JP2004293653A - クラッチの制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】無段変速機構に対して直列に連結されたクラッチなどのクラッチの滑りを正確に検出し、またその係合圧を正確に設定する。
【解決手段】動力源から出力されたトルクが入力され、かつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチの制御装置であって、前記クラッチに対する入力トルクと前記係合圧との少なくとも一方を変化させる変動手段(ステップS12、ステップS16)と、入力トルクもしくは係合圧がが変化されたことに伴う前記クラッチの滑り状態を検出する滑り状態検出手段(ステップS9、ステップS13、ステップS17)とを備えている。
【選択図】 図1
【解決手段】動力源から出力されたトルクが入力され、かつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチの制御装置であって、前記クラッチに対する入力トルクと前記係合圧との少なくとも一方を変化させる変動手段(ステップS12、ステップS16)と、入力トルクもしくは係合圧がが変化されたことに伴う前記クラッチの滑り状態を検出する滑り状態検出手段(ステップS9、ステップS13、ステップS17)とを備えている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、係合圧に応じてトルク容量が設定されるクラッチの制御装置に関し、特にその滑り状態を検出する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、湿式あるいは乾式の摩擦クラッチが知られており、この種のクラッチでは、摩擦力を利用してトルクを伝達するように構成されている。したがってクラッチのトルク容量は、摩擦力とその摩擦面に作用する圧力(すなわち係合圧)とで決まる。そのため、係合圧を高くすれば、大きいトルクが入力した場合であっても、滑りを生じることなくそのトルクを伝達することができる。しかしながら、高い係合圧を発生するために動力を消費するので、車両のクラッチの係合圧をこのように高くするとすれば、燃費の悪化要因となる。
【0003】
したがってクラッチの係合圧は、入力トルクあるいは外乱などのよるトルクによって滑りを生じない範囲で可及的に低い圧力に設定することが望まれる。その場合、滑りの生じない範囲での最低の圧力すなわち滑り限界圧を求め、その滑り限界圧に所定の安全率に相当値を加えた圧力を係合圧として設定することになる。そのため、その滑り限界圧を予め求める必要がある。
【0004】
また、上記のクラッチにあっては、係合圧に基づいて定まるトルク容量以上のトルクが作用した場合には、滑りが生じて、それ以上にトルクを伝達しなくなるから、このような機能を有効に利用することも可能である。その一例が特表平9−500707号公報(特許文献1)に記載されており、この特許文献1に記載された発明では、ベルト式無段変速機の出力側にクラッチが直列に連結されており、そのクラッチに滑りが生じることにより無段変速機に作用するトルクを制限するように構成されている。そして、そのクラッチは無段変速機に対して先に滑りを生じる必要があるので、その滑りトルクを求める必要があり、そのため、特許文献1に記載された発明では、第1の圧力レベルから第2の圧力レベルに低下させることにより、クラッチに滑りが生じるトルクを求めるように構成している。
【0005】
また、非特許文献1には、ベルト挟圧力を周期的に変化させてベルトの滑りを検出する方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特表平9−500707号公報(第6〜7頁、図2)
【非特許文献1】
7th Luk Symposium(第7回ルーク シンポジューム)11./12. April2002 配布資料
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特表平9−500707号公報に記載された発明では、係合圧を低下させてクラッチに滑りが生じた後は、係合圧の低下以前に設定されていた係合圧よりも低く、滑りの生じない圧力に係合圧が設定されるので、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチの係合圧(トルク容量)を相対的に低い状態に維持することができる。
【0008】
しかしながら、その過程でクラッチに滑りが生じるように圧力を低下させるが、圧力の制御応答性が必ずしも速くないので、言い換えれば、応答遅れが不可避的に生じるので、低下させた油圧を、滑りを検出した後に昇圧するとしても、滑りの生じた時点の油圧より更に低下した後に、昇圧することになる。すなわち、応答遅れによってクラッチの滑りが更に進行し、また油圧の復帰に時間がかかる可能性があった。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、クラッチの滑り状態あるいは係合圧を正確に検出もしくは設定することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力源から出力されたトルクが入力され、かつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチの制御装置において、前記クラッチに対する入力トルクと前記係合圧との少なくとも一方を変化させる変動手段と、入力トルクもしくは係合圧がが変化されたことに伴う前記クラッチの滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0011】
したがって請求項1の発明では、入力トルクもしくは係合圧を変化させ、その状態でクラッチの滑りの状態すなわち滑りが生じるか、もしくは滑りが生じやすいか、あるいは反対に滑りが生じにくい状態かなどが検出される。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1における変動手段が、前記入力トルクもしくは係合圧を周期的に変化させる手段を含むことを特徴とするクラッチの制御装置である。
【0013】
したがって請求項2の発明では、クラッチの入力トルクもしくは係合圧が周期的に変化し、その変化の過程においてクラッチの入力トルクもしくは係合圧が増大した時点にクラッチに滑りもしくはその直前の状態が生じる。これは、クラッチの入力トルクもしくは係合圧の周期的な変化における瞬間的な状態であり、その直後にクラッチの入力トルクもしくは係合圧が低下するので、クラッチが過剰な滑り状態に到ってしまうことが回避される。また、入力トルクを変化させる場合、クラッチの出力側に現れるトルクは、周期的に変化するトルクの平均値となるので、平均値を維持して入力トルクを変化させることにより、出力トルクに対する影響が防止もしくは抑制される。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2における変動手段が、周期的に変化させられる前記入力トルクもしくは係合圧の振幅を変化させることを特徴とする制御装置である。
【0015】
したがって、請求項3の発明では、クラッチへの入力トルクもしくはクラッチの係合圧を周期的に変化させる場合に、その振幅が変化させられ、その過程で滑り状態が検出される。その結果、平均値が変化しなくても、滑りが生じやすい状態を設定し、滑りの生じる係合圧が正確に検出される。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2または3における変動手段が、周期的に変化させられる前記入力トルクもしくは係合圧の平均値を変化させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0017】
したがって請求項4の発明では、クラッチへの入力トルクもしくはクラッチの係合圧を周期的に変化させる場合に、平均値が変化させられ、その過程で滑り状態が検出される。その結果、滑りの生じやすい状態を設定して滑りの生じる係合圧が正確に検出される。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし4いずれかにおける滑り状態検出手段による検出結果に基づいて前記クラッチを制御するトルク伝達制御手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0019】
したがって請求項5の発明では、入力トルクもしくは係合圧を変化させることに伴う滑りの状態が検出され、その検出結果により係合圧などが制御される。そのため、クラッチのトルク容量が適正化される。
【0020】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とするクラッチを含む駆動系統の一例を説明すると、図7は、ベルト式無段変速機1を伝動機構として含む駆動機構を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
【0021】
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成されている。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナーと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナーに供給することよりタービンランナーを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
【0022】
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナーとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナーなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。
【0023】
