JP2004293652A - 無段変速機を含む駆動機構の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】無段変速機に過剰な滑りを生じさせることなくその滑り状態を正確かつ迅速に検出することのできる制御装置を提供する。
【解決手段】動力源から入力されたトルクを伝達しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置であって、前記無段変速機に対する動力源側からの入力トルクを周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する入力トルクの平均値との少なくともいずれか一方を変更する入力トルク変動手段(ステップS5−1,S6−1)と、その入力トルク変動手段によって前記入力トルクを変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段(ステップS7,S8)とを備えている。
【選択図】 図3
【解決手段】動力源から入力されたトルクを伝達しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置であって、前記無段変速機に対する動力源側からの入力トルクを周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する入力トルクの平均値との少なくともいずれか一方を変更する入力トルク変動手段(ステップS5−1,S6−1)と、その入力トルク変動手段によって前記入力トルクを変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段(ステップS7,S8)とを備えている。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、加えられる圧力に応じてトルク容量が変化し、また変速比を無段階に変化させることのできる無段変速機を含む駆動機構の制御装置に関し、特にその無段変速機での滑りを検出する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ベルト式無段変速機やトラクション式無段変速機は、ベルトとプーリとの間の摩擦力や、ディスクとローラとの間のトラクションオイルのせん断力を利用してトルクを伝達している。したがってこれらの無段変速機のトルク容量は、そのトルクの伝達が生じる箇所に作用する圧力に応じて設定される。
【0003】
無段変速機における上記の圧力は挟圧力と称され、その挟圧力を高くすれば、トルク容量を増大させて滑りを回避できるが、その反面、高い圧力を生じさせるために動力を必要以上に消費したり、あるいは動力の伝達効率が低下するなどの不都合がある。そのため、一般的には、意図しない滑りが生じない範囲で、挟圧力を可及的に低く設定している。
【0004】
例えば、無段変速機を搭載した車両では、エンジンの回転数を無段変速機によって制御して燃費の向上を図ることができるので、その利点を損なわないために、無段変速機での動力伝達効率を可及的に向上させるべく、挟圧力を、滑りが生じない範囲で可及的に低く設定するように制御されている。そのためには、滑りの生じ始める圧力(すなわち滑り限界圧力)を検出する必要があり、従来では、種々の方法で滑りを検出し、また滑り限界圧力を検出している。
【0005】
その一例を挙げると、摩擦接触して動力を伝達する無段変速機あるいはその伝動システムを対象とした滑り検出方法であって、圧着力(すなわち挟圧力あるいは係合圧)を低下させることに伴う摩擦効率の上昇(具体的には油温の上昇)を検出してスリップを判定する方法が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された方法では、伝達する力や速度あるいは伝達比がほぼ一定の状態で圧着力を徐々に低下させ、油温の上昇によってスリップが検出された際に圧着力をステップ的に増大させ、その後、スリップ時より高いレベルの圧力に圧着力を設定するように構成されている。
【0006】
また、非特許文献1には、ベルト挟圧力を周期的に変化させてベルトの滑りを検出する方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−12593号公報(段落(0012)、(0018)〜(0020)、(0026))
【非特許文献1】
7th Luk Symposium(第7回ルーク シンポジューム)11./12. April2002 配布資料
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
車両用の変速機を制御する油圧装置には、油圧の応答に不可避的な遅れがあることが広く知られている。したがって上記の特許文献1に記載されているように、無段変速機に微少滑りを生じさせるべく挟圧力を単純に低下させた場合、無段変速機に実際に滑りが生じたことに基づいて挟圧力を復帰(増大)させるとしても、応答遅れによって滑り発生時の圧力以上に挟圧力が低下した時点から昇圧させる場合が生じる。このような場合、挟圧力の復帰に時間がかかり、それに伴って無段変速機での滑りが一時的であっても進行して無段変速機に損傷が生じ、もしくはその耐久性が低下する可能性がある。
【0009】
これに対して上記の非特許文献1に記載されているように、圧着力(すなわち挟圧力)を周期的に変化させれば、圧力の低下の後に必ず昇圧制御もしくは圧力の復帰制御が実行されるので、圧着力もしくは挟圧力が過剰に低下したり、あるいは復帰が遅れたりすることを抑制することができる場合がある。しかしながら、圧着力あるいは挟圧力を周期的に変動させたとしても滑り状態に変化が生じなかったり、あるいは圧着力もしくは挟圧力の変動が制限されて滑り状態に変化を生じさせられなかったりし、実用化のためには、解決しなければならない各種の課題がある。
【0010】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、無段変速機の滑り状態を迅速かつ正確に検出することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、無段変速機のトルク容量を設定する圧力あるいは入力トルクを周期的に変化させることに併せて、付随的な制御を実行するように構成したことを特徴とするものである。具体的には、請求項1の発明は、動力源から入力されたトルクを伝達しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記無段変速機に対する動力源側からの入力トルクを周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する入力トルクの平均値との少なくともいずれか一方を変更する入力トルク変動手段と、その入力トルク変動手段によって前記入力トルクを変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0012】
したがって請求項1の発明では、無段変速機に対する入力トルクが周期的に変化させられ、かつその変化幅もしくは平均値が変化させられる。そのため、振幅もしくは平均値の変化を伴って周期的に変化する入力トルクの最大値付近で、通常のトルク伝達状態での滑りを超えた滑りすなわちマクロスリップを生じる直前の状態もしくはマクロスリップ状態が生じ、その結果、滑り状態の変化が相対的に顕著になるので、無段変速機の滑りが迅速にもしくは正確に検出される。
【0013】
また、請求項2の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記圧力を周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する前記圧力の平均値との少なくともいずれか一方を変更する圧力変動手段と、その圧力変動手段によって前記圧力を変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0014】
したがって請求項2の発明では、無段変速機のトルク容量を設定する圧力が周期的に変化させられ、かつその変化幅もしくは平均値が変化させられる。そのため、振幅もしくは平均値の変化を伴って周期的に変化する圧力の最小値付近で、通常のトルク伝達状態での滑りを超えた滑りすなわちマクロスリップを生じる直前の状態もしくはマクロスリップ状態が生じ、その結果、滑り状態の変化が相対的に顕著になるので、無段変速機の滑りが迅速にもしくは正確に検出される。
【0015】
さらに、請求項3の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、前記無段変速機の滑り状態を検出する際に前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる際の前記クラッチの係合圧を前記無段変速機よりも先に前記クラッチに滑りが生じない圧力に設定する係合圧制御手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0016】
したがって請求項3の発明では、無段変速機の滑り状態を検出するため、入力トルクを周期的に変化させ、もしくは無段変速機のトルク容量を設定する圧力を周期的に変化させる場合、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチが、滑りを生じないように制御される。その結果、無段変速機の滑り状態を検出する際における無段変速機に掛かるトルクの状態が安定するので、無段変速機の滑り状態が正確に検出される。
【0017】
さらにまた、請求項4の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、そのクラッチの係合圧を滑りが生じないように設定した状態で、前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させることに伴う前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と、その滑り状態検出手段で検出された滑り状態に基づいて前記圧力を補正する圧力補正手段とを備えていること制御装置である。
【0018】
したがって請求項4の発明では、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチの係合圧が、無段変速機よりも先に滑りが生じる圧力に設定されるが、その係合圧は、無段変速機の滑り状態を検出するために、無段変速機の前記圧力あるいは入力トルクを周期的に変化させている際には、滑りの生じない圧力に設定され、滑り状態の検出結果に基づいて前記圧力が補正される。その結果、滑り状態の検出中では、無段変速機に掛かるトルクが安定し、無段変速機の滑り状態が正確に検出される。
【0019】
請求項5の発明は、上記の請求項4の構成に加えて、前記クラッチの係合圧を滑りが生じない範囲で低下させた後に、前記圧力を再度補正して設定する圧力設定手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0020】
したがって請求項5の発明では、滑り状態の検出結果に基づいて前記圧力が補正された後に、前記クラッチの係合圧が低下させられ、その後に、再度、前記圧力が補正されて設定される。その再度の補正は、例えば前記圧力のうち路面入力対応分の圧力すなわち路面の状態に応じて出力側から作用することが想定されるトルクに対応する圧力が補正される。その結果、無段変速機における前記圧力を、無段変速機に過剰な滑りが生じない範囲で、可及的に低下させることが可能になる。
【0021】
そして、請求項6の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、そのクラッチの係合圧を滑りが生じないように設定した状態で、前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させることに伴う前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と、その滑り状態検出手段で前記無段変速機の滑り状態を検出している際の前記無段変速機の運転状態と共通する運転状態において前記クラッチの係合圧を無段変速機より先に滑りが生じる圧力に設定するトルク容量設定手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0022】
したがって請求項6の発明では、無段変速機のトルク容量を設定する圧力もしくは入力トルクが周期的に変化させられ、それに伴う滑りの状態が検出される。この滑り状態の検出の際における無段変速機の運転状態と共通する運転状態の下で、前記クラッチの係合圧が、無段変速機に対して先にクラッチに滑りが生じるように設定される。その結果、無段変速機の滑り状態の検出とその検出結果に基づく前記圧力の補正もしくは設定に続けてクラッチの係合圧の設定をおこなうことが可能になり、無段変速機の前記圧力を過剰な滑りが生じない範囲で可及的に低下させる制御が迅速かつ正確におこなわれる。
【0023】
さらにまた、請求項7の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記圧力を周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する前記圧力の平均値との少なくともいずれか一方を変更する圧力変動手段と、前記圧力の実測値を求める圧力検出手段と、その圧力変動手段で変動させる前記圧力を前記実測値に基づいて制御する圧力制御手段と、前記圧力を変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0024】
したがって請求項7の発明では、無段変速機の滑りを検出するために前記圧力を周期的に変化させ、またその検出結果に基づいて前記圧力を所定値に設定する場合、実測値に基づいてその圧力が制御される。その結果、前記圧力の設定精度もしくは制御精度が向上し、さらには滑り状態の検出精度が向上する。
【0025】
そしてまた、請求項8の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を周期的に変化させる変動手段と、その変動手段による前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方の周期的な変化を所定時間継続し、その所定時間の間に前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0026】
したがって請求項8の発明では、無段変速機の前記圧力もしくは入力トルクが所定時間の間、周期的に変化させられ、その所定時間の間に無段変速機の滑り状態が検出される。そのため、無段変速機の挙動が前記圧力もしくは入力トルクの周期的変化に合わせて安定した状態で、滑り状態の検出が可能になり、その検出精度が向上する。
【0027】
そして、請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記滑り状態検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力と前記入力トルクとの少なくともいずれか一方の周期的な変化の態様を変更し、かつその変更した態様で所定時間、該いずれか一方を変動させる手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0028】
したがって請求項9の発明では、前記圧力もしくは入力トルクを所定時間の間、周期的に変化させたことに伴う滑り状態の顕著な変化が検出されないなどの場合、変化の態様を変更した状態で、再度、前記圧力もしくは入力トルクが周期的に変化させられ、かつそれに伴う滑り状態が検出される。そのため、上記の周期的な変化に合わせて無段変速機の挙動が安定した状態で滑りの状態が検出されることに加え、その周期的な変化の態様が多様化されるので、無段変速機の滑り状態が正確に検出される。
【0029】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構の一例を説明すると、図16は、ベルト式無段変速機1を含む駆動機構を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
【0030】
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成されている。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナーと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナーに供給することよりタービンランナーを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
【0031】
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナーとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナーなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。
【0032】
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図16に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
【0033】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ13と従動プーリ14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリ13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。
【0034】
なお、従動プーリ14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリ13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。これに対して駆動プーリ13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径もしくは巻掛け径)に設定するようになっている。
【0035】
上記の従動プーリ14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、この発明におけるクラッチに相当するロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
【0036】
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリ13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリ14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23、ベルト挟圧力を設定するための従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の圧力を検出する油圧センサー24が設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
【0037】
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
【0038】
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数(入力回転速度)Ninの信号、無段変速機1の出力回転数(出力回転速度)No の信号が、それぞれに対応するセンサから入力されている。また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。
【0039】
なお、変速機用電子制御装置25からエンジン用電子制御装置26に対して、エンジントルクの変動要求が入力されている。このエンジントルク変動要求には、エンジントルクの変動幅すなわち振幅や変動周波数すなわち周期あるいはその平均値などが含まれる。そして、このエンジントルク変動要求は、エンジントルクを変動させることに伴って無段変速機1に滑りの状態(例えば滑り率)の変化を生じさせ、その状態での挟圧力に基づいて挟圧力を補正し、もしくは挟圧力のマップ値を求めるなどのために出力される。詳細については後述する。
