値との比較結果に基づいて前記クラッチの滑りの要因を判定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機を含む駆動機構の制御装置。
- 前記クラッチが前記無段変速機よりも先に滑りを生じるように制御されるとともに、前記滑り要因判定手段による判定結果に基づいて、前記クラッチと無段変速機とのいずれか一方のトルク伝達容量を変更するトルク伝達容量制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の無段変速機を含む駆動機構の制御装置。
- 前記クラッチは、トルクコンバータに対して並列に配置されたロックアップクラッチであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の無段変速機を含む駆動機構の制御装置。
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