JP4314769B2 - 駆動機構の滑り検出装置 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、入力回転数と出力回転数とを所定の比率もしくは回転数差となるように相違させることができ、またトルクの作用の仕方によっては滑りの生じる無段変速機やロックアップクラッチなどの伝動手段を含む駆動機構の制御装置に関し、特にその駆動機構での滑りを検出するための制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ベルト式無段変速機あるいはトラクション式(トロイダル型)無段変速機や摩擦クラッチなどの噛み合いに依らないでトルクを伝達する伝動手段では、その伝達トルク(もしくはトルク容量)を超えてトルクが作用することにより、滑りが生じることがある。なお、発進クラッチやロックアップクラッチなどでは、発進時などの特定の状況で積極的にスリップ状態に制御することがある。上記の伝動手段を含む駆動機構もしくは変速機で意図しない滑りが生じると、動力の伝達効率が低下したり、あるいは耐久性が損なわれたりし、特に無段変速機では、トルク伝達面の摩耗あるいは損傷により、使用できない事態に到る場合もある。
【0003】
また一方、無段変速機や摩擦クラッチなどの伝動手段の伝達トルクは、その挟圧力や係合圧を高くすることにより増大させることができる。例えばベルト式無段変速機では、プーリーがベルトを挟み付ける挟圧力を高くすることにより、また摩擦クラッチでは、その摩擦板を押し付ける係合力を高くすることにより、その伝達トルクが大きくなる。しかしながら、そのためには高い油圧を発生させる必要があるので、そのための動力が燃費の悪化要因となり、また無段変速機では挟圧力がある程度以上に高くなると動力の伝達効率が低下し、そのために燃費が悪化することがある。
【0004】
そのため、上記の伝動手段に過剰な滑りが発生しない範囲で、挟圧力や係合圧を可及的に低い圧力に設定することが望まれる。しかしながら、駆動機構に作用するトルクが常時、一定とはならないので、挟圧力や係合圧によって定まる伝達トルクを超えるトルクが駆動機構に作用し、その結果、伝動手段に滑りが生じることがあり、その場合には、直ちに滑りを検出して所定の対応制御を採る必要がある。
【0005】
そこで、例えば特開平6−11022号公報に記載された発明では、ベルト式無段変速機を対象として、実変速比を入力回転数と出力回転数とに基づいて計算するとともに、その実変速比の変化率を演算して求め、また一方、その変速比と、エンジン回転数と、スロットル開度と、変速制御弁の制御量とに基づいて理論変速変化率を求め、これら実変速比変化率と理論変速変化率とを比較して、無段変速機での滑りを検出し、その検出結果に基づいてライン圧を増大させるように構成されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
駆動機構での滑りは、基本的には、入力回転数もしくは出力回転数あるいはこれらの回転数差と、所定の基準値とを比較することにより検出することができる。その入力回転数や出力回転数あるいはその回転数差は、駆動機構の実際の動作状態を示すものであり、上記の公報に記載された発明では、実変速比変化率がこれに相当する。これに対していわゆる基準値は、駆動機構の本来あるべき動作状態を示すものであり、駆動機構に過剰な滑りあるいは意図しない滑りが生じていない動作状態で検出することのできる指標である。言い換えれば、滑りを判定もしくは検出する必要がある場合には、駆動機構の動作状態が、あるべき状態から既に外れているので、滑りの生じている状態の駆動機構から基準値を得ることができない。そこで、上記の公報に記載された発明では、その基準値となる指標として理論変速変化率を採用している。
【0007】
しかしながら、その理論変速変化率は、変速比と、エンジン回転数と、スロットル開度と、変速制御弁の制御量とに基づいて求める値であるから、その算出の基礎となるデータのばらつきの影響を受け易い。またスロットル開度や変速制御弁制御量などは、制御機器の個体差や経時変化などの変動要因が大きいために、これが誤差となって現れやすい。このように理論変速変化率を使用する場合には、その誤差を見込む必要があるので、実変速比変化率との比較結果から滑りを判定する場合のしきい値を大きくすることになる。そのために、比較的大きい滑りが生じて、初めてその滑りが検出されることになり、検出精度を改善する余地がある。
【0008】
この発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであり、駆動機構での滑りの検出精度を向上させることを目的とするものである。
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、入力回転数と出力回転数との回転数差を設定できかつ滑りによって回転数差が変化する伝動機構を有し、その伝動機構が動力源に連結されている駆動機構の滑りを、前記伝動機構の入力回転数と前記伝動機構の出力回転数とこれらの回転数差に関連する回転数差関連値とに基づいて検出する駆動機構の滑り検出装置において、前記回転数差関連値の変化量を評価する評価手段と、その評価手段による前記回転数差関連値の評価結果に応じて、前記滑りを検出する時点の回転数差関連値とそれより以前に得られた回転数差関連値とのいずれかを選択し、かつその選択された回転数差関連値と、前記動力源の回転数と、前記伝動機構の出力回転数とに基づいて前記駆動機構の滑りを判定する滑り判定手段とを備えていることを特徴とする滑り検出装置である。
【0012】