【0040】
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に(言い換えれば、連続的に)制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
【0041】
そのような燃費向上の利点を損なわないために、無段変速機1における動力の伝達効率が良好な状態に制御される。具体的には、無段変速機1のトルク容量すなわちベルト挟圧力が、エンジントルクに基づいて決まる目標トルクを伝達でき、かつベルト17の滑りが生じない範囲で可及的に低いベルト挟圧力に制御される。その制御は、挟圧力と入力トルクとの相互の関係、例えば入力トルクに対する挟圧力の過剰もしくは不足の状態を検出し、その検出の結果に基づいて挟圧力を補正することにより実行される。
【0042】
この発明に係る制御装置は、無段変速機1での滑り状態を検出するために、挟圧力もしくは入力トルクを変化させ、その際の入力トルクとベルト挟圧力との関係から、適正な挟圧力を求め、あるいは挟圧力マップ値を補正するように構成されている。図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0043】
図1において、先ず、制御開始の前提条件が成立しているか否かが判断される。具体的には、平坦路を定常状態もしくは準定常状態で走行しているか否かが判断される(ステップS1)。この判断は、例えば従動プーリ14側の軸トルクが所定範囲内であり、かつ出力軸回転加速度が所定範囲内であることなどによっておこなうことができる。このステップS1で否定的に判断された場合には、制御開始条件が成立していないことになるので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0044】
これに対してステップS1で肯定的に判断された場合には、悪路を走行中でないか否かが判断される(ステップS2)。この判断は、例えば出力軸回転速度の変動幅が予め定めた基準値を超えているか否かを判断することによっておこなうことができる。このステップS2で否定的に判断された場合、すなわち悪路走行中であることが判断された場合には、制御開始の前提条件が成立していないことになるので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0045】
ステップS2で肯定的に判断された場合には、制御開始前提条件が成立していることになり、したがってこの場合は、所定トリップを経過したか否かが判断される(ステップS3)。図1に示す制御例は、ベルト挟圧力が予め所定値に設定されており、これを補正する制御例であり、したがってその補正は常時おこなう必要がないので、所定トリップ毎に実行することとしたのである。すなわち、ここでトリップとは、例えば、エンジン5が始動制御されて車両が走行し、もしくは走行する状態になったことを意味し、そのトリップ数はエンジン5が始動制御される毎にインクリメントされる。したがって、ステップS3で否定的に判断された場合には、入力トルクを変化させるなどの制御を実行する必要がないので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0046】
これに対してステップS3で肯定的に判断された場合には、対応トルク域の挟圧力が既に更新(学習補正)されているか否かが判断される(ステップS4)。ベルト挟圧力はベルト滑りを生じさせることなく入力トルクを伝達できるように設定するから、入力トルクと挟圧力とは対応しており、したがって入力トルクを複数の領域に区分し、各領域毎に挟圧力を定めることになる。そこで、ステップS4では現在時点で制御の対象としている入力トルク域についての挟圧力が既に更新されているか否かを判断することとしてある。
【0047】
ステップS4で肯定的に判断された場合には、ベルト挟圧力を更新(学習補正)するための制御をその時点で実行する必要がないので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。これとは反対に対応入力トルク域についてのベルト挟圧力が未だ更新されていないことによりステップS4で否定的に判断された場合には、挟圧力の変動指令が出力される(ステップS5)。
【0048】
この挟圧力の変動制御は、挟圧力を周期的に変化させることにより実行されるが、その周波数や振幅は、車両のドライバビリティや振動・騒音を悪化させないように設定される。その振幅を一定に維持した状態で、周期的に変動する挟圧力の平均値を徐々に低下させる指令信号が出力される(ステップS6)。
【0049】
無段変速機1における滑り率とエンジントルク(入力トルク)との関係の概要を図示すれば、図2のとおりであり、所定の挟圧力の下においては入力トルクが増大するのに従って滑り率が増大し、所定トルク以上になると、通常のトルク伝達で生じる微少な滑りすなわちミクロスリップを超えた過大な滑りすなわちマクロスリップの状態になる。
【0050】
そして、ミクロスリップの状態では、滑り率が直線的に変化し、いわゆる線形特性を示す。このような特性を示す領域は、一般的には、変速比γが“1”より小さい比較的使用頻度の高い領域である。前述したように、入力トルクと挟圧力とは互いに対応する関係にあり、一方が増大すれば、他方が相対的に低下した状態になる関係にある。したがって挟圧力を所定の平均値を中心に周期的に変化させた場合には、図2において、所定の平均トルクを中心に入力トルクを周期的に変化させたのと同様の状態が生じる。その場合、変動幅全体がミクロスリップ領域に入っていれば、挟圧力の平均値が低圧側にあっても、あるいは反対に高圧側にあっても、滑り率の変化幅すなわち滑り状態に相違が生じない。言い換えれば、挟圧力を周期的に変化させたことに基づく滑り状態によっては、挟圧力が相対的に低い状態にあるのか高い状態にあるのかを判定することができない。
【0051】
これに対して、周期的に変化する挟圧力の平均値を低下させれば、図2において、平均トルクを右側すなわちマクロスリップ側に移動させたのと同様の状態が生じ、その結果、挟圧力の変化幅のうちで最低圧側の部分がマクロスリップ領域に入る。マクロスリップ領域での滑り率の特性は、図2に示すように非線形であり、挟圧力(入力トルク)の変化量に対する滑り率の変化量が大きくなる。したがって平均挟圧力を低下させることにより、滑り状態を示す滑り率の検出値が大きくなるから、滑り状態の検出値に基づいて挟圧力の相対的な高低の状態を判定することができる。
【0052】
そこで、ステップS6で平均挟圧力の徐減指令を出力した後に、回転速度(例えば駆動プーリ13の回転速度)の検出信号をハイパスフィルター処理もしくはバンドパスフィルター処理することにより、挟圧力の周期的変動に起因する回転速度の変動を抽出し、そのフィルター処理値の絶対値を採ってこれを時間窓積算する(ステップS7)。上述したように滑り率が線形特性を示すミクロスリップ領域では、その積算値Sがほぼ一定値となるが、周期的に変化する挟圧力の最低圧側の部分がマクロスリップ領域に入ったり、あるいはマクロスリップ直前の状態に入ると、その領域での滑り率が相対的に大きくなるので、積算値Sが大きくなる。
【0053】
所定時間に亘って積算し、もしくは所定数の積算をおこなった後に、無段変速機1に対する入力トルク領域に変化がなく、かつ積算値Sが所定のしきい値S1 以上か否かが判断される(ステップS8)。ここで入力トルク領域に変化がないことをも判断しているのは、挟圧力を入力トルクに応じて設定する必要があるため、入力トルクを複数の領域に区分し、各領域毎に挟圧力をマップ値として保持するためである。また、しきい値S1 は、無段変速機1の滑り率特性やその滑り率特性の下におけるミクロスリップとマクロスリップとの境界の設定の仕方などに基づいて予め定められる。
【0054】
このステップS8で否定的に判断された場合には、滑り率が増大していないこと、すなわち無段変速機1に滑りが生じるいわゆる滑り限界挟圧力に対して相対的に高い挟圧力になっていると判断される。したがってこの場合は、従前の制御を継続するために、一旦、このルーチンを抜ける。これに対してステップS8で肯定的に判断された場合には、平均挟圧力がマクロスリップの生じる挟圧力もしくはその直前の挟圧力に近づいていることになるので、挟圧力の周期的変化を中止する指令信号が出力される(ステップS9)。
【0055】
周期的に変化させる挟圧力の変化幅は予め定めてあるから、ステップS8で肯定的に判断された場合、その時点の平均挟圧力とマクロスリップ直前の状態の挟圧力との差、もしくはミクロスリップ領域とマクロスリップ領域との境界に相当する挟圧力とその時点の挟圧力との差を、挟圧力変動幅に基づいて知ることができる。したがって挟圧力の周期的変化をステップS9で中止した後、ステップS8で肯定的に判断された時点の平均挟圧力に基づいて挟圧力が補正され、かつそのマップが更新される(ステップS10)。
【0056】
なお、その補正は、例えば
P=P0 −ΔP+ΔPa
の演算によっておこなうことができる。ここで、Pは補正後の挟圧力、P0 は補正前の平均挟圧力、ΔPは挟圧力の変化幅(振幅の半分)、ΔPa は路面状態に応じて駆動輪20側から入力が予想されるトルクに対応して予め設定された路面入力対応圧力である。
【0057】
したがって図1に示す制御を実行するように構成されたこの発明の制御装置によれば、無段変速機1のトルク容量を設定する挟圧力を単に周期的に変化させるだけでなく、その周期的に変化する挟圧力の平均値を変化させるから、無段変速機1における滑り特性が、使用頻度の高い変速比領域で直線的に変化する線形特性であっても、結局は、マクロスリップ領域に近い状態で挟圧力を変化させることになるので、滑り状態に基づいて挟圧力の相対的に高低の状態を判断することができる。すなわち、上記の制御によれば、無段変速機1の滑り状態を正確に検出できるとともに、挟圧力の適否の判定や補正を正確におこなうことができる。なお、挟圧力を周期的に変化させるので、その圧力応答性が必ずしも速くなくても、無段変速機1がマクロスリップ状態になったり、あるいは無段変速機1に過剰な滑りを生じさせたりすることを未然に回避することができる。
【0058】
前述したように、無段変速機1における挟圧力と入力トルクは、無段変速機1での滑りに関して、互いに対応する関係にあり、一方が増大すると、他方が相対的に低下した状態になる関係にある。したがって無段変速機1での挟圧力の適否もしくはその高低あるいは挟圧力に対応する滑り状態を検出するために、挟圧力を上記のように変化させることに替えて、入力トルクを変化させてもよい。その例を図3に示してある。
【0059】
図3に示すフローチャートは、図1に示すステップS5の「挟圧力変動指令」を、「エンジントルク変動指令」(ステップS5−1)に変更し、ステップS6の「平均挟圧力徐減指令」を、「エンジントルク変動幅徐増指令」(ステップS6−1)に変更し、ステップS9の「挟圧力変動指令中止」を、「トルク変動指令中止」(ステップS9−1)に変更し、ステップS10の「S8で肯定判断時の平均挟圧力で挟圧力マップ変更」を、「S8で肯定判断時のトルク変動幅で挟圧力マップ変更」(ステップS10−1)に変更し、他のステップを図1に示すフローチャートと同様にしたものである。
【0060】
前述した図2から明らかなように、所定のトルクを中心にしてエンジントルク(入力トルク)を周期的に変化させると、無段変速機1での滑り率が変化する。その滑り率の変化幅は、線形特性を示すミクロスリップ領域では、エンジントルクの変動幅に応じて増大するものの、その変化傾向は一律になるが、エンジントルクの変化がマクロスリップ領域にまで及ぶと、マクロスリップ領域での滑り率の変化が急激であるから、滑り率の変化の傾向が増大する。
【0061】
このような滑り率の変化は、図1に示すフローチャートを参照して説明したのと同様に、回転速度のフィルター処理値を積算して求めた積算値Sに基づいて判断することができる。したがってステップS8で肯定的に判断された場合には、エンジントルク(入力トルク)の周期的な変化を中止する(ステップS9−1)。
【0062】
図3のフローチャートにおけるステップS8で肯定的に判断された時点の平均エンジントルクは、制御開始時のトルクであって予め知られており、またそのトルクの変動幅は、制御値として予め知られているから、ステップS8で肯定的に判断された時点のエンジントルクの変動幅に基づいて、無段変速機1の挟圧力の平均トルクに対する関係、もしくは周期的に変動されられて一時的に高くなるエンジントルクに対する挟圧力の関係が求まり、その結果、挟圧力マップが変更される(ステップS10−1)。
【0063】
したがって図3に示す制御を実行するように構成した場合であっても、図1に示す制御を実行する場合と同様に、迅速かつ正確に、しかも無段変速機1に過剰な滑りを生じさせることなく、無段変速機1の滑り状態を検出でき、また適正な挟圧力を求め、あるいは補正することができる。
【0064】
なお、図1に示す例では、周期的に変化させる挟圧力の平均値を変化させることとし、これに対して図3に示す例では、周期的に変化させるエンジントルク(入力トルク)の変動幅を変化させることとしたが、この発明では、周期的に変化させる挟圧力の変動幅を変化させることとしてもよく、あるいは周期的に変化させるエンジントルク(入力トルク)の平均値を変化させることとしてもよい。このように構成した場合であっても、前述した積算値などに基づいて無段変速機1の滑り状態を検出でき、また挟圧力を補正することができる。したがって図3に示すステップS6−1の機能的手段、あるいはその制御内容を「エンジントルク平均値の徐増」に変更したステップS6−1の機能的手段が、請求項1の発明における入力トルク変動手段に相当し、また図1に示すステップS6の機能的手段、あるいはその制御内容を、「挟圧力変動幅の徐増」に変更したステップS6の機能的手段が、請求項2の発明における圧力変動手段に相当する。そして、図1および図3に示すステップS7およびステップS8の機能的手段が、この発明の滑り状態検出手段に相当する。
【0065】
ところで、エンジントルクを変動させる場合、その手段によって変動幅に制限があり、また無段変速機1を搭載している車両のドライバビリティや振動・騒音に悪影響を及ぼさない範囲に制限される。したがって前述したステップS8で肯定的に判断されることなく、エンジントルク(もしくは入力トルク)が変動限界に達してしまうことがある。その場合の制御例を図4に示してある。
【0066】
図4に示す制御例は、図3に示す制御例に、周期的に変化させるエンジントルクがその変動限界に達したか否かの判断をおこなうステップS8−2を追加し、かつ挟圧力マップの変更の仕方を変更したものである。すなわち、前記積算値Sがしきい値S1 に到らないことによりステップS8で否定的に判断された場合、ステップS8−2に進んで、周期的に変動させるエンジントルクがエンジントルクについての上限に達したか否かが判断される。
【0067】
このステップS8−2で否定的に判断された場合には、従前の制御を継続するために、一旦、このルーチンを抜ける。これとは反対にステップS8−2で肯定的に判断された場合には、前述したステップS9−1に進んで、エンジントルク(もしくは入力トルク)についての変動制御を中止する。そして、ステップS9−1でのトルク変動中止の直前の平均トルクやトルク変動幅、すなわちステップS8で肯定的に判断された時点の平均トルクやトルク変動幅、もしくはステップS8−2で肯定的に判断された時点の平均トルクやトルク変動幅に基づいて挟圧力あるいはその補正量が求められ、かつ挟圧力マップが変更される(ステップS10−2)。
【0068】
したがって図4に示すように制御すれば、無段変速機1に過剰な滑りが生じない(あるいはマクロスリップに到らない)エンジントルクもしくは入力トルクの上限値をステップS8−2で検出でき、その結果、変動させているエンジントルクの平均値に対応する挟圧力を、その時点で設定されている圧力より低くしてもマクロスリップが生じないことになるから、挟圧力を低下補正することができる。その低下補正量は、予め定めた一定値であってもよく、あるいはトルクの変動幅に応じた値であってもよい。
【0069】
無段変速機1に対する入力トルクを周期的に変動させるための手段は任意であって、各種の手段を採用することができる。例えば、動力源がガソリンエンジンで構成されている場合には、その点火時期の遅角制御によってエンジントルクを変動させることができ、また内燃機関と電動機もしくはモータ・ジェネレータとを動力源としたハイブリッド車では、その電動機もしくはモータ・ジェネレータの電流制御によって無段変速機1の入力トルクを変動させることができる。しかしながら、これらのトルク変動手段によるエンジントルクもしくは入力トルクの変化パターンは異なっており、例えば点火時期の遅角制御による場合には、エンジントルクの低下と復帰との繰り返しによって周期的な変動を生じさせることになり、その結果、平均トルクが低下することになる。
【0070】
したがって点火時期の遅角制御によってエンジントルクを周期的に変動させる場合には、エンジントルクの平均値の低下を抑制し、また応答遅れを抑制するために、図5に示すように制御することが好ましい。図5は、点火時期を繰り返し遅角するとともに、その遅角量を次第に増大させてエンジントルクの変動幅を増大させ、併せてスロットル開度を次第に増大させた場合のタイムチャートを模式的に示している。先ず、制御前提条件や開始条件が成立することによりA時点にスロットル開度が次第に増大させられる。この制御は、例えば電気的に開度を制御できる電子スロットルバルブ(電スロ)をエンジン5に設けておき、その電子スロットルバルブを制御することにより実行できる。
【0071】
電子スロットルバルブの開度の増大に対して所定の遅れをもってエンジントルクが変化するので、所定時間後のB時点に点火時期の遅角を開始する。その後のC時点にスロットル開度が所定値に達するが、遅角量も次第に大きくなっているので、スロットル開度の増大によるエンジントルクの増加と遅角によるエンジントルクの低下とがエンジントルクの変動を相殺し、結局、エンジントルク(入力トルク)がほぼ従前のままに維持される。
【0072】
そして、遅角量が制御開始時の値に達したD時点から点火時期の遅角と復帰とが繰り返され、かつその遅角量が次第に増大させられる。また、スロットル開度が遅角量の増大に合わせた勾配で、C時点から次第に増大させられる。その結果、点火時期の遅角と復帰とによってエンジントルクが周期的に変化し、またそれに伴うトルクの低下をスロットル開度の増大で補うので、平均トルクがほぼ一定に維持される。
【0073】
エンジントルクすなわち無段変速機1の入力トルクが上記のように周期的に変動することに伴って無段変速機1に回転変動が生じ、そのフィルター処理値の絶対値を時間窓積算した値Sが次第に増大する。そして、変動する入力トルクがマクロスリップ領域に達するようになると、積算値Sが急激に増大し、その結果、前述したステップS8で肯定的に判断され、点火時期がスロットル開度の増大に見合った量だけ遅角される。これが図5のE時点であり、その後、応答遅れの大きいスロットル開度の復帰制御を、点火時期の復帰に先行して実行し、スロットル開度が復帰するのに合わせて点火時期が復帰させられる。
【0074】
このように制御すれば、遅角制御に起因するトルクの低下を、スロットル開度の増大によって補うことができ、その結果、遅角によるエンジントルクの周期的な変動時の平均トルクを、制御開始前のトルクとほぼ同じに維持できる。その結果、駆動トルクの低下などによるドライバビリティの悪化などを未然に回避することができる。
【0075】
上述した無段変速機1で過剰な滑りが生じた場合、補修の困難な損傷が生じる可能性が高く、これに対して車両に搭載された無段変速機1に作用するトルクは複雑かつ多様に変化する。そこで、無段変速機1のベルト挟圧力を低下させて動力損失を低減する場合、無段変速機1を過剰な滑りから保護するために、いわゆるトルクヒューズを設けることが効果的である。そのトルクヒューズ制御とは、無段変速機1に対して直列に配列されているクラッチによって、無段変速機1に作用するトルクを制限する制御であり、駆動機構に作用するトルクが増大した場合に、例えば無段変速機1よりも先にロックアップクラッチ3に滑りが生じるように、無段変速機1とロックアップクラッチ3との伝達トルク容量すなわち挟圧力と係合圧とを設定する制御である。言い換えれば、滑りが生じるまでの伝達トルク容量の余裕を、無段変速機1に対してロックアップクラッチ3で小さくなるように設定する制御である。
【0076】