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図4に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
【0024】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ13と従動プーリ14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリ13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。
【0025】
なお、従動プーリ14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリ13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。これに対して駆動プーリ13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径もしくは巻掛け径)に設定するようになっている。
【0026】
上記の従動プーリ14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、この発明におけるクラッチに相当するロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
【0027】
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリ13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリ14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23、ベルト挟圧力を設定するための従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の圧力を検出する油圧センサー24が設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
【0028】
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
【0029】
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数(入力回転速度)Ninの信号、無段変速機1の出力回転数(出力回転速度)No の信号が、それぞれに対応するセンサから入力されている。また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。
【0030】
なお、変速機用電子制御装置25からエンジン用電子制御装置26に対して、エンジントルクの変動要求が入力されている。このエンジントルク変動要求には、エンジントルクの変動幅すなわち振幅や変動周波数すなわち周期などが含まれる。そして、このエンジントルク変動要求は、エンジントルクを変動させることに伴ってロックアップクラッチ3に滑りの状態(例えば滑り率)の変化を生じさせ、その状態での係合圧に基づいて係合圧を補正し、もしくは係合圧のマップ値を求めるなどのために出力される。詳細については後述する。
【0031】
さらに、シフト装置27からは、現在のポジション信号が変速機用電子制御装置25へ入力されている。このポジション信号は、現在の状態が定常状態か否かの判断に用いられる。これも、詳しくは後述する。
【0032】
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に(言い換えれば、連続的に)制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
【0033】
そのような燃費向上の利点を損なわないために、無段変速機1における動力の伝達効率が良好な状態に制御される。具体的には、無段変速機1のトルク容量すなわちベルト挟圧力が、エンジントルクに基づいて決まる目標トルクを伝達でき、かつベルト17の滑りが生じない範囲で可及的に低いベルト挟圧力に制御される。その制御は、挟圧力と入力トルクとの相互の関係、例えば入力トルクに対する挟圧力の過剰もしくは不足の状態を検出し、その検出の結果に基づいて挟圧力を補正することにより実行される。
【0034】
上記のロックアップクラッチ3は、無段変速機1に対して直列に連結されているので、ロックアップクラッチ3を無段変速機1に対するトルクヒューズとして機能させることができる。トルクヒューズとは、無段変速機1に過剰な滑り(マクロスリップ)が生じる前にロックアップクラッチ3で滑りを生じさせて、無段変速機1に作用するトルクを制限する機能である。したがってロックアップクラッチ3をこのように機能させるためには、そのトルク容量の余裕すなわち所定の入力トルクの下で滑りが生じるトルク容量を上回るトルク容量分が、無段変速機1でのトルク容量の余裕より小さくなるように制御する必要がある。そこでこの発明の制御装置は、トルクヒューズ圧を正確に設定するために、ロックアップクラッチ3の滑り状態を検出し、その検出結果に基づいて係合圧を設定するように構成されている。
【0035】
その制御例を上述した駆動機構におけるロックアップクラッチ3を対象として例に基づいて説明する。図1と図2はその制御例を示すフローチャートであり、図3はその制御を実行した場合の回転数、ロックアップクラッチ3の係合圧(油圧)の変化を示すタイムチャートである。
【0036】
この発明の制御装置は、無段変速機構と直列に配列されたクラッチの伝達トルク(トルク容量)の余裕を、無段変速機構の伝達トルク(トルク容量)の余裕より小さく設定する制御をおこなう制御装置である。その「余裕」とは、定常状態で滑りが生じない最小の伝達トルクを超える伝達トルクの幅もしくは差である。したがって、その余裕の範囲で正トルクもしくは負トルクが変化しても、上記のロックアップクラッチ3や無段変速機構1に滑りが生じない。また、その余裕を超えて正トルクもしくは負トルクが変化した場合には、クラッチが無段変速機構よりも先に滑り、いわゆるトルクヒューズとして機能する。
【0037】
この発明では、ロックアップクラッチ3の伝達トルクに余裕を与えるようにその係合圧(油圧)を設定するにあたり、先ず、ロックアップクラッチ3が安定的にオン制御されていることから制御を始める。これが、制御の前提条件であり、したがって図1に示すように、先ず、その制御前提条件の成立が判断される(ステップS1)。
【0038】
ここで、安定的にオン制御されているとは、その時点の通常の走行状態で滑りを生じることなく係合状態を維持する係合圧が設定され、しかもその係合圧が過渡的な圧力でなく、安定して維持されている状態である。後述するように、係合状態から滑りが生じる直前の状態もしくは滑りの開始の係合圧にまで係合圧を変化させる制御をおこなうからである。
【0039】
この制御前提条件が成立する状態は、図3のA1 時点以前の状態として示してある。すなわちエンジン回転数Ne およびタービン回転数Nt がほぼ一定に安定しており、またロックアップクラッチ(L/Uクラッチ)の油圧が滑りの生じない程度に高い圧力に一定しており、さらにベルト挟圧力がベルト滑りの生じない程度に高い圧力に一定している。これは、通常の走行状態、例えばシフトポジションがドライブレンジ(Dレンジ)での制御内容であり、図3には「F=0」として示してある。なお、このフラグFは、制御進行状態を示しており、図1および図2のフローチャートでは制御ステップの行き先を示すようにも機能する。
【0040】
上記のステップS1で肯定的に判断された場合には、制御開始条件が成立したか否かが判断される(ステップS2)。制御開始条件が成立したことが判断された場合、すなわちステップS2で肯定的に判断された場合には、フラグFが“1”とされる(ステップS3)。なお、既に制御開始条件が成立している場合には、ステップS2で否定的に判断され、その場合はステップS3を飛ばしてステップS4に進む。
【0041】
ロックアップクラッチ3をいわゆるトルクヒューズとして作用させる制御は、エンジン5から入力される駆動トルク(あるいは正トルク)や駆動輪20側から掛かる負トルクが安定している場合に可能であり、したがって定常状態を条件として制御をおこなう。これが制御開始条件である。その定常状態とは、アクセル開度(図示しないアクセルペダルの踏み込み量)や無段変速機構1の出力側のトルク(例えば従動プーリ16の軸トルク)の所定時間内の変化が所定範囲内であることである。そして、その所定範囲は車速に応じた範囲とすることができる。
【0042】
つぎに、ステップS4において制御終了条件が成立しているか否かが判断される。この制御終了条件は、上記の制御開始条件とされているいずれかの状態が成立しなくなることであり、例えば車両の走行状態が定常状態ではなくなったこと、あるいはロックアップクラッチ3が係合状態ではなくなったことなどである。
【0043】
なお、ステップS1およびステップS4で否定的に判断された場合、すなわち制御前提条件と制御開始条件とのいずれもが成立していない場合、フラグFを“0”とし(ステップS25)、このルーチンを一旦抜ける。
【0044】
制御終了条件が成立していないことによりステップS4で否定的に判断された場合には、フラグFが“1”に設定されているか否かが判断される(ステップS5)。上記のように制御開始条件が成立した場合にはフラグFが“1”に設定されているので、このステップS5では肯定的に判断される。その結果、ロックアップクラッチ3の係合圧(油圧)が第1の所定油圧P1に設定される(ステップS6)。これは、図3のA1 時点である。なお、ステップS5で否定的に判断された場合にはステップS6ないしステップS10を飛ばしてステップS11に進む。
【0045】
そして、この所定油圧P1は、ロックアップクラッチ3の特性のバラツキを考慮しても滑りの生じない程度の係合圧である。その圧力は、ロックアップクラッチ3に対する入力トルクに基づいて求めた摩擦係数μや機構上の特性のバラツキを考慮して設定された油圧とすることができ、あるいは無段変速機構1における目標とする挟圧力から無段変速機構1の入力トルクを求め、その入力トルクに基づいて演算した油圧とすることができる。