したがって請求項1の発明では、回転数差関連値の変化量が評価され、その評価の結果に基づいて、その時点の回転数差関連値あるいはそれより以前の回転数差関連値が選択され、その選択された回転数差関連値を使用して滑りが判定される。例えば回転数差関連値の変化量が大きい場合にはそれ以前の回転数差関連値が選択され、また反対に回転数差関連値の変化量が小さい場合には、その時点の回転数差関連値が選択される。そのため、外乱を排除した状態で駆動機構の実情を可及的正確に表しているデータを使用して滑りを判定することになるので、駆動機構の実情に即した正確な滑りの判定がおこなわれる。なお、その回転数差関連値は、例えば入力回転数と出力回転数との差、入力回転数と出力回転数との比率もしくは変速比である。
【0015】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構について説明すると、この発明は、車両に搭載される駆動機構を対象とすることができ、その駆動機構に含まれる無段変速機は、ベルトをトルク伝達部材としたベルト式の無段変速機や、パワーローラをトルク伝達部材とするとともにオイル(トラクション油)のせん断力を利用してトルクを伝達するトロイダル型(トラクション式)無段変速機である。図7には、ベルト式無段変速機1を含む車両用駆動機構の一例を模式的に示しており、この無段変速機1は、前後進切換機構2およびトルクコンバータ3を介して、動力源4に連結されている。
【0016】
その動力源4は、一般の車両に搭載されている動力源と同様のものであって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいは天然ガスエンジンなどの内燃機関や、電動機、あるいは内燃機関と電動機とを組み合わせた機構などを採用することができる。なお、以下の説明では、動力源4をエンジン4と記す。
【0017】
エンジン4の出力軸に連結されたトルクコンバータ3は、従来一般の車両で採用しているトルクコンバータと同様の構造であって、エンジン4の出力軸が連結されたフロントカバー5にポンプインペラー6が一体化されており、そのポンプインペラー6に対向するタービンランナー7が、フロントカバー5の内面に隣接して配置されている。これらのポンプインペラー6とタービンランナー7とには、多数のブレード(図示せず)が設けられており、ポンプインペラー6が回転することによりフルードの螺旋流を生じさせ、その螺旋流をタービンランナー7に送ることによりタービンランナー7にトルクを与えて回転させるようになっている。
【0018】
また、ポンプインペラー6とタービンランナー7との内周側の部分には、タービンランナー7から送り出されたフルードの流動方向を選択的に変化させてポンプインペラー6に流入させるステータ8が配置されている。このステータ8は、一方向クラッチ9を介して所定の固定部10に連結されている。
【0019】
このトルクコンバータ3は、ロックアップクラッチ11を備えている。ロックアップクラッチ11は、ポンプインペラー6とタービンランナー7とステータ8とからなる実質的なトルクコンバータに対して並列に配置されたものであって、フロントカバー5の内面に対向した状態で前記タービンランナー7に保持されており、油圧によってフロントカバー5の内面に押し付けられることにより、入力部材であるフロントカバー5から出力部材であるタービンランナー7に直接、トルクを伝達するようになっている。なお、その油圧を制御することによりロックアップクラッチ11のトルク容量を制御できる。
【0020】
前後進切換機構2は、エンジン4の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図7に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。
【0021】
すなわち、サンギヤ12と同心円上にリングギヤ13が配置され、これらのサンギヤ12とリングギヤ13との間に、サンギヤ12に噛合したピニオンギヤ14とそのピニオンギヤ14およびリングギヤ13に噛合した他のピニオンギヤ15とが配置され、これらのピニオンギヤ14,15がキャリヤ16によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ12とキャリヤ16と)を一体的に連結する前進用クラッチ17が設けられ、またリングギヤ13を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ18が設けられている。
【0022】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリー19と従動プーリー20とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ21,22によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリー19,20の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリー19,20に巻掛けたベルト23の巻掛け半径(プーリー19,20の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリー19が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ16に連結されている。
【0023】