このトルクヒューズ制御が実施されていれば、無段変速機1でのベルト挟圧力を低下させている過程で外乱などにより大きいトルクが作用しても、ロックアップクラッチ3に滑りが生じて無段変速機1に作用するトルクが制限されるので、挟圧力を滑り限界圧力に低下させることが可能になる。しかしながら、前述した挟圧力や入力トルクを変動させて滑り状態を検出する場合には、トルクヒューズが機能して例えば前述したロックアップクラッチ3に滑りが生じすると、無段変速機1に作用するトルクが変化してしまう。その結果、無段変速機1での滑り状態が、挟圧力もしくは入力トルクの変動制御に起因して変化したのか、あるいはトルクヒューズが機能して変化したのかの判別をおこなえなくなる。このような不都合を未然に防止するために、この発明に係る制御装置は、図6に示す制御を実行するように構成されている。
【0077】
図6において、先ず、制御前提条件が成立しているか否かが判断される(ステップS21)。この判断は、例えば前述した図1あるいは図3に示すステップS1およびステップS2の判断であり、平坦路でかつ凹凸の少ない良路を定常状態もしくは準定常状態で走行しているか否かの判断である。このステップS21で肯定的に判断された場合には、その時点での無段変速機1に対する入力トルクが属するトルク領域についてトルクヒューズが既に設定されているか否かが判断される(ステップS22)。
【0078】
トルクヒューズの設定とは、無段変速機1のトルク容量の余裕すなわちその時点の入力トルクでマクロスリップが生じ始めるトルク容量に対するトルク容量の超過分に対して、ロックアップクラッチ3のトルク容量の余裕すなわちその時点の入力トルクでスリップが生じ始めるトルク容量に対するトルク容量の超過分を小さく設定することであり、言い換えれば、無段変速機1より先にロックアップクラッチ3に滑りが生じるように、ロックアップクラッチ3の係合圧を設定することである。
【0079】
したがってトルクヒューズが設定済であれば、その時点の入力トルクに対応する無段変速機1の挟圧力およびその挟圧力の下でのロックアップクラッチ3の係合圧が既に求められていることになるので、これらの挟圧力および係合圧が未だ求められていない場合、すなわちステップS22で否定的に判断された場合に、加振による無段変速機1で滑り状態の把握指令が出力される(ステップS23)。この加振とは、前述した挟圧力もしくは入力トルクの少なくともいずれか一方を周期的に変化させ、かつその平均値もしくは変動幅を変化させることである。また、滑り状態の把握とは、ベルト17の滑り状態の検出であり、一例として前述した積算値Sに基づいて判断できる。
【0080】
なお、ステップS23で加振をおこなう場合、ロックアップクラッチ3の係合圧は、挟圧力の周期的変動に基づく入力側部材の回転変動に起因する慣性トルクによっても滑りが発生しない相対的に高い圧力に維持される。無段変速機1に作用するトルクを安定させるためである。
【0081】
ついで、滑り状態の把握すなわち検出が完了したか否かが判断される(ステップS24)。滑り状態の検出が完了してステップS24で肯定的に判断された場合には、無段変速機1における挟圧力の補正指令が出力される(ステップS25)。その挟圧力の補正は、前述した式
P=P0 −ΔP+ΔPa
に基づいておこなうことができる。
【0082】
なお、この場合の路面入力対応圧力ΔPa は、ロックアップクラッチ3を未だトルクヒューズとして設定していない状態の圧力とする。すなわち、外乱が生じた場合に無段変速機1に掛かるトルクを制限する状態が設定されていないので、路面入力対応圧力ΔPa は、相対的に高いに圧力に設定される。こうして路面入力を考慮して、無段変速機1に滑りが生じない範囲で可及的に低い挟圧力が設定され、挟圧力が最適化される。
【0083】
その後、トルクヒューズ設定指令が出力される(ステップS26)。これは、例えばその時点の入力トルクでロックアップクラッチ3が滑り始める係合圧を求め、もしくは微少滑りの後に再係合する係合圧を求め、その係合圧に所定の余裕圧(安全率)を加えることによりおこなうことができる。
【0084】
さらに、ヒューズ圧設定済か否か、すなわちトルクヒューズ設定が完了したか否かが判断される(ステップS27)。これは、上記のステップS26の制御が完了したか否かの判断であり、したがって否定的に判断された場合には、その制御を継続するために、このルーチンを一旦抜ける。これに対して肯定的に判断された場合には、挟圧力についての路面入力対応圧力の補正指令が出力される(ステップS28)。
【0085】
上記のステップS25での挟圧力の補正は、挟圧力のうち路面入力対応分以外の圧力(より具体的には入力トルク対応分)を滑り状態の検出結果に基づいて補正し、路面入力対応分は従前の相対的に高い圧力に維持する。これは、トルクヒューズが設定されていないことによるものであるから、ステップS27でトルクヒューズ設定の完了が判断された後には、挟圧力のうち路面入力対応分が低下補正される。その結果、挟圧力の全体としての圧力が低下するが、その滑りに対する余裕分が、トルクヒューズとして機能するロックアップクラッチ3における同様の余裕分より大きくなっているので、外乱が生じても無段変速機1に過剰な滑りが生じる可能性は少ない。
【0086】
すなわち、図6に示す制御例では、滑り状態の検出結果に基づいて、挟圧力のうち路面入力対応分以外の圧力を補正し、トルクヒューズの設定が完了した後に、挟圧力のうちの路面入力対応分を補正する。また、無段変速機1での挟圧力の設定もしくは補正と、ロックアップクラッチ3のトルクヒューズとしての係合圧の設定もしくは補正が、入力トルク領域が変化しない状態で、すなわち共通する運転状態の下で連続して実行される。そのため、挟圧力および係合圧の設定もしくは補正のため条件判定が容易になるとともに、その制御を簡単かつ迅速におこなうことができる。
【0087】
なお、制御前提条件が成立していないことによりステップS21で否定的に判断された場合、およびトルクヒューズ設定済のためにステップS22で肯定的に判断された場合、ならびに滑り状態の検出が完了していないことによりステップS24で否定的に判断された場合には、補正前の挟圧力を設定する指令が出力される(ステップS29)。すなわち図6に示す制御開始以前の状態が維持される。無段変速機1の過剰な滑りを防止するためである。
【0088】
したがって図6に示す制御を実行するように構成した場合には、無段変速機1の挟圧力を低下させる制御を実行している場合には、ロックアップクラッチ3が無段変速機1に対するトルクヒューズとして機能し、外乱が生じた場合に、無段変速機1に掛かるトルクをロックアップクラッチ3によって制限できるので、無段変速機1の過剰な滑りを防止もしくは抑制でき、しかもいわゆる加振によって滑り状態を検出もしくは把握する場合には、そのロックアップクラッチ3に滑りが生じないように係合圧が制御されるので、滑り状態を精度良く検出することができる。さらに、挟圧力を滑り状態の検出結果に基づいて補正する場合には、先ず、路面入力対応分以外の圧力について補正し、トルクヒューズの設定が完了した後に路面入力対応分の低下補正をおこなうので、その補正過程での外乱によって無段変速機1に過剰な滑りが生じることを防止もしくは抑制することができる。
【0089】
前述した無段変速機1の挟圧力は油圧によって設定するが、油圧の制御応答性は必ずしも良くなく、電気的な指令信号に対して不可避的な遅れを生じる。これに対して無段変速機1の挟圧力は、入力トルクを伝達できる範囲で可及的に低い滑り限界圧力に路面入力対応分の圧力を加えた圧力に設定することが好ましいので、滑り限界圧力もしくは滑り状態を正確に検出することが望まれる。
【0090】
前述した図16に示す無段変速機1は、挟圧力を設定する油圧すなわち従動プーリ14側のアクチュエータ16の油圧を検出する油圧センサー24を備えているので、この計測値を挟圧力の制御に利用することが可能であり、こうすることにより挟圧力制御が正確になる。図7および図8は、実測した挟圧力を滑り状態の検出や挟圧力制御に利用するように構成したこの発明の装置による制御例を示している。
【0091】
先ず、図7において、過渡変速中か否かが判断される(ステップS31)。この判断は、要は、挟圧力を変動させることに伴う滑り状態の検出制御に対する前提条件が成立しているか否かの判断であり、したがって過渡変速中か否かの判断に加えて、前述したステップS1やステップS2の判断、あるいはステップS21の判断をおこなうこととしてもよい。
【0092】
このステップS31で否定的に判断された場合には、特に制御をおこなうことなくリターンする。これとは反対にステップS31で肯定的に判断された場合に、指令値Aが最低圧ガード値より大きいか否かが判断される(ステップS32)。この指令値Aは、周期的に変化させる油圧の平均値、およびその変動幅(もしくは振幅)を指令する値を含んでいる。また、最低圧ガード値は、エンジン油圧などによって機械的に決まる圧力あるいはフェイルセーフなどの観点から制御上定められた最低油圧値である。したがってステップS32で否定的に判断された場合、すなわち指令値Aが最低圧ガード値以下となる場合には、平均油圧の低下や挟圧力の周期的な変動を実行できない状態にあることになるので、設定油圧をライン圧などの元の圧力に戻し(ステップS33)、この図7および図8に示すルーチンを終了する。
【0093】
これとは反対に指令値Aが最低圧ガード値より大きいことによりステップS32で肯定的に判断された場合には、所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS34)。無段変速機1の挟圧力は入力トルクに対応させて設定されるので、無段変速機1での滑り状態の検出、および油圧センサー24を使用した実挟圧力の検出は、入力トルクが変化しない状態で実行する必要がある。無段変速機1を搭載した車両が走行している場合、路面状態や運転者の意図などによってエンジン5の出力が変化し、エンジン5の出力に変化がない時間は比較的短い。そこで、エンジントルクが安定していると考えられ時間を所定時間として設定し、これを超えた場合には、エンジントルクすなわち無段変速機1の入力トルクが変化する可能性が高いことにより、図7および図8に示す制御を中止することとしたのである。
【0094】
したがってステップS34で肯定的に判断された場合には、制御を一旦中止し、設定油圧が元に戻される(ステップS33)。これに対して所定時間が経過していないことによりステップS34で否定的に判断された場合には、指令値Aにしたがって油圧(すなわち挟圧力)が加振される(ステップS35)。すなわち挟圧力が所定の平均圧力を中心にして高低に所定の周期で変動させられる。その油圧は、上述したとおり、従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の油圧であって、油圧センサー24によって検出されている油圧である。したがってその油圧の検出データBが読み込まれて保持される(ステップS36)。
【0095】
ついで、ベルト滑りが検出されたか否かが判断される(ステップS37)。挟圧力を周期的に変化させると、その過程で挟圧力が繰り返し低下するので、ベルト17の滑りが生じる可能性がある。ステップS37ではその滑りを検出したか否かが判断される。したがってステップS37で肯定的に判断された場合には、挟圧力が既に低くなっていることになり、あるいは何らかの異常もしくは想定していない状態が生じている可能性があるので、前述したステップS33に進んで、設定油圧を元に戻した後にリターンし、制御を一旦中止する。
【0096】
一方、ベルト滑りが検出されていないことによりステップS37で否定的に判断された場合には、油圧の平均値Cと上記のステップS36で読み込まれて保持されている油圧データBとの差の絶対値が、基準となる所定値より小さいか否かが判断される(ステップS38)。その平均値Cと比較される油圧データBは、例えば油圧データBのうちの最大値もしくは最低値であり、そのステップS38では実際に油圧の変化幅(振幅の半分)が所定値より小さいか否かを判断していることになる。
【0097】
したがってこのステップS38で否定的に判断された場合には、油圧の応答遅れなどが要因となって、実際の油圧の変化幅が想定しているより大きくなっていることになる。そのため、この場合には、指令値Aをインクリメント(ステップS39)した後、前述したステップS32に戻る。この指令値Aのインクリメントは、指令値Aの内容の変更であり、ここで説明している例では、油圧の変化幅が所定値より小さくなるように指令値Aを変更することである。これに対して油圧の変化幅が所定値より小さいことによりステップS38で肯定的に判断された場合には、指令値Aと油圧の実測値である前記油圧データBとに基づいて油圧の応答遅れが算出される(ステップS40)。
【0098】
図9に油圧の指令値Aと実測値Bとの変化を模式的に示してある。指令値Aが所定周期でかつ2αの振幅(変化幅はα)のサイン曲線で表される信号である場合、一定の時間間隔で油圧を実測すると、その実測値を滑らかな曲線で結ぶことにより、図9に実線で示す油圧データBが得られる。その実測値Bにおける最大値もしくは最小値と、平均油圧との差が実際の油圧の変化幅βとなる。その実測値Bでの変化幅βと指令値Aにおける変化幅αとの相違は、油圧の応答遅れなどによって生じる。
【0099】
一方、指令値Aにおける平均油圧と実測値Bの平均油圧とは一致しているから、指令値Aが平均油圧となったP点の時間と、その直後に実測値Bが平均油圧になったQ点の時間とを比較することにより、実際の油圧の遅れδを求めることができる。すなわち、実際の油圧データBは、変化幅がβ(振幅が2β)で、指令値Aに対して所定の位相遅れδをもったサイン曲線で表される。
【0100】
油圧データBの数が少ない状態では、最大値および最小値を正確に求めることができない。これに対して指令値Aおよび実測値Bでの平均値は判っているので、図9に示すP点およびQ点は、油圧データBの数が少なくても検出することができる。したがってステップS40では、その時点で既に得られている油圧データBと指令値Aとから実際の油圧(挟圧力)の応答遅れが算出される。このようにすれば、サンプリング定理で決められる高い周波数でのサンプリングをおこなうことなく、実際の油圧の応答遅れを求めることができる。
【0101】
ついで、油圧データBの数が所定値を超えたか否かが判断される(ステップS41)。油圧データBの数が充分でないことによりステップS41で否定的に判断された場合には、指令値Aがインクリメントされる(ステップS42)。具体的には、変化幅を維持したまま、平均値を低下させるように指令値Aが変更される。
【0102】
その後、所定時間が経過したか否かの判断(ステップS43)、指令値Aが最低圧ガード値より大きいか否かの判断(ステップS44)、指令値Aに従う加振(ステップS45)、油圧センサー24による検出データの読み込みおよび保持(ステップS46)、ベルト滑りが検出されたか否かの判断(ステップS47)の各制御が、上述したステップS32ないしステップS37と同様にして実行される。したがって所定時間が経過してステップS43で肯定的に判断された場合、および指令値Aが最低圧ガード値以下となってステップS44で否定的に判断された場合、ならびにベルト滑りが検出されてステップS47で肯定的に判断された場合には、前述したステップS33に進んで設定油圧を元に戻し、一旦このルーチンを終了する。
【0103】
これに対してベルト滑りが検出されないことによりステップS47で否定的に判断された場合には、インクリメントされた指令値Aの元での油圧データBの数が所定値を超えたか否かが判断される(ステップS48)。このステップS48で否定的に判断された場合には、ステップS42に戻る。すなわち、指令値Aを更新して再度、油圧データBの読み込みおよび保持を実行する。
【0104】
こうして所定数以上の油圧データBが得られたことによりステップS48で肯定的に判断されると、実測値Bに基づいて実際の油圧の振幅(変化幅)が算出される(ステップS49)。すなわち、データ数が充分になったことにより、上述した図9の実線で示すように実測値Bが得られ、その実測値Bにおける最大値あるいは最小値に基づいて振幅を算出することができる。
【0105】
このようにして指令値Aに対する実際の油圧の状態が正確に検出され、その後に更に指令値Aがインクリメントされる(ステップS50)。すなわち、平均油圧が低下させられる。その後、所定時間が経過したか否かの判断(ステップS51)、指令値Aが最低圧ガード値より大きいか否かの判断(ステップS52)、指令値Aに従う加振(ステップS53)、油圧センサー24による検出データの読み込みおよび保持(ステップS54)、ベルト滑りが検出されたか否かの判断(ステップS55)の各制御が、上述したステップS32ないしステップS37、あるいはステップS43ないしステップS47と同様にして実行される。したがって所定時間が経過してステップS51で肯定的に判断された場合、および指令値Aが最低圧ガード値以下となってステップS52で否定的に判断された場合には、前述したステップS33に進んで設定油圧を元に戻し、一旦このルーチンを終了する。
【0106】
また、ベルト滑りが検出されないことによりステップS55で否定的に判断された場合には、ステップS50に戻って指令値Aをインクリメントする。すなわち更新し、それ以降の制御を上述したとおりに再度実行する。そして、指令値Aの更新およびそれに伴う挟圧力の変化に起因する滑りが検出されると、ステップS55で肯定的に判断される。
【0107】
なお、このステップS55や上述したステップS37,S47におけるベルト滑りの検出は、変速比やその変化速度、駆動プーリ13の回転数の変化状態などに基づいておこなうことができる。また、検出した回転速度の信号をバンドパスフィルターあるいはハイパスフィルターなどでフィルター処理し、その処理値の絶対値を積算するなど、図1あるいは図3を参照して説明したようにして滑りを検出することができる。
【0108】
そして、ベルト滑りが検出された時点の実際の油圧(挟圧力)に基づいて、入力トルクによってベルト滑りが生じるいわゆる限界圧力が算出され、これに路面入力対応分もしくは所定の安全率を見込んだ油圧を加えて挟圧力が設定される(ステップS56)。
【0109】
図10には、挟圧力を周期的に変化させつつ、その平均値を低下させた場合の指令値Aと実測値Bとの変化、および滑り検出後の挟圧力を模式的に示してある。指令値Aに対して所定の遅れをもって実際の油圧が変化し、その指令値Aの平均値が低下することに伴って実際の油圧(挟圧力)も低下する。そして、油圧が周期的に変化しているから、その最低値も次第に低下する。その結果、ベルト17といずれかのプーリ13,14との間での滑りがいわゆるミクロスリップからマクロスリップに増大すると、これが滑りとして検出される。その時点の油圧(挟圧力)を最低圧として、これに路面入力対応分などの所定の油圧が加えられた圧力が挟圧力として設定される。
【0110】
したがって図7および図8に示す制御を実行するように構成した場合には、指令値Aに対して所定の遅れを生じる実際の油圧に基づいて、いわゆる滑り限界油圧を求め、またその実際の油圧に所定値を加えて挟圧力を設定するので、指令値Aと実油圧との誤差を含まない正確な挟圧力を設定することが可能になる。したがって実油圧の変化幅が指令値Aより大きくなる場合であっても、滑りを検出する過程で無段変速機1に過剰な滑りが生じるなどのことを防止もしくは抑制でき、無段変速機1の保護あるいは耐久性の維持の点で有利になる。
【0111】
なお、滑り状態を検出するために、周期的に変化させる挟圧力の変化幅を次第に増大させる場合に上述した実油圧のデータを利用するように構成することもできる。図11はその例を示しており、指令値Aの振幅を次第に増大させると、所定の遅れを伴って実油圧(すなわち検出油圧)Bが変化する。その結果、実油圧Bの変化幅が次第に増大して最低油圧が低下すると、無段変速機1にマクロスリップもしくはその直前の状態が生じ、これが滑りとして検出される。その滑り検出時点の油圧すなわち最低圧に基づいて挟圧力が設定される。具体的には、その最低圧に路面入力対応圧もしくは所定の安全率を見込んだ所定圧を加えた圧力が設定される。なお、検出された実油圧に基づいて指令値をフィードバック制御してもよい。
【0112】
ところで、図7,8に示す制御例では、指令値Aが最低圧ガード値以下になった場合に、設定油圧を元に戻すように構成したが、これに替えて、その最低圧ガード値を利用して挟圧力を設定することとしてもよい。その例を図12および図13に示してある。図12は、周期的に変化させる挟圧力の平均値を次第に低下させ、その過程で滑りが検出されることなく最低圧ガード値に達した例を示している。すなわち指令値Aにおける平均値を低下させつつ周期的に変動させる実油圧Bの最低値が最低圧ガード値に達すると、油圧の周期的な変動を中止するとともに、その最低圧ガード油圧を最低圧として、これに所定圧を加えた圧力に挟圧力が設定される。