【0046】
ついで、所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS7)。この所定時間は、係合圧を所定油圧P1に低下させる指令信号を出力してから係合圧が所定油圧P1に安定するまでに要する時間であり、予め定められた一定値もしくは車両の状態に応じて設定されたマップ値などである。図3では、A1 時点からB1 時点までの時間である。
【0047】
このステップS7で肯定的に判断された場合には、「F=1」の制御が終了したことになるので、フラグFが“2”に設定される(ステップS8)。これは、図3のB1 時点である。そして、ロックアップクラッチ3に滑りが生じたか否かが判断される(ステップS9)。なお、上記の所定時間が経過していないことによりステップS7で否定的に判断された場合には、ステップS8を飛ばしてステップS9に進む。
【0048】
このステップS9は、ロックアップクラッチ3の状態を確認することを目的として実行される。すなわちロックアップクラッチ3の伝達トルクに所定の余裕を設定する制御の過程でロックアップクラッチ3に意図しない(もしくは想定しない)滑りが生じると、その制御を正常に実行できなくなるからである。また、ロックアップクラッチ3の滑りの検出もしくは判定は、ロックアップクラッチ3の入力側の回転数Nin(例えばエンジン回転数)と出力側の回転数Ne (例えばタービン回転数)とを比較することによりおこなうことができる。より具体的には、これらの回転数の差が予め定めたしきい値より大きくなったことによって、ロックアップクラッチ3に滑りが生じたことを検出することができる。
【0049】
制御が想定したとおりに進行すれば、ロックアップクラッチ3に滑りが生じないので、ステップS9で否定的に判断される。これに対して、何らかの理由でロックアップクラッチ3に意図しない滑りが生じた場合には、ステップS9で肯定的に判断される。その場合、フラグFが“3”に設定される(ステップS10)。その後、ステップS11に進む。なお、ロックアップクラッチに滑りが生じないことによりステップS9で否定的に判断された場合には、ステップS10を飛ばしてステップS11に進む。
【0050】
ステップS11では、フラグFが“2”に設定されているか否かが判断される。上述したように、ロックアップクラッチ3の係合圧を上記の所定油圧P1 に低下させる制御が実行された場合には、フラグFが“2”に設定されている。すなわち、上記の所定時間が経過したことにより、ステップS8でフラグFが“2”に設定され、かつロックアップクラッチ3に意図しない滑りが生じていないことにより、上記のステップS10を飛ばしてステップS11に進んでいるので、フラグFが“2”に設定されている。したがって、ステップS11で肯定的に判断される。その場合には、ロックアップクラッチ3の係合圧(油圧)を、振動させながら振幅を徐々に大きくする(ステップS12)。これは図3のB1 時点からC1 時点までの制御である。なお、ステップS11で否定的に判断された場合は、ステップS12ないしステップS14を飛ばして、ステップS15へ進む。
【0051】
上記のステップS12による油圧を振動させかつ振幅を大きくさせる制御は、係合状態にあったロックアップクラッチ3に滑りを生じさせるための制御であり、したがってステップS13では、ロックアップクラッチ3に滑りが生じたか否かが判断される。この判断は、前述したステップS9におけるのと同様に、入力側の回転数と出力側の回転数とを比較し、もしくはその回転数差を所定のしきい値と比較することによりおこなうことができる。より具体的には、このステップS13で検出するロックアップクラッチ3の滑りは、係合圧を変化させることにより生じる微少な滑りであり、具体的には、例えば、ロックアップクラッチ3の入力側の回転数と出力側の回転数との回転数差が、予め定めた所定回転数(例えば50rpm)以上の状態が、予め定めた所定時間(例えば50ms)継続したことによって、ロックアップクラッチ3の滑りを検出することができる。
【0052】
ロックアップクラッチ3に微少滑りが生じることによりステップS13で肯定的に判断された場合には、つぎの制御に進むために、フラグFが“3”に設定される(ステップS14)。そして、ステップS15に進む。これとは反対にロックアップクラッチ3に未だ滑りが生じないことによりステップS13で否定的に判断された場合に、つぎの制御に進めないので、フラグFを書き換えずに(ステップS14を飛ばして)、ステップS15に進む。
【0053】
このステップS15では、フラグFが“3”に設定されているか否かが判断される。ロックアップクラッチ3の係合圧を上記のように振動させながら振幅を大きくすることにより、ロックアップクラッチ3が滑りを生じると、ステップS14でフラグFが“3”に設定されるので、ステップS15で肯定的に判断される。なお、ステップ15で否定的に判断されるとステップS15ないしステップ18を飛ばして、ステップS19へ進む。
【0054】
ステップS15で肯定的に判断されると、今度は、クラッチ油圧を振動させながら、振幅を徐々に小さくする(ステップS16)。これは、図3のC1 時点からD1 時点である。
【0055】
ついで、ロックアップクラッチ3の係合判定が成立したか否か、すなわちロックアップクラッチ3が係合したか否かが判断される(ステップS17)。これは、図3のD1 時点である。
【0056】
こうして「F=3」の制御が終了したことになるので、つぎの制御に進むために、フラグFが“4”に設定される(ステップS18)。その後、ステップS19に進む。なお、ロックアップクラッチ3が意図した滑りの後に再係合したことによりステップS17で否定的に判断された場合には、ステップS18を飛ばしてステップS19に進む。すなわちフラグFは“3”に維持される。
【0057】
図2はステップS19以降の制御例を示すフローチャートである。ステップS19では、フラグFが“4”に設定されているか否かが判断される。上記のように係合圧を変動させ、かつ振幅を大きくすることによりロックアップクラッチ3が微少滑りを生じ、その後に係合圧を変動させ、かつ振幅を小さくすることによりロックアップクラッチ3の再係合の判定が成立すれば、フラグFが“4”に設定されているので、ステップS19で肯定的に判断される。すなわち、係合圧の変化に伴ってロックアップクラッチ3の挙動が変化すると、「F=4」の制御に進むことになる。一方、ステップS19で否定的に判断されると、ステップS20ないしステップS22を飛ばしてステップS23へ進む。
【0058】
ステップS19で肯定的に判断されると、ロックアップクラッチ3の係合油圧が、「F=3」の開始時点(図3のC1 時点)における油圧値、および、「F=3」の終了時点(図3のD1 時点)における油圧値より設定圧を求める。すなわちロックアップクラッチ3の滑りが検出された時点での油圧値、および再係合が判定された時点での油圧値から算出された油圧値に設定される(ステップS20)。そして、所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS21)。これは、図3におけるD1 時点からE1 時点までの間であり、ロックアップクラッチ3の係合油圧を算出し設定した油圧に安定させるための予め定めた時間である。
【0059】
所定時間が経過することによりステップS21で肯定的に判断された場合には、つぎの制御に進むために、フラグFが“0”に設定される(ステップS22)。
【0060】
また、所定時間が経過していないことによりステップS21で否定的に判断された場合には、ステップS22を飛ばしてステップS23に進む。したがってこの場合は、フラグFは書き換えられずに“4”に維持される。
【0061】
さらに、この時点においても意図しないロックアップクラッチ3の滑りが生じたか否かが判断される。これがステップS23の制御である。これは、前述したステップS9やステップS13と同様の判断ステップである。したがってこのステップS23で肯定的に判断された場合には、その滑りに対応した制御に進むためにフラグFが“3”に設定され(ステップS24)、このルーチンの最初にもどる。したがって、次のルーチンではフラグFが“3”として扱われる。
【0062】
ステップS23で否定的に判断された場合、ステップS24を飛ばして、つまり、フラグFが変更されずに、このルーチンを一旦抜ける。
【0063】
なお、ここで、上記の具体例として開示してあるこの発明の他の態様を例示すれば、以下の通りである。
【0064】
上記ステップS12およびステップS16でクラッチの油圧を振動させながら、振幅を変化させたが、これに替えて、クラッチの油圧を振動させながら振動の平均値を変化させてもよい。図4はその制御を実行した場合の回転数、ロックアップクラッチ3の係合圧(油圧)の変化を示すタイムチャートである。
【0065】
所定の油圧値P1 まで落とした後(A2 時点)、所定時間経過させ(A2 時点からB2 時点)、クラッチ油圧を振動させながら、振動の平均値を徐々に低下させる(B2 時点からC2 時点。ステップS12に対応)。そして、クラッチの滑りが検出されると(C2 時点)、クラッチ油圧を振動させながら、振動の平均値を増加させる(C2 時点からD2 時点。ステップS16に対応)。その後、クラッチの再係合が検出されると(D2 時点)、滑りを検出した時の油圧値および、再係合したときの油圧値からクラッチ油圧を算出し、設定する。
【0066】
また、ステップS12およびステップS16でクラッチの油圧を変化させたが、これに替えて、クラッチに接続されたエンジン5の遅角制御により、入力トルクを変化させてもよい。図5はその制御を実行した場合の回転数、入力トルク、遅角量、スロットルバルブの開度の変化を示すタイムチャートである。
【0067】