なお、従動プーリー20における油圧アクチュエータ22には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリー20における各シーブがベルト23を挟み付けることにより、ベルト23に張力が付与され、各プーリー19,20とベルト15との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。言い換えれば、挟圧力に応じたトルク容量が設定される。これに対して駆動プーリー19における油圧アクチュエータ21には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径)に設定するようになっている。
【0024】
無段変速機1の出力部材である従動プーリー20がギヤ対24およびディファレンシャル25に連結され、さらにそのディファレンシャル25が左右の駆動輪26に連結されている。
【0025】
上記の無段変速機1およびエンジン4を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、エンジン4の回転数(ロックアップクラッチ11の入力回転数)Ne を検出して信号を出力するエンジン回転数センサー27、タービンランナー7の回転数(ロックアップクラッチ11の出力回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー28、駆動プーリー19の回転数Ninを検出して信号を出力する入力回転数センサー29、従動プーリー20の回転数Nout を検出して信号を出力する出力回転数センサー30などが設けられている。
【0026】
上記の前進用クラッチ17および後進用ブレーキ18の係合・解放の制御、および前記ベルト23の挟圧力の制御、ならびにロックアップクラッチ11の係合・解放を含むトルク容量の制御、さらには変速比の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)31が設けられている。この電子制御装置31は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定などの制御を実行するように構成されている。また、エンジン4を制御するエンジン用電子制御装置(E−ECU)32が設けられ、これらの電子制御装置31,32の間で相互にデータを通信するようになっている。
【0027】
この発明に係る制御装置は、一例として、上記の無段変速機1におけるベルト23の滑りを検出するよう構成することができ、その制御例を図1にフローチャートで示してある。図1において、先ず、エンジン回転数Ne 、無段変速機1における駆動プーリー19の回転数すなわち入力回転数Nin、ならびに無段変速機1における従動プーリー20の回転数すなわち出力回転数Nout が計測される(ステップS1)。言い換えれば、これらの回転数を検出する前記各センサー27,29,30の検出値が読み込まれる。
【0028】
その入力回転数Ninと出力回転数Nout との比率である変速比γが、この発明における回転数差関連値に相当しており、逐次計測されている入力回転数Ninと出力回転数Nout とから変速比が演算されている。そして、その入力回転数Ninと出力回転数Nout との変化の状態に応じて変速比γの推定値γ_preが演算される。
【0029】
ついで、駆動機構の入力回転数であるエンジン回転数Ne と、出力回転数Nout に上記の変速比推定値γ_preを掛けた値とが比較される(ステップS2)。なお、この出力回転数Nout と変速比推定値γ_preとの積は、ロックアップクラッチ11に滑りがないと仮定した場合の入力回転数Ninに相当する。また、両者の比較は、エンジン回転数Neから前記積を減算し、その差の絶対値が予め定めたしきい値Slp_jdgより大きいか否かを判断することによりおこなわれる。なお、このしきい値Slp_jdgは、一定値であってもよいが、車両の加減速度あるいはアクセル開度などの車両の運転条件に応じて変化する変数(マップ値)とすることができる。
【0030】
駆動機構に滑りが生じていない状態では、その入力回転数であるエンジン回転数Ne と出力回転数Nout との比率は、無段変速機1で設定されている変速比γに一致するから、上記の差の絶対値は、ゼロもしくはしきい値Slp_jdg以下となる。したがって、その差の絶対値がしきい値Slp_jdgより大きいことによりステップS2で肯定的に判断された場合には、駆動機構に滑りが生じていることになる。言い換えれば、滑りの判定が成立する。
【0031】
その場合には、滑りの発生部位が、ロックアップクラッチ11か、無段変速機1かを判定するために、エンジン回転数Ne と入力回転数Nin(すなわちトルクコンバータ3の出力回転数)との差の絶対値が、ベルト滑り判定値Slp_bltより小さいか否かが判断される(ステップS3)。このベルト滑り判定値Slp_bltは、一定値であってもよいが、車両の加減速度あるいはアクセル開度などの車両の運転条件やロックアップクラッチ11のスリップ制御の状況に応じて変化する変数(マップ値)とすることができる。
【0032】
ロックアップクラッチ11が完全に係合している場合、あるいはスリップ制御されている場合、エンジン回転数Ne と入力回転数Ninとの回転数差は、ゼロもしくはスリップ制御でのスリップ回転数以下であるから、上記のベルト滑り判定値Slp_bltより小さい値となる。したがってステップS3で肯定的に判断された場合には、駆動機構の全体としては過剰もしくは意図しない滑りが生じているにもかかわらず、ロックアップクラッチ11での過剰もしくは意図しない滑りが生じていないことになるから、結局は、無段変速機1のベルト23が滑っていることになる。そのため、この場合はベルト23の滑りの判定がおこなわれる(ステップS4)。
【0033】