【0113】
また、図13に示す例は、周期的に変化させる挟圧力の変化幅を次第に増大させ、その過程で滑りが検出されることなく最低圧ガード値に達した例である。すなわち指令値Aにおける平均値を低下させつつ周期的に変動させる油圧Bの最低値が最低圧ガード値に達すると、油圧の周期的な変動を中止するとともに、その最低圧ガード油圧を最低圧として、これに所定圧を加えた圧力に挟圧力が設定される。
【0114】
これら図12および図13に示すいずれの場合であっても、挟圧力を最低圧ガード値にまで低下させてもベルト滑りが生じないことを検出したことになり、その検出結果を有効に利用して挟圧力を可及的に低下させることになる。したがって、指令値Aが最低圧ガード値以下になることによって設定圧を戻す制御に比較して、挟圧力を低圧に維持できる機会が増大し、そのため燃費の向上に有利になる。
【0115】
つぎに、この発明の更に他の具体例について説明する。周期的に変化させる挟圧力あるいは入力トルクの平均値を変化させる場合、上述した各具体例では、その平均値を滑らかに、あるいは連続的に変化させ、かつ滑り状態を示す指標として前記積算値Sを使用することとしたが、その平均値を所定時間、一定に維持した後、ステップ的に低下させ、かつ平均値を変化させた前後では、滑り状態を判定するための指標を異ならせることとしてもよい。その例を図14および図15に示してある。
【0116】
図14はその制御例を説明するためのフローチャートであり、また図15はその制御を実行した場合の概略的なタイムチャートであって、先ず、図14において、制御の前提条件が成立しているか否かが判断される(ステップS61)。この判断は、例えば前述した図6に示すステップS21と同様の判断である。このステップS61で肯定的に判断された場合には、その時点の入力トルクと変速比γとで定まる運転領域についての挟圧力が補正済みか否かが判断される(ステップS62)。挟圧力は、入力トルクと変速比γとに対応させて設定する必要があるので、入力トルクと変速比γとによって複数の運転領域を区分し、各運転領域毎に挟圧力を設定することとしてある。したがってその運転領域についての挟圧力が既に補正されていれば、重複して挟圧力の補正をおこなう必要がないので、ステップS62の判断をおこなうこととしたのである。
【0117】
現時点の運転領域についての挟圧力が未だ補正されていないことによりステップS62で否定的に判断された場合には、フラグFについて判断される(ステップS63)。このフラグFは、制御の進行状態に応じて“0”または“1”あるいは“2”に設定されるフラグであり、制御の開始当初は、“0”に設定されている。したがって制御の開始当初は、ステップS63に続けて挟圧力の変動指令が出力される(ステップS64)。
【0118】
これは、図15のA時点であり、図16に示す従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16における油圧が所定の周期および振幅で変動させられる。その場合、油圧の平均値は一定に維持される。ついで所定時間(図15にはt1 の符号で示してある)が経過したか否かが判断される(ステップS65)。この所定時間は、ステップS64での変動指令に応じた変動状態に挟圧力が安定し、かつ挟圧力の周期的な変動に起因する回転速度の変化あるいは滑り指標を検出し、その処理をおこなうのに充分な時間である。したがってその所定時間のカウント開始時点は、挟圧力の変動指令の出力時点である。
【0119】
所定時間が経過していないことによりステップS65で否定的に判断された場合には、時間の経過を待つために、一旦、このルーチンを終了する。これに対して所定時間が経過したことによってステップS65で肯定的に判断された場合には、滑り指標が算出される(ステップS66)。この滑り指標としては、例えば前述した積算値Sを採用することができる。
【0120】
挟圧力を周期的に変動させると、前述した図2に示すように、滑り率が変化し、回転速度が変化する。それに伴って前記積算値Sが増大する。したがってステップS66に続けて、その滑り指標である積算値Sが所定のしきい値S1 以上か否かが判断される(ステップS67)。なお、このしきい値S1 は、入力トルクと変速比γとに応じて予め定められている。
【0121】
挟圧力を上記のように変動させても、滑り状態がマクロスリップあるいはその直前の状態に到ることがなければ、滑り指標Sがしきい値S1 にまで増大することがなく、その場合にはステップS67で否定的に判断される。そして、この場合には、周期的に変動させる挟圧力の平均値を所定量、低下させる指令信号が出力される(ステップS68)。これは、図15のB時点である。
【0122】
ついで、所定時間(図15にはt2 の符号で示してある)が経過したか否かが判断される(ステップS69)。なお、この所定時間t2 のカウント開始時点は、ステップS68における平均挟圧力の低下指令出力時点である。そして、この所定時間t2 は、平均値を低下させた状態で周期的に変動させる挟圧力が、指令値に応じた変動状態に安定し、かつ挟圧力の周期的な変動に起因する回転速度の変化あるいは滑り指標を検出し、その処理をおこなうのに充分な時間である。
【0123】
所定時間t2 が経過していないことによりステップS69で否定的に判断された場合には、フラグFが“1”にセットされ(ステップS70)、その後、このルーチンを一旦終了する。したがってこのルーチンを実行する次のサイクルの際に、運転条件が特には変化していなければ、ステップS63で“F=1”の判断が成立し、その結果、直ちにステップS69に進んで、所定時間の経過が判断される。
【0124】
こうして所定時間t2 が経過すると、ステップS69で肯定的に判断される。その場合、滑り指標値として、上記のステップS66で算出された前回の積算値Sと、平均値を低下させた後に算出された今回の積算値Sとの偏差ΔSが確定される(ステップS71)。そしてその滑り指標値ΔSが予め定めたしきい値ΔS1 以上か否かが判断される(ステップS72)。
【0125】
このステップS72で肯定的に判断された場合には、挟圧力が未だ相対的に高い状態にあり、マクロスリップあるいはその直前の状態が生じていないことになる。したがってこの場合は、フラグFを“2”にセット(ステップS73)した後、このルーチンを一旦終了する。したがって次のサイクルにおいて走行状態が特には変化していなければ、ステップS63で“F=2”の判断が成立するので、直ちにステップS68に進み、平均挟圧力が所定量低下させられる。これは、図15のC時点である。すなわち、マクロスリップもしくはその直前の状態に到ったことが検出されなければ、平均挟圧力が順次、ステップ的に低下させられ、その低下した平均圧力の状態で周期的に変動させられる。そして、平均挟圧力を低下させた状態で周期的に変動させる期間は、図15のD時点までの所定時間t2 である。
【0126】
こうして挟圧力が低下させられることにより、無段変速機1の滑り状態がマクロスリップもしくはその直前の状態に到ると、ステップS72で肯定的に判断される。すなわち前記滑り指標としての偏差ΔSがしきい値ΔS1 以上になる。その結果、挟圧力の変動およびその平均値の低下を中止する指令信号が出力される(ステップS74)。そして、ステップS72で肯定的に判断された時点の平均挟圧力と振幅もしくは変動幅とからいわゆる滑り限界圧力(前述した最低圧)が求められ、これに路面入力対応分あるいは所定の安全率に相当する圧力などの所定値を加えた圧力が求められ、挟圧力がその圧力に設定され、かつ挟圧力のマップ値が変更される(ステップS75)。また、これと併せて、フラグFがゼロリセットされ、かつ読み込まれて保持されている各値(ストア値)がクリアされる。
【0127】
なお、これらステップS74およびステップS75の制御は、マクロスリップもしくはその直前の状態が検出された場合に実行されるから、前記ステップS67で肯定的に判断された場合にも同様に実行される。
【0128】
また、制御の前提条件が成立しないこと、あるいは成立しなくなったことにより、上記のステップS61で否定的に判断された場合、および入力トルクや変速比が変化して運転領域が従前とは変化した場合には、その時点で実行されていた挟圧力の周期的に変動およびその平均値の低下の中止指令が出力され、併せてフラグFおよびストア値がクリアされる(ステップS76)。そして、その時点では、未だマクロスリップもしくはその直前の状態の判断が成立していないので、挟圧力が相対的に高い状態、もしくはマクロスリップを生じさせることのない状態にあることになるので、その時点の平均挟圧力と変動幅とに基づいて挟圧力が決定される。
【0129】
したがって上記の図14に示す制御を実行するように構成した場合には、平均挟圧力を所定値に維持し、その状態での挟圧力の変動が安定している際に滑り状態を検出し、またその滑り状態の判定のための指標を、平均挟圧力の低下に伴って変更しているので、滑り状態を正確に検出することができる。
【0130】
なお、挟圧力と入力トルクとは相互に対応する関係にあり、一方が増大した場合に他方が相対的に低下した状態となる関係にあるから、前述した各具体例について説明したのと同様に、図14に示す制御例においても、挟圧力を変動させる替わりに、入力トルクを周期的に変動させ、かつその平均値を次第に増大させることとしてもよく、その場合であっても、滑り状態を正確に検出することができる。
【0131】
ここで、上記の各具体例とこの発明との関係をまとめて説明すると、前述したステップS5−1およびステップS6−1の機能的手段が、請求項1の発明における入力トルク変動手段に相当し、またステップS5およびステップS6の機能的手段が、請求項2の発明の圧力変動手段に相当し、さらにステップS7およびステップS8の機能的手段が、請求項1および請求項2の各発明の滑り状態検出手段に相当する。また、前述したステップS23に含まれる機能的手段が、請求項3の発明における変動手段および係合圧制御手段、請求項4の発明における変動手段および滑り状態検出手段、ならびに請求項6の発明における変動手段にそれぞれ相当し、ステップS25の機能的手段が、請求項4の発明の圧力補正手段に相当し、さらにステップS27およびステップS28の機能的手段が、請求項5の発明の圧力設定手段に相当し、そしてステップS26の機能的手段が、請求項6の発明のトルク容量設定手段に相当する。
【0132】
一方、前記ステップS35,S45,S53の各機能的手段が、請求項7の発明の圧力変動手段に相当し、ステップS36の機能的手段が、請求項7の発明の圧力検出手段に相当し、ステップS56の機能的手段が、請求項7の発明の圧力制御手段に相当し、そしてステップS37,47,55の各機能的手段が、請求項7の発明の滑り状態検出手段に相当する。さらに、前記ステップS64およびステップS68の機能的手段が、請求項8および請求項9の変動手段に相当し、またステップS67およびステップS72の機能的手段が、請求項8および請求項9の発明の滑り状態検出手段に相当する。
【0133】
なお、この発明は上記の具体例に限定されないのであって、この発明における無段変速機は、ベルト式無段変速機以外に、トロイダル型(トラクション式)無段変速機であってもよく、また無段変速機に対して直列に連結されていわゆるトルクヒューズとして機能させるクラッチは、ロックアップクラッチ以外に、いわゆる発進クラッチなどの他のクラッチであってもよい。また、この発明において入力トルクを変化させる手段は、上述した点火時期の遅角による手段に限らないのであって、例えば燃料噴射量を変化させる手段であってもよく、またハイブリッド車にあっては、動力源としてのモータ・ジェネレータの出力トルクを変化させる手段であってもよい。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、振幅もしくは平均値の変化を伴って周期的に変化する入力トルクの最大値付近で、通常のトルク伝達状態での滑りを超えた滑りすなわちマクロスリップを生じる直前の状態もしくはマクロスリップ状態が生じ、その結果、滑り状態の変化が相対的に顕著になるので、無段変速機の滑りを迅速にもしくは正確に検出することができる。
【0135】
また、請求項2の発明によれば、振幅もしくは平均値の変化を伴って周期的に変化する圧力の最小値付近で、通常のトルク伝達状態での滑りを超えた滑りすなわちマクロスリップを生じる直前の状態もしくはマクロスリップ状態が生じ、その結果、滑り状態の変化が相対的に顕著になるので、無段変速機の滑りを迅速にもしくは正確に検出することができる。
【0136】
さらに、請求項3の発明によれば、無段変速機の滑り状態を検出するために、入力トルクを周期的に変化させ、もしくは無段変速機のトルク容量を設定する圧力を周期的に変化させる場合、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチが、滑りを生じないように制御され、その結果、無段変速機の滑り状態を検出する際における無段変速機に掛かるトルクの状態が安定するので、無段変速機の滑り状態を正確に検出することができる。
【0137】
さらにまた、請求項4の発明によれば、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチの係合圧が、無段変速機よりも先に滑りが生じる圧力に設定されるが、その係合圧は、無段変速機の滑り状態を検出するために、無段変速機の前記圧力あるいは入力トルクを周期的に変化させている際には、滑りの生じない圧力に設定され、滑り状態の検出結果に基づいて前記圧力が補正されるので、滑り状態の検出中では、無段変速機に掛かるトルクが安定し、無段変速機の滑り状態を正確に検出することができる。
【0138】
請求項5の発明によれば、この請求項4の発明で得られる効果に加え、滑り状態の検出結果に基づいて前記圧力が補正された後に、前記クラッチの係合圧が低下させられ、その後に、例えば前記圧力のうち路面入力対応分の圧力すなわち路面の状態に応じて出力側から作用することが想定されるトルクに対応する圧力が補正されるので、無段変速機における前記圧力を、無段変速機に過剰な滑りが生じない範囲で、可及的に低下させることができる。
【0139】
そして、請求項6の発明によれば、無段変速機の滑り状態の検出の際における運転状態と共通する運転状態の下で、いわゆるトルクヒューズとして機能させられクラッチの係合圧が、無段変速機に対して先にクラッチに滑りが生じるように設定されるから、無段変速機の滑り状態の検出とその検出結果に基づく前記圧力の補正もしくは設定に続けてクラッチの係合圧の設定をおこなうことが可能になり、無段変速機の前記圧力を過剰な滑りが生じない範囲で可及的に低下させる制御を迅速かつ正確におこなうことができる。
【0140】
さらにまた、請求項7の発明によれば、無段変速機の滑りを検出するために前記圧力を周期的に変化させ、またその検出結果に基づいて前記圧力を所定値に設定する場合、実測値に基づいてその圧力が制御されるから、前記圧力の設定精度もしくは制御精度を向上させることができ、さらには滑り状態の検出精度を向上させることができる。
【0141】
そしてまた、請求項8の発明によれば、無段変速機の挟圧力もしくは入力トルクが所定時間の間、周期的に変化させられ、その所定時間の間に無段変速機の滑り状態が検出されるため、無段変速機の挙動が前記圧力もしくは入力トルクの周期的変化に合わせて安定した状態で、滑り状態の検出が可能になり、その検出精度を向上させることができる。
【0142】
そして、請求項9の発明によれば、前記圧力もしくは入力トルクを所定時間の間、周期的に変化させたことに伴う滑り状態の顕著な変化が検出されないなどの場合、変化の態様を変更した状態で、再度、前記圧力もしくは入力トルクが周期的に変化させられ、かつそれに伴う滑り状態が検出されるため、上記の周期的な変化に合わせて無段変速機の挙動が安定した状態で滑りの状態が検出されることに加え、その周期的な変化の態様が多様化されるので、無段変速機の滑り状態を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】無段変速機に対する入力トルク(エンジントルク)と無段変速機で生じる滑り率との関係を示す線図である。
【図3】この発明の制御装置による制御の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図4】この発明の制御装置による制御の更に他の例を説明するためのフローチャートである。
【図5】遅角によってエンジントルク(入力トルク)を周期的に変化させ、かつその変化幅を次第に増大させた場合のタイムチャートを模式的に示す図である。
【図6】この発明の制御装置による他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の制御装置による更に他の制御例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図8】この発明の制御装置による更に他の制御例を説明するためのフローチャートの他の部分を示す図である。
【図9】挟圧力指令値と実測値との関係を模式的に示す図である。
【図10】挟圧力を周期的に変化させつつその平均値を低下させて滑りが検出された場合の実油圧の変化を示す図である。
【図11】挟圧力を周期的に変化させつつその変化幅を増大させて滑りが検出された場合の実油圧の変化を示す図である。
【図12】挟圧力を周期的に変化させつつその平均値を低下させて最低圧ガード油圧に到った場合の実油圧の変化を示す図である。
【図13】挟圧力を周期的に変化させつつその変化幅を増大させて最低圧ガード油圧に到った場合の実油圧の変化を示す図である。
【図14】この発明の制御装置による更に他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図15】図14に示す制御を実行した場合のタイムチャートを模式的に示す図である。
【図16】この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 5…エンジン(動力源)、 13…駆動プーリ、 14…従動プーリ、 17…ベルト、 20…駆動輪、 25…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)、 26…エンジン用電子制御装置(E/G−ECU)。
【発明の属する技術分野】
この発明は、加えられる圧力に応じてトルク容量が変化し、また変速比を無段階に変化させることのできる無段変速機を含む駆動機構の制御装置に関し、特にその無段変速機での滑りを検出する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ベルト式無段変速機やトラクション式無段変速機は、ベルトとプーリとの間の摩擦力や、ディスクとローラとの間のトラクションオイルのせん断力を利用してトルクを伝達している。したがってこれらの無段変速機のトルク容量は、そのトルクの伝達が生じる箇所に作用する圧力に応じて設定される。
【0003】
無段変速機における上記の圧力は挟圧力と称され、その挟圧力を高くすれば、トルク容量を増大させて滑りを回避できるが、その反面、高い圧力を生じさせるために動力を必要以上に消費したり、あるいは動力の伝達効率が低下するなどの不都合がある。そのため、一般的には、意図しない滑りが生じない範囲で、挟圧力を可及的に低く設定している。
【0004】
例えば、無段変速機を搭載した車両では、エンジンの回転数を無段変速機によって制御して燃費の向上を図ることができるので、その利点を損なわないために、無段変速機での動力伝達効率を可及的に向上させるべく、挟圧力を、滑りが生じない範囲で可及的に低く設定するように制御されている。そのためには、滑りの生じ始める圧力(すなわち滑り限界圧力)を検出する必要があり、従来では、種々の方法で滑りを検出し、また滑り限界圧力を検出している。
【0005】
その一例を挙げると、摩擦接触して動力を伝達する無段変速機あるいはその伝動システムを対象とした滑り検出方法であって、圧着力(すなわち挟圧力あるいは係合圧)を低下させることに伴う摩擦効率の上昇(具体的には油温の上昇)を検出してスリップを判定する方法が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された方法では、伝達する力や速度あるいは伝達比がほぼ一定の状態で圧着力を徐々に低下させ、油温の上昇によってスリップが検出された際に圧着力をステップ的に増大させ、その後、スリップ時より高いレベルの圧力に圧着力を設定するように構成されている。