入力トルクを変化させる前に、予め、エンジン5に設けてある電子スロットルバルブの開度を増大させる(A3 時点)。すなわち、点火時期の遅角制御を実行すると、エンジントルクが低下するので、エンジントルクの振幅の平均値を低下させないように、スロットル開度の増大によって遅角によるトルク低下を相殺するための制御である。以後、エンジンの遅角量の変化に合わせて、電子スロットルバルブの開度の制御がおこなわれる。
【0068】
スロットル開度を増大させた後、遅角が開始される(B3 時点)。その後一定時間が経過した後、遅角を復帰する(C3 時点)。そして、次の遅角を開始し、遅角量を前の遅角量よりも大きくする。これに合わせて、電子スロットルバルブの開度を徐々に大きくする。
【0069】
以上の動作を繰り返すことにより、エンジンの入力トルクを変動させながら、振幅を大きくする。これを、クラッチの滑りが検出されるまでおこなう(C3 時点からD3 時点。以上ステップS12に対応)。
【0070】
クラッチの滑りが検出されると、遅角量、および電子スロットル開度を共に減少させながら上記の動作を繰り返す。つまり、エンジンの入力トルクを変動させながら、振幅を小さくする。これを、クラッチの再係合が検出されるまでおこなう(D3 からE3 時点、以上ステップS16に対応)。
【0071】
クラッチの再係合が検出されると(E3 時点)、電子スロットル開度を制御の前の状態に戻し、遅角量を零にする。そして、クラッチの滑りが検出されたときのトルクおよび、再係合が検出されたトルクから、係合圧を算出し、設定する。
【0072】
このように制御すれば、遅角制御に起因するトルクの低下を、スロットル開度の増大によって補うことができ、その結果、遅角によるエンジントルクの周期的な変動時の平均トルクを、制御開始前のトルクとほぼ同じに維持できる。その結果、駆動トルクの低下などによるドライバビリティの悪化などを未然に回避できる。
【0073】
さらに、ステップS13でクラッチの滑り状態の判別を、一段階の閾値でおこなったが、これに替えて、二段階以上の閾値で滑り状態の判別をおこなってもよい。図6はその制御を実行した場合の回転数、クラッチ油圧または入力トルクの変化を示すタイムチャートである。
【0074】
上記の実施例と同様にクラッチ油圧または入力トルクを変動させながら振幅を増大させるが(A4 時点以前)、出力回転数と入力回転数の差分の変化率Δ(Ne −Nin)が第1の閾値Gに達した時点(A4 時点)で滑りの発生が近いと判断し、油圧もしくは入力トルクの変動の振幅の増加率を減少もしくは振幅を一定にさせる(A4 時点からB4 時点。ステップS12およびステップS13に対応)。これは、ノイズ等の外乱要因による不正確な検出を回避するためである。
【0075】
その後、第2の閾値Hに達し、クラッチの滑りを検出すると、振幅を減少させる(B4 時点からC4 時点)。以後は上記の実施例と同様の制御をおこない、係合圧を算出し、設定する。
【0076】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、ステップS12、ステップS16の各機能的手段が、この発明の変動手段に相当し、ステップS9、ステップS13、ステップS17、ステップS23の各機能的手段が、滑り状態検出手段に相当する。また、ステップS12、ステップS16で振幅の平均値を変化させる場合の機能的手段が、「入力トルクもしくは係合圧の平均値を変化させる手段」に相当する。さらに、ステップS20がトルク伝達制御手段に相当する。
【0077】
したがって上記の制御をおこなうこの発明の制御装置によれば、ロックアップクラッチ3の伝達トルクの余裕がゼロとなる係合圧力を求め、その圧力に、伝達トルクに所定の余裕を与えるいわゆる余裕圧力を加えて、ロックアップクラッチ3の係合圧力を設定するので、それ以降にロックアップクラッチ3の係合圧を滑りが生じるまで低下制御することがない。そのため、ロックアップクラッチ3の滑りが繰り返し生じたり、それに伴って駆動系統の動力の伝達効率が低下して燃費が悪化するなどの事態を未然に回避することができる。
【0078】
また、ロックアップクラッチ3の伝達トルクの余裕がゼロの状態を検出もしくは判定し、これに余裕圧力を加えるから、ロックアップクラッチ3の係合圧が過大になることがなく、その結果、ロックアップクラッチ3の伝達トルクの余裕を無段変速機構1での余裕に対して確実に小さく設定できる。さらに、その伝達トルクの余裕がゼロとなる係合油圧を、係合圧もしくは入力トルクを変化させて求めるので、ロックアップクラッチ3やその油圧制御機器などに個体差や経時変化があっても、これらに影響されずに、伝達トルクに所定の余裕が生じる係合圧を安定して設定することができる。
【0079】
さらにまた、定常的あるいは準定常的な走行状態でエンジントルクや駆動輪側の負トルクが急激に変化した場合には、ロックアップクラッチ3が無段変速機構1に先行して滑りを生じるので、無段変速機構1に滑りが生じることを確実に防止することができる。そして、そのような無段変速機構1の滑りを防止しつつ、その挟圧力を可及的に低くすることができるので、無段変速機構1での動力の伝達効率を向上させて、燃費を改善することができる。
【0080】
なお、この発明は、上述した具体例に限定されないのであって、この発明のクラッチは、上記のロックアップクラッチ以外に、車両の発進の際に次第に係合させられるいわゆる発進クラッチであってもよく、またその配列は、要は、トルクの伝達方向で無段変速機構と直列であればよく、したがって無段変速機構の入力側と出力側とのいずれであってもよい。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、入力トルクもしくは係合圧を変化させ、その状態でクラッチの滑りの状態すなわち滑りが生じるか、もしくは滑りが生じやすいか、あるいは反対に滑りが生じにくい状態かなどを検出することができる。
【0082】
また、請求項2の発明によれば、クラッチの入力トルクもしくは係合圧が周期的に変化し、その変化の過程においてクラッチの入力トルクもしくは係合圧が増大した時点にクラッチに滑りもしくはその直前の状態が生じる。これは、クラッチの入力トルクもしくは係合圧の周期的な変化における瞬間的な状態であり、その直後にクラッチの入力トルクもしくは係合圧が低下するので、クラッチが過剰な滑り状態に到ってしまうことが回避することができ、また、クラッチの出力側に現れるトルクは、周期的に変化するトルクの平均値となるので、出力トルクに対する影響を防止もしくは抑制できる。
【0083】
さらに、請求項3の発明によれば、クラッチへの入力トルクもしくはクラッチの係合圧を周期的に変化させる場合に、その振幅が変化させられ、その過程で滑り状態が検出するので、平均値が変化しなくても、滑りが生じやすい状態を設定し、滑りの生じる係合圧を正確に検出できる。
【0084】
また、請求項4の発明によれば、クラッチへの入力トルクもしくはクラッチの係合圧を周期的に変化させる場合に、平均値が変化させられ、その過程で滑り状態を検出するので、滑りの生じやすい状態を設定して滑りの生じる係合圧を正確に検出し、ひいては迅速もしくは確実に滑り状態を検出し、係合圧を設定することができる。
【0085】
さらに、請求項5の発明によれば、入力トルクもしくは係合圧を変化させることに伴う滑りの状態が検出され、その検出結果により係合圧などを制御するので、クラッチのトルク容量を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートの図1に続く部分を示す図である。
【図3】図1および図2の制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図4】振幅の平均値を変動させる制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図5】入力トルクを変動させる制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図6】滑り判定の閾値を2段階に設定した制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図7】この発明に係るクラッチを含む駆動系統を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 5…エンジン(動力源)、 13…駆動プーリ、 14…従動プーリ、 17…ベルト、 20…駆動輪、 25…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)、 26…エンジン用電子制御装置(E/G−ECU)。
【発明の属する技術分野】
この発明は、係合圧に応じてトルク容量が設定されるクラッチの制御装置に関し、特にその滑り状態を検出する制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、湿式あるいは乾式の摩擦クラッチが知られており、この種のクラッチでは、摩擦力を利用してトルクを伝達するように構成されている。したがってクラッチのトルク容量は、摩擦力とその摩擦面に作用する圧力(すなわち係合圧)とで決まる。そのため、係合圧を高くすれば、大きいトルクが入力した場合であっても、滑りを生じることなくそのトルクを伝達することができる。しかしながら、高い係合圧を発生するために動力を消費するので、車両のクラッチの係合圧をこのように高くするとすれば、燃費の悪化要因となる。
【0003】
したがってクラッチの係合圧は、入力トルクあるいは外乱などのよるトルクによって滑りを生じない範囲で可及的に低い圧力に設定することが望まれる。その場合、滑りの生じない範囲での最低の圧力すなわち滑り限界圧を求め、その滑り限界圧に所定の安全率に相当値を加えた圧力を係合圧として設定することになる。そのため、その滑り限界圧を予め求める必要がある。
【0004】