そして、ベルト23の滑りに対応した制御が実行される(ステップS5)。この対応制御の一例は、無段変速機1における従動プーリー20の油圧アクチュエータ22に供給する油圧を高くしてベルト23の挟圧力を増大させる制御であり、あるいはこれとは別に、もしくは並行してエンジントルクを低下させる制御などである。
【0034】
一方、ステップS3で否定的に判断された場合には、駆動機構の全体としては過剰もしくは意図しない滑りが生じている状況の下で、ロックアップクラッチ11に幾分なりとも滑りが生じていることになる。この場合は、無段変速機1で過剰もしくは意図しない滑りが生じているか否かが判断される(ステップS6)。具体的には、入力回転数Ninと、出力回転数Nout に変速比推定値γ_preを掛けた積との差の絶対値が、クラッチ滑り判定値Slp_lu より小さいか否かが判断される。このクラッチ滑り判定値Slp_lu は、一定値であってもよいが、車両の加減速度あるいはアクセル開度などの車両の運転条件に応じて変化する変数(マップ値)とすることができる。
【0035】
無段変速機1における入力回転数Ninと出力回転数Nout との比は、過剰な滑りが生じていない場合には、変速比にほぼ一致する。したがって無段変速機1に滑りが生じていない場合には、上記の差の絶対値がクラッチ滑り判定値Slp_lu より小さくなり、ステップS6で肯定的に判断される。この場合、駆動機構の全体として過剰もしくは意図しない滑りが生じており、かつロックアップクラッチ11での滑りが検出されている状態で、無段変速機1に滑りが生じていないことになるので、結局、ロックアップ(LU)クラッチ11の滑りが判定される(ステップS7)。
【0036】
そして、ロックアップクラッチ11の過剰もしくは意図しない滑りに対応する制御が実行される(ステップS8)。例えば、ロックアップクラッチ11を係合させる圧力(係合圧)を増大する制御が実行される。
【0037】
また一方、ステップS6で否定的に判断された場合には、出力回転数Noutに推定値γ_preを掛けた値が入力回転数Ninに対して大きくずれていて無段変速機1でベルト23の滑りが生じていることになる。すなわち、駆動機構の全体として過剰もしくは意図しない滑りが検出され、しかもロックアップクラッチ11および無段変速機1の両方で過剰もしくは意図しない滑りが生じていることが検出されたことになる。そのため、ベルト23とロックアップクラッチ11との両方での滑りが判定される(ステップS9)。
【0038】
この場合には、ベルト23とロックアップクラッチ11との両方の滑りに対応した制御が実行される(ステップS10)。例えば、無段変速機1におけるベルト挟圧力とロックアップクラッチ11の係合圧との両方が昇圧され、これとは別に、もしくはこれと並行してエンジントルクを低下させる制御が実行される。その場合、ベルト挟圧力を先に昇圧し、その後にロックアップクラッチ11の係合圧を昇圧する。ロックアップクラッチ11をいわゆるトルクヒューズとして機能させて、無段変速機1に滑りを生じさせないようにするためである。
【0039】
なお、駆動機構の全体として過剰もしくは意図しない滑りが生じていないことによりステップS2で否定的に判断された場合には、外乱のない状態であるから、入力回転数Ninと出力回転数Nout とから変速比γ_calおよびその変化量Δγ_calが演算される(ステップS11)。ついで、演算された上記の変速比γ_calおよびその変化量Δγ_calから変速比推定値γ_preが算出される(ステップS12)。これらステップS11およびステップS12は、図1に示すルーチンが所定時間毎に繰り返し実行されることにより、上記の変速比γ_calおよびその変化量Δγ_calならびに変速比推定値γ_preが逐次求められ、必要に応じて所定回数、以前のデータが保持される。
【0040】
外乱によって出力側の負トルクが増大した場合に上記の制御で滑りを判定した例を、図2にタイムチャートで示してある。車両がゆっくりと減速している際の所定時点t1 に外乱によって駆動輪26側の負トルクが増大し、それに伴って駆動機構に滑りが生じると、出力回転数Nout が低下し、エンジン回転数Ne との差が拡大する。その結果、出力回転数Nout に変速比推定値γ_preを掛けた値と、エンジン回転数Ne との差が、しきい値Slp_jdgを超えた時点t2 で滑りの判定が成立する。
【0041】
その場合、無段変速機1に対してトルクの伝達方向で上流側に設けられているロックアップクラッチ11に滑りが生じると、無段変速機1の全体としての回転数が低下するので、無段変速機1の入力回転数Ninが図2に破線で示すように、出力回転数Nout につられて低下する。これに対してベルト23の滑りが原因で駆動機構の滑りが判定された場合には、エンジン回転数Ne と入力回転数Ninとの差が小さくなる。
【0042】
さらに、ロックアップクラッチ11とベルト23との両方に滑りが生じている場合には、入力回転数Ninはエンジン回転数Ne と出力回転数Noutに変速比推定値γ_preを掛けた値との中間程度の回転数になる。したがって図2に領域を分けて記載してあるように、入力回転数Ninエンジン回転数Ne に対してどの程度低下しているかによって滑りの部位を判定することができる。図1に示す制御例では、その滑りの部位の判定結果に基づいて対応制御を実行するように構成されている。
【0043】