【0006】
また、非特許文献1には、ベルト挟圧力を周期的に変化させてベルトの滑りを検出する方法が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−12593号公報(段落(0012)、(0018)〜(0020)、(0026))
【非特許文献1】
7th Luk Symposium(第7回ルーク シンポジューム)11./12. April2002 配布資料
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
車両用の変速機を制御する油圧装置には、油圧の応答に不可避的な遅れがあることが広く知られている。したがって上記の特許文献1に記載されているように、無段変速機に微少滑りを生じさせるべく挟圧力を単純に低下させた場合、無段変速機に実際に滑りが生じたことに基づいて挟圧力を復帰(増大)させるとしても、応答遅れによって滑り発生時の圧力以上に挟圧力が低下した時点から昇圧させる場合が生じる。このような場合、挟圧力の復帰に時間がかかり、それに伴って無段変速機での滑りが一時的であっても進行して無段変速機に損傷が生じ、もしくはその耐久性が低下する可能性がある。
【0009】
これに対して上記の非特許文献1に記載されているように、圧着力(すなわち挟圧力)を周期的に変化させれば、圧力の低下の後に必ず昇圧制御もしくは圧力の復帰制御が実行されるので、圧着力もしくは挟圧力が過剰に低下したり、あるいは復帰が遅れたりすることを抑制することができる場合がある。しかしながら、圧着力あるいは挟圧力を周期的に変動させたとしても滑り状態に変化が生じなかったり、あるいは圧着力もしくは挟圧力の変動が制限されて滑り状態に変化を生じさせられなかったりし、実用化のためには、解決しなければならない各種の課題がある。
【0010】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、無段変速機の滑り状態を迅速かつ正確に検出することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段およびその作用】
この発明は、上記の目的を達成するために、無段変速機のトルク容量を設定する圧力あるいは入力トルクを周期的に変化させることに併せて、付随的な制御を実行するように構成したことを特徴とするものである。具体的には、請求項1の発明は、動力源から入力されたトルクを伝達しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記無段変速機に対する動力源側からの入力トルクを周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する入力トルクの平均値との少なくともいずれか一方を変更する入力トルク変動手段と、その入力トルク変動手段によって前記入力トルクを変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0012】
したがって請求項1の発明では、無段変速機に対する入力トルクが周期的に変化させられ、かつその変化幅もしくは平均値が変化させられる。そのため、振幅もしくは平均値の変化を伴って周期的に変化する入力トルクの最大値付近で、通常のトルク伝達状態での滑りを超えた滑りすなわちマクロスリップを生じる直前の状態もしくはマクロスリップ状態が生じ、その結果、滑り状態の変化が相対的に顕著になるので、無段変速機の滑りが迅速にもしくは正確に検出される。
【0013】
また、請求項2の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記圧力を周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する前記圧力の平均値との少なくともいずれか一方を変更する圧力変動手段と、その圧力変動手段によって前記圧力を変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0014】
したがって請求項2の発明では、無段変速機のトルク容量を設定する圧力が周期的に変化させられ、かつその変化幅もしくは平均値が変化させられる。そのため、振幅もしくは平均値の変化を伴って周期的に変化する圧力の最小値付近で、通常のトルク伝達状態での滑りを超えた滑りすなわちマクロスリップを生じる直前の状態もしくはマクロスリップ状態が生じ、その結果、滑り状態の変化が相対的に顕著になるので、無段変速機の滑りが迅速にもしくは正確に検出される。
【0015】
さらに、請求項3の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、前記無段変速機の滑り状態を検出する際に前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる際の前記クラッチの係合圧を前記無段変速機よりも先に前記クラッチに滑りが生じない圧力に設定する係合圧制御手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0016】
したがって請求項3の発明では、無段変速機の滑り状態を検出するため、入力トルクを周期的に変化させ、もしくは無段変速機のトルク容量を設定する圧力を周期的に変化させる場合、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチが、滑りを生じないように制御される。その結果、無段変速機の滑り状態を検出する際における無段変速機に掛かるトルクの状態が安定するので、無段変速機の滑り状態が正確に検出される。
【0017】
さらにまた、請求項4の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、そのクラッチの係合圧を滑りが生じないように設定した状態で、前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させることに伴う前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と、その滑り状態検出手段で検出された滑り状態に基づいて前記圧力を補正する圧力補正手段とを備えていること制御装置である。
【0018】
したがって請求項4の発明では、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチの係合圧が、無段変速機よりも先に滑りが生じる圧力に設定されるが、その係合圧は、無段変速機の滑り状態を検出するために、無段変速機の前記圧力あるいは入力トルクを周期的に変化させている際には、滑りの生じない圧力に設定され、滑り状態の検出結果に基づいて前記圧力が補正される。その結果、滑り状態の検出中では、無段変速機に掛かるトルクが安定し、無段変速機の滑り状態が正確に検出される。
【0019】
請求項5の発明は、上記の請求項4の構成に加えて、前記クラッチの係合圧を滑りが生じない範囲で低下させた後に、前記圧力を再度補正して設定する圧力設定手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0020】
したがって請求項5の発明では、滑り状態の検出結果に基づいて前記圧力が補正された後に、前記クラッチの係合圧が低下させられ、その後に、再度、前記圧力が補正されて設定される。その再度の補正は、例えば前記圧力のうち路面入力対応分の圧力すなわち路面の状態に応じて出力側から作用することが想定されるトルクに対応する圧力が補正される。その結果、無段変速機における前記圧力を、無段変速機に過剰な滑りが生じない範囲で、可及的に低下させることが可能になる。
【0021】
そして、請求項6の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、そのクラッチの係合圧を滑りが生じないように設定した状態で、前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させることに伴う前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と、その滑り状態検出手段で前記無段変速機の滑り状態を検出している際の前記無段変速機の運転状態と共通する運転状態において前記クラッチの係合圧を無段変速機より先に滑りが生じる圧力に設定するトルク容量設定手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0022】
したがって請求項6の発明では、無段変速機のトルク容量を設定する圧力もしくは入力トルクが周期的に変化させられ、それに伴う滑りの状態が検出される。この滑り状態の検出の際における無段変速機の運転状態と共通する運転状態の下で、前記クラッチの係合圧が、無段変速機に対して先にクラッチに滑りが生じるように設定される。その結果、無段変速機の滑り状態の検出とその検出結果に基づく前記圧力の補正もしくは設定に続けてクラッチの係合圧の設定をおこなうことが可能になり、無段変速機の前記圧力を過剰な滑りが生じない範囲で可及的に低下させる制御が迅速かつ正確におこなわれる。
【0023】
さらにまた、請求項7の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記圧力を周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する前記圧力の平均値との少なくともいずれか一方を変更する圧力変動手段と、前記圧力の実測値を求める圧力検出手段と、その圧力変動手段で変動させる前記圧力を前記実測値に基づいて制御する圧力制御手段と、前記圧力を変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0024】
したがって請求項7の発明では、無段変速機の滑りを検出するために前記圧力を周期的に変化させ、またその検出結果に基づいて前記圧力を所定値に設定する場合、実測値に基づいてその圧力が制御される。その結果、前記圧力の設定精度もしくは制御精度が向上し、さらには滑り状態の検出精度が向上する。
【0025】
そしてまた、請求項8の発明は、加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を周期的に変化させる変動手段と、その変動手段による前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方の周期的な変化を所定時間継続し、その所定時間の間に前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0026】
したがって請求項8の発明では、無段変速機の前記圧力もしくは入力トルクが所定時間の間、周期的に変化させられ、その所定時間の間に無段変速機の滑り状態が検出される。そのため、無段変速機の挙動が前記圧力もしくは入力トルクの周期的変化に合わせて安定した状態で、滑り状態の検出が可能になり、その検出精度が向上する。
【0027】
そして、請求項9の発明は、請求項8の発明において、前記滑り状態検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力と前記入力トルクとの少なくともいずれか一方の周期的な変化の態様を変更し、かつその変更した態様で所定時間、該いずれか一方を変動させる手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0028】
したがって請求項9の発明では、前記圧力もしくは入力トルクを所定時間の間、周期的に変化させたことに伴う滑り状態の顕著な変化が検出されないなどの場合、変化の態様を変更した状態で、再度、前記圧力もしくは入力トルクが周期的に変化させられ、かつそれに伴う滑り状態が検出される。そのため、上記の周期的な変化に合わせて無段変速機の挙動が安定した状態で滑りの状態が検出されることに加え、その周期的な変化の態様が多様化されるので、無段変速機の滑り状態が正確に検出される。
【0029】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構の一例を説明すると、図16は、ベルト式無段変速機1を含む駆動機構を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
【0030】
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成されている。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナーと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナーに供給することよりタービンランナーを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
【0031】
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナーとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナーなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。
【0032】
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図16に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
【0033】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ13と従動プーリ14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリ13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。
【0034】
なお、従動プーリ14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリ13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。これに対して駆動プーリ13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径もしくは巻掛け径)に設定するようになっている。
【0035】
上記の従動プーリ14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、この発明におけるクラッチに相当するロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
【0036】
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリ13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリ14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23、ベルト挟圧力を設定するための従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の圧力を検出する油圧センサー24が設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
【0037】
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
【0038】
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数(入力回転速度)Ninの信号、無段変速機1の出力回転数(出力回転速度)No の信号が、それぞれに対応するセンサから入力されている。また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。
【0039】
なお、変速機用電子制御装置25からエンジン用電子制御装置26に対して、エンジントルクの変動要求が入力されている。このエンジントルク変動要求には、エンジントルクの変動幅すなわち振幅や変動周波数すなわち周期あるいはその平均値などが含まれる。そして、このエンジントルク変動要求は、エンジントルクを変動させることに伴って無段変速機1に滑りの状態(例えば滑り率)の変化を生じさせ、その状態での挟圧力に基づいて挟圧力を補正し、もしくは挟圧力のマップ値を求めるなどのために出力される。詳細については後述する。
【0040】
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に(言い換えれば、連続的に)制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
【0041】
そのような燃費向上の利点を損なわないために、無段変速機1における動力の伝達効率が良好な状態に制御される。具体的には、無段変速機1のトルク容量すなわちベルト挟圧力が、エンジントルクに基づいて決まる目標トルクを伝達でき、かつベルト17の滑りが生じない範囲で可及的に低いベルト挟圧力に制御される。その制御は、挟圧力と入力トルクとの相互の関係、例えば入力トルクに対する挟圧力の過剰もしくは不足の状態を検出し、その検出の結果に基づいて挟圧力を補正することにより実行される。
【0042】
この発明に係る制御装置は、無段変速機1での滑り状態を検出するために、挟圧力もしくは入力トルクを変化させ、その際の入力トルクとベルト挟圧力との関係から、適正な挟圧力を求め、あるいは挟圧力マップ値を補正するように構成されている。図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0043】
図1において、先ず、制御開始の前提条件が成立しているか否かが判断される。具体的には、平坦路を定常状態もしくは準定常状態で走行しているか否かが判断される(ステップS1)。この判断は、例えば従動プーリ14側の軸トルクが所定範囲内であり、かつ出力軸回転加速度が所定範囲内であることなどによっておこなうことができる。このステップS1で否定的に判断された場合には、制御開始条件が成立していないことになるので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0044】
これに対してステップS1で肯定的に判断された場合には、悪路を走行中でないか否かが判断される(ステップS2)。この判断は、例えば出力軸回転速度の変動幅が予め定めた基準値を超えているか否かを判断することによっておこなうことができる。このステップS2で否定的に判断された場合、すなわち悪路走行中であることが判断された場合には、制御開始の前提条件が成立していないことになるので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0045】
ステップS2で肯定的に判断された場合には、制御開始前提条件が成立していることになり、したがってこの場合は、所定トリップを経過したか否かが判断される(ステップS3)。図1に示す制御例は、ベルト挟圧力が予め所定値に設定されており、これを補正する制御例であり、したがってその補正は常時おこなう必要がないので、所定トリップ毎に実行することとしたのである。すなわち、ここでトリップとは、例えば、エンジン5が始動制御されて車両が走行し、もしくは走行する状態になったことを意味し、そのトリップ数はエンジン5が始動制御される毎にインクリメントされる。したがって、ステップS3で否定的に判断された場合には、入力トルクを変化させるなどの制御を実行する必要がないので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。
【0046】
これに対してステップS3で肯定的に判断された場合には、対応トルク域の挟圧力が既に更新(学習補正)されているか否かが判断される(ステップS4)。ベルト挟圧力はベルト滑りを生じさせることなく入力トルクを伝達できるように設定するから、入力トルクと挟圧力とは対応しており、したがって入力トルクを複数の領域に区分し、各領域毎に挟圧力を定めることになる。そこで、ステップS4では現在時点で制御の対象としている入力トルク域についての挟圧力が既に更新されているか否かを判断することとしてある。
【0047】