また、上記のクラッチにあっては、係合圧に基づいて定まるトルク容量以上のトルクが作用した場合には、滑りが生じて、それ以上にトルクを伝達しなくなるから、このような機能を有効に利用することも可能である。その一例が特表平9−500707号公報(特許文献1)に記載されており、この特許文献1に記載された発明では、ベルト式無段変速機の出力側にクラッチが直列に連結されており、そのクラッチに滑りが生じることにより無段変速機に作用するトルクを制限するように構成されている。そして、そのクラッチは無段変速機に対して先に滑りを生じる必要があるので、その滑りトルクを求める必要があり、そのため、特許文献1に記載された発明では、第1の圧力レベルから第2の圧力レベルに低下させることにより、クラッチに滑りが生じるトルクを求めるように構成している。
【0005】
また、非特許文献1には、ベルト挟圧力を周期的に変化させてベルトの滑りを検出する方法が記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特表平9−500707号公報(第6〜7頁、図2)
【非特許文献1】
7th Luk Symposium(第7回ルーク シンポジューム)11./12. April2002 配布資料
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特表平9−500707号公報に記載された発明では、係合圧を低下させてクラッチに滑りが生じた後は、係合圧の低下以前に設定されていた係合圧よりも低く、滑りの生じない圧力に係合圧が設定されるので、無段変速機に対して直列に連結されたクラッチの係合圧(トルク容量)を相対的に低い状態に維持することができる。
【0008】
しかしながら、その過程でクラッチに滑りが生じるように圧力を低下させるが、圧力の制御応答性が必ずしも速くないので、言い換えれば、応答遅れが不可避的に生じるので、低下させた油圧を、滑りを検出した後に昇圧するとしても、滑りの生じた時点の油圧より更に低下した後に、昇圧することになる。すなわち、応答遅れによってクラッチの滑りが更に進行し、また油圧の復帰に時間がかかる可能性があった。
【0009】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、クラッチの滑り状態あるいは係合圧を正確に検出もしくは設定することのできる制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力源から出力されたトルクが入力され、かつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチの制御装置において、前記クラッチに対する入力トルクと前記係合圧との少なくとも一方を変化させる変動手段と、入力トルクもしくは係合圧がが変化されたことに伴う前記クラッチの滑り状態を検出する滑り状態検出手段とを備えていることを特徴とする制御装置である。
【0011】
したがって請求項1の発明では、入力トルクもしくは係合圧を変化させ、その状態でクラッチの滑りの状態すなわち滑りが生じるか、もしくは滑りが生じやすいか、あるいは反対に滑りが生じにくい状態かなどが検出される。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1における変動手段が、前記入力トルクもしくは係合圧を周期的に変化させる手段を含むことを特徴とするクラッチの制御装置である。
【0013】
したがって請求項2の発明では、クラッチの入力トルクもしくは係合圧が周期的に変化し、その変化の過程においてクラッチの入力トルクもしくは係合圧が増大した時点にクラッチに滑りもしくはその直前の状態が生じる。これは、クラッチの入力トルクもしくは係合圧の周期的な変化における瞬間的な状態であり、その直後にクラッチの入力トルクもしくは係合圧が低下するので、クラッチが過剰な滑り状態に到ってしまうことが回避される。また、入力トルクを変化させる場合、クラッチの出力側に現れるトルクは、周期的に変化するトルクの平均値となるので、平均値を維持して入力トルクを変化させることにより、出力トルクに対する影響が防止もしくは抑制される。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2における変動手段が、周期的に変化させられる前記入力トルクもしくは係合圧の振幅を変化させることを特徴とする制御装置である。
【0015】
したがって、請求項3の発明では、クラッチへの入力トルクもしくはクラッチの係合圧を周期的に変化させる場合に、その振幅が変化させられ、その過程で滑り状態が検出される。その結果、平均値が変化しなくても、滑りが生じやすい状態を設定し、滑りの生じる係合圧が正確に検出される。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2または3における変動手段が、周期的に変化させられる前記入力トルクもしくは係合圧の平均値を変化させる手段を含むことを特徴とする制御装置である。
【0017】
したがって請求項4の発明では、クラッチへの入力トルクもしくはクラッチの係合圧を周期的に変化させる場合に、平均値が変化させられ、その過程で滑り状態が検出される。その結果、滑りの生じやすい状態を設定して滑りの生じる係合圧が正確に検出される。
【0018】
請求項5の発明は、請求項1ないし4いずれかにおける滑り状態検出手段による検出結果に基づいて前記クラッチを制御するトルク伝達制御手段を更に備えていることを特徴とする制御装置である。
【0019】
したがって請求項5の発明では、入力トルクもしくは係合圧を変化させることに伴う滑りの状態が検出され、その検出結果により係合圧などが制御される。そのため、クラッチのトルク容量が適正化される。
【0020】
【発明の実施の形態】
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とするクラッチを含む駆動系統の一例を説明すると、図7は、ベルト式無段変速機1を伝動機構として含む駆動機構を模式的に示しており、その無段変速機1は、前後進切換機構2およびロックアップクラッチ3付きの流体伝動機構4を介して動力源5に連結されている。
【0021】
その動力源5は、内燃機関、あるいは内燃機関と電動機、もしくは電動機などによって構成されている。なお、以下の説明では、動力源5をエンジン5と記す。また、流体伝動機構4は、例えば従来のトルクコンバータと同様の構成であって、エンジン5によって回転させられるポンプインペラとこれに対向させて配置したタービンランナーと、これらの間に配置したステータとを有し、ポンプインペラで発生させたフルードの螺旋流をタービンランナーに供給することよりタービンランナーを回転させ、トルクを伝達するように構成されている。
【0022】
このような流体を介したトルクの伝達では、ポンプインペラとタービンランナーとの間に不可避的な滑りが生じ、これが動力伝達効率の低下要因となるので、ポンプインペラなどの入力側の部材とタービンランナーなどの出力側の部材とを直接連結するロックアップクラッチ3が設けられている。このロックアップクラッチ3は、油圧によって制御するように構成され、完全係合状態および完全解放状態、ならびにこれらの中間の状態であるスリップ状態に制御され、さらにそのスリップ回転数を適宜に制御できるようになっている。
【0023】
前後進切換機構2は、エンジン5の回転方向が一方向に限られていることに伴って採用されている機構であって、入力されたトルクをそのまま出力し、また反転して出力するように構成されている。図4に示す例では、前後進切換機構2としてダブルピニオン型の遊星歯車機構が採用されている。すなわち、サンギヤ6と同心円上にリングギヤ7が配置され、これらのサンギヤ6とリングギヤ7との間に、サンギヤ6に噛合したピニオンギヤ8とそのピニオンギヤ8およびリングギヤ7に噛合した他のピニオンギヤ9とが配置され、これらのピニオンギヤ8,9がキャリヤ10によって自転かつ公転自在に保持されている。そして、二つの回転要素(具体的にはサンギヤ6とキャリヤ10と)を一体的に連結する前進用クラッチ11が設けられ、またリングギヤ7を選択的に固定することにより、出力されるトルクの方向を反転する後進用ブレーキ12が設けられている。
【0024】
無段変速機1は、従来知られているベルト式無段変速機と同じ構成であって、互いに平行に配置された駆動プーリ13と従動プーリ14とのそれぞれが、固定シーブと、油圧式のアクチュエータ15,16によって軸線方向に前後動させられる可動シーブとによって構成されている。したがって各プーリ13,14の溝幅が、可動シーブを軸線方向に移動させることにより変化し、それに伴って各プーリ13,14に巻掛けたベルト17の巻掛け半径(プーリ13,14の有効径)が連続的に変化し、変速比が無段階に変化するようになっている。そして、上記の駆動プーリ13が前後進切換機構2における出力要素であるキャリヤ10に連結されている。
【0025】
なお、従動プーリ14における油圧アクチュエータ16には、無段変速機1に入力されるトルクに応じた油圧(ライン圧もしくはその補正圧)が、図示しない油圧ポンプおよび油圧制御装置を介して供給されている。したがって、従動プーリ14における各シーブがベルト17を挟み付けることにより、ベルト17に張力が付与され、各プーリ13,14とベルト17との挟圧力(接触圧力)が確保されるようになっている。これに対して駆動プーリ13における油圧アクチュエータ15には、設定するべき変速比に応じた圧油が供給され、目標とする変速比に応じた溝幅(有効径もしくは巻掛け径)に設定するようになっている。
【0026】
上記の従動プーリ14が、ギヤ対18を介してディファレンシャル19に連結され、このディファレンシャル19から駆動輪20にトルクを出力するようになっている。したがって上記の駆動機構では、エンジン5と駆動輪20との間に、この発明におけるクラッチに相当するロックアップクラッチ3と無段変速機1とが直列に配列されている。
【0027】