したがって図1に示す制御を実行するこの発明の制御装置によれば、ロックアップクラッチ11や無段変速機1を含む駆動機構の滑りを、駆動機構の入力回転数であるエンジン回転数Ne と、駆動機構の出力回転数に相当する無段変速機1の出力回転数Nout と、無段変速機1の入出力回転数Nin,Nout から求められる変速比推定値γ_preとに基づいて判定する。すなわち、無段変速機1の滑りの判定に使用されるデータは、駆動機構の実際の動作状態を示しているデータであるから、駆動機構に個体差や経時変化などがあっても、それらを反映したデータに基づいて滑りを判定することになる。そのため、この発明に係る上記の制御装置では、駆動機構の滑りを迅速に、あるいは正確に検出することができる。
【0044】
また、図1および図2に示す制御例では、無段変速機1に対して直列に配列されたロックアップクラッチ11を備えた駆動機構を対象にしている。そして、その駆動機構の全体としての滑りが判定された場合に、そのロックアップクラッチ11と無段変速機1との中間の回転数、言い換えれば、ロックアップクラッチ11の出力回転数でありかつ無段変速機1の入力回転数Ninである値を、判定(もしくは評価)するように構成してある。そのため、共に滑りの可能性のあるロックアップクラッチ11と無段変速機1とのいずれで滑りが生じたかを判定することができ、その判定の結果に基づいて、駆動機構の滑りに対応した適切な制御を採ることが可能になる。
【0045】
つぎにこの発明の制御装置による他の制御例を図3を参照して説明する。この図3に示す例は、変速比が外乱によって大きく変化した場合に、その外乱の影響を排除もしくは抑制するように構成した例である。
【0046】
図3において、先ず、エンジン回転数Ne および無段変速機1の入出力回転数Nin,Nout が計測される(ステップS21)。これは、図1に示す制御例のステップS1と同様である。ついでその入出力回転数Nin,Nout に基づいて変速比γ_cal(=Nin/Nout )が算出される(ステップS22)。図3に示すルーチンは、所定の短い時間毎に繰り返し実行されており、したがってその時間間隔毎の変速比γ_calが算出され、保持されている。
【0047】
現在時点で算出された変速比γ_calと、それより1サイクル前に算出された変速比の変化量Δγ_calの絶対値が、予め定められた評価基準値Δγ_slpで評価される(ステップS23)。すなわちその変化量Δγ_calの絶対値が評価基準値Δγ_slpより大きいか否かを判定して変速比γが大きく変化したか否かが判断される。
【0048】
このステップS23で肯定的に判断された場合には、変速比の変化が大きく、外乱の影響が大きいものと考えられるので、滑りの判定に使用する変速比γ_slpとして、1サイクル前に算出された変速比γ_cal(i-1) が採用される(ステップS24)。これに対してステップS23で否定的に判断された場合に、変速比の変化量が小さく、変速比が安定していることになるので、その時点の変速比γ_cal(i) が滑りの判定に使用する変速比γ_slpとして採用される(ステップS25)。
【0049】
そして、その滑り判定用の変速比γ_slpを使用して駆動機構の滑りが判定される(ステップS26)。具体的には、駆動機構の入力回転数であるエンジン回転数Ne と、出力回転数Nout に上記の変速比γ_slpを掛けた値とが比較される。すなわちこれらの差の絶対値が予め定めたしきい値Slp_jdgより大きいか否かが判断される。この判断ステップは、出力回転数Nout に掛け合わせる値が、変速比推定値γ_preと、その時点もしくは1サイクル前の変速比γ_calとの違いがあるが、滑り判定の手法としては前述した図1に示すステップS2と実質的には同じである。
【0050】
このステップS26で肯定的に判断されると、駆動機構の滑りの判定が成立し、その場合は、滑りが発生している部位の判定のために、エンジン回転数Ne と入力回転数Ninとの差の絶対値がベルト滑り判定値Slp_bltより小さいか否かが判断される(ステップS27)。これは、図1に示すステップS3と同様の判断ステップである。
【0051】
したがってこのステップS27で肯定的に判断された場合には、ベルト23の滑りが判定され(ステップS28)、さらにベルト23の滑りに対応して制御が実行される(ステップS29)。一方、ステップS27で否定的に判断された場合には、入出力回転数Ninから出力回転数Nout と変速比γ_slpとの積を減算した値の絶対値が、クラッチ滑り判定値Slp_lu より小さいか否かが判断される(ステップS30)。
【0052】
このステップS30で肯定的に判断された場合には、ロックアップクラッチ11の滑りが判定され(ステップS31)、かつそれに対応した制御が実行される(ステップS32)。さらにステップS30で否定的に判断された場合には、ベルト23とロックアップクラッチ11との両方の滑りが判定され(ステップS33)、かつそれに対応した制御が実行される(ステップS34)。これらステップS27ないしステップS34の制御は、図1に示す制御例におけるステップS3ないしステップS10の制御と同様である。
【0053】
したがって図3に示す制御を実行するように構成した場合であっても、ロックアップクラッチ11や無段変速機1を含む駆動機構の滑りを、駆動機構の入力回転数であるエンジン回転数Ne と、駆動機構の出力回転数に相当する無段変速機1の出力回転数Nout と、無段変速機1の入出力回転数Nin,Nout から求められる変速比γ_slpとに基づいて判定するから、無段変速機1の滑りの判定に使用されるデータは、駆動機構の実際の動作状態を示しているデータであり、そのため駆動機構に個体差や経時変化などがあっても、それらを反映したデータに基づいて滑りを判定することになる。その結果、駆動機構の滑りを迅速に、あるいは正確に検出することができる。また、滑りの部位を判定して滑り部位に対応した制御を採ることができることは、上記の図1の制御の場合と同様である。