ステップS4で肯定的に判断された場合には、ベルト挟圧力を更新(学習補正)するための制御をその時点で実行する必要がないので、特に制御をおこなうことなく図1のルーチンを一旦終了する。これとは反対に対応入力トルク域についてのベルト挟圧力が未だ更新されていないことによりステップS4で否定的に判断された場合には、挟圧力の変動指令が出力される(ステップS5)。
【0048】
この挟圧力の変動制御は、挟圧力を周期的に変化させることにより実行されるが、その周波数や振幅は、車両のドライバビリティや振動・騒音を悪化させないように設定される。その振幅を一定に維持した状態で、周期的に変動する挟圧力の平均値を徐々に低下させる指令信号が出力される(ステップS6)。
【0049】
無段変速機1における滑り率とエンジントルク(入力トルク)との関係の概要を図示すれば、図2のとおりであり、所定の挟圧力の下においては入力トルクが増大するのに従って滑り率が増大し、所定トルク以上になると、通常のトルク伝達で生じる微少な滑りすなわちミクロスリップを超えた過大な滑りすなわちマクロスリップの状態になる。
【0050】
そして、ミクロスリップの状態では、滑り率が直線的に変化し、いわゆる線形特性を示す。このような特性を示す領域は、一般的には、変速比γが“1”より小さい比較的使用頻度の高い領域である。前述したように、入力トルクと挟圧力とは互いに対応する関係にあり、一方が増大すれば、他方が相対的に低下した状態になる関係にある。したがって挟圧力を所定の平均値を中心に周期的に変化させた場合には、図2において、所定の平均トルクを中心に入力トルクを周期的に変化させたのと同様の状態が生じる。その場合、変動幅全体がミクロスリップ領域に入っていれば、挟圧力の平均値が低圧側にあっても、あるいは反対に高圧側にあっても、滑り率の変化幅すなわち滑り状態に相違が生じない。言い換えれば、挟圧力を周期的に変化させたことに基づく滑り状態によっては、挟圧力が相対的に低い状態にあるのか高い状態にあるのかを判定することができない。
【0051】
これに対して、周期的に変化する挟圧力の平均値を低下させれば、図2において、平均トルクを右側すなわちマクロスリップ側に移動させたのと同様の状態が生じ、その結果、挟圧力の変化幅のうちで最低圧側の部分がマクロスリップ領域に入る。マクロスリップ領域での滑り率の特性は、図2に示すように非線形であり、挟圧力(入力トルク)の変化量に対する滑り率の変化量が大きくなる。したがって平均挟圧力を低下させることにより、滑り状態を示す滑り率の検出値が大きくなるから、滑り状態の検出値に基づいて挟圧力の相対的な高低の状態を判定することができる。
【0052】
そこで、ステップS6で平均挟圧力の徐減指令を出力した後に、回転速度(例えば駆動プーリ13の回転速度)の検出信号をハイパスフィルター処理もしくはバンドパスフィルター処理することにより、挟圧力の周期的変動に起因する回転速度の変動を抽出し、そのフィルター処理値の絶対値を採ってこれを時間窓積算する(ステップS7)。上述したように滑り率が線形特性を示すミクロスリップ領域では、その積算値Sがほぼ一定値となるが、周期的に変化する挟圧力の最低圧側の部分がマクロスリップ領域に入ったり、あるいはマクロスリップ直前の状態に入ると、その領域での滑り率が相対的に大きくなるので、積算値Sが大きくなる。
【0053】
所定時間に亘って積算し、もしくは所定数の積算をおこなった後に、無段変速機1に対する入力トルク領域に変化がなく、かつ積算値Sが所定のしきい値S1 以上か否かが判断される(ステップS8)。ここで入力トルク領域に変化がないことをも判断しているのは、挟圧力を入力トルクに応じて設定する必要があるため、入力トルクを複数の領域に区分し、各領域毎に挟圧力をマップ値として保持するためである。また、しきい値S1 は、無段変速機1の滑り率特性やその滑り率特性の下におけるミクロスリップとマクロスリップとの境界の設定の仕方などに基づいて予め定められる。
【0054】
このステップS8で否定的に判断された場合には、滑り率が増大していないこと、すなわち無段変速機1に滑りが生じるいわゆる滑り限界挟圧力に対して相対的に高い挟圧力になっていると判断される。したがってこの場合は、従前の制御を継続するために、一旦、このルーチンを抜ける。これに対してステップS8で肯定的に判断された場合には、平均挟圧力がマクロスリップの生じる挟圧力もしくはその直前の挟圧力に近づいていることになるので、挟圧力の周期的変化を中止する指令信号が出力される(ステップS9)。
【0055】
周期的に変化させる挟圧力の変化幅は予め定めてあるから、ステップS8で肯定的に判断された場合、その時点の平均挟圧力とマクロスリップ直前の状態の挟圧力との差、もしくはミクロスリップ領域とマクロスリップ領域との境界に相当する挟圧力とその時点の挟圧力との差を、挟圧力変動幅に基づいて知ることができる。したがって挟圧力の周期的変化をステップS9で中止した後、ステップS8で肯定的に判断された時点の平均挟圧力に基づいて挟圧力が補正され、かつそのマップが更新される(ステップS10)。
【0056】
なお、その補正は、例えば
P=P0 −ΔP+ΔPa
の演算によっておこなうことができる。ここで、Pは補正後の挟圧力、P0 は補正前の平均挟圧力、ΔPは挟圧力の変化幅(振幅の半分)、ΔPa は路面状態に応じて駆動輪20側から入力が予想されるトルクに対応して予め設定された路面入力対応圧力である。
【0057】
したがって図1に示す制御を実行するように構成されたこの発明の制御装置によれば、無段変速機1のトルク容量を設定する挟圧力を単に周期的に変化させるだけでなく、その周期的に変化する挟圧力の平均値を変化させるから、無段変速機1における滑り特性が、使用頻度の高い変速比領域で直線的に変化する線形特性であっても、結局は、マクロスリップ領域に近い状態で挟圧力を変化させることになるので、滑り状態に基づいて挟圧力の相対的に高低の状態を判断することができる。すなわち、上記の制御によれば、無段変速機1の滑り状態を正確に検出できるとともに、挟圧力の適否の判定や補正を正確におこなうことができる。なお、挟圧力を周期的に変化させるので、その圧力応答性が必ずしも速くなくても、無段変速機1がマクロスリップ状態になったり、あるいは無段変速機1に過剰な滑りを生じさせたりすることを未然に回避することができる。
【0058】
前述したように、無段変速機1における挟圧力と入力トルクは、無段変速機1での滑りに関して、互いに対応する関係にあり、一方が増大すると、他方が相対的に低下した状態になる関係にある。したがって無段変速機1での挟圧力の適否もしくはその高低あるいは挟圧力に対応する滑り状態を検出するために、挟圧力を上記のように変化させることに替えて、入力トルクを変化させてもよい。その例を図3に示してある。
【0059】
図3に示すフローチャートは、図1に示すステップS5の「挟圧力変動指令」を、「エンジントルク変動指令」(ステップS5−1)に変更し、ステップS6の「平均挟圧力徐減指令」を、「エンジントルク変動幅徐増指令」(ステップS6−1)に変更し、ステップS9の「挟圧力変動指令中止」を、「トルク変動指令中止」(ステップS9−1)に変更し、ステップS10の「S8で肯定判断時の平均挟圧力で挟圧力マップ変更」を、「S8で肯定判断時のトルク変動幅で挟圧力マップ変更」(ステップS10−1)に変更し、他のステップを図1に示すフローチャートと同様にしたものである。
【0060】
前述した図2から明らかなように、所定のトルクを中心にしてエンジントルク(入力トルク)を周期的に変化させると、無段変速機1での滑り率が変化する。その滑り率の変化幅は、線形特性を示すミクロスリップ領域では、エンジントルクの変動幅に応じて増大するものの、その変化傾向は一律になるが、エンジントルクの変化がマクロスリップ領域にまで及ぶと、マクロスリップ領域での滑り率の変化が急激であるから、滑り率の変化の傾向が増大する。
【0061】
このような滑り率の変化は、図1に示すフローチャートを参照して説明したのと同様に、回転速度のフィルター処理値を積算して求めた積算値Sに基づいて判断することができる。したがってステップS8で肯定的に判断された場合には、エンジントルク(入力トルク)の周期的な変化を中止する(ステップS9−1)。
【0062】
図3のフローチャートにおけるステップS8で肯定的に判断された時点の平均エンジントルクは、制御開始時のトルクであって予め知られており、またそのトルクの変動幅は、制御値として予め知られているから、ステップS8で肯定的に判断された時点のエンジントルクの変動幅に基づいて、無段変速機1の挟圧力の平均トルクに対する関係、もしくは周期的に変動されられて一時的に高くなるエンジントルクに対する挟圧力の関係が求まり、その結果、挟圧力マップが変更される(ステップS10−1)。
【0063】
したがって図3に示す制御を実行するように構成した場合であっても、図1に示す制御を実行する場合と同様に、迅速かつ正確に、しかも無段変速機1に過剰な滑りを生じさせることなく、無段変速機1の滑り状態を検出でき、また適正な挟圧力を求め、あるいは補正することができる。
【0064】
なお、図1に示す例では、周期的に変化させる挟圧力の平均値を変化させることとし、これに対して図3に示す例では、周期的に変化させるエンジントルク(入力トルク)の変動幅を変化させることとしたが、この発明では、周期的に変化させる挟圧力の変動幅を変化させることとしてもよく、あるいは周期的に変化させるエンジントルク(入力トルク)の平均値を変化させることとしてもよい。このように構成した場合であっても、前述した積算値などに基づいて無段変速機1の滑り状態を検出でき、また挟圧力を補正することができる。したがって図3に示すステップS6−1の機能的手段、あるいはその制御内容を「エンジントルク平均値の徐増」に変更したステップS6−1の機能的手段が、請求項1の発明における入力トルク変動手段に相当し、また図1に示すステップS6の機能的手段、あるいはその制御内容を、「挟圧力変動幅の徐増」に変更したステップS6の機能的手段が、請求項2の発明における圧力変動手段に相当する。そして、図1および図3に示すステップS7およびステップS8の機能的手段が、この発明の滑り状態検出手段に相当する。
【0065】
ところで、エンジントルクを変動させる場合、その手段によって変動幅に制限があり、また無段変速機1を搭載している車両のドライバビリティや振動・騒音に悪影響を及ぼさない範囲に制限される。したがって前述したステップS8で肯定的に判断されることなく、エンジントルク(もしくは入力トルク)が変動限界に達してしまうことがある。その場合の制御例を図4に示してある。
【0066】
図4に示す制御例は、図3に示す制御例に、周期的に変化させるエンジントルクがその変動限界に達したか否かの判断をおこなうステップS8−2を追加し、かつ挟圧力マップの変更の仕方を変更したものである。すなわち、前記積算値Sがしきい値S1 に到らないことによりステップS8で否定的に判断された場合、ステップS8−2に進んで、周期的に変動させるエンジントルクがエンジントルクについての上限に達したか否かが判断される。
【0067】
このステップS8−2で否定的に判断された場合には、従前の制御を継続するために、一旦、このルーチンを抜ける。これとは反対にステップS8−2で肯定的に判断された場合には、前述したステップS9−1に進んで、エンジントルク(もしくは入力トルク)についての変動制御を中止する。そして、ステップS9−1でのトルク変動中止の直前の平均トルクやトルク変動幅、すなわちステップS8で肯定的に判断された時点の平均トルクやトルク変動幅、もしくはステップS8−2で肯定的に判断された時点の平均トルクやトルク変動幅に基づいて挟圧力あるいはその補正量が求められ、かつ挟圧力マップが変更される(ステップS10−2)。
【0068】
したがって図4に示すように制御すれば、無段変速機1に過剰な滑りが生じない(あるいはマクロスリップに到らない)エンジントルクもしくは入力トルクの上限値をステップS8−2で検出でき、その結果、変動させているエンジントルクの平均値に対応する挟圧力を、その時点で設定されている圧力より低くしてもマクロスリップが生じないことになるから、挟圧力を低下補正することができる。その低下補正量は、予め定めた一定値であってもよく、あるいはトルクの変動幅に応じた値であってもよい。
【0069】
無段変速機1に対する入力トルクを周期的に変動させるための手段は任意であって、各種の手段を採用することができる。例えば、動力源がガソリンエンジンで構成されている場合には、その点火時期の遅角制御によってエンジントルクを変動させることができ、また内燃機関と電動機もしくはモータ・ジェネレータとを動力源としたハイブリッド車では、その電動機もしくはモータ・ジェネレータの電流制御によって無段変速機1の入力トルクを変動させることができる。しかしながら、これらのトルク変動手段によるエンジントルクもしくは入力トルクの変化パターンは異なっており、例えば点火時期の遅角制御による場合には、エンジントルクの低下と復帰との繰り返しによって周期的な変動を生じさせることになり、その結果、平均トルクが低下することになる。
【0070】
したがって点火時期の遅角制御によってエンジントルクを周期的に変動させる場合には、エンジントルクの平均値の低下を抑制し、また応答遅れを抑制するために、図5に示すように制御することが好ましい。図5は、点火時期を繰り返し遅角するとともに、その遅角量を次第に増大させてエンジントルクの変動幅を増大させ、併せてスロットル開度を次第に増大させた場合のタイムチャートを模式的に示している。先ず、制御前提条件や開始条件が成立することによりA時点にスロットル開度が次第に増大させられる。この制御は、例えば電気的に開度を制御できる電子スロットルバルブ(電スロ)をエンジン5に設けておき、その電子スロットルバルブを制御することにより実行できる。
【0071】
電子スロットルバルブの開度の増大に対して所定の遅れをもってエンジントルクが変化するので、所定時間後のB時点に点火時期の遅角を開始する。その後のC時点にスロットル開度が所定値に達するが、遅角量も次第に大きくなっているので、スロットル開度の増大によるエンジントルクの増加と遅角によるエンジントルクの低下とがエンジントルクの変動を相殺し、結局、エンジントルク(入力トルク)がほぼ従前のままに維持される。
【0072】
そして、遅角量が制御開始時の値に達したD時点から点火時期の遅角と復帰とが繰り返され、かつその遅角量が次第に増大させられる。また、スロットル開度が遅角量の増大に合わせた勾配で、C時点から次第に増大させられる。その結果、点火時期の遅角と復帰とによってエンジントルクが周期的に変化し、またそれに伴うトルクの低下をスロットル開度の増大で補うので、平均トルクがほぼ一定に維持される。
【0073】
エンジントルクすなわち無段変速機1の入力トルクが上記のように周期的に変動することに伴って無段変速機1に回転変動が生じ、そのフィルター処理値の絶対値を時間窓積算した値Sが次第に増大する。そして、変動する入力トルクがマクロスリップ領域に達するようになると、積算値Sが急激に増大し、その結果、前述したステップS8で肯定的に判断され、点火時期がスロットル開度の増大に見合った量だけ遅角される。これが図5のE時点であり、その後、応答遅れの大きいスロットル開度の復帰制御を、点火時期の復帰に先行して実行し、スロットル開度が復帰するのに合わせて点火時期が復帰させられる。
【0074】
このように制御すれば、遅角制御に起因するトルクの低下を、スロットル開度の増大によって補うことができ、その結果、遅角によるエンジントルクの周期的な変動時の平均トルクを、制御開始前のトルクとほぼ同じに維持できる。その結果、駆動トルクの低下などによるドライバビリティの悪化などを未然に回避することができる。
【0075】
上述した無段変速機1で過剰な滑りが生じた場合、補修の困難な損傷が生じる可能性が高く、これに対して車両に搭載された無段変速機1に作用するトルクは複雑かつ多様に変化する。そこで、無段変速機1のベルト挟圧力を低下させて動力損失を低減する場合、無段変速機1を過剰な滑りから保護するために、いわゆるトルクヒューズを設けることが効果的である。そのトルクヒューズ制御とは、無段変速機1に対して直列に配列されているクラッチによって、無段変速機1に作用するトルクを制限する制御であり、駆動機構に作用するトルクが増大した場合に、例えば無段変速機1よりも先にロックアップクラッチ3に滑りが生じるように、無段変速機1とロックアップクラッチ3との伝達トルク容量すなわち挟圧力と係合圧とを設定する制御である。言い換えれば、滑りが生じるまでの伝達トルク容量の余裕を、無段変速機1に対してロックアップクラッチ3で小さくなるように設定する制御である。
【0076】
このトルクヒューズ制御が実施されていれば、無段変速機1でのベルト挟圧力を低下させている過程で外乱などにより大きいトルクが作用しても、ロックアップクラッチ3に滑りが生じて無段変速機1に作用するトルクが制限されるので、挟圧力を滑り限界圧力に低下させることが可能になる。しかしながら、前述した挟圧力や入力トルクを変動させて滑り状態を検出する場合には、トルクヒューズが機能して例えば前述したロックアップクラッチ3に滑りが生じすると、無段変速機1に作用するトルクが変化してしまう。その結果、無段変速機1での滑り状態が、挟圧力もしくは入力トルクの変動制御に起因して変化したのか、あるいはトルクヒューズが機能して変化したのかの判別をおこなえなくなる。このような不都合を未然に防止するために、この発明に係る制御装置は、図6に示す制御を実行するように構成されている。
【0077】
図6において、先ず、制御前提条件が成立しているか否かが判断される(ステップS21)。この判断は、例えば前述した図1あるいは図3に示すステップS1およびステップS2の判断であり、平坦路でかつ凹凸の少ない良路を定常状態もしくは準定常状態で走行しているか否かの判断である。このステップS21で肯定的に判断された場合には、その時点での無段変速機1に対する入力トルクが属するトルク領域についてトルクヒューズが既に設定されているか否かが判断される(ステップS22)。
【0078】
トルクヒューズの設定とは、無段変速機1のトルク容量の余裕すなわちその時点の入力トルクでマクロスリップが生じ始めるトルク容量に対するトルク容量の超過分に対して、ロックアップクラッチ3のトルク容量の余裕すなわちその時点の入力トルクでスリップが生じ始めるトルク容量に対するトルク容量の超過分を小さく設定することであり、言い換えれば、無段変速機1より先にロックアップクラッチ3に滑りが生じるように、ロックアップクラッチ3の係合圧を設定することである。
【0079】
したがってトルクヒューズが設定済であれば、その時点の入力トルクに対応する無段変速機1の挟圧力およびその挟圧力の下でのロックアップクラッチ3の係合圧が既に求められていることになるので、これらの挟圧力および係合圧が未だ求められていない場合、すなわちステップS22で否定的に判断された場合に、加振による無段変速機1で滑り状態の把握指令が出力される(ステップS23)。この加振とは、前述した挟圧力もしくは入力トルクの少なくともいずれか一方を周期的に変化させ、かつその平均値もしくは変動幅を変化させることである。また、滑り状態の把握とは、ベルト17の滑り状態の検出であり、一例として前述した積算値Sに基づいて判断できる。
【0080】
なお、ステップS23で加振をおこなう場合、ロックアップクラッチ3の係合圧は、挟圧力の周期的変動に基づく入力側部材の回転変動に起因する慣性トルクによっても滑りが発生しない相対的に高い圧力に維持される。無段変速機1に作用するトルクを安定させるためである。
【0081】
ついで、滑り状態の把握すなわち検出が完了したか否かが判断される(ステップS24)。滑り状態の検出が完了してステップS24で肯定的に判断された場合には、無段変速機1における挟圧力の補正指令が出力される(ステップS25)。その挟圧力の補正は、前述した式
P=P0 −ΔP+ΔPa
に基づいておこなうことができる。
【0082】
なお、この場合の路面入力対応圧力ΔPa は、ロックアップクラッチ3を未だトルクヒューズとして設定していない状態の圧力とする。すなわち、外乱が生じた場合に無段変速機1に掛かるトルクを制限する状態が設定されていないので、路面入力対応圧力ΔPa は、相対的に高いに圧力に設定される。こうして路面入力を考慮して、無段変速機1に滑りが生じない範囲で可及的に低い挟圧力が設定され、挟圧力が最適化される。
【0083】
その後、トルクヒューズ設定指令が出力される(ステップS26)。これは、例えばその時点の入力トルクでロックアップクラッチ3が滑り始める係合圧を求め、もしくは微少滑りの後に再係合する係合圧を求め、その係合圧に所定の余裕圧(安全率)を加えることによりおこなうことができる。