上記の無段変速機1およびエンジン5を搭載した車両の動作状態(走行状態)を検出するために各種のセンサーが設けられている。すなわち、無段変速機1に対する入力回転数(前記タービンランナーの回転数)を検出して信号を出力するタービン回転数センサー21、駆動プーリ13の回転数を検出して信号を出力する入力回転数センサー22、従動プーリ14の回転数を検出して信号を出力する出力回転数センサー23、ベルト挟圧力を設定するための従動プーリ14側の油圧アクチュエータ16の圧力を検出する油圧センサー24が設けられている。また、特には図示しないが、アクセルペダルの踏み込み量を検出して信号を出力するアクセル開度センサー、スロットルバルブの開度を検出して信号を出力するスロットル開度センサー、ブレーキペダルが踏み込まれた場合に信号を出力するブレーキセンサーなどが設けられている。
【0028】
上記の前進用クラッチ11および後進用ブレーキ12の係合・解放の制御、および前記ベルト17の挟圧力の制御、ならびに変速比の制御、さらにはロックアップクラッチ3の制御をおこなうために、変速機用電子制御装置(CVT−ECU)25が設けられている。この電子制御装置25は、一例としてマイクロコンピュータを主体として構成され、入力されたデータおよび予め記憶しているデータに基づいて所定のプログラムに従って演算をおこない、前進や後進あるいはニュートラルなどの各種の状態、および要求される挟圧力の設定、ならびに変速比の設定、ロックアップクラッチ3の係合・解放ならびにスリップ回転数などの制御を実行するように構成されている。
【0029】
ここで、変速機用電子制御装置25に入力されているデータ(信号)の例を示すと、無段変速機1の入力回転数(入力回転速度)Ninの信号、無段変速機1の出力回転数(出力回転速度)No の信号が、それぞれに対応するセンサから入力されている。また、エンジン5を制御するエンジン用電子制御装置(E/G−ECU)26からは、エンジン回転数Ne の信号、エンジン(E/G)負荷の信号、スロットル開度信号、アクセルペダル(図示せず)の踏み込み量であるアクセル開度信号などが入力されている。
【0030】
なお、変速機用電子制御装置25からエンジン用電子制御装置26に対して、エンジントルクの変動要求が入力されている。このエンジントルク変動要求には、エンジントルクの変動幅すなわち振幅や変動周波数すなわち周期などが含まれる。そして、このエンジントルク変動要求は、エンジントルクを変動させることに伴ってロックアップクラッチ3に滑りの状態(例えば滑り率)の変化を生じさせ、その状態での係合圧に基づいて係合圧を補正し、もしくは係合圧のマップ値を求めるなどのために出力される。詳細については後述する。
【0031】
さらに、シフト装置27からは、現在のポジション信号が変速機用電子制御装置25へ入力されている。このポジション信号は、現在の状態が定常状態か否かの判断に用いられる。これも、詳しくは後述する。
【0032】
無段変速機1によれば、入力回転数であるエンジン回転数を無段階に(言い換えれば、連続的に)制御できるので、これを搭載した車両の燃費を向上できる。例えば、アクセル開度などによって表される要求駆動量と車速とに基づいて目標駆動力が求められ、その目標駆動力を得るために必要な目標出力が目標駆動力と車速とに基づいて求められ、その目標出力を最適燃費で得るためのエンジン回転数が予め用意したマップに基づいて求められ、そして、そのエンジン回転数となるように変速比が制御される。
【0033】
そのような燃費向上の利点を損なわないために、無段変速機1における動力の伝達効率が良好な状態に制御される。具体的には、無段変速機1のトルク容量すなわちベルト挟圧力が、エンジントルクに基づいて決まる目標トルクを伝達でき、かつベルト17の滑りが生じない範囲で可及的に低いベルト挟圧力に制御される。その制御は、挟圧力と入力トルクとの相互の関係、例えば入力トルクに対する挟圧力の過剰もしくは不足の状態を検出し、その検出の結果に基づいて挟圧力を補正することにより実行される。
【0034】
上記のロックアップクラッチ3は、無段変速機1に対して直列に連結されているので、ロックアップクラッチ3を無段変速機1に対するトルクヒューズとして機能させることができる。トルクヒューズとは、無段変速機1に過剰な滑り(マクロスリップ)が生じる前にロックアップクラッチ3で滑りを生じさせて、無段変速機1に作用するトルクを制限する機能である。したがってロックアップクラッチ3をこのように機能させるためには、そのトルク容量の余裕すなわち所定の入力トルクの下で滑りが生じるトルク容量を上回るトルク容量分が、無段変速機1でのトルク容量の余裕より小さくなるように制御する必要がある。そこでこの発明の制御装置は、トルクヒューズ圧を正確に設定するために、ロックアップクラッチ3の滑り状態を検出し、その検出結果に基づいて係合圧を設定するように構成されている。
【0035】
その制御例を上述した駆動機構におけるロックアップクラッチ3を対象として例に基づいて説明する。図1と図2はその制御例を示すフローチャートであり、図3はその制御を実行した場合の回転数、ロックアップクラッチ3の係合圧(油圧)の変化を示すタイムチャートである。
【0036】
この発明の制御装置は、無段変速機構と直列に配列されたクラッチの伝達トルク(トルク容量)の余裕を、無段変速機構の伝達トルク(トルク容量)の余裕より小さく設定する制御をおこなう制御装置である。その「余裕」とは、定常状態で滑りが生じない最小の伝達トルクを超える伝達トルクの幅もしくは差である。したがって、その余裕の範囲で正トルクもしくは負トルクが変化しても、上記のロックアップクラッチ3や無段変速機構1に滑りが生じない。また、その余裕を超えて正トルクもしくは負トルクが変化した場合には、クラッチが無段変速機構よりも先に滑り、いわゆるトルクヒューズとして機能する。
【0037】
この発明では、ロックアップクラッチ3の伝達トルクに余裕を与えるようにその係合圧(油圧)を設定するにあたり、先ず、ロックアップクラッチ3が安定的にオン制御されていることから制御を始める。これが、制御の前提条件であり、したがって図1に示すように、先ず、その制御前提条件の成立が判断される(ステップS1)。
【0038】
ここで、安定的にオン制御されているとは、その時点の通常の走行状態で滑りを生じることなく係合状態を維持する係合圧が設定され、しかもその係合圧が過渡的な圧力でなく、安定して維持されている状態である。後述するように、係合状態から滑りが生じる直前の状態もしくは滑りの開始の係合圧にまで係合圧を変化させる制御をおこなうからである。
【0039】
この制御前提条件が成立する状態は、図3のA1 時点以前の状態として示してある。すなわちエンジン回転数Ne およびタービン回転数Nt がほぼ一定に安定しており、またロックアップクラッチ(L/Uクラッチ)の油圧が滑りの生じない程度に高い圧力に一定しており、さらにベルト挟圧力がベルト滑りの生じない程度に高い圧力に一定している。これは、通常の走行状態、例えばシフトポジションがドライブレンジ(Dレンジ)での制御内容であり、図3には「F=0」として示してある。なお、このフラグFは、制御進行状態を示しており、図1および図2のフローチャートでは制御ステップの行き先を示すようにも機能する。
【0040】
上記のステップS1で肯定的に判断された場合には、制御開始条件が成立したか否かが判断される(ステップS2)。制御開始条件が成立したことが判断された場合、すなわちステップS2で肯定的に判断された場合には、フラグFが“1”とされる(ステップS3)。なお、既に制御開始条件が成立している場合には、ステップS2で否定的に判断され、その場合はステップS3を飛ばしてステップS4に進む。
【0041】
ロックアップクラッチ3をいわゆるトルクヒューズとして作用させる制御は、エンジン5から入力される駆動トルク(あるいは正トルク)や駆動輪20側から掛かる負トルクが安定している場合に可能であり、したがって定常状態を条件として制御をおこなう。これが制御開始条件である。その定常状態とは、アクセル開度(図示しないアクセルペダルの踏み込み量)や無段変速機構1の出力側のトルク(例えば従動プーリ16の軸トルク)の所定時間内の変化が所定範囲内であることである。そして、その所定範囲は車速に応じた範囲とすることができる。
【0042】
つぎに、ステップS4において制御終了条件が成立しているか否かが判断される。この制御終了条件は、上記の制御開始条件とされているいずれかの状態が成立しなくなることであり、例えば車両の走行状態が定常状態ではなくなったこと、あるいはロックアップクラッチ3が係合状態ではなくなったことなどである。
【0043】
なお、ステップS1およびステップS4で否定的に判断された場合、すなわち制御前提条件と制御開始条件とのいずれもが成立していない場合、フラグFを“0”とし(ステップS25)、このルーチンを一旦抜ける。
【0044】
制御終了条件が成立していないことによりステップS4で否定的に判断された場合には、フラグFが“1”に設定されているか否かが判断される(ステップS5)。上記のように制御開始条件が成立した場合にはフラグFが“1”に設定されているので、このステップS5では肯定的に判断される。その結果、ロックアップクラッチ3の係合圧(油圧)が第1の所定油圧P1に設定される(ステップS6)。これは、図3のA1 時点である。なお、ステップS5で否定的に判断された場合にはステップS6ないしステップS10を飛ばしてステップS11に進む。
【0045】
そして、この所定油圧P1は、ロックアップクラッチ3の特性のバラツキを考慮しても滑りの生じない程度の係合圧である。その圧力は、ロックアップクラッチ3に対する入力トルクに基づいて求めた摩擦係数μや機構上の特性のバラツキを考慮して設定された油圧とすることができ、あるいは無段変速機構1における目標とする挟圧力から無段変速機構1の入力トルクを求め、その入力トルクに基づいて演算した油圧とすることができる。
【0046】
ついで、所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS7)。この所定時間は、係合圧を所定油圧P1に低下させる指令信号を出力してから係合圧が所定油圧P1に安定するまでに要する時間であり、予め定められた一定値もしくは車両の状態に応じて設定されたマップ値などである。図3では、A1 時点からB1 時点までの時間である。
【0047】