【0054】
この発明では、滑りの判定に使用する変速比として、連続して算出している変速比γ_calをローパスフィルタ処理した値γ_lp を使用することができる。図4はその制御例を示しており、エンジン回転数Ne 、入出力回転数Nin,Noutの計測(ステップS21)および入力回転数Ninもしくはエンジン回転数Neと出力回転数Nout とに基づく変速比γ_calの算出(ステップS22)が、図3に示す制御例と同様に実行される。
【0055】
こうして得られた変速比γ_calがローパスフィルタ処理され、滑り判定用の変速比γ_lp が求められる(ステップS223)。このローパスフィルタ処理は、高周波成分を除去する処理であって、いわゆるなまし処理と同様であり、外乱が除去もしくは低減された値となる。
【0056】
そして、そのローパスフィルタ処理値γ_lp と出力回転数Nout との積を、エンジン回転数Ne から減算し、その結果得られ差の絶対値が駆動機構の滑り判定のためのしきい値Slp_jdg より大きいか否かが判断される(ステップS224)。この判断ステップは、出力回転数Nout に掛け合わせる値が、1サイクル前の変速比γ_calと変速比γ_calのローパスフィルタ処理値γ_lp との違いがあるが、滑り判定の手法としては前述した図3に示すステップS26と実質的には同じである。
【0057】
したがってステップS224で否定的に判断された場合にはリターンし、また反対に肯定的に判断された場合には、ステップS27に進む。なお、ステップS27以降の制御は、図3に示す制御と同様であるから、図4に図3と同様の符号を付してその説明を省略する。
【0058】
上記のローパスフィルタ処理は、算出された値に特に他の数値を加減乗除するものではないから、駆動機構の実際の動作を強く反映したものとなる。したがって図4に示すように構成した場合であっても、上述した各例と同様に、駆動機構の滑りを迅速かつ正確に検出することができる。また、滑りの部位を判定して滑り部位に対応した制御を採ることができる。
【0059】
この発明における変速比推定値γ_preは、現在時点の変速比とそれ以前の変速比の変化率とに基づいて算出することができ、その場合、変速比の変化率はその平均値を採用してもよい。また、滑りの判定に基づく対応制御は、滑りの終了もしくは収束を確認した後に終了するように構成することができる。図5はその制御例を示している。
【0060】
図5において、先ず、エンジン回転数Ne および入出力回転数Nin(i),Nout (i)が計測される(ステップS41)。そして、その入出力回転数Nin(i),Nout(i)に基づいて変速比γ_cal(i)が算出され、かつその変速比γ_cal(i)の変化量Δγ_cal(i)が算出される(ステップS42)。その変速比γ_cal(i)の変化量Δγ_cal(i)は、その時点の変速比γ_cal(i)と直前に算出された変速比γ_cal(i-1)との偏差として求められる。
【式1】
Figure 0004314769
【式2】
Figure 0004314769
【0061】
ついで、現在時点の変速比γ_cal(i)と、現在時点からn回前までの変速比変化量Δγ_cal(i)〜Δγ_cal(i-n)の平均値とに基づいて変速比推定値γ_pre(i+1) が演算される(ステップS43)。
【式3】
Figure 0004314769
【0062】
この変速比推定値γ_pre(i+1)は、変速比が大きく変化している場合には、現在時点の変速比に対して大きく変化した値として現れる。そこで、そのようないわゆる非定常状態を判定するために、ステップS43についで、出力回転数Nout(i)に現在の変速比推定値γ_pre(i)を掛けた値を、エンジン回転数Ne(i)から減算した差の絶対値が、予め定めた判定のための所定値Slp_startより小さいか否かが判断される(ステップS44)
【0063】
この所定値Slp_startは、一定値とすることもできるが、車両の運転状態に応じて変化する変数として例えばマップの形で定めておくことができる。そして、このステップS44で否定的に判断された場合には、ステップS43で求めた推定値γ_pre(i+1)を現在の変速比推定値γ_pre(i)に置き換えて固定し、これを滑りの判定のために使用する(ステップS45)。このステップS45の制御は、非定常状態であることによる影響を排除するためにおこなう。これに対してステップS44で肯定的に判断された場合には、算出された現在の変速比推定値γ_pre(i)を滑り判定のために使用する。
【0064】
すなわち、こうして設定した変速比推定値γ_pre(i)と出力回転数Nout(i)との積をエンジン回転数Ne(i)から減算し、その差の絶対値が滑り判定のためのしきい値Slp_jdgより小さいか否かが判断される(ステップS46)。これは、前述したステップS2,S26,S224と同様の判断ステップである。このステップS46で肯定的に判断された場合には、駆動機構で滑りが生じていることになるので、滑り判定フラグSlp_flagが“1”にセットされる(ステップS47)。
【0065】
ついで、滑りが発生している部位の判定のために、エンジン回転数Ne(i)と入力回転数Nin(i) との差の絶対値がベルト滑り判定値Slp_bltより小さいか否かが判断される(ステップS48)。これは、図1に示すステップS3と同様の判断ステップである。したがってこのステップS48で肯定的に判断された場合には、ベルト23の滑りが判定され(ステップS49)、さらにベルト23の滑りに対応して制御が実行される(ステップS50)。
【0066】