【0084】
さらに、ヒューズ圧設定済か否か、すなわちトルクヒューズ設定が完了したか否かが判断される(ステップS27)。これは、上記のステップS26の制御が完了したか否かの判断であり、したがって否定的に判断された場合には、その制御を継続するために、このルーチンを一旦抜ける。これに対して肯定的に判断された場合には、挟圧力についての路面入力対応圧力の補正指令が出力される(ステップS28)。
【0085】
上記のステップS25での挟圧力の補正は、挟圧力のうち路面入力対応分以外の圧力(より具体的には入力トルク対応分)を滑り状態の検出結果に基づいて補正し、路面入力対応分は従前の相対的に高い圧力に維持する。これは、トルクヒューズが設定されていないことによるものであるから、ステップS27でトルクヒューズ設定の完了が判断された後には、挟圧力のうち路面入力対応分が低下補正される。その結果、挟圧力の全体としての圧力が低下するが、その滑りに対する余裕分が、トルクヒューズとして機能するロックアップクラッチ3における同様の余裕分より大きくなっているので、外乱が生じても無段変速機1に過剰な滑りが生じる可能性は少ない。
【0086】
すなわち、図6に示す制御例では、滑り状態の検出結果に基づいて、挟圧力のうち路面入力対応分以外の圧力を補正し、トルクヒューズの設定が完了した後に、挟圧力のうちの路面入力対応分を補正する。また、無段変速機1での挟圧力の設定もしくは補正と、ロックアップクラッチ3のトルクヒューズとしての係合圧の設定もしくは補正が、入力トルク領域が変化しない状態で、すなわち共通する運転状態の下で連続して実行される。そのため、挟圧力および係合圧の設定もしくは補正のため条件判定が容易になるとともに、その制御を簡単かつ迅速におこなうことができる。
【0087】
なお、制御前提条件が成立していないことによりステップS21で否定的に判断された場合、およびトルクヒューズ設定済のためにステップS22で肯定的に判断された場合、ならびに滑り状態の検出が完了していないことによりステップS24で否定的に判断された場合には、補正前の挟圧力を設定する指令が出力される(ステップS29)。すなわち図6に示す制御開始以前の状態が維持される。無段変速機1の過剰な滑りを防止するためである。
【0088】
したがって図6に示す制御を実行するように構成した場合には、無段変速機1の挟圧力を低下させる制御を実行している場合には、ロックアップクラッチ3が無段変速機1に対するトルクヒューズとして機能し、外乱が生じた場合に、無段変速機1に掛かるトルクをロックアップクラッチ3によって制限できるので、無段変速機1の過剰な滑りを防止もしくは抑制でき、しかもいわゆる加振によって滑り状態を検出もしくは把握する場合には、そのロックアップクラッチ3に滑りが生じないように係合圧が制御されるので、滑り状態を精度良く検出することができる。さらに、挟圧力を滑り状態の検出結果に基づいて補正する場合には、先ず、路面入力対応分以外の圧力について補正し、トルクヒューズの設定が完了した後に路面入力対応分の低下補正をおこなうので、その補正過程での外乱によって無段変速機1に過剰な滑りが生じることを防止もしくは抑制することができる。
【0089】
前述した無段変速機1の挟圧力は油圧によって設定するが、油圧の制御応答性は必ずしも良くなく、電気的な指令信号に対して不可避的な遅れを生じる。これに対して無段変速機1の挟圧力は、入力トルクを伝達できる範囲で可及的に低い滑り限界圧力に路面入力対応分の圧力を加えた圧力に設定することが好ましいので、滑り限界圧力もしくは滑り状態を正確に検出することが望まれる。
【0090】
前述した図16に示す無段変速機1は、挟圧力を設定する油圧すなわち従動プーリ14側のアクチュエータ16の油圧を検出する油圧センサー24を備えているので、この計測値を挟圧力の制御に利用することが可能であり、こうすることにより挟圧力制御が正確になる。図7および図8は、実測した挟圧力を滑り状態の検出や挟圧力制御に利用するように構成したこの発明の装置による制御例を示している。
【0091】
先ず、図7において、過渡変速中か否かが判断される(ステップS31)。この判断は、要は、挟圧力を変動させることに伴う滑り状態の検出制御に対する前提条件が成立しているか否かの判断であり、したがって過渡変速中か否かの判断に加えて、前述したステップS1やステップS2の判断、あるいはステップS21の判断をおこなうこととしてもよい。
【0092】
このステップS31で否定的に判断された場合には、特に制御をおこなうことなくリターンする。これとは反対にステップS31で肯定的に判断された場合に、指令値Aが最低圧ガード値より大きいか否かが判断される(ステップS32)。この指令値Aは、周期的に変化させる油圧の平均値、およびその変動幅(もしくは振幅)を指令する値を含んでいる。また、最低圧ガード値は、エンジン油圧などによって機械的に決まる圧力あるいはフェイルセーフなどの観点から制御上定められた最低油圧値である。したがってステップS32で否定的に判断された場合、すなわち指令値Aが最低圧ガード値以下となる場合には、平均油圧の低下や挟圧力の周期的な変動を実行できない状態にあることになるので、設定油圧をライン圧などの元の圧力に戻し(ステップS33)、この図7および図8に示すルーチンを終了する。
【0093】
これとは反対に指令値Aが最低圧ガード値より大きいことによりステップS32で肯定的に判断された場合には、所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS34)。無段変速機1の挟圧力は入力トルクに対応させて設定されるので、無段変速機1での滑り状態の検出、および油圧センサー24を使用した実挟圧力の検出は、入力トルクが変化しない状態で実行する必要がある。無段変速機1を搭載した車両が走行している場合、路面状態や運転者の意図などによってエンジン5の出力が変化し、エンジン5の出力に変化がない時間は比較的短い。そこで、エンジントルクが安定していると考えられ時間を所定時間として設定し、これを超えた場合には、エンジントルクすなわち無段変速機1の入力トルクが変化する可能性が高いことにより、図7および図8に示す制御を中止することとしたのである。
【0094】
したがってステップS34で肯定的に判断された場合には、制御を一旦中止し、設定油圧が元に戻される(ステップS33)。これに対して所定時間が経過していないことによりステップS34で否定的に判断された場合には、指令値Aにしたがって油圧(すなわち挟圧力)が加振される(ステップS35)。すなわち挟圧力が所定の平均圧力を中心にして高低に所定の周期で変動させられる。その油圧は、上述したとおり、従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の油圧であって、油圧センサー24によって検出されている油圧である。したがってその油圧の検出データBが読み込まれて保持される(ステップS36)。
【0095】
ついで、ベルト滑りが検出されたか否かが判断される(ステップS37)。挟圧力を周期的に変化させると、その過程で挟圧力が繰り返し低下するので、ベルト17の滑りが生じる可能性がある。ステップS37ではその滑りを検出したか否かが判断される。したがってステップS37で肯定的に判断された場合には、挟圧力が既に低くなっていることになり、あるいは何らかの異常もしくは想定していない状態が生じている可能性があるので、前述したステップS33に進んで、設定油圧を元に戻した後にリターンし、制御を一旦中止する。
【0096】
一方、ベルト滑りが検出されていないことによりステップS37で否定的に判断された場合には、油圧の平均値Cと上記のステップS36で読み込まれて保持されている油圧データBとの差の絶対値が、基準となる所定値より小さいか否かが判断される(ステップS38)。その平均値Cと比較される油圧データBは、例えば油圧データBのうちの最大値もしくは最低値であり、そのステップS38では実際に油圧の変化幅(振幅の半分)が所定値より小さいか否かを判断していることになる。
【0097】
したがってこのステップS38で否定的に判断された場合には、油圧の応答遅れなどが要因となって、実際の油圧の変化幅が想定しているより大きくなっていることになる。そのため、この場合には、指令値Aをインクリメント(ステップS39)した後、前述したステップS32に戻る。この指令値Aのインクリメントは、指令値Aの内容の変更であり、ここで説明している例では、油圧の変化幅が所定値より小さくなるように指令値Aを変更することである。これに対して油圧の変化幅が所定値より小さいことによりステップS38で肯定的に判断された場合には、指令値Aと油圧の実測値である前記油圧データBとに基づいて油圧の応答遅れが算出される(ステップS40)。
【0098】
図9に油圧の指令値Aと実測値Bとの変化を模式的に示してある。指令値Aが所定周期でかつ2αの振幅(変化幅はα)のサイン曲線で表される信号である場合、一定の時間間隔で油圧を実測すると、その実測値を滑らかな曲線で結ぶことにより、図9に実線で示す油圧データBが得られる。その実測値Bにおける最大値もしくは最小値と、平均油圧との差が実際の油圧の変化幅βとなる。その実測値Bでの変化幅βと指令値Aにおける変化幅αとの相違は、油圧の応答遅れなどによって生じる。
【0099】
一方、指令値Aにおける平均油圧と実測値Bの平均油圧とは一致しているから、指令値Aが平均油圧となったP点の時間と、その直後に実測値Bが平均油圧になったQ点の時間とを比較することにより、実際の油圧の遅れδを求めることができる。すなわち、実際の油圧データBは、変化幅がβ(振幅が2β)で、指令値Aに対して所定の位相遅れδをもったサイン曲線で表される。
【0100】
油圧データBの数が少ない状態では、最大値および最小値を正確に求めることができない。これに対して指令値Aおよび実測値Bでの平均値は判っているので、図9に示すP点およびQ点は、油圧データBの数が少なくても検出することができる。したがってステップS40では、その時点で既に得られている油圧データBと指令値Aとから実際の油圧(挟圧力)の応答遅れが算出される。このようにすれば、サンプリング定理で決められる高い周波数でのサンプリングをおこなうことなく、実際の油圧の応答遅れを求めることができる。
【0101】
ついで、油圧データBの数が所定値を超えたか否かが判断される(ステップS41)。油圧データBの数が充分でないことによりステップS41で否定的に判断された場合には、指令値Aがインクリメントされる(ステップS42)。具体的には、変化幅を維持したまま、平均値を低下させるように指令値Aが変更される。
【0102】
その後、所定時間が経過したか否かの判断(ステップS43)、指令値Aが最低圧ガード値より大きいか否かの判断(ステップS44)、指令値Aに従う加振(ステップS45)、油圧センサー24による検出データの読み込みおよび保持(ステップS46)、ベルト滑りが検出されたか否かの判断(ステップS47)の各制御が、上述したステップS32ないしステップS37と同様にして実行される。したがって所定時間が経過してステップS43で肯定的に判断された場合、および指令値Aが最低圧ガード値以下となってステップS44で否定的に判断された場合、ならびにベルト滑りが検出されてステップS47で肯定的に判断された場合には、前述したステップS33に進んで設定油圧を元に戻し、一旦このルーチンを終了する。
【0103】
これに対してベルト滑りが検出されないことによりステップS47で否定的に判断された場合には、インクリメントされた指令値Aの元での油圧データBの数が所定値を超えたか否かが判断される(ステップS48)。このステップS48で否定的に判断された場合には、ステップS42に戻る。すなわち、指令値Aを更新して再度、油圧データBの読み込みおよび保持を実行する。
【0104】
こうして所定数以上の油圧データBが得られたことによりステップS48で肯定的に判断されると、実測値Bに基づいて実際の油圧の振幅(変化幅)が算出される(ステップS49)。すなわち、データ数が充分になったことにより、上述した図9の実線で示すように実測値Bが得られ、その実測値Bにおける最大値あるいは最小値に基づいて振幅を算出することができる。
【0105】
このようにして指令値Aに対する実際の油圧の状態が正確に検出され、その後に更に指令値Aがインクリメントされる(ステップS50)。すなわち、平均油圧が低下させられる。その後、所定時間が経過したか否かの判断(ステップS51)、指令値Aが最低圧ガード値より大きいか否かの判断(ステップS52)、指令値Aに従う加振(ステップS53)、油圧センサー24による検出データの読み込みおよび保持(ステップS54)、ベルト滑りが検出されたか否かの判断(ステップS55)の各制御が、上述したステップS32ないしステップS37、あるいはステップS43ないしステップS47と同様にして実行される。したがって所定時間が経過してステップS51で肯定的に判断された場合、および指令値Aが最低圧ガード値以下となってステップS52で否定的に判断された場合には、前述したステップS33に進んで設定油圧を元に戻し、一旦このルーチンを終了する。
【0106】
また、ベルト滑りが検出されないことによりステップS55で否定的に判断された場合には、ステップS50に戻って指令値Aをインクリメントする。すなわち更新し、それ以降の制御を上述したとおりに再度実行する。そして、指令値Aの更新およびそれに伴う挟圧力の変化に起因する滑りが検出されると、ステップS55で肯定的に判断される。
【0107】
なお、このステップS55や上述したステップS37,S47におけるベルト滑りの検出は、変速比やその変化速度、駆動プーリ13の回転数の変化状態などに基づいておこなうことができる。また、検出した回転速度の信号をバンドパスフィルターあるいはハイパスフィルターなどでフィルター処理し、その処理値の絶対値を積算するなど、図1あるいは図3を参照して説明したようにして滑りを検出することができる。
【0108】
そして、ベルト滑りが検出された時点の実際の油圧(挟圧力)に基づいて、入力トルクによってベルト滑りが生じるいわゆる限界圧力が算出され、これに路面入力対応分もしくは所定の安全率を見込んだ油圧を加えて挟圧力が設定される(ステップS56)。
【0109】
図10には、挟圧力を周期的に変化させつつ、その平均値を低下させた場合の指令値Aと実測値Bとの変化、および滑り検出後の挟圧力を模式的に示してある。指令値Aに対して所定の遅れをもって実際の油圧が変化し、その指令値Aの平均値が低下することに伴って実際の油圧(挟圧力)も低下する。そして、油圧が周期的に変化しているから、その最低値も次第に低下する。その結果、ベルト17といずれかのプーリ13,14との間での滑りがいわゆるミクロスリップからマクロスリップに増大すると、これが滑りとして検出される。その時点の油圧(挟圧力)を最低圧として、これに路面入力対応分などの所定の油圧が加えられた圧力が挟圧力として設定される。
【0110】
したがって図7および図8に示す制御を実行するように構成した場合には、指令値Aに対して所定の遅れを生じる実際の油圧に基づいて、いわゆる滑り限界油圧を求め、またその実際の油圧に所定値を加えて挟圧力を設定するので、指令値Aと実油圧との誤差を含まない正確な挟圧力を設定することが可能になる。したがって実油圧の変化幅が指令値Aより大きくなる場合であっても、滑りを検出する過程で無段変速機1に過剰な滑りが生じるなどのことを防止もしくは抑制でき、無段変速機1の保護あるいは耐久性の維持の点で有利になる。
【0111】
なお、滑り状態を検出するために、周期的に変化させる挟圧力の変化幅を次第に増大させる場合に上述した実油圧のデータを利用するように構成することもできる。図11はその例を示しており、指令値Aの振幅を次第に増大させると、所定の遅れを伴って実油圧(すなわち検出油圧)Bが変化する。その結果、実油圧Bの変化幅が次第に増大して最低油圧が低下すると、無段変速機1にマクロスリップもしくはその直前の状態が生じ、これが滑りとして検出される。その滑り検出時点の油圧すなわち最低圧に基づいて挟圧力が設定される。具体的には、その最低圧に路面入力対応圧もしくは所定の安全率を見込んだ所定圧を加えた圧力が設定される。なお、検出された実油圧に基づいて指令値をフィードバック制御してもよい。
【0112】
ところで、図7,8に示す制御例では、指令値Aが最低圧ガード値以下になった場合に、設定油圧を元に戻すように構成したが、これに替えて、その最低圧ガード値を利用して挟圧力を設定することとしてもよい。その例を図12および図13に示してある。図12は、周期的に変化させる挟圧力の平均値を次第に低下させ、その過程で滑りが検出されることなく最低圧ガード値に達した例を示している。すなわち指令値Aにおける平均値を低下させつつ周期的に変動させる実油圧Bの最低値が最低圧ガード値に達すると、油圧の周期的な変動を中止するとともに、その最低圧ガード油圧を最低圧として、これに所定圧を加えた圧力に挟圧力が設定される。
【0113】
また、図13に示す例は、周期的に変化させる挟圧力の変化幅を次第に増大させ、その過程で滑りが検出されることなく最低圧ガード値に達した例である。すなわち指令値Aにおける平均値を低下させつつ周期的に変動させる油圧Bの最低値が最低圧ガード値に達すると、油圧の周期的な変動を中止するとともに、その最低圧ガード油圧を最低圧として、これに所定圧を加えた圧力に挟圧力が設定される。
【0114】
これら図12および図13に示すいずれの場合であっても、挟圧力を最低圧ガード値にまで低下させてもベルト滑りが生じないことを検出したことになり、その検出結果を有効に利用して挟圧力を可及的に低下させることになる。したがって、指令値Aが最低圧ガード値以下になることによって設定圧を戻す制御に比較して、挟圧力を低圧に維持できる機会が増大し、そのため燃費の向上に有利になる。
【0115】
つぎに、この発明の更に他の具体例について説明する。周期的に変化させる挟圧力あるいは入力トルクの平均値を変化させる場合、上述した各具体例では、その平均値を滑らかに、あるいは連続的に変化させ、かつ滑り状態を示す指標として前記積算値Sを使用することとしたが、その平均値を所定時間、一定に維持した後、ステップ的に低下させ、かつ平均値を変化させた前後では、滑り状態を判定するための指標を異ならせることとしてもよい。その例を図14および図15に示してある。
【0116】
図14はその制御例を説明するためのフローチャートであり、また図15はその制御を実行した場合の概略的なタイムチャートであって、先ず、図14において、制御の前提条件が成立しているか否かが判断される(ステップS61)。この判断は、例えば前述した図6に示すステップS21と同様の判断である。このステップS61で肯定的に判断された場合には、その時点の入力トルクと変速比γとで定まる運転領域についての挟圧力が補正済みか否かが判断される(ステップS62)。挟圧力は、入力トルクと変速比γとに対応させて設定する必要があるので、入力トルクと変速比γとによって複数の運転領域を区分し、各運転領域毎に挟圧力を設定することとしてある。したがってその運転領域についての挟圧力が既に補正されていれば、重複して挟圧力の補正をおこなう必要がないので、ステップS62の判断をおこなうこととしたのである。
【0117】
現時点の運転領域についての挟圧力が未だ補正されていないことによりステップS62で否定的に判断された場合には、フラグFについて判断される(ステップS63)。このフラグFは、制御の進行状態に応じて“0”または“1”あるいは“2”に設定されるフラグであり、制御の開始当初は、“0”に設定されている。したがって制御の開始当初は、ステップS63に続けて挟圧力の変動指令が出力される(ステップS64)。
【0118】
これは、図15のA時点であり、図16に示す従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16における油圧が所定の周期および振幅で変動させられる。その場合、油圧の平均値は一定に維持される。ついで所定時間(図15にはt1 の符号で示してある)が経過したか否かが判断される(ステップS65)。この所定時間は、ステップS64での変動指令に応じた変動状態に挟圧力が安定し、かつ挟圧力の周期的な変動に起因する回転速度の変化あるいは滑り指標を検出し、その処理をおこなうのに充分な時間である。したがってその所定時間のカウント開始時点は、挟圧力の変動指令の出力時点である。
【0119】
所定時間が経過していないことによりステップS65で否定的に判断された場合には、時間の経過を待つために、一旦、このルーチンを終了する。これに対して所定時間が経過したことによってステップS65で肯定的に判断された場合には、滑り指標が算出される(ステップS66)。この滑り指標としては、例えば前述した積算値Sを採用することができる。