このステップS7で肯定的に判断された場合には、「F=1」の制御が終了したことになるので、フラグFが“2”に設定される(ステップS8)。これは、図3のB1 時点である。そして、ロックアップクラッチ3に滑りが生じたか否かが判断される(ステップS9)。なお、上記の所定時間が経過していないことによりステップS7で否定的に判断された場合には、ステップS8を飛ばしてステップS9に進む。
【0048】
このステップS9は、ロックアップクラッチ3の状態を確認することを目的として実行される。すなわちロックアップクラッチ3の伝達トルクに所定の余裕を設定する制御の過程でロックアップクラッチ3に意図しない(もしくは想定しない)滑りが生じると、その制御を正常に実行できなくなるからである。また、ロックアップクラッチ3の滑りの検出もしくは判定は、ロックアップクラッチ3の入力側の回転数Nin(例えばエンジン回転数)と出力側の回転数Ne (例えばタービン回転数)とを比較することによりおこなうことができる。より具体的には、これらの回転数の差が予め定めたしきい値より大きくなったことによって、ロックアップクラッチ3に滑りが生じたことを検出することができる。
【0049】
制御が想定したとおりに進行すれば、ロックアップクラッチ3に滑りが生じないので、ステップS9で否定的に判断される。これに対して、何らかの理由でロックアップクラッチ3に意図しない滑りが生じた場合には、ステップS9で肯定的に判断される。その場合、フラグFが“3”に設定される(ステップS10)。その後、ステップS11に進む。なお、ロックアップクラッチに滑りが生じないことによりステップS9で否定的に判断された場合には、ステップS10を飛ばしてステップS11に進む。
【0050】
ステップS11では、フラグFが“2”に設定されているか否かが判断される。上述したように、ロックアップクラッチ3の係合圧を上記の所定油圧P1 に低下させる制御が実行された場合には、フラグFが“2”に設定されている。すなわち、上記の所定時間が経過したことにより、ステップS8でフラグFが“2”に設定され、かつロックアップクラッチ3に意図しない滑りが生じていないことにより、上記のステップS10を飛ばしてステップS11に進んでいるので、フラグFが“2”に設定されている。したがって、ステップS11で肯定的に判断される。その場合には、ロックアップクラッチ3の係合圧(油圧)を、振動させながら振幅を徐々に大きくする(ステップS12)。これは図3のB1 時点からC1 時点までの制御である。なお、ステップS11で否定的に判断された場合は、ステップS12ないしステップS14を飛ばして、ステップS15へ進む。
【0051】
上記のステップS12による油圧を振動させかつ振幅を大きくさせる制御は、係合状態にあったロックアップクラッチ3に滑りを生じさせるための制御であり、したがってステップS13では、ロックアップクラッチ3に滑りが生じたか否かが判断される。この判断は、前述したステップS9におけるのと同様に、入力側の回転数と出力側の回転数とを比較し、もしくはその回転数差を所定のしきい値と比較することによりおこなうことができる。より具体的には、このステップS13で検出するロックアップクラッチ3の滑りは、係合圧を変化させることにより生じる微少な滑りであり、具体的には、例えば、ロックアップクラッチ3の入力側の回転数と出力側の回転数との回転数差が、予め定めた所定回転数(例えば50rpm)以上の状態が、予め定めた所定時間(例えば50ms)継続したことによって、ロックアップクラッチ3の滑りを検出することができる。
【0052】
ロックアップクラッチ3に微少滑りが生じることによりステップS13で肯定的に判断された場合には、つぎの制御に進むために、フラグFが“3”に設定される(ステップS14)。そして、ステップS15に進む。これとは反対にロックアップクラッチ3に未だ滑りが生じないことによりステップS13で否定的に判断された場合に、つぎの制御に進めないので、フラグFを書き換えずに(ステップS14を飛ばして)、ステップS15に進む。
【0053】
このステップS15では、フラグFが“3”に設定されているか否かが判断される。ロックアップクラッチ3の係合圧を上記のように振動させながら振幅を大きくすることにより、ロックアップクラッチ3が滑りを生じると、ステップS14でフラグFが“3”に設定されるので、ステップS15で肯定的に判断される。なお、ステップ15で否定的に判断されるとステップS15ないしステップ18を飛ばして、ステップS19へ進む。
【0054】
ステップS15で肯定的に判断されると、今度は、クラッチ油圧を振動させながら、振幅を徐々に小さくする(ステップS16)。これは、図3のC1 時点からD1 時点である。
【0055】
ついで、ロックアップクラッチ3の係合判定が成立したか否か、すなわちロックアップクラッチ3が係合したか否かが判断される(ステップS17)。これは、図3のD1 時点である。
【0056】
こうして「F=3」の制御が終了したことになるので、つぎの制御に進むために、フラグFが“4”に設定される(ステップS18)。その後、ステップS19に進む。なお、ロックアップクラッチ3が意図した滑りの後に再係合したことによりステップS17で否定的に判断された場合には、ステップS18を飛ばしてステップS19に進む。すなわちフラグFは“3”に維持される。
【0057】
図2はステップS19以降の制御例を示すフローチャートである。ステップS19では、フラグFが“4”に設定されているか否かが判断される。上記のように係合圧を変動させ、かつ振幅を大きくすることによりロックアップクラッチ3が微少滑りを生じ、その後に係合圧を変動させ、かつ振幅を小さくすることによりロックアップクラッチ3の再係合の判定が成立すれば、フラグFが“4”に設定されているので、ステップS19で肯定的に判断される。すなわち、係合圧の変化に伴ってロックアップクラッチ3の挙動が変化すると、「F=4」の制御に進むことになる。一方、ステップS19で否定的に判断されると、ステップS20ないしステップS22を飛ばしてステップS23へ進む。
【0058】
ステップS19で肯定的に判断されると、ロックアップクラッチ3の係合油圧が、「F=3」の開始時点(図3のC1 時点)における油圧値、および、「F=3」の終了時点(図3のD1 時点)における油圧値より設定圧を求める。すなわちロックアップクラッチ3の滑りが検出された時点での油圧値、および再係合が判定された時点での油圧値から算出された油圧値に設定される(ステップS20)。そして、所定時間が経過したか否かが判断される(ステップS21)。これは、図3におけるD1 時点からE1 時点までの間であり、ロックアップクラッチ3の係合油圧を算出し設定した油圧に安定させるための予め定めた時間である。
【0059】
所定時間が経過することによりステップS21で肯定的に判断された場合には、つぎの制御に進むために、フラグFが“0”に設定される(ステップS22)。
【0060】
また、所定時間が経過していないことによりステップS21で否定的に判断された場合には、ステップS22を飛ばしてステップS23に進む。したがってこの場合は、フラグFは書き換えられずに“4”に維持される。
【0061】
さらに、この時点においても意図しないロックアップクラッチ3の滑りが生じたか否かが判断される。これがステップS23の制御である。これは、前述したステップS9やステップS13と同様の判断ステップである。したがってこのステップS23で肯定的に判断された場合には、その滑りに対応した制御に進むためにフラグFが“3”に設定され(ステップS24)、このルーチンの最初にもどる。したがって、次のルーチンではフラグFが“3”として扱われる。
【0062】
ステップS23で否定的に判断された場合、ステップS24を飛ばして、つまり、フラグFが変更されずに、このルーチンを一旦抜ける。
【0063】
なお、ここで、上記の具体例として開示してあるこの発明の他の態様を例示すれば、以下の通りである。
【0064】
上記ステップS12およびステップS16でクラッチの油圧を振動させながら、振幅を変化させたが、これに替えて、クラッチの油圧を振動させながら振動の平均値を変化させてもよい。図4はその制御を実行した場合の回転数、ロックアップクラッチ3の係合圧(油圧)の変化を示すタイムチャートである。
【0065】
所定の油圧値P1 まで落とした後(A2 時点)、所定時間経過させ(A2 時点からB2 時点)、クラッチ油圧を振動させながら、振動の平均値を徐々に低下させる(B2 時点からC2 時点。ステップS12に対応)。そして、クラッチの滑りが検出されると(C2 時点)、クラッチ油圧を振動させながら、振動の平均値を増加させる(C2 時点からD2 時点。ステップS16に対応)。その後、クラッチの再係合が検出されると(D2 時点)、滑りを検出した時の油圧値および、再係合したときの油圧値からクラッチ油圧を算出し、設定する。
【0066】
また、ステップS12およびステップS16でクラッチの油圧を変化させたが、これに替えて、クラッチに接続されたエンジン5の遅角制御により、入力トルクを変化させてもよい。図5はその制御を実行した場合の回転数、入力トルク、遅角量、スロットルバルブの開度の変化を示すタイムチャートである。
【0067】
入力トルクを変化させる前に、予め、エンジン5に設けてある電子スロットルバルブの開度を増大させる(A3 時点)。すなわち、点火時期の遅角制御を実行すると、エンジントルクが低下するので、エンジントルクの振幅の平均値を低下させないように、スロットル開度の増大によって遅角によるトルク低下を相殺するための制御である。以後、エンジンの遅角量の変化に合わせて、電子スロットルバルブの開度の制御がおこなわれる。
【0068】
スロットル開度を増大させた後、遅角が開始される(B3 時点)。その後一定時間が経過した後、遅角を復帰する(C3 時点)。そして、次の遅角を開始し、遅角量を前の遅角量よりも大きくする。これに合わせて、電子スロットルバルブの開度を徐々に大きくする。
【0069】