一方、ステップS48で否定的に判断された場合には、入出力回転数Nin(i) から出力回転数Nout(i)と推定値γ_pre(i)との積を減算した値の絶対値が、クラッチ滑り判定値Slp_lu より小さいか否かが判断される(ステップS51)。このステップS51で肯定的に判断された場合には、ロックアップクラッチ11の滑りが判定され(ステップS52)、かつそれに対応した制御が実行される(ステップS53)。
【0067】
さらにステップS51で否定的に判断された場合には、ベルト23とロックアップクラッチ11との両方の滑りが判定され(ステップS54)、かつそれに対応した制御が実行される(ステップS55)。これらステップS48ないしステップS55の制御は、図1に示す制御例におけるステップS3ないしステップS10の制御と同様である。
【0068】
一方、駆動機構に過剰もしくは意図しない滑りが生じていないことによりステップS46で否定的に判断された場合には、変速比推定値γ_pre(i)と出力回転数Nout(i)との積をエンジン回転数Ne(i)から減算し、その差が滑り終了判定値Slp_endより小さいか否かが判断される(ステップS56)。この滑り終了判定値Slp_endは、一定値であってもよいが、車両の運転状態に応じて変化するマップ値などの変数として予め設定しておくことができる。
【0069】
このステップS56で肯定的に判断された場合は、駆動機構での滑りが収束してきているか、もしくは過剰な滑りが生じていない状態であり、したがってその場合は、ステップS56の肯定判断の回数が予め定めたN回に達したか否かが判断される(ステップS57)。滑りを確実に防止するためである。したがってこのステップS57で肯定的に判断された場合には、滑りの終了が判定され、かつ前述した各対応制御がリセット(終了)される(ステップS58)。
【0070】
一方、ステップS56で否定的に判断された場合、滑りの程度が終了判断をおこなう程度に小さくないことになり、この場合は、滑り判定フラグSlp_flagが“0”か否かが判断される(ステップS59)。このステップS59で否定的に判断された場合には、駆動機構の滑りの判定が成立していて所定の対応制御が実行されていることになるので、ステップS47に進んで上述した各制御を継続する。これに対してステップS59で肯定的に判断された場合には、従前に滑りの判定が成立していず、したがって対応制御も実行されていないので、このルーチンを終了する。また、ステップS56での肯定判断の回数がN回に達していないことによりステップS57で否定的に判断された場合も同様にステップS59に進む。
【0071】
上述したように、滑りの終了の判定をおこなうことにより、無段変速機1やロックアップクラッチ11の過剰もしくは意図しない滑りを確実に防止することができると同時に、挟圧力や係合圧を昇圧する制御を不必要に継続することを防止することができ、ひいては燃費の悪化要因を少なくすることができる。また、駆動機構の滑りを迅速に、あるいは正確に検出することができ、さらに滑りの部位を判定して滑り部位に対応した制御を採ることができることは、上述した各制御例と同様である。
【0072】
また一方、無段変速機1での挟圧力やロックアップクラッチ11の係合圧を高くすれば、それぞれの滑りを防止できるが、前述したように、挟圧力や係合圧が不必要に高ければ、燃費が悪化することがある。そこで、挟圧力や係合圧を高くすることになる駆動機構の滑りの判定をより正確におこなうことが望ましく、そのために、前述した駆動機構の滑り判定の前提となる回転数差がしきい値slp_jdgより大きくなることの判断を複数回実行するように構成してもよい。その例を図6に示してある。
【0073】
ここに示す例は、図5に示す制御例を一部変更したものであって、出力回転数Nout(i)に変速比推定値γ_pre(i) を掛けた値をエンジン回転数Ne(i)から減じた差の絶対値が、滑り判定のためのしきい値Slp_jdgより大きいか否かの判断(ステップS46)がおこなわれ、このステップS46で否定的に判断された場合には、過剰もしくは意図しない滑りが生じていないことになるので、特に制御をおこなうことなくリターンする。
【0074】
これに対してステップS46で肯定的に判断された場合には、駆動機構で滑りが生じている可能性があるので、ステップS46で肯定的に判断された回数が連続してN回に達したか否かが判断される(ステップS461)。ここで、“N”は予め定めた適宜の数値である。
【0075】
すなわちステップS46で肯定的に判断されると、その都度、所定のカウンターがインクリメントされ、そのカウント値が“N”に達する以前は、ステップS461で否定的に判断される。その場合は、変速比推定値γ_pre(i+1) をそれより1回前の値γ_pre(i)に固定(ステップS60)し、リターンする。すなわち滑りが生じている可能性があり、そのようないわゆる異常状態でのデータを取り込まないようにするためである。
【0076】
上記のステップS46での肯定的な判断が連続してN回生じると、ステップS461で肯定的に判断される。そして、ロックアップクラッチ11を挟んだ入力側と出力側との回転数、すなわちエンジン回転数Ne(i)と入力回転数Nin(i) との差の絶対値が、ベルト滑り判定値Slp_bltより小さいか否かが判断される(ステップS48)。すなわち駆動機構で滑りが生じていることの判定が成立し、それに伴って滑り部位を判断するステップに進む。このステップS48ないしステップS55は、図5に示す制御例と同じであるから、図6に図5と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0077】