【0120】
挟圧力を周期的に変動させると、前述した図2に示すように、滑り率が変化し、回転速度が変化する。それに伴って前記積算値Sが増大する。したがってステップS66に続けて、その滑り指標である積算値Sが所定のしきい値S1 以上か否かが判断される(ステップS67)。なお、このしきい値S1 は、入力トルクと変速比γとに応じて予め定められている。
【0121】
挟圧力を上記のように変動させても、滑り状態がマクロスリップあるいはその直前の状態に到ることがなければ、滑り指標Sがしきい値S1 にまで増大することがなく、その場合にはステップS67で否定的に判断される。そして、この場合には、周期的に変動させる挟圧力の平均値を所定量、低下させる指令信号が出力される(ステップS68)。これは、図15のB時点である。
【0122】
ついで、所定時間(図15にはt2 の符号で示してある)が経過したか否かが判断される(ステップS69)。なお、この所定時間t2 のカウント開始時点は、ステップS68における平均挟圧力の低下指令出力時点である。そして、この所定時間t2 は、平均値を低下させた状態で周期的に変動させる挟圧力が、指令値に応じた変動状態に安定し、かつ挟圧力の周期的な変動に起因する回転速度の変化あるいは滑り指標を検出し、その処理をおこなうのに充分な時間である。
【0123】
所定時間t2 が経過していないことによりステップS69で否定的に判断された場合には、フラグFが“1”にセットされ(ステップS70)、その後、このルーチンを一旦終了する。したがってこのルーチンを実行する次のサイクルの際に、運転条件が特には変化していなければ、ステップS63で“F=1”の判断が成立し、その結果、直ちにステップS69に進んで、所定時間の経過が判断される。
【0124】
こうして所定時間t2 が経過すると、ステップS69で肯定的に判断される。その場合、滑り指標値として、上記のステップS66で算出された前回の積算値Sと、平均値を低下させた後に算出された今回の積算値Sとの偏差ΔSが確定される(ステップS71)。そしてその滑り指標値ΔSが予め定めたしきい値ΔS1 以上か否かが判断される(ステップS72)。
【0125】
このステップS72で肯定的に判断された場合には、挟圧力が未だ相対的に高い状態にあり、マクロスリップあるいはその直前の状態が生じていないことになる。したがってこの場合は、フラグFを“2”にセット(ステップS73)した後、このルーチンを一旦終了する。したがって次のサイクルにおいて走行状態が特には変化していなければ、ステップS63で“F=2”の判断が成立するので、直ちにステップS68に進み、平均挟圧力が所定量低下させられる。これは、図15のC時点である。すなわち、マクロスリップもしくはその直前の状態に到ったことが検出されなければ、平均挟圧力が順次、ステップ的に低下させられ、その低下した平均圧力の状態で周期的に変動させられる。そして、平均挟圧力を低下させた状態で周期的に変動させる期間は、図15のD時点までの所定時間t2 である。
【0126】
こうして挟圧力が低下させられることにより、無段変速機1の滑り状態がマクロスリップもしくはその直前の状態に到ると、ステップS72で肯定的に判断される。すなわち前記滑り指標としての偏差ΔSがしきい値ΔS1 以上になる。その結果、挟圧力の変動およびその平均値の低下を中止する指令信号が出力される(ステップS74)。そして、ステップS72で肯定的に判断された時点の平均挟圧力と振幅もしくは変動幅とからいわゆる滑り限界圧力(前述した最低圧)が求められ、これに路面入力対応分あるいは所定の安全率に相当する圧力などの所定値を加えた圧力が求められ、挟圧力がその圧力に設定され、かつ挟圧力のマップ値が変更される(ステップS75)。また、これと併せて、フラグFがゼロリセットされ、かつ読み込まれて保持されている各値(ストア値)がクリアされる。
【0127】
なお、これらステップS74およびステップS75の制御は、マクロスリップもしくはその直前の状態が検出された場合に実行されるから、前記ステップS67で肯定的に判断された場合にも同様に実行される。
【0128】
また、制御の前提条件が成立しないこと、あるいは成立しなくなったことにより、上記のステップS61で否定的に判断された場合、および入力トルクや変速比が変化して運転領域が従前とは変化した場合には、その時点で実行されていた挟圧力の周期的に変動およびその平均値の低下の中止指令が出力され、併せてフラグFおよびストア値がクリアされる(ステップS76)。そして、その時点では、未だマクロスリップもしくはその直前の状態の判断が成立していないので、挟圧力が相対的に高い状態、もしくはマクロスリップを生じさせることのない状態にあることになるので、その時点の平均挟圧力と変動幅とに基づいて挟圧力が決定される。
【0129】
したがって上記の図14に示す制御を実行するように構成した場合には、平均挟圧力を所定値に維持し、その状態での挟圧力の変動が安定している際に滑り状態を検出し、またその滑り状態の判定のための指標を、平均挟圧力の低下に伴って変更しているので、滑り状態を正確に検出することができる。
【0130】
なお、挟圧力と入力トルクとは相互に対応する関係にあり、一方が増大した場合に他方が相対的に低下した状態となる関係にあるから、前述した各具体例について説明したのと同様に、図14に示す制御例においても、挟圧力を変動させる替わりに、入力トルクを周期的に変動させ、かつその平均値を次第に増大させることとしてもよく、その場合であっても、滑り状態を正確に検出することができる。
【0131】
ここで、上記の各具体例とこの発明との関係をまとめて説明すると、前述したステップS5−1およびステップS6−1の機能的手段が、請求項1の発明における入力トルク変動手段に相当し、またステップS5およびステップS6の機能的手段が、請求項2の発明の圧力変動手段に相当し、さらにステップS7およびステップS8の機能的手段が、請求項1および請求項2の各発明の滑り状態検出手段に相当する。また、前述したステップS23に含まれる機能的手段が、請求項3の発明における変動手段および係合圧制御手段、請求項4の発明における変動手段および滑り状態検出手段、ならびに請求項6の発明における変動手段にそれぞれ相当し、ステップS25の機能的手段が、請求項4の発明の圧力補正手段に相当し、さらにステップS27およびステップS28の機能的手段が、請求項5の発明の圧力設定手段に相当し、そしてステップS26の機能的手段が、請求項6の発明のトルク容量設定手段に相当する。
【0132】
一方、前記ステップS35,S45,S53の各機能的手段が、請求項7の発明の圧力変動手段に相当し、ステップS36の機能的手段が、請求項7の発明の圧力検出手段に相当し、ステップS56の機能的手段が、請求項7の発明の圧力制御手段に相当し、そしてステップS37,47,55の各機能的手段が、請求項7の発明の滑り状態検出手段に相当する。さらに、前記ステップS64およびステップS68の機能的手段が、請求項8および請求項9の変動手段に相当し、またステップS67およびステップS72の機能的手段が、請求項8および請求項9の発明の滑り状態検出手段に相当する。
【0133】
なお、この発明は上記の具体例に限定されないのであって、この発明における無段変速機は、ベルト式無段変速機以外に、トロイダル型(トラクション式)無段変速機であってもよく、また無段変速機に対して直列に連結されていわゆるトルクヒューズとして機能させるクラッチは、ロックアップクラッチ以外に、いわゆる発進クラッチなどの他のクラッチであってもよい。また、この発明において入力トルクを変化させる手段は、上述した点火時期の遅角による手段に限らないのであって、例えば燃料噴射量を変化させる手段であってもよく、またハイブリッド車にあっては、動力源としてのモータ・ジェネレータの出力トルクを変化させる手段であってもよい。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、振幅もしくは平均値の変化を伴って周期的に変化する入力トルクの最大値付近で、通常のトルク伝達状態での滑りを超えた滑りすなわちマクロスリップを生じる直前の状態もしくはマクロスリップ状態が生じ、その結果、滑り状態の変化が相対的に顕著になるので、無段変速機の滑りを迅速にもしくは正確に検出することができる。
【0135】
また、請求項2の発明によれば、振幅もしくは平均値の変化を伴って周期的に変化する圧力の最小値付近で、通常のトルク伝達状態での滑りを超えた滑りすなわちマクロスリップを生じる直前の状態もしくはマクロスリップ状態が生じ、その結果、滑り状態の変化が相対的に顕著になるので、無段変速機の滑りを迅速にもしくは正確に検出することができる。
【0136】
さらに、請求項3の発明によれば、無段変速機の滑り状態を検出するために、入力トルクを周期的に変化させ、もしくは無段変速機のトルク容量を設定する圧力を周期的に変化させる場合、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチが、滑りを生じないように制御され、その結果、無段変速機の滑り状態を検出する際における無段変速機に掛かるトルクの状態が安定するので、無段変速機の滑り状態を正確に検出することができる。
【0137】
さらにまた、請求項4の発明によれば、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチの係合圧が、無段変速機よりも先に滑りが生じる圧力に設定されるが、その係合圧は、無段変速機の滑り状態を検出するために、無段変速機の前記圧力あるいは入力トルクを周期的に変化させている際には、滑りの生じない圧力に設定され、滑り状態の検出結果に基づいて前記圧力が補正されるので、滑り状態の検出中では、無段変速機に掛かるトルクが安定し、無段変速機の滑り状態を正確に検出することができる。
【0138】
請求項5の発明によれば、この請求項4の発明で得られる効果に加え、滑り状態の検出結果に基づいて前記圧力が補正された後に、前記クラッチの係合圧が低下させられ、その後に、例えば前記圧力のうち路面入力対応分の圧力すなわち路面の状態に応じて出力側から作用することが想定されるトルクに対応する圧力が補正されるので、無段変速機における前記圧力を、無段変速機に過剰な滑りが生じない範囲で、可及的に低下させることができる。
【0139】
そして、請求項6の発明によれば、無段変速機の滑り状態の検出の際における運転状態と共通する運転状態の下で、いわゆるトルクヒューズとして機能させられクラッチの係合圧が、無段変速機に対して先にクラッチに滑りが生じるように設定されるから、無段変速機の滑り状態の検出とその検出結果に基づく前記圧力の補正もしくは設定に続けてクラッチの係合圧の設定をおこなうことが可能になり、無段変速機の前記圧力を過剰な滑りが生じない範囲で可及的に低下させる制御を迅速かつ正確におこなうことができる。
【0140】
さらにまた、請求項7の発明によれば、無段変速機の滑りを検出するために前記圧力を周期的に変化させ、またその検出結果に基づいて前記圧力を所定値に設定する場合、実測値に基づいてその圧力が制御されるから、前記圧力の設定精度もしくは制御精度を向上させることができ、さらには滑り状態の検出精度を向上させることができる。
【0141】
そしてまた、請求項8の発明によれば、無段変速機の挟圧力もしくは入力トルクが所定時間の間、周期的に変化させられ、その所定時間の間に無段変速機の滑り状態が検出されるため、無段変速機の挙動が前記圧力もしくは入力トルクの周期的変化に合わせて安定した状態で、滑り状態の検出が可能になり、その検出精度を向上させることができる。
【0142】
そして、請求項9の発明によれば、前記圧力もしくは入力トルクを所定時間の間、周期的に変化させたことに伴う滑り状態の顕著な変化が検出されないなどの場合、変化の態様を変更した状態で、再度、前記圧力もしくは入力トルクが周期的に変化させられ、かつそれに伴う滑り状態が検出されるため、上記の周期的な変化に合わせて無段変速機の挙動が安定した状態で滑りの状態が検出されることに加え、その周期的な変化の態様が多様化されるので、無段変速機の滑り状態を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】無段変速機に対する入力トルク(エンジントルク)と無段変速機で生じる滑り率との関係を示す線図である。
【図3】この発明の制御装置による制御の他の例を説明するためのフローチャートである。
【図4】この発明の制御装置による制御の更に他の例を説明するためのフローチャートである。
【図5】遅角によってエンジントルク(入力トルク)を周期的に変化させ、かつその変化幅を次第に増大させた場合のタイムチャートを模式的に示す図である。
【図6】この発明の制御装置による他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の制御装置による更に他の制御例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図8】この発明の制御装置による更に他の制御例を説明するためのフローチャートの他の部分を示す図である。
【図9】挟圧力指令値と実測値との関係を模式的に示す図である。
【図10】挟圧力を周期的に変化させつつその平均値を低下させて滑りが検出された場合の実油圧の変化を示す図である。
【図11】挟圧力を周期的に変化させつつその変化幅を増大させて滑りが検出された場合の実油圧の変化を示す図である。
【図12】挟圧力を周期的に変化させつつその平均値を低下させて最低圧ガード油圧に到った場合の実油圧の変化を示す図である。
【図13】挟圧力を周期的に変化させつつその変化幅を増大させて最低圧ガード油圧に到った場合の実油圧の変化を示す図である。
【図14】この発明の制御装置による更に他の制御例を説明するためのフローチャートである。
【図15】図14に示す制御を実行した場合のタイムチャートを模式的に示す図である。
【図16】この発明で対象とする無段変速機を含む駆動機構の一例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 5…エンジン(動力源)、 13…駆動プーリ、 14…従動プーリ、 17…ベルト、 20…駆動輪、 25…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)、 26…エンジン用電子制御装置(E/G−ECU)。
Claims (9)
- 動力源から入力されたトルクを伝達しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、
前記無段変速機に対する動力源側からの入力トルクを周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する入力トルクの平均値との少なくともいずれか一方を変更する入力トルク変動手段と、
その入力トルク変動手段によって前記入力トルクを変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機を含む駆動機構の制御装置。 - 加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、
前記圧力を周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する前記圧力の平均値との少なくともいずれか一方を変更する圧力変動手段と、
その圧力変動手段によって前記圧力を変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機を含む駆動機構の制御装置。 - 加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、
前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、
前記無段変速機の滑り状態を検出する際に前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、
その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる際の前記クラッチの係合圧を前記無段変速機よりも先に前記クラッチに滑りが生じない圧力に設定する係合圧制御手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機を含む駆動機構の制御装置。 - 加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、
前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、
そのクラッチの係合圧を滑りが生じないように設定した状態で、前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、
その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させることに伴う前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と、
その滑り状態検出手段で検出された滑り状態に基づいて前記圧力を補正する圧力補正手段と
を備えていること無段変速機を含む駆動機構の制御装置。 - 前記クラッチの係合圧を滑りが生じない範囲で低下させた後に、前記圧力を再度補正して設定する圧力設定手段を更に備えていることを特徴とする請求項4に記載の無段変速機を含む駆動機構の制御装置。
- 加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、
前記無段変速機に対して直列に連結されかつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチと、
そのクラッチの係合圧を滑りが生じないように設定した状態で、前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させる変動手段と、
その変動手段によって前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方を変化させることに伴う前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と、
その滑り状態検出手段で前記無段変速機の滑り状態を検出している際の前記無段変速機の運転状態と共通する運転状態において前記クラッチの係合圧を無段変速機より先に滑りが生じる圧力に設定するトルク容量設定手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機を含む駆動機構の制御装置。 - 加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ変速比を無段階に変化させる無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、
前記圧力を周期的に変化させるとともに、その変化幅と周期的に変化する前記圧力の平均値との少なくともいずれか一方を変更する圧力変動手段と、
前記圧力の実測値を求める圧力検出手段と、
その圧力変動手段で変動させる前記圧力を前記実測値に基づいて制御する圧力制御手段と、
前記圧力を変化させた際の前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機を含む駆動機構の制御装置。 - 加えられた圧力に応じてトルク容量が変化しかつ動力源から入力されたトルクを伝達する無段変速機の滑り状態を検出する無段変速機を含む駆動機構の制御装置において、
前記圧力と前記動力源側から入力される入力トルクとの少なくともいずれか一方を周期的に変化させる変動手段と、
その変動手段による前記圧力と入力トルクとの少なくともいずれか一方の周期的な変化を所定時間継続し、その所定時間の間に前記無段変速機の滑り状態を検出する滑り状態検出手段と
を備えていることを特徴とする無段変速機を含む駆動機構の制御装置。 - 前記滑り状態検出手段の検出結果に基づいて、前記圧力と前記入力トルクとの少なくともいずれか一方の周期的な変化の態様を変更し、かつその変更した態様で所定時間、該いずれか一方を変動させる手段を更に備えていることを特徴とする請求項8に記載の無段変速機を含む駆動機構の制御装置。
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