以上の動作を繰り返すことにより、エンジンの入力トルクを変動させながら、振幅を大きくする。これを、クラッチの滑りが検出されるまでおこなう(C3 時点からD3 時点。以上ステップS12に対応)。
【0070】
クラッチの滑りが検出されると、遅角量、および電子スロットル開度を共に減少させながら上記の動作を繰り返す。つまり、エンジンの入力トルクを変動させながら、振幅を小さくする。これを、クラッチの再係合が検出されるまでおこなう(D3 からE3 時点、以上ステップS16に対応)。
【0071】
クラッチの再係合が検出されると(E3 時点)、電子スロットル開度を制御の前の状態に戻し、遅角量を零にする。そして、クラッチの滑りが検出されたときのトルクおよび、再係合が検出されたトルクから、係合圧を算出し、設定する。
【0072】
このように制御すれば、遅角制御に起因するトルクの低下を、スロットル開度の増大によって補うことができ、その結果、遅角によるエンジントルクの周期的な変動時の平均トルクを、制御開始前のトルクとほぼ同じに維持できる。その結果、駆動トルクの低下などによるドライバビリティの悪化などを未然に回避できる。
【0073】
さらに、ステップS13でクラッチの滑り状態の判別を、一段階の閾値でおこなったが、これに替えて、二段階以上の閾値で滑り状態の判別をおこなってもよい。図6はその制御を実行した場合の回転数、クラッチ油圧または入力トルクの変化を示すタイムチャートである。
【0074】
上記の実施例と同様にクラッチ油圧または入力トルクを変動させながら振幅を増大させるが(A4 時点以前)、出力回転数と入力回転数の差分の変化率Δ(Ne −Nin)が第1の閾値Gに達した時点(A4 時点)で滑りの発生が近いと判断し、油圧もしくは入力トルクの変動の振幅の増加率を減少もしくは振幅を一定にさせる(A4 時点からB4 時点。ステップS12およびステップS13に対応)。これは、ノイズ等の外乱要因による不正確な検出を回避するためである。
【0075】
その後、第2の閾値Hに達し、クラッチの滑りを検出すると、振幅を減少させる(B4 時点からC4 時点)。以後は上記の実施例と同様の制御をおこない、係合圧を算出し、設定する。
【0076】
ここで、上記の具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、ステップS12、ステップS16の各機能的手段が、この発明の変動手段に相当し、ステップS9、ステップS13、ステップS17、ステップS23の各機能的手段が、滑り状態検出手段に相当する。また、ステップS12、ステップS16で振幅の平均値を変化させる場合の機能的手段が、「入力トルクもしくは係合圧の平均値を変化させる手段」に相当する。さらに、ステップS20がトルク伝達制御手段に相当する。
【0077】
したがって上記の制御をおこなうこの発明の制御装置によれば、ロックアップクラッチ3の伝達トルクの余裕がゼロとなる係合圧力を求め、その圧力に、伝達トルクに所定の余裕を与えるいわゆる余裕圧力を加えて、ロックアップクラッチ3の係合圧力を設定するので、それ以降にロックアップクラッチ3の係合圧を滑りが生じるまで低下制御することがない。そのため、ロックアップクラッチ3の滑りが繰り返し生じたり、それに伴って駆動系統の動力の伝達効率が低下して燃費が悪化するなどの事態を未然に回避することができる。
【0078】
また、ロックアップクラッチ3の伝達トルクの余裕がゼロの状態を検出もしくは判定し、これに余裕圧力を加えるから、ロックアップクラッチ3の係合圧が過大になることがなく、その結果、ロックアップクラッチ3の伝達トルクの余裕を無段変速機構1での余裕に対して確実に小さく設定できる。さらに、その伝達トルクの余裕がゼロとなる係合油圧を、係合圧もしくは入力トルクを変化させて求めるので、ロックアップクラッチ3やその油圧制御機器などに個体差や経時変化があっても、これらに影響されずに、伝達トルクに所定の余裕が生じる係合圧を安定して設定することができる。
【0079】
さらにまた、定常的あるいは準定常的な走行状態でエンジントルクや駆動輪側の負トルクが急激に変化した場合には、ロックアップクラッチ3が無段変速機構1に先行して滑りを生じるので、無段変速機構1に滑りが生じることを確実に防止することができる。そして、そのような無段変速機構1の滑りを防止しつつ、その挟圧力を可及的に低くすることができるので、無段変速機構1での動力の伝達効率を向上させて、燃費を改善することができる。
【0080】
なお、この発明は、上述した具体例に限定されないのであって、この発明のクラッチは、上記のロックアップクラッチ以外に、車両の発進の際に次第に係合させられるいわゆる発進クラッチであってもよく、またその配列は、要は、トルクの伝達方向で無段変速機構と直列であればよく、したがって無段変速機構の入力側と出力側とのいずれであってもよい。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、入力トルクもしくは係合圧を変化させ、その状態でクラッチの滑りの状態すなわち滑りが生じるか、もしくは滑りが生じやすいか、あるいは反対に滑りが生じにくい状態かなどを検出することができる。
【0082】
また、請求項2の発明によれば、クラッチの入力トルクもしくは係合圧が周期的に変化し、その変化の過程においてクラッチの入力トルクもしくは係合圧が増大した時点にクラッチに滑りもしくはその直前の状態が生じる。これは、クラッチの入力トルクもしくは係合圧の周期的な変化における瞬間的な状態であり、その直後にクラッチの入力トルクもしくは係合圧が低下するので、クラッチが過剰な滑り状態に到ってしまうことが回避することができ、また、クラッチの出力側に現れるトルクは、周期的に変化するトルクの平均値となるので、出力トルクに対する影響を防止もしくは抑制できる。
【0083】
さらに、請求項3の発明によれば、クラッチへの入力トルクもしくはクラッチの係合圧を周期的に変化させる場合に、その振幅が変化させられ、その過程で滑り状態が検出するので、平均値が変化しなくても、滑りが生じやすい状態を設定し、滑りの生じる係合圧を正確に検出できる。
【0084】
また、請求項4の発明によれば、クラッチへの入力トルクもしくはクラッチの係合圧を周期的に変化させる場合に、平均値が変化させられ、その過程で滑り状態を検出するので、滑りの生じやすい状態を設定して滑りの生じる係合圧を正確に検出し、ひいては迅速もしくは確実に滑り状態を検出し、係合圧を設定することができる。
【0085】
さらに、請求項5の発明によれば、入力トルクもしくは係合圧を変化させることに伴う滑りの状態が検出され、その検出結果により係合圧などを制御するので、クラッチのトルク容量を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【図2】この発明の制御装置による制御の一例を説明するためのフローチャートの図1に続く部分を示す図である。
【図3】図1および図2の制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図4】振幅の平均値を変動させる制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図5】入力トルクを変動させる制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図6】滑り判定の閾値を2段階に設定した制御を実行した場合のタイムチャートの一例を示す図である。
【図7】この発明に係るクラッチを含む駆動系統を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1…無段変速機、 5…エンジン(動力源)、 13…駆動プーリ、 14…従動プーリ、 17…ベルト、 20…駆動輪、 25…変速機用電子制御装置(CVT−ECU)、 26…エンジン用電子制御装置(E/G−ECU)。
Claims (5)
- 動力源から出力されたトルクが入力され、かつ係合圧に応じてトルク容量が変化するクラッチの制御装置において、
前記クラッチに対する入力トルクと前記係合圧との少なくとも一方を変化させる変動手段と、
入力トルクもしくは係合圧が変化されたことに伴う前記クラッチの滑り状態を検出する滑り状態検出手段と
を備えていることを特徴とするクラッチの制御装置。 - 前記変動手段は、前記入力トルクもしくは係合圧を周期的に変化させる手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のクラッチの制御装置。
- 前記変動手段は、周期的に変化させられる前記入力トルクもしくは係合圧の振幅を変化させる手段を含むことを特徴とする請求項2に記載のクラッチの制御装置。
- 前記変動手段は、周期的に変化させられる前記入力トルクもしくは係合圧の平均値を変化させる手段を含むことを特徴とする請求項2または3に記載のクラッチの制御装置。
- 前記滑り状態検出手段による検出結果に基づいて前記クラッチを制御するトルク伝達制御手段を更に備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のクラッチの制御装置。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007327533A (ja) * | 2006-06-06 | 2007-12-20 | Honda Motor Co Ltd | 車両用動力伝達装置 |
CN101531136B (zh) * | 2008-03-04 | 2013-06-12 | 通用汽车环球科技运作公司 | 变矩器离合器滑动率监测系统和方法 |
KR101524323B1 (ko) * | 2007-07-05 | 2015-05-29 | 섀플러 테크놀로지스 게엠베하 운트 코. 카게 | 차량 클러치의 슬립을 제어하기 위한 방법 및 장치 |
-
2003
- 2003-03-26 JP JP2003086611A patent/JP2004293653A/ja active Pending
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