なお、滑り発生部位の判断結果に基づいて対応制御を実行(ステップS50,S53,S55)した後は、ステップS60に進んで変速比推定値γ_preを更新せずに、ステップS46での演算に使用された値に固定する。滑りが生じているいわゆる異常状態のデータを取り込まないようにするためである。また、図6では、図5に示すステップS56ないしステップS59の制御ステップを省略してあるが、これらの制御ステップを図5に示す制御例と同様に実行することとしてもよい。
【0078】
したがって図6に示す制御を実行するように構成した場合には、図5に示す制御による作用と同様の作用に加えて、滑り発生の判断が更に正確かつ確実になる。そのため、挟圧力や係合圧を高くする上記の対応制御を不必要に実行することが回避され、燃費の悪化が防止される。
【0079】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、図3のステップS23の機能的手段が、請求項1の発明における評価手段に相当し、またステップS26の機能的手段が、請求項1の発明における滑り判定手段に相当する
また、無段変速機1の入力回転数Ninが、この発明の伝動機構の入力回転数に相当し、無段変速機1の出力回転数Noutが、この発明の伝動機構の出力回転数に相当し、エンジン回転数Neが、この発明の動力源の回転数に相当する。
【0080】
なお、この発明は、上述した具体例に限定されないのであって、ロックアップクラッチと無段変速機との両方を含む駆動機構に限らず、無段変速機のみを含む駆動機構、あるいはロックアップクラッチなどの入力部材と出力部材とが相対的に滑ることのある伝動機構のみを含む駆動機構を対象とする滑り検出装置にも適用することができる。また、無段変速機とクラッチとを含む駆動機構を対象とする場合、そのクラッチはロックアップクラッチ以外のクラッチであってもよく、要は、無段変速機と直列に配列されたクラッチであってよく、例えば無段変速機の出力側に配置されたいわゆる発進クラッチであってもよい。
【0081】
さらに、上記の具体例では、回転数差関連値として変速比を採用したが、上記のようにクラッチのみを含む駆動機構を対象とすることができるのであるから、この発明における回転数差関連値は、回転数差や入力側の回転数と出力側の回転数との比率もしくは差分など、回転数差に関連する値であればよい。さらにまた、この発明において回転数差関連値を評価する場合、その変化量の大小によって評価する以外に、その絶対値の大小など、他のパラメータに基づいて評価することとしてもよい。そして、この発明における滑りの判定は、出力側の回転数に変速比を掛けた値と入力側の回転数との差の絶対値に基づいて判定する以外に、これらの回転数の比率や変化率など、演算処理した他の値に基づいて判定することとしてもよい。
【0083】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、例えば回転数差関連値の変化量が大きい場合にはそれ以前の回転数差関連値が選択され、また反対に回転数差関連値の変化量が小さい場合には、その時点の回転数差関連値が選択されるため、外乱を排除した状態で駆動機構の実情を可及的正確に表しているデータを使用して滑りを判定することになり、その結果、駆動機構の実情に即して正確に滑りを判定もしくは検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図2】 駆動機構の滑りの判定および滑りの発生部位を判定する際の各回転数の変化の一例を示すタイムチャートである。
【図3】 この発明の制御装置による制御の他の例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図4】 この発明の制御装置による制御の更に他の例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図5】 この発明の制御装置による制御のまた更に他の例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図6】 この発明の制御装置による制御の更に他の例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図7】 この発明に係る無段変速機を含む駆動機構を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 3…トルクコンバータ、 4…エンジン(動力源)、 11…ロックアップクラッチ、 19…駆動プーリー、 20…従動プーリー、 23…ベルト、 26…駆動輪、 31…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)。

Claims (1)

  1. 入力回転数と出力回転数との回転数差を設定できかつ滑りによって回転数差が変化する伝動機構を有し、その伝動機構が動力源に連結されている駆動機構の滑りを、前記伝動機構の入力回転数と前記伝動機構の出力回転数とこれらの回転数差に関連する回転数差関連値とに基づいて検出する駆動機構の滑り検出装置において、
    前記回転数差関連値の変化量を評価する評価手段と、
    その評価手段による前記回転数差関連値の評価結果に応じて、前記滑りを検出する時点の回転数差関連値とそれより以前に得られた回転数差関連値とのいずれかを選択し、かつその選択された回転数差関連値と、前記動力源の回転数と、前記伝動機構の出力回転数とに基づいて前記駆動機構の滑りを判定する滑り判定手段と
    を備えていることを特徴とする駆動機構の滑り検出装置。